(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】液体塗布具
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230620BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61M37/00 514
A61M35/00 Z
(21)【出願番号】P 2022185759
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2021209700の分割
【原出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義浩
(72)【発明者】
【氏名】日隈 薫
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/006409(WO,A1)
【文献】特開2017-038781(JP,A)
【文献】特開2013-094224(JP,A)
【文献】特表2016-518932(JP,A)
【文献】特表2003-513729(JP,A)
【文献】特表平03-505045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する内部空間を有する軸部と、
貫通孔を有するマイクロニードル部と、
前記貫通孔から前記液体を吐出させる吐出部と、を有し、
前記マイクロニードル部は、前記貫通孔を有する複数の第1マイクロニードルと、
中実である複数の第2マイクロニードルと、を有し、
2つの前記第1マイクロニードルの間には、少なくとも1つの前記第2マイクロニードルが設けられており、
前記貫通孔は、前記第1マイクロニードルの先端が開口し、前記内部空間と連通し、
前記マイクロニードル部は、筒状の側壁部と、前記側壁部に接続された底部と、を有する筒状の本体部を有し、
前記底部と前記側壁部とは一体的に形成され、
前記第1マイクロニードル及び前記第2マイクロニードルは、前記底部に設けられて
おり、
前記軸部の中心軸に沿った視野において、前記第2マイクロニードルの前記底部側の下端は、前記第1マイクロニードルの前記底部側の下端よりも小さい液体塗布具。
【請求項2】
前記マイクロニードル部は、前記軸部の中心軸に沿った視野において、1つの前記第1マイクロニードルと、前記第1マイクロニードルと隣り合う3以上の前記第2マイクロニードルと、で構成されるマイクロニードル群を有し、
前記マイクロニードル群において、3以上の前記第2マイクロニードルは、前記第1マイクロニードルの周囲を取り囲む請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記マイクロニードル群において、前記第1マイクロニードルから3以上の前記第2マイクロニードルまでのそれぞれの距離が等しい請求項2に記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記マイクロニードル部は、前記軸部の中心軸に沿った視野において、前記中心軸と同心に設定された複数の領域を有し、
前記複数の第1マイクロニードルは、2つの前記領域に挟まれた円環状領域において周方向に配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【請求項5】
前記複数の第1マイクロニードルは、周方向において等角度間隔に設けられている請求項4に記載の液体塗布具。
【請求項6】
2つの前記第1マイクロニードルの間の距離が1.0mm以上10mm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【請求項7】
前記貫通孔の直径が50μm以上300μm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【請求項8】
前記マイクロニードル部は、底部を有する筒状の本体部を有し、
前記第1マイクロニードル及び前記第2マイクロニードルは、前記底部に設けられている請求項1から7のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【請求項9】
前記マイクロニードル部は、前記本体部を介して前記軸部と着脱自在に設けられている請求項8に記載の液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「マイクロニードル」と呼ばれる微細な針を用い、経皮的に薬剤等を投与する器具が知られている。マイクロニードルは、直径や長さが1mm未満(μmオーダー)の針である。
【0003】
上述のような器具として、生体内で溶解する高分子と、投与対象の機能性材料とを含有するマイクロニードルを有するマイクロニードルシート貼付剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の貼付剤は、皮膚に穿刺されたマイクロニードルが生体内で溶解することで、マイクロニードルを構成する機能性材料を皮膚内に投与することができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の貼付剤は、マイクロニードルが生体内で溶解するまでの間、長時間皮膚に貼り付けておく必要がある。そのため、貼り付けた箇所の皮膚がかぶれるおそれがあった。
【0005】
この課題に対し、発明者らは、マイクロニードルを有する液体塗布具を開発している(特許文献2参照)。特許文献2に記載の液体塗布具では、スイッチ機構に連動して定量の液体を吐出可能であり、所望の位置に簡単な操作で液体を浸透させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-94414号公報
【文献】国際公開第2021/177318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の液体塗布具では、微小突起(マイクロニードル)を有する吐出部を介して、液体を吐出している。皮膚の所望の位置に液体を浸透させるという目的に照らした場合、マイクロニードルの周辺の構成には未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、マイクロニードルを採用し、皮膚の所望の位置に容易に液体を浸透させることが可能な新規な液体塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0010】
[1]液体を収容する内部空間を有する軸部と、前記内部空間に連通する貫通孔を有するマイクロニードル部と、前記貫通孔から前記液体を吐出させる吐出部と、を有し、前記マイクロニードル部は、前記貫通孔を有する複数の第1マイクロニードルと、前記第1マイクロニードルよりも小さい複数の第2マイクロニードルと、を有し、2つの前記第1マイクロニードルの間には、少なくとも1つの前記第2マイクロニードルが設けられている液体塗布具。
【0011】
[2]前記マイクロニードル部は、前記軸部の中心軸に沿った視野において、1つの前記第1マイクロニードルと、前記第1マイクロニードルと隣り合う3以上の前記第2マイクロニードルと、で構成されるマイクロニードル群を有し、前記マイクロニードル群において、3以上の前記第2マイクロニードルは、前記第1マイクロニードルの周囲を取り囲む[1]に記載の液体塗布具。
【0012】
[3]前記マイクロニードル群において、前記第1マイクロニードルから3以上の前記第2マイクロニードルまでのそれぞれの距離が等しい[2]に記載の液体塗布具。
【0013】
[4]前記マイクロニードル部は、前記軸部の中心軸に沿った視野において、前記中心軸と同心に設定された複数の領域を有し、前記複数の第1マイクロニードルは、2つの前記領域に挟まれた円環状領域において周方向に配置されている[1]から[3]のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【0014】
[5]前記複数の第1マイクロニードルは、周方向において等角度間隔に設けられている[4]に記載の液体塗布具。
【0015】
[6]2つの前記第1マイクロニードルの間の距離が1.0mm以上10mm以下である[1]から[5]のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【0016】
[7]前記貫通孔の直径が50μm以上300μm以下である[1]から[6]のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【0017】
[8]前記マイクロニードル部は、底部を有する筒状の本体部を有し、前記第1マイクロニードル及び前記第2マイクロニードルは、前記底部に設けられている[1]から[7]のいずれか1項に記載の液体塗布具。
【0018】
[9]前記マイクロニードル部は、前記本体部を介して前記軸部と着脱自在に設けられている[8]に記載の液体塗布具。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マイクロニードルを採用し、皮膚の所望の位置に容易に液体を浸透させることが可能な新規な液体塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態の液体塗布具1の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、マイクロニードル部20の概略断面図である。
【
図3】
図3は、マイクロニードル部20のマイクロニードルを説明する概略断面図である。
【
図4】
図4は、軸部の中心軸Cに沿った視野におけるマイクロニードル部20の概略図である。
【
図5】
図5は、軸部の中心軸Cに沿った視野におけるマイクロニードル部20の概略図である。
【
図6】
図6は、中心軸Cに沿った仮想平面における液体塗布具1の概略断面図である。
【
図7】
図7は、液体塗布具1の先端部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図7を参照しながら、本実施形態に係る液体塗布具について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0022】
図1は、本実施形態の液体塗布具1の概略斜視図である。液体塗布具1は、軸部10と、マイクロニードル部20と、吐出部30と、を有している。液体塗布具1は、肌(皮膚)の所望の位置に液体Lを塗布するために用いる。
【0023】
軸部10は、筒状の軸部本体11を有する。軸部本体11は、筒状の第1部材111と、第1部材111よりも小径の筒状の第2部材112とが連通して一体となった部材である。軸部10は、液体Lを収容する内部空間ISを有する。
図1では、軸部10を円筒状の部材として示しているが、これに限らず、楕円筒状であってもよく、角筒状であってもよい。また、軸部10は、一部において周方向に凹部(くびれ)を有するなど、外径が変化をしてもよい。
【0024】
軸部10は、高分子を材料としてもよく、金属を材料としてもよい。また、軸部10は、一部が光透過性を有していてもよい。軸部10において、内部空間ISに対応する位置が光透過性を有していると、収容されている液体Lの残量が確認しやすく好ましい。
【0025】
液体Lは、軸部10の内部に直接収容してもよく、液体Lを収容したカートリッジ(不図示)を軸部10の内部に収容してもよい。前者の場合、内部空間ISは軸部10の内部に直接設定される。後者の場合、内部空間ISは、カートリッジにおいて液体Lを収容する空間を指す。
【0026】
マイクロニードル部20は、軸部10の第1の端部(第2部材112側の端部)に設けられている。マイクロニードル部20は、内部空間ISに連通する貫通孔(
図2参照)を有し、貫通孔を介して内部空間ISに収容している液体Lを吐出する。マイクロニードル部20の構成については、後に詳述する。
【0027】
吐出部30は、マイクロニードル部20の貫通孔から液体Lを吐出させる機能を有する。吐出部30は、軸部10の第2の端部(第1部材111側の端部)に設けられたボタン31と、内部空間ISに収容されたピストン32と、ピストン32に接続されたシャフト33とを有している。その他、吐出部30は、軸部10に収容された定量移動部(不図示)を有する。
【0028】
吐出部30は、使用者がボタン31を押下することで、押下回数ごとにシャフト33をピストン32側に一定量移動させる。ピストン32はシャフト33に押し出され、内部空間ISをマイクロニードル部20の側に移動する。このとき、吐出部30は、不図示の定量移動部により、押下回数ごとに一定量だけピストン32を移動させる。これにより、吐出部30は、使用者がボタン31を押下することによりピストン32を移動させ、ピストン32により内部空間ISに収容された液体Lをマイクロニードル部20の貫通孔から押し出す(吐出する)。
【0029】
ピストン32は、円筒状の本体321と、本体321のマイクロニードル部20側に設けられた凸部322とを有する。凸部322は、本体321よりも小径であり、マイクロニードル部20側に外径が漸減する円錐台状である。
【0030】
ピストン32は、弾性材料を形成材料とすると好ましい。ピストン32は、少なくとも、内部空間ISに面する軸部10の内壁に接する部分が弾性材料で構成されているとよい。弾性材料としては、公知の合成ゴムを使用することができる。
【0031】
定量移動部は、例えば、公知のノック式のメカニカルペンシルと同様に、ボタン31を押下することによりシャフト33を一定量前進させる構成を採用することができる。
図1では、ボタン31が軸部10の第2の端部に設けられることとしたが、これに限らず、軸部10の側面に設けられる構成(いわゆるサイドノック式)であってもよい。
【0032】
その他、吐出部30は、公知の回転式(スクリュー式)のメカニカルペンシルと同様に、ボタン31を軸部10の周方向に回転させることで、シャフト33を繰り出す定量移動部を採用してもよい。
【0033】
さらに、吐出部30は、液体Lを定量で吐出させることなく、ボタン31の押し込み量により、使用者が液体Lの吐出量を調製可能としてもよい。
【0034】
その他、液体塗布具1は、マイクロニードル部20を保護する保護キャップ50を有する。
【0035】
図2は、液体塗布具1の先端の詳細構成を示す概略断面図である。
【0036】
軸部10は、軸部本体11と、内管12と、アダプタ13とを有する。
【0037】
内管12は、軸部本体11の第2部材112の内部に収容された管状の部材であり、第1部材111の内部空間である内部空間IS1と連通している。内管12は、主管121と、主管121の端部に設けられ主管121よりも大径の側管122とが連通している。側管122の外面には、周方向にフランジ123が設けられている。側管122の内部は主管121側に向けて内径が漸減している。
【0038】
内管12は、フランジ123側から第2部材112に収容される。軸部本体11において、第1部材111と第2部材112との接続部11xは、フランジ123の外径よりも小径となっている。そのため、内管12は、フランジ123が接続部11xに突き当たる。
【0039】
アダプタ13は、内管12を軸部本体11に固定するとともに、マイクロニードル部20を軸部10に固定する筒状の部材である。アダプタ13は、アダプタ本体131と、アダプタ本体131の外面において周方向に設けられたフランジ132とを有する。
【0040】
アダプタ本体131の外径は、第2部材112の内径と同等であり、第2部材112に挿入されている。アダプタ本体131の外面であって第2部材112の内面に面する箇所には、周方向に溝131xが形成され、溝131xにはOリング138が設けられている。
【0041】
アダプタ本体131の内径は、内管12の主管121の外径と同等又は主管121の外径よりも大きい。アダプタ本体131の内部には、内管12が挿入されている。
【0042】
アダプタ13は、第2部材112に内管12を収容した状態で、第2部材112に挿入される。アダプタ13は、第2部材112の内部において、第2部材112と内管12との間に挿入され、フランジ123に突き当たる。アダプタ13は、第2部材112の内部においてOリング138で固定されることにより、アダプタ13と軸部本体11との間にフランジ123を挟み込んだ状態で、内管12を固定する。
【0043】
アダプタ13及び内管12の内部は、内部空間IS1と連通する内部空間IS2である。
【0044】
また、アダプタ本体131の先端側には、マイクロニードル部20の本体部25(後述)が嵌合する。アダプタ本体131の外面であって本体部25の内面25xに面する箇所には、周方向に溝131yが形成され、溝131yにはOリング139が設けられている。これにより、マイクロニードル部20は、軸部10と着脱自在に設けられている。マイクロニードル部20が着脱可能であることにより、マイクロニードル部20が汚染した場合に交換が容易となる。
【0045】
アダプタ13の先端(マイクロニードル部20側)において、アダプタ13の内部は、主管121が挿入された内部13a、内部13aと連通し内部13aよりも小径の頸部13b、頸部13bと連続し内径が漸増する開口部13cとが連続している。開口部13cと、本体部25の内面25xとで囲まれた空間は、内部空間IS3である。
【0046】
マイクロニードル部20は、貫通孔211を有する複数の第1マイクロニードル21と、第1マイクロニードル21よりも小さい複数の第2マイクロニードル22と、第1マイクロニードル21及び第2マイクロニードル22が設けられる本体部25と、を有する。
【0047】
以下の説明では、「第1マイクロニードル」を単に「第1ニードル」、「第2マイクロニードル」を単に「第2ニードル」と称する。
【0048】
マイクロニードル部20においては、2つの第1ニードル21の間には、少なくとも1つの第2ニードル22が設けられている。
図2のマイクロニードル部20では、2つの第1ニードル21の間に、2つの第2ニードル22が設けられている。
【0049】
本体部25は、筒状の側壁部251と、側壁部251に接続された底部252と、を有する。本体部25において、側壁部251と底部252との間の角部25aは面取りされ曲面となっている。
【0050】
複数の第1ニードル21及び複数の第2ニードル22は、底部252に設けられている。第1ニードル21が有する貫通孔211は、第1ニードル21及び底部252を貫通して、内部空間IS(内部空間IS3)に連通している。
【0051】
なお、マイクロニードル部20と軸部10とは、それぞれ本体部25の内面25xに目ねじ、アダプタ本体131の外面に雄ねじを形成し、螺合することとしてもよい。
【0052】
図3は、マイクロニードル部20のマイクロニードルを説明する概略断面図である。
図3に示すように、第1ニードル21及び第2ニードル22はいずれも、底部252から遠ざかる方向に外径が漸減する錐台状である。本実施形態の第1ニードル21及び第2ニードル22はいずれも円錐台状の外形を呈する。
【0053】
第1ニードル21は、高さH1が10μm以上2000μm以下、頂面の外径D11が100μm以上500μm以下、底部252側の下端の外径D12が200μm以上1000μm以下である。
【0054】
第2ニードル22は、高さH2が10μm以上2000μm以下、頂面の外径D21が40μm以上400μm以下、底部252側の下端の外径D22が80μm以上800μm以下である。
【0055】
第1ニードル21の高さH1と第2ニードル22の高さH2とは、異なっていてもよいが、同じであると好ましい。なお、高さH1と高さH2とが「同じ」とする場合、成形誤差を許容する。
【0056】
貫通孔211は、筒状の第1貫通孔211aと、錘台状の第2貫通孔211bとが連通した形状を呈する。本実施形態の貫通孔211では、第1貫通孔211aは円筒状であり、第2貫通孔211bは円錐台状である。すなわち、貫通孔211は、内部空間IS側から外に向かって内径が漸減する構成となっている。
【0057】
図3では、貫通孔211の中心軸と、円錐台状の第1ニードル21の中心軸とを一致させて示しているが、貫通孔211が第1ニードル21の上面に開口していれば、貫通孔211の中心軸は、第1ニードル21の中心軸とずれていても(オフセットしていても)よい。
【0058】
第1貫通孔211aの内径(直径)ID1は、30μm以上300μm以下であると好ましい。また、第2貫通孔211bの内径(直径)ID2は、200μm以上2000μm以下であると好ましい。内径ID1が30μm以上であると、粘度の高い液体Lであっても遅延なく吐出させることができる。
【0059】
マイクロニードル部20が有する複数の第1ニードル21は、いずれも同じ構成である。同様に、マイクロニードル部20が有する複数の第2ニードル22は、いずれも同じ構成である。
【0060】
図4、5は、軸部(不図示)の中心軸Cに沿った視野におけるマイクロニードル部20の概略図である。
【0061】
図4の視野において、マイクロニードル部20は、1つの第1ニードル21と、第1ニードル21と隣り合う3以上の第2ニードル22と、で構成されるマイクロニードル群Gを有している。
図4においては、マイクロニードル群Gは、1つの第1ニードル21と、5又は6の第2ニードル22と、を有する。以下の説明では、マイクロニードル群Gを単に「ニードル群G」と称する。
【0062】
マイクロニードル部20では、8つのニードル群Gが、中心軸Cの周りに周方向に配列している。すなわち、マイクロニードル部20は、8つの第1ニードル21を有する。隣り合うニードル群G同士では、1又は2つの第2ニードル22を共有している。
【0063】
マイクロニードル部20は、第1ニードル21を含まないマイクロニードル群Gxを有していてもよい。
図4では、中心軸Cの周囲にマイクロニードル群Gxが配置されている。
【0064】
ニードル群Gにおいて、3以上の第2ニードル22は、第1ニードル21の周囲を取り囲んでいる。ニードル群Gにおいては、複数の第2ニードル22は、第1ニードル21を中心として、周方向に等角度間隔で配置している。
【0065】
また、ニードル群Gにおいては、第1ニードル21から3以上の第2ニードル22までのそれぞれの距離が等しい。例えば、
図4に示すニードル群GAにおいて、第1ニードル21から第2ニードル22までの距離L1,L2,L3は、全て等しい。
【0066】
マイクロニードル部20において、8つのニードル群Gは全て同様に、第1ニードル21の周囲を3以上の第2ニードル22が取り囲み、第1ニードル21から3以上の第2ニードル22までのそれぞれの距離が等しい。
【0067】
なお、ニードル群Gにおける第1ニードル21、第2ニードル22の配置は一例であり、種々変更が可能である。
【0068】
図5の視野において、マイクロニードル部20は、中心軸Cと同心に設定された複数の領域AR1,AR2,AR3を有する。
図5においては、中心軸Cを含む最内の領域をAR1とし、中心軸Cから遠ざかる方向に円環状の領域AR2,AR3が設定されている。
【0069】
8つの第1ニードル21は、2つの領域AR1,AR3に挟まれた円環状領域(領域AR2)に含まれ、領域AR2において周方向に配置されている。また、8つの第1ニードル21は、周方向において等角度間隔に設けられている。すなわち、
図5に示す角度θ1~θ8が等しい。
【0070】
領域AR2においては、周方向に隣り合う2つの第1ニードルの間の距離Wは、1.0mm以上10mm以下である。
【0071】
図6,7は、上述した液体塗布具1の使用方法を示す説明図である。
図6は、中心軸Cに沿った仮想平面における液体塗布具1の概略断面図である。
図7は、液体塗布具1の先端部分の概略断面図である。説明を容易にするために、
図6においては、
図2で示した構成を略記している。
【0072】
図6に示すように、液体塗布具1を用いる際、使用者は、吐出部30が備えるボタン31(
図1参照)を押下する。これにより、吐出部30のシャフト33がピストン32を一定量押し出す。ピストンの32の移動距離に応じて、マイクロニードル部20の第1ニードル21が有する貫通孔から液体Lが吐出される。
【0073】
上述のように、液体塗布具1の軸部10は、筒状の第1部材111と、第1部材111よりも小径の筒状の第2部材112とが連通して一体となった筒状の部材である。ピストン32の本体321は、内部空間ISのうち内部空間IS1に嵌合している。また、ピストン32の凸部322は、内部空間ISのうち内部空間IS2の一部(上述の内管12の端部)に嵌合可能な大きさである。そのため、ピストン32が内部空間IS1の端部にまで押し進められた際には、凸部322が内部空間IS2に嵌合し、内部空間IS2内の液体Lも吐出させることができる。
【0074】
図7に示すように、使用者は、液体塗布具1のマイクロニードル部20を皮膚Sに押し当てて用いる。マイクロニードル部20が皮膚Sに押し当てられると、第1ニードル21及び第2ニードル22が皮膚Sに押し当てられることになる。
【0075】
このとき、第2ニードル22は、皮膚Sに食い込み、マイクロニードル部20の皮膚Sの表面方向へのずれを抑制する「滑り止め」として機能する。第2ニードル22は、第1ニードル21よりも小さいことから、第1ニードル21から皮膚Sに加えられる圧力F1よりも高い圧力F2で皮膚Sを押下する。そのため、マイクロニードル部20は、例えばマイクロニードル部が同じ大きさのマイクロニードルのみを有する構成である場合と比べ、皮膚Sの表面における位置ずれを抑制しやすい。
【0076】
使用者は、この状態で液体塗布具1の吐出部(不図示)のボタンを押下することで、液体塗布具1を押し当てた所望の位置に、第1ニードル21の貫通孔211から液体Lを吐出し、液体Lを塗布することができる。液体Lは、マイクロニードルである第1ニードル21の先端から吐出されることで、皮膚Sに対して浸透しやすい。
【0077】
このとき、液体塗布具1では、上述のように第2ニードル22によって位置ずれを抑制しているため、所望の位置に安定して液体Lを吐出しやすい。
【0078】
また、第1ニードル21は、第2ニードル22よりも大きいことから、第2ニードル22に貫通孔を設ける場合よりも広い径の貫通孔211を設けることが可能である。そのため、マイクロニードル部20は、貫通孔211から好適に液体Lを吐出可能である。
【0079】
このように、液体塗布具1は、マイクロニードル部20が大きさの異なる2種のマイクロニードルを有することにより、好適に所望の位置に液体Lを吐出し塗布することが可能である。
【0080】
また、マイクロニードル部20は、
図3~5を用いて上述したような構成を有する。具体的には、マイクロニードル群G(
図4参照)において、3以上の第2ニードル22が、第1ニードル21の周囲を取り囲む構成であり、第1ニードル21から3以上の第2ニードル22までのそれぞれの距離が等しいことから、第1ニードル21の位置ずれを更に抑制しやすい。
【0081】
また、マイクロニードル部20において、第1ニードル21が円環状領域AR2に等角度間隔で設けられていることから、マイクロニードル部20の外面に対して偏りなく液体Lを吐出させやすい。
【0082】
このような液体塗布具1では、吐出する液体Lとして、例えば液状の化粧品、薬液を採用することができる。「液体」としては、溶液であってもよく、分散液であってもよく、コロイド液であってもよい。液体塗布具1は、上述した構成を採用し、吐出する液体Lの粘度に応じて、第1ニードル21の貫通孔211の内径を、好適に液体Lを吐出可能な大きさに調整することができる。
【0083】
以上のような構成の液体塗布具1によれば、マイクロニードルを採用し、皮膚の所望の位置に容易に液体を浸透させることが可能となる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…液体塗布具、10…軸部、20…マイクロニードル部、21…第1マイクロニードル、22…第2マイクロニードル、25…本体部、30…吐出部、211…貫通孔、252…底部、AR1~3…領域、AR2…円環状領域、C…中心軸、G…マイクロニードル群、ID1,ID2…内径(直径)、IS…内部空間、L…液体、W…距離、S…皮膚、θ1~θ8…角度
【要約】
【課題】マイクロニードルを採用し、皮膚の所望の位置に容易に液体を浸透させることが可能な新規な液体塗布具を提供する。
【解決手段】液体を収容する内部空間を有する軸部と、内部空間に連通する貫通孔を有するマイクロニードル部と、貫通孔から液体を吐出させる吐出部と、を有し、マイクロニードル部は、貫通孔を有する複数の第1マイクロニードルと、第1マイクロニードルよりも小さい複数の第2マイクロニードルと、を有し、2つの第1マイクロニードルの間には、少なくとも1つの第2マイクロニードルが設けられている液体塗布具。
【選択図】
図2