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特許7299025基板の凹部にめっきするための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】基板の凹部にめっきするための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/04 20060101AFI20230620BHJP
   C25D 21/08 20060101ALI20230620BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20230620BHJP
   C23F 1/08 20060101ALI20230620BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20230620BHJP
   C25D 7/00 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
C25D21/04
C25D21/08
C25D17/00 K
C25D17/00 L
C23F1/08 101
H05K3/18 M
H05K3/18 N
C25D7/00 J
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019004904
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2019137916
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】1801201.3
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクト,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルンスベルガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クノール,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】オコーン-シュミット,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】エンゲッサー,フィリップ
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-067695(JP,A)
【文献】特開平03-140475(JP,A)
【文献】特開2001-026879(JP,A)
【文献】特開2011-096800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0296166(US,A1)
【文献】米国特許第05830805(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0179458(US,A1)
【文献】特開平11-152597(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101220492(CN,A)
【文献】特開平06-090074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
C23F 1/00-4/04
H05K 3/10-3/26
H05K 3/38
C25D 5/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの凹部を備える基板表面(11)をもつ基板(10)を用意し、
前記凹部から雰囲気ガス(20)を少なくとも部分的に取り除くべく、前記凹部内のある量の前記雰囲気ガス(20)を置換するために置換ガス(30)を前記凹部へ加え、
処理流体(40)を前記凹部へ加えて、前記凹部から前記置換ガス(30)を少なくとも部分的に取り除くために前記置換ガス(30)が前記処理流体(40)に溶解し、
記凹部にめっき
前記処理流体(40)に溶解した前記置換ガス(30)は、前記凹部の表面を修飾する化学反応性修飾流体を形成する、
基板(10)の凹部にめっきするための方法。
【請求項2】
前記置換ガス(30)及び前記処理流体(40)は前記凹部にめっきする前に前記凹部内の任意のガスバリアを本質的に除去する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記置換ガス(30)は処理温度のもとでの前記処理流体(40)への溶解度が前記雰囲気ガス(20)より高い、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記雰囲気ガスは空気であり、室温のもとでの前記処理流体(40)への前記置換ガス(30)のヘンリーの法則の溶解度定数Hcpは、6.4×10-6mol m-3 Pa-1より大きい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記置換ガス(30)はCOを含み、前記処理流体(40)は本質的に水である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記めっきは、合金又は金属を、特に銅、ニッケル、インジウム又はコバルトを有する、前記凹部の少なくとも部分的な充填である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理流体(40)はめっき流体(40a)であり、前記基板(10)は前記めっき流体(40a)に浸漬される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記めっき流体(40a)は電気化学堆積システムの電解質である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記置換ガス(30)はSO2を含み、前記処理流体(40)はHSOを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記処理流体(40)はリンス流体(40b)であり、前記凹部は前記リンス流体(40b)によってリンスされる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化学反応性修飾流体は前記凹部の表面をクリーニング又はエッチングするための酸又は塩基である、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記置換ガス(30)はNH、SO、NO、HCl及びHFの少なくとも1つを含み、前記処理流体(40)は本質的に水又は溶剤である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記置換ガス(30)は前記処理流体(40)への溶解度が前記雰囲気ガス(20)より低く、前記置換ガス(30)及び前記処理流体(40)の少なくとも一方は前記置換ガス(30)と前記処理流体(40)との間の化学反応を開始するための開始剤を含む、
請求項1,2,5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記置換ガス(30)と前記処理流体(40)との間の前記化学反応は前記置換ガス(30)を消費する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記雰囲気ガス(20)は空気である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基板表面(11)は複数の凹部を備える、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基板(10)の凹部から雰囲気ガス(20)を少なくとも部分的に取り除くべく、前記凹部内のある量の前記雰囲気ガス(20)を置換するために、置換ガス(30)を前記凹部へ加えるように構成された置換ガスユニット(51)と、
前記凹部へ処理流体(40)を加えるように構成され、前記凹部から前記置換ガス(30)を少なくとも部分的に取り除くために前記置換ガス(30)が処理流体(40)に溶解する処理流体ユニット(52)と、
記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっきユニット(59)と、
を備
前記処理流体(40)に溶解した前記置換ガス(30)は、前記凹部の表面を修飾する化学反応性修飾流体を形成する、
基板(10)の凹部にめっきするためのデバイス(50)。
【請求項18】
前記処理流体ユニット(52)は前記めっきユニット(59)を備え、前記処理流体(40)は前記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっき流体(40a)を含む、
請求項17に記載のデバイス(50)。
【請求項19】
前記処理流体ユニット(52)はリンスユニット(60)を備え、前記処理流体(40)は前記凹部をリンスするように構成されたリンス流体(40b)を含む、
請求項17に記載のデバイス(50)。
【請求項20】
前記処理流体ユニット(52)は前記めっきユニット(59)を備え、前記処理流体(40)は前記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっき流体(40a)を含み、
前記処理流体ユニット(52)はリンスユニット(60)を備え、前記処理流体(40)は前記凹部をリンスするように構成されたリンス流体(40b)を含み、
前記置換ガスユニット(51)及び前記リンスユニット(60)の少なくとも一方は前記めっき流体(40a)と接触して配置された、
請求項1719のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項21】
前記処理流体ユニット(52)は前記めっきユニット(59)を備え、前記処理流体(40)は前記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっき流体(40a)を含み、
前記処理流体ユニット(52)はリンスユニット(60)を備え、前記処理流体(40)は前記凹部をリンスするように構成されたリンス流体(40b)を含み、
前記置換ガスユニット(51)及び前記リンスユニット(60)の少なくとも一方は前記めっき流体(40a)中に浮いている、
請求項1720のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項22】
前記処理流体ユニット(52)は前記めっきユニット(59)を備え、前記処理流体(40)は前記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっき流体(40a)を含み、
前記処理流体ユニット(52)はリンスユニット(60)を備え、前記処理流体(40)は前記凹部をリンスするように構成されたリンス流体(40b)を含み、
前記置換ガスユニット(51)及び前記リンスユニット(60)の少なくとも一方は前記めっき流体(40a)に対してある距離をおいて配置された、
請求項1719のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項23】
前記置換ガスユニット(51)は、前記基板(10)の前記凹部が通過するための置換ガスクッション又は置換ガスカーテンを発生させるように構成された少なくとも1つのガスノズル(53)を備える、
請求項1722のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項24】
前記置換ガスユニット(51)はドレイン(54)及び排出デバイス(55)の少なくとも一方をさらに備える、
請求項1723のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項25】
前記処理流体ユニット(52)は前記めっきユニット(59)を備え、前記処理流体(40)は前記基板(10)の前記凹部にめっきするように構成されためっき流体(40a)を含み、
前記めっきユニット(59)の閉塞と、前記置換ガス(30)及び前記めっき流体(40a)の少なくとも一方での前記めっきユニット(59)の充満と、のうち少なくとも一方を行うように構成された制御ユニット(56)をさらに備える、
請求項1724のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項26】
前記置換ガスユニット(51)はアーム状部材(57)であり、前記アーム状部材(57)及び前記基板(10)は互いに対して相対的に回転可能である、
請求項1725のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項27】
前記処理流体ユニット(52)はリンスユニット(60)を備え、前記処理流体(40)は前記凹部をリンスするように構成されたリンス流体(40b)を含み、
前記アーム状部材(57)は前記置換ガス(30)、前記リンス流体(40b)、開始剤及び化学活性物質の少なくとも1つを前記凹部及び前記基板(10)の少なくとも一方へ加えるように構成された、
請求項26に記載のデバイス(50)。
【請求項28】
前記置換ガスユニット(51)は、前記基板(10)を保持するように構成された基板ホルダ(12)へ組み込まれた、
請求項1727のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項29】
前記処理流体(40)の温度の変化させるように構成された温度ユニットをさらに備える、請求項1728のいずれか一項に記載のデバイス(50)。
【請求項30】
請求項1729のいずれか一項に記載の基板(10)の凹部にめっきするための前記デバイス(50)と、
デバイス制御装置(71)と、を備え、
前記デバイス制御装置(71)は、基板(10)の凹部内のガス置換と、前記凹部への処理流体(40)の添加と、前記凹部のめっきと、のうちの少なくとも1つを制御するように構成された、
基板(10)の凹部にめっきするためのシステム(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の凹部にめっきするための方法と、基板の凹部にめっきするためのデバイスと、そのデバイスを備える基板の凹部にめっきするためのシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
小さい凹部又は開口部に物質でめっき又は充填をする製造プロセスが多くある。基板が取り扱われる周囲の雰囲気エアが通常これらの小さい凹部を満たすため、困難が生じる。この雰囲気エアは、バリアを形成し、凹部の連続的なめっき又は充填の劣化又は妨害をする。不連続的な又は均一に途切れた被覆又は充填は、例えば、接触不良を招き、又は電気回路の遮断でさえ招く。従って、かかるめっき又は充填された凹部を有するデバイスの信頼性、機能性及び寿命は、低下する。
【0003】
従来、雰囲気エアは、圧力制御されたチャンバにおいて亜大気圧(sub-atmospheric pressure)又は真空によって除去される。凹部にその後施されるめっき又は充填は、亜大気圧又は真空が途切れることなく行われなければならない。かかる手順は、時間及び費用がかかるだけでなく複雑でもある。この亜大気圧又は真空におけるめっき又は充填の代わりに、不活性な又は脱気したプレウェッティング液を用いた様々な圧力条件下での凹部の事前リンスを行うこともできるが、依然として手順が複雑であり、時間及び費用がかかる。
【0004】
対応するプレウェッティング装置、方法及び設計が特許文献1に開示される。ウェーハ基板上に銅の層を電気めっきするこの方法は、(a)表面の少なくとも一部分に露出した金属層を有するウェーハ基板をプレウェッティング工程チャンバへ用意することと、(b)ウェーハ基板上にプレウェッティング流体の層を形成するために、水及び銅イオンを含むプレウェッティング流体とウェーハ基板を亜大気圧下でプレウェッティング流体と接触させることと、(c)プレウェットされたウェーハ基板上に銅の層を電気めっきするために、銅イオン含有のめっき溶液にそのウェーハ基板を接触させることとを有し、プレウェッティング流体中の銅イオンの濃度はめっき溶液中の銅イオンの濃度より高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2015/179458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、基板の凹部にめっきするための、特により単純な改善された方法及びデバイスを提供する必要があろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、課題は独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれる。なお、以下に記載される本発明の態様は、基板の凹部にめっきするための方法と、基板の凹部にめっきするためのデバイスと、そのデバイスを備える基板の凹部にめっきするためのシステムとにも適用される。
【0008】
本発明によれば、基板の凹部にめっきするための方法が提示される。本方法は、以下のステップa)~d)を有する。
a)少なくとも1つの凹部を備える基板表面をもつ基板を用意し、
b)前記凹部から雰囲気ガスを少なくとも部分的に取り除くべく、前記凹部内のある量の前記雰囲気ガスを置換するために置換ガスを前記凹部へ加え、
c)前記凹部から前記置換ガスを少なくとも部分的に取り除くために、前記置換ガスが溶解する処理流体を前記凹部へ加え、
d)前記凹部にめっきする。
【0009】
本発明による基板の凹部にめっきするための方法は、置換ガスによって基板の凹部内の雰囲気ガスの低減又は置換をすることができる。置換ガスはその後に加えられる処理流体に容易に溶解するよう選択されてもよく、従って、置換ガスも凹部から除去され又は低減される。雰囲気ガス及び置換ガスの少なくとも一方の除去は、特に迅速に若しくは特に完全に又は特に迅速且つ完全に行われてもよい。また、どのような種類の(有害な)プロセス残留物及び副生成物の少なくとも一方も回避できる。結果として、低減され又は更には全くなくなったガスバリアは、凹部の連続的なめっき又は充填を妨害し、又は劣化させる。
【0010】
そのため、本発明による基板の凹部にめっきするための方法は、高価で複雑な機器部品を必要とする亜大気圧又は真空を適用することなく、大気圧において機能し、それにより、従来の方法と比較して、複雑さ、時間及びコストを低減する。
【0011】
本発明によれば、高品質のめっき又は充填の方法も提供され、それにより、優れた電気的及び機械的の少なくとも一方の特性、信頼性及び寿命をもつ高品質のデバイスの製造を可能とする。
【0012】
めっきは、例えば、材料堆積、亜鉛めっき被覆、化学エッチング、電気化学エッチング、陽極酸化、金属分離又はその様なものといったどのような化学及び電解の少なくとも一方の表面処理であってもよい。めっきは、特に銅、ニッケル、インジウム又はコバルトの金属又は合金による凹部の少なくとも部分的な充填であってもよい。めっきは、凹部の本質的に完全な又は部分的なめっき及び充填であってもよい。めっきは、凹部側壁及び/又は基板表面の部分的な被覆を含んでもよい。
【0013】
基板は、導体板、半導体基板、フィルム基板、本質的に板状の金属又は金属化の加工物又はその様なものを含んでもよい。基板は、基板ホルダ中に保持されてもよい。
【0014】
基板表面は、複数の凹部を備えてもよい。基板は、例えば、穿孔板であってもよい。基板表面は、マスクされなくても、または部分的にマスクされてもよい。
【0015】
凹部は、円形、角形又はほかの幾何形状の開口部、ホール、スルーホール、ブラインドホール、スリット又はそれと同様なものであってよく、どのような種類の製造方法で作られてもよい。凹部は、0.01と1000μmの間、好ましくは0.015と800μmの間、より好ましくは0.02と500μmの間の直径又は横寸法を有してもよい。
【0016】
雰囲気ガスは、空気と、主として窒素と酸素の混合物と、基板表面の周りにあるほかの種類のガス例えば不活性ガスと、のうちの何れかであってよい。
【0017】
置換ガスの処理流体への溶解は、選択された処理温度において置換ガスは処理流体への溶解度が雰囲気ガスよりも高いということで、実現されてよい。また、置換ガスの処理流体への溶解は、置換ガスは処理流体への溶解度が雰囲気ガス以下であるということで、そして置換ガス及び処理流体の少なくとも一方が置換ガスと処理流体との間の化学反応を開始するための開始剤を含むということで、実現されてもよい。以下、両者をより詳細に説明する。
【0018】
置換ガスは、凹部内の雰囲気ガスを低減するために又は凹部内の雰囲気ガスを本質的に完全に置換するために、凹部へ加えられてよい。凹部にあるものを少なくとも部分的に取り除くことは、凹部のめっきの前における置換ガス及び処理流体による凹部内の任意のガスバリアの低減又は本質的な除去と理解することができる。
【0019】
一例において、置換ガスは、処理温度としての室温のもとでの処理流体への溶解度が雰囲気ガスよりも高い。一例において、雰囲気ガスは空気であり、処理温度ここでは室温としての選ばれた処理温度及び1気圧のもとでの処理流体への置換ガスのヘンリーの法則の溶解度定数Hcpは、6.4×10-6mol m-3 Pa-1より大きく、好ましくは1.2×10-5 mol m-3Pa-1以上、より好ましくは3.3×10-4 mol m-3 Pa-1以上である。これらの値は、N、O及びCOのヘンリーの法則の溶解度定数の範囲内にある。ヘンリーの法則の溶解度定数Hcpは、水相中のある種の濃度cを平衡条件下における気相中のその種の分圧pで除して定義される。置換ガスはCOであってもよいし、又はCOを含んでいてもよく、処理流体は本質的に水であってもよい。ガス交換後に基板が処理流体でスプレーされてもよく、又は処理流体中へ浸漬されてもよい。
【0020】
別の例では、置換ガスは、処理流体への溶解度が雰囲気ガスよりも低い。置換ガスは、置換ガスと処理流体との間の化学反応を開始するための開始剤を含んでもよい。代わりに又は加えて、処理流体が、置換ガスと処理流体との間の化学反応を開始するための開始剤を含んでもよい。一例において、置換ガスと処理流体との間の化学反応は、置換ガスが凹部から十分に除去されるまで処理流体の吸収容量に到達しないよう置換ガスを連続的に消費する。一例において、置換ガスは、容易に酸化しうる有機蒸気であり、処理流体は、O(オゾン)を開始剤として含んだ水である。
【0021】
マイクロエレクトロニクス及び半導体産業では、ウェーハ表面にめっきし、充填し、又はほかの表面処理をするために様々なプロセスを用いることができる。例えば、予めパターンが形成されたウェーハ表面に導電性材料を堆積することができる。めっき又は充填は、化学及び電気化学の少なくとも一方の表面処理技術を含んでもよく、以下のステップを含んでもよい、すなわち、処理される基板が基板ホルダに取り付けられ、電解めっき流体中へ浸漬されて、カソードとして機能する。追加の電極が電解めっき流体中へ浸漬されて、アノードとして機能する。めっき流体へ直流電流が印加されて、金属イオン複合体又は塩を電解液中に解離させる。生成又は放出された金属陽イオンが次にカソードへ移動し、そこで、カソードとして機能する基板上に金属状態でめっきを多かれ少なかれ施す。加えて、無電解電解の堆積又はパルス電気めっき/電着及び同様の技術も可能である。
【0022】
一例において、処理流体は、めっき流体であり、基板は、めっき流体に浸漬される。基板は、めっき流体に本質的に完全に又は部分的に浸漬されてもよい。一例において、めっき流体は、電気化学堆積システムの電解質である。一例において、めっき流体は、7未満又は7に近いpH値をもつ酸性電解質である。一例において、置換ガスは、SOを含むか、又はSOであり、処理流体は、HSOを含むか、又はHSOである。この例では、めっき前に雰囲気ガスを除去するための低圧前リンス又はプレウェッティング・ステップの必要がなく、それにより、基板の凹部にめっきするための本方法はとりわけ効率的で安価になる。
【0023】
別の例では、処理流体は、リンス流体であり、凹部は、リンス流体によってリンスされる。一例において、処理流体に溶解した置換ガスは、凹部の表面を修飾する化学反応性修飾流体を形成する。一例において、化学反応性修飾流体は、凹部の表面のクリーニング又はエッチングをするための酸又は塩基である。この統合された表面エッチング及び調製ステップは、基板の凹部にめっきするための本方法をさらに改善し、それをとりわけ効率的にする。一例において、置換ガスはNH、SO、NO、HCl、HF又はほかのガス(露出した材料を化学的にエッチングするための反応性液体、例えば酸性酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸及びほかの多くの有機分子の酸誘導体を形成することが可能なガス)であるか、又はそれらを含み、処理流体は本質的に水又は溶剤である。この例では、このリンス又はプレウェッティング・ステップによって、それに続くめっきステップのための凹部が完全に準備される。
【0024】
置換ガスは、少なくとも1つの有機化学物質の蒸気又はそれらのいくつかの混合物を含んでもよい。置換ガスは、エチレンと、メタンと、エタンと、プロパンと、ブタンと、2-メチルプロパンと、例えば蒸気圧の高いアルコール及び酸(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸など)のように官能基をもつ有機蒸気と、同様のものとからなる群のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0025】
処理流体は、水、例えば酸及び塩基などとしての無機媒質との水状混合物、有機溶剤、有機酸及び塩基、2つ以上の有機溶剤又は有機酸若しくは有機塩基の混合物、水と1つ以上の有機溶剤又は有機酸若しくは有機塩基との混合物、イソプロピルアルコール、水酸化テトラメチルアンモニウム、N-メチル-2-ピロリドン等を含んでよい。
【0026】
置換ガス/処理流体の組み合わせは、以下の群のうちの1つであってよい。すなわち、CO/水、NH/水、NH/TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、SO/硫酸、HF/水、HCl水、Cl/水、Br/水、C/水、SO/HO、O/水、HS/水、CH/水、C/水、C/水、C10/水、Ar/水、Kr/水、Xe/水、O/水、NO/水、NO/水、HSe/水、ClO/水、ClO/水その他同様のものである。この組み合わせは、例えば速度の増加、より連続的なめっき、より良好な付着、堆積物の改善された結晶及び非晶質の少なくとも一方の状態、又はほかの改善された材料特性の実現といった本めっき方法に有益な効果等をさらに提供するように選択され、適合されてもよい。
【0027】
置換ガス/処理流体の組み合わせは、例えば有機酸、腐食抑制剤、錯体形成試薬及び同様なものの少なくとも1つといった有機添加剤をさらに含んでよい。
【0028】
本発明によれば、基板の凹部にめっきするためのデバイスも提示される。凹部にめっきするためのデバイスは、置換ガスユニット、処理流体ユニット及びめっきユニットを備える。
【0029】
置換ガスユニットは、凹部から雰囲気ガスを少なくとも部分的に取り除くべく凹部内のある量の雰囲気ガスを置換するために置換ガスを基板の凹部へ加えるように構成される。置換ガスは、連続的に循環されてもよい。
【0030】
処理流体ユニットは処理流体を凹部へ加えるように構成され、凹部から置換ガスを少なくとも部分的に取り除くために置換ガスが処理流体に溶解する。
【0031】
めっきユニットは、基板の凹部にめっきするように構成される。
【0032】
本発明による基板の凹部にめっきするためのデバイスは、基板の凹部内の雰囲気ガスを置換ガスによって低減し、又は置換してもよい。置換ガスは、その後に加えられる処理流体に容易に溶解するように選択されてもよい。結果として、ガスバリアが低減されるか、さらには消失することにより、凹部の連続的かつ本質的に完全なめっき又は充填が可能となり、又は改善する。その結果、本発明による基板の凹部にめっきするためのデバイスは亜大気圧若しくは真空を適用することなく機能し、それにより、従来のデバイスと比較したときに、当該デバイスの複雑さ及びコストを低減する。本発明による基板の凹部にめっきするためのデバイスは、垂直、水平又はほかの角度付き配置の電解めっきシステムに用いられてよい。例えば、垂直めっきチャンバでは、基板がめっき流体中へ垂直に挿入されてよく、水平めっきチャンバでは、基板がめっき流体中へ水平に挿入されてよい。
【0033】
置換ガスユニットは、処理流体から離隔して又は距離をおいて設けられるか、又は処理流体の直上にとりわけ接触して設けられてもよい。置換ガスユニットは、置換チャンバへ取り付けられてもよく、処理流体中に浮くとともにとりわけめっき流体表面の上方に浮いてもよく、又は基板ホルダへ取り付けられてもよい。置換ガスユニットは、磁気的に案内されたり、空気で中心に置かれたりしてもよい。
【0034】
一例において、置換ガスユニットは、置換ガスで充満されてよい置換ガスチャンバを備える。一例において、置換ガスユニットは、少なくとも1つのガス入口を、特に基板の凹部が通過するための置換ガスクッション又は置換ガスカーテンを発生させるように構成された少なくとも1つのガスノズルを、備える。置換ガスチャンバは、ドレインを、特にドレインを通る流速の調節を可能にするデバイス又は制御システムを実装することによって制御されるドレインを、さらに備えてもよい。置換ガスチャンバは、排出装置を、特に排出装置を通る流速の調節を可能にするデバイス又は制御システムを実装することによって制御される排出装置を、備えてもよい。排出装置は、反応性及び/又は有毒性のガス及び/又は液体を加える本発明による基板の凹部にめっきするためのデバイスの使用を可能にしてもよい。かかるケースでは、めっきするためのデバイスにガスセンサ及び漏れ検出器の少なくとも一方がさらに備えられてもよい。
【0035】
一例において、処理流体はめっき流体であるか、又はめっき流体を含み、処理流体ユニットはめっき流体としての処理流体のリザーバを備え、リザーバは基板の化学及び電解の少なくとも一方の表面処理のために構成され、その中に基板が浸漬される。処理流体ユニットはその際めっきユニットであるか、又はめっきユニットを備え、処理流体は基板の凹部にめっきするように構成されためっき流体であるか、又は当該めっき流体を含む。凹部にめっきするためのデバイスは、その際、基板を置換ガスユニットからめっきユニットへ案内するように構成された案内ユニットをさらに備えてもよい。
【0036】
別の例では、処理流体はめっき流体ではなく、めっき流体を含まない。処理流体ユニットはリンスユニットであり、処理流体は凹部をリンスするように構成されたリンス流体である。リンス流体は連続的に循環されてもよい。処理流体ユニットは、その際、少なくとも1つの媒体入口、特に、基板が通過するための処理流体クッション又はカーテンを発生させるように構成された少なくとも1つの媒体ノズルを備える。
【0037】
ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方は、処理流体レベルから離隔して又はその直上に特に処理流体と接触して、設けられていてもよい。基板は、置換ガス及び処理流体にさらされた後に、凹部をめっきするように構成された処理流体ユニットのリザーバに含まれる追加のめっき流体に浸漬されてもよい。凹部にめっきするためのデバイスは、基板を置換ガスユニット及びリンスユニットからめっきユニットへ案内するように構成された別の案内ユニットをさらに備えてよい。
【0038】
特に垂直めっきシステムについては、めっきデバイスは基板が置換ガスチャンバ中へ挿入される入口部分を備えていてもよく、入口部分は基板が置換ガスにさらされるガス入口を備える。ガス入口は開口部、穿孔(bore)又はスリットであってもよい。基板の少なくとも1つの凹部が置換ガスで満たされるときに、その基板はリザーバに含まれる処理流体中へ挿入されてもよい。その後、置換ガスは処理流体に溶解してよく、結果として、処理流体が凹部を満たす。
【0039】
加えて又はその代わりに、媒体入口が、入口部分に配置され例えばガス入口に近接して配置されてもよいし、又はガス入口に組み込まれてしまってもよい。その後、基板を置換ガスにさらし、処理流体にさらし、例えばリザーバ内のめっき液中へ浸漬することができる。媒体入口は、少なくとも1つの媒体ノズル、媒体ノズルアレイ、少なくとも1つの媒体ドレイン及び媒体ドレインアレイのうちの少なくとも1つであってよい。ノズル(単数又は複数)又はドレイン(単数又は複数)をリザーバ中の処理流体又はめっき液中へ浸漬する事と処理流体の流量を増加させる事との少なくとも一方によって、媒体ノズル(単数又は複数)又は媒体ドレイン(単数又は複数)から例えば乾燥した処理流体結晶が落とされてもよい。
【0040】
一例において、凹部にめっきするためのデバイスは、入口部分に又はその中に配置され、ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方を基板に対して移動させるように構成された駆動ユニットをさらに備える。ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方は、基板がチャンバ中へ挿入されたときに入口部分を通過する際に基板に接近してもよい。ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方は、基板に対して近位位置と基板に対して遠位位置との間で駆動されてもよい。近位位置は、基板に近接又はほぼ接触してもよい。遠位位置は、近位位置より基板からさらに離れていてもよい。駆動ユニットは、ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方を基板に対してのみ相対的に垂直に、処理流体に対しては相対的に垂直でない方向に移動させるように構成されていてよい。一例では、駆動ユニット、ガス入口及び媒体入口の少なくとも1つが処理流体又はめっき流体に対してある距離をおいて配置される。
【0041】
特に、水平めっきシステムについては、基板がチャンバ中へ挿入されてもよく、チャンバが置換ガスで充満されてもよく、基板が処理流体中へ浸漬されてもよい。置換ガスは、チャンバ壁又は基板ホルダを介して、いずれの場合においても少なくとも1つの開口部、穿孔又はスリットを使って供給されてよい。置換ガスは、アーム状部材を介して供給されてもよい。置換ガスユニットはその際アーム状部材であるか又はアーム状部材を備え、アーム状部材及び基板は互いに対して相対的に移動可能であって、特に回転可能である。基板とアーム状部材との間の移動は、直線走査運動、レコードプレーヤのような運動又は同様のものであってもよい。アーム状部材は、置換ガス、リンス流体、開始剤及び化学活性物質の少なくとも1つを凹部及び基板の少なくとも一方へ加えるように構成されていてよい。これらのガス及び流体の少なくとも一方は、基板のより大きい寸法又は周の外側から、基板のより小さい寸法又は周の内側へ加えられてよい。
【0042】
特に電解めっきシステムについては、基板が空のチャンバ内へ挿入されてもよく、チャンバが例えば下方から置換ガス及び処理流体の少なくとも一方で充満されて閉じられてもよい。凹部にめっきするためのデバイスは、それゆえ、めっきユニットを周りの環境に対して本質的に閉じるように構成された制御ユニットを備えてもよい。制御ユニットは、その代わり又は加えて、めっきユニットを置換ガス及びめっき流体の少なくとも一方で充満するように構成されてもよい。制御ユニットは、プロセッサであってもよい。
【0043】
特に高速めっきシステムについては、置換ガスユニットが特にガス入口及び媒体入口の少なくとも一方が、基板を保持するように構成された基板ホルダに組み込まれてもよい。置換ガスユニットは、特にガス入口及び媒体入口の少なくとも一方は、基板ホルダの上部に、特にめっきデバイスの入口部分に配置されてもよい。基板ホルダは、1つ又は2つの基板(例えば、基板ホルダの各側に1つの基板)を保持してもよい。
【0044】
すべての種類のめっきシステムに以下のものを用いることができる。一例において、凹部にめっきするためのデバイスは、処理流体の処理温度の変化を制御するように構成された温度ユニットをさらに備える。温度ユニットは、処理流体の処理温度の増加及び減少の少なくとも一方を行うように構成されてもよい。温度ユニットは、加熱及び冷却の少なくとも一方を行うデバイスであってもよい。温度ユニットは、処理流体の温度を検出するようにさらに構成されてもよい。温度ユニットは、処理流体の温度を室温から約25と80℃の間の範囲へ、好ましくは約25と70℃の間の範囲へ、より好ましくは約25と50℃の間の範囲へ増加させるように構成されてよい。温度ユニットは、処理流体の温度を室温から約0と25℃の間の範囲へ、好ましくは約1と23℃の間の範囲へ、より好ましくは約4と20℃の間の範囲へ減少させるように同様に構成されてよい。適切に低い凝固点をもつ処理流体を加える際にも、0℃未満の処理流体の温度調節により、改善された処理性能をもたらすことができる。2つの温度制御ユニットを、一つはリンス流体としての処理流体用に、もう一つはめっき流体としての処理流体用に、適用することによって、前述の温度範囲に従って2つの異なる温度を与えることができる。一例において、リンス流体の温度は、リンス流体中の置換ガスの溶解度を典型的に増加させるために室温未満に下げられ、一方、めっき流体中の温度は、例えば、プロセスの速度を増加させたり溶解度パラメータを改善させたりすることなどのために室温から高い温度に上げられる。
【0045】
一例において、凹部にめっきするためのデバイスは、置換ガス及び処理流体の少なくとも一方の化学的特性の変化を制御するように構成された組成制御ユニットをさらに備える。組成制御ユニットは、置換ガス及び処理流体の少なくとも一方の化学的特性を検出するようにさらに構成されてもよい。置換ガス及び処理流体の少なくとも一方の化学的特性は、組成、pH値、添加物の量又は同様のものであってもよい。化学的特性の変更は、組成制御ユニットからの直接的又は間接的なフィードバックに基づいて、ある成分を添加することによって行われてもよい。
【0046】
本発明によれば、基板の凹部にめっきするためのシステムも提示される。凹部にめっきするためのシステムは、上記のような基板の凹部にめっきするためのデバイス及びデバイス制御装置を備える。デバイス制御装置は、基板の凹部内のガスの置換と、凹部への処理流体の添加と、凹部のめっきとの少なくとも1つを制御するように構成される。デバイス制御装置は、プロセッサであってよい。
【発明の効果】
【0047】
上記のような基板の凹部にめっきするためのデバイス、システム及び方法は、平面状金属及び金属化基板の表面全体を処理するためだけではなく、構造化された半導体基板、導体板及びフィルム基板を処理するためにも適する。上記のような基板の凹部にめっきするためのデバイス、システム及び方法は、太陽エネルギー発生のための大型表面光電パネル又は大規模モニタパネルの製造にも用いられてよい。
【0048】
独立請求項に係る基板の凹部にめっきするためのデバイス、システム及び方法は、特に、従属請求項に規定されるものと類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。さらに、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせとすることができることも理解されたい。
【0049】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載する実施形態より明らかとなり、それらを参照して説明する。
【0050】
本発明の例示的な実施形態は添付図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明による基板の凹部にめっきするための方法のステップの概略図を示す。
図2】基板の凹部にめっきするための本発明によるシステム及びデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
図3】基板の凹部にめっきするための本発明によるデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
図4】基板の凹部にめっきするための本発明によるデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
図5】基板の凹部にめっきするための本発明によるデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
図6】基板の凹部にめっきするための本発明によるデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
図7】基板の凹部にめっきするための本発明によるデバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明によれば、基板10の凹部にめっきするための方法が提示される。図1は、基板10の凹部にめっきするための方法のステップの概略図を示す。その方法は、以下のステップを含む。
-第1のステップS1において、複数の凹部を備える基板表面11をもつ基板10を用意する。
-第2のステップS2において、凹部から雰囲気ガス20を取り除くべく凹部内のある量の雰囲気ガス20を置換するために置換ガス30を凹部へ加える。
-第3のステップS3において、処理流体40を凹部へ加えて、凹部から置換ガス30を取り除くために置換ガス30が処理流体40に溶解する。
-第4のステップS4において、凹部にめっきする。
【0053】
図2図7は、基板10の凹部にめっきするための本発明によるシステム70及びデバイス50の概略的且つ例示的な実施形態を示す。凹部にめっきするためのシステム70は、基板10の凹部にめっきするための以下にさらに記載のデバイス制御装置71及びデバイス50を備える。デバイス制御装置71は、基板10の凹部内のガス置換と、凹部への処理流体40の添加と、凹部のめっきとの少なくとも1つを制御する。デバイス制御装置71は、プロセッサであってもよい。
【0054】
凹部にめっきするためのデバイス50は、置換ガスユニット51、処理流体ユニット52及びめっきユニット59を備える。置換ガスユニット51は、凹部内の雰囲気ガス20を置換するために置換ガス30を基板10の1つ以上の凹部へ加える。置換ガス30は、連続的に循環されてもよい。処理流体ユニット52は処理流体40を凹部へ加え、凹部から置換ガス30を取り除くために置換ガス30が処理流体40に溶解する。次に、めっきユニット59は、基板10の凹部にめっきを施す。
【0055】
本発明による基板10の凹部にめっきするための方法、システム70及びデバイス50は、基板10の凹部内の雰囲気ガス20を置換ガス30によって本質的に置換してもよい。その結果、ガスバリアが凹部の本質的に完全で且つ連続的なめっき又は充填を妨げることは、本質的にない。そのため、本発明による基板10の凹部にめっきするための方法、システム70及びデバイス50は、高価で複雑な機器部品を必要とする亜大気圧又は真空を適用することなく、大気圧において機能し、それにより、従来の方法と比較して、複雑さ、時間及びコストを低減する。その上、優れた電気的及び機械的の少なくとも一方の特性、信頼性及び寿命をもつ高品質の製品の製造を可能にする高品質の方法、システム70及びデバイス50が提供される。
【0056】
上述のように、凹部にめっきするためのデバイス50は、雰囲気ガス20を置換するために置換ガス30を基板10の凹部へ加える置換ガスユニット51を備える。図2図4に示されるように、置換ガスユニット51又は入口部分は、処理流体40と離隔して、ある距離をおいて且つ接触せずに、配置される。置換ガスユニット51は、置換ガス30で充満することができる置換ガスチャンバを備えるか、又は置換ガスチャンバとして形成される。置換ガスユニット51又は置換ガスチャンバは、ここでは、処理流体40から離隔したガスノズル53(図4)の形態のいくつかのガス入口を備える。ガスノズル53は、基板10及びその凹部が通過するための置換ガスクッション又は置換ガスカーテンを発生させるように構成される。
【0057】
また前述のように、凹部にめっきするためのデバイス50は、置換ガス30が処理流体40に溶解して凹部から置換ガス30を取り除くように、処理流体40を凹部へ加える処理流体ユニット52を備える。それには、少なくとも2つの選択肢がある。
【0058】
第1に、図2に示されるように、処理流体ユニット52は、凹部(ならびに基板10)に充填及びめっきするための処理流体40としてのめっき流体40aのリザーバを備える。基板10は、めっき流体40aに浸漬される。処理流体ユニット52は、その際は、めっきユニット59であり、処理流体40は、凹部にめっきするためのめっき流体40aである。
【0059】
第2に、図3及び図4に示されるように、処理流体40は、めっき流体40aではなく、凹部をリンスするためのリンス流体40bである。処理流体ユニット52は、その際には、リンスユニット60であるとともに、いくつかの媒体入口が特に基板10及びその凹部が通過するための処理流体クッション、リンス流体クッション、処理流体カーテン又はリンス流体カーテンを発生させるためのリンス流体40b用の媒体ノズルを備える。媒体入口は、ここでは、置換ガスユニット51に近接して若しくはその中に、又は、入口部分の中且つガス入口に近接して、配置される。この実施形態においても、本発明による基板10の凹部にめっきするためのデバイス50は、凹部(及び基板10)に充填及びめっきするためのめっき流体40a(不図示)のリザーバを備える。基板10は、この場合は処理流体40ではないめっき流体40aに浸漬される。媒体入口は、ここでは、めっき流体40aから離隔している。
【0060】
図4では、置換ガス用のガスノズル53及びリンス流体40b用の媒体入口が移動可能に配置される。複数のガスノズル53は、ノズルユニットとして一緒に、又は互いに独立に移動してもよい。ガスノズル53は基板10の縦方向に対して垂直に移動可能であり、ガスノズル53はチャンバ壁における駆動ユニットによってか、又は基板10も使用する同じ開口部を通ってチャンバに入る駆動ユニットによって駆動されることが可能である。
【0061】
図2~4に示されて上述されたように、ガス入口及び媒体入口の少なくとも一方をめっき流体40aからある距離をおいて、置換ガスユニット51に近接して若しくはその中に又は入口部分に設けることが一つの選択肢である。別の選択肢としては、図5a~図5cに示されるように、置換ガス30用のガス入口を処理流体40又はめっき流体40aの直上に且つそれと接触して、配置することができる。基板10は、次に置換ガス30にさらされるとともに、リザーバに含まれた凹部にめっきするための処理流体40又はめっき流体40aに浸漬される。また、図示されないが、リンス流体40b用の媒体入口をめっき流体40aの直上に且つそれと接触して、配置することもできる。
【0062】
図2図5が垂直めっきシステムを示すのに対して、図6aは、基板10が水平めっきチャンバ中へ水平に挿入される水平めっきシステムを示す。めっきチャンバが次に置換ガス30で充満され、その後、基板10がめっきチャンバに同様に含まれた処理流体40中へ浸漬される。置換ガス30は、ここでは、チャンバ壁を介して且つ基板ホルダ12を介して供給される。
【0063】
図6b及び6cに示されるように、置換ガス30は、アーム状部材57を介して供給されてもよい。アーム状部材57は、凹部及び基板10の少なくとも一方へリンス流体40b、開始剤及び化学活性物質の少なくとも1つを加えることもできる。基板10は、ここでは、アーム状部材57に対して相対的に回転可能であり、基板10とアーム状部材57との間の移動は、レコードプレーヤのような運動である。これらのガス及び流体の少なくとも一方は、好ましくは、基板10のより大きい寸法又は周の外側から、基板10のより小さい寸法又は周の内側へ加えられる。
【0064】
図7は、置換ガスユニット51が特にガス入口及び媒体入口の少なくとも一方が基板10を保持する基板ホルダ12へ組み込まれた高速めっきシステムを示す。ガス入口及び媒体入口(後者は不図示)は、基板ホルダ12の上部に、そしてそれにより、めっきデバイス50の入口部分に配置される。
【0065】
留意すべきは、本発明の実施形態が種々の主題を参照して記載されることである。特に、いくつかの実施形態が方法形式の請求項を参照して記載されたのに対して、他の実施形態は、装置形式の請求項を参照して記載される。しかしながら、以上及び以下の記載から、別に通知されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴間の任意の組み合わせもこの出願によって開示されると見做されることを当業者は推測するであろう。しかしながら、すべての特徴を組み合わせて、特徴の単なる足し合わせを超える相乗効果を提供することができる。
【0066】
図面及び先の記述において本発明が詳細に説明され記載されたが、かかる説明及び記述は、説明的又は例示的であり、制限的ではないと見做されるべきである。本発明は、開示される実施形態には限定されない。特許請求の範囲に係る発明を実施する際に、図面、開示、及び従属請求項の検討から、当業者は、開示される実施形態の他の変形形態を理解し、もたらすことができる。
【0067】
特許請求の範囲において、単語「備える(含む、有する)(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特許請求の範囲に列挙されるいくつかの項目の機能を単一のユニットが達成してもよい。いくつかの手段が互いに異なる従属請求項に再引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に用いられることができないことを示すわけではない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
11 基板表面
20 雰囲気ガス
30 置換ガス
40 処理流体
40a めっき流体
50 デバイス
51 置換ガスユニット
52 処理流体ユニット
59 めっきユニット
70 システム
71 デバイス制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7