(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】色予測方法および色予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/50 20060101AFI20230620BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230620BHJP
G06T 1/40 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01J3/50
G06T1/00 510
G06T1/40
(21)【出願番号】P 2019058380
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】横内 健一
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025496(JP,A)
【文献】特開平08-116460(JP,A)
【文献】特開2008-312119(JP,A)
【文献】特開2009-164835(JP,A)
【文献】特開2020-118627(JP,A)
【文献】特開2020-102807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
H04N 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの
分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと
、
前記類似色
のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前
記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を前記関係式に当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含
み、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする、色予測方法。
【請求項2】
前記類似色選択ステップでは、前記複数のサンプル色のうち所定の規則に従って定められる複数の候補色の中から前記類似色が選択されることを特徴とする、請求項1に記載の色予測方法。
【請求項3】
前記複数の候補色に定められる各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性の数値範囲は、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性の数値範囲を包含していることを特徴とする、請求項2に記載の色予測方法。
【請求項4】
前記複数のサンプル色のうち前記基準パッチの分光特性の数値範囲の広さが第1位から第k位(kは2以上の整数)までのk個のサンプル色が前記複数の候補色に定められることを特徴とする、請求項2に記載の色予測方法。
【請求項5】
前記類似色選択ステップでは、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性と各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性との2乗誤差が求められ、最小の2乗誤差が得られたサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項6】
入力データを前記基準パッチの分光特性とし出力データを前記複数のサンプル色に対応する複数の分類番号のそれぞれの確率とするニューラルネットワークで、各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該サンプル色に対応する分類番号に相当する値とを含む複数の教師データを用いた機械学習を行う学習ステップを更に含み、
前記類似色選択ステップでは、前記学習ステップによる学習済みのニューラルネットワークに前記入力データとして前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を与えることによって前記出力データとして得られる前記複数の分類番号のそれぞれの確率のうち最も高い確率が得られた分類番号に対応するサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークに前記入力データとして与えられる分光特性のデータは、前記基材の分光特性を基準とする正規化が施されていることを特徴とする、請求項6に記載の色予測方法。
【請求項8】
前記ニューラルネットワークには、前記入力データとして前記基準パッチの分光特性に加えて前記基材の分光特性が与えられることを特徴とする、請求項6に記載の色予測方法。
【請求項9】
前記類似色選択ステップでは、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性と各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性とに基づいて前記予測対象色と各サンプル色との色差が求められ、最小の色差が得られたサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項10】
前記関係式は、nを2以上の整数とするn次式であることを特徴とする、請求項
1に記載の色予測方法。
【請求項11】
前記関係式は、累乗関数を用いて表されることを特徴とする、請求項
1に記載の色予測方法。
【請求項12】
前記分光特性は、分光反射率であって、
pを1未満の予め定められた値として前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率のデータに値をp以上1以下とするデータが含まれていない場合、前記関係式算出ステップでは、前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率を1とし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータを追加して前記関係式が求められることを特徴とする、請求項
1から
11までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項13】
前記分光特性は、分光反射率であって、
前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率のデータの最大値をuとし、当該最大値に対応する前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率をvとすると、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光反射率のデータのうち値がuよりも大きいデータに関し、前記分光特性予測ステップでは
、前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率をuとし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率をvとする組み合わせデータと前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率を1とし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータとを用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光反射率に基づき線形補間を行うことによって
、前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光反射率の予測値が求められることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項14】
前記分光特性は、400nmから700nmまでの範囲を包含する波長範囲を適宜の大きさの単位波長範囲で除することによって得られる数の分光反射率を含むことを特徴とする、請求項1から
13までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項15】
前記分光特性は、分光反射率、分光吸収率、および分光吸収係数のいずれかであることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の色予測方法。
【請求項16】
複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの
分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色
のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前
記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色選択ステップで前記類似色として選択されたサンプル色についての前記関係式に前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含
み、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該各サンプル色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする、色予測方法。
【請求項17】
複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの
分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと
、
前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前
記色予測対象パッチの分光特性との関係を用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性に基づき線形補間を行うことによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含むことを特徴とする、色予測方法。
【請求項18】
前記分光特性予測ステップは、
前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを同一の分光波長ごとに対応付けることにより複数のプロットで表される複数の対応関係を作成する対応関係作成ステップと、
前記複数のプロットを用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性に基づき線形補間を行うことによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める線形補間ステップと
を含むことを特徴とする、請求項17に記載の色予測方法。
【請求項19】
複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの
分光特性を予測する色予測プログラムであって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
コンピュータに、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと
、
前記類似色
のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前
記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を前記関係式に当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を実行させ
、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする、色予測プログラム。
【請求項20】
複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの
分光特性を予測する色予測プログラムであって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
コンピュータに
、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色
のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前
記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色選択ステップで前記類似色として選択されたサンプル色についての前記関係式に前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を実行させ
、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該各サンプル色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする、色予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色(典型的には、特色を含む複数の色)のインクの重ね刷りによって得られる色を予測する際に用いられるカラーチャート内のパッチの色を予測する色予測方法および色予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界では、デジタル印刷装置の普及が進んでいる。しかしながら、ラベル・パッケージの分野では、近年でも印刷版を使用した印刷装置(以下、「従来方式の印刷装置」あるいは単に「印刷装置」という。)による印刷(オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など)が行われることが多い。ところが、デザインやコンテンツの制作の短納期化の要求が高まっており、従来方式の印刷装置を使用している場合にはデザイン等の変更があったときに印刷版の再作製や工程の後戻りによって生じるコストが大きいことが問題となっている。この点、デジタル印刷装置によれば、印刷版を使用しないため、印刷版の交換・再作製という作業が発生することがない。すなわち、デジタル印刷装置を採用することにより、特に小ロットの印刷を低コストで行うことが可能となり、デザインやコンテンツの制作の短納期化の要求へも低コストで対応することが可能となる。
【0003】
ところで、ラベル・パッケージの分野では、色の表現力を高めるために特色が多用される傾向にある。このため、従来方式の印刷装置での印刷用に生成された印刷データを用いてデジタル印刷装置で印刷を行うためには、特色のインクの重ね刷りによって得られる色の予測を行って、その予測した色をデジタル印刷装置で再現する必要がある。なお、以下においては、複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色を特定する値(具体的には、反射率、あるいは、CIE1931XYZ色空間における三刺激値X,Y,およびZ)の予測値のことを「オーバープリント予測値」という。
【0004】
後述する非特許文献1には、特色を含む複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色(オーバープリント予測値)を比較的簡単に予測する手法(以下、「Deshpandeらの手法」という。)が開示されている。Deshpandeらの手法では、オーバープリント予測値は、三刺激値X,Y,およびZを用いて次式(1)~(3)のように表される(
図31参照)。
X=j
x×(X
b×X
f)+k
x ・・・(1)
Y=j
y×(Y
b×Y
f)+k
y ・・・(2)
Z=j
z×(Z
b×Z
f)+k
z ・・・(3)
ここで、X
b,Y
b,およびZ
bは背景色の三刺激値であり、X
f,Y
f,およびZ
fは前景色の三刺激値であり、j
x,j
y,およびj
zはスケーリング係数であり、k
x,k
y,およびk
zは定数である。以下、j
x,j
y,j
z,k
x,k
y,およびk
zをまとめて「オーバープリント係数」という。
【0005】
ところで、色の再現方法には加法混色と減法混色とがあるが、印刷の場合には減法混色によって色の再現が行われる。これに関し、仮に理想的な減法混色が行われると、例えば、重ね刷りによって得られる色の刺激値Xは「Xb×Xf」で表される(刺激値Y,Zについても同様である)。しかしながら、より正確な値を得るためには、不透明インクの使用や表面での光の反射などに起因する誤差を考慮した補正が必要となる。そこで、Deshpandeらの手法では、上式(1)~(3)に示したように、一次式を用いた補正が行われている。
【0006】
Deshpandeらの手法では、例えば、模式的には
図32に示すようなカラーチャートが使用される。このカラーチャートは「CxFチャート」と呼ばれている。
図32に示す例では、CxFチャートは22個のパッチによって構成されている。上段の11個のパッチは、網点パーセントを10%刻みにして対象の特色のインクを紙などの基材上に印刷することによって得られるパッチである。下段の11個のパッチは、網点パーセントを10%刻みにして対象の特色のインクを黒色(墨ベタ)上に印刷することによって得られるパッチである。このようにCxFチャートには複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチが含まれている。このようなCxFチャートのパッチの測色で得られる値(測色値)を用いて、オーバープリント予測値が算出される。
【0007】
以下、
図33に示すフローチャートを参照しつつ、背景色が網点パーセントを40%とする特色(便宜上「特色1」という。)であって前景色が網点パーセントを60%とする別の特色(便宜上「特色2」という。)である場合のオーバープリント予測値の算出を例に挙げて、Deshpandeらの手法について詳しく説明する。
【0008】
まず、特色1のインクを用いてCxFチャートの印刷が行われ、さらに、特色2のインクを用いてCxFチャートの印刷が行われる(ステップS900)。
【0009】
次に、特色2のインクを用いて印刷されたCxFチャート(便宜上「特色2チャート」という。)を使用して、特色2に関する上式(1)~(3)のオーバープリント係数j
x,j
y,j
z,k
x,k
y,およびk
zが算出される(ステップS910)。これに関し、例えば、上式(1)に着目すると、X
b×X
fについての実用上の最大値および最小値は、それぞれ、基材上および黒色(墨ベタ)上に特色2のインクが塗られたことによって得られる値である。Y
b×Y
fおよびZ
b×Z
fについても同様である。そこで、オーバープリント係数を算出するために、上式(1)~(3)を表す座標系(
図34参照:但し、
図34には上式(1)を表す座標系のみを示している。)において、黒色上に網点パーセントを60%とする特色2のインクが塗られた状態の刺激値を表す座標が第1校正点P91とされ、基材上に網点パーセントを60%とする特色2のインクが塗られた状態の刺激値を表す座標が第2校正点P92とされる。
【0010】
三刺激値のうちの例えばXに着目すると、第1校正点P91については、上式(1)に対して次のように値の代入が行われる。特色2チャートのパッチPA93の測色によって得られる値(黒色の刺激値)がX
bに代入され、特色2チャートのパッチPA92の測色によって得られる値(基材上に網点パーセントを60%とする特色2のインクが塗られた状態の刺激値)がX
fに代入され、特色2チャートのパッチPA91の測色によって得られる値(黒色上に網点パーセントを60%とする特色2のインクが塗られた状態の刺激値)がXに代入される(
図32参照)。また、第2校正点P92については、上式(1)に対して次のように値の代入が行われる。特色2チャートのパッチPA94の測色によって得られる値(基材の刺激値)がX
bに代入され、特色2チャートのパッチPA92の測色によって得られる値(基材上に網点パーセントを60%とする特色2のインクが塗られた状態の刺激値)がX
fおよびXに代入される(
図32参照)。
【0011】
第1校正点P91に関する方程式と第2校正点P92に関する方程式との連立方程式を解くことによってオーバープリント係数j
x,k
xが算出される。すなわち、
図34で符号L91を付した直線を表す式が得られる。オーバープリント係数j
y,j
z,k
y,およびk
zについても、同様にして算出される。
【0012】
なお、
図32に示すCxFチャートでは10%刻みでパッチが設けられているが、線形補間によって得られる測色値に基づいて、左右方向に隣接する2つのパッチ間の網点パーセントに対応するオーバープリント係数を求めることができる。
【0013】
次に、特色1のインクを用いて印刷されたCxFチャート(便宜上「特色1チャート」という。)を使用して、最終的なオーバープリント予測値を算出するための上式(1)~(3)中のX
b,Y
b,およびZ
bの値(背景色の三刺激値)が取得される(ステップS920)。具体的には、特色1チャートのパッチPA95(
図32参照)の測色によって、X
b,Y
b,およびZ
bの値が取得される。
【0014】
次に、特色2チャートを使用して、最終的なオーバープリント予測値を算出するための上式(1)~(3)中のX
f,Y
f,およびZ
fの値(前景色の三刺激値)が取得される(ステップS930)。具体的には、特色2チャートのパッチPA92(
図32参照)の測色によって、X
f,Y
f,およびZ
fの値が取得される。
【0015】
最後に、ステップS910~S930で得られた値を上式(1)~(3)に代入することによって、オーバープリント予測値としての三刺激値X,Y,およびZが算出される(ステップS940)。これは、例えば、
図34で符号L91を付した直線において横軸が「ステップS920で取得されたX
b」と「ステップS930で取得されたX
f」との積であるときの縦軸の値をXの値として算出することに相当する。
【0016】
上記の処理では、特色2チャートのパッチPA91,PA92,およびPA93をそれぞれ測色することによって、第1校正点P91(
図34参照)に関するX,X
f,およびX
bの値を取得している。しかし、高精度のオーバープリント予測値が必要とされないのであれば、簡単のために第1校正点P91を
図34のグラフの原点に位置するとみなすこともできる。この場合には、特色2チャートのパッチPA91およびPA93の測色が不要になる(第2校正点P92のXおよびX
fの値の取得のためにパッチPA92の測色は依然として必要である)。この場合、
図32に示すCxFチャートのパッチPA91およびPA93等を含む下段のパッチ群を印刷しなくても、オーバープリント予測値としての三刺激値X,Y,およびZを算出することができる。このように、
図32に示す上段のパッチ群を有し下段のパッチ群を備えないCxFチャートを本明細書では便宜上「簡易CxFチャート」という。
【0017】
なお、後述する本発明の具体的な実施形態に関連して、特開平6-217143号公報には、画質調整を行う際に使用するガンマ補正曲線を複数の曲線の中から選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開平6-217143号公報
【文献】特開2016-82598号公報
【非特許文献】
【0019】
【文献】K. Deshpande, P. Green、"Recommendations for predicting spot colour overprints"、[online]、[平成30年6月7日検索]、インターネット<URL: http://www.color.org/ICC_white_paper_43_Draft2kd.doc>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、Deshpandeらの手法によれば、例えば
図32に示したようなCxFチャートを用いて色の予測が行われている。ところが、特色を用いた印刷が行われる場合であっても、通常、このようなCxFチャートは事前には印刷されていない。このため、特色の数に等しい数のCxFチャートを印刷して各パッチの測色を行う必要性が生じる。これにより、コストの増加や工数の増加が引き起こされる。
【0021】
そこで、対象の特色のインクが基材上にベタ(網点パーセント:100%)で塗られた状態のパッチ(以下、「ベタパッチ」という。)の測色値に基づいて中間調のパッチの色を予測することが考えられる。具体的には、ベタパッチの分光反射率に基づいて中間調のパッチの分光反射率を予測することが考えられる。これに関連して、特開2016-82598号公報には、中間調を予測する手法の1つとしてユール・ニールセン・モデルが挙げられている。このモデルでは、反射率R(λ)が次式(4)で求められる。
【数1】
ここで、aは網点パーセントを表し、Rλ
100%は対象のインクがベタで塗られた状態の反射率を表し、Rλ用紙は紙白(印刷用紙)の反射率を表し、nは実験的に求められる係数を表している。
【0022】
ところが、ユール・ニールセン・モデルによれば、予測精度が不充分である。
図35および
図36は、或る色に関して0%から100%までの10%刻みの各網点パーセントに対応する分光反射率(但し、紙白(網点パーセント:0%)の分光反射率が1となるように正規化した値)を表すグラフである。
図35および
図36に関し、横軸は波長(単位:nm)であり、縦軸は反射率である。なお、
図35に示すグラフは、ユール・ニールセン・モデルを用いて求められた分光反射率を表しており、
図36に示すグラフは、実際の分光反射率を表している。
図35および
図36で符号95を付した点線上の分光反射率に着目すると、ユール・ニールセン・モデルによれば網点パーセントの増加に対して分光反射率が単調減少となっている(
図35参照)が、実際には網点パーセントの増加に対して分光反射率は単調減少とはなっていない(
図36参照)。従って、ユール・ニールセン・モデルを用いた場合には、色の予測は充分な精度では行われない。
【0023】
以上のような事情に鑑み、本発明は、複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色を従来よりも低コストかつ少ない工数で予測できるよう、CxFチャートに含まれるべきパッチの色の高精度での予測を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
第1の発明は、複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を前記関係式に当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含み、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする。
【0025】
第2の発明は、第1の発明において、
前記類似色選択ステップでは、前記複数のサンプル色のうち所定の規則に従って定められる複数の候補色の中から前記類似色が選択されることを特徴とする。
【0026】
第3の発明は、第2の発明において、
前記複数の候補色に定められる各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性の数値範囲は、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性の数値範囲を包含していることを特徴とする。
【0027】
第4の発明は、第2の発明において、
前記複数のサンプル色のうち前記基準パッチの分光特性の数値範囲の広さが第1位から第k位(kは2以上の整数)までのk個のサンプル色が前記複数の候補色に定められることを特徴とする。
【0028】
第5の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記類似色選択ステップでは、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性と各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性との2乗誤差が求められ、最小の2乗誤差が得られたサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする。
【0029】
第6の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
入力データを前記基準パッチの分光特性とし出力データを前記複数のサンプル色に対応する複数の分類番号のそれぞれの確率とするニューラルネットワークで、各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該サンプル色に対応する分類番号に相当する値とを含む複数の教師データを用いた機械学習を行う学習ステップを更に含み、
前記類似色選択ステップでは、前記学習ステップによる学習済みのニューラルネットワークに前記入力データとして前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を与えることによって前記出力データとして得られる前記複数の分類番号のそれぞれの確率のうち最も高い確率が得られた分類番号に対応するサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする。
【0030】
第7の発明は、第6の発明において、
前記ニューラルネットワークに前記入力データとして与えられる分光特性のデータは、前記基材の分光特性を基準とする正規化が施されていることを特徴とする。
【0031】
第8の発明は、第6の発明において、
前記ニューラルネットワークには、前記入力データとして前記基準パッチの分光特性に加えて前記基材の分光特性が与えられることを特徴とする。
【0032】
第9の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記類似色選択ステップでは、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性と各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性とに基づいて前記予測対象色と各サンプル色との色差が求められ、最小の色差が得られたサンプル色が前記類似色として選択されることを特徴とする。
【0034】
第10の発明は、第1の発明において、
前記関係式は、nを2以上の整数とするn次式であることを特徴とする。
【0035】
第11の発明は、第1の発明において、
前記関係式は、累乗関数を用いて表されることを特徴とする。
【0036】
第12の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記分光特性は、分光反射率であって、
pを1未満の予め定められた値として前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率のデータに値をp以上1以下とするデータが含まれていない場合、前記関係式算出ステップでは、前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率を1とし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータを追加して前記関係式が求められることを特徴とする。
【0037】
第13の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記分光特性は、分光反射率であって、
前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率のデータの最大値をuとし、当該最大値に対応する前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率をvとすると、前記予測対象色についての前記基準パッチの分光反射率のデータのうち値がuよりも大きいデータに関し、前記分光特性予測ステップでは、前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率をuとし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率をvとする組み合わせデータと前記類似色についての前記基準パッチの分光反射率を1とし前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータとを用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光反射率に基づき線形補間を行うことによって、前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光反射率の予測値が求められることを特徴とする。
【0038】
第14の発明は、第1から第13までのいずれかの発明において、
前記分光特性は、400nmから700nmまでの範囲を包含する波長範囲を適宜の大きさの単位波長範囲で除することによって得られる数の分光反射率を含むことを特徴とする。
【0039】
第15の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記分光特性は、分光反射率、分光吸収率、および分光吸収係数のいずれかであることを特徴とする。
【0040】
第16の発明は、複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色選択ステップで前記類似色として選択されたサンプル色についての前記関係式に前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含み、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該各サンプル色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする。
【0041】
第17の発明は、複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの分光特性を予測する色予測方法であって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
前記色予測方法は、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性との関係を用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性に基づき線形補間を行うことによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を含むことを特徴とする。
第18の発明は、第17の発明において、
前記分光特性予測ステップは、
前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを同一の分光波長ごとに対応付けることにより複数のプロットで表される複数の対応関係を作成する対応関係作成ステップと、
前記複数のプロットを用いて前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性に基づき線形補間を行うことによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める線形補間ステップと
を含むことを特徴とする。
【0042】
第19の発明は、複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの分光特性を予測する色予測プログラムであって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
コンピュータに、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を前記関係式に当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を実行させ、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって前記類似色についての前記基準パッチの分光特性と前記類似色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする。
【0043】
第20の発明は、複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャートを基材上に予測対象色のインクを前記複数段階のインク濃度で塗ることによって作成したときの各パッチの分光特性を予測する色予測プログラムであって、
前記複数段階のインク濃度は、それぞれが前記複数のパッチを含む全ての色のカラーチャートに対して共通的に定められ、
前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度に対応するパッチが基準パッチに定められるとともに、前記複数段階のインク濃度のうちの最大のインク濃度以外のインク濃度に対応するパッチが色予測対象パッチに定められ、
前記予測対象色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性は予め得られており、
コンピュータに、
前記複数のパッチの分光特性が得られている複数のサンプル色のカラーチャートについて、前記基準パッチの分光特性と前記色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求める関係式算出ステップと、
前記複数のサンプル色の中から前記予測対象色に近い色を類似色として選択する類似色選択ステップと、
前記類似色選択ステップで前記類似色として選択されたサンプル色についての前記関係式に前記予測対象色についての前記基準パッチの分光特性を当てはめることによって前記予測対象色についての前記色予測対象パッチの分光特性の予測値を求める分光特性予測ステップと
を実行させ、
前記関係式算出ステップでは、単位波長範囲毎に得られるデータであって各サンプル色についての前記基準パッチの分光特性と当該各サンプル色についての前記色予測対象パッチの分光特性とを組み合わせたデータである複数の組み合わせデータに基づいて、前記基準パッチの分光特性から前記色予測対象パッチの分光特性の近似値を算出する式が前記関係式として求められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
上記第1の発明によれば、測色済みの複数のサンプル色の中から予測対象色に近い色が類似色として選択され、その類似色について、基準パッチの分光特性と色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式が求められる。そして、予測対象色についての基準パッチの分光特性を関係式に当てはめることによって、当該予測対象色についての色予測対象パッチの分光特性の予測値が求められる。以上のように分光特性の予測は予測対象色に近い色についての「基準パッチの分光特性と色予測対象パッチの分光特性との関係」に基づいて行われるので、精度良い予測値が得られる。すなわち、予測対象色のインクを用いてカラーチャート(複数段階のインク濃度に対応する複数のパッチを含むカラーチャート)を印刷することなく、当該カラーチャートが印刷されたと仮定した場合の各パッチの分光特性が高精度で得られる。従って、カラーチャートの印刷や測色が不要となる。以上のように、複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色を従来よりも低コストかつ少ない工数で予測できるよう、カラーチャートに含まれるべきパッチの分光特性を高精度で予測することが可能となる。
【0045】
上記第2から第4までの発明によれば、不適当なサンプル色(例えば、基準パッチの分光特性の数値範囲が狭いサンプル色)が類似色として選択されることに起因する分光特性の予測精度の低下が抑制される。
【0046】
上記第5の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0047】
上記第6の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0048】
上記第7または第8の発明によれば、印刷に使用される基材の特性を考慮して、予測対象色に類似するサンプル色の選択が行われる。
【0049】
上記第9の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0050】
上記第10または第11の発明によれば、予測対象色についての色予測対象パッチの分光特性の予測値が、より精度良く求められる。
【0051】
上記第12または第13の発明によれば、類似色についての基準パッチの分光特性の数値範囲が狭い場合でも分光特性の予測が精度良く行われる。
【0052】
上記第14または第15の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0053】
上記第16の発明によれば、予め全てのサンプル色について基準パッチの分光特性と色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求めておくことによって、実際に色の予測を行う際の処理負荷が軽減される。
【0054】
上記第17または第18の発明によれば、基準パッチの分光特性と色予測対象パッチの分光特性との関係を表す関係式を求めることなく上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0055】
上記第19の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0056】
上記第20の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】CxFチャートに関して本明細書で用いる用語について説明するための図である。
【
図2】ニューラルネットワーク予測手法の概要について説明するための図である。
【
図3】ニューラルネットワーク予測手法で用いられるニューラルネットワークの構造の一例を示す図である。
【
図4】ニューラルネットワーク予測手法の学習時の処理について説明するための図である。
【
図5】ニューラルネットワーク予測手法に関し、ニューラルネットワークが色予測対象パッチ毎に用意されることを説明するための図である。
【
図6】ニューラルネットワーク予測手法による色予測処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】ニューラルネットワーク予測手法に関し、教師データの取得手順を示すフローチャートである。
【
図8】ニューラルネットワーク予測手法に関し、教師データの取得の詳細について説明するためのブロック図である。
【
図9】本発明の一実施形態における印刷システムの全体構成図である
【
図10】上記実施形態における印刷データ生成装置のハードウェア構成図である。
【
図11】上記実施形態における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。
【
図12】上記実施形態において、類似色の選択について説明するための図である。
【
図13】上記実施形態において、関係式を算出する際の正規化について説明するための図である。
【
図14】上記実施形態において、組み合わせデータについて説明するための図である。
【
図15】上記実施形態において、関係式の算出について説明するための図である。
【
図16】上記実施形態において、1つのプロットの例を示す図である。
【
図17】上記実施形態に関し、類似色の選択を候補色の中から行うことの必要性について説明するための図である。
【
図18】上記実施形態に関し、類似色の選択を候補色の中から行うことの必要性について説明するための図である。
【
図19】上記実施形態に関し、類似色の選択を候補色の中から行うことの必要性について説明するための図である。
【
図20】上記実施形態に関し、類似色の選択を候補色の中から行うことの必要性について説明するための図である。
【
図21】上記実施形態に関し、類似色の選択を候補色の中から行うことの必要性について説明するための図である。
【
図22】上記実施形態の第1の変形例で用いられるニューラルネットワークの構造の一例を示す図である。
【
図23】上記実施形態の第1の変形例において、ニューラルネットワークを用いた学習時の処理について説明するための図である。
【
図24】上記実施形態の第1の変形例において、ニューラルネットワークを用いた学習時の処理について説明するための図である。
【
図25】上記実施形態の第1の変形例における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。
【
図26】上記実施形態の第5の変形例において、関係式を求めるための組み合わせデータの追加について説明するための図である。
【
図27】上記実施形態の第6の変形例において、分光反射率の予測値の求め方について説明するための図である。
【
図28】上記実施形態の第9の変形例における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。
【
図29】上記実施形態の第10の変形例で行われる線形補間について説明するための図である。
【
図30】上記実施形態の第10の変形例における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。
【
図31】従来例に関し、Deshpandeらの手法について説明するための図である。
【
図32】従来例に関し、CxFチャートの一例を模式的に示す図である。
【
図33】従来例に関し、Deshpandeらの手法について説明するためのフローチャートである。
【
図34】従来例に関し、Deshpandeらの手法について説明するための図である。
【
図35】従来例に関し、ユール・ニールセン・モデルを用いて求められた分光反射率を表すグラフである。
【
図36】従来例に関し、実際の分光反射率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
<0.はじめに>
実施形態について説明する前に、本発明の着想に至る経緯などについて説明する。なお、以下においては、CxFチャートの上段のパッチ(
図1で符号71を付した段のパッチ)(対象のインクを基材上に印刷することによって得られるパッチ)を「第1タイプパッチ」といい、CxFチャートの下段のパッチ(
図1で符号72を付した段のパッチ)(対象のインクを黒色上に印刷することによって得られるパッチ)を「第2タイプパッチ」という。また、基材そのものの色を表しているパッチ(
図1で符号PA1を付したパッチ)を「紙白パッチ」といい、基材上に対象のインクがベタで塗られた状態のパッチ(
図1で符号PA2を付したパッチ)を「ベタパッチ」という。
【0059】
上述したように、特色のインクを含む複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色を予測するためには、CxFチャートの測色の結果(測色値)が必要となる。これに関し、CxFチャートを構成する22個のパッチのうちベタパッチPA2および紙白パッチPA1については、測色値である分光反射率を比較的容易に取得することができる。なお、以下では、分光反射率が380nm~730nmの波長範囲で10nm刻みで得られるケース(すなわち、36個の分光反射率によって1つの色が特定されるケース)を想定して説明を行う。但し、これには限定されず、400nm~700nmの範囲を包含する波長範囲を適宜の大きさの単位波長範囲で除することによって得られる数の分光反射率が得られるケースにも、後述するニューラルネットワーク予測手法および後述する実施形態(変形例を含む)を適用することができる。
【0060】
ベタパッチPA2の分光反射率は、例えば、色玉や印刷物に含まれる該当色の部分の測色を行うことによって得られる。また、ベタパッチPA2の分光反射率については、該当色の色見本の測色で得られた分光反射率で代用することもできる。何故ならば、色見本は、該当色をベタ塗りしたときの目標とする色を表しているからである。
【0061】
紙白パッチPA1の分光反射率は、基材上の何も印刷されていない部分の測色を行うことによって得られる。また、印刷の際に基材として同じ用紙が使用されるのであれば、インクの色に関わらず、紙白パッチPA1の分光反射率は一定である。従って、複数の色のインクについての処理が行われる場合であっても、同じ用紙が使用される限り、紙白パッチPA1の分光反射率の測定は一度だけ行われれば良い。なお、複数のCxFチャートの紙白パッチPA1の分光反射率を測定して、それらの平均値を紙白パッチPA1の分光反射率の代表値として用いても良い。
【0062】
CxFチャートを構成する22個のパッチのうちベタパッチPA2と紙白パッチPA1とを除く20個のパッチについては、実際に基材上あるいは黒色上に印刷されたものを測色しなければ正確な分光反射率は得られない。しかしながら、色味が近い複数の特色に着目したとき、上記20個のパッチに関して、複数の特色間で分光反射率は互いに近い値になると考えられる。印刷の際に基材として同じ用紙が使用されるのであれば、ベタパッチPA2の分光反射率と上記20個のパッチのそれぞれの分光反射率とは一定の関係があると考えられる。
【0063】
そこで、上記20個のパッチを色予測対象パッチとしてベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を予めニューラルネットワークに学習させた上で予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率を学習済みのニューラルネットワークを用いて予測するという手法(以下、便宜上「ニューラルネットワーク予測手法」という。)を本願出願人は試みた。なお、上述したように例えば36個の分光反射率によって1つの色が特定されるので、以下、分光反射率の予測を行う一連の処理のことを「色予測処理」という。
【0064】
ところが、ニューラルネットワーク予測手法を用いた色予測処理によれば、上記20個のパッチのうち第2タイプパッチ72については実用に差し支えのない予測値が得られるが、上記20個のパッチのうち第1タイプパッチ71については特に学習に用いるデータ数が少ない場合に充分な精度での予測値が得られない。そこで、第1タイプパッチ71については別の新たな着想に基づく手法(本発明の実施形態(変形例を含む)として記載する手法)を用いて色予測処理を行うことにした。第2タイプパッチ72については、ニューラルネットワーク予測手法を用いた色予測処理によって色の予測が行われる。以下、(第2タイプパッチ72のみの色の予測を行うケースの)ニューラルネットワーク予測手法について説明し、その後、本発明の実施形態について説明する。
【0065】
まず、
図1および
図2を参照しつつ、ニューラルネットワーク予測手法の概要を説明する。上述したように、CxFチャートを構成するパッチのうちベタパッチPA2については比較的容易に分光反射率を取得することができる。そこで、第2タイプパッチ72を色予測対象パッチとして、ベタパッチPA2の分光反射率から色予測対象パッチの分光反射率を予測する色予測モデルが構築される。そして、当該色予測モデルを用いて、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率が予測される。
【0066】
色予測モデルは機械学習を行うニューラルネットワーク73によって実現される(
図2参照)。色予測処理は、概略的には、学習段階の処理と予測(推論)段階の処理とに分けられる。学習段階では、ニューラルネットワーク73に教師データ(訓練データ)が与えられ、当該教師データを用いた機械学習がニューラルネットワーク73で行われる。ニューラルネットワーク73には、教師データとして、CxFチャート内のパッチの測色によって得られる分光反射率が与えられる。なお、ここでは、1つの教師データは、ベタパッチPA2の測色によって得られる36個の分光反射率と1つの色予測対象パッチの測色によって得られる36個の分光反射率とによって構成される。予測段階では、学習済みのニューラルネットワーク73に、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率が与えられる。これにより、ニューラルネットワーク73から予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率(予測値)が出力される。
【0067】
以上のような色予測モデルを用いることにより、CxFチャートの印刷が行われていない特色についても、CxFチャートが印刷されたと仮定した場合の各パッチ(この例では、各第2タイプパッチ72)の色値(分光反射率)を取得することができる。
【0068】
図3は、ニューラルネットワーク予測手法で用いられるニューラルネットワーク73の構造の一例を示す図である。このニューラルネットワーク73は、入力層と隠れ層(中間層)と出力層とによって構成されている。入力層は、36個の分光反射率75(1)~75(36)を受け取る36個のユニット(ニューロン)によって構成されている。隠れ層も36個のユニットによって構成されている。但し、隠れ層のユニット数は36には限定されない。また、
図3に示す例では隠れ層の層数は1であるが、隠れ層の層数は2以上であっても良い。出力層は、36個の分光反射率76(1)~76(36)を出力する36個のユニットによって構成されている。
【0069】
入力層-隠れ層間の結合および隠れ層-出力層間の結合は、全結合である。隠れ層および出力層の活性化関数にはシグモイド関数が採用される。但し、シグモイド関数以外の関数を活性化関数として採用しても良い。
【0070】
このニューラルネットワーク73を用いた学習時には、分光反射率75(1)~75(36)が入力層に与えられる。これにより、ニューラルネットワーク73内で順伝播の処理が行われ、出力層から出力される分光反射率76(1)~76(36)と正解データである分光反射率77(1)~77(36)との2乗誤差の総和が求められる(
図4参照)。そして、誤差の逆伝播の処理で得られる結果に基づいて勾配降下法を用いることによって、ニューラルネットワーク73のパラメータ(重み係数、バイアス)が更新される。以上のようにして学習が繰り返されることによって、上記パラメータが最適化される。なお、学習手法については、全ての教師データをまとめてニューラルネットワーク73に与えるバッチ学習を採用しても良いし、教師データを複数のグループに分割してグループ毎に教師データをニューラルネットワーク73に与えるミニバッチ学習を採用しても良いし、教師データを1つずつニューラルネットワーク73に与えるオンライン学習を採用しても良い。
【0071】
このニューラルネットワーク73を用いた予測時(推論時)には、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率75(1)~75(36)が入力層に与えられる。そして、ニューラルネットワーク73内で順伝播の処理が行われることによって出力層から出力される分光反射率76(1)~76(36)が、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率の予測値として扱われる。
【0072】
ところで、
図3に示したニューラルネットワーク73は、色予測対象パッチ毎に用意される。この例では、11個のパッチ(第2タイプパッチ72)が色予測対象パッチとされるので、
図5に示すように11個のニューラルネットワーク73(1)~73(11)が用意される。そして、色予測対象パッチ毎に、対応するニューラルネットワーク73を用いて学習および予測(推論)が行われる。
【0073】
次に、
図6および
図7に示すフローチャートを参照しつつ、ニューラルネットワーク予測手法による色予測処理の手順について説明する。
図6に示すように、まず、色予測モデルとして構築されるべきニューラルネットワーク73での学習に必要な教師データを取得する処理が行われる(ステップS500)。ステップS500では、分光反射率の予測が精度良く行われるよう、充分な数の教師データを取得することが好ましい。ステップS500は、詳しくは、
図7に示すように、CxFチャートを印刷するステップ(ステップS502)と分光反射率を測定するステップ(ステップS504)とからなる。ステップS502およびステップS504の処理については、
図8を参照しつつ、詳しく説明する。
【0074】
ステップS502では、まず、印刷データ生成装置100でCxFチャート出力用の印刷データDchが作成され、当該印刷データDchが製版装置200に送られる。製版装置200では、印刷データDchに基づいて印刷版PLが作製される。そして、その印刷版PLを用いて、印刷装置300で印刷が実行される。これにより、印刷装置300からCxFチャートCHが出力される。
【0075】
ステップS504では、測色機400によって、ステップS502で印刷されたCxFチャートCHに含まれるパッチの測色が行われる。測色機400による測色で得られた測色データDcmは、印刷データ生成装置100に送られる。この例で使用される測色機400は分光測色機である。従って、測色で得られる測色データDcmは、分光反射率のデータである。この例においては、分光反射率のデータは、380nm~730nmの波長範囲で10nm刻みで得られる。従って、CxFチャートCHの任意の1つのパッチの測色を行うことによって、36個の分光反射率のデータが得られる。
【0076】
教師データの取得後、ニューラルネットワーク73によって、ステップS500で得られた教師データを用いた機械学習が行われる(ステップS510)。上述したように、この機械学習は、色予測対象パッチ毎に、対応するニューラルネットワーク73を用いて行われる。ステップS510での機械学習によって、ニューラルネットワーク73のパラメータ(重み係数、バイアス)が最適化される。その最適化されたパラメータを有するニューラルネットワーク73が、色の予測に使用される色予測モデルとなる。以上のように、ステップS510では、CxFチャート内のパッチの色を予測する色予測モデルが構築される。
【0077】
なお、ステップS500およびステップS510の処理(
図6で符号78を付した部分の処理)については、1度だけ行われれば良く、1つの予測対象色の処理毎に行われる必要はない。これに対して、ステップS520およびステップS530の処理(
図6で符号79を付した部分の処理)は、1つの予測対象色の処理毎に行われる必要がある。
【0078】
ステップS520では、測色機400を用いて、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率が測定される。上述したように、ベタパッチの分光反射率は、例えば、色玉や印刷物に含まれる該当色の部分の測色を行うことによって得られる。また、ベタパッチの分光反射率を該当色の色見本の分光反射率で代用することもできる。
【0079】
次に、ステップS510で構築された色予測モデルとしてのニューラルネットワーク73に入力データとしてステップS520で得られた分光反射率を与えることによって、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率(予測値)が求められる(ステップS530)。このステップS530では、11個の色予測対象パッチのそれぞれについて、36個の反射率が求められる。以上より、実際には予測対象色についてのCxFチャートが印刷されていなくても、当該CxFチャートが印刷されたと仮定した場合の全ての第2タイプパッチ72の分光反射率が得られる。
【0080】
CxFチャートの第2タイプパッチ72についての色の予測は、以上のようなニューラルネットワーク予測手法を用いて行われる。なお、簡易CxFチャートが使用される場合には、第2タイプパッチ72についての色の予測を行う必要がないので、以下の実施形態(変形例を含む)に記載の手法で第1タイプパッチ71のみについての色の予測が行われれば良い。
【0081】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0082】
<1.印刷システムの全体構成>
図9は、本発明の一実施形態における印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、PDFファイルなどの入稿データに対して各種処理を施して印刷データを生成する印刷データ生成装置100と、印刷データに基づいて印刷版を作製する製版装置200と、その製版装置200で作製された印刷版を使用して印刷を行う印刷装置300と、印刷版を用いることなくデジタルデータである印刷データに基づいて印刷を行うインクジェット印刷機・コピー機等のデジタル印刷装置350と、色の測定を行う測色機400とによって構成されている。印刷データ生成装置100と製版装置200とデジタル印刷装置350と測色機400とは、通信回線CLによって互いに通信可能に接続されている。なお、本実施形態で使用される測色機400は分光測色機である。
【0083】
本実施形態では、印刷データ生成装置100において、基材上に予測対象色のインク(任意の特色のインク)を複数段階のインク濃度で塗ることによってCxFチャートを作成したと仮定したときの各パッチの色を予測する色予測処理が行われる。詳しくは、色予測処理によって、11個の第1タイプパッチ71のうち紙白パッチPA1とベタパッチPA2とを除く9個のパッチの色値(分光反射率)の予測値が求められる(
図1参照)。すなわち、それら9個のパッチが色予測対象パッチとなる。紙白パッチPA1およびベタパッチPA2の分光反射率については、上述したように、比較的容易に取得することができる。なお、本実施形態においては、ベタパッチPA2が基準パッチに相当する。
【0084】
また、印刷データ生成装置100では、複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色(典型的には、複数の特色のインクの重ね刷りが行われた部分あるいは特色のインクとプロセスカラーのインクとの重ね刷りが行われた部分の色)を予測するオーバープリント予測処理が行われる。オーバープリント予測処理では、必要に応じて、色予測処理の結果(分光反射率の予測値)が用いられる。さらに、印刷データ生成装置100では、オーバープリント予測処理で得られたデータをデジタル印刷装置350での印刷出力が可能な形式の印刷データに変換する処理も行われる。なお、オーバープリント予測処理の具体的な手法については、上述したDeshpandeらの手法を採用しても良いし、それとは別の手法を採用しても良い。
【0085】
<2.印刷データ生成装置の構成>
図10は、本実施形態における印刷データ生成装置100のハードウェア構成図である。この印刷データ生成装置100は、パソコンによって実現されており、CPU11と、ROM12と、RAM13と、補助記憶装置14と、キーボード等の入力操作部15と、表示部16と、光学ディスクドライブ17と、ネットワークインタフェース部18とを有している。通信回線CL経由で送られてくる入稿データは、ネットワークインタフェース部18を介して印刷データ生成装置100の内部へと入力される。印刷データ生成装置100で生成された印刷データは、ネットワークインタフェース部18を介して通信回線CL経由でデジタル印刷装置350に送られる。
【0086】
色予測処理を実行するための色予測プログラム141は補助記憶装置14に格納されている。色予測プログラム141は、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供される。すなわちユーザは、例えば、色予測プログラム141の記録媒体としての光学ディスク(CD-ROM、DVD-ROM等)170を購入して光学ディスクドライブ17に装着し、その光学ディスク170から色予測プログラム141を読み出して補助記憶装置14にインストールする。また、これに代えて、通信回線CLを介して送られる色予測プログラム141をネットワークインタフェース部18で受信して、それを補助記憶装置14にインストールするようにしてもよい。
【0087】
<3.色予測方法>
以下、本実施形態に係る色予測方法を実現する色予測処理について説明する。なお、この色予測処理は、印刷データ生成装置100で色予測プログラム141が実行されることによって行われる。
【0088】
<3.1 概略手順>
図11は、本実施形態における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。なお、この色予測処理が実行されるまでに、適宜の数の色(以下、「サンプル色」という。)についてのCxFチャート(簡易CxFチャートでも良い)の印刷およびそれらの測色が行われている必要がある。すなわち、この色予測処理が実行されるまでに、複数のサンプル色のそれぞれについての各第1タイプパッチ71の分光反射率が得られている必要がある。サンプル色としては、例えば32個の特色が用いられる。また、予測対象色(処理対象の色)について、この色予測処理が実行されるまでに、基材上に当該予測対象色のインクがベタで塗られた状態の分光反射率が得られている必要がある。すなわち、この色予測処理が実行されるまでに、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率が得られている必要がある。以下、
図11に示すフローについて説明する。
【0089】
まず、この色予測処理の実行前に得られている分光反射率のデータに基づいて、複数のサンプル色の中から予測対象色に近い色が類似色として選択される(ステップS110)。例えば、32個の特色がサンプル色として用意されている場合、それら32個の特色の中から予測対象色に近い1つの色が類似色として選択される。
【0090】
次に、類似色(ステップS110で選択されたサンプル色)について、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式(近似式)が求められる(ステップS120)。この関係式は、色予測対象パッチ毎に求められる。本実施形態においては、色予測対象パッチは9個あるので、ステップS120の処理によって9個の関係式が得られる。
【0091】
最後に、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率をステップS120で求められた関係式に当てはめることによって、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率の予測値が求められる(ステップS130)。本実施形態においては、色予測対象パッチは9個あるので、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率が9個の関係式に当てはめられる。これにより、予測対象色について、9個の色予測対象パッチのそれぞれの分光反射率の予測値が求められる。
【0092】
以上のようにして、実際には予測対象色のインクを用いてCxFチャートが印刷されていなくても、当該CxFチャートが印刷されたと仮定した場合の全ての第1タイプパッチ71の分光反射率が得られる。以下、
図11の各ステップの処理について、詳しく説明する。
【0093】
<3.2 類似色の選択>
まず、類似色を選択する処理(
図11のステップS110の処理)について詳しく説明する。本実施形態においては、CxFチャートを構成する各パッチの分光反射率のデータは、380nm~730nmの波長範囲での10nm刻みの36個の反射率で構成される。従って、予測対象色やサンプル色に関し、ベタパッチPA2の分光反射率のデータは、380nm~730nmの波長範囲での10nm刻みの36個の反射率で構成される。そこで、予測対象色および各サンプル色の36個の反射率に基づき、予測対象色と各サンプル色との間でのベタパッチPA2の分光反射率についての2乗誤差が求められる。そして、最小の2乗誤差が得られたサンプル色が類似色として選択される。このように、本実施形態においては、最小二乗法を用いて類似色の選択が行われる。
【0094】
ここで、複数のサンプル色を互いに区別するために変数Ci(iは1以上の整数)を用い、サンプル色CiについてのベタパッチPA2の分光反射率(36個の反射率)をRs(i)(1)~Rs(i)(36)と表す(
図12参照)。また、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率(36個の反射率)をRe(1)~Re(36)と表す。そうすると、予測対象色と第1番目のサンプル色C1との間での2乗誤差E(1)は、次式(5)で求められる。
【数2】
【0095】
同様にして、予測対象色と第i番目のサンプル色Ciとの間での2乗誤差E(i)は、次式(6)で求められる。但し、波長毎に重み係数を付加するようにしても良い。
【数3】
【0096】
以上のようにして、まず、予め用意されている複数のサンプル色Ciのそれぞれについて、予測対象色との間でのベタパッチPA2の分光反射率についての2乗誤差E(i)が求められる。そして、その求められた2乗誤差E(i)のうちの最小値に対応するサンプル色が類似色として選択される。このように、本実施形態においては、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率と各サンプル色についてのベタパッチPA2の分光反射率との2乗誤差が求められ、最小の2乗誤差が得られたサンプル色が類似色として選択される。
【0097】
なお、後述するように、予め用意されている複数のサンプル色のうちの一部である複数の候補色の中から類似色の選択が行われるようにしても良い。
【0098】
<3.3 関係式の算出>
次に、関係式を求める処理(
図11のステップS120の処理)について詳しく説明する。類似色については、紙白パッチPA1およびベタパッチPA2を含む全ての第1タイプパッチ71の測色値が得られている。すなわち、模式的には
図13のA部に示すような曲線(分光反射率を表す曲線)に相当するデータが、全ての第1タイプパッチ71について得られている(
図13に関し、横軸は波長(単位:nm)であり、縦軸は反射率である。)。なお、
図13のA部には、第1タイプパッチ71のうちの4つのパッチに対応する曲線のみを示している(
図13のB部も同様である)。符号51を付した曲線は紙白パッチPA1についての曲線であり、符号52を付した曲線はベタパッチPA2についての曲線である。このようなデータに対して、紙白パッチPA1の分光反射率を1とする正規化が施される。これにより、模式的には
図13のB部に示すような曲線(分光反射率を表す曲線)(但し、正規化の基準となった紙白パッチPA1については直線)に相当するデータが得られる。
【0099】
ここで、9個の色予測対象パッチのうちの1つのパッチ(以下、「着目パッチ」という。)に着目する。
図13のB部に示したようなグラフに関し、波長480nmの近傍でベタパッチPA2および着目パッチについての曲線が
図14に示すようなものであったと仮定する。このとき、ベタパッチPA2の反射率は0.15で、着目パッチの反射率は0.52である。本実施形態では、ベタパッチPA2の反射率と着目パッチの反射率とを組み合わせたこのようなデータを「組み合わせデータ」として扱う。上述したように分光反射率のデータは36個の反射率によって構成されているので、ベタパッチPA2の反射率(正規化後の反射率)と着目パッチの反射率(正規化後の反射率)との組み合わせデータは36個得られる。各組み合わせデータは、
図15に示すように、横軸をベタパッチPA2の反射率とし縦軸を着目パッチの反射率とするグラフ(以下、便宜上「関係グラフ」という。)上に1つのプロットとして表される。例えば、
図14に示したデータに基づく組み合わせデータは、関係グラフ上に、
図16で符号53を付したプロットとして表される。このように、本実施形態においては、関係グラフ上に36個のプロットが表される。関係式の算出は、これら36個のプロットの位置にできるだけ近い位置を通る曲線(例えば、
図15において符号54を付した曲線)を求めることに相当する。
【0100】
なお、
図13のB部に示す例では、波長560nm近傍で反射率は最小の値を取り、560nmよりも大きい波長と560nmよりも小さい波長で同じ反射率が現れている。従って、例えば波長の高いものから関係グラフ上へのプロットを順次に行った場合、その軌跡に折り返しが生じる。しかしながら、
図15から把握されるように、ベタパッチPA2の反射率と色予測対象パッチの反射率との関係性については折り返し前後で変化はない。以上のことから、類似色についての「ベタパッチPA2の反射率と色予測対象パッチの反射率との関係」を利用して予測対象色についてのベタパッチPA2の反射率から予測対象色についての色予測対象パッチの反射率を精度良く求めることができると考えられる。
【0101】
以上に鑑み、
図11のステップS120では、上述のような36個の組み合わせデータに基づいて、ベタパッチPA2の分光反射率と着目パッチの分光反射率との関係を表す関係式(ベタパッチPA2の分光反射率から着目パッチの分光反射率の近似値を求める近似式)が求められる。なお、関係式は公知の手法によって求められる。例えば、36個の組み合わせデータによって得られる連立方程式をガウス消去法やガウス・ジョルダン法で解くことによって関係式は求められる。以上のようにして、9個の色予測対象パッチのそれぞれに対応する関係式が得られる。
【0102】
ところで、本実施形態においては、近似式として5次式が採用される。一例を挙げると、次式(7)のような5次式が
図11のステップS120の処理で求められる。なお、次式(7)に関し、yは色予測対象パッチの反射率であり、xはベタパッチPA2の反射率である。
【数4】
【0103】
本実施形態においては、以上のようにして、ステップS110で選択された類似色について、紙白パッチPA1およびベタパッチPA2を除く9個の第1タイプパッチ71のそれぞれに対応する5次式がステップS130で用いるための関係式として求められる。
【0104】
<3.4 分光反射率の算出>
次に、分光反射率の予測値を求める処理(
図11のステップS130の処理)について詳しく説明する。ステップS130の処理の開始時点には、類似色についての色予測対象パッチ毎に、関係式として例えば上式(7)のような5次式が得られている。また、上述したように、分光反射率のデータは36個の反射率で構成されている。そこで、ステップS130では、色予測対象パッチ毎に、対応する関係式(ベタパッチPA2の分光反射率と該当の色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式)に予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータである36個の反射率を1つずつ代入することによって、予測対象色についての該当の色予測対象パッチの分光反射率のデータとなる36個の反射率が求められる。
【0105】
本実施形態においては、関係式を算出する際に、紙白パッチPA1の分光反射率が1となるように正規化が行われている。従って、関係式から得られた36個の反射率に対して、紙白パッチPA1の実際の分光反射率に基づく逆正規化(正規化が施された状態のデータを正規化されていない状態のデータに戻す処理)が施される。
【0106】
<3.5 類似色を選択する際の候補について>
ところで、黒色に近い或る色に着目し、CxFチャートの第1タイプパッチ71の測色を行った。そして、ベタパッチ(網点パーセント:100%)PA2および網点パーセントを70%とする色予測対象パッチのみの測色結果に着目すると、分光反射率を表すグラフとして
図17に示すようなグラフが得られた。
図17では、ベタパッチPA2の分光反射率を表す曲線に符号55を付し、色予測対象パッチの分光反射率を表す曲線に符号56を付している。測色結果によれば、ベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲は0.017~0.039であった。このため、上述した関係グラフ上において、ベタパッチPA2の反射率と色予測対象パッチの反射率との組み合わせデータに相当する36個のプロットの位置は極めて狭い範囲(
図18で符号57を付した網掛け部分)に全て含まれてしまう。このような狭い範囲内の組み合わせデータのみに基づいて関係式を求めると、関係式を表す曲線として、例えば
図19において太実線で示すような曲線が得られる。
図19に示す曲線によれば、予測対象色についてのベタパッチの反射率が0.5よりも大きい場合に当該予測対象色についての色予測対象パッチの反射率が正しく予測されないことは明らかである。
【0107】
また、緑色に近い或る色に着目してCxFチャートの第1タイプパッチ71の測色を行ったところ、ベタパッチPA2の測色結果と或る色予測対象パッチの測色結果とに基づいて
図20に示すような関係グラフが得られた。この関係グラフに基づき関係式を求めると、関係式を表す曲線として、
図21において太実線で示すような曲線が得られた。関係式算出の元となったベタパッチPAの分光反射率の数値範囲は0.02~0.77であるところ、
図21に示す曲線によれば、予測対象色についてのベタパッチの反射率が0.8を超えると妥当ではない予測結果が得られることが把握される。
【0108】
以上のように、類似色として選択されたサンプル色についてのベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲によっては、分光反射率の予測が精度良く行われないことがある。詳しくは、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータのうちサンプル色についてのベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲外のデータについては、色予測対象パッチの反射率が精度良く予測されない。従って、ステップS110で類似色として好適なサンプル色が選択されなければ色の予測が精度良く行われないおそれがある。
【0109】
そこで、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率を精度良く予測できる関係式がステップS120の処理で得られるよう、上記ステップS110において、複数のサンプル色のうち所定の規則に従って定められる複数の候補色の中から類似色が選択されるようにしても良い。これについての具体的な手法は特に限定されないが、例えば以下に記すような2つの手法が考えられる。
【0110】
<3.5.1 第1の手法>
第1の手法では、用意されている全てのサンプル色の中から予測対象色の分光反射率(予測対象色についてのベタパッチの分光反射率)の数値範囲を包含する分光反射率を有する複数のサンプル色が候補色に定められる。換言すれば、候補色に定められるサンプル色についてのベタパッチの分光反射率の数値範囲が予測対象色についてのベタパッチの分光反射率の数値範囲を包含するよう、複数のサンプル色が候補色に定められる。例えば、予測対象色の分光反射率の数値範囲が0.02~0.60であれば、ベタパッチPA2の分光反射率の最小値が0.02以下かつベタパッチPA2の分光反射率の最大値が0.60以上であるサンプル色が候補色に定められる。そして、候補色に定められたサンプル色の中から最小の2乗誤差が得られるサンプル色が、類似色として選択される。
【0111】
<3.5.2 第2の手法>
第2の手法では、用意されている全てのサンプル色の中から分光反射率(ベタパッチPA2の分光反射率)の数値範囲の広さが第1位から第k位(kは2以上の整数)までのk個のサンプル色が候補色に定められる。例えば、100個のサンプル色が用意されている場合に、ベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲の広さが第1位から第32位までの32個のサンプル色が候補色に定められる。そして、候補色に定められた32個のサンプル色の中から最小の2乗誤差が得られるサンプル色が、類似色として選択される。
【0112】
<4.効果>
本実施形態によれば、CxFチャートの測色済みの複数のサンプル色の中から予測対象色に近い色が類似色として選択され、その類似色について、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式(近似式)が求められる。そして、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率を関係式に当てはめることによって、当該予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率(予測値)が求められる。以上のように分光反射率の予測は予測対象色に近い色についての「ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係」に基づいて行われるので、精度良い予測値が得られる。すなわち、予測対象色のインクを用いてCxFチャートを印刷することなく、当該CxFチャートが印刷されたと仮定した場合の各パッチの分光反射率が高精度で得られる。従って、CxFチャートの印刷や測色が不要となる。以上のように、複数の色のインクの重ね刷りによって得られる色を従来よりも低コストかつ少ない工数で予測できるよう、CxFチャートに含まれるべきパッチの色を高精度で予測することが可能となる。
【0113】
<5.変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0114】
<5.1 類似色の選択について>
<5.1.1 第1の変形例>
機械学習を用いた手法によって類似色の選択を行う例を第1の変形例として以下に説明する。本変形例においては、予め複数のサンプル色が用意されている状況下で予測対象色がどのサンプル色に類似しているのかを判断する類似色判定モデルが構築される。類似色判定モデルは機械学習を行うニューラルネットワーク60によって実現される(
図22参照)。ニューラルネットワーク60を用いた処理は、概略的には、学習段階の処理と分類段階の処理とに分けられる。学習段階では、ニューラルネットワーク60に教師データ(訓練データ)が与えられ、当該教師データを用いた機械学習がニューラルネットワーク60で行われる。ニューラルネットワーク60には、教師データとして、サンプル色についてのベタパッチPA2の分光反射率と複数のサンプル色を互いに区別するための分類番号に相当する値とが与えられる。分類段階では、学習済みのニューラルネットワーク60に、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率が与えられる。これにより、ニューラルネットワーク60からは、分類番号毎の確率が出力される。そして、最も高い確率の分類番号に対応するサンプル色が類似色として選択される。
【0115】
図22は、本変形例で用いられるニューラルネットワーク60の構造の一例を示す図である。なお、ここでは32個のサンプル色が用意されているものと仮定する。このニューラルネットワーク60は、入力層と隠れ層(中間層)と出力層とによって構成されている。入力層は、36個の分光反射率61(1)~61(36)を受け取る36個のユニット(ニューロン)によって構成されている。隠れ層も36個のユニットによって構成されている。但し、隠れ層のユニット数は36には限定されない。また、
図22に示す例では隠れ層の層数は1であるが、隠れ層の層数は2以上であっても良い。出力層は、入力データが各サンプル色に分類されるべき確率を表す32個の確率データ(用意されているサンプル色の数に等しい数の確率データ)62(1)~62(32)を出力する32個のユニットによって構成されている。
【0116】
入力層-隠れ層間の結合および隠れ層-出力層間の結合は、全結合である。隠れ層の活性化関数にはシグモイド関数が採用され、出力層の活性化関数にはソフトマックス関数が採用される。但し、隠れ層の活性化関数にはシグモイド関数以外の関数を採用することもできる。
【0117】
このニューラルネットワーク60を用いた学習時には、分光反射率61(1)~61(36)が入力層に与えられる。これにより、ニューラルネットワーク60内で順伝播の処理が行われ、出力層から出力される確率データ62(1)~62(32)と正解データ63(1)~63(32)とに基づいて例えば交差エントロピー誤差が求められる(
図23参照)。一例を挙げると、
図24に示すような確率データと正解データとに基づいて交差エントロピー誤差が求められる。
図24に示すように、出力層から出力される確率データ62(1)~62(32)は、0以上1以下のデータである。また、
図24に示すように、正解データ63(1)~63(32)は、1または0のデータである。例えば、「分類番号:3」が割り当てられたサンプル色のデータを用いて学習が行われる際には、正解データ63(3)のみが1であり、正解データ63(1)~63(2),63(4)~63(32)は0である。以上のようにして交差エントロピー誤差が求められ、交差エントロピー誤差ができるだけ小さくなるようにニューラルネットワーク60のパラメータ(重み係数、バイアス)が更新される。以上のようにして学習が繰り返されることによって、上記パラメータが最適化される。なお、学習手法については、全ての教師データをまとめてニューラルネットワーク60に与えるバッチ学習を採用しても良いし、教師データを複数のグループに分割してグループ毎に教師データをニューラルネットワーク60に与えるミニバッチ学習を採用しても良いし、教師データを1つずつニューラルネットワーク60に与えるオンライン学習を採用しても良い。
【0118】
このニューラルネットワーク60を用いた分類時には、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率61(1)~61(36)が入力層に与えられる。そして、ニューラルネットワーク60内で順伝播の処理が行われることによって、出力層から確率データ62(1)~62(32)が出力される。これら確率データ62(1)~62(32)のうちの最大値に対応する分類番号が割り当てられているサンプル色が類似色として選択される。
【0119】
図25は、本変形例における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。まず、用意されている複数のサンプル色の測色結果を教師データとして、ニューラルネットワーク60による機械学習が行われる(ステップS100)。これにより、類似色判定モデルが構築される。次に、ステップS100で構築された類似色判定モデルとしてのニューラルネットワーク60に入力データとして予測対象色のベタパッチPA2の分光反射率を与えることによって当該予測対象色が各サンプル色に分類されるべき確率が求められ、最も高い確率のサンプル色が類似色に選択される(ステップS110)。ステップS120およびステップS130については上記実施形態と同様である。
【0120】
なお、ここでは1つのサンプル色が類似色として選択されることを前提としているが、2つ以上のサンプル色を類似色として選択して分光反射率(各波長の反射率)の算出を次のように行うこともできる。例えば、ステップS110で、確率が第2位までの2つのサンプル色を類似色として選択する。このとき、第1位のサンプル色の確率が0.7で、第2位のサンプル色の確率が0.1であったと仮定する。第1位のサンプル色についての関係式を用いて得られる値(反射率の値)をR1と表し、第2位のサンプル色についての関係式を用いて得られる値をR2と表した場合、予測値Rを次式(8)で算出する。
R=R1×(0.7/0.8)+R2×(0.1/0.8) ・・・(8)
【0121】
本変形例においては、ニューラルネットワーク60には入力データとして分光反射率の値がそのまま与えられているが、本発明はこれには限定されない。分光反射率の各測定値に対して紙白パッチPA1の分光反射率を1とする正規化を施し、正規化によって得られた値を入力データとしてニューラルネットワーク60に与えるようにしても良い。これにより、印刷に使用される基材(印刷用紙)の特性を考慮して、予測対象色に類似するサンプル色の選択が行われる。
【0122】
また、ニューラルネットワーク60に入力データとしてベタパッチPA2の分光反射率に加えて紙白パッチPA1の分光反射率(すなわち、基材の分光反射率)を与えるようにしても良い。このような構成を採用した場合にも、印刷に使用される基材(印刷用紙)の特性を考慮して、予測対象色に類似するサンプル色の選択が行われる。
【0123】
なお、本変形例においては、機械学習のために膨大な量の計算処理が行われることがある。そのため、印刷データ生成装置100のハードウェア構成(
図10参照)に関し、プロセッサとしてCPU11に代えてGPUが設けられていても良いし、プロセッサとしてCPU11およびGPUが設けられていても良い。
【0124】
<5.1.2 第2の変形例>
色差を用いて類似色の選択を行う例を第2の変形例として以下に説明する。本変形例においては、
図11のステップS110で、予測対象色と各サンプル色との間での色差が求められる。そして、最小の色差が得られたサンプル色が類似色として選択される。
【0125】
なお、予測対象色と或る1つのサンプル色との色差は、例えば次のようにして求められる。まず、予測対象色およびサンプル色のそれぞれについて、ベタパッチPA2の分光反射率から所定の計算式によって三刺激値X,Y,およびZを求める。次に、予測対象色およびサンプル色のそれぞれについて、三刺激値X,Y,およびZから所定の変換式によってLab値(L値、a値、およびb値)を求める。次に、L値、a値、およびb値のそれぞれについて、予測対象色およびサンプル色との差を求める。それによって得られた3つの差の2乗和の平方根の値(正の値)が色差である。
【0126】
<5.2 関係式について>
<5.2.1 第3の変形例>
上記実施形態においては、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式(近似式)として、5次式が採用されていた。しかしながら、関係式の次数は5には限定されない。nを2以上の整数とするn次式を関係式として採用しても良い。
【0127】
これに関し、色毎に異なる次数の関係式を採用するようにしても良い。例えば、ベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲が狭い色については、関係式の次数が高いと過剰適合を引き起こして近似精度が悪化することがある。そこで、そのような色については、関係式の次数を低くすることによって過剰適合に起因する近似精度の悪化を抑制することができる。
【0128】
<5.2.2 第4の変形例>
また、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式(近似式)として、累乗関数を用いて表される式を採用しても良い。この場合、上述した組み合わせデータ(関係グラフ上にプロットとして表されるデータ)に基づいて、例えば次式(9)の変数A,Bの値が求められる。そして、その変数A,Bの値を反映した式が関係式として用いられる。なお、次式(9)に関し、yは色予測対象パッチの反射率であり,xはベタパッチPA2の反射率である。
【数5】
【0129】
<5.3 類似色についてのベタパッチの分光反射率の数値範囲が狭い場合について>
類似色に関してベタパッチPA2の測色結果と或る色予測対象パッチの測色結果とに基づき
図20に示したような関係グラフが得られた場合、上述したように色の予測が精度良く行われないことが懸念される。そこで、第5の変形例あるいは第6の変形例として以下に記すような対策が施されるようにしても良い。
【0130】
<5.3.1 第5の変形例>
図20に示したような関係グラフは、pを1未満の予め定められた値(例えば、pを0.8とする)として類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータに値をp以上1以下とするデータが含まれていない場合に得られる。本変形例では、そのような場合に、関係式の算出に先立って、
図26において符号58を付したプロットに相当する組み合わせデータを追加する。すなわち、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率が1のときには当該類似色についての色予測対象パッチの分光反射率が1である旨の組み合わせデータを追加する。このように組み合わせデータを追加した後に関係式を求める。
【0131】
以上のように、本変形例においては、pを1未満の予め定められた値として類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータに値をp以上1以下とするデータが含まれていない場合、
図11のステップS120では、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率を1とし類似色についての色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータを追加して関係式が求められる。このようにして求められた関係式を用いて、
図11のステップS130で分光反射率の予測が行われる。
【0132】
<5.3.2 第6の変形例>
本変形例においては、
図20に示したような関係グラフが得られた場合、関係式については上記実施形態と同様に算出される。そして、
図11のステップS130において、予測対象色についてのベタパッチPA2の反射率(各波長の反射率)が類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲に含まれるか否かによって異なる処理が施される。これについて、
図27を参照しつつ説明する。なお、qを1未満の予め定められた値(例えば、qを0.8とする)とし、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータに関して、値の最大値はq以下のuであって当該最大値に対応する色予測対象パッチの分光反射率はvであると仮定する。
【0133】
予測対象色についてのベタパッチPA2の或る波長の反射率が
図27で符号641を付した矢印の範囲(すなわち、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率の数値範囲)内であれば、予測対象色についての色予測対象パッチの該当波長の反射率は上記実施形態と同様に関係式を用いて求められる。これに対して、予測対象色についてのベタパッチPA2の或る波長の反射率が
図27で符号642を付した矢印の範囲内であれば、プロット651の座標(ベタパッチPA2の反射率:u,色予測対象パッチの反射率:v)とプロット652の座標(ベタパッチPA2の反射率:1,色予測対象パッチの反射率:1)とを結ぶ直線(符号653を付した直線)を用いた線形補間を行うことによって、予測対象色についての色予測対象パッチの該当波長の反射率が求められる。換言すれば、qを1未満の予め定められた値として類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータに関して値の最大値がq以下のuであって当該最大値に対応する色予測対象パッチの分光反射率がvである場合、
図11のステップS130では、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率のデータのうち値がuよりも大きいデータに対応する色予測対象パッチの分光反射率の予測値が、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率をuとし類似色についての色予測対象パッチの分光反射率をvとする組み合わせデータ(プロット651に相当する組み合わせデータ)と類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率を1とし類似色についての色予測対象パッチの分光反射率を1とする組み合わせデータ(プロット652に相当する組み合わせデータ)とを用いて予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率に基づき線形補間を行うことによって求められる。
【0134】
<5.4 使用する分光特性について>
<5.4.1 第7の変形例>
上記実施形態では、分光反射率を用いて色予測処理が行われていた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、分光反射率以外の分光特性を用いて色予測処理が行われても良い。分光反射率以外の分光特性としては、例えば、分光吸収率(1から分光反射率を減ずることによって得られる値)や次式(10)から得られる分光吸収係数αが挙げられる。ある波長における紙白での反射率をR0とし、該当パッチの反射率をRとし、インクの厚みをxとすると、多重反射を考慮しない場合には、分光吸収係数αは次式(10)で表される。
α=-(1/(2x))・ln(R/R0) ・・・(10)
【0135】
<5.4.2 第8の変形例>
上記実施形態では、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式を用いて色の予測が行われていた。しかしながら、関係式によって表される関係は、これには限定されない。例えば、ベタパッチPA2の分光吸収率と色予測対象パッチの分光吸収率との関係を表す関係式やベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光吸収率との関係を表す関係式などを用いて色の予測が行われても良い。
【0136】
<5.5 全体の処理手順について(第9の変形例)>
上記実施形態では、複数のサンプル色の中から類似色が選択された後、類似色として選択されたサンプル色について関係式の算出が行われていた(
図11参照)。しかしながら、本発明はこれに限定されず、用意されている複数のサンプル色の全てについて予め関係式を算出しておくようにしても良い。以下、
図28を参照しつつ、本変形例における色予測処理の概略手順について説明する。
【0137】
まず、用意されている全てのサンプル色について、ベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式が求められる(ステップS210)。各関係式の具体的な求め方については、上記実施形態と同様である。上述したように色予測対象パッチは9個あるので、このステップS210の処理によって各サンプル色につき9個の関係式が得られる。
【0138】
次に、既に得られている分光反射率のデータに基づいて、複数のサンプル色の中から予測対象色に近い色が類似色として選択される(ステップS220)。類似色を選択する具体的な手法については、上記実施形態と同様である。
【0139】
最後に、予測対象色についてのベタパッチPA2の分光反射率をステップS210で類似色として選択されたサンプル色についての関係式に当てはめることによって、予測対象色についての色予測対象パッチの分光反射率の予測値が求められる(ステップS230)。これにより、上記実施形態と同様、予測対象色について、9個の色予測対象パッチのそれぞれの分光反射率の予測値が求められる。
【0140】
以上のようにして、実際には予測対象色のインクを用いてCxFチャートが印刷されていなくても、当該CxFチャートが印刷されたと仮定した場合の全ての第1タイプパッチ71の分光反射率が得られる。
【0141】
ところで、ステップS210の処理については、1度だけ行われれば良く、1つの予測対象色の処理毎に行われる必要はない。これに対して、ステップS220およびステップS230の処理は、1つの予測対象色の処理毎に行われる必要がある。換言すれば、ステップS210により予め全てのサンプル色についての関係式を求めておくことにより、実際に色の予測を行う際の処理負荷が軽減される。
【0142】
<5.6 関係式を使用しない態様(第10の変形例)>
上記実施形態では、色の予測を行うためにベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を表す関係式(近似式)が使用されていた。しかしながら、そのような関係式を使用することなく色の予測を行うこともできる。以下、関係式を使用しない態様について説明する。
【0143】
類似色に関し、ベタパッチPA2の分光反射率と或る色予測対象パッチの分光反射率とに基づき
図29に示すような関係グラフが得られたと仮定する。このとき、例えば、予測対象色についてのベタパッチPA2の或る波長の反射率が
図29で符号661を付した矢印の範囲内であれば、プロット671の座標とプロット672の座標とを結ぶ直線(符号681を付した直線)を用いた線形補間を行うことによって、予測対象色についての色予測対象パッチの該当波長の反射率が求められる。また、例えば、予測対象色についてのベタパッチPA2の或る波長の反射率が
図29で符号662を付した矢印の範囲内であれば、プロット673の座標とプロット674の座標とを結ぶ直線(符号682を付した直線)を用いた線形補間を行うことによって、予測対象色についての色予測対象パッチの該当波長の反射率が求められる。このように、本変形例においては、類似色についてのベタパッチPA2の分光特性と類似色についての色予測対象パッチの分光特性との関係を用いて線形補間を行うことによって予測対象色についての色予測対象パッチの各波長の反射率が求められる。
【0144】
図30は、本変形例における色予測処理の概略手順を示すフローチャートである。まず、上記実施形態と同様にして、この色予測処理の実行前に得られている分光反射率のデータに基づいて、複数のサンプル色の中から予測対象色に近い色が類似色として選択される(ステップS310)。次に、類似色についてのベタパッチPA2の分光反射率と色予測対象パッチの分光反射率との関係を用いて予測対象色についてのベタパッチPA2の分光特性に基づき線形補間を行うことによって、予測対象色についての色予測対象パッチの分光特性の予測値が求められる(ステップS320)。
【0145】
<6.その他>
本発明は、上記各実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、上記実施形態や上記各変形例を矛盾が生じることのないよう適宜に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0146】
60,73…ニューラルネットワーク
100…印刷データ生成装置
141…色予測プログラム
200…製版装置
300…印刷装置
350…デジタル印刷装置
400…測色機
PA1…紙白パッチ
PA2…ベタパッチ