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特許7298932仮想現実に基づくパイロット訓練システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】仮想現実に基づくパイロット訓練システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/08 20060101AFI20230620BHJP
   G09B 9/32 20060101ALI20230620BHJP
   G09B 9/28 20060101ALI20230620BHJP
   G09B 9/12 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G09B9/08
G09B9/32
G09B9/28
G09B9/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020564035
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019016534
(87)【国際公開番号】W WO2019152938
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】62/625,658
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520290150
【氏名又は名称】アクセス ヴァーチャル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ポール, リベラトーレ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド, アーチェク
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0046230(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025031(US,A1)
【文献】実開平05-025468(JP,U)
【文献】国際公開第2014/123883(WO,A1)
【文献】米国特許第05129826(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00-9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立型パイロット訓練システムであって、
床載置基部と、
シートパンと、
前記基部及び前記シートパンを接続し、前記基部の上方であって前記シートパンの下方に位置決めされた複数のアクチュエーターであって、x軸、y軸、及びz軸に沿って前記シートパンを直線運動及び回転運動させるように構成された複数のアクチュエーターと、
第1の支持ポストを介して前記シートパンに着脱可能に接続されたペダル支持部と、
第2の支持ポストを介して前記シートパンに着脱可能に接続されたヨーク支持部と、
シミュレーションされたフライト環境を反映するフライトシミュレーションソフトウェアの出力を表示するように構成されたヘッドマウントディスプレイであって、該ヘッドマウントディスプレイの視点は、前記シートパンの動きと同期される、ヘッドマウントディスプレイと、
該自立型パイロット訓練システム設置され、プロセッサを備える訓練端末と、
を備え、
前記ペダル支持部及び前記ヨーク支持部は、前記シートパンと同期して動作するように構成されている、自立型パイロット訓練システム。
【請求項2】
床の上方における前記シートパンの高さ調整及び/又は水平調整のための前記基部に接続された複数の調整可能な脚部を更に備える、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項3】
前記複数のアクチュエーターのそれぞれは、前記基部の上部側に固定された第1の端部と、ボールジョイントを介して前記シートパンの底部側に連結された第2の端部とを備える、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項4】
前記シートパンに取り付けられた支持コラムと、容易な組み立て及び分解のために前記支持コラムと着脱可能に係合するカラーとを更に備え、前記第1の支持ポスト及び前記第2の支持ポストの少なくとも一方は前記カラーに固定される、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項5】
前記訓練端末に結合された訓練生入力デバイスであって、前記シミュレーションされたフライト環境の少なくとも1つの態様を制御する、前記シートパンに着座した訓練生からの入力を受信するように構成された訓練生入力デバイスを更に備える、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項6】
リモートインストラクターサイトに配置されたインストラクター端末であって、ネットワークを介して前記訓練端末とインターフェースするように構成されたインストラクター端末を更に備える、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項7】
前記インストラクターサイトにおけるインストラクター入力デバイスであって、訓練セッション中に前記フライトシミュレーションソフトウェアにおける様々なパラメーターを変更するように構成されたインストラクター入力デバイスを更に備える、請求項6に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項8】
前記インストラクター端末及び前記訓練端末は、インストラクターと訓練生との間のリアルタイムの通信を容易にする対応する通信デバイスを備える、請求項6に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項9】
前記訓練生入力デバイスは、方向舵ペダル、ヨーク、及びスロットルクアドラントを備える、請求項5に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項10】
訓練生の生理学的データを追跡するセンサーを更に備える、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項11】
前記ペダル支持部及び前記ヨーク支持部は、それらのそれぞれの位置を、前記シミュレーションされたフライト環境においてシミュレーションされている特定の航空機コックピットと一致して構成するように前記シートパンに対して調整可能である、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項12】
前記訓練端末は、前記床載置基部に直接固定されている、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【請求項13】
前記自立型パイロット訓練システムは、単一の配達可能なパッケージ内にパッケージされるとともに、統合されたユニットとして輸送可能であるように構成されている、請求項1に記載の自立型パイロット訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年2月2日に出願された「Virtual Reality Based Remote Pilot Training System」という発明の名称の米国仮出願第62/625,658号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、パイロット訓練システムに関し、特に、インストラクター及び訓練生が互いにリモートに位置し、訓練がシミュレーションを介して行われるシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般航空は、パイロットエラー事故という一部の理由によって、安全記録が乏しいことで知られている。これらの事故は、多くの場合に、一貫性のない、十分でない、及び/又は限られた訓練に起因して発生する。例えば、パイロットが遭遇する飛行条件は広範囲に及ぶ。適切な訓練及びリソースがない場合、パイロットは、気が付くと自身が準備できていない未経験の状況にいる可能性がある。これは、異常な飛行条件のときに特に当てはまる。対照的に、軍パイロット及び事業用パイロットは、ほとんどがシミュレーターに基づく訓練及び検定飛行等の義務付けられた定期的な訓練を受けているので、それらのパイロットが歴史的に経験してきた事故率ははるかに低い。そのようなリソース及び広範な訓練は、通常、過度に高価であるため、一般航空パイロットのために広範囲に実施することができない。そして、経験を積んだパイロットの交代、予算制約、及び訓練に利用可能な航空機等の限られたリソースに起因して、軍パイロット及び事業用パイロットは、現在、自身が一般航空パイロットと同様の立場にあることに気付き出している。
【0004】
従来のフライトシミュレーターは複雑で高価であり、全てのパイロットに広く容易に利用可能ではない。これは、一般航空パイロット(又はそれ以外に一般航空飛行機の所有者/運用者)に特に当てはまる。一方、軍事団体及び事業団体の場合であっても、従来のシミュレーターは、法外なコストを要することがあり、容易に入手可能でなく、及び/又はブリックアンドモルタル施設に配置され、そのため、事前にスケジューリングされた時間にこれらの施設に移動する必要がある。さらに、一般航空パイロットは、通常、自身のスケジュールにおいて時間が許すときにしか飛行しない。そして、実際のフライト時間は、航空機が利用可能であるとき(ほとんどの一般飛行士は自身の飛行機を所有していない)及び適切な気象条件が適切な訓練を可能にするときに更に制限される。パーソナルコンピューター用のフライトシミュレータープログラムは存在するが、そのようなシステムには、現実感の側面が大幅に欠如している。例えば、ソフトウェアは、相対的に小さく平坦なモニターに表示され、大規模シミュレーター等には筐体がなく、ユーザーのためのモーションキューがない。したがって、そのようなシステムは、物理環境をシミュレーションするためのことは何もしておらず、このことは、経験を損なうだけでなく、航空機パイロットの適切な訓練を提供することができない。したがって、パイロットは、現在、単一のロケーションにおける位置に固定取り付けされた極端に重く大規模なシミュレーターに限定されている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において説明される実施の形態の基本的な理解を提供するために、以下に、簡略化した概要を提示する。この概要は、広範な概観でもなければ、主要な又は重要な要素を特定することを意図するものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明への序文として幾つかの概念を簡略化した形態で提示することである。
【0006】
1つの実施の形態によれば、パイロット訓練システムが提供される。該パイロット訓練システムは、プロセッサ及びフライトシミュレーションソフトウェアを備える訓練端末であって、ネットワークに接続するように構成された訓練端末と、前記訓練端末に結合されたシートであって、6自由度を有するとともに、前記フライトシミュレーションソフトウェアによって生成されているシミュレーションされたフライト環境に応答して急上昇、ヒーブ、スウェイ、ヨー、ピッチ、及びロールが可能なシートパンを有するシートと、前記シミュレーションされた環境を反映する前記フライトシミュレーションソフトウェアの出力を表示するように構成されたヘッドマウントディスプレイであって、該ヘッドマウントディスプレイの視点は前記シートパンの動きと同期される、ヘッドマウントディスプレイと、前記訓練端末に結合された少なくとも1つの入力デバイスであって、前記シミュレーションされた環境の少なくとも1つの態様を制御する、前記シートに着座した訓練生からの入力を受信するように構成された少なくとも1つの入力デバイスとを備え、該パイロット訓練システムは、容易に輸送可能であり、フライトシミュレーション訓練デバイスの米国連邦航空局の規格を満たす。
【0007】
別の実施の形態によれば、パイロット訓練システムのキットが提供される。該キットは、米国連邦航空局の規格を満たし、シミュレーションソフトウェアを有する訓練端末であって、ネットワークに接続するように構成された訓練端末と、6自由度を有するシートパンを備える、床載置シートと、ヘッドマウントディスプレイと、複数のヒューマンマシンインターフェースデバイスと、少なくとも1つの着脱可能な支持部であって、前記シートパンに取り付けられるとともに、前記複数のヒューマンマシンインターフェースデバイスのうちの少なくとも1つを支持するように構成された支持部とを備え、該キットは、容易に出荷することができるとともに、前記シミュレーションソフトウェアのユーザーによって組み立てることができる。
【0008】
更に別の実施の形態によれば、パイロット訓練システムのポータブルシートが提供される。該シートは、床載置基部と、シートパンと、基部と前記シートパンとの間に位置決めされた複数のアクチュエーターであって、x軸、y軸、及びz軸に沿って前記シートパンを直線運動及び回転運動させるように構成された複数のアクチュエーターと、第1の支持ポストを介して前記シートパンに着脱可能及び調整可能に接続されたペダル支持部と、第2の支持ポストを介して前記シートパンに着脱可能及び調整可能に接続されたヨーク支持部とを備える。
【0009】
更に別の実施の形態によれば、シート基部に取り付けられた可動シートパンを有する床載置シートであって、前記シートパンは6自由度を有するとともに、前記シート基部に対してシミュレーションされたフライト環境と一致して急上昇、ヒーブ、スウェイ、ヨー、ピッチ、及びロールが可能である、床載置シートと、前記床載置シートと統合された、プロセッサ及びフライトシミュレーションソフトウェアを有する訓練端末であって、前記フライトシミュレーションソフトウェアを動作させて前記シミュレーションされたフライト環境を生成するように構成され、ネットワークに接続するようにも構成された訓練端末と、前記シートパンと同期して動くようにシートパンと全て堅固に連結されたヨーク、スロットルクアドラント及び方向舵ペダルのそれぞれについてのそれぞれの調整可能支持部であって、該調整可能支持部のそれぞれは、それらのそれぞれの位置を、シミュレーションされたフライト環境においてシミュレーションされている特定の航空機コックピットと一致して構成するように前記シートパンに対して調整可能である、調整可能支持部とを有するパイロット訓練システムであって、ユーザーが選択した再位置決め可能なロケーションにおいて飛行訓練を提供するように統合されたユニットとして輸送可能であるパイロット訓練システムが提供される。
【0010】
他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになり得る。
【0011】
図面及び詳細な説明の全体を通して、別段の説明がない限り、図面の同じ参照符号は、同じ要素、特徴、及び構造を参照するものと理解することができる。これらの要素の相対的なサイズ及び描写は、明確化、例示、及び便宜のために誇張される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】1つの例によるパイロット訓練システムの概略図である。
図2】別の例によるパイロット訓練システムの概略図である。
図3】1つの例によるパイロット訓練システムのアーキテクチャを示す図である。
図4】別の例によるパイロット訓練システムのアーキテクチャを示す図である。
図5】1つの例によるパイロット訓練システムの6自由度シートの斜視図である。
図6】パイロット訓練システムの6自由度シートのフレームの斜視図である。
図7図6の6自由度シートのフレームの側面図である。
図8】パイロット訓練システムの6自由度シートに用いられるシートパンの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここでは、例示的な実施形態を説明及び例示する。これらの例示された例は、本実施形態を限定することを意図するものではない。例えば、システムの1つ以上の態様は、他の実施形態及び他のタイプの用途において利用することができる。リモートパイロット訓練のシステムの例示の実施形態は、添付図面を参照して以下により十分に説明される。そのようなシステムは、様々なタイプのリモート訓練に用いることができ、本明細書において述べる実施形態に限定されるものとみなされるべきでない。逆に、これらの例示的の実施形態は、本開示が十分かつ完全であるとともにパイロット訓練システムの範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。様々な図における必ずしも同じではないが同様の要素は、一貫性を保つために同様の参照符号によって表される。「第1」、「第2」、「上部」及び「底部」等の用語は、1つの構成要素(又は構成要素の一部若しくは構成要素の一状態)を別の構成要素と区別するために単に用いられるにすぎない。そのような用語は、優位性を表すことを意図するものでもなければ、構成要素を特定の方位に限定することを意図するものでもない。
【0014】
本開示は、より低コストであり、容易に運搬することができ、容易に調整可能である完全没入型フルモーション飛行訓練シミュレーターを提供することによって、パイロット訓練における前述の不備に対処する。このシミュレーターは、レベルC規制及びレベルD規制のようなフライトシミュレーション訓練デバイスの米国連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)規格等の該当する法的規制を満たすように構成することができる。このシミュレーターを用いるシステムは、一般航空、事業用、及び軍のパイロット訓練を含む全ての様々なタイプのパイロット訓練に有益であり、適用可能であり、アクセス可能である。なぜならば、このシミュレーターは、訓練の高コストを削減するとともに、訓練施設との間の移動に関連したコスト及び時間を削減するからである。これらのシミュレーターは、従来のフライトシミュレーターを用いた場合に現在利用可能でない練習の機会も全てのパイロットに提供する。
【0015】
最初に図1を参照すると、例示のパイロット訓練システム100が示されている。このパイロット訓練システム100は、ハードウェア及びソフトウェアの双方を含む仮想現実シミュレーションキット110(以下、「キット」と総称する)を備える。例えば、ハードウェア及びソフトウェアは、コンピューター(中央処理装置、メモリ)、及び/又は、シミュレーションソフトウェア、ドライバーソフトウェア、及び接続ソフトウェアを含むことができる。これらのハードウェア及びソフトウェアは、本明細書では、訓練端末120と総称される。キット110は、ユーザー、すなわち訓練生に、没入型の高忠実度リモート指導型フライトシミュレーション訓練セッションを提供する。例えば、リモートパイロット指導セッションに興味のある訓練生は、購入、リース、借用等を介してキット110を取得し、訓練端末120をインターネット等のネットワーク130に接続することができる。リモートサイト140も、ネットワーク130に接続することができる。リモートサイト140は、インストラクター又はトレーナーが訓練生の訓練セッションを制御、円滑化及び監視するために用いることができる。ネットワーク130を通じて、トレーナー及び訓練生は瞬時に通信することができ、インストラクターは、訓練生が実際の航空機において経験する可能性が高く、したがって、安全にナビゲートする方法を学習しなければならないシミュレーションされた異常な飛行条件を導入する等の、セッションの様々な態様を制御することができる。任意選択で、サーバー150をシステム100に含めて、ネットワーク130を介してリモートサイト140及び訓練端末120に接続することができる。サーバー150は、シミュレーションソフトウェア160等の様々なソフトウェアとすることができ、管理機能及び制御機能に用いることができる。サーバー150は、訓練端末120からリモートに配置することができる。ただし、サーバー150は、使用される場合には、所望に応じて、訓練生サイト又はリモートサイト140に収容することができることが理解されるであろう。サーバー150は、クライアントとしてのリモートサイト140における訓練端末120及びインストラクター端末220とインターフェースし、それらの端末のそれぞれに、仮想訓練セッションを円滑化及び/又は増強する適切なデータを供給することができる。
【0016】
キット110は、訓練端末120への接続用の様々な制御入力170を備える。これらの制御入力170は、訓練セッション中に使用され、航空機フライトシミュレーション中に訓練生に現実感のある環境を与える。例えば、制御入力170は、ヨーク又はコントロールスティック、方向舵ペダル、スロットル、スロットルクアドラント、ジョイスティック、計器盤、及び他の入力デバイスを含むことができる。キット110は、力、振動、又は動きを訓練生に印加し、それによって、現実感のある飛行訓練環境をシミュレーションすることによって接触感覚を再現することができるグローブ、ベスト、ウェアラブル技術等のような視聴覚フィードバックデバイス及び触覚/身体フィードバックデバイス等のフィードバックデバイス180を更に備える。仮想現実ヘッドセット、すなわち、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:head mounted display)190も、キット110に設けられる。このHMDは、ユーザーがどの方向を見ても、ディスプレイがユーザーの目の前方に存在するようにユーザーの目の前方に位置決めされた少なくとも1つ又は2つのディスプレイを備える。ユーザーが自身の頭部を移動させると、表示される視点が変化するように、位置追跡デバイス及び/又は他の様々なセンサーをHMDに組み込むことができる。好ましくはサーボ作動式6自由度シート200である可動シート200もキットに備えられる。シート200は、ロール運動、ピッチ運動、ヨー運動、ヒーブ運動、スウェイ運動及びスラスト運動を提供して、航空機の姿勢及び運動をシミュレーションすることができる。訓練生が自身のインストラクターと通信するために、センサー、オーディオ、及び/又はビデオを含むことができる1つ以上の通信デバイス210が更に設けられる。例えば、これらの通信デバイスは、HMD190に組み込まれるスピーカー及びマイクロフォンを備えることができる。制御入力170、触覚/フィードバックデバイス180、ヘッドセット190、シート200、及び通信デバイス210のそれぞれは、訓練端末120に接続される。そのような接続は、有線、及び/又は、Bluetooth等を介した無線とすることができ、キット110を受け取るとユーザーによって容易に行われる。この構成によって、キットは、訓練生にとって都合がよければいつでもどこでもアンパックしてインターネット(又は他のネットワーク)にリンクし、飛行訓練セッションに用いることができる没入型高忠実度フライトシミュレーション経験を訓練生に提供する。
【0017】
上述したように、インストラクターはリモートサイト140に位置することができる。したがって、リモートサイト140は、コンピューター(中央処理装置、メモリ)、及び/又は、シミュレーションソフトウェア、ドライバーソフトウェア、及び接続ソフトウェア等のハードウェア及びソフトウェアの双方を含むインストラクター端末220を備えることができる。訓練セッション中、インストラクター端末220は、訓練生のHMDの複製を提供するディスプレイ230を備える。したがって、ディスプレイ230は、シミュレーションされた飛行条件と、訓練生フライト入力と、訓練生がリアルタイムで見るもの及び行うこととをインストラクターに示すことができる。インストラクターが、シミュレーションソフトウェアを管理し、飛行操作、飛行条件、エラー等を変更し、一般的には、関連した指導を訓練生に提供することを可能にするために、入力デバイス240もインストラクター端末220に結合することができる。例えば、インストラクター端末220は、ソフトウェアを制御するタッチパッドを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスとすることができる。インストラクターが訓練セッション中に訓練生とリアルタイムで通信することを可能にするために、センサー、オーディオ、及び/又はビデオを含むことができる少なくとも1つの通信デバイス250を設けることができる。
【0018】
インストラクターと訓練生との間のインタラクションをネットワーク130を介して行うことができる。例えば、インストラクターは、訓練セッション中に、インストラクター端末220を用いて、訓練端末120上で動作しているシミュレーションソフトウェアにアクセスし、シミュレーションソフトウェア内の様々なパラメーターを変更することができる。この際、インストラクターは、選択されたシステムを故障させることによって及び/又は気象条件等の条件を変更することによって、訓練生の経験を監視及び/又は制御することができる。訓練生及び/又はインストラクターは、サーバー150を通じて互いのインタラクション又はソフトウェアとのインタラクションも有することができる。サーバー150は、システム100の様々な管理機能を管理することができる。例えば、サーバー150は、訓練生及び/又はインストラクターの同一性を検証する検証ソフトウェア260を含むことができる。検出された同一性に基づいて、システム100へのアクセスを、それに応じて既定のパラメーターに制限することができ、全体のアクセスを、認可を有する者のみに制限することができる。検証ソフトウェア260は、ユーザーの同一性及び許可に基づいてシステム100の或る特定の構成要素へのアクセスを制限するのに用いることもできる。プロセッサ270、接続ソフトウェア280、及びデータ記憶装置290も、サーバー150に含めることができる。したがって、サーバー150は、特定のセッションが継続した時間の長さ又は指定されたユーザーが指定された時間枠中に有する総訓練時間(total training minutes)数等のデータを記憶することを含む個々の訓練セッションを記録する能力を有する。訓練端末120ではなくサーバーを通じてシミュレーションを実行することが所望される場合には、サーバーが、任意選択でシミュレーションソフトウェア160を含むことができる。
【0019】
図2に示すように、単一のインストラクター端末を2つ以上の研修者端末と作用し合うように接続することができるシステムを設けることができる。このように、第1のロケーション300におけるインストラクター端末を、第2のロケーション310における第1の訓練生及び第3のロケーション320における第2の訓練生と接続することができ、第1のロケーション300、第2のロケーション310、及び第3のロケーション320のそれぞれは互いにリモートである。複数の他のロケーションにおける複数の他の訓練生をシステムに追加することができる。訓練生の最大数を決定するのは、インストラクターに一任することができる。インストラクターは、個々の訓練生のそれぞれについて同じシミュレーションを動作させることもできるし、インストラクターは、複数の同時並行のシミュレーションを提供することもできる。これらのシミュレーションは、個人別とすることができ、各個々の訓練生の経験レベル及び/又は訓練履歴によって決定することができる。同様に、複数のリモートに位置する訓練生は、例えば、協同飛行(戦闘、空中給油又は他の協調飛行等)技能を練習するために、単一のシミュレーション環境におけるマルチパイロット訓練演習に携わることができる。更に他の実施形態では、1人以上の訓練生は、インストラクターを伴わずに同時に訓練(練習)することができる。全ての場合において、各訓練生は、それぞれの訓練生端末から仮想航空機の操縦をシミュレーションする。上述したように、訓練端末120は、各個々の訓練生にキット110として出荷及び配達することができる。キット110は、訓練生が容易に組み立てて接続することができ、没入型シミュレーション環境を提供する全ての必要な構成要素を含む。訓練端末120は、所望のシミュレーションソフトウェア(例えば、X-PLANE(商標))を用いて構成されている。したがって、システムは、組み立てられると、使用できる状態にある。代替的に及び/又は加えて、訓練端末120は、シミュレーションソフトウェアが存在するリモートサーバーにネットワーク130(インターネット等)を介して接続することができ、シミュレーションソフトウェアは、このリモートサーバーから供給される。訓練生又はリモートリンクされたインストラクターのいずれかが、サーバー150に接続されると、訓練セッションを開始することができる。
【0020】
次に図3を参照すると、パイロット訓練システム350の一例示のアーキテクチャが示されている。パイロット訓練システム350は、訓練端末120等の少なくとも1つの訓練端末が存在し動作する少なくとも1つの訓練サイト360を備える。システム350は、任意選択で、サーバー150等の少なくとも1つのサーバーが存在し動作することができるシミュレーションアプリケーションサイト370を備える。訓練サイト(複数の場合もある)360は、通常、シミュレーションアプリケーションサイト370からリモートに配置される。2つ以上の訓練サイトを有する実施形態では、これらの訓練サイトは、互いにローカル及び/又はリモートである場合がある。1つ以上の訓練サイト360における各訓練端末120は、シミュレーションアプリケーションサイト370に配置された1つ以上のサーバー150にネットワーク130を通じて接続することができる。ネットワーク130は、インターネット又はプライベートイントラネット等のローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)とすることができる。
【0021】
シミュレーションソフトウェアは、訓練端末120に存在するか又はサーバー150に存在するかを問わず、航空機のフライト及び条件(例えば、機械的ステータス、気象)の物理的現象並びに仮想世界を含む、航空機フライト及び航空機が飛行する環境を人工的に再現することができる。例えば、シミュレーションソフトウェアは、航空機がどのように飛行するのか、航空機が航空管制の適用にどのように反応するのか、他の航空機システムの影響、及び航空機が空気密度、乱気流、ウインドシア、雲、降雨等の外部要因にどのように反応するのかを統御する方程式を再現することができる。その上、シミュレーションソフトウェアは、それぞれが個別の訓練端末を用いる複数の訓練生に対応して、同じ仮想世界内でそれぞれの航空機飛行をシミュレーションすることができる。したがって、複数の訓練サイト360における訓練生が、訓練中に互いにインタラクトすることができる。シミュレーションソフトウェアは、複数の異なる航空機をサポートし、ドローン等の無人運搬手段をサポートすることを含むことができることが理解されるであろう。シミュレーションソフトウェアのクライアントインスタンスが、シミュレーションアプリケーションサイト370においてホストされる場合には、サーバー150上のシミュレーションソフトウェアが各参加訓練生の統合されたシミュレーションを連携させるように、このクライアントインスタンスを訓練端末120に設けることができる。換言すれば、各訓練生は、自身の固有の航空機を同じ仮想世界内で制御する。特に、パイロット訓練に加えて、シミュレーションソフトウェアは、航空機自体の設計及び開発の容易化及び/又は航空機特性及び制御ハンドリング品質の研究に用いることもできる。
【0022】
シミュレーションアプリケーションサイト370は、訓練生及び/又はインストラクターがシミュレーションを後にレビューすることができるように、記録された個々の各シミュレーションを記憶することが可能なデータ記憶装置290を更に備える。この点に関して、個々の訓練生の訓練セッション情報は、再生、報告、分析、段階評価等することもできる。或いは、この情報を個々の各訓練サイトにおいてログ記録し、ネットワーク130を介してインストラクターに送信することができる。
【0023】
上述したように、各訓練端末120は、キット110等のキットとしてパッケージにすることができ、このキットは、好都合なロケーション(例えば、訓練生の自宅)にいる訓練生に直接出荷又は配達される。キット100は、リモートサーバー150等の外部構成要素とインターフェースするのに必要な要素の全てを備える。シミュレーションソフトウェアがサーバー150上でホストされる場合には、複数のヒューマンマシンインターフェース(HMI:human-machine-interface)デバイス170、180、190、200を使用して、訓練生をサーバー上のシミュレーションソフトウェアとインターフェースすることができる。訓練サイト360において動作しているシミュレーションソフトウェアのクライアントインスタンスは、訓練生が、HMIデバイス170、180、190、200を用いて仮想航空機を制御することによって、自身のリモートロケーションにおいてコンピューター上でシミュレーションを動作させることを可能にする。これらのHMIデバイス170、180、190、200は、ソフトウェアが訓練端末上に直接提供されたときに用いられるのと同様にして、現実のコックピット環境の視覚的及び身体的な飛行経験をシミュレーションすることができる。
【0024】
シミュレーションソフトウェアを訓練端末120上に直接設けることによって、訓練生が駆動するシミュレーションセッション380を訓練サイト360に単独に設けることができることが理解されるであろう。換言すれば、ネットワーク接続は必要ではない。例えば、訓練生は、飛行操作のロケーション、気象、飛行経路、航空機の制限、緊急手順、目的地計器進入、及び記録/保存設定を選択することができる。これによって、訓練生は、例えば、今後予定されたフライトパターンを練習するために、及び/又は、ライブのインストラクターが主導する訓練コース外で一般的な練習を受けるために、特定のユーザー選択条件又は事象における訓練又は練習を与えるようにシミュレーションを合わせることが可能になる。加えて、訓練生によって実行及び記録される自宅学習コースとしての訓練コースをインストラクターが開発することができる。このコースは、インストラクターが送信し、後にレビューすることができる。これらの訓練生が駆動するセッションでは、訓練生がシミュレーションを開始し、シミュレーションにおける航空機の制御は、訓練端末120の一部を形成するか又は訓練端末120とインターフェースするHMIデバイス170、180、190、200を介して訓練サイト360において実行される。
【0025】
訓練サイト360は、ネットワーク130に接続される場合、同じ又は異なる訓練生サイト(複数の場合もある)に配置された複数の訓練端末120とリンクすることができる。この構成では、パイロットのチームが、協調編隊飛行をともに練習することができる。例えば、軍の飛行編隊は、今後予定された任務をシミュレーション及び練習することができる。
【0026】
図4は、パイロット訓練システム400の別の例示のアーキテクチャを示している。このシステム400は、インストラクターサイト410に配置されたインストラクター端末220と同様のインストラクター端末を備える。訓練端末120と同様に、インストラクター端末220は、シミュレーションソフトウェアのクライアントインスタンスを有することができるCPU等のコンピューター/プロセッサを備える。インストラクター端末220は、ネットワーク130を通じてシミュレーションアプリケーションサイト370におけるサーバー150に接続することができる。訓練端末120及びインストラクター端末220も、ネットワーク130を通じて接続される。したがって、インストラクターサイト410と訓練サイト360との間に双方向通信が存在する。
【0027】
インストラクター端末220は、第1のモニター420及び第2のモニター430等の複数のディスプレイを備えることができる。例えば、第1のモニター420は、タッチディスプレイを含むことができ、訓練端末上で動作しているか又はサーバー150上で動作しているかを問わずシミュレーションソフトウェアへのアクセス/制御を提供することもできるし、インストラクター端末220上で動作しているクライアントインスタンスへのアクセス/制御を提供することもできる。これによって、インストラクターは、シミュレーションの上述したような条件を設定することが可能になる。これらの条件は、特定のフライトシナリオに対する訓練生の反応を動的に試験するために、シミュレーション前に設定される場合もあるし、シミュレーション中に設定される場合もある。例えば、インストラクターは、訓練セッションの途中でエンジン故障をシミュレーションするようにシミュレーションを制御することができる。インストラクター端末220の第2のモニター430は、訓練生が自身のディスプレイ(例えば、仮想現実(VR:virtual reality)ヘッドセットデバイス)を通じてリアルタイムに見るもののビューとすることができる。代替的に又は加えて、第2のモニター430は、訓練サイト360にあるPOVカメラからの画像を示すことができる。したがって、第2のモニター430を通じて、インストラクターは、訓練生が訓練セッション中に訓練生自身の見晴らしのよい位置から見るものを見ることができる。このように、インストラクターは、インストラクターによってトリガーされる飛行条件入力(複数の場合もある)に応じて訓練生がどのように反応するのか及び取られるステップを含めて、訓練生が様々な状況にどのように応答するのかをより良く理解及び分析することができる。
【0028】
またさらに、インストラクター端末220は、訓練端末120と通信する少なくとも1つの通信デバイス440を備える。好ましくは、この通信は、ネットワーク130を通じて訓練端末120とインストラクター端末220との間の接続を介して行われる。インターネットベースのネットワークが、訓練セッション用のリモート端末(例えば、サーバー150並びに各訓練生端末120及びインストラクター端末220)の間の通信にとって好ましいネットワークである。ただし、有線又は無線とすることができる他の通信ネットワーク、例えば、セルラーネットワーク、ローカルエリアネットワーク又は他のワイドエリアネットワーク(インターネット以外)も用いることができる。訓練生端末とインストラクター端末との間のそのような通信も、ネットワーク130を介して直接行うこともできるし、シミュレーションアプリケーションサイト370におけるサーバー150を介して行うこともできる。
【0029】
一般航空パイロット及びそれ以外に高価なシミュレーターに日常的にアクセスすることができない人、すなわち飛行訓練を日常的にスケジューリングしない人等の任意のロケーションにおけるパイロットに、本明細書において論述されるシステムをアクセス可能にするために、キット110は、訓練サイト360(私邸等)に直接配達することができる。上述したように、キット110は、様々なHMIデバイスとともに訓練端末120の構成要素を備え、正式なパイロット訓練に適した現実感のある没入型仮想現実経験を提供することができる。好ましくは、キット110の全ての内容物は、機能する訓練端末120を製作し、この訓練端末をネットワーク130にリンクするためのその内容物の組み立て/設置の手引書とともに、訓練生への単一の配達可能パッケージ(例えば、単一の箱又はスーツケース)に一緒にパッケージすることができる。
【0030】
特に、キット110は、好ましくは、フルシミュレーションソフトウェアパッケージ又はそれよりも小さなシミュレーションソフトウェアパッケージのクライアントインスタンスがインストールされたCPUを備える。CPUは、サーバー150にリモート接続するネットワークアプリケーション、及び、HMIデバイス170、180、190、200とインターフェースするソフトウェア(例えば、ドライバー)も含む。HMIデバイス170、180、190、200は、CPU及びシミュレーションソフトウェア160とともにキット110の一部として供給することができる。キット110は、訓練端末とインターフェースしてシミュレーションソフトウェアに追加のコンテンツを提供することができる様々なアドオン構成要素も備えることができる。例えば、フライトシミュレーションソフトウェア内の様々な追加の気象状況を連続的に提供する気象モジュールを含めることができる。
【0031】
HMIデバイス170、180、190、200は、シミュレーションソフトウェアと訓練生との間の感覚インターフェースを提供する様々なデバイスのうちの任意のものを備え、訓練生がシミュレーションにおいて航空機を制御するための入力としての機能を果たすことができる。各HMIデバイス170、180、190、200は、訓練サイト360におけるCPUとの間でデータを受信及び/又は送信することが可能である。入力デバイス(入力デバイスにおいて、入力信号がシミュレーションの態様を変更する)の場合、HMIデバイス170、180、190、200からの信号処理が、訓練サイト360においてローカルに実行される。ただし、この信号処理は、所望される場合には、シミュレーションアプリケーションサイト370においてリモートに実行することができる。各HMIデバイス170、180、190、200からの信号は、訓練サイト360において動作するシミュレーションソフトウェアによって解釈され、シミュレーションは、それに応じて(例えば、ディスプレイを更新することによって)更新される。これらの更新は、その後、シミュレーションアプリケーションサイト370におけるサーバー150に送信することもできるし、インストラクター端末220に直接送信することもでき、任意選択で、協調シミュレーションにある他の訓練端末120に全てネットワーク130を介して送信することもできる。この例では、シミュレーション入力の処理及びシミュレーションにおけるその結果出力のレンダリングは、主として訓練サイト360(入力の発信元)において訓練端末CPUによって実行される。ただし、各サイトも、発信元の訓練サイト360からの未処理の入力信号の受信に応答して入力を独立に処理することができる。
【0032】
他の実施形態では、HMIデバイス170、180、190、200からの入力信号は、最初に、ネットワーク130を介してシミュレーションアプリケーションサイト370におけるサーバー150に送信することができる。シミュレーションソフトウェア160のサーバーインスタンスは、その後、訓練サイト360におけるHMIデバイス170、180、190、200からの信号を解釈し、次に、シミュレーションを更新することができる。その結果の出力及び情報は、その後、同じ訓練セッションに参加している他のサイトにおけるシミュレーションソフトウェアの他の全てのリモートインスタンス(例えば、インストラクター端末220及び入力信号が発生した訓練端末120)と通信することができる。システムのアーキテクチャの各サイト間の上記処理分散は静的なものとすることもできるし(すなわち、事前に構成される)、動的なものとすることもできる(すなわち、シミュレーション中に、例えば、ネットワーク条件に基づいて変化する)。手短に言えば、処理の任意の部分をシステムアーキテクチャの任意の部分にわたって分散させることができる。
【0033】
各キットのHMIデバイス170、180、190、200は、有線又は無線とすることができ、以下のものを備えることができるが、これらに限定されるものではない。
1)ディスプレイ(例えば、ヘッドマウントディスプレイ、仮想現実ヘッドセット);
2)視点(POV:point-of-view)カメラ;
3)ヨーク、スロットル、スロットルクアドラント、方向舵ペダル、ジョイスティック、ボタン、スイッチ、及び他のプッシュボタン又はトグルスイッチ/ノブ入力デバイス;
4)触覚及び他の感覚フィードバックデバイス(例えば、グローブ、ベスト);
5)可動シート(例えば、6自由度を有する);
6)通信デバイス(例えば、ディスプレイ等の他のHMIデバイスのうちの1つに組み込むことができるマイクロフォン及びスピーカー);並びに
7)眼球運動及び固定、脈拍、心拍数、体温、及び他の生理学的データの追跡及び監視等を行うセンサー。
【0034】
シミュレーションソフトウェアは、訓練生の見晴らしの利く地点からのシミュレーションの視覚表現を構成するディスプレイをリアルタイムで出力する。幾つかの実施形態では、このディスプレイは仮想現実ヘッドセットを含む。したがって、このディスプレイは、シミュレーション中の航空機コックピット内部のパイロットのビューを視覚的にシミュレーションすることができる。このディスプレイは、好ましくは、各眼について高い解像度及び高いリフレッシュレート(例えば、90Hzにおける1920×1080、4096×2160)と、大きな視野(例えば、少なくとも150度)とを有する。VRヘッドセットは、訓練生が、3次元空間を規定する3つの共通軸(X、Y及びZ)のそれぞれの回りのいずれかの方向にその頭部を動かすと、ディスプレイが更新されるように、好ましくは6自由度の動きを検出することもできる。換言すれば、訓練生は、その頭部を自然に動かすことによってコックピットを「見回す」ことができ、訓練生は、現実の飛行機コックピット内でその方向を見ている場合に通常現れるものは何でも見えることになる。例えば、訓練生の頭部が左に動くと、ディスプレイは、コックピットの左側を示すように更新される。これは、例えば、頭部運動及びヘッドセットの姿勢/方位を検出するセンサー等(例えば、ヘッドセット内に配置される)を用いて行うことができる。これらのセンサー(及び対応する出力信号)は、その後、センサーによって検出された頭部の運動に従って(例えば、ディスプレイを更新することによって)シミュレーションを更新させる、シミュレーションソフトウェアへの入力として取り扱われる。例として、ディスプレイは、OCULUS RIFT(商標)仮想現実ヘッドセット等とすることができる。
【0035】
キットは、インストラクターが、訓練生及び/又は訓練生が見るものを見ることができるように、好ましくはPOVカメラも提供する。このカメラは、訓練生の身体及び頭部の位置の画像又はビデオを撮影する実際のカメラとすることができる。これらの画像又はビデオは、その後、インストラクターサイト410における第2のモニター430にリアルタイムに送信される。POVカメラは、訓練生のディスプレイの未処理の出力をインターセプト又は別の方法でキャプチャーし、その情報をネットワーク130を介して第2のモニター430におけるディスプレイに送信することによっても実施することができる。換言すれば、第2のモニター430は、訓練生のディスプレイを単に機械的に複製するだけである。或いは、ディスプレイへのシミュレーションソフトウェアによるディスプレイ信号出力をインストラクターに直接送信することもできる。
【0036】
ヨーク、スロットルクアドラント、方向舵ペダル、ボタン、スイッチ及び同様の入力デバイス170は、コックピットにおいて見ることができる適切な又は類似の制御入力に対応することができる。好ましくは、これらの入力デバイス170は、コックピット内の類似の制御機器と同様に見えるように物理的にモデル化され、同様に応答する。頭部運動センサーについて上述したのと同様に、入力デバイス170からの出力信号は、これらの出力信号を解釈することができ、それに応じてシミュレーションを更新することができるシミュレーションソフトウェアのクライアントインスタンスに送信される。例えば、ヨークが引き戻されると、シミュレーションされた飛行機は、シミュレーションにおいて、その昇降舵操縦翼面の作動に対応して上方にピッチする。
【0037】
触覚(及び他の感覚)フィードバックデバイス180も、シミュレーション中に他のHMIデバイスとのインタラクションの実物そっくりのフィードバックを提供するためにキット110の一部として提供することができる。これらのインタラクションは、パイロット/訓練生の筋肉の記憶の確立を促進することができる。これらのフィードバックデバイスは、訓練端末120とインターフェースするキット110内の他のデバイスと独立なものとすることもできるし、他のデバイスの一部とすることもできる。例えば、触覚グローブ及び/又は他のウェアラブルは、訓練生の手が入力デバイスに触れているときに、振動を介して(例えば、圧電素子を介して)又は熱を介して(例えば、抵抗素子を介して)フィードバックを訓練生の手に提供することもできるし、仮想世界の一部として訓練生のディスプレイに表されるが、現実世界には存在しないか又は物理的な類似物を有しない、接触をシミュレーションする仮想制御入力を提供することもできる。例えば、デバイスが振動する場合、表面がざらざらしている場合、又は実際の航空機における実際の使用時に熱い場合には、これらの感覚を、触覚グローブにおける同等の感覚出力を介してシミュレーションすることができる。他の実施形態では、触覚フィードバック特徴部を他のHMI入力デバイスと統合することができる。例えば、デバイス自体が振動することもできるし、ざらざらした表面を有することもできるし、熱くなることもできるし、作動又は調整される漸増抵抗又は静抵抗の提供等をすることもできる。さらに、他の感覚フィードバックデバイスを提供することができる。例えば、嗅覚デバイスが、パイロットがシミュレーションにおける事象に対応して経験し得る臭気又は匂いを放出することができる。例えば、煙又はガソリンの匂いをエンジン故障シミュレーション中に放出して、より没入的な経験を提供することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、キット110は、シミュレーション中にシミュレーションされるコックピットの方位及び姿勢の変化をシミュレーションする可動シート200も備える。キット110に供給することができる一例示のシート200を図5に示す。シート200は、訓練セッション中に訓練生を支持するように構成されたシート支持部450を備える。シート支持部450は、訓練セッション中に現実感のある経験を更に促進するために従来のパイロットシートに類似するように構成することができる。シート支持部450はシートパン460に取り付けられる。このシートパンは、スチュアートプラットフォーム470等を通じて6自由度の全体にわたって移動及び調整されるように構成されている。油圧ジャッキ又は電動アクチュエーター等の6つのプリズムアクチュエーター480が、シートパン460の底部側の3つの位置と、基部490の上部側の3つの位置とに2つ1組で取り付けられる。アクチュエーター480の動作を通じて、シートパン460及びシート支持部450を、x軸、y軸、及びz軸(及び急上昇、ヒーブ、及びスウェイをシミュレーションするためのそれらの組み合わせ)に沿って直線移動させることができるとともに、ピッチ、ロール、及びヨーの全ての組み合わせを含めて、ピッチ、ロール、及びヨーを行うように回転移動させることができる。したがって、シート200に支持された訓練生は、任意の方向に又は任意の仮想軸の回りに定められた範囲内で回転及び並進することができる。3つの垂直(ロール、ピッチ及びヨー)軸における及びそれらの軸に沿ったそのような回転及び並進をそれに応じて組み合わせてリアルタイムフライトシミュレーション動作を再現することができることによって、訓練生のための没入型パイロット訓練経験が提供される。シート200は、シミュレーション中に、シート200が、実際のフライトに見られる実際の航空機コックピットのリアルタイムの姿勢及び運動をシミュレーションするようにシミュレーションソフトウェアと作用し合うように通信し、そのため、この経験は訓練セッション中に再現される。
【0039】
基部490は、必要に応じて、シート200の全体の高さを調整又は水平調整する調整可能な脚部500を任意選択で備えることができる。或いは、基部490は、床の上に直接載置することもできるし、訓練生サイトにおける家具(椅子又はベンチ等)に固定取り付けすることもできる。訓練端末120は、パイロット訓練システムの設置面積を更に削減するために、基部490に固定することができる。シート200は、方向舵ペダル520を支持するとともにその接続を容易にするように構成された方向舵ペダル支持部510も備える。方向舵ペダル支持部510は、第1の支持ポスト530を介してシートパン460に調整可能に接続することができるとともに、ペダル支持部510に配置された方向舵ペダル520とシート支持部450との間の距離が所望の航空機コックピットを模倣するように位置決めすることができる。方向舵ペダル520は、フライトシミュレーション用に構成された市販のフットペダルとすることができる。シートパン460は、ヨーク支持部550を調整可能に支持することができる第2の支持ポスト540を備える。したがって、フライトシミュレーターヨーク560は、所望の航空機構成を模倣する距離に位置決めすることができる。ヨーク560は、所望の航空機に類似するステアリングコラム570及びハンドル580を備える。スロットルクアドラント支持部585も、シートパン460に直接結合することができる。触覚グローブ590も示されている。図示するように、シート200は、所望のロケーションに容易に輸送及び移動することができるサイズのものであり、FAA承認済みのパイロット訓練システムの一部をなす。例えば、シート200の設置面積は、基部490並びに脚部500及びペダル支持部510によって定まる。シート200は、通常のパイロット訓練システムとともに必要とされるような大きな専用の耐久性のあるシートパンを必要としない。
【0040】
図6は、シート200のフレームを示している。シートパン460は、当該シートパンに固定された概ね水平の支持コラム又は支持ビーム600を備える。支持コラム600は、好ましくは、鋼鉄又は強度が同様の材料から作製され、所望に応じてシートパン460にボルト締め及び/又は溶接することができる。支持コラム600は、正方形又は長方形の断面を有し、対応する形状のカラー610を受けるように構成されている。カラー610は、支持コラム600の外側寸法に摺動可能及び着脱可能に係合するように適合された内部構成を有する。カラー610及び支持コラム600は、長方形又は正方形の断面のものであるので、カラー610は、支持コラム600に対して回転できないようになっている。支持コラム600及びカラー610は、様々な入力デバイスの調整可能及び着脱可能な支持を提供するために、任意の適した構成のものとすることができることが理解されるであろう。第1の支持ポスト530及び第2の支持ポスト540のそれぞれは、カラー610に固定される。したがって、ペダル支持部510、ヨーク支持部550、及びスロットルクアドラント支持部585のそれぞれは、支持コラム600、カラー610、並びに第1の支持ポスト530及び第2の支持ポスト540を介してシートパン460によって支持することができる。この構成は、シートパンに対する支持部510、550、585の容易な組み立て及び分解を可能にし、それによって、所望のロケーション(複数の場合もある)へのシート200の容易な可搬性及び輸送に役立つ。
【0041】
図7に示すように、ヨーク支持部550を軸620の回りに傾動又は回転させることができるように、ヨーク支持部550を第2の支持ポスト540に枢動可能に接続することができる。同様に、ペダル支持部を軸630の回りに傾動又は回転させることができるように、ペダル支持部510を第1の支持ポスト530に枢動可能に接続することができる。図7に詳細に示していないが、所望される場合には、スロットルクアドラント支持部585を同様に構成することができる。第1の支持ポスト530及び第2の支持ポスト540の長さは、入れ子式動作を介して調整可能とすることもできる。したがって、シート200は、所望の航空機を模倣するために十分調整可能である。所望される場合には、第1の支持ポスト530及び第2の支持ポスト540、ヨーク支持部550、ペダル支持部510、並びにスロットルクアドラント支持部585等のシート構成要素は、ユーザーがシート200を所定の設定に迅速かつ容易に調整するために、種々の共通タイプの航空機に関する様々なマーキングを含むことができる。
【0042】
アクチュエーター480に戻って、図7及び図8は、アクチュエーター480が基部490及びシートパン460にどのように結合されるのかを示している。アクチュエーター480のそれぞれは、第1の端部650及び第2の端部660を有する。アクチュエーター480の第1の端部650は、ブラケット及び/又はファスナー等を介して基部490に固定取り付けされる。したがって、アクチュエーター480の第1の端部650は、基部490に対して動かない。アクチュエーター480の第2の端部660は、シートパン460の底部側に形成又は結合される嵌合ソケット640とボールジョイントを形成するように構成されたボール端部を備える。このボールジョイントによって、任意の方向への並進を防止するとともに2つの平面内での自由回転が可能になる。並進は、アクチュエーター480の入れ子式動作によって提供される。
【0043】
したがって、シートパン460に結合されたシート支持部450は、パイロット訓練生が訓練セッションに参加したときにパイロット訓練生に現実感のある没入型経験を提供するために、ボールジョイントを介した3つの全ての運動軸に沿った回転(ロール、ピッチ、ヨー)が可能であるとともに、アクチュエーターの入れ子式動作を介してそれらの軸に沿って並進(ヒーブ、スウェイ、及び急上昇)することができる。アクチュエーターは、シミュレーションソフトウェアのクライアントインスタンスの出力によって制御される。例えば、シミュレーションにおける航空機が右にバンクするとき、アクチュエーター480は、シートパン460を右にロールさせ、したがって、シート支持部450を右にロールさせる。
【0044】
本明細書において説明したシステムは、インストラクター及び訓練生に様々な方法で配置することができる。1つの例によれば、飛行訓練会社は、シミュレーションアプリケーションサイト370(サーバー(複数の場合もある)及びサーバー上のソフトウェアを含む)と、リモート訓練生サイトにおいて訓練端末120をセットアップするためにリモート訓練生サイト360における個々の訓練生に提供又は配達することができるキット110とを所有(又はリース)及び運用することができる。通常、インストラクターは、訓練生を単に監視及び指導するだけであり、自身はフライト操作を練習しないので、没入型シミュレーション環境を生成するのに必要なフィードバックハードウェアを必要としない。したがって、訓練端末120を作製するための前述のキットのそれぞれにおけるハードウェアの全てが必要でない場合がある。ただし、CPUと、1つ以上のモニター又は他のディスプレイと、飛行条件情報を入力する入力デバイス(キーボード等)と、通信ハードウェアとを有する同様のキットを作製し、インストラクターサイト410におけるインストラクターに送ることもできる。インストラクターは、システムの一時的なユーザーである可能性は低く、代わりに、或る期間にわたって相次ぐ訓練生を継続的に指導する可能性が高いので、インストラクター端末220は、出荷可能又は輸送可能なキット110の一部として供給される訓練生端末120と同じくモジュール形式のコンパクトで容易に輸送可能なものである必要はない。
【0045】
会社と関連した飛行訓練クラスに登録された訓練生には、その後、好ましくは、上述したキット110を提供することができる。キット110は、訓練生がクラスに登録されている期間の間、訓練生にリースすることもできるし、訓練生が訓練セッションを日課として定期的に行うことを意図している場合又はシステムを用いて練習することを意図している場合には、訓練生に完全にリース又は販売することもできる。クラスが終了すると、キット110は、再パッケージされ、会社に返送される。この理由によって、訓練端末120は、繰り返される輸送のために輸送可能なキット110(例えば、荷積み可能な金属又は強いプラスチック製の再密封可能な入れ物)に容易にパッケージされることが望ましい。インストラクターにも、会社との雇用/契約によって、インストラクターサイト410に用いられるソフトウェア、コンピューター、通信及びディスプレイが提供される。この場合も、これらの要素は、完全に販売することもできるし、インストラクターが会社の指導を行っている限られた期間の間提供することもできる。
【0046】
好ましくは、インストラクターサイト410において動作するクライアントソフトウェアは、シミュレーションソフトウェアのフルインスタンスではない。すなわち、クライアントソフトウェアは、訓練端末120上又は代替的にシミュレーションアプリケーションサイト370におけるサーバー150上で動作するシミュレーションソフトウェア160との接続を伴わないスタンドアローンアプリケーションとして実行可能でない。訓練端末120は、検証ソフトウェアを用いて構成することもできる。例えば、シミュレーションソフトウェアは、実行されると、検証ソフトウェアを用いたログイン又は他の確認を必要とすることができる。これによって、会社の顧客である訓練生にのみ、訓練又はシミュレーションサービスを受ける訓練生の契約内においてその契約に従ってのみ、シミュレーションソフトウェアを提供することが確保される。同様に、シミュレーションソフトウェアの様々なインスタンスをサービスとして提供することができる(サービスとしてのソフトウェア)。別の例では、訓練サイト360において実行されるソフトウェアは、インストラクター端末のように、クライアントインスタンスとすることもできる。ここで、訓練サイト360において実行されるソフトウェアは、サーバー150によって実行されるシミュレーションとのインタラクション用の「フロントエンド」を提供するだけのものとすることができる。このように、シミュレーションの処理は、主として、シミュレーションアプリケーションサイト370におけるシミュレーションソフトウェア160によって実行される。ただし、処理能力は、ネットワーク条件(例えば、接続、帯域幅、速度等)、制御入力及びフィードバック出力をローカルに処理する望ましさ等に応じて、各サイトに動的に移すことができる。
【0047】
他の実施形態では、訓練生は、特定の時間枠の間、システムをリース又はシステムのライセンスを購入することができる。例えば、訓練生は、シミュレーションをリースすることもできるし、数カ月又は数年の期間の間システムを使用するライセンスを購入することもできる。この期間の間、シミュレーションソフトウェアは、訓練生によって自由にアクセス可能であり、キット110は、この期間中訓練生に提供される。このように、訓練生は、勤務時間外に自身のスケジュールに合わせて、シミュレーターにおいてフライトを練習することができる。
【0048】
幾つかの実施形態、例えば、軍事的利用では、複数のキット110を(例えば、海軍に)ライセンス又は販売して、複数の訓練端末120を提供することができる。(それぞれが部屋全体を占める場合がある現在のシミュレーター、又は格納庫全体を占める場合がある現実の航空機と比較して)キット110及び訓練端末120のコンパクト性に起因して、訓練端末120は、海軍艦艇内の単一の部屋等の小さなエリア内に多くを収容することができる。インストラクター端末220は、必ずしも必要とされず、所望される場合に提供することもできる。この構成を用いると、多くのパイロットが、(それぞれ艦艇上の異なる訓練端末120を用いて)シミュレーションアプリケーションサイト370とリモートで同時に接続して、例えば、特定の任務について訓練することができる。これは、乗組員が海上にいる間もシミュレーションシステムへのアクセスを提供する。
【0049】
幾つかの用途(軍隊内の大規模な配備等)については、専用サーバーを配備することが望ましい場合がある。例えば、海軍は、それ自体の使用に専用化されたサーバーを購入又はリースすることができる。そのようなサーバーは、それ自体を海軍艦艇に収容することができ、プライベートイントラネットを介して訓練端末と通信することができる。これは、シミュレーションの詳細(例えば、機密扱いになっている場合)を保護するためにプライベート通信が所望される場合に有益であり得る。これは、訓練端末が非常にリモートに配置されているために中央サーバーとの通信が(例えば、海上の船舶の船内から地上にあるサーバーサイトへの)従来の長距離通信ネットワークを介して困難な場合にも有益であり得る。
【0050】
別の用途によれば、シミュレーションアプリケーションサイト370は、リモートロケーションからの入力を受信することができる。例えば、戦場をシミュレーションして、訓練生の戦闘シミュレーションを容易にすることができる。訓練生戦闘員は、レーダー信号を送信及び受信することができ、何マイルも離れながら敵標的を識別、ロックオン、射撃、及び破壊することができる。敵及び味方の幾つかの航空機をディスプレイに示すことができ、これらの航空機は、シミュレーションされたフライトに参加している他の訓練生及び/又はインストラクターを含むことができる。戦術を分析するとともに今後のフライトシミュレーション及び任務リハーサルについて選択肢を議論することができるように、シミュレーションセッションを記録することができる。
【0051】
上記例のそれぞれは単一のシミュレーションに関するので、シミュレーションアプリケーションサイトにおけるサーバーは、複数のシミュレーションを同時に動作させることが可能であることにも留意されたい。さらに、このように、インストラクターは、積極的に複数のシミュレーションに同時に携わることも可能であり、したがって、複数のパイロットを同時に訓練することも可能である。
【0052】
本明細書で説明した実施形態は、例示の実施形態に関して説明されたものであるが、様々な変更が本開示の範囲及び趣旨内に十分含まれることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本明細書において説明した多くの例は、一般航空パイロット訓練のシステムの使用に言及している。しかしながら、このシステムは、全ての軍種及び事業用途を含む任意の適用可能分野における有人又は無人の任意の運搬手段、航空機、ドローン等のパイロット訓練に適用可能である。当業者であれば、本明細書において説明した例示の実施形態が、具体的に論述したどの用途にも限定されず、本明細書において説明した実施形態が例示であって、限定ではないことを理解するであろう。例示の実施形態の説明から、それらの実施形態において示した要素の均等物が当業者に連想され、本開示を用いて他の実施形態を構築する方法が当該技術の実践者に連想される。したがって、例示の実施形態の範囲は、本明細書に限定されるものではない。本開示は、本明細書に開示された、又は、必要以上の実験を行うことなく当業者によって本明細書から確かめられるそのような全ての変更及び改変を含むように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8