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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】製鉄原料の山積み方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 3/02 20060101AFI20230620BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B65G3/02 E
B01D21/01 107B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019011072
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020040833
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018165611
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】島瀬 正博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇摩
(72)【発明者】
【氏名】大山 大
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-214292(JP,A)
【文献】国際公開第2014/058074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 3/02
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、
前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法。
【請求項2】
前記原料ヤードに山積みされる前の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程と、
前記希薄液が添加された前記製鉄原料を前記原料ヤードに山積みする工程と、
を含む請求項1に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項3】
前記原料ヤードに山積みされた後の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程を含む請求項1又は2に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項4】
前記希薄液は、前記製鉄原料に添加されるときの形態が水中油滴型エマルジョン状又は水溶液状の液体である請求項1~3のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項5】
前記希薄液は、前記高分子凝集剤と、分散媒である硫酸塩水溶液とを含有する水性分散液を、前記高分子凝集剤の濃度が0.1~2質量%となる量の水で希釈し、撹拌して得られた希薄液である請求項1~4のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項6】
前記希薄液は、前記高分子凝集剤として、アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体、アクリル酸又はその塩の重合体、及びアクリルアミド重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項7】
前記製鉄原料の全質量に対する前記高分子凝集剤としての添加割合が0.0001~0.05質量%の量で前記希薄液を前記製鉄原料に添加する請求項1~のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。
【請求項8】
前記製鉄原料への前記希薄液の添加量を、前記希薄液が添加された後の前記製鉄原料の含水率が8~25質量%となる量に制御する請求項1~のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄原料の山積み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石及び石炭等の製鉄原料は、製鉄所におけるヤード(以下、「原料ヤード」と記載する。)と称される置き場に山積みされ、保管されている。日本の場合、製鉄原料の多く(特に鉄鉱石や石炭)は、輸入に頼られ、世界各地から船舶で輸送されてきており、産地が異なる原料と一緒に山積みされ、その山の端から取り出されて使用されることで、産地による性質の差の緩和が図られている。
【0003】
上述の製鉄原料は、採掘現場や、採掘現場内外の保管場及び貯蔵場、並びにそれらの場から船舶等へ輸送されている場(例えばベルトコンベアやトラックの荷台等)において、例えば降雨や粉塵防止用の散水等により、水分を含む。この製鉄原料が、製鉄所へ向かうばら積み貨物船等の船舶で輸送されている間に、船舶の動揺や振動によって、製鉄原料中の水分が、製鉄原料とは分離して船倉の床に溜まった状態となる。そのため、製鉄原料をばら積み貨物船や艀等からアンローダー等で陸揚げする過程において、船倉の床に近い製鉄原料をグラブバケット等でつかみ取る際に、床に溜まった水ごと製鉄原料が取り出されることがある。その結果、水分量の多い製鉄原料が陸揚げされることがある。また、船舶を長時間にわたって泊めておくとそれだけ費用が嵩むことから、上述の陸揚げは降雨の中で行われる場合もある。その場合には、陸揚げされる製鉄原料中の水分量はより多くなる可能性がある。
【0004】
含水率が高い製鉄原料等の含水バラ物は、流動しやすいことから、その含水バラ物をベルトコンベア上に荷揚げするに当たり、含水バラ物がベルトコンベアから流出しやすく、落下しやすい等の荷揚げ障害を引き起こすことが特許文献1に開示されている。そのような障害を解消するために、特許文献1では、ベルトコンベア上の含水バラ物に対し、高分子凝集剤を主成分とした薬剤を薬液として添加し、得られた凝集物をベルトコンベアで搬送する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/058074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に具体的に開示された含水バラ物の荷揚げ処理方法では、主成分である高分子凝集剤を40%程度以上含有する薬剤(高分子凝集剤を含有する製品)をそのまま(原液で)、含水バラ物に添加する薬液として、使用している。そして、その方法では、ベルトコンベア上の含水バラ物に対し、上記薬液を添加し、含水バラ物と薬液との混合により、凝集粒子を生じさせることで、ベルトコンベアでの搬送が容易となり、原料ヤードへのバラ物の供給がトラブル無くできるとされている。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されたような方法によって、含水バラ物の荷揚げ処理を行ったとしても、その処理によってベルトコンベアで搬送されて原料ヤードに山積みされた製鉄原料においては、製鉄原料中の水分に起因する流動性によって、山が崩れる現象(以下、「山崩れ」と記載する。)が生じる場合があることがわかった。また、逆に、製鉄原料中の水分が非常に少ない場合(例えば、製鉄原料の含水率が8質量%未満であるような場合)には、製鉄原料中の水分が少なすぎることに起因する崩れやすさから、やはり山崩れが生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、製鉄原料を原料ヤードに山積みするに当たり、山積みされた製鉄原料の山崩れが生じにくい、製鉄原料の山積み方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製鉄原料を原料ヤードに山積みするに当たり、山積みされた製鉄原料の山崩れが生じにくい、製鉄原料の山積み方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試験例1.1及び1.2で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を撮影した写真を対比して表した図表である。
図2】試験例2.1~2.3で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を撮影した写真を対比して表した図表である。
図3】試験例3.1及び3.2で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を撮影した写真を対比して表した図表である。
図4】試験例4.1~4.5で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を撮影した写真を対比して表した図表である。
図5A】試験例5.1~5.7で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を上面側及び側面側から撮影した写真を対比して表した図表である。
図5B】試験例5.8~5.13で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を上面側及び側面側から撮影した写真を対比して表した図表である。
図5C】試験例5.14~5.19で用いた各試料について、崩れやすさを確認する試験を行った後の試料の状態を上面側及び側面側から撮影した写真を対比して表した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明者らは、原料ヤードに山積みされた含水状態の製鉄原料が、その原料中の水分等によって流動しやすくなることに起因して生じ得る山崩れを抑制するための方法を検討した。その検討の中で、原料ヤードを想定して、山積みされる前の製鉄原料や山積みされた後の製鉄原料に、特許文献1で具体的に開示された方法で使用された高分子凝集剤を40質量%程度含有する薬液(原液)をそのまま、添加する方法を試した。
【0014】
山積みされた後の製鉄原料に上記薬液を添加した試みでは、すでに山積みされた製鉄原料であることから、上記薬液を添加した後に、それらを混合する工程を省いたために、山崩れが発生しやすい結果となった。この結果を受けて、山積みされる前の製鉄原料に、上記薬液を添加する方法では、製鉄原料と薬液との混合の程度をいくつか変えて試したところ、混合の程度が低いほど、山崩れが発生しやすい傾向にあることがわかった。これらの結果と、上記薬液が添加された後の製鉄原料を観察した結果、上記薬液をそのまま使用した場合には、薬液が製鉄原料の全体に濡れていかず、薬液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきとどいていないことが、山崩れが生じる原因であるとの考えに至った。
【0015】
上記特許文献1に開示された方法では、含水バラ物(製鉄原料)を荷揚げするに当たり、ベルトコンベアから流出しやすかったり、落下しやすかったりという搬送トラブル等の荷揚げ障害を解決するために、特定の構成が採られている。具体的には、ベルトコンベア上の含水バラ物に上記薬液をシャワー状に散布又はミスト状に噴霧する方法や、上記薬液が添加された含水バラ物をベルトコンベアのジャンクション部位で落下混合する方法等が採られている。そのため、高分子凝集剤を40質量%程度含有する薬液(原液)が、含水バラ物(製鉄原料)の全体に濡れにくく、高分子凝集剤が含水バラ物の全体にいきとどきにくいことは、従来技術においては認識されていなかったと考えられる。
【0016】
また、上述した特許文献1に開示された方法では、含水バラ物(製鉄原料)をベルトコンベアで搬送する過程において、上記薬液(原液)をシャワー状又はミスト状で添加する設備を要し、また、薬液と含水バラ物とを十分に混合するには複数箇所にベルトコンベアのジャンクション部位の落差部分を設ける必要がある。そのため、設備が煩雑になり、また、設備設計に制約があるところでは、薬液と含水バラ物との十分な混合も難しくなる。さらに、原料ヤードに野積みされた製鉄原料に雨が降ると、上述の山崩れがより生じやすくなると考えられるが、原料ヤードに野積みされた状態の製鉄原料に、上記薬液をさらに添加しても、それらを混合することは山崩れを生じることになるため、特許文献1に開示された方法を利用することはできない。したがって、山積みされた製鉄原料の山崩れを抑制する方法には、より利用しやすい簡便な方法が望まれる。
【0017】
以上の検討を経て、本発明者らは、製鉄原料の全体に高分子凝集剤がいきとどきやすいように、製鉄原料に添加する液(添加液)として、高分子凝集剤の濃度が非常に低い液体(高分子凝集剤の希薄液)を使用することで、山崩れを抑制し得るか検討した。その結果、高分子凝集剤の濃度が特定の低濃度範囲である場合に、その希薄液を使いやすく、かつ、山崩れを生じにくくすることができることを見出し、本発明に至った。
【0018】
すなわち、本発明の一実施形態の製鉄原料の山積み方法(以下、「本方法」と記載することがある。)は、原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法に関する。そして、本方法では、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する工程を含む。
【0019】
上記工程によって、製鉄原料に希薄液が添加されると、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたり、高分子凝集剤の凝集作用により、製鉄原料が凝集し、凝集した製鉄原料の間隙に水分が捕捉されることで、含水状態の製鉄原料の流動性が低下する。これにより、製鉄原料中の水分に起因する流動性による山崩れを抑制することができる。また、製鉄原料中の水分が非常に少ない場合(例えば、製鉄原料の含水率が8質量%未満であるような場合)には、上記希薄液によって、製鉄原料を適度に湿った状態にできるため、製鉄原料中の水分が少なすぎることに起因する山崩れも抑制することができる。さらに、水分が非常に少ない製鉄原料の場合、高分子凝集剤を例えば10~50質量%含有する従来の薬液は、製鉄原料の全体に浸透し難いが、希薄液を用いることで、製鉄原料の全体に高分子凝集剤をいきとどかせることができる。よって、降雨等によって製鉄原料が流動しやすくなった場合にも、上述の如く、製鉄原料の流動性による山崩れを抑制することが可能である。
【0020】
本方法では、上記希薄液を使用するため、製鉄原料と希薄液との混合は必須ではないが、山積みされる前の製鉄原料に希薄液を添加する場合には、それらを混合することが好ましい。山積みされる前の製鉄原料と希薄液とを混合することにより、製鉄原料の全体に高分子凝集剤がよりいきとどきやすくなり、山崩れをより生じにくくすることができる。また、本方法では、希薄液を使用するため、山積みされた後の製鉄原料にも添加することができ、それゆえ、本方法は利用しやすい有用な方法といえる。
【0021】
前述の特許文献1に開示された含水バラ物の荷揚げ処理方法では、含水バラ物をベルトコンベア上に荷揚げするに当たり、含水バラ物の含水率が上昇した場合に、処理を行うこととしている。それゆえ、原料ヤードにおいては、荷揚げ時に含水率が上昇しなかったために薬液が添加されなかった含水バラ物と、荷揚げ時に含水率が上昇したために薬液が添加された含水バラ物とが、ともに搬送され、かつ、混在して山積みされることとなる。このような状況下で原料ヤードに山積みされた含水バラ物に雨が降ると、含水バラ物の山における、少なくとも薬液が添加されなかった含水バラ物の部分では流動しやすくなり、山が崩れやすくなることが懸念される。さらに、前述の通り、製鉄原料中の水分が少なすぎる場合にも山崩れが生じることがある。それらの実情に関し、本方法では、含水率が上昇したか否かに関わらず、製鉄原料に希薄液を添加することができる。そのようにすることで、原料ヤードに山積みされた製鉄原料の流動性の差を均一化することができ、山崩れをより生じにくくすることが可能となる。
【0022】
上述の通り、本方法では、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料に希薄液を添加する工程を含むことが好ましく、その際、より好ましくは製鉄原料と希薄液を混合し、また、希薄液が添加された製鉄原料を原料ヤードに山積みする工程を含むことが好ましい。この方法によって、製鉄原料の全体に高分子凝集剤がよりいきとどきやすくなり、山崩れをより抑制しやすくなる。さらに本方法では、それらの工程とは別に、又はそれらの工程を経て、原料ヤードに山積みされた後の製鉄原料に希薄液を添加する工程を含むことが好ましい。その工程により、原料ヤードに山積みされた後の製鉄原料が乾燥することによってその含水率が低くなりすぎることに起因して生じ得る山崩れや、山積みされた後の製鉄原料への降雨等によって製鉄原料が流動しやすい程度に含水率が上昇した場合に生じ得る山崩れを抑制することができる。
【0023】
本方法による処理対象は、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料、及び原料ヤードに山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料である。それらの両方を、本明細書において、単に「製鉄原料」と記載することがある。また、山積みされている最中の製鉄原料(例えば原料ヤードに落下させている間の製鉄原料等)は、山積み状態の直前であることから、山積みされる前の製鉄原料に含まれることとする。原料ヤードは、屋外及び屋内のいずれでもよく、本方法による効果の観点から、屋外がより好適である。製鉄原料としては、鉄鉱石、石炭、石灰石、コークス、及びダスト等を挙げることができる。これらのなかでも、鉄鉱石及び石炭が好適であり、鉄鉱石がより好適である。
【0024】
本方法による処理対象となる製鉄原料は通常、水分を含む。製鉄原料の含水率は、特に限定されないが、1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましい。製鉄原料中の水分に起因する流動性による山崩れを抑制する場合においては、そのような流動性による山崩れを生じやすい製鉄原料であって、例えば含水率(水分量)が8~20質量%である製鉄原料が、処理対象としてさらに好適である。また、製鉄原料中の水分が少なすぎることに起因する山崩れを抑制する場合においては、そのような山崩れを生じやすい製鉄原料であって、例えば、含水率(水分量)が8質量%未満(1質量%以上8質量%未満)である製鉄原料が、処理対象としてさらに好適である。本明細書において、製鉄原料の含水率は、製鉄原料中の水分の質量を、製鉄原料の全質量(水分及び固形分の質量の和)で割って算出される。
【0025】
製鉄原料に希薄液を添加する場所及びタイミングとしては、山積みされた後の製鉄原料に希薄液を添加する場合には、原料ヤードにて、山積みされた後の製鉄原料に希薄液を添加することができる。また、山積みされる前の製鉄原料に希薄液を添加する場合には、ばら積み貨物船等の船舶から製鉄原料を陸揚げする際や、原料ヤードに製鉄原料を搬送する際に、希薄液を添加することが好ましい。具体的には、船舶からの製鉄原料の陸揚げに用いられる陸揚げ設備内(例えば、グラブバケット式アンローダー及び連続式アンローダー等におけるホッパー内)にて、その陸揚げ設備内の製鉄原料に希薄液を添加することがより好ましい。また、陸揚げ設備により陸揚げされた製鉄原料を原料ヤードに搬送する搬送手段(例えば、ベルトコンベア)上の製鉄原料に希薄液を添加することがさらに好ましい。これらの方法により、搬送手段からの製鉄原料の流出や落下が抑制され、製鉄原料の搬送がより容易化され得る。
【0026】
製鉄原料への希薄液の添加方式としては、製鉄原料に希薄液を、シャワー状に散布する方式、ミスト状に噴霧する方式、及び蛇口から水道水を流す程度のストレート棒状に流す方式等が好ましく、これらの方式を組み合わせてもよい。これらのなかでも、実際の現場においては、ベルトコンベア上の製鉄原料に、希薄液をストレート棒状に流して添加する方式がより好ましく、希薄液をストレート棒状に流し落とす方式がさらに好ましい。これらのストレート棒状に流す方式によって、製鉄原料の全体に希薄液中の高分子凝集剤がいきとどきやすく、かつ、簡易な設備にて希薄液を添加することが可能である。
【0027】
製鉄原料に添加される希薄液は、希薄液の全質量を基準として、有効成分としての高分子凝集剤を0.1~2質量%含有する。希薄液中の高分子凝集剤の含有量が0.1質量%以上及び2質量%以下であることにより、山崩れを生じにくくする効果を得ることができる。その効果がより得られやすい観点から、希薄液中の高分子凝集剤の含有量は、0.2質量%以上であることが好ましい。また、山崩れを生じにくくする効果がより得られやすい観点及び希薄液を製造しやすい観点から、希薄液中の高分子凝集剤の含有量は、1.8質量%以下であることが好ましく、1.6質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
高分子凝集剤は、凝集剤として機能する高分子化合物をいい、その機能を有する水溶性重合体(共重合体を含む)が好適に用いられる。高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、及び両性高分子凝集剤を用いることができる。それらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、ノニオン性高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤が好ましく、アニオン性高分子凝集剤がより好ましい。
【0029】
好適な高分子凝集剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーの重合体であるポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系凝集剤、(メタ)アクリルアミドの重合体であるポリ(メタ)アクリルアミド系凝集剤、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系モノマーの重合体であるポリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩系凝集剤、及びポリビニルアミジン系凝集剤等を挙げることができる。また、好適な高分子凝集剤としては、(メタ)アクリル酸系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、及びアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上のモノマーに由来する構造単位を含む共重合体系凝集剤を挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「(メタ)アクリル」との文言には、アクリル及びメタクリルの両方の文言が含まれることを意味する。また、本明細書において、「構造単位」とは、高分子凝集剤(高分子化合物)を構成するモノマー単位を意味する。「モノマーに由来する構造単位」とは、例えば、モノマーにおける重合性二重結合(C=C)が開裂して単結合(-C-C-)となった構造単位等が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のほか、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、及び(メタ)アクリル酸リチウム等の(メタ)アクリル酸の金属塩;(メタ)アクリル酸アンモニウム;及び(メタ)アクリル酸のアミン塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。以下、それらのような(メタ)アクリル酸及びそれらの塩を含めて、「(メタ)アクリル酸(塩)」と記載することがある。また、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0032】
上記共重合体系凝集剤のより好適なものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)・(メタ)アクリルアミド共重合体、(メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸(塩)・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩・(メタ)アクリルアミド共重合体、及び(メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸・アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩共重合体等の凝集剤を挙げることができる。
【0033】
上記共重合体系凝集剤には、上述のモノマー以外のモノマー(他のモノマー)に由来する構造単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸、並びにそれらの塩等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸及び無水イタコン酸等のカルボン酸無水物;スチレン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物;ビニルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸、並びにそれらの塩等の不飽和スルホン酸;酢酸ビニル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0034】
高分子凝集剤の重量平均分子量(Mw)は、500万~3000万であることが好ましく、1000万~2500万であることがより好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、測定することができる。
【0035】
高分子凝集剤は、ポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド系凝集剤、及び(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体系凝集剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。これらのなかでも、希薄液は、高分子凝集剤として、(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体(上記(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体系凝集剤)、アクリル酸又はその塩の重合体(上記ポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤)、及びアクリルアミド重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましく、アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有することがさらに好ましい。
【0036】
製鉄原料に添加されるときの希薄液の形態としては、油中水滴(W/O)型エマルジョン及び水中油滴(O/W)型エマルジョン等のエマルジョン状;水性分散液等の分散液状;並びに水溶液等の溶液状を挙げることができる。これらのなかでも、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体によりいきとどきやすい観点から、希薄液は、製鉄原料に添加されるときの形態が水中油滴型エマルジョン状又は水溶液状の液体であることが好ましい。
【0037】
希薄液としては、例えば、高分子凝集剤の製造時から、特定量の高分子凝集剤と分散媒とを含有する分散液(分散液状の希薄液)を用いることができる。また、希薄液としては、例えば、高分子凝集剤(例えば10~50質量%)と分散媒を含有する分散液(例えば、市販の液状高分子凝集剤製品)を、高分子凝集剤の濃度が特定量となる量の液状媒体で希釈して得られた希薄液を用いることもできる。さらに、希薄液としては、例えば、市販の粉末状の高分子凝集剤の特定量を溶媒で溶解した溶液(溶液状の希薄液)を用いることもできる。希薄液は、高分子凝集剤、並びに上述した分散媒、溶媒、及び希釈に用い得る液状媒体等の少なくとも1種の液分を含有し、また、不可避的不純物(例えば高分子凝集剤を構成するモノマーの残存分等)を含有してもよい。
【0038】
より好適な希薄液としては、高分子凝集剤(例えば10~50質量%)及び分散媒を含有する分散液(例えば、市販の液状高分子凝集剤製品)を、高分子凝集剤の濃度が0.1~2質量%となる量の水で希釈し、撹拌して得られた希薄液を挙げることができる。この希薄液の希釈前の分散液における分散媒としては、例えば、水(例えばアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩を含有する水溶液を含む)や水素化精製軽質留出油(石油)等を挙げることができる。
【0039】
上述のような希薄液のさらに好適な具体例としては、高分子凝集剤と、分散媒である水素化精製軽質留出油(石油)とを含有する油中水滴(W/O)型エマルジョンを、高分子凝集剤の濃度が0.1~2質量%となる量の水で希釈し、撹拌して得られた希薄液を挙げることができる。この希薄液には、分散媒に比べて大量の水で希釈されることで、連続相が油から水に転相し、その連続相(水)中に高分子凝集剤が溶解した、水中油滴(O/W)型エマルジョン状の希薄液を用いることができる。
【0040】
また、上述のような希薄液のさらに好適な具体例としては、高分子凝集剤と、分散媒である硫酸塩水溶液(例えば、硫酸アンモニウム水溶液及び硫酸マグネシウム水溶液等)とを含有する水性分散液(例えばサスペンジョン)を、高分子凝集剤の濃度が0.1~2質量%となる量の水で希釈し、撹拌して得られた希薄液を挙げることもできる。この希薄液には、分散媒に比べて大量の水で希釈され、連続相である水溶液中の水の含有量が増大することで、その水(水溶液)中に高分子凝集剤が溶解した、水溶液状の希薄液を用いることができる。さらに、希薄液の好適な具体例としては、粉末状の高分子凝集剤0.1~2質量%を水で溶解した水溶液状の希薄液を挙げることもできる。
【0041】
なお、希薄液中の液分には、上述した水、及び水素化精製軽質留出油(石油)以外の他の液分を含有してもよい。他の液分としては、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、及びグリコールエーテル等の水溶性有機溶剤を挙げることができ、それらの1種又は2種以上を用いることができる。上述の通り、希薄液は、液分として、水を含有することが好ましい。希薄液中の水の含有量は、希薄液の全質量を基準として、90~99.9質量%であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
【0042】
製鉄原料に、上述した好適な希薄液が添加されると、希薄液中の水溶性重合体の一種である高分子凝集剤が製鉄原料中の自由水にも溶解する。そして、製鉄原料中の原料粒子に高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が起こり、その作用により、原料粒子どうしが凝集して粗大化され、その粗大粒子の間隙に上記自由水の大部分が捕捉されると考えられる。その結果、製鉄原料は、流動性が低下して、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質され、原料粒子と自由水部分が少なくなったような外観となり、山崩れが生じにくくなる。上記間隙は非常に小さく、また、上記好適な高分子凝集剤は、雨水や湧水等を浸透しにくい性質を有するため、希薄液の添加後かつ山積み後の製鉄原料は、降雨等による水と出会っても混ざり合わないで、そのままの形状を保ちやすい。
【0043】
製鉄原料への希薄液の添加量としては、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤としての添加割合が0.0001~0.05質量%の量で希薄液を製鉄原料に添加することが好ましい。製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤としての添加割合は、0.0005~0.02質量%であることがより好ましく、0.001~0.01質量%であることがさらに好ましい。上記の「製鉄原料の全質量」は、希薄液が添加される製鉄原料全体の質量であって、製鉄原料の固形分の質量及び製鉄原料中の水分の質量の和である。また、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤としての添加割合は、希薄液中の高分子凝集剤(有効成分)としての添加質量を、製鉄原料の全質量で割って算出される。
【0044】
また、製鉄原料への希薄液の添加量を、希薄液が添加された後の製鉄原料の水分が8~25質量%となる量に制御することが好ましい。製鉄原料への希薄液の添加により、希薄液が添加された後の製鉄原料の水分を8~25質量%とすることにより、希薄液の添加後かつ山積み後の製鉄原料中の適度な水分量と、高分子凝集剤によって、山崩れをより生じにくくすることができる。この観点から、製鉄原料への希薄液の添加量を、希薄液が添加された後の製鉄原料の水分が10~20質量%となる量に制御することがより好ましい。
【0045】
以上詳述した本発明の一実施形態の製鉄原料の山積み方法は、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する工程を含む。この工程によって、希薄液が製鉄原料の全体に濡れていき、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたることで、製鉄原料中の水分に起因する流動性による山崩れや、製鉄原料中の水分が少なすぎることに起因する山崩れを抑制することができる。それゆえ、本方法は、原料ヤードにおける製鉄原料の山崩れ抑制方法としてより好適である。なお、希薄液の添加後かつ山積み後の製鉄原料については、従来と同様に使用することができ、その製鉄原料に添加された希薄液中の高分子凝集剤等の成分は、製鉄過程で焼失される。
【0046】
以上の通り、本発明の一実施形態の製鉄原料の山積み方法は、次の構成を採ることが可能である。
[1]原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法。
[2]前記原料ヤードに山積みされる前の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程と、前記希薄液が添加された前記製鉄原料を前記原料ヤードに山積みする工程と、を含む上記[1]に記載の製鉄原料の山積み方法。
[3]前記原料ヤードに山積みされた後の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程を含む上記[1]又は[2]に記載の製鉄原料の山積み方法。
[4]前記希薄液は、前記製鉄原料に添加されるときの形態が水中油滴型エマルジョン状又は水溶液状の液体である上記[1]~[3]のいずれかに記載の製鉄原料の山積み方法。
[5]前記希薄液は、前記高分子凝集剤として、アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体、アクリル酸又はその塩の重合体、及びアクリルアミド重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する上記[1]~[4]のいずれかに記載の製鉄原料の山積み方法。
[6]前記製鉄原料の全質量に対する前記高分子凝集剤としての添加割合が0.0001~0.05質量%の量で前記希薄液を前記製鉄原料に添加する上記[1]~[5]のいずれかに記載の製鉄原料の山積み方法。
[7]前記製鉄原料への前記希薄液の添加量を、前記希薄液が添加された後の前記製鉄原料の含水率が8~25質量%となる量に制御する上記[1]~[6]のいずれかに記載の製鉄原料の山積み方法。
【実施例
【0047】
以下、実験室レベルでの試験例を挙げて、本発明の一実施形態の製鉄原料の山積み方法に関する効果等をさらに具体的に説明する。
【0048】
<試験例1>
試験例1では、篩分けにより、粒径が5mm以下の鉄鉱石であって、含水率が7.7質量%であるカラジャス鉄鉱石を製鉄原料として用いた。
【0049】
(試験例1.1)
試験例1.1では、ブランク試験として、鉄鉱石に添加する液(以下、「添加液」と記載することがある。)を用いずに、上記カラジャス鉄鉱石をそのまま試料として用い、後述する試験を行った。
【0050】
(試験例1.2)
試験例1.2では、容器内の上記カラジャス鉄鉱石に添加液を添加した後、容器に蓋をし、容器ごと上下に5回転倒撹拌して、鉄鉱石と添加液とを混合し、得られた混合物を試料として用い、後述する試験を行った。添加液には、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有するアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製;アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体及び水素化精製軽質留出油(石油)を成分とする淡黄白色~淡褐色乳濁液。)を、上記共重合体の含有量が0.4質量%となる量の水で希釈(100倍希釈)し、撹拌して得られた希薄液(白色乳濁液)を用いた。この希薄液は、分散媒(油)に比べて大量の水で希釈されたことで、連続相が油から水に転相し、その連続相(水)中に上記共重合体が溶解した、水中油滴(O/W)型エマルジョン状の希薄液である。上記鉄鉱石の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合は2.0質量%とした。したがって、上記鉄鉱石の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。
【0051】
(崩れやすさ確認試験)
以下に述べるように、模擬的に山積みした状態とした各試料の崩れにくさ及び崩れやすさを確認する試験(本明細書において、「崩れやすさ確認試験」と記載する。)を行った。内寸で幅(奥行)200mm、長さ400mm、及び高さ100mmの片側が開口した直方体状の槽であって、底面に滑り止めのための珪砂を敷き詰めて固定した試験用槽を用意した。この試験用槽の底面の中央付近に、内寸で内径100mm及び高さ105mmのプラスチック製の円筒(以下、「円筒モールドM」と記載する。)を置いた後、その円筒モールドM内に、各試験例における試料をすりきりまで充填した。次いで、円筒モールドMを上方に引き抜き、そのときに試験用槽の底面に残った試料について、円筒モールドM内に充填されていたことで円柱形状であった試料からの崩れ度合いを評価した。具体的には、円筒モールドMを引き抜いた後に試験用槽に残った試料の径方向への最大長さ(x値;試験用槽に水平方向の長さ)及び残った試料の最大高さ(y値;試験用槽に垂直方向の高さ)を測った。そして、測定されたx値及びy値に基づいて、崩れにくさ及び崩れやすさ(以下、単に「崩れやすさ」と記載する。)を評価した。残った試料のx値が元の円筒モールドMの内径(100mm)に近くて小さいほど、また、残った試料のy値が元の円筒モールドMの高さ(105mm)に近くて大きいほど、残った試料が、円筒モールドM内にあった元の円柱形状に近い形状であったことを表し、崩れにくかったことを表す。
【0052】
(崩れやすさの評価)
上記の崩れやすさ確認試験の結果で得られたx値及びy値に基づいて、以下の評価基準にしたがって、崩れやすさを評価した。A~Dの順に崩れにくかったことを表し、A及びBを許容できる崩れにくいレベル、C及びDを許容できない崩れやすいレベルとした。
A:x値とその元の値(内径100mm)との差、及びy値とその元の値(高さ105mm)との差が、いずれも、5mm未満であった。
B:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差が、いずれも15mm未満であり、かつ、x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、5mm以上15mm未満であった。
C:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差が、いずれも30mm未満であり、かつ、x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、15mm以上30mm未満であった。
D:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、30mm以上であった。
【0053】
試験例1.1及び1.2の試験条件及び試験結果を表1に示す。また、試験例1.1及び1.2のそれぞれにおいて、上記の崩れやすさ確認試験によって、試験用槽に残った試料の状態を撮影した写真を、対比表の形式で表した図1に示す。なお、試験例1.1では、図1に示すように、上述の試験によって、試料が大きく崩れて、試験用槽の長さ方向の内壁に達したため、x値は150mm以上とした。
【0054】
【0055】
試験例1.1(ブランク試験)では、円筒モールドMを引き抜いた後に残った試料が大きく崩れたのに対し、試験例1.2では、円筒モールドMを引き抜いた後に残った試料が大きく崩れることはなく、x値及びy値も高く、概ね、元の形状が維持されていた。試験例1では、含水率が7.7質量%と低い製鉄原料を使用したことから、試験例1.1で試料が崩れたのは、製鉄原料中の水分が少なすぎることが原因と考えられる。また、試験例1.2で崩れを抑制できたのは、含水率が非常に低い製鉄原料に希薄液を添加したことにより、製鉄原料が適度に湿った状態になったことによる影響が大きいと考えられる。
【0056】
<試験例2>
試験例2では、上記試験例1で用いた製鉄原料と同じカラジャス鉄鉱石(含水率7.7質量%)に加水し、含水率を15質量%に調整したカラジャス鉄鉱石を製鉄原料として用いた。
【0057】
(試験例2.1)
試験例2.1では、ブランク試験として、添加液を用いずに、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石をそのまま試料として用い、上述の崩れやすさ確認試験を行って、x値及びy値を測り、崩れやすさを評価した。
【0058】
(試験例2.2)
試験例2.2では、上記試験例1.2と比較して、試験例1.2で用いた含水率が7.7質量%であるカラジャス鉄鉱石を、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石に変更したこと以外は、試験例1.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、上述の崩れやすさ確認試験を行って、x値及びy値を測り、崩れやすさを評価した。
【0059】
(試験例2.3)
試験例2.3では、上記試験例1.2と比較して、試験例2.2と同様、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石を使用したこと、及び使用した添加液を変更したこと以外は、試験例1.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、上述の崩れやすさ確認試験を行って、x値及びy値を測り、崩れやすさを評価した。試験例2.3における添加液には、試験例2.2で使用したものと同じアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製)をそのままの原液で用いた。上記鉄鉱石の全質量に対する添加液(原液)の添加割合は0.02質量%とした。したがって、上記鉄鉱石の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。
【0060】
試験例2.1~2.3の試験条件及び試験結果を表2に示す。また、試験例2.1~2.3のそれぞれにおいて、上記の崩れやすさ確認試験によって、試験用槽に残った試料の状態を撮影した写真を、対比表の形式で表した図2に示す。
【0061】
【0062】
試験例2.1(ブランク試験)では、円筒モールドMを引き抜いた後に残った試料が潰れてy値が小さくなり、かつ、水平方向に流れてx値が大きくなったことから、処理対象の鉄鉱石(含水率15質量%)がその水分に起因する流動性によって、崩れやすいことが確認された。それに対して、試験例2.2では、円筒モールドMを引き抜いた後に残った試料が大きく崩れることはなく、x値及びy値も高く、概ね、元の形状が維持されていた。このことから、含水率が15質量%である鉄鉱石に、高分子凝集剤を0.4質量%含有する希薄液を添加したことによって、試料の崩れを抑制できたことが確認された。この結果は、希薄液の添加により、希薄液中の高分子凝集剤が鉄鉱石の全体にいきとどいたことにより、高分子凝集剤の凝集作用で多くの鉄鉱石が凝集し、凝集した鉄鉱石の間隙に多くの水分が捕捉され、鉄鉱石の流動性が低下したことによるものと考えられる。
【0063】
また、試験例2.3では、試験例2.1よりも試料の崩れを抑制できたものの、試験例2.2の結果と比べて、x値が大きく、y値が小さい結果となり、試料の崩れが生じたことが確認され、さらに、試験用槽に残った試料の下部からの水(自由水)の流出も見られた。これらの結果は、試験例2.3で使用した、高分子凝集剤を40質量%含有する薬液(原液)が、鉄鉱石の全体に濡れにくく、薬液中の高分子凝集剤が鉄鉱石の全体にいきとどいていなかったことによるものと考えられる。
【0064】
<試験例3>
試験例3では、含水率が9.6質量%である超微粉鉄鉱石に加水し、含水率を20質量%に調整した超微粉鉄鉱石を製鉄原料として用いた。
【0065】
(試験例3.1)
試験例3.1では、ブランク試験として、添加液を用いずに、上記の含水率が20質量%である超微粉鉄鉱石をそのまま試料として用い、上述の崩れやすさ確認試験を行って、x値及びy値を測り、崩れやすさを評価した。
【0066】
(試験例3.2)
試験例3.2では、上記試験例1.2と比較して、試験例1.2で用いた含水率が7.7質量%であるカラジャス鉄鉱石を、上記の含水率が20質量%である超微粉鉄鉱石に変更したこと以外は、試験例1.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、上述の崩れやすさ確認試験を行って、x値及びy値を測り、崩れやすさを評価した。
【0067】
試験例3.1及び3.2の試験条件及び試験結果を表3に示す。また、試験例3.1及び3.2のそれぞれにおいて、上記の崩れやすさ確認試験によって、試験用槽に残った試料の状態を撮影した写真を、対比表の形式で表した図3に示す。
【0068】
【0069】
試験例3の結果から、含水率が20質量%と高いことで流動しやすい鉄鉱石に、高分子凝集剤を0.4質量%含有する希薄液を添加したことによって、試料の流動性が低下し、試料の崩れを抑制できたことが確認された。
【0070】
<試験例4>
試験例4では、試験例2と同様に、試験例1で用いた製鉄原料と同じカラジャス鉄鉱石(含水率7.7質量%)に加水し、含水率を15質量%に調整したカラジャス鉄鉱石を製鉄原料として用いた。
【0071】
(試験例4.1)
試験例4.1では、ブランク試験として、添加液を用いずに、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石をそのまま試料として用い、後述する試験を行った。
【0072】
(試験例4.2)
プラスチック製容器に、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石を500g入れた。その容器内の鉄鉱石に、添加液を添加した後、容器に蓋をし、容器ごと上下に5回転倒撹拌して、鉄鉱石と添加液とを混合した。得られた混合物を試料として用い、後述する試験を行った。添加液には、前述の試験例2.3で用いたものと同じアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製)をそのまま、原液で用いた。上記鉄鉱石の全質量に対する添加液(原液)の添加割合は0.02質量%とした。したがって、上記鉄鉱石の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。
【0073】
(試験例4.3)
試験例4.3では、上記試験例4.2と比較して、使用した添加液及びその量を変更したこと以外は、試験例4.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、後述する試験を行った。添加液には、前述の試験例1.2、2.2、及び3.2と同様、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有するアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製)を、上記共重合体の含有量が0.4質量%となる量の水で希釈(100倍希釈)し、撹拌して得られたO/W型エマルジョン状の希薄液(上記試験例1.2参照)を用いた。鉄鉱石の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合は2.0質量%とした。したがって、鉄鉱石の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。
【0074】
(試験例4.4)
試験例4.4では、上記試験例4.2と比較して、使用した添加液及びその量を変更したこと以外は、試験例4.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、後述する試験を行った。添加液には、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有する水性分散液(商品名「NSドライ-709L」、日鉄住金環境社製;アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体及び硫酸アンモニウムを成分とする白色~淡褐色乳濁液。)を、上記共重合体の含有量が1質量%となる量の水で希釈(20倍希釈)し、撹拌して得られた希薄液(透明液)を用いた。この希薄液は、分散媒(硫酸アンモニウム水溶液)に比べて大量の水で希釈され、連続相である水溶液中の水の含有量が増大したことで、その水(水溶液)中に高分子凝集剤が溶解した、水溶液状の希薄液である。鉄鉱石の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合は0.8質量%とした。したがって、鉄鉱石の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。
【0075】
(試験例4.5)
試験例4.5では、上記試験例4.2と比較して、使用した添加液及びその量を変更したこと以外は、試験例4.2と同様の手順及び方法にて試料を得た。その試料について、後述する試験を行った。添加液には、試験例4.4で用いた希薄液と同じものを用いた。鉄鉱石の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合は0.4質量%とした。したがって、鉄鉱石の全質量に対する高分子凝集剤(アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体)としての添加割合は、0.004質量%とした。
【0076】
(崩れやすさ確認試験)
上記試験用槽の底面の中央付近に、内寸で内径60mm及び高さ100mmのプラスチック製の円筒(以下、「円筒モールドm」と記載する。)を置いた後、その円筒モールドm内に、各試験例における試料をすりきりまで充填した。次いで、円筒モールドmを上方に引き抜き、そのときに試験用槽の底面に残った試料について、円筒モールドm内に充填されていたことで円柱形状であった試料からの崩れ度合いを評価した。具体的には、円筒モールドmを引き抜いた後に試験用槽に残った試料の径方向への最大長さ(x値;試験用槽に水平方向の長さ)及び残った試料の最大高さ(y値;試験用槽に垂直方向の高さ)を測った。残った試料のx値が元の円筒モールドmの内径(60mm)に近くて小さいほど、また、残った試料のy値が元の円筒モールドmの高さ(100mm)に近くて大きいほど、残った試料が、円筒モールドm内にあった元の円柱形状に近い形状であったことを表し、崩れにくかったことを表す。
【0077】
(崩れやすさの評価)
上記の崩れやすさ確認試験の結果で得られたx値及びy値に基づいて、以下の評価基準にしたがって、崩れやすさを評価した。
A:x値とその元の値(内径60mm)との差、及びy値とその元の値(高さ100mm)との差が、いずれも、元の値の5%未満であった。
B:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差が、いずれも、元の値の10%未満であり、かつ、x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、元の値の5%以上10%未満であった。
C:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差が、いずれも、元の値の25%未満であり、かつ、x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、元の値の10%以上25%未満であった。
D:x値とその元の値との差、及びy値とその元の値との差の少なくとも一方が、元の値の25%以上であった。
【0078】
(試料の見かけの水分具合)
試験例4.1~4.5のそれぞれにおける崩れやすさ確認試験を行った後の試料の一部を採取し、試料の状態を目視にて確認し、以下の評価基準にしたがって、試料の見かけの水分(自由水)の具合を評価した。
A:試料表面に出ている水分がほとんど見られず、団粒状又は団塊状の外観であった。
B:試料表面の一部に水分が出ているように見られたが、団粒状又は団塊状の外観であった。
C:試料表面の大部分に水分が出ているように見られ、流動しやすい泥状の外観であった。
【0079】
試験例4.1~4.5の試験条件及び試験結果を表4に示す。また、試験例4.1~4.5のそれぞれにおいて、上記の崩れやすさ確認試験によって、試験用槽に残った試料の状態(図4中の状態1)を撮影した写真、及び見かけの水分具合を評価した試料の状態(図4中の状態2)を撮影した写真を、対比表の形式で表した図4に示す。
【0080】
【0081】
試験例4.2では、試験例4.1(ブランク試験)よりも試料の崩れを抑制できたものの、試験例4.3~4.5の結果と比べて、x値が大きく、y値が小さい結果となり、試料の崩れが生じたことが確認された。また、試験例4.2における原液を添加した後の製鉄原料(試料)は、見かけ上(表面上)、大部分に水分が出ているように見られ、流動しやすい泥状様の外観であったため、薬液(原液)中の高分子凝集剤が鉄鉱石の全体にいきとどいていなかったと推測される。
【0082】
試験例4.3~4.5では、含水率が15質量%である製鉄原料に、高分子凝集剤を0.4質量%又は1質量%含有する分散液の希薄液を添加したことによって、希薄液を添加した後の製鉄原料(試料)の崩れを抑制できたことが確認された。また、試験例4.3~4.5(特に試験例4.3及び4.4)における希薄液を添加した後の製鉄原料(試料)は、見かけ上(表面上)、水分があまり見られない状態の団粒状又は団塊状の外観となっていた。これは、希薄液中の高分子凝集剤が鉄鉱石の全体にいきとどき、高分子凝集剤の凝集作用により凝集した製鉄原料の間隙に水分が十分に捕捉されたことによるものと考えられる。
【0083】
<試験例5>
試験例5では、篩分けにより、粒径が5mm以下の鉄鉱石であって、含水率が4.1質量%であるカラジャス鉄鉱石に水を加え、含水率を15質量%に調整したカラジャス鉄鉱石を製鉄原料として用いた。この製鉄原料から、以下に述べる試料を作製し、作製した試料について、試験例4で述べた方法と同様の方法の崩れやすさ確認試験を行った。その結果を後記表5(表5-1~5-3)に示す。また、試験例5において、崩れやすさ確認試験によって、試験用槽に残った試料の状態を上面側及び側面側から撮影した写真を対比表の形式で表した図5図5A~C)に示す。
【0084】
なお、試験例5で用いた製鉄原料は、試験例2及び4で用いた製鉄原料のように、含水率が15質量%に調整されたカラジャス鉄鉱石であるが、試験例2及び4で用いた製鉄原料に比べて、より細かい粒径のものが多かったことから、より流動しやすいものであった(試験例5.1参照)。そのため、試験例5における崩れやすさ確認試験では、試験例5で用いた製鉄原料自体の崩れやすさ確認試験の結果(試験例5.1のブランク試験の結果)に基づいて評価した。
【0085】
(試験例5.1)
試験例5.1では、ブランク試験として、添加液を用いずに、上記の含水率が15質量%であるカラジャス鉄鉱石をそのまま試料として用いた。
【0086】
(試験例5.2)
プラスチック製容器に、上記の製鉄原料を500g入れた。その容器内の製鉄原料に、添加液を添加した後、容器に蓋をし、容器ごと上下に5回転倒撹拌して、製鉄原料と添加液とを混合し、試料を得た。添加液には、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有する水性分散液(商品名「NSドライ-709L」、日鉄住金環境社製;アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体及び硫酸アンモニウムを成分とする白色~淡褐色乳濁液。)を、上記共重合体の含有量が1質量%となる量の水で希釈(20倍希釈)し、撹拌して得られた水溶液状の希薄液(透明液)を用いた(上記試験例4.4参照)。製鉄原料の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合は0.10質量%とした。したがって、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合は、0.001質量%とした。
【0087】
(試験例5.3~5.7)
試験例5.3~5.5では、試験例5.2と比較して、製鉄原料の全質量に対する添加液(希薄液)の添加割合(それに伴う、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合)を、表5-1に示す通りに変更したこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。また、試験例5.6及び5.7では、上記水性分散液を、上記共重合体の含有量がそれぞれ0.50質量%及び0.25質量%となる量の水で希釈(それぞれ40倍及び80倍希釈)し、撹拌して得られた水溶液状の希薄液(透明液)を添加液として用いたこと、製鉄原料の全質量に対する、添加液(希薄液)の添加割合(それに伴う、高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合)を表5-1に示す通りとしたこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。
【0088】
(試験例5.8~5.10)
試験例5.8~5.10では、添加液として、試験例5.2で用いた高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有する水性分散液(商品名「NSドライ-709L」、日鉄住金環境社製)をそのまま、原液で用いた。そして、この添加液(原液)を、製鉄原料の全質量に対して、0.02質量%添加した。したがって、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合は、0.004質量%とした。また、容器内の製鉄原料に添加液(原液)を添加した後の転倒撹拌の回数を、試験例5.8では5回、試験例5.9では50回、試験例5.10では100回とした。これらのこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。
【0089】
(試験例5.11~5.13)
試験例5.11~5.13では、添加液として、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有する水性分散液(商品名「NSドライ-709L」、日鉄住金環境社製;アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体及び硫酸アンモニウムを成分とする白色~淡褐色乳濁液。)を、上記共重合体の含有量が0.2質量%となる量の水で希釈(100倍希釈)し、撹拌して得られた水溶液状の希薄液(透明液)を用いた(上記試験例4.4参照)。この添加液(希薄液)を、製鉄原料の全質量に対して、2.0質量%添加した。したがって、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合は、0.004質量%とした。また、容器内の製鉄原料に添加液(希薄液)を添加した後の転倒撹拌の回数を、試験例5.11では5回、試験例5.12では25回、試験例5.13では50回とした。これらのこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。
【0090】
(試験例5.14~5.16)
試験例5.14~5.16では、添加液として、試験例2.3と同様、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有するアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製)をそのままの原液で用いた。そして、この添加液(原液)を、製鉄原料の全質量に対して、0.02質量%添加した。したがって、製鉄原料の全質量に対する高分子凝集剤(上記共重合体)としての添加割合は、0.008質量%とした。また、容器内の製鉄原料に添加液(原液)を添加した後の転倒撹拌の回数を、試験例5.14では5回、試験例5.15では50回、試験例5.16では100回とした。これらのこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。
【0091】
(試験例5.17~5.19)
試験例5.17~5.19では、添加液として、高分子凝集剤としてアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有するアニオン性W/O型エマルジョン(商品名「NSドライ-322L」、日鉄住金環境社製;アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体及び水素化精製軽質留出油(石油)を成分とする淡黄白色~淡褐色乳濁液。)を、上記共重合体の含有量が0.2質量%となる量の水で希釈(200倍希釈)し、撹拌して得られた水中油滴(O/W)型エマルジョン状の希薄液(白色乳濁液)を用いた(上記試験例1.2参照)。この添加液(希薄液)を、製鉄原料の全質量に対して、4.0質量%添加した。したがって、製鉄原料の全質量に対する上記共重合体としての添加割合は、0.008質量%とした。また、容器内の製鉄原料に添加液(希薄液)を添加した後の転倒撹拌の回数を、試験例5.17では5回、試験例5.18では25回、試験例5.19では50回とした。これらのこと以外は、試験例5.2と同様にして、試料を得た。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
試験例5.2~5.7の結果より、試験例5.1の結果で示された非常に流動性の高い製鉄原料に対して、高分子凝集剤を0.25~1.00質量%含有する希薄液を添加したことによって、製鉄原料の流動性を十分に低下でき、製鉄原料の崩れを抑制できたことが確認された(図5A参照)。
【0096】
また、試験例5.8~5.10では、高分子凝集剤を20質量%含有する水性分散液の原液を用いた場合、それと製鉄原料との撹拌回数を50回及び100回と増やして十分に混合したとしても、製鉄原料の流動性を十分に低下できず、製鉄原料の崩れを有効に抑制することができなかった。この結果より、上記原液は、原液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきとどきにくかったものと考えられる。これに対して、試験例5.11~5.13では、非常に流動性の高い製鉄原料に、高分子凝集剤を0.2質量%含有する水溶液状の希薄液を添加したことによって、製鉄原料と希薄液との撹拌回数が少ない場合でも、製鉄原料の流動性を十分に低下でき、製鉄原料の崩れを抑制できたことが確認された(図5B参照)。この結果より、上記希薄液は、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきとどきやすかったものと考えられる。
【0097】
さらに、試験例5.14~5.16では、高分子凝集剤を40質量%含有するW/O型エマルジョンの原液を用いた場合、それと製鉄原料との撹拌回数を50回及び100回と増やして十分に混合したとしても、製鉄原料の流動性を十分に低下できず、製鉄原料の崩れを有効に抑制することができなかった。この結果より、上記原液は、原液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきとどきにくかったものと考えられる。これに対して、試験例5.17~5.19では、非常に流動性の高い製鉄原料に、高分子凝集剤を0.2質量%含有するO/W型エマルジョン状の希薄液を添加したことによって、製鉄原料と希薄液との撹拌回数が少ない場合でも、製鉄原料の流動性を十分に低下でき、製鉄原料の崩れを抑制できたことが確認された(図5C参照)。この結果より、上記希薄液は、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきとどきやすかったものと考えられる。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C