(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16L 1/028 20060101AFI20230620BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F16L1/028 E
E21D9/06 311C
(21)【出願番号】P 2019046037
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309890(JP,A)
【文献】特開2016-164420(JP,A)
【文献】特開2002-059853(JP,A)
【文献】特開2013-102583(JP,A)
【文献】特開2011-163434(JP,A)
【文献】特開2003-202093(JP,A)
【文献】特開2003-214087(JP,A)
【文献】特開2006-322611(JP,A)
【文献】実開昭49-085726(JP,U)
【文献】実開昭59-164434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/028
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する耐震管推進敷設工法に使用される推進力伝達装置において、
前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段と、前記挿し口の外周面に固定されるリング状の締め付け手段とからなり、前記推進力伝達手段は、前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、前記締め付け手段に固定されたブラケットと、前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸とからなり、前記固定軸の他端は、前記推進力伝達部材に形成された長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、前記固定軸の前記他端が挿入された前記長孔は、仕切壁により仕切られ、前記締め付け手段と前記受け口の端面との間には、隙間が形成され、前記推進力伝達部材に過大な押し込み力が作用した場合に、前記固定軸により前記仕切壁が破断
し、
前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように前記外周面に沿って折れ曲がった曲がり部を有しており、当該曲がり部の少なくとも一部が前記端面と当接することを特徴とする耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項2】
前記締め付け手段は、一本のバンドと、前記バンドを締め付ける締め付け具からなっていることを特徴とする、請求項1に記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項3】
前記締め付け手段は、複数本のバンドと、前記バンド同士を締め付ける締め付け具とからなっていることを特徴とする、請求項1に記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項4】
前記締め付け具は、前記バンドの端部間に通されるボルトと、前記ボルトに螺合するナットとからなることを特徴とする、請求項2または3に記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項5】
前記推進力伝達手段は、2個以上であることを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項6】
前記支持部材は、車輪からなることを特徴とする、請求項1から5の何れか1つに記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項7】
前記仕切壁には、破断用の溝が形成されていることを特徴とする、請求項1から6の何れか1つに記載の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置、特に、地上で推進力伝達装置を後行管の挿し口に装着することができ、しかも、推進力伝達装置の装着後であっても、ゴム輪の嵌め込み状態をチェックゲージにより確認することができる等の効果を備えた耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路工事による交通障害や掘削残土の処理等の問題が少なく、しかも、軌道下等の開削工事が行えない場所であっても管の敷設が可能なさや管式耐震管推進敷設工法が実施されている。
【0003】
さや管式耐震管推進敷設工法の一例が特許文献1に開示されている。以下、このさや管式耐震管推進敷設工法を、従来推進敷設工法といい、図面を参照しながら説明する。
【0004】
図9は、従来推進敷設工法により受け口内に挿し口が挿入された接合部を示す部分断面図、
図10は、
図9のA-A線断面図、
図11は、チェックゲージを示す平面図、
図12は、チェックゲージによるゴム輪の挿入状態の確認方法を示す断面図である。
【0005】
図9から
図12において、31は、先行管32の受け口、33は、先端部に抜け止め用突起34が形成された、後行管35の挿し口、36は、受け口31の内周面に形成されたロックリング用溝37内に、芯出し用リング38を介して嵌め込まれたロックリング、39は、受け口31の内周面に形成されたゴム輪用溝40内に嵌め込まれたゴム輪、41は、推進力伝達装置である。
【0006】
推進力伝達装置41は、受け口31の端面にあてがわれる、接合部内へのグラウト材の侵入を防止する防護リング42と、挿し口33に固定される、さや管43内を転動する車輪44が取り付けられた、ボルト45によりリング状に連結可能なフランジ46と、防護リング42とフランジ46との間の挿し口33に介在されるリング状の推力伝達部材47とからなっている。
【0007】
推力伝達部材47は、ポリスチレンやポリウレタン等の発泡樹脂からなり、管接合の際の後行管の推進力に対しては塑性変形せず、これにより、先行管に推進力を伝達し、一方、地震等による過大な押し込み力に対しては塑性変形し、これにより、接合部の収縮を可能にして、管の破壊を防止する機能を有している。
【0008】
従来推進敷設工法により管を接合するには、予め後行管35の挿し口33に推進力伝達装置41の防護リング42と推力伝達部材47を差し込んでおき、この後、後行管35を地下に吊り下ろして先行管32の受け口31に嵌め込む。次いで、推進力伝達装置41のフランジ46を挿し口33にボルト45により仮締めし、防護リング42を介して推力伝達部材47を受け口1の端面に密着させ、そして、フランジ46をボルト45により本締めする。
【0009】
このようにして、先行管32と後行管35とが、接合部に収縮代T(
図9参照)を維持した状態で接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来推進敷設工法によれば、管接合の際の後行管35の推進力に対して、推力伝達部材47は、塑性変形しないので、先行管32に推進力を伝達することができる。
【0012】
一方、地震等による過大な押し込み力に対して、推力伝達部材47は、塑性変形する結果、接合部の収縮が可能となる。このようにして、管の耐震機能は維持されている。しかしながら、以下のような問題があった。
【0013】
挿し口33は、ゴム輪用溝40内に嵌め込まれたゴム輪39の弾性力に抗して受け口31に挿入されるが、この際、ゴム輪39のゴム輪用溝40内への嵌め込み位置がずれると、接合部における止水効果が阻害されるおそれがある。従って、挿し口33を受け口31に嵌め込んだ後に、ゴム輪39が正確にゴム輪用溝40内に嵌め込まれているか否かを確認することは、重要である。
【0014】
受け口31への挿し口33の嵌め込み後、ゴム輪39が正確にゴム輪用溝40内に嵌め込まれ、正しい位置にあるか否かの確認は、
図11に示すような専用のチェックゲージ48を使用して行われる。すなわち、
図12に示すように、チェックゲージ48を受け口31から挿し口33に沿って挿入し、受け口31の端面までの挿入長さb(
図11参照)によって、ゴム輪39が正しい位置にあるか否かを判断する。
【0015】
従来推進敷設工法においては、チェックゲージ48による確認作業は、推進力伝達装置41を挿し口33に装着した後では行えない。何故なら、推進力伝達装置41を挿し口33に装着した後では、フランジ46の内周面と挿し口33の外周面との間に、チェックゲージ48を挿入する隙間がないからである。
【0016】
この結果、従来推進敷設工法においては、推進力伝達装置41は、後行管35を地下に吊り下し、後行管35の挿し口33を先行管32の受け口31に嵌め込んだ後でないと、挿し口33に装着することができなかった。
【0017】
地上で推進力伝達装置41の装着作業が行なえれば、推進力伝達装置41の装着作業と、地下での受け口31への挿し口33の嵌め込み作業とが別々に行えるので、地上で複数本の後行管35の挿し口33への推進力伝達装置41の装着が行なえる結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0018】
また、地下での推進力伝達装置41の装着作業は、作業空間が狭いことから時間を要するが、地上で推進力伝達装置41の装着作業が行なえれば、地下では受け口31への挿し口33の嵌め込み作業とチェックゲージ48による確認作業のみですむので、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0019】
また、従来推進敷設工法によれば、さや管43内を転動する車輪44は、フランジ46をリング状に連結するボルト45を軸にして取り付けられているので、先行管32の重量や管推進抵抗がボルト45に作用する結果、ボルト45の締め付け力に影響を及ぼし、挿し口33へのフランジ46の固定力が低下するおそれがある。
【0020】
従って、この発明の目的は、地上で推進力伝達装置を後行管の挿し口に装着することができ、しかも、推進力伝達装置の装着後であっても、ゴム輪の嵌め込み状態をチェックゲージにより確認することができる結果、管接合に要する作業時間を短縮することができ、しかも、先行管の重量や管推進抵抗により、挿し口への締め付け手段の固定力が低下するおそれがない耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とする。
【0022】
請求項1に記載の発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する耐震管推進敷設工法に使用される推進力伝達装置において、前記挿し口の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個の推進力伝達手段と、前記挿し口の外周面に固定されるリング状の締め付け手段とからなり、前記推進力伝達手段は、前記受け口の端面に当接し、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する推進力伝達部材と、前記締め付け手段に固定されたブラケットと、前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸とからなり、前記固定軸の他端は、前記推進力伝達部材に形成された長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、前記固定軸の前記他端が挿入された前記長孔は、仕切壁により仕切られ、前記締め付け手段と前記受け口の端面との間には、隙間が形成され、前記推進力伝達部材に過大な押し込み力が作用した場合に、前記固定軸により前記仕切壁が破断し、前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように前記外周面に沿って折れ曲がった曲がり部を有しており、当該曲がり部の少なくとも一部が前記端面と当接することに特徴を有するものである。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記締め付け手段は、一本のバンドと、前記バンドを締め付ける締め付け具からなっていることに特徴を有するものである。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記締め付け手段は、複数本のバンドと、前記バンド同士を締め付ける締め付け具とからなっていることに特徴を有するものである。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3記載の発明において、前記締め付け具は、前記バンドの端部間に通されるボルトと、前記ボルトに螺合するナットとからなることに特徴を有するものである。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、前記推進力伝達手段は、2個以上であることに特徴を有するものである。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1つに記載の発明において、前記支持部材は、車輪からなることに特徴を有するものである。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6の何れか1つに記載の発明において、前記仕切壁には、破断用の溝が形成されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、挿し口の外周面に沿って間隔をあけて複数個の推進力伝達手段を配するとともに、締め付け手段と受け口の端面との間に隙間を形成することによって、地上で推進力伝達装置を後行管の挿し口に装着した後であっても、チェックゲージによりゴム輪の嵌め込み状態を確認することができるので、地上で推進力伝達装置の装着作業が行なえる。これによって、推進力伝達装置の装着作業と、地下での受け口への挿し口の嵌め込み作業とが別々に行えるので、地上で複数本の後行管の挿し口への推進力伝達装置の装着が行なえる。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0031】
また、この発明によれば、地下での推進力伝達装置の装着作業は、作業空間が狭いことから時間を要するが、地上で推進力伝達装置の装着作業が行なえるので、地下では受け口への挿し口の嵌め込み作業とチェックゲージによる確認作業のみですむ。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0032】
また、この発明によれば、締め付け手段と推進力伝達部材とを別体とすることによって、締め付け手段による固定力と、推進力伝達部材の仕切壁の強度との力関係を、予め切り離して設定することが可能になるので、作業時に締め付け手段のバンドの締結力にバラツキが生じても、推進力を受ける推進力伝達部材の強度を一定に維持することができる。
【0033】
また、この発明によれば、締め付け手段のバンドの締め付けボルトが、支持部材である車輪の車輪軸と同軸になっていないので、同軸の場合の問題点、すなわち、管重量や推進抵抗がボルトに負荷をかけ、管への固定力に影響を及ぼすといった問題は生じない。すなわち、別軸とすることによって、推進時の挙動があっても当初の固定力を保持することができる。
【0034】
また、この発明によれば、推進力伝達部材に過大な押し込み力が作用した場合において、仕切壁が破断することによって挿し口の押し込み方向の変位を許容し、締め付け手段は、挿し口に対して滑る構造になっていないので、管の外周面に傷を付けるおそれはない。
【0035】
また、この発明によれば、管接合部直後に支持部材としての車輪が存在するので、さや管がカーブしている場合等の軌道変化に対応しやすく、追従性が良くなる。従来推進敷設工法においては、推力伝達部材の後部に推力伝達装置(
図9参照)があり、それに車輪が設置しているので、管接合部から遠い位置に車輪が存在することから屈曲部等では先行管への後行管の追従性が悪い。
【0036】
また、この発明によれば、推進力伝達装置のバンドの外面に車輪を設けないことによって、車輪の径を大きくすることができるので、その分、車輪のころがり摩擦抵抗を小さくすることができ、推進力伝達に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す部分断面斜視図である。
【
図2】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す別の部分断面斜視図である。
【
図3】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す横断面図である。
【
図4】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図である。
【
図5】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を示す部分斜視図である。
【
図6】この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置の推進力伝達部材を示す斜視図である。
【
図7】さや管内の、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す斜視図である。
【
図8】推進力伝達部材に過大な押し込み力が作用した場合の推進力伝達部材の移動状態を示す横断面図であり、(a)は、仕切壁の破壊前の状態を示し、(b)は、仕切壁の破壊後の状態を示し、(c)は、推進力伝達部材の移動終了の状態を示す。
【
図9】従来推進敷設工法により受け口内に挿し口が挿入された管接合部を示す部分断面図である。
【
図12】チェックゲージによるゴム輪の挿入状態の確認方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す部分断面斜視図、
図2は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す別の部分断面斜視図、
図3は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す横断面図、
図4は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図、
図5は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置を示す部分斜視図、
図6は、この発明の耐震管推進敷設工法用推進力伝達装置の推進力伝達部材を示す斜視図である。
【0040】
図1から
図6において、1は、先行管2の受け口、3は、先端部に抜止め用突起4が形成された、後行管5の挿し口、6は、受け口1の内周面に形成されたロックリング用溝7(
図3参照)内に、芯出し用リング8を介して嵌め込まれたロックリング、9は、受け口1の内周面に形成されたゴム輪用溝10(
図3参照)内に嵌め込まれたゴム輪、11は、この発明の推進力伝達装置である。
【0041】
この発明の推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に装着されるリング状の締め付け手段12と、挿し口3の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個(この例では3個)の推進力伝達手段13とからなっている。
【0042】
締め付け手段12は、一本のバンド14と、バンド14を締め付ける締め付け具としてのボルト15とナット16とからなっている。ボルト15は、バンド14の両端に通され、ボルト15に螺合するナット16を締めることによって、バンド14が締め付けられる。なお、締め付け手段12は、複数本のバンド14同士を締め付け具としてのボルト15とナット16とによりリング状に連結したものであってもよい。
【0043】
推進力伝達手段13は、受け口1の端面1aに当接し、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達する推進力伝達部材17と、締め付け手段12の外面に固定されたブラケット18と、さや管19(
図7参照)内において後行管5を支持する支持部材としての車輪20と、車輪20をブラケット18に回転可能に固定する、一端がブラケット18に取り付けられた固定軸21とからなっている。推進力伝達部材17の先端部は、受け口1の端面1aと当接するように直角に折れ曲がっている。
【0044】
固定軸21は、ボルトからなり、固定軸21の他端は、推進力伝達部材17に形成された長孔17aの一方端に、ナット22により抜け出し不可に挿入されている。固定軸21の他端が挿入された長孔17aは、過大な押し込み力により破断する仕切壁23により仕切られ、これによって、固定軸21の他端は、推進力伝達部材17の長孔17aに保持され、推進力伝達部材17は、仕切壁23が過大な押し込み力により破壊された場合、ブラケット18に対して長孔17aの長さ分だけ後退可能になっている。仕切壁23は、推進力伝達部材17と一体に形成しても、別体としてもよい。また、仕切壁23に破断用の溝を形成しておいてもよい。
【0045】
上述したように推進力伝達手段13を構成することによって、締め付け手段12と受け口1の端面1aとの間には、チェックゲージ48を挿入するための隙間(T1)(
図3参照)が形成される。
【0046】
また、車輪20は、締め付け手段12のボルト15を軸にして取り付けられていないので、先行管2の重量や管推進抵抗がボルト15に作用することはない。この結果、挿し口3への締め付け手段12の固定力が低下するおそれはない。すなわち、別軸とすることによって、推進時の挙動があっても当初の固定力を保持することができる。
【0047】
次に、この発明の推進力伝達装置11を使用した耐震管推進敷設工法について説明する。
【0048】
この発明の推進力伝達装置11を使用した耐震管推進敷設工法により管を接合するには、地上で後行管5の挿し口3に推進力伝達装置11を固定する。すなわち、締め付け手段12のバンド14をボルト15とナット16とにより締め付けて、推進力伝達装置11を挿し口3に固定する。
【0049】
推進力伝達装置11の固定位置は、挿し口3を受け口1に嵌め込んだときに、先行管2と後行管5との管接合部が伸縮可能となる位置で、推進力伝達手段13の先端部が受け口1の端面1aに当接する位置とする。
【0050】
このようにして、地上で推進力伝達装置11を後行管5の挿し口3に固定したら、後行管5を地下に吊り下ろして、先行管2の受け口1に嵌め込む。これによって、先行管2と後行管5とが、管接合部に収縮代T2(
図3参照)を維持した状態で接合される。
【0051】
このようにして、先行管2と後行管5とを接合したら、チェックゲージ48(
図10参照)を、締め付け手段12と受け口1の端面1aとの間の隙間(T1)(
図3参照)から受け口1内に挿入して、ゴム輪9が正しい位置にあるか否かを判断する(
図12参照)。
【0052】
このようにして、チェックゲージ48を受け口1の全周に亘ってゴム輪9に到達するまで挿入することができるので、チェックゲージ48によりゴム輪9の嵌め込み状態を確実に確認することができる。
【0053】
このように、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行なえるので、推進力伝達装置11の装着作業と、地下での受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とが別々に行える。この結果、地上で複数本の後行管5の挿し口3への推進力伝達装置11の装着が行なえるので、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0054】
また、地下での推進力伝達装置11の装着作業は、作業空間が狭いことから時間を要するが、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行なえるので、地下では受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とチェックゲージ48による確認作業のみですむ。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0055】
この発明の推進力伝達装置11を使用した耐震管推進敷設工法によれば、さや管19内への管敷設の際の後行管5の推進力は、後行管5の挿し口3に、締め付け手段12を介して取り付けられた推進力伝達部材17により先行管2に伝達することができる。すなわち、
図8(a)に示すように、推進力伝達部材17が受け口1の端面1aに当接することによって、先行管2に伝達することができる。
【0056】
一方、地震等により管の推進力を超える過大な押し込み力が管接合部に作用した場合には、
図8(b)に示すように、推進力伝達部材17の長孔17a内に挿入された固定軸21が仕切壁23を破壊し、
図8(c)に示すように、長孔17aの長さ分だけ後退する。この結果、管接合部は、収縮代T2(
図3参照)だけ収縮することになる。
【0057】
また、管接合部に過大な引っ張り力が作用した場合には、挿し口3の抜け止め用突起4がロックリング6に当接するまで管接合部が伸びる。
図3に、管接合部の伸び代をT3で示す。
【0058】
なお、この発明の推進力伝達装置11を使用した耐震管推進敷設工法では、工事の都合により地上で作業スペースがない場合でも、従来工法と同様の作業により、地下での推進力伝達装置11の装着も可能である。
【0059】
以上説明したように、この発明によれば、挿し口3の外周面に沿って間隔をあけ複数個の推進力伝達手段13を配するとともに、締め付け手段12と受け口1の端面との間に隙間(T1)を形成することによって、地上で推進力伝達装置11を後行管5の挿し口3に装着した後であっても、チェックゲージ48によりゴム輪9の嵌め込み状態を確認することができるので、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行なえる。これによって、推進力伝達装置11の装着作業と、地下での受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とが別々に行えるので、地上で複数本の後行管5の挿し口3への推進力伝達装置11の装着が行なえる。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0060】
また、この発明によれば、地下での推進力伝達装置11の装着作業は、作業空間が狭いことから時間を要するが、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行なえるので、地下では受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とチェックゲージ48による確認作業のみですむ。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0061】
また、この発明によれば、締め付け手段12と推進力伝達部材17とを別体とすることによって、締め付け手段12による固定力と、推進力伝達部材17の仕切壁23の強度との力関係を、予め切り離して設定することが可能になるので、作業時に締め付け手段12のバンド14の締結力にバラツキが生じても、一定の推進力を維持することができる。
【0062】
また、この発明によれば、締め付け手段12のバンド14の締め付けボルト15が車輪20の軸と同軸になっていないので、同軸の場合の問題点、すなわち、管重量や推進抵抗がボルトに負荷をかけ、管への固定力に影響を及ぼすといった問題は生じない。すなわち、別軸とすることによって、推進時の挙動があっても当初の固定力を保持することができる。
【0063】
また、この発明によれば、推進力伝達部材17に過大な押し込み力が作用した場合において、仕切壁23が破壊することによって挿し口3の押し込み方向の変位を許容し、締め付け手段12は、挿し口3に対して滑る構造になっていないので、管の外周面に傷を付けるおそれはない。
【0064】
また、この発明によれば、管接合部直後に支持部材としての車輪21が存在するので、軌道変化に対応しやすく、追従性が良くなる。
【0065】
また、この発明によれば、推進力伝達装置11のバンド14の外面に車輪20を設けないことによって、車輪20の径を大きくすることができるので、その分、車輪20のころがり摩擦抵抗を小さくすることができ、推進力伝達に有利となる。
【符号の説明】
【0066】
1:受け口
1a:端面
2:先行管
3:挿し口
4:抜け止め用突起
5:後行管
6:ロックリング
7:ロックリング用溝
8:芯出し用リング
9:ゴム輪
10:ゴム輪用溝
11:この発明の推進力伝達装置
12:締め付け手段
13:推進力伝達手段
14:バンド
15:ボルト
16:ナット
17:推進力伝達部材
17a:長孔
18:ブラケット
19:さや管
20:車輪
21:固定軸
22:ナット
23:仕切壁
31:受け口
32:先行管
33:挿し口
34:抜け止め用突起
35:後行管
36:ロックリング
37:ロックリング用溝
38:芯出し用リング
39:ゴム輪
40:ゴム輪用溝
41:推進力伝達装置
42:防護リング
43:さや管
44:車輪
45:ボルト
46:フランジ
47:推力伝達部材
48:チェックゲージ