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特許7299047学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20230620BHJP
   G16H 10/40 20180101ALI20230620BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H10/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019056983
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020160590
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松野 達樹
【審査官】佐伯 憲太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068752(JP,A)
【文献】国際公開第2005/122033(WO,A1)
【文献】特開2017-174168(JP,A)
【文献】特開2011-128935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0262604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータで、医療施設にて実行された患者に対する第1検査の第1検査結果、前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記患者に対する処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果とを含んだ教師データを複数取得し、
コンピュータで、取得した教師データに基づいて、第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルを生成すること
を特徴とする学習モデル生成方法。
【請求項2】
前記地域情報は、前記所定地域内での特定の疾病の発生数、患者の年齢別若しくは性別の前記所定地域内での前記特定の疾病の発生数、又は前記所定地域内での前記特定の疾病の発生状況の時系列変化を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の学習モデル生成方法。
【請求項3】
前記特定の疾病は感染症であること
を特徴とする請求項2に記載の学習モデル生成方法。
【請求項4】
前記第1検査は、前記患者から採取した検体に対する顕微鏡検査、遺伝子増幅検査、又は免疫学的検査を含むこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の学習モデル生成方法。
【請求項5】
前記第2検査は、病原体を分離培養する検査を含むこと
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の学習モデル生成方法。
【請求項6】
前記患者情報は、年齢、性別、症状、検査履歴、投薬履歴、治療履歴又は行動履歴を含むこと
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の学習モデル生成方法。
【請求項7】
患者に対する処置が終了し、かつ前記患者に関する第2検査結果が得られた後に、コンピュータで、前記患者に関する第1検査結果、前記地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記第2検査結果とを含んだ再学習データを取得し、
コンピュータで、前記再学習データを用いて前記学習モデルを再学習する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の学習モデル生成方法。
【請求項8】
患者に対する処置が終了し、かつ前記患者に関する第2検査結果が得られた後に、コンピュータで、前記患者に関する第1検査結果、前記地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記第2検査結果に応じて前記患者に施すべきであった処置の内容を表す処置情報とを含む再学習データを取得し、
コンピュータで、前記再学習データを用いて前記学習モデルを再学習する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の学習モデル生成方法。
【請求項9】
医療施設にて患者に対して実行された第1検査の第1検査結果を取得し、
前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報を取得し、
前記患者に関する患者情報を取得し、
第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルへ、取得した第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力して処置情報又は検査予測を出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記学習モデルから検査予測が出力された場合に、第2検査結果に応じた処置情報を記憶した記憶部を参照し、前記検査予測に応じた処置情報を出力する
処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
取得した第1検査結果と、前記学習モデルにより出力された検査予測と、前記検査予測に応じた処置情報とを含む画像を表示するための情報を出力する
処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
取得した患者情報と、前記所定地域内で採取された検体を用いて実行された第2検査の第2検査結果群及び前記所定地域を示す地図を含む前記地域情報とを含んだ画像を表示するための情報を出力する
処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
医療施設にて患者に対して実行された第1検査の第1検査結果を取得する第1取得部と、
前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報を取得する第2取得部と、
前記患者に関する患者情報を取得する第3取得部と、
第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に、患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルと、
取得した第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を前記学習モデルへ入力して処置情報又は検査予測を出力する出力部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療施設では、患者に対して検査を行い、検査の結果に基づいて診断を行う。従来、情報処理装置を利用して、検査の結果に基づいた診断を行う技術が開発されている。特許文献1には、ニューラルネットワークを利用して診断を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-52774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療施設では、まず簡易検査を行い、検査結果に応じて精密検査を行うことがある。例えば、簡易検査によって、患者が特定の疾病に罹患している虞のあることが判明した場合に、精密検査によって、罹患の有無を確定させる。簡易検査は、短時間、例えば数十分から数時間以内に結果が出る。これに対し、精密検査の結果が得られるまでには、長時間、例えば数日から一ヶ月必要である。精密検査の結果が得られるまでは、確定的な診断は保留される。しかし、診断が保留されている間に状況が悪化する虞がある。疾病が感染症である場合は、診断が保留されている間に感染が拡大する虞がある。そこで、迅速な診断を行うことが必要となる。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、迅速な診断を可能にする学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る学習モデル生成方法は、コンピュータで、医療施設にて実行された患者に対する第1検査の第1検査結果、前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記患者に対する処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果とを含んだ教師データを複数取得し、コンピュータで、取得した教師データに基づいて、第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルを生成することを特徴とする。
【0007】
本発明においては、患者に対する第1検査結果、医療施設を含む地域に関し、長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報、及び患者情報を入力した場合に、患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルを、教師データに基づいて生成する。第1検査結果、患者情報及び地域情報に基づいて、学習モデルを利用して、処置情報又は検査予測を得ることが可能となる。
【0008】
本発明に係る学習モデル生成方法は、前記地域情報は、前記所定地域内での特定の疾病の発生数、患者の年齢別若しくは性別の前記所定地域内での前記特定の疾病の発生数、又は前記所定地域内での前記特定の疾病の発生状況の時系列変化を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態においては、地域情報は、所定地域内での疾病の発生数、患者の年齢別若しくは性別の疾病の発生数、又は特定の疾病の発生状況の時系列変化を含む。地域内での疾病の発生状況に応じて、患者の状況を表す第2検査結果が適切に予測される。
【0010】
本発明に係る学習モデル生成方法は、前記特定の疾病は感染症であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一形態においては、特定の疾病は感染症である。地域情報は、所定地域内での感染症の発生状況を含む。感染症の発生状況と患者が感染症に罹患している可能性との相関は高く、地域情報に応じて検査予測を得ることが可能である。
【0012】
本発明に係る学習モデル生成方法は、前記第1検査は、前記患者から採取した検体に対する顕微鏡検査、遺伝子増幅検査、又は免疫学的検査を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一形態においては、第1検査は、検体に対する顕微鏡検査、遺伝子増幅検査、又は免疫学的検査を含む。これらの第1検査により、短時間で患者の状況がある程度判明する。
【0014】
本発明に係る学習モデル生成方法は、前記第2検査は、病原体を分離培養する検査を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一形態においては、第2検査は、病原体を分離培養する検査を含む。長い検査期間を要するものの、この第2検査により、患者の状況がより明らかとなる。
【0016】
本発明に係る学習モデル生成方法は、前記患者情報は、年齢、性別、症状、検査履歴、投薬履歴、治療履歴又は行動履歴を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一形態においては、患者情報は、患者の年齢、性別、症状、検査履歴、投薬履歴、治療履歴又は行動履歴を含む。これらの患者情報に応じて、患者の状況を表す第2検査結果が適切に予測される。
【0018】
本発明に係る学習モデル生成方法は、患者に対する処置が終了し、かつ前記患者に関する第2検査結果が得られた後に、コンピュータで、前記患者に関する第1検査結果、前記地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記第2検査結果とを含んだ再学習データを取得し、コンピュータで、前記再学習データを用いて前記学習モデルを再学習することを特徴とする。
【0019】
本発明の一形態においては、患者に対する処置が終了し、かつ第2検査結果が得られた後に、第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を含んだ再学習データを用いて、学習モデルを再学習する。再学習により、より正確に第2検査結果を予測することができるように学習モデルが更新される。
【0020】
本発明に係る学習モデル生成方法は、患者に対する処置が終了し、かつ前記患者に関する第2検査結果が得られた後に、コンピュータで、前記患者に関する第1検査結果、前記地域情報、及び前記患者に関する患者情報と、前記第2検査結果に応じて前記患者に施すべきであった処置の内容を表す処置情報とを含む再学習データを取得し、コンピュータで、前記再学習データを用いて前記学習モデルを再学習することを特徴とする。
【0021】
本発明の一形態においては、患者に対する処置が終了し、かつ第2検査結果が得られた後に、第1検査結果、地域情報及び患者情報と、第2検査結果に応じて前記患者に施すべきであった処置の内容を表す処置情報とを含んだ再学習データを用いて、学習モデルを再学習する。再学習により、より適切な処理情報が得られるように、学習モデルが更新される。
【0022】
本発明に係るコンピュータプログラムは、医療施設にて患者に対して実行された第1検査の第1検査結果を取得し、前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報を取得し、前記患者に関する患者情報を取得し、第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルへ、取得した第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力して処置情報又は検査予測を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、患者に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報に基づいて、学習モデルを利用して、第2検査結果を予測した検査予測又は患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報が出力される。第2検査結果が得られる前に、検査予測又は処置情報が得られ、患者に対して適切な診断を迅速に行うことが可能となる。
【0024】
本発明に係るコンピュータプログラムは、前記学習モデルから検査予測が出力された場合に、第2検査結果に応じた処置情報を記憶した記憶部を参照し、前記検査予測に応じた処置情報を出力する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0025】
本発明の一形態においては、第2検査結果に応じた処置情報を記憶部に記憶しておき、学習モデルを用いて得られた第2検査結果に応じて、記憶部から処置情報が取得される。第2検査結果が得られれば、患者に対する推奨される処置の内容が定まる。
【0026】
本発明に係るコンピュータプログラムは、取得した第1検査結果と、前記学習モデルにより出力された検査予測と、前記検査予測に応じた処置情報とを含む画像を表示するための情報を出力する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0027】
本発明の一形態においては、第1検査予測、検査予測及び処置情報を含んだ画像が表示される。医師等の作業者は、画像の内容を確認し、検査予測を参考にして患者の診断を行い、処置情報を参考にして患者に対する処置の内容を決定する。
【0028】
本発明に係るコンピュータプログラムは、取得した患者情報と、前記所定地域内で採取された検体を用いて実行された第2検査の第2検査結果群及び前記所定地域を示す地図を含む前記地域情報とを含んだ画像を表示するための情報を出力する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0029】
本発明の一形態においては、患者情報及び地域情報を含んだ画像が表示される。医師等の作業者は、画像の内容を確認し、地域情報及び患者情報に基づいて、検査予測又は処置情報の妥当性を判断することができる。
【0030】
本発明に係る情報処理装置は、医療施設にて患者に対して実行された第1検査の第1検査結果を取得する第1取得部と、前記医療施設を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行され前記第1検査よりも長い検査期間を要する第2検査の第2検査結果を含む地域情報を取得する第2取得部と、前記患者に関する患者情報を取得する第3取得部と、第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を入力した場合に、患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報又は前記患者に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力する学習モデルと、取得した第1検査結果、前記地域情報及び患者情報を前記学習モデルへ入力して処置情報又は検査予測を出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【0031】
本発明においては、患者に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報に基づいて、学習モデルを利用して、第2検査結果を予測した検査予測又は患者に対する推奨される処置の内容を表す処置情報が出力される。第2検査結果が得られる前に、検査予測又は処置情報が得られ、患者に対して適切な診断を迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
長い検査期間を必要とする検査の結果が得られる前に、検査結果の予測が得られ、患者に対して適切な診断を迅速に行うことが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】診断システムの構成を示す模式図である。
図2】入出力装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】患者情報の内容例を示す概念図である。
図4】記憶装置の機能構成例を示すブロック図である。
図5】地域情報の内容例を示す概念図である。
図6】実施形態1に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図7】実施形態1に係る教師データの内容例を示す概念図である。
図8】処置データベースの内容例を示す概念図である。
図9】学習モデルの機能構成例を示す概念図である。
図10】情報処理装置が実行する学習モデルの学習の処理の手順を示すフローチャートである。
図11】情報処理装置が行う診断の処理の手順を示すフローチャートである。
図12】実施形態1に係る第1検査結果と、検査予測と、処置情報とを含む画像の例を示す模式図である。
図13】患者情報と第2検査結果群及び所定地域を示す地図を含む地域情報とを含んだ画像の例を示す模式図である。
図14】情報処理装置が行う再学習の処理の手順を示すフローチャートである。
図15】実施形態2に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図16】実施形態2に係る教師データの内容例を示す概念図である。
図17】実施形態2に係る第1検査結果と、検査予測と、処置情報とを含む画像の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態1>
図1は、診断システム100の構成を示す模式図である。診断システム100は、学習モデルを利用して、病院又は診療所等の医療施設4で受診した患者42に施すべき処置の内容を診断するためのシステムである。診断システム100は、学習モデル生成方法を実行する。実施形態1では、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症の診断を行う例を主に説明する。
【0035】
医療施設4では、患者42に対して、早期に検査結果が判明する簡易検査を行う。以下、簡易検査を第1検査という。第1検査では、患者42から検体を採取し、検体を用いて、検査を行う。第1検査は、検体に対する顕微鏡検査、遺伝子増幅検査、又は免疫学的検査を含み、検査キットを使用することもある。免疫学的検査は、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、サンドイッチELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、メンブレンアッセイ法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学的染色法による検査を含む。メンブレンアッセイによる検査は、フロースルー式メンブレンアッセイ検査、ラテラルフロー式イムノクロマトグラフィー検査を含む。感染症を引き起こしている細菌又はウイルス等の病原体(抗原)を直接検出する感染症免疫学的検査には、メンブレンアッセイ法による検査、特にイムノクロマトグラフィー検査を含む。
【0036】
第1検査では、短時間、例えば、数十分から数時間以内に検査結果が判明する。以下、第1検査による検査結果を第1検査結果と言う。第1検査により、患者42が疾病に罹患している可能性を示す第1検査結果が得られる。例えば、陽性という第1検査結果は罹患の可能性が高いことを示し、陰性という第1検査結果は罹患の可能性が低いことを示す。
【0037】
患者42が疾病に罹患している可能性が高いことを第1検査結果が示している場合、確定的な診断を行うために、精密検査が行われる。以下、精密検査を第2検査という。第2検査は、第1検査よりも長い検査期間を必要とする検査である。医療施設4から検査機関へ検体が送られ、検査機関で第2検査が行われる。第2検査は、菌等の病原体を分離培養する検査を含む。MRSA感染症を診断する場合、第2検査では、例えば、分離培養後、純培養を経て、薬剤感受性試験を行う。第2検査では、検査結果が得られるまでに、長時間、例えば数日から一ヶ月が必要である。以下、第2検査による検査結果を第2検査結果と言う。第2検査結果が得られるまでの間に、感染が拡大する等、状況が悪化する虞がある。診断システム100は、第2検査結果が得られる前に診断を行うための処理を行う。
【0038】
診断システム100は、診断のための処理を実行する情報処理装置1を備えている。情報処理装置1は、インターネット等の通信ネットワーク5に接続されている。医療施設4には、情報を入出力するための入出力装置2が設けられている。入出力装置2は、医師等の作業者41が操作する。入出力装置2は、通信ネットワーク5を介して情報処理装置1に接続されている。入出力装置2からは、通信ネットワーク5を通じて、患者42に関する第1検査結果及び患者42に関する患者情報が情報処理装置1へ入力される。
【0039】
検査機関には、情報を記憶する記憶装置3が設けられている。記憶装置3は、医療施設4を含む所定地域内で採取された検体を用いた第2検査の第2検査結果を含む地域情報を記憶している。記憶装置3は、通信ネットワーク5を介して情報処理装置1に接続されている。情報処理装置1は、通信ネットワーク5を通じて、記憶装置3から地域情報を取得する。情報処理装置1は、第1検査結果、患者情報、及び地域情報を取得し、第2検査結果が得られる前に第2検査結果を予測した検査予測を出力する処理を行う。
【0040】
図2は、入出力装置2の機能構成例を示すブロック図である。入出力装置2は、パーソナルコンピュータ又はタブレット型コンピュータ等のコンピュータを用いて構成されている。入出力装置2は、演算部21と、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶するメモリ22と、ハードディスク等の不揮発性の記憶部23とを備えている。演算部21は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。また、演算部21は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ22は、例えばRAM(Random Access Memory)である。記憶部23は、コンピュータプログラム231を記憶している。演算部21は、コンピュータプログラム231に従って、入出力装置2に必要な処理を実行する。
【0041】
また、入出力装置2は、作業者41からの操作を受け付ける操作部24と、画像を表示する表示部25と、通信部26とを備えている。操作部24は、作業者41からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報を受け付ける。操作部24は、例えば、キーボード又はポインティングデバイスである。表示部25は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescenct Display)である。通信部26は、通信ネットワーク5に接続され、入出力装置2の外部の装置と通信ネットワーク5を通じて通信を行う。
【0042】
記憶部23は、医療施設4にて患者42に対して行った第1検査の第1検査結果のデータを記憶する。第1検査結果は、作業者41が操作部24を操作することにより、操作部24から入力され、記憶部23に第1検査結果のデータが記憶される。第1検査結果は、通信部26を通じて入力されてもよく、図示しないインタフェース部を通じて入力されてもよい。記憶部23は、複数の患者42の夫々について、第1検査結果のデータを記憶している。
【0043】
また、記憶部23は、患者42に関する患者情報を記憶する。図3は、患者情報の内容例を示す概念図である。患者情報は、患者42の年齢、性別、診療により判明した症状、又は検査履歴を含む。患者情報は、治療履歴を含んでいてもよい。図3には、患者情報に含まれる治療履歴として、MRSAの感染歴及び保菌歴、過去の入院歴、人工透析歴、並びに外科手術歴が例示されている。患者情報は、老人ケア施設若しくは長期ケア施設の入所歴、腎疾患若しくは糖尿病の履歴、又は皮膚から体内への留置カテーテル若しくは医療器材の挿入歴等、その他の病歴又は治療履歴を含んでいてもよい。図3に示すように、患者情報は、抗菌薬の投薬歴を含んでいてもよい。また、患者情報は、MRSA感染者若しくはMRSA保菌者との接触の有無、人が混み合う住環境にいるか否か、又は普段利用している施設の区別(保育園、学校、企業、若しくは商業施設など)等、行動履歴を含んでいてもよい。
【0044】
患者情報の少なくとも一部は、作業者41が操作部24を操作することにより、操作部24から入力され、記憶部23に記憶されてもよい。患者情報の少なくとも一部は、患者42が過去に医療施設4で受診した際のカルテ等の形で予め記憶部23に記憶されていてもよい。患者情報の少なくとも一部は、入出力装置2の外部にある図示しない記憶装置に記憶され、通信部26又は図示しないインタフェース部を通じて記憶装置から取得されてもよい。記憶部23は、複数の患者42の夫々について、患者情報を記憶している。
【0045】
図4は、記憶装置3の機能構成例を示すブロック図である。記憶装置3は、サーバ装置等のコンピュータを用いて構成されている。記憶装置3は、演算部31と、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶するメモリ32と、ハードディスク等の不揮発性の記憶部33と、通信部34とを備えている。演算部31は、例えばCPUであり、メモリ32は、例えばRAMである。記憶部33は、コンピュータプログラム331を記憶している。演算部31は、コンピュータプログラム331に従って、記憶装置3に必要な処理を実行する。通信部34は、通信ネットワーク5に接続され、記憶装置3の外部の装置と通信ネットワーク5を通じて通信を行う。記憶装置3は複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0046】
記憶部33は、地域情報を記憶している。地域情報は、医療施設4を含む所定地域内で採取された検体を用いて過去に行われた第2検査の第2検査結果を含んでいる。例えば、所定地域内には、医療施設4を含む複数の医療施設が存在しており、各医療施設において患者から採取された検体を用いて、検査機関において第2検査が行われ、夫々の第2検査結果を含む地域情報が記憶装置3に記憶される。地域内で採取された検体を用いて行われた第2検査の第2検査結果からは、地域内での特定の疾病の発生数が分かる。
【0047】
図5は、地域情報の内容例を示す概念図である。地域情報は、医療施設4を含む所定地域の位置を示す位置情報を含んでいる。図5に示す例では、位置情報は、医療施設4の住所、医療施設4を含む地域の名称、GPS(Global Positioning System)で用いられる医療施設4の位置を表したGPS情報、医療施設4の緯度経度を含んでいる。位置情報は、所定地域の住所の範囲、所定地域に含まれる複数の土地の名称、所定地域内の各位置を表すGPS情報の範囲、又は所定地域の緯度経度の範囲を含んでいてもよい。位置情報は、所定地域の位置を示すその他の情報を含んでいてもよい。
【0048】
地域情報は、所定地域内での特定の疾病の発生数、又は患者の年齢別若しくは性別の所定地域内での特定の疾病の発生数を含んでいる。地域情報は、保育園、学校若しくは企業等、疾病が発生した施設の区分別の発生数を含んでいてもよい。地域情報は、特定の疾病の発生状況の時系列変化を含んでいてもよい。図5に示した例では、地域内での疾病の発生数を罹患者の人数で示し、週毎に罹患者の人数を記録することで、疾病の発生状況の時系列変化を記録している。図5に示した例では、地域内での疾病の発生数、年齢別の発生数、性別の発生数、及び施設別の発生数の時系列変化を示している。
【0049】
記憶部33は、複数の地域の夫々について地域情報を記憶している。記憶部33は、種類の異なる疾病の診断を行う場合等、診断の種類別に地域情報を記憶していてもよい。また、医療施設4を含む所定地域は、行政区画等、予め固定的に土地を区分けされた地域であってよい。例えば、含まれる地域が同一である複数の医療施設4があってもよい。代替的に、医療施設4を含む所定地域は、医療施設4別に設定されていてもよい。例えば、医療施設4から所定距離内にある地域を所定地域としてもよい。記憶部33は、地域情報を予め記憶しているのではなく、地域情報に含まれるべき情報を記憶しており、地域情報は、記憶部33に記憶されている情報から必要に応じて生成されてもよい。
【0050】
図6は、実施形態1に係る情報処理装置1の機能構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、サーバ装置等のコンピュータを用いて構成されている。情報処理装置1は、演算部11と、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶するメモリ12と、ハードディスク等の不揮発性の記憶部13と、光ディスク等の記録媒体10から情報を読み取るドライブ部14と、通信部16とを備えている。演算部11は、例えばCPUであり、メモリ12は、例えばRAMである。通信部16は、通信ネットワーク5に接続され、情報処理装置1の外部の装置と通信ネットワーク5を通じて通信を行う。情報処理装置1は、複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0051】
演算部11は、記録媒体10に記録されたコンピュータプログラム131をドライブ部14に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム131を記憶部13に記憶させる。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って、情報処理装置1に必要な処理を実行する。なお、コンピュータプログラム131は、情報処理装置1の外部からダウンロードされてもよい。この場合は、情報処理装置1はドライブ部14を備えていなくてもよい。
【0052】
情報処理装置1は、更に、第2検査結果を予測するために用いられる学習モデル15を備えている。学習モデル15は、患者42に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報に応じて、患者42に関する第2検査結果を予測した検査予測を出力するように学習される。学習モデル15は、コンピュータプログラム131に従って演算部11が情報処理を実行することにより実現される。また、学習モデル15は、ハードウェアを用いて構成されていてもよい。例えば、学習モデル15は、プロセッサと、必要なプログラム及びデータを記憶するメモリとを含んで構成されていてもよい。また、学習モデル15は、量子コンピュータを用いて実現されてもよい。
【0053】
記憶部13は、学習モデル15を学習するための教師データを含む教師データベースを記憶している。教師データベースには、複数の教師データが含まれている。図7は、実施形態1に係る教師データの内容例を示す概念図である。一つの教師データは、ある患者42に対して行われた第1検査の第1検査結果及び第2検査の第2検査結果、同じ患者42の患者情報、並びに患者42が受診した医療施設4を含む地域に関する地域情報を含んでいる。図7に示す例では、第1検査結果及び第2検査結果には、検査日時及び検査結果が含まれる。第2検査結果として、感染細菌がMRSAである確率が数値で表されている。第2検査結果は、陽性又は陰性等、確率ではない情報であってもよい。図7に示すように、教師データには、医療施設4を含む地域に関する地域情報に含まれる情報のうち、患者42の患者情報に関連する情報が含まれている。例えば、地域情報の中から、患者42の性別及び年齢に関係した情報が抽出され、教師データに含まれている。地域情報には位置情報もふくまれる。
【0054】
複数の教師データは、全て異なる患者42についての教師データであってもよく、同一の患者42についての複数の教師データが教師データベースに含まれていてもよい。例えば、第1検査及び第2検査を行った時期が異なる同一の患者42についての複数の教師データがあってもよい。各教師データに含まれる地域情報は、同時期に関する地域情報であってもよく、異なる時期に関する地域情報であってもよい。各教師データに含まれる地域情報は、同一の地域に関する地域情報であってもよく、異なる地域に関する地域情報であってもよい。
【0055】
記憶部13は、患者に対する処置の内容を表す処置情報を含んだ処置データベースを記憶している。図8は、処置データベースの内容例を示す概念図である。第2検査結果からは、特定の疾病への罹患の有無等、患者の病状が明らかになる。図8に示す例では、第2検査結果は、感染細菌がMRSAである確率を示している。患者の病状に応じて、患者に施すべき処置の内容が定まる。このため、第2検査結果に応じて、処置の内容を表す処置情報が定まる。処置データベースでは、第2検査結果と、第2検査結果に応じて患者に施すべき処置の内容を表す処置情報とが、互いに関連付けて記録されている。図8に示す例では、複数の第2検査結果の夫々に処置情報が関連付けられている。感染細菌がMRSAである確率の夫々の値に対して、処置情報として、推奨される抗MRSA薬の処方、精密検査の必要性、病棟の隔離の必要性、及び除菌対応の必要性の高さが関連付けられている。
【0056】
第1検査結果は、第2検査結果ほど確定的ではないものの、患者42が特定の疾病に罹患している可能性を示す。このため、第1検査結果と、患者42が特定の疾病に罹患している可能性を示す第2検査結果との間には、相関関係がある。患者情報のうち、患者42の症状及び検査履歴は、第2検査結果と相関関係がある。患者情報のうち、患者42の病歴、治療履歴又は投薬履歴によっては、患者42が特定の疾病に罹患している可能性が高くなることがある。例えば、MRSAの感染歴及び保菌歴がある場合は、患者42がMRSAに感染している可能性は高くなる。例えば、入院歴、人工透析歴、又は外科手術歴がある場合は、患者42の過去に感染の機会があり、患者42が感染症に罹患している可能性は高くなる。例えば、投薬履歴に含まれる薬の内容によって、疾病への罹患の可能性が変化する。患者情報のうち、感染症の感染者若しくは保菌者との接触がある、又は人が混み合う住環境にいる等、患者42の行動履歴によっても、患者42が感染症に罹患する可能性は高くなる。
【0057】
また、地域情報のうち、医療施設4を含む所定地域内で特定の疾病の発生数が大きい場合は、患者42が疾病に罹患している可能性は高くなる。患者42が属する性別又は年齢別での疾病の発生数が多い場合は、患者42が罹患している可能性は高くなる。患者42が普段利用している施設で疾病の発生数が多い場合は、患者42が罹患している可能性は高くなる。また、発生数の時系列変化が増加傾向にある場合は患者42が疾病に罹患している可能性は高くなり、減少傾向にある場合は患者42が罹患している可能性は低くなる。特定の疾病が感染症である場合は、地域内での疾病の発生数又は発生数の時系列変化と患者42が罹患している可能性との相関はより高い。このように、患者情報及び地域情報と、患者42が特定の疾病に罹患している可能性を示す第2検査結果とは、相関がある。従って、第1検査結果、患者情報及び地域情報に応じて、第2検査結果を予測した検査予測を得ることが可能である。
【0058】
図9は、学習モデル15の機能構成例を示す概念図である。学習モデル15は、夫々に複数のノードを有する入力層、中間層及び出力層を備えたニューラルネットワークを用いてなる。入力層は、患者42に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報が入力される複数のノード151を有する。例えば、第1検査結果が一つのノード151へ入力され、患者情報及び地域情報に含まれる複数の情報の夫々が、いずれかのノード151へ入力される。第1検査結果、患者情報及び地域情報のうち、数値でない情報は、数値へ変換されてから各ノード151へ入力されてもよい。地域情報に含まれる疾病の発生数の時系列に含まれる夫々の数値が各ノード151へ入力されてもよく、発生数の時系列に含まれる一部の数値がノード151へ入力されてもよく、発生数の時系列に含まれる数値を平均した値がノード151へ入力されてもよい。また、横軸を時間とし、縦軸を疾病の発生数として発生数の時系列変化を表したグラフの画像データが、疾病の発生数の時系列変化を表すデータとしてノード151へ入力されてもよい。
【0059】
学習モデル15の中間層は、入力層のノード151から入力されるデータにパラメータを用いて演算する複数のノード152を有する。出力層は、中間層のノード152から演算されたデータを受け付け、第2検査結果を予測した検査予測を出力する複数のノード153を有する。例えば、各ノード153は、患者が特定の疾病に罹患している確率が0%~100%の夫々の数値であることに対応する。各ノード153はスコアを出力し、学習モデル15は、スコアの値が最大であるノード153が対応する確率を検査予測の出力として、検査予測を出力する。第2検査結果が確率ではない情報の場合は、学習モデル15は、確率ではない情報に対応する数値を出力してもよく、数値を確率ではない情報へ変換してもよい。例えば、学習モデル15は、陰性を0%の確率、陽性を100%の確率として扱ってもよい。
【0060】
図9には、中間層が一層である例を示しているが、中間層は複数層であってもよい。学習モデル15は、ニューラルネットワークとして、畳みこみニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、又は再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を用いてもよい。なお、学習モデル15は、ニューラルネットワーク以外の学習モデルであってもよい。
【0061】
情報処理装置1は、学習モデル15の機械学習を行う。図10は、情報処理装置1が実行する学習モデル15の学習の処理の手順を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略す。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、複数の教師データを取得する(S11)。S11では、例えば、演算部11は、予め記憶部13に記憶されている教師データベースに含まれる複数の教師データを、メモリ12へ読み出すことにより、複数の教師データを取得する。例えば、通信ネットワーク5を通じて通信部16が教師データを受信し、演算部11は、受信した教師データを含む教師データベースを記憶部13に記憶させ、教師データをメモリ12へ読み出すことにより、複数の教師データを取得する。また、例えば、第1検査結果、患者情報及び地域情報を通信部16で受信し、演算部11は、地域情報から第2検査結果を抽出し、同じ患者に関する第1検査結果、患者情報、地域情報及び第2検査結果を組み合わせて教師データを生成することにより、複数の教師データを取得する。
【0062】
演算部11は、取得した複数の教師データに基づいて、第1検査結果、患者情報及び地域情報を入力した場合に検査予測を出力する学習モデル15を生成する(S12)。S12では、演算部11は、教師データに含まれる第1検査結果、患者情報及び地域情報を学習モデル15の入力層へ入力する。学習モデル15によって、出力層の各ノード153からスコアが出力される。演算部11は、出力されたスコアと教師データに含まれる第2検査結果に対応するスコアとを変数とする誤差関数により誤差を計算し、誤差逆伝搬法によって誤差が最小となるように、学習モデル15の各ノードの演算のパラメータを調整する。演算部11は、複数の教師データの夫々について処理を繰り返して、学習モデル15のパラメータを調整することにより、学習モデル15の機械学習を行う。演算部11は、調整された最終的なパラメータを反映するように、パラメータを記憶部13に記憶させるか、コンピュータプログラム131を調整するか、又は学習モデル15の構成を調整する。このようにして、第1検査結果、患者情報及び地域情報を入力した場合に検査予測を出力するように学習された学習モデル15が生成される。演算部11は、以上で学習の処理を終了する。
【0063】
なお、学習モデル15は地域別の学習モデルを含んでおり、地域別に学習モデルの学習が行われていてもよい。ある地域に関する学習モデルの学習を行う際は、演算部11は、ある地域に含まれる医療施設4を受診した患者42に関する第1検査結果、患者情報及び第2検査結果、並びにある地域に関する地域情報を含んだ教師データを用いて、機械学習を行う。また、学習モデル15は診断の種類別の学習モデルを含んでおり、診断の種類別に学習モデルの学習が行われてもよい。特定の種類の診断に関する学習モデルの学習を行う際は、演算部11は、特定の種類の診断に関する第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を含んだ教師データを用いて、機械学習を行う。また、学習モデル15は、患者情報の一部の内容別に学習モデルを含んでいてもよい。例えば、学習モデル15は、患者の年齢別の学習モデルを含んでいてもよい。特定の年齢に関する学習モデルの学習を行う際は、演算部11は、特定の年齢の患者に関する第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を含んだ教師データを用いて、機械学習を行う。
【0064】
診断システム100は、学習モデル15を利用して、第2検査結果が得られる前に診断を行うための処理を行う。医療施設4で患者42に対する第1検査が行われ、第1検査結果が得られた後、入出力装置2へ第1検査結果が入力される。例えば、作業者41が操作部24を操作することにより、入出力装置2へ第1検査結果が入力される。第2検査結果が得られる前に、入出力装置2は、通信ネットワーク5を介して、患者42に関する第1検査結果、地域情報及び患者42に関する患者情報を情報処理装置1へ送信する。
【0065】
例えば、作業者41が操作部24を操作することにより入力された送信の指示に従って、演算部21は、記憶部23に記憶されている患者42に関する第1検査結果のデータ及び患者情報を、通信部26に情報処理装置1へ送信させる。また、演算部21は、通信部26に、通信ネットワーク5を介して、医療施設4を含む地域に関する地域情報を記憶装置3から取得させ、取得した地域情報を情報処理装置1へ送信させる。この際、記憶装置3は、記憶部33に予め記憶している地域情報を送信してもよく、医療施設4を含む所定地域に関する地域情報を生成して送信してもよい。また、入出力装置2は、作業者41が操作部24を操作することにより患者情報を受け付け、演算部21は、受け付けた患者情報を、通信部26に情報処理装置1へ送信させてもよい。また、演算部21は、医療施設4を含む地域に関する地域情報の送信指示を通信部26に記憶装置3へ送信させ、記憶装置3は、送信指示に従って、地域情報を情報処理装置1へ送信する。記憶装置3は、記憶部33に予め記憶している地域情報を送信してもよく、医療施設4を含む所定地域に関する地域情報を生成して送信してもよい。
【0066】
図11は、情報処理装置1が行う診断の処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。患者42に関する第1検査結果、地域情報及び患者42に関する患者情報を通信部16で受信することにより、演算部11は、第1検査結果、地域情報及び患者情報を取得する(S21)。演算部11は、取得した第1検査結果、地域情報及び患者情報をメモリ12又は記憶部13に記憶させる。S21の処理は、第1取得部、第2取得部及び第3取得部に対応する。
【0067】
演算部11は、取得した第1検査結果、地域情報及び患者情報を、学習済みの学習モデル15へ入力し、学習モデル15に、第2検査結果を予測した検査予測を出力させる(S22)。例えば、検査予測として、患者42に感染した細菌がMRSAである確率の数値が出力される。S22の処理は、出力部に対応する。演算部11は、次に、検査予測に応じて、患者42に対する推奨される処置の内容を表す処置情報を出力する(S23)。S23では、演算部11は、記憶部13に記憶された処置データベースを参照し、S22で出力した検査予測に対応する内容の第2検査結果に関連付けて記録されている処置情報を読み出し、読み出した処置情報を、処置情報として出力する。
【0068】
演算部11は、次に、診断結果を示す画像を入出力装置2に表示させるための画像情報を生成し、生成した画像情報を通信部16に入出力装置2へ送信させることにより、出力する(S24)。S24では、演算部11は、取得した第1検査結果と、検査予測と、処置情報とを含む画像を表示するための画像情報を生成し、出力する。更に、演算部11は、取得した患者情報と、医療施設4を含む所定地域内で採取された検体を用いて実行された第2検査の第2検査結果群及び所定地域を示す地図を含む地域情報とを含んだ画像を表示するための画像情報を生成し、出力してもよい。
【0069】
入出力装置2は、情報処理装置1から送信された画像情報を通信部26で受信し、演算部21は、画像情報に基づいた画像を表示部25に表示させる。図12は、実施形態1に係る第1検査結果と、検査予測と、処置情報とを含む画像の例を示す模式図である。第1検査結果として、細菌検査の結果が表示され、検査予測として、感染細菌がMRSAである確率が数値で表示されている。更に、処置情報として、抗MRSA薬又は精密検査の必要性等、推奨する処方が表示されている。医師等の作業者41は、表示部25に表示された画像の内容を確認し、検査予測を参考にして患者42の診断を行い、処置情報を参考にして患者42に対する処置の内容を決定する。
【0070】
図13は、患者情報と第2検査結果群及び所定地域を示す地図を含む地域情報とを含んだ画像の例を示す模式図である。医療施設4を含む所定地域の地図が表示され、地域内での疾病の発生状況が表示されている。また、保育園、学校又は企業等の施設区分別の発生状況が表示されている。更に、患者42の治療履歴及び投薬履歴等、患者42の患者情報が表示されている。医師等の作業者41は、表示部25に表示された画像の内容を確認し、地域情報及び患者情報に基づいて、検査予測及び処置情報の妥当性を判断することができる。図12及び図13に示した画像の内容は一例である。情報処理装置1は、以上で診断の処理を終了する。
【0071】
以上のようにして、学習モデル15を利用して患者42に対する診断が行われ、診断結果に応じて、患者42に対する処置が行われる。患者42に対する処置は、第2検査結果が得られる前に行われる。
【0072】
第2検査結果が得られた後、診断システム100は、学習モデル15の再学習を行うことができる。患者42に対する第2検査結果が得られた後、入出力装置2へ第2検査結果が入力される。例えば、作業者41が操作部24を操作することにより、入出力装置2へ第2検査結果が入力される。通信ネットワーク5を介して送信された第2検査結果のデータを通信部26で受信することにより、入出力装置2へ第2検査結果が入力されてもよい。入出力装置2は、通信ネットワーク5を介して、患者42に関する第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を、情報処理装置1へ送信する。
【0073】
図14は、情報処理装置1が行う再学習の処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を含む再学習データを取得する(S31)。例えば、患者42に関する第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を通信部16で受信することにより、演算部11は、第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を含む再学習データを取得する。例えば、演算部11は、受信した第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を記憶部13に一旦記憶させ、記憶部13から第1検査結果、地域情報、患者情報及び第2検査結果を読出して再学習データを生成することにより、再学習データを取得する。
【0074】
演算部11は、取得した再学習データを用いて、学習モデル15の再学習を行う(S32)。S32では、演算部11は、再学習データに含まれる第1検査結果、地域情報、及び患者情報が学習モデル15の入力層へ入力され、再学習データに含まれる第2検査結果に対応する検査予測が学習モデル15の出力層から出力されることができるように、学習モデル15の各ノードのパラメータを調整する機械学習を行う。演算部11は、調整された最終的なパラメータを反映するように、パラメータを記憶部13に記憶させるか、コンピュータプログラム131を調整するか、又は学習モデル15の構成を調整する。このようにして、機械学習によって再学習された学習モデル15が生成される。演算部11は、以上で再学習の処理を終了する。S32の処理は、一つの再学習データが得られる都度行われてもよく、所定数の再学習データが得られた時点で行われてもよく、定期的に行われてもよい。再学習により、より正確に第2検査結果を予測することができるように学習モデル15が更新される。このため、より適切な検査予測を出力することが可能となる。
【0075】
以上詳述したごとく、情報処理装置1は、患者42に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報に基づいて、学習モデル15を利用して、第2検査結果を予測した検査予測を出力する。長い検査期間を必要とする第2検査の第2検査結果が得られる前に、第2検査結果を予測した検査予測が得られる。検査予測に応じた診断を行うことにより、患者42に対して適切な診断を迅速に行うことが可能となる。また、情報処理装置1は、検査予測に応じて、患者42に対する推奨される処置の内容を表す処置情報を出力する。第2検査結果が得られる前に、処置情報に応じた適切な処置を患者42に対して施すことができる。第2検査結果が得られるまでの期間に感染の拡大又は患者42の病状の悪化等のように状況が悪化することを、防止することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、MRSA感染症の診断を行う例を主に説明したが、診断システム100は、その他の感染症の診断を行うことが可能である。例えば、新型インフルエンザの診断を行ってもよい。インフルエンザ様の臨床的特徴を有する患者42に対して、第1検査としてインフルエンザ検査を行い、第1検査結果が陰性ではあるが、新型インフルエンザの症例定義を満たす場合に、新型インフルエンザかどうかを判断するためにインフルエンザウイルスの亜型を特定する第2検査を行い、診断システム100を利用した診断を行ってもよい。この場合、地域情報は、新型インフルエンザの発生状況を含む。患者情報は、発熱、筋肉痛、関節痛若しくは倦怠感等の症状、体温、又はインフルエンザ迅速診断キットの検査結果画像を含んでいてもよい。また、患者情報は、家族等の患者42の近辺での感染状況、又は患者42に関係する職場若しくは学校等の施設での感染状況を含んでいてもよい。処置情報は、タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザ、若しくはラピアクタ等の抗インフルエンザ薬の処方及び選択、精密検査の必要性の有無、又は隔離の必要性を含む。検査予測は、インフルエンザである確率、又は新型インフルエンザである確率を含む。
【0077】
例えば、結核菌の薬剤耐性を診断してもよい。患者42に対して、第1検査として結核菌検査を行い、第1検査結果が陽性であった場合に、第2検査として、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、ストレプトマイシン、エタンブトール又はカナマイシン等の薬剤に対する結核菌の耐性検査を行う。地域情報は、結核菌の薬剤耐性の発生状況を含む。患者情報は、結核の感染歴及び治療履歴、服薬歴、耐性結核患者との接触歴、医療施設4での予想される結核患者数、陰圧隔離個室の収容キャパシティ、又はX線診断等の画像診断の結果を含んでいてもよい。処置情報は、患者42の隔離の検討の必要性、迅速薬剤感受性検査法(遺伝子検査)の適応の有無、又は抗結核薬の推奨選択を含む。検査予測は、薬剤耐性結核菌である確率を含む。
【0078】
診断システム100は、診断の種類別に処理を行ってもよい。情報処理装置1は、学習モデル15に含まれる診断の種類別の学習モデルを利用して、診断の種類の夫々について、S21~S24の処理とS31~S32の処理とを実行する。入出力装置2は、診断の種類別に、検査予測等の情報を表示部25に表示する。なお、診断システム100は、感染症以外の疾病に関する診断を行うことも可能である。
【0079】
なお、本実施形態では、推奨される処置の内容を表す処置情報を情報処理装置1で取得する形態を示したが、診断システム100は、入出力装置2で処置情報を取得する形態であってもよい。この形態では、処置データベースは、入出力装置2の記憶部23に記憶されている。情報処理装置1は、S23の処理を行わず検査予測のデータを入出力装置2へ送信する。入出力装置2は、検査予測のデータを通信部26で受信し、演算部21は、記憶部23に記憶された処置データベースを参照し、検査予測に対応する内容の第2検査結果に関連付けて記録されている処置情報を、処置情報として取得する。この形態においても、第2検査結果が得られる前に、処置情報に応じた適切な処置を患者42に対して施すことができる。
【0080】
<実施形態2>
実施形態2においては、情報処理装置1は、学習モデル15を用いて処置情報を出力する。図15は、実施形態2に係る情報処理装置1の機能構成例を示すブロック図である。記憶部13は、処置データベースを記憶していない。記憶部13が記憶する教師データベースに含まれる教師データは、第1検査結果、第2検査結果、患者情報、及び地域情報に加えて、処置情報を含んでいる。
【0081】
図16は、実施形態2に係る教師データの内容例を示す概念図である。一つの教師データは、ある患者42に対して行われた第1検査の第1検査結果及び第2検査の第2検査結果、同じ患者42の患者情報、患者42が受診した医療施設4を含む地域に関する地域情報、並びに第2検査結果に応じて患者42に施すべき処置の内容を表す処置情報を含んでいる。図16に示す例では、第2検査結果が得られた患者42に対して施された処置の内容を表す処置情報が記録されている。処置情報は、抗MRSA薬の処方の必要性、精密検査の必要性、病棟の隔離の必要性、及び除菌対応の必要性を含む。処置情報の内容は確率で表されていてもよい。
【0082】
学習モデル15は、一例として、実施形態1と同様に、ニューラルネットワークを用いてなる。学習モデル15の出力層は、中間層のノード152から演算されたデータを受け付け、第2検査結果を予測した検査予測及び処置情報を出力する複数のノード153を有する。例えば、出力層は、患者が特定の疾病に罹患している確率が0%~100%の夫々の数値であることに夫々に対応した複数のノード153を含む。出力層は、抗MRSA薬の処方の必要性、精密検査の必要性、病棟の隔離の必要性、及び除菌対応の必要性の確率が0%~100%の夫々の数値であることに夫々に対応した複数のノード153を含んでいる。各ノード153はスコアを出力し、検査予測に対応する複数のノード153のうちでスコアの値が最大であるノード153が対応する確率を、検査予測の出力とする。また、処置情報の夫々に対応する複数のノード153のうちでスコアの値が最大であるノード153が対応する確率を、処置情報の出力とする。情報処理装置1のその他の部分の構成は、実施形態1と同様である。また、診断システム100の情報処理装置1以外の部分の構成は、実施形態1と同様である。
【0083】
情報処理装置1は、図10のフローチャートに示したS11~S12と同様の手順を含む処理により、学習モデル15の機械学習を行う。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、夫々に第1検査結果、第2検査結果、患者情報、地域情報及び処置情報を含んだ複数の教師データを取得する(S11)。演算部11は、次に、取得した複数の教師データに基づいて、第1検査結果、患者情報及び地域情報を入力した場合に第2検査結果に対応する検査予測及び処置情報を出力する学習モデル15を生成する(S12)。第1検査結果、患者情報、地域情報、第2検査結果及び処置情報のうち、数値でない情報は、数値へ変換された上で処理が行われる。
【0084】
S12では、演算部11は、教師データに含まれる第1検査結果、患者情報及び地域情報を学習モデル15の入力層へ入力する。演算部11は、学習モデル15の出力層の各ノード153から出力されたスコアと教師データに含まれる第2検査結果及び処置情報に対応するスコアとを変数とする誤差関数により誤差を計算し、誤差逆伝搬法によって誤差が最小となるように、学習モデル15の各ノードの演算のパラメータを調整する。演算部11は、複数の教師データの夫々について処理を繰り返して、学習モデル15の機械学習を行う。演算部11は、調整された最終的なパラメータを反映するように、パラメータを記憶部13に記憶させるか、コンピュータプログラム131を調整するか、又は学習モデル15の構成を調整する。このようにして、第1検査結果、患者情報及び地域情報を入力した場合に検査予測及び処置情報を出力するように学習された学習モデル15が生成される。演算部11は、以上で学習の処理を終了する。入出力装置2が実行する処理は実施形態1と同様である。
【0085】
情報処理装置1は、図11のフローチャートに示したS21~S24と同様の手順を含む処理により、診断の処理を行う。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、患者42に関する第1検査結果、地域情報及び患者42に関する患者情報を通信部16で受信することにより、第1検査結果、地域情報及び患者情報を取得する(S21)。演算部11は、取得した第1検査結果、地域情報及び患者情報を、学習済みの学習モデル15へ入力し、学習モデル15に、第2検査結果を予測した検査予測を出力させ(S22)、学習モデル15に、処置情報を出力させる(S23)。演算部11は、次に、処置情報を含む診断結果を示す画像を入出力装置2に表示させるための画像情報を生成し、生成した画像情報を通信部16に入出力装置2へ送信させることにより、出力する(S24)。
【0086】
図17は、実施形態2に係る第1検査結果と、検査予測と、処置情報とを含む画像の例を示す模式図である。第1検査結果として、細菌検査の結果が表示され、検査予測として、感染細菌がMRSAである確率が数値で表示されている。更に、処置情報として、抗MRSA薬の処方、精密検査の必要性、病棟の隔離の必要性、及び除菌対応の必要性が確率で表示されている。医師等の作業者41は、検査予測を参考にして患者42の診断を行い、処置情報を参考にして患者42に対する処置の内容を決定する。演算部11は、以上で診断の処理を終了する。入出力装置2が実行する処理は実施形態1と同様である。
【0087】
第2検査結果が得られた後、診断システム100は、学習モデル15の再学習を行うことができる。第2検査結果が得られた後は、第2検査を行った時点での患者42の状況が判明し、患者42に施すべきであった処置も明確になっている。患者42に対する第2検査結果が得られた後、入出力装置2へ第2検査結果が入力される。更に、第2検査結果に応じて患者42に施すべきであった処置の内容を表す処置情報が入出力装置2へ入力される。例えば、作業者41が操作部24を操作することにより、入出力装置2へ第2検査結果及び処置情報が入力される。入出力装置2は、通信ネットワーク5を介して、患者42に関する第1検査結果、地域情報、患者情報、第2検査結果、及び患者42に施すべきであった処置の内容を表す処置情報を、情報処理装置1へ送信する。
【0088】
情報処理装置1は、図14のフローチャートに示したS31~S32と同様の手順を含む処理により、再学習の処理を行う。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、第1検査結果、地域情報、患者情報、第2検査結果及び処置情報を含む再学習データを取得する(S31)。例えば、患者42に関する第1検査結果、地域情報、患者情報、第2検査結果及び処置情報を通信部16で受信することにより、演算部11は、第1検査結果、地域情報、患者情報、第2検査結果及び処置情報を含む再学習データを取得する。
【0089】
演算部11は、取得した再学習データを用いて、学習モデル15の再学習を行う(S32)。S32では、演算部11は、再学習データに含まれる第1検査結果、地域情報、及び患者情報が学習モデル15の入力層へ入力され、再学習データに含まれる第2検査結果及び処置情報に対応する検査予測及び処置情報が学習モデル15の出力層から出力されることができるように、学習モデル15の各ノードのパラメータを調整する機械学習を行う。演算部11は、調整された最終的なパラメータを反映するように、パラメータを記憶部13に記憶させるか、コンピュータプログラム131を調整するか、又は学習モデル15の構成を調整する。このようにして、機械学習によって再学習された学習モデル15が生成される。演算部11は、以上で再学習の処理を終了する。再学習により、より適切な処置情報が得られるように学習モデル15が更新される。
【0090】
以上詳述したごとく、実施形態2においては、情報処理装置1は、患者42に関する第1検査結果、患者情報及び地域情報に基づいて、学習モデル15を利用して、第2検査結果を予測した検査予測及び処置情報を出力する。実施形態2においても、第2検査結果が得られる前に、検査予測に応じた診断が可能となり、処置情報に応じた適切な処置を患者42に対して施すことができる。このため、第2検査結果が得られるまでの期間に状況が悪化することを防止することが可能となる。
【0091】
実施形態1及び2においては、診断システム100が一つの入出力装置2を備えた形態を示したが、診断システム100は複数の入出力装置2を備えていてもよい。即ち、複数の医療施設4が存在しており、夫々の医療施設4に入出力装置2が設けられている。医療施設4が異なれば、医療施設4を含む地域が異なり、地域情報が異なることがある。情報処理装置1は、学習モデル15に含まれる地域別の学習モデルを利用して、異なる医療施設4を受診した患者42の夫々について、S21~S24の処理とS31~S32の処理とを実行する。
【0092】
実施形態1及び2においては、第2検査を検査機関で行う例を示したが、医療施設4内で第2検査を行ってもよい。実施形態1及び2においては、記憶装置3が検査機関に設けられている形態を示したが、記憶装置3は検査機関とは別の場所に設けられていてもよい。例えば、記憶装置3は、医療施設4内に設けられていてもよい。記憶装置3は複数あってもよい。また、記憶装置3の機能の少なくとも一部を、情報処理装置1が兼ねていてもよい。
【0093】
実施形態1及び2においては、入出力装置2が情報の入力及び出力を行う形態を示したが、入出力装置2は、情報の入力に用いられる装置と情報の出力にもうちいられる装置とに分離していてもよい。情報処理装置1は、検査期間内又は医療施設4内に設けられていてもよい。
【0094】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 情報処理装置
10 記録媒体
11 演算部
13 記憶部
15 学習モデル
100 診断システム
131 コンピュータプログラム
2 入出力装置
3 記憶装置
4 医療施設
41 作業者
42 患者
5 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図17