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特許7298939高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材及びその製造方法
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  • 特許-高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/52 20060101AFI20230620BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C23C18/52 A
C23C18/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021124627
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2022034528
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】202010834712.9
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】陳▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】肖寧
(72)【発明者】
【氏名】喬永強
(72)【発明者】
【氏名】宋玉柱
(72)【発明者】
【氏名】施耐克
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008337(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104775045(CN,A)
【文献】特開平01-108383(JP,A)
【文献】特公昭45-040401(JP,B1)
【文献】特開平06-116735(JP,A)
【文献】Phase transformation and thermal expansion of Cu/ZrW2O8 metal matrix composites,Journal of Materials Research,英国,1999年,Vol.14,No.3,p.780-789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/52
C23C 18/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負熱膨張特性を持つ補強体と銅基体とを用い、銅めっき被覆の方法で製造され、
前記した負熱膨張特性を持つ補強体はScF3粒子であり、
Cu基体とScF3粒子補強体とのモル比が0.5~22:1であることを特徴とする、高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材の製造方法であって、
前記複合材は銅めっき被覆の方法で製造され、
前記した負熱膨張特性を持つ補強体粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うS201と、
前処理された補強体粒子を化学銅めっき液に入れて化学銅めっき被覆を施すように反応させ、ただし、反応温度を20~60℃、反応時間を0.5~5h、反応溶液のpHを9~13とするS202と、
ステップS202で製造された銅被覆・負熱膨張複合粉体を400~900℃で焼結し、最終的に前記高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材が得られるS203と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
ステップS201中の前記した負熱膨張特性を持つ補強体粒子の粒径範囲が0.1~100μmであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップS201中の前記粗化という前処理に関する粗化温度が20~100℃であり、粗化時間が5~30minであり、粗化液が塩酸やフッ化水素酸と脱イオン水とを体積比1:0~20で配合したものであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップS201中の前記増感,活性化という前処理に一段階活性化法や多段階活性化法が採用され、ただし、一段階活性化法中の増感/活性化液が5~30g/Lの塩化第一スズやその水和物,10~60mL/Lの塩酸溶液,0.1~2g/Lの塩化パラジウム及び60~160g/Lの塩化ナトリウムを配合したものであり、増感/活性化温度が20~60℃であり、増感/活性化時間が5~30minであり、多段階活性化法中の増感という前処理に関する増感温度が20~60℃であり、増感時間が5~30minであり、増感液が5~30g/Lの塩化第一スズやその水和物及び10~40mL/Lの塩酸溶液を配合し、あるいは、20~40g/Lの次亜リン酸塩を配合したものであり、活性化という前処理に関する活性化温度が20~60℃であり、活性化時間が5~30minであり、活性化液が1~10g/Lの硝酸銀や炭酸銀及び5~20ml/Lのアンモニア水溶液を配合し、あるいは、0.1~2g/Lの塩化パラジウム及び10~40mL/Lの塩酸溶液を配合したものであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップS202中の前記化学銅めっき液では、銅塩が硫酸銅,塩化銅,硝酸銅及びその水和物の一つ又は複数であり、銅塩の濃度が10~30g/Lであり、錯化剤がクエン酸,クエン酸塩,酒石酸,可溶性酒石酸塩,エチレンジアミン四酢酸,可溶性エチレンジアミン四酢酸塩の一つ又は複数であり、錯化剤と銅イオンとのモル比1~2.5:1で錯化剤を配合し、還元剤がホルムアルデヒド,次亜リン酸塩,水素化ホウ素ナトリウム,ヒドラジン,アンモニアボラン,低原子価金属塩,糖の一つ又は複数であり、ただし、ホルムアルデヒドの濃度が10~25mL/Lに制御され、次亜リン酸塩の濃度が20~50g/Lに制御されることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属基複合材及びその製造の分野に属し、特に、完全緻密かつ高熱伝導で-160~400℃の範囲において使用できる一連の熱膨張調節可能な銅基・負熱膨張粒子補強複合材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱による膨張収縮は物質の基本的な物性の一つであることがよく知られている。しかし、材料の熱による膨張収縮が生じると、精密部品の構造安定性や安全信頼性が低下し、材料の機能特性を低減させか損なうことが発生してしまう。ゼロ熱膨張材料は外観や寸法が外部環境の温度変化に影響されず又はその影響が小さいため、一部の電子デバイスや精密機械等の高度技術の分野に使用可能である。また、高熱伝導と低熱膨張を兼ね備える材料は種々のマイクロ波デバイスやマイクロ電子デバイス,パワーデバイス,光電デバイスのパッケージングと組立てに関する熱管理への要求を満たし得る。
【0003】
近年、航空宇宙や新エネルギ自動車,マイクロ電子パッケージング,精密機械などの高度技術の発展に従って、ゼロ熱膨張や低熱膨張材料への需要が増大して来ている。どのように材料の熱膨張挙動を調節してその熱的性能を各分野での要求を満たさせることは、重要な応用価値と意義を表している。金属基複合材は基体材料の優れた性能を発揮できるばかりか、補強体の特性をも生かしている。このため、負熱膨張特性を持つセラミック材と高熱伝導性を持つ金属材とを複合させることで、高熱伝導率と熱膨張調節可能の特性を兼ね備える新規な機能材料を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料の熱による膨張収縮に起因して精密機械の寸法及び構造の安定性が低下する問題を解決し、及び、種々のマイクロ波デバイスやマイクロ電子デバイス,パワーデバイス,光電デバイスのパッケージングと組立てに関する熱管理材料への需要を満たすために、金属材とセラミック材の特性を結びつけることで、高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材及びその製造方法を本発明は提案し、完全緻密かつ高熱伝導で、より広い温度範囲で熱膨張調節可能の特性を持つ銅基複合材を製造できた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一方では、本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材、つまり、Cu基体と負熱膨張特性を持つ補強体を一定のモル比範囲にて用い、直接複合又は銅めっき被覆の方法で製造したものを提案する。
【0006】
好ましくは、前記銅基複合材は、負熱膨張特性を持つ補強体であるScF基材料,Cu基材料,PbTiO-ABO固溶体材料,Sc12基材料,TaVO基材料,NbVO基材料,CaZrF基材料,RFe14B基材料,RFe17基材料,RFe基材料,RCo基材料,CrAs基材料,MnCoGe基材料,CaRuO基材料の一つ又は複数と、残部となる銅基体とを用い、直接複合又は銅めっき被覆の方法で製造したものであり、補強体が前記した負熱膨張特性を持つ一つ又は複数のものに限らず、ただし、前記PbTiO-ABO固溶体材料におけるAがCa,Bi,La,Sr,Cdから選ばれ、BがFe,Hf,Mg,Nb,Scから選ばれ、前記RFe14B基材料におけるRがNb,Er,Y,Th,Tb,Dy,Lu,Ceから選ばれ、前記RFe17基材料におけるRがY,Gd,Er,Tm,Tb,Dy,Hoから選ばれ、前記RFe基材料におけるRがHf,Zr,Nb,Ta,Ti,Hoから選ばれ、前記RCo基材料におけるRがY,Nd,Gd,Er,Dy,Hoから選ばれる。
【0007】
好ましくは、前記銅基複合材では、Cu基体とScF粒子補強体とのモル比が0.5~22:1であり、Cu基体とCu粒子補強体とのモル比が1~41:1であり、Cu基体と(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子補強体とのモル比が0.5~21:1であり、Cu基体と0.5PbTiO-0.5BiFeO粒子補強体とのモル比が0.5~23:1であり、Cu基体とSc12粒子補強体とのモル比が3~105:1であり、Cu基体とTaVO粒子補強体とのモル比が1~39:1であり、Cu基体とErFe14B粒子補強体とのモル比が2~77:1であり、Cu基体とHf0.875Nb0.125Fe粒子補強体とのモル比が0.4~16:1である。
【0008】
他方では、本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材の製造方法を提案し、前記複合材は直接複合の方法で製造され、その製造方法は、
前記負熱膨張の補強体粒子とCu基体粒子を前記モル比で0.5h以上磨砕して十分に混合させるS101と、
ステップS101で製造された複合粉体を400~900℃で焼結し、最終的に前記高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材が得られるS102と、
を含む。
【0009】
さらには、ステップS101中の前記補強体の粒径範囲が0.1~100μmであり、前記Cu基体粒子の粒径範囲が0.5~100μmであり、前記磨砕時間が0.5h以上である。
【0010】
もう一方では、本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材の製造方法を提案し、前記複合材は銅めっき被覆の方法で製造され、その製造方法は、
前記負熱膨張の補強体粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うS201と、
前処理された負熱膨張の補強体粒子を化学銅めっき液に入れて化学銅めっき被覆を施すように反応させ、ただし、反応温度を20~60℃、反応時間を0.5~5h、反応溶液のpHを9~13とするS202と、
ステップS202で製造された銅被覆・負熱膨張複合粉体を400~900℃で焼結し、最終的に前記高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材が得られるS203と、
を含む。
【0011】
さらには、上記方法のステップS201中の前記負熱膨張の補強体粒子の粒径範囲が0.1~100μmである。
【0012】
さらには、上記方法のステップS201中の前記粗化という前処理に関する粗化温度が20~100℃であり、粗化時間が5~30minであり、粗化液が塩酸やフッ化水素酸等の強酸溶液と脱イオン水とを体積比1:0~20で配合したものである。
【0013】
さらには、上記方法のステップS201中の前記増感,活性化という前処理に一段階活性化法や多段階活性化法が採用され、ただし、一段階活性化法中の増感/活性化液が5~30g/Lの塩化第一スズやその水和物,10~60mL/Lの塩酸溶液,0.1~2g/Lの塩化パラジウム及び60~160g/Lの塩化ナトリウムを配合したものであり、増感/活性化温度が20~60℃であり、増感/活性化時間が5~30minであり、多段階活性化法中の増感という前処理に関する増感温度が20~60℃であり、増感時間が5~30minであり、増感液が5~30g/Lの塩化第一スズやその水和物及び10~40mL/Lの塩酸溶液を配合し、あるいは、20~40g/Lの次亜リン酸塩を配合したものであり、活性化という前処理に関する活性化温度が20~60℃であり、活性化時間が5~30minであり、活性化液が1~10g/Lの硝酸銀や炭酸銀及び5~20ml/Lのアンモニア水溶液を配合し、あるいは、0.1~2g/Lの塩化パラジウム及び10~40mL/Lの塩酸溶液を配合したものである。
【0014】
さらには、上記方法のステップS202中の前記化学銅めっき液では、銅塩が硫酸銅,塩化銅,硝酸銅及びその水和物の一つ又は複数であり、銅塩の濃度が10~30g/Lであり、錯化剤がクエン酸,クエン酸塩,酒石酸,可溶性酒石酸塩,エチレンジアミン四酢酸,可溶性エチレンジアミン四酢酸塩の一つ又は複数であり、錯化剤と銅イオンとのモル比1~2.5:1で錯化剤の濃度を配合し、還元剤がホルムアルデヒド,次亜リン酸塩,水素化ホウ素ナトリウム,ヒドラジン,アンモニアボラン,低原子価金属塩,糖の一つ又は複数であり、ただし、ホルムアルデヒドの濃度が10~25mL/Lに制御され、次亜リン酸塩の濃度が20~50g/Lに制御される。
【0015】
銅めっき被覆の方法によれば、負熱膨張粒子とCu基体との化学的適合性及び界面の湿潤状況を改善でき、複合材の緻密度と熱伝導率を一層向上させることは了解されたい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は金属材とセラミック材の特性に着目して、高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材及びその製造方法を提案するものであり、二つの材料の相補的な特性を活用して製造した銅基複合材は完全緻密かつ高熱伝導で、温度領域が広く、熱膨張調節可能などの特性を持ち、チップ材料と協働可能になるとともに、良好な導電性と熱伝導性を示している。そのうち、モル比2.99:1のCu/0.5PbTiO-0.5BiFeO銅基・粒子補強複合材は150~400℃の温度領域で平均熱膨張係数が0.8×10-6/Kであり、室温熱伝導率が60W/m・Kに達している。モル比1~6:1のCu/ScF銅基・粒子補強複合材は-50~400℃の温度領域で平均熱膨張係数が-0.5×10-6/K~7×10-6/Kであり、室温熱伝導率が40~190W/m・Kに達している。これらの材料は航空宇宙やマイクロ電子デバイス,精密機械等の分野に使用でき、寸法と構造の安定性を効果的に保ち、材料の熱的不整合や高熱伝導率という問題を解決した。
【0017】
本発明の実施例による解決手段をより明瞭に説明するために、実施例の説明に必要な図面を以下で簡単に紹介するが、以下の説明にかかる図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を投じることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例5にかかる化学銅めっき処理を行った(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子のSEM写真である。
図2】本発明の実施例1~3にかかる銅基ScF粒子補強複合材サンプルのXRD回折図である。
図3】本発明の実施例1~3にかかる銅基ScF粒子補強複合材サンプル及びCuとScFの熱膨張曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的や解決手段及び利点をより明らかにするため、図面及び具体的な実施例に合わせて本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材、つまり、Cu基体と負熱膨張特性を持つ補強体を一定のモル比範囲にて用い、直接複合又は銅めっき被覆の方法で製造したものを提案する。
【0021】
好ましくは、前記銅基複合材は、負熱膨張特性を持つ補強体であるScF基材料,Cu基材料,PbTiO-ABO固溶体材料,Sc12基材料,TaVO基材料,NbVO基材料,CaZrF基材料,RFe14B基材料,RFe17基材料,RFe基材料,RCo基材料,CrAs基材料,MnCoGe基材料,CaRuO基材料の一つ又は複数と、残部となる銅基体とを用い、直接複合又は銅めっき被覆の方法で製造したものであり、補強体が前記した負熱膨張特性を持つ一つ又は複数のものに限らず、ただし、前記PbTiO-ABO固溶体材料におけるAがCa,Bi,La,Sr,Cdから選ばれ、BがFe,Hf,Mg,Nb,Scから選ばれ、前記RFe14B基材料におけるRがNb,Er,Y,Th,Tb,Dy,Lu,Ceから選ばれ、前記RFe17基材料におけるRがY,Gd,Er,Tm,Tb,Dy,Hoから選ばれ、前記RFe基材料におけるRがHf,Zr,Nb,Ta,Ti,Hoから選ばれ、前記RCo基材料におけるRがY,Nd,Gd,Er,Dy,Hoから選ばれる。
【0022】
好ましくは、前記銅基複合材では、Cu基体とScF粒子補強体とのモル比が0.5~22:1であり、Cu基体とCu粒子補強体とのモル比が1~41:1であり、Cu基体と(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子補強体とのモル比が0.5~21:1であり、Cu基体と0.5PbTiO-0.5BiFeO粒子補強体とのモル比が0.5~23:1であり、Cu基体とSc12粒子補強体とのモル比が3~105:1であり、Cu基体とTaVO粒子補強体とのモル比が1~39:1であり、Cu基体とErFe14B粒子補強体とのモル比が2~77:1であり、Cu基体とHf0.875Nb0.125Fe粒子補強体とのモル比が0.4~16:1である。
【0023】
本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材の製造方法をさらに提案し、この製造方法は、
前記負熱膨張の補強体粒子とCu基体粒子を前記モル比で0.5h以上磨砕して十分に混合させるステップS101と、
ステップS101で製造された複合粉体を400~900℃で焼結し、最終的に前記高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材が得られるステップS102と、
を含む。
【0024】
本発明は高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材の製造方法をさらに提案し、化学銅めっきプロセスでCu被覆・負熱膨張粒子複合材を製造するので、負熱膨張粒子とCu基体との化学的適合性及び界面の湿潤状況を改善して、複合材の緻密度と熱伝導率を一層向上させており、この製造方法はステップS201~ステップS203を含む。
【0025】
ステップS201として、前記負熱膨張の補強体粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行う。
【0026】
そのうち、粗化液は質量分率37%の塩酸と脱イオン水とを体積比1:5で配合したものであり、増感液は5~30g/Lの塩化第一スズ及び10~40mL/Lの塩酸溶液を配合したものであり、活性化液は1~10g/Lの硝酸銀及び5~20ml/Lのアンモニア水溶液を配合したものである。
【0027】
ステップS202として、前処理された負熱膨張の補強体粒子を化学銅めっき液に入れて化学銅めっき被覆を施すように反応させ、ただし、反応温度を20~60℃、反応時間を0.5~5h、反応溶液のpHを9~13とする。
【0028】
そのうち、化学銅めっき液の成分は10~30g/Lの硫酸銅五水和物,20~30g/Lのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム,5~15g/Lの酒石酸カリウムナトリウム四水和物,10~25mL/Lのホルムアルデヒド,0~0.05g/Lの2,2’-ビピリジン,0~0.05g/Lのフェロシアン化カリウムを含む。
【0029】
ステップS203として、ステップS202で製造された銅被覆・負熱膨張複合粉体を400~900℃で焼結し、最終的に前記高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材が得られる。
【0030】
図1は化学銅めっきを行った(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子のSEM写真である。この図から分かるように、負熱膨張粒子について化学銅めっき処理を行った場合、めっき液中のCu元素は原子クラスタとして負熱膨張粒子の表面に均一に堆積し、緻密な銅めっき層が出来る。
【0031】
図2から示されるように、高熱伝導・熱膨張調節可能な銅基複合材サンプルのXRD回折図にはCuとScFの回折特性ピークのみあり、他の物質相の回折ピークが見られないながら、すべてのサンプルは回折ピークの位置が一致しており、異なるモル比では二つの物質の回折特性ピークの強度のみに影響をもたらした。以上から、CuとScFを混合して700℃で焼結した場合、置換反応が発生しなくて新しい物質相も生成せず、物質組成が安定的で他の不純物を含まないCu/ScF複合材が得られることが分かる。
【0032】
図3は異なるモル比のCu/ScF複合材サンプル,Cu及びScFの熱膨張曲線である。この図から分かるように、モル比1.36:1のCu/ScF複合サンプルは熱膨張係数が温度に従って小さく変化し、-50~400℃の温度範囲で平均熱膨張係数が-0.59×10-6/Kであり、ゼロ熱膨張という材料特性を持っている。モル比2.33:1のCu/ScF複合サンプルは-50~400℃の温度範囲で平均熱膨張係数が2.02×10-6/Kであり、熱膨張調節可能という材料特性を持っている。モル比3.63:1のCu/ScF複合サンプルは-50~400℃の温度範囲で平均熱膨張係数が4.46×10-6/Kであり、低熱膨張という材料特性を持ち、チップ材料と協働できる熱膨張となる。本発明によるCu/ScF複合材はCuとScFの二つの材料の長所を十分に結びつけて、-50~400℃の温度範囲において高熱伝導と熱膨張調節可能の効果を達成している。
【0033】
本発明の実施形態をよりよく説明するために、いくつかの具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
実施例1
本実施例は高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
ScF粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS211と、
前処理されたScF粉体をCu/ScFというモル比1.36:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃前後に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を10前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を0.5時間行うステップS212と、
ステップS212で製造された銅被覆ScF複合粉体を700℃で焼結し、最終的に高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材が得られるステップS213と、
を含む。
【0035】
テストを行ったところ、このサンプルは-50~400℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が-0.59×10-6/Kであり、室温熱伝導率が44W/m・Kに達している。
【0036】
実施例2
本実施例は高熱伝導・ニアゼロ熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
ScF粉体に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS221と、
前処理されたScF粉体をCu/ScFというモル比2.33:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を10前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1時間行うステップS222と、
ステップS222で製造された銅被覆ScF複合粉体を700℃で焼結し、最終的に高熱伝導・ニアゼロ熱膨張の銅基複合材が得られるステップS223と、
を含む。
【0037】
テストを行ったところ、このサンプルは-50~400℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が2.02×10-6/Kであり、室温熱伝導率が90W/m・Kに達している。
【0038】
実施例3
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
ScF粉体に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS231と、
前処理されたScF粉体をCu/ScFというモル比3.63:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を10前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1.5時間行うステップS232と、
ステップS232で製造された銅被覆ScF複合粉体を700℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS233と、
を含む。
【0039】
テストを行ったところ、このサンプルは-50~400℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が4.46×10-6/Kであり、室温熱伝導率が136W/m・Kに達している。
【0040】
実施例4
本実施例は高熱伝導・ニアゼロ熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
モル比2.33:1のCu基体粒子とScF粉体を0.5h以上磨砕して十分に混合させるステップS141と、
製造された複合粉体を700℃で焼結し、最終的に高熱伝導・ニアゼロ熱膨張の銅基複合材が得られるステップS142と、
を含む。
【0041】
テストを行ったところ、このサンプルは-50~400℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が2.81×10-6/Kであり、室温熱伝導率が52W/m・Kに達している。
【0042】
実施例5
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
Cu粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS251と、
前処理されたCu粒子をCu/Cuというモル比2.54:1で化学銅めっき液に入れ、温度を55℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を13前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1時間行うステップS252と、
ステップS252で製造された銅被覆Cu複合粉体を500℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS253と、
を含む。
【0043】
テストを行ったところ、このサンプルは-160~50℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が4.25×10-6/Kであり、室温熱伝導率が84W/m・Kに達している。
【0044】
実施例6
本実施例は高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS261と、
前処理された(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子をCu/(Pb0.7Ca0.3)TiO粒子というモル比1.28:1で化学銅めっき液に入れ、温度を60℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を11前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を0.5時間行うステップS262と、
ステップS262で製造された銅被覆(Pb0.7Ca0.3)TiO複合粉体を500℃で焼結し、最終的に高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材が得られるステップS263と、
を含む。
【0045】
テストを行ったところ、このサンプルは-160~80℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が0.28×10-6/Kであり、室温熱伝導率が42W/m・Kに達している。
【0046】
実施例7
本実施例は高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
0.5PbTiO-0.5BiFeO粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS271と、
前処理された0.5PbTiO-0.5BiFeO粒子をCu/0.5PbTiO-0.5BiFeOというモル比2.99:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を12前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1.5時間行うステップS272と、
ステップS272で製造された銅被覆0.5PbTiO-0.5BiFeO複合粉体を900℃で焼結し、最終的に高熱伝導・ゼロ熱膨張の銅基複合材が得られるステップS273と、
を含む。
【0047】
テストを行ったところ、このサンプルは150~400℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が0.8×10-6/Kであり、室温熱伝導率が60W/m・Kに達している。
【0048】
実施例8
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
Sc12粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS281と、
前処理されたSc12粒子をCu/Sc12というモル比17.4:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を12前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1.5時間行うステップS282と、
ステップS282で製造された銅被覆Sc12複合粉体を700℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS283と、
を含む。
【0049】
テストを行ったところ、このサンプルは25~300℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が4.45×10-6/Kであり、室温熱伝導率が158W/m・Kに達している。
【0050】
実施例9
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
TaVO粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS291と、
前処理されたTaVO粒子をCu/TaVOというモル比6.37:1で化学銅めっき液に入れ、温度を60℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を12前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1.5時間行うステップS292と、
ステップS292で製造された銅被覆TaVO複合粉体を800℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS293と、
を含む。
【0051】
テストを行ったところ、このサンプルは25~600℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が7.0×10-6/Kであり、室温熱伝導率が126W/m・Kに達している。
【0052】
実施例10
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
ErFe14B粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS2101と、
前処理されたErFe14B粒子をCu/ErFe14Bというモル比8.20:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を12前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1時間行うステップS2102と、
ステップS2102で製造された銅被覆ErFe14B複合粉体を450℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS2103と、
を含む。
【0053】
テストを行ったところ、このサンプルは30~200℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が6.81×10-6/Kであり、室温熱伝導率が45W/m・Kに達している。
【0054】
実施例11
本実施例は高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材の製造方法を提供し、この製造方法は、
Hf0.875Nb0.125Fe粒子に対して化学粗化,増感,活性化の順に前処理を行うステップS2111と、
前処理されたHf0.875Nb0.125Fe粒子をCu/Hf0.875Nb0.125Feというモル比1.61:1で化学銅めっき液に入れ、温度を50℃に制御し、そしてめっき液にNaOH溶液を加えてめっき液のpH値を12前後に安定させ、化学銅めっき被覆を施すように化学反応を1時間行うステップS2112と、
ステップS2112で製造された銅被覆Hf0.875Nb0.125Fe複合粉体を500℃で焼結し、最終的に高熱伝導・低熱膨張の銅基複合材が得られるステップS2113と、
を含む。
【0055】
テストを行ったところ、このサンプルは-10~60℃の温度領域で複合材の平均熱膨張係数が2.9×10-6/Kであり、室温熱伝導率が36W/m・Kに達している。
【0056】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神と原則の範囲においてなされたあらゆる変更,等価取替,改良等は本発明の保護範囲に含まれるはずである。
図1
図2
図3