(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】シャワーヘッド装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20230620BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
(21)【出願番号】P 2018151537
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】坂田 真也
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-093257(JP,A)
【文献】特開2013-160312(JP,A)
【文献】特開2005-131557(JP,A)
【文献】登録実用新案第3064140(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065131(US,A1)
【文献】特開2013-215546(JP,A)
【文献】登録実用新案第3040122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
E03C 1/00-1/10
B05B 1/18
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水部、及び前記散水部に接続された持手部を有する本体ケースと、
内部の流路を流通する流体を一次停止可能とした一次止水機構ユニットと、
を備え、
前記一次止水機構ユニットは、
上流側に弁座が形成された弁支持筒の内部の前記流路を開閉する弁体と、前記弁支持筒の下流側に接続され第1傾斜面を有する弁先端押圧部と、前記第1傾斜面に当接する第2傾斜面が形成されたボタン保持片と、前記弁体を開閉するとともに前記ボタン保持片に装着される押しボタンを付勢力によって押し戻す付勢部と、が内部に設けられたケース部を備え、
前記一次止水機構ユニットは、前記ケース部内の前記ボタン保持片に前記押しボタンを装着することで一体的に構成されてなり、
前記本体ケースの前記持手部
には、前記押しボタンを除く前記一次止水機構ユニットが収容可能な収容部を有し、
前記散水部とは反対側の端部に、前記一次止水機構ユニットが挿入可能な持手開口部が形成されていることを特徴とするシャワーヘッド装置。
【請求項2】
前記一次止水機構ユニットには、前記散水部に収容される散水板を有する散水板ユニットに係止可能なスナップフィット機構が設けられている請求項1に記載のシャワーヘッド装置。
【請求項3】
前記付勢部は、前記押しボタンをばねの付勢力により押し戻しする押戻しバネ部と共通化されている請求項1又は2に記載のシャワーヘッド装置。
【請求項4】
前記押戻しバネ部は、前記ケース部の前記流路内に設けられている請求項3に記載のシャワーヘッド装置。
【請求項5】
前記押しボタンは、前記持手部に形成されたボタン開口部の外側から装着可能に設けられ、
前記ケース部内において前記押しボタン
は前記ボタン保持片に係止されて押し込み位置で保持
される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシャワーヘッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水源から延ばされた給水ホースに接続されて、湯水などの流体を表面側から散水するシャワーヘッド装置では、表面に散水孔を有する散水板と、散水板を保持し、内部に散水孔と連通した通水路を収容する本体ケースと、を備えたものが一般的となっている。
このようなシャワーヘッド装置では、例えば特許文献1に示すように、散水部、及び散水部に接続された持手部を有する本体ケースと、流路を開閉する弁体を一体的に設け、流路を流通する流体を一次停止可能とした一次止水機構ユニットと、一次止水機構ユニットに対して装着可能に設けられ、弁体を開閉移動させるための押しボタンと、を備え、本体ケース内に設けられた弁体を押しボタンによって開閉操作して流路を開閉するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のシャワーヘッド装置に設けられる押しボタンは、ボタンカバー内にばね等の付勢部材が内蔵されていて、その付勢力を利用して押し込んだボタンを元の位置に復帰するように構成されている。このようなシャワーヘッド装置を組み立てる際には、先ず、弁体を備えた一次止水機構ユニットと押しボタンを一体的に組み立てておき、押しボタンの周囲で分割されている本体ケース同士を組み合わせるといった手間のかかる複雑な製造方法となっている。そのため、従来のシャワーヘッド装置において、本体ケースに一次止水機構を簡単に組み付けることが可能な構造が望まれており、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、本体ケースに対して一次止水機構を簡単に組み付けることができるシャワーヘッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るシャワーヘッド装置は、散水部、及び前記散水部に接続された持手部を有する本体ケースと、内部の流路を流通する流体を一次停止可能とした一次止水機構ユニットと、を備え、前記一次止水機構ユニットは、上流側に弁座が形成された弁支持筒の内部の前記流路を開閉する弁体と、前記弁支持筒の下流側に接続され第1傾斜面を有する弁先端押圧部と、前記第1傾斜面に当接する第2傾斜面が形成されたボタン保持片と、前記弁体を開閉するとともに前記ボタン保持片に装着される押しボタンを付勢力によって押し戻す付勢部と、が内部に設けられたケース部を備え、前記一次止水機構ユニットは、前記ケース部内の前記ボタン保持片に前記押しボタンを装着することで一体的に構成されてなり、前記本体ケースの前記持手部には、前記押しボタンを除く前記一次止水機構ユニットが収容可能な収容部を有し、前記散水部とは反対側の端部に、前記一次止水機構ユニットが挿入可能な持手開口部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、本体ケースの持手部の内部に持手開口部から一次止水機構ユニットを挿入し、本体ケース内で先に組み付けてある散水部内の流路と連通するように接続することができる。そのため、本発明では、一次止水機構ユニットを本体ケースの持手部内に挿入させる作業のみで簡単に組み付けることができ、組立性の向上を図ることができる。
しかも、本発明では、持手部として一次止水機構ユニットが収容可能な収容部を有する一体成型された筒状の部材を用いることができるため、例えば半割れに分割されたものを組み合わせて接合する場合のような手間のかかる組立が不要になる利点がある。
【0008】
また、本発明に係るシャワーヘッド装置は、前記一次止水機構ユニットには、前記散水部に収容される散水板を有する散水板ユニットに係止可能なスナップフィット機構が設けられていることを特徴としてもよい。
【0009】
この場合には、シャワーヘッド装置の組立時において、持手部内に挿入された一次止水機構ユニットのスナップフィット機構を本体ケースの散水部に収容される散水板ユニットに係止させることで、接続状態を目視しにくい本体ケース内で簡単に接続を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係るシャワーヘッド装置は、前記弁体を開閉する前記付勢部は、前記押戻しバネ部と共通化されていることを特徴としてもよい。
また、本発明に係るシャワーヘッド装置は、前記押戻しバネ部は、前記ケース部の前記流路内に設けられていることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明に係るシャワーヘッド装置では、前記押しボタンは、前記持手部に形成されたボタン開口部の外側から装着可能に設けられ、前記ケース部内において前記押しボタンは前記ボタン保持片に係止されて押し込み位置で保持されることを特徴としてもよい。
この場合には、押しボタンが一次止水機構ユニットに装着可能に設けられているので、予め持手部における押しボタンの一次止水機構ユニットに対する装着位置に開口部を設けておくことで、一次止水機構ユニットを持手部に収容した後に、持手部に形成されているボタン開口部から押しボタンのみを一次止水機構ユニットに対して取り付けることができる。そのため、持手部を分割する必要がなく、組み立てを簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシャワーヘッド装置によれば、本体ケースに対して一次止水機構を簡単に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態によるシャワーヘッド装置の全体構成を斜め表面側からみた斜視図である。
【
図2】
図1に示すシャワーヘッド装置の分解斜視図である。
【
図3】散水部材及び通水部材の散水軸を通る縦断面図である。
【
図5】一次止水機構ユニットに押しボタンを取り付けた状態の縦断面図であって、押しボタンを解除して弁を閉じた状態を示す図である。
【
図6】一次止水機構ユニットに押しボタンを取り付けた状態の縦断面図であって、押しボタンを押して弁を開いた状態を示す図である。
【
図7】
図5に示す一次止水機構ユニットに押しボタンを取り付けた状態の部分斜視図であって、押しボタンを解除して弁を閉じた状態を示す図である。
【
図8】
図6に示す一次止水機構ユニットに押しボタンを取り付けた状態の部分斜視図であって、押しボタンを押して弁を開いた状態を示す図である。
【
図9】
図4に示すA-A線断面図であって、押しボタンを押込み位置としたときの図である。
【
図10】
図9に示すボタン保持片の要部拡大図であって、(a)は吐水時で押しボタンが押込み位置の状態を示す図、(b)は止水時で押しボタンが押込み解除位置の状態を示す図である。
【
図11】シャワーヘッド装置の組み立て工程を示す図であって、本体ケースに散水板ユニットを取り付ける前の状態の図である。
【
図12】
図11に続くシャワーヘッド装置の組み立て工程を示す図であって、本体ケースに一次止水機構ユニットを取り付ける前の状態の図である。
【
図13】
図12に続くシャワーヘッド装置の組み立て工程を示す図であって、本体ケースに押しボタンを取り付ける前の状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態によるシャワーヘッド装置の一例について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び
図2に示す本実施形態のシャワーヘッド装置1は、給水源(図示省略)から延ばされた給水ホース6(
図1)に接続されて、湯または水などの流体を表面側から散水するハンドシャワーである。
【0016】
シャワーヘッド装置1は、
図3に示すように、表面に散水孔24aを有して流体を散水する散水部材2と、内部に散水孔24aと連通した通水路(環状通水路3C)を有し、上流側からの流体を散水部材2に供給する通水部材3と、散水部材2及び通水部材3を収容する本体ケース4と、本体ケース4に収容される一次止水機構ユニット5(
図2参照)と、を備えている。
シャワーヘッド装置1において、流体の散水部材2への給水を一次止水する際には、本体ケース4に設けられる後述する押しボタン53を操作することによって給水から一次止水に切り替えることが可能な構成となっている。
【0017】
散水部材2及び通水部材3は、金属やプラスチック等の部材により略円盤形状に形成されている。
散水部材2は、上散水板2Aと、下散水板2Bと、を有している。通水部材3は、上通水部3Aと、及び下通水部3Bと、を有している。そして、上通水部3A、下通水部3B、上散水板2A、下散水板2Bが上方(裏面)から下方(表面)に向けてその順で配置されている。
散水部材2は、裏面からみた平面視で中央部分にアクセントリング21と化粧プレート22とを有している。上散水板2Aと下散水板2Bは、アクセントリング21と化粧プレート22とを挟持した状態で溶着されている。
【0018】
ここで、以降の説明において、上通水部3A、下通水部3B、上散水板2A、下散水板2B、アクセントリング21、化粧プレート22が共通の軸線上に配置され、この共通軸線を散水軸Oという。散水軸O方向に沿って、下散水板2Bの散水孔24aが開口する一方の面で、流体が吐水される面側を表面側、あるいは下側といい、他方の面側を裏面側、あるいは上側という。
また、散水軸O方向から見た平面視において、散水軸Oに直交する方向を径方向といい、散水軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
下散水板2Bは、
図3に示すように、平面視で円形形状に形成され、中央に第1開口部23を有し、板厚方向に貫通する複数の散水孔24aが形成された散水面24を備えている。複数の散水孔24aは、下散水板2Bの円周方向に沿って均等に配置されている。シャワーヘッド装置1は複数の散水孔24aから流体をシャワー状に吐水する。第1開口部23は、角部が滑らかに湾曲した略矩形状に形成されている。散水面24は、外周部から中央の第1開口部23に向かって下方に凸となる凸曲面に形成されている。
【0020】
散水面24の裏面には、第1開口部23の周囲から裏面側に向けて突出する筒状リブ25が設けられている。 筒状リブ25の内側には、裏面側からアクセントリング21及び化粧プレート22が挿入されて収容される。
アクセントリング21は、化粧プレート22を装着した状態で、上方(裏面側)から下散水板2Bの第1開口部23及び筒状リブ25の内側に収容される。
【0021】
化粧プレート22は、下面に平坦な化粧面221aを有する化粧板221を有している。化粧板221は、アクセントリング21の内周形状と同等に形成され、アクセントリング21の内周面に嵌合可能に設けられている。
【0022】
化粧プレート22は、アクセントリング21を介して下散水板2Bの第1開口部23に装着された状態で、化粧面221aが散水面24の表面24bよりも奥まった位置に配置される。
【0023】
上散水板2Aは、
図3に示すように、中央に下散水板2Bの筒状リブ25に外嵌する円形の第2開口部260を有し、下散水板2Bの外周縁部2a近傍の径方向の内側で上方に突出する外周壁2bに対して全周にわたって溶着により一体的に設けられている。
上散水板2Aは、円板部261と、円板部261の中心に形成される第2開口部260の内側の中心部に連結片262を介して設けられたねじ係止筒263と、円板部261を板厚方向に貫通する複数(ここでは3つ)の第1流通孔264と、を備えている。
【0024】
円板部261は、上面に下通水部3Bとの間に空気層26Aを形成し、通水部材3の外周縁との間に空気流入口26Bが形成され、この空気流入口26Bを介して空気層26Aと本体ケース4のヘッド本体部41内の空間とが連通している。
【0025】
また、上散水板2Aと下散水板2Bとの間には散水室24Aが形成されている。複数の第1流通孔264は、円周方向に所定の間隔をあけて設けられ、後述する下通水部3Bの第2流通孔34の直下に所定の離間をあけて配置され、かつ同軸となる位置に配置されている。
第1流通孔264は、流路断面積が下方に向かうに従い絞られた絞り形状をなしている。すなわち、第1流通孔264は、第2流通孔34から送り出された水を空気取込面261aの空気層26Aの空気と混合させて円板部261の表面側(下散水板2Bの散水面24)に向けて通過させる。このように上散水板2Aは、空気層26Aを経由して、第1流通孔264を介して流体に空気を混入して下散水板2Bの内部の散水室に供給するエゼクタ機能を有している。そして、散水室に供給された空気含有の流体(水)が多数の散水孔24aから散水される。
【0026】
下通水部3Bは、上散水板2Aの円板部261の裏面側に間隔をあけて配置され、上散水板2Aの上側から固定ねじ50によって固定されている。下通水部3Bは、リング形状の第1環状通水路31と、第1環状通水路31の中心に配置され固定ねじが挿通可能なねじ挿通筒33と、板厚方向に貫通する複数(ここでは3つ)の第2流通孔34と、を備えている。
【0027】
上通水部3Aは、上通水部3Aの裏面側において外周縁同士を溶着して一体的に固定され、内側にドーナツ形状の環状通水路3Cを形成している。上通水部3Aは、中心に第4開口部36を形成したリング形状の第2環状通水路37と、第2環状通水路37に側方から連通する流体導入路38と、を備えている。
【0028】
本体ケース4は、
図1及び
図2に示すように、表面側に散水部材2及び通水部材3が収容可能な碗状部41aを形成させたヘッド本体部41(散水部)と、ヘッド本体部41を長手方向の一端に一体的に設けた持手部42と、持手部42の表面側に開口し後述する押しボタン53が配置されるボタン開口部43と、を備えている。このような本体ケース4は、プラスチックなどにより形成されている。
【0029】
ヘッド本体部41の内周縁部41bには、散水部材2の下散水板2Bの外周部が嵌合される。これにより、散水部材2がヘッド本体部41の内側に装着される。すなわち、散水部材2の裏面側、および外周面がヘッド本体部41によって覆われた状態となる。
【0030】
持手部42は、上下方向が幅方向よりも短尺な扁平断面の筒状をなし、片手で掴んで支持しやすい形状となっている。持手部42の内部には、持手部42の長手方向に沿って流路が形成されている。持手部42には、内部にヘッド本体部41側とは反対の基端側の開口から挿入される一次止水機構ユニット5が収容可能に設けられている。なお、持手部42内に収容される一次止水機構ユニット5の先端は、上通水部3Aの環状通水路3Cに連通した状態で接続されている。
【0031】
一次止水機構ユニット5は、
図4に示すように、本体ケース4の持手部42の内側に収容されている。一次止水機構ユニット5は、持手部42の形状に沿った細長い筒状のグリップケース51
(ケース部)と、グリップケース51内に収容され通水部材3の環状通水路3Cに連通可能な流路を開閉する弁体52と、弁体52を流路開閉可能に移動させる押しボタン53と、を備えている。
【0032】
グリップケース51は、
図4乃至
図6に示すように、先端側ケース51Aと基端側ケース51Bとに、長手方向に二分割されている。基端側ケース51Bの基端部には、給水ホース6(
図1参照)と連結するための雄ねじ51aが形成されている。
なお、
図4に示すように、本体ケース4における基端部(散水部材2とは反対側の端部)には、一次止水機構ユニット5が挿入可能な持手開口部4aが形成されている(
図1、
図2参照)。
【0033】
図1及び
図4に示すように、先端側ケース51Aにおける弁体52を挟んだ両側には、給水ホース6を経由して供給される流体を本体ケース4に収容される通水部材3の環状通水路3Cに取り込むケース内流路511が形成されている。ケース内流路511は、先端側ケース51Aの長手方向に沿って延び、上流側が後述する弁支持筒54に形成される流通開口541(後述)に接続されている。このケース内流路511は、弁体52が収容される弁体収容部512側とは隔壁によって区画されている。
【0034】
先端側ケース51Aには、
図5及び
図6に示すように、断面中心部分で弁体52を弁移動方向C1に移動可能に支持する弁支持筒54が組み込まれている。弁支持筒54の基端側には、弁体52の弁部52aが
図6に示す開弁となる吐水位置V1から
図5に示す閉弁となる止水位置V2に移動したときに着座する弁座54aが設けられている。
弁支持筒54には、ケース内流路に接続する流通開口541が形成されている。つまり、弁部52aを通過した流体は流通開口541を通ってケース内流路511を流通し、通水部材3の環状通水路3Cに給水される。
【0035】
弁体52は、持手部42の弁移動方向C1に移動可能に構成されている。弁体52には、弁座54aが閉鎖される止水位置V2に向けて付勢するコイルバネ55(付勢部)が設けられている。コイルバネ55は、付勢方向の一端が弁体52の基端部に係止され、他端がグリップケース51(基端側ケース51B)の内側に係止されて、弁部52aが弁座54aに着座する方向に付勢されている。
【0036】
弁体52は、弁移動方向C1の一端側(ここでは押しボタン53側、
図5及び
図6の紙面左側)に付勢され、一端には弁移動方向C1に対して傾斜する第1傾斜面56aが形成された弁先端押圧部56が設けられている。
【0037】
先端側ケース51Aには、
図5乃至
図8に示すように、押しボタン53のボタン移動方向C2に移動可能なボタン保持片57が設けられている。ボタン保持片57には、弁先端押圧部56の第1傾斜面56aに当接する第2傾斜面57aが形成された保持本体部570が設けられている。ボタン保持片57は、弁体52が付勢された状態で、第1傾斜面56aで第2傾斜面57aを弁移動方向C1の一端側(押しボタン53側)に押圧することで、第2傾斜面57aが第1傾斜面56aに沿ってボタン移動方向C2の押し込み方向に移動する。
【0038】
ボタン保持片57には、押しボタン53に設けられるスナップフィット機構の第1係止爪531に係止される第2係止爪571が設けられている。
【0039】
また、先端側ケース51Aには、
図9に示すように、弁体52(
図6参照)の先端側において、ボタン保持片57を収容する一対の支持壁513、513が設けられている。一対の支持壁513は、ボタン保持片57を挟んだ左右両側において、壁面方向を押しボタン53のボタン移動方向C2に向けた状態で互いに対向させて配置されている。
各支持壁513は、上壁513Aと下壁513Bとを有し、上壁513Aと下壁513Bとの間にボタン保持段部513a(被係止部)が形成されている。支持壁513は、下壁513Bの下内面513cが上壁513Aの上内面513bよりも内側(ボタン保持片57側)に張り出すように段状に形成されている。ボタン保持段部513aには、後述するボタン保持片57の弾性片部572が係止可能となっている。
【0040】
また、ボタン保持片57には、両側部(グリップケース51の長手方向から見て上下方向に直交するする左右両側)に、先端側ケース51Aの一対の支持壁513、513に形成されるボタン保持段部513aの上面に係止する弾性片部572が設けられている。弾性片部572は、基端部572bが保持本体部570に連結され、下方に向けて延ばされている。弾性片部572の自由端には、支持壁513側に向けて突出する係止凸部572aが形成されている。
【0041】
弾性片部572は、基端部572bを基端にして弾性変形可能に設けられ、ボタン保持片57のボタン移動方向C2への移動に伴って、係止凸部572aが支持壁513のボタン保持段部513aに係止する
図10(a)に示す係止位置P1と、弾性片部572が弾性変形し係止凸部572aがボタン保持段部513aから外れて下壁513Bの下内面513cに当接する係止解除位置P2と、の位置をとるように構成されている。
【0042】
押しボタン53は、
図4に示すように、持手部42に形成されるボタン開口部43(
図4参照)に外側から装着可能に設けられ、スナップフィット機構によりボタン保持片57に係止されている。
【0043】
押しボタン53は、
図7及び
図8に示すように、ボタン部53Aと、押込み部材53Bと、ボタン部53A及び押込み部材53Bの周囲を覆うボタンカバー53Cと、を有している。押込み部材53Bは、ボタン開口部43内をボタン移動方向C2に移動可能に設けられている。押込み部材53Bは、ボタン移動方向C2に延びる複数の突起部530が設けられ、これら突起部530の突出先端に上述した第1係止爪531が形成されている。この第1係止爪531は、上述したようにボタン保持片57の第2係止爪571に係止可能となっている。
押しボタン53は、持手部42に形成されるボタン開口部43の外側から内側に向けて挿入して押込み部材53Bの第1係止爪531をボタン保持片57の第2係止爪571に係止するスナップフィット機構により係合させることで本体ケース4に組み付けられる。
【0044】
押しボタン53は、円柱形状をなし、持手部42のヘッド本体部41寄りの位置に配置され、弁移動方向C1に対して交差(ここでは直交)する方向(ボタン移動方向C2)に使用者が押圧操作可能に設けられている。押しボタン53を押圧操作することにより、グリップケース51に内蔵されている弁体52が弁移動方向C1に移動して弁を開閉し、弁体52の
図6に示す吐水位置V1と
図5に示す止水位置V2とを切り換える操作を行うことができる。
【0045】
次に、シャワーヘッド装置1の組み立て手順について具体的に説明する。
先ず、
図2、
図4及び
図11に示すように、化粧プレート22とアクセントリング21とを組み込んだ状態で散水部材2と通水部材3とを固定ねじ50を使用して一体化した散水板ユニット20(
図11参照)を組み立てる。次に、一体化された散水板ユニット20を本体ケース4のヘッド本体部41の内側(碗状部41a)に対して表面側から着脱可能に嵌合させる(
図12参照)。このとき、上散水板2Aの外周部に設けられている弾性係止片265を弾性変形させて、ヘッド本体部41の内周縁部41bに形成される凹部41cに係止させることで、散水板ユニット20がヘッド本体部41に嵌合されるようになっている。
【0046】
次に、
図5及び
図6に示すように、弁体52、弁支持筒54、弁先端押圧部56、ボタン保持片57をグリップケース51内に組み込んで一体化した一次止水機構ユニット5を組み立てる。その後、
図2、
図4及び
図12に示すように、本体ケース4の持手部42の内部に持手開口部4aから一次止水機構ユニット5を挿入し、本体ケース4内で先に組み付けてある
図9に示す上通水部3Aの流体導入路38の被係止部381に連結する。具体的には、一次止水機構ユニット5における散水板ユニット20側に突出するスナップフィット機構Sを、
図3及び
図4に示す上通水部3Aの流体導入路38の外周面に形成された被係止部381に係止させる。このように一次止水機構ユニット5は、本体ケース4の持手部42に挿入させる作業のみで簡単に組み付けられる。
【0047】
一次止水機構ユニット5の組み付けが完了した後、
図13に示すように、押しボタン53のボタン部53A、押込み部材53B、ボタンカバー53Cを本体ケース4の外側から取り付ける。具体的には、ボタン部53A及びボタンカバー53Cを組み込んだ押込み部材53Bを持手部42に形成されているボタン開口部43の外側から内側に挿入し、
図5乃至
図8に示すように押込み部材53Bの第1係止爪531をボタン保持片57の第2係止爪571にスナップフィット機構により係止させる。これにより、押しボタン53が一次止水機構ユニット5と本体ケース4に組み付けられ、
図1に示すようなシャワーヘッド装置1の組み立てが完了となる。
【0048】
このように構成されるシャワーヘッド装置1では、吐水する際に、
図6に示すように押しボタン53を押圧操作により押込み位置F1まで押圧すると、押しボタン53に固定されているボタン保持片57もボタン移動方向C2で押し込み側に移動する。これによりボタン保持片57の弾性片部572が
図10(b)に示す係止解除位置P2から
図10(a)に示す係止位置P1に移動する。すなわち、弾性片部572は、係止解除位置P2による弾性変形が復元し、係止位置P1において係止凸部572aが支持壁513のボタン保持段部513aに係止した状態となる。つまり、シャワーヘッド装置1の表面側(
図4に示す散水面24)を下側に向けた姿勢のときに、係止凸部572aがボタン保持段部513aに上方から載置された状態となるので、押しボタン53の自重によってボタン保持片57の弾性片部572がボタン保持段部513aを乗り越えるように弾性変形することはない。そのため、ボタン保持片57及び押しボタン53が押込み位置F1で保持された状態で維持されるので、散水面24を下向きとなる姿勢にした場合でも押しボタン53が下方に飛び出したり、がたつきが生じたりすることを防止でき、押し込み操作が安定し、操作性の向上を図ることができる。
【0049】
このように押しボタン53を押込み位置F1に押圧することで、弁体52をコイルバネ55の付勢に抗して弁移動方向C1で押しボタン53側から離れる方向に移動させて、弁体52を
図5に示す止水位置V2から
図6に示す吐水位置V1に位置させることで、散水ユニット20に給水されて散水孔24aから散水することができる。
【0050】
また、シャワーヘッド装置1において止水する際には、コイルバネ55の付勢力による弁体52の押付力によってボタン保持片57がボタン移動方向C2で戻し側に移動し、
図10(b)に示すようにボタン保持片57の弾性片部572が先端側ケース51Aの下壁513Bの下内面513cによって左右方向の内側に押し込まれて弾性変形する。これによりボタン保持片57は、係止凸部572aが支持壁513のボタン保持段部513aを乗り越えて係止解除位置P2となり、押しボタン53とともに
図5に示す押込み解除位置F2に移動する。このように押しボタン53が押込み解除位置F2のときには、弁体52がコイルバネ55の付勢によって弁移動方向C1で押しボタン53側に移動して
図5に示す止水位置V2で弁を閉じ、散水ユニット20への給水が停止されて止水状態になる。
【0051】
次に、本実施形態によるシャワーヘッド装置1の作用について説明する。
本実施形態では、
図11乃至
図13に示すように、本体ケース4の持手部42の内部に持手開口部4aから一次止水機構ユニット5を挿入し、本体ケース4内で先に組み付けてあるヘッド本体部41内の散水板ユニット20の流路(環状通水路3C)と連通するように接続することができる。そのため、本実施形態では、一次止水機構ユニット5を本体ケース4の持手部42内に挿入させる作業のみで簡単に組み付けることができ、組立性の向上を図ることができる。
【0052】
しかも、本実施形態では、持手部42として一次止水機構ユニット5が収容可能な収容部を有する一体成型された筒状の部材を用いることができるため、例えば半割れに分割されたものを組み合わせて接合する場合のような手間のかかる組立が不要になる利点がある。
【0053】
また、本実施形態では、シャワーヘッド装置1の組立時において、持手部42内に挿入された一次止水機構ユニット5のスナップフィット機構Sを本体ケース4のヘッド本体部41に収容される散水板ユニット20における上通水部3Aの流体導入路38に係止させることで、接続状態を目視しにくい本体ケース4内で簡単に接続を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、押しボタン53が一次止水機構ユニット5に装着可能に設けられているので、予め持手部42における押しボタンの一次止水機構ユニット5に対する装着位置にボタン開口部43を設けておくことで、一次止水機構ユニット5を持手部42に収容した後に、持手部42に形成されているボタン開口部43から押しボタン53のみを一次止水機構ユニット5に対して取り付けることができる。そのため、持手部42を分割する必要がなく、組み立てを簡単に行うことができる。
【0055】
このように本実施形態のシャワーヘッド装置1によれば、本体ケース4に対して一次止水機構ユニット5を簡単に組み付けることができる。
【0056】
以上、本発明によるシャワーヘッド装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、本実施形態では、押しボタン53が持手部42に形成されたボタン開口部43の外側から装着可能に設けられているが、押しボタン53の組み付け構造はこれに限定されることはない。要は、一次止水機構ユニット5に押しボタン53が予め組み込まれた状態であっても、本体ケース4の持手開口部4aから持手部42内に挿入されて収容できる構成であればよい。
【0058】
また、本実施形態では、押しボタン53の操作とともにボタン移動方向C2に移動し、弁体52を弁移動方向C1に移動させるボタン保持片57を設けた構成としているが、このようなボタン保持片57を設ける構成に限定されることはなく、他の機構を採用することも可能である。要は、押しボタン53が本体ケース4のボタン開口部43の外側から内側に挿入可能で、かつ挿入されたときに本体ケース4(一次止水機構ユニット5)に対してボタン操作可能に固定される構成であればよいのである。
【0059】
また、本実施形態では、一次止水機構ユニット5と通水部材3とがスナップフィット機構により接続される構成としているが、スナップフィット機構でない固定手段を採用することも可能である。要は、一次止水機構ユニット5が本体ケース4の持手部42内に挿通されて所定位置に収容されたときに通水部材3に対して互いの流路同士が連通した状態で接続できる接続構造であればよい。
【0060】
また、散水板ユニット20の各構成は、本実施形態に限定されることはなく、適宜変更可能である。例えば本実施形態では、通水路がドーナツ形状で、中央部に固定ねじ50で通水部材3と散水部材2とを固定した構成としているが、これに限定されることはない。また、アクセントリング21や化粧プレート22を省略することも可能である。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 シャワーヘッド装置
2 散水部材
2A 上散水板
2B 下散水板
3 通水部材
3A 上通水部
3B 下通水部
3C 環状通水路
4 本体ケース
4a 持手開口部
5 一次止水機構ユニット
20 散水板ユニット
41 ヘッド本体部(散水部)
42 持手部
43 ボタン開口部
50 固定ねじ
51 グリップケース(ケース部)
52 弁体
53 押しボタン
54 弁支持筒
56 弁先端押圧部
56a 第1傾斜面
57 ボタン保持片
57a 第2傾斜面
531 第1係止爪
571 第2係止爪
C1 弁移動方向
C2 ボタン移動方向