(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20230620BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230620BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20230620BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J163/02
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2019085772
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018086868
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】植田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】高馬 俊浩
(72)【発明者】
【氏名】野村 和宏
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510225(JP,A)
【文献】特表2010-523800(JP,A)
【文献】特表2016-501928(JP,A)
【文献】特開昭47-042899(JP,A)
【文献】特開2009-108278(JP,A)
【文献】特開2009-013294(JP,A)
【文献】特開平02-011687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 11/06
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂、(b)2官能の硬化剤、および(c)硬化触媒を含む接着剤であって、JIS K
6865に準拠して-40℃で測定した接着体のくさび衝撃剥離強度が3kJ/m
2以上である、接着剤
であって、
(a)エポキシ樹脂が(a1)2官能のエポキシ樹脂を含み、(a1)2官能のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
(b)2官能の硬化剤がビスフェノール化合物またはビスクレゾール型化合物を含み、
(b)2官能の硬化剤の使用量が、(a)エポキシ樹脂100重量部におけるエポキシ価に対し、硬化剤中のフェノール性水酸基価が1:0.9~1.1となる重量配合である接着剤。
【請求項2】
(a)エポキシ樹脂が、(a1)2官能のエポキシ樹脂100重量部に対し、(a2)3官能以上のエポキシ樹脂を0~30重量部含む、請求項
1に記載の接着剤。
【請求項3】
(a2)3官能以上のエポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項
2に記載の接着剤。
【請求項4】
(c)硬化触媒がイミダゾール化合物またはアミンアダクト系化合物である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の接着剤からなる硬化層を、被着体1と被着体2との間に配置してなる積層体。
【請求項6】
前記硬化層のDMA法で200℃で測定した貯蔵弾性率E’が5MPa以下であり、かつ、JIS K7113に準拠して25℃で測定した伸び率が15%以上である、
請求項
5に記載の積層体。
【請求項7】
被着体1と被着体2が異なる材料からなる、請求項
5または
6に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に関する。詳しくは、高いせん断強度とエネルギー吸収力を両立する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その優れた接着性から、幅広い分野において接着剤の主成分として使用されている。エポキシ樹脂は、堅い一方で脆いため、熱膨張率や弾性率の異なる異種材の接着剤として用いる場合には、材料間で発生する応力を吸収できるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高いせん断強度とエネルギー吸収力を両立する接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、熱硬化性樹脂を主に直線方向に重合させてなる接着剤が、高いせん断強度とエネルギー吸収力を両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、(a)エポキシ樹脂、(b)2官能の硬化剤、および(c)硬化触媒を含む接着剤であって、JIS K6865に準拠して-40℃で測定した接着体のくさび衝撃剥離強度が3kJ/m2以上である接着剤に関する。
【0006】
(a)エポキシ樹脂が(a1)2官能のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0007】
(a)エポキシ樹脂が、(a1)2官能のエポキシ樹脂100重量部に対し、(a2)3官能以上のエポキシ樹脂を0~30重量部含むことが好ましい。
【0008】
(a1)2官能のエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0009】
(a2)3官能以上のエポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0010】
(b)2官能の硬化剤がビスフェノール化合物またはビスクレゾール型化合物であることが好ましい。
【0011】
(c)硬化触媒がイミダゾール化合物またはアミンアダクト系化合物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記接着剤からなる硬化層を、被着体1と被着体2との間に配置してなる積層体に関する。
【0013】
前記硬化層のDMA法で200℃で測定した貯蔵弾性率E’が5MPa以下であり、かつ、JIS K7113に準拠して25℃で測定した伸び率が15%以上であることが好ましい。
【0014】
前記積層体において、被着体1と被着体2が異なる材料からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接着剤は、エポキシ樹脂と2官能の硬化剤とが、主に直線方向(リニア)に重合することにより、熱可塑性樹脂の特性と熱硬化性樹脂の特性とを併せ持つ。よって、高いせん断強度とエネルギー吸収力を両立する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例において伸び率の測定に用いた試験片の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<接着剤>>
本発明は、(a)エポキシ樹脂、(b)2官能の硬化剤、および(c)硬化触媒を含む接着剤であって、JIS K6865に準拠して-40℃で測定した接着体のくさび衝撃剥離強度が3kJ/m2以上である、接着剤に関する。
【0018】
<(a)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、2官能の硬化剤と直線方向に重合できるエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、(a1)2官能のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。2官能のエポキシ樹脂としては、例えばカテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル等のべンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物;3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の脂環式ジエポキシ化合物;ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物等のビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ-t-ブチルビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル等の置換ビスフェノール型エポキシ化合物及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物等の置換ビスフェノール型エポキシ樹脂;その他、ビスフエノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型又はテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(ナフタレン型エポキシ樹脂);ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル等の環状脂肪族アルコールのジエポキシ化合物;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル等の環状脂肪族ジカルボン酸のジエポキシ化合物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族アルコールのジエポキシ化合物;Epikote871(商品名、三菱化学(株)製)、Epikote872(商品名、三菱化学(株)製)等のダイマー酸を骨格とするエポキシ樹脂等の2官能のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、硬化性の観点からビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
また、エポキシ樹脂は、(a2)3官能以上のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。3官能以上のエポキシ樹脂を含むことにより、部分的に3次元架橋を行い耐熱性を向上させることができる。3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、トリフェニルグリシジルエーテルメタン型エポキシ樹脂、更には、これらの臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、更には、これらの臭素化エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、衝撃強度の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
2官能の硬化剤と主に直線方向に重合させるために、エポキシ樹脂は2官能のエポキシ樹脂を主成分とすることが好ましい。所定の性能を損なわない範囲で、2官能の硬化剤と3官能以上の硬化剤とを併用しても良いが、その場合の3官能以上のエポキシ樹脂の使用量は、2官能のエポキシ樹脂100重量部に対し0~30重量部であることが好ましく、0~20重量部がより好ましく、0~10重量部がさらに好ましい。
【0021】
<(b)2官能の硬化剤>
2官能の硬化剤は、上記エポキシ樹脂と直線方向に重合できる硬化剤であれば特に限定されないが、例えばビスフェノール化合物、ビスクレゾール化合物、ビフェノール化合物、カテコール化合物、ハイドロキノン化合物が挙げられる。これらのうち、作業性や耐熱性の観点から、ビスフェノール化合物、ビスクレゾール化合物が好ましい。
【0022】
ビスフェノール化合物としては、例えば、トラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールK、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールAF等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAが好ましい。
【0023】
ビスクレゾール化合物としては、例えばビスクレゾールフルオレンが挙げられる。
【0024】
ビフェノール化合物としては、例えばテトラメチルビフェノール等が挙げられる。
【0025】
カテコール化合物としては、例えば、メチルカテコール等が挙げられる。
【0026】
ハイドロキノン化合物としては、例えば、メチルハイドロキノン等が挙げられる。
【0027】
2官能の硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部におけるエポキシ価に対し、硬化剤中のフェノール性水酸基価が1:0.9~1.1となる重量配合であることが好ましく、1:1の重量配合がより好ましい。
【0028】
<(c)硬化触媒>
(c)硬化触媒は、エポキシ樹脂と2官能の硬化剤との硬化を触媒できれば特に限定されないが、例えば、イミダゾール化合物、アミンアダクト系化合物、有機リン系化合物等が挙げられる。これらのうちイミダゾール化合物、アミンアダクト系化合物が好ましい。イミダゾール化合物としては、例えば2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0029】
硬化触媒の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対し0.1~20重量部であることが好ましく、0.5~10重量部がより好ましく、1~8重量部がさらに好ましい。
【0030】
<その他の成分>
本発明の接着剤は、(a)エポキシ樹脂、(b)2官能の硬化剤、および(c)硬化触媒に加えて、溶剤、無機フィラー、スペーサー、エラストマー、カップリング剤、消泡剤、表面調整剤等をさらに含有してもよい。
【0031】
溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソホロン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを挙げることができる。
【0032】
溶剤を使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり10~1000重量部が好ましく、30~500重量部がより好ましく、50~300重量部がさらに好ましい。
【0033】
無機フィラーは、流動性の制御、低線膨張係数の制御のために使用可能である。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、マイカ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、流動性制御の観点から、シリカが好ましい。無機フィラーを使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり0~20重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましい。
【0034】
スペーサーは、接着体の厚みを制御するために用いられる。スペーサーとしては、例えば、ソーダ石灰ガラスビーズ、ファイバー、樹脂ビーズ等が挙げられるが、スペーサーとしての使用に耐え得る所定の硬度と粒径を有していれば、無機フィラーとして使用される成分をスペーサーとして使用することもできる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
スペーサーの粒子径は1~200μmが好ましく、10~150μmがより好ましい。スペーサーの粒子径が1μm未満であると、接着体の厚みを制御することが困難となることがあり、200μmを超えると、接着体の応力が大きくなりすぎることがある。
【0036】
スペーサーの形状は、例えば、球状粒子、ファイバー状粒子等が挙げられる。これらの中では、粒子径制御が容易であることから、球状粒子が好ましい。
【0037】
スペーサーを使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり0.2~1.5重量部が好ましく、0.5~1重量部がより好ましい。
【0038】
エラストマーは、接着体の強化のために用いられる。エラストマーとしては、例えばポリブタジエン、アクリルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
エラストマーの形状は、例えば粒子状、コアシェル粒子状等が挙げられる。これらの中では、分散性及び強度に優れることから、コアシェル粒子状であることが好ましい。コアシェル型のエラストマーとしては、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体系コアシェル型ゴム粒子、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子、シリコン系コアシェルゴム粒子などが挙げられる。
【0040】
エラストマーを使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂100重量部あたり5~30重量部が好ましく、10~15重量部がより好ましい。
【0041】
カップリング剤は、エポキシ樹脂と無機フィラー、スペーサーの馴染みを向上するために用いられる。カップリングとしては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、ウレイドシラン、アミノシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0042】
<接着剤の製造方法>
本発明の接着剤は、上述した各成分を混合して製造することができる。混合方法としては、例えばディスパーサー、ミキサー、混練機、ホモジェナイザー、3本ロール等が挙げられる。
【0043】
<くさび衝撃剥離強度>
本発明の接着剤においては、エポキシ樹脂と2官能の硬化剤とが主に直線方向に重合し、部分的に3次元架橋を行ってもよい。よって、本発明の接着剤を硬化してなる接着体は、高いせん断強度とエネルギー吸収力を有する。接着剤を硬化した後の接着体の、JIS K 6865に準拠して-40℃で測定したくさび衝撃剥離強度は、3kJ/m2以上であり、10kJ/m2以上が好ましく、20kJ/m2以上がより好ましく、30kJ/m2以上がさらに好ましい。また、接着剤を硬化した後の接着体の、JIS K6865に準拠して25℃で測定したくさび衝撃剥離強度は、20kJ/m2以上が好ましく、40kJ/m2以上がより好ましい。
【0044】
<ガラス転移温度>
本発明の接着剤の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、60~180℃が好ましく、90~110℃がより好ましい。ガラス転移温度が60℃未満であると、高温時の強度が低下する傾向があり、180℃を超えると、くさび衝撃剥離強度が低下する傾向がある。
【0045】
<<積層体>>
本発明の積層体は、前記接着剤からなる硬化層を、被着体1と被着体2との間に配置してなるものである。被着体1と被着体2の材質としては、それぞれ、ガラス、鉄、アルミ、鋼、銅等の金属、炭素又はガラス繊維強化プラスチック、エンプラ等の樹脂が挙げられる。本発明の接着剤は、高いせん断強度とエネルギー吸収力を有し、材料間で発生する応力を吸収できるため、被着体1と被着体2が異なる材料からなる場合であっても接着を維持できる。被着体1と被着体2の組み合わせとしては、例えば、鉄とアルミ、炭素繊維強化プラスチックと鉄、炭素繊維強化プラスチックとアルミが挙げられる。
【0046】
積層体は、被着体1上に前記接着剤を塗布し、塗布された接着剤に被着体2を張り合わせる工程1、および前記接着剤を硬化させる工程2からなる製造方法によって、製造できる。
【0047】
工程1において接着剤の塗布方法としては、シリンジ等に充填した接着剤をエアーコンプレッサで塗布する方法(ディスペンサー法)等が挙げられる。工程2において、接着剤の硬化温度は、120~220℃が好ましく、150~200℃がより好ましい。接着剤の硬化時間は30~45分が好ましく、30~60分がより好ましい。
【0048】
本発明の部材において、前記接着剤からなる硬化層の厚みは、1~200μmであることが好ましく、20~150μmであることがより好ましい。接着層の厚みが1μm未満であると、接着不良となることがあり、200μmを超えると、接着層の応力が大きくなりすぎることがある。
【0049】
<貯蔵弾性率E’および伸び率>
硬化層をDMA(動的粘弾性測定)法により、200℃で測定した貯蔵弾性率E’は、5MPa以下が好ましく、かつ、JIS K7113に準拠して25℃で測定した伸び率が15%以上であることが好ましい。前記貯蔵弾性率E’が5MPaを上回ると、硬化後の内部歪みが増加する傾向がある。前記伸び率が15%未満では、くさび衝撃剥離強度が低くなる傾向がある。前記貯蔵弾性率E’は、4MPa以下がより好ましく、2MPa以下がさらに好ましい。また、前記伸び率は、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「%」は特記ない限り「重量%」を意味する。
【0051】
(1)使用材料
(1-1)エポキシ樹脂
2官能性エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YN1828C Jiangsu Kumho Yangnong Chemical Co.,Ltd.製)
2官能性エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、YDF8170C、新日鉄住金化学株式会社製)
3官能性エポキシ樹脂(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、JER630、三菱化学株式会社製)
(1-2)硬化剤
ジシアンジアミド(DICY、3官能、OMIDDA5、ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)
ビスフェノールA(BisP-A、2官能、三井化学株式会社製)
ビスフェノールAP(BisP-AP、2官能、本州化学工業株式会社製)
ビスフェノールHTG(BisP-HTG、2官能、本州化学工業株式会社製)
ビスフェノールF(BisP-F、2官能、本州化学工業株式会社製)
トリスフェノールPA(TrisP-PA、3官能、本州化学工業株式会社製)
(1-3)硬化触媒
アミンアダクト系化合物(フジキュアー FXE-1000、株式会社T&K TOKA製)
イミダゾール化合物(ノバキュア NVHXA3792、旭化成ケミカルズ株式会社製)
(1-4)エラストマー
アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(Hycar CTBN13、ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)
ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(KANEACE MX-257、株式会社カネカ製、37重量%のゴム粒子と、63重量%のビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂を含む。)
(1-5)無機フィラー
疎水性フュームドシリカ(RY200、日本アエロジル株式会社製)
(1-6)スペーサー
ガラスビーズ(GB731B、ポッターズ・バロティーニ株式会社製)
(1-7)被着体
鋼板((株)エンジニアリングテストサービス製)
材質:JIS G3141 SPCC-D、
形状:引張剪断接着強度 1.6mm厚×25mm幅×125mm長、
くさび衝撃剥離強度 0.6mm厚×20mm幅×90mm長(曲げ加工)
T字剥離強度 0.8mm厚×25mm幅×150mm長
【0052】
(2)評価方法
(2-1)くさび衝撃剥離強度
JIS K
6865に準拠して測定した。
(2-2)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠して測定した。
(2-3)貯蔵弾性率
JIS K7198に準拠して測定した。
(2-4)伸び率
図1に示す形状の試験片を用いてJIS K7113に準拠して測定した。
(2-5)引張剪断接着強度
JIS K6850に準拠して測定した。
(2-6)T字剥離強度
JIS K6854-3に準拠して測定した。
【0053】
(実施例1~8、比較例1~2)
常温で、表1の配合(重量部)により各成分をミキサーにより混合して接着剤を製造した。各接着剤を被着体1(鋼板)にディスペンサー法により塗布し、塗布した接着剤上に、さらに被着体2(鋼板)を貼り合わせた。その後、180℃、30分の条件で接着剤を硬化させて積層体を得た。各積層体について、くさび衝撃剥離強度、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、伸び率、引張剪断接着強度、T字剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、比較例1~2で作製した積層体はくさび衝撃剥離強度が低く、エネルギー吸収特性が十分ではなかった。これに対し、実施例1~8で作製した積層体は25℃だけではなく-40℃という極低温においても高いくさび衝撃剥離強度を示した。比較例1の積層体は極めてもろく、-40℃においてくさび衝撃剥離強度を解析できなかった。実施例1~8で作製した積層体は伸び率、引張剪断接着強度、T字剥離強度に優れていた。