(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】仮設足場および仮設足場の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20230620BHJP
E04G 3/00 20060101ALI20230620BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E02B3/06
E04G3/00 P
E01D22/00 A
(21)【出願番号】P 2019085814
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】西浦 幸一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕之
(72)【発明者】
【氏名】林 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057615(JP,A)
【文献】特開2008-106569(JP,A)
【文献】特開2017-115552(JP,A)
【文献】特開2004-251094(JP,A)
【文献】特開2009-041194(JP,A)
【文献】特開2011-206754(JP,A)
【文献】特開平11-050653(JP,A)
【文献】特開平08-049407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E04G 3/00
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域に立設された杭に固定される仮設足場において、
複数の分割体を連結して構成された前記杭の外周に巻装される環状の固定部材と、この固定部材の内周側に設けられた複数の上側押圧部材と、前記固定部材に一端部が固定されて前記杭を中心にして放射状に延在する複数の支持部材と、それぞれの前記支持部材に上端部が連結されて下方に延在する支持脚と、それぞれの前記支持脚の下端部に設けられた下側押圧部材と、複数の前記支持部材に支持される足場板とを備え、それぞれの前記上側押圧部材とそれぞれの前記下側押圧部材のうち、少なくともそれぞれの前記上側押圧部材が、前記杭の外周面に押し当てられる内周面に非金属製の軟質の緩衝材を有し、
前記固定部材および複数の前記上側押圧部材が一体化された巻装ユニットと、前記支持部材および前記支持脚および前記下側押圧部材が一体化された複数の張出し足場ユニットと、前記足場板とに分離可能であり、
前記巻装ユニットの前記固定部材が前記杭の外周に巻装されて固定され、それぞれの前記上側押圧部材が前記杭の外周面に押し当てられた状態となり、前記杭に固定された前記固定部材に対して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記支持部材が別々に固定されて、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記下側押圧部材が別々に前記杭の外周面に押し当てられた状態になることで、それぞれの前記張出し足場ユニットが別々に前記杭に対して固定され、前記杭に対して固定された複数の前記張出し足場ユニットの前記支持部材に前記足場板が支持させることで、前記杭に対して前記仮設足場が構築される構成であることを特徴とする仮設足場。
【請求項2】
前記巻装ユニットは、前記杭の外周に巻装されて固定された状態で、複数の前記上側押圧部材が前記杭の周方向に互いに間隔をあけて配置された状態になる構成である請求項1に記載の仮設足場。
【請求項3】
前記杭に対して押し当てられた状態になる前記上側押圧部材の高さ位置と、前記杭に対して押し当てられた状態になる前記下側押圧部材の高さ位置との上下方向の離間距離を変更できる構成である請求項1または2に記載の仮設足場。
【請求項4】
それぞれの前記下側押圧部材が前記緩衝材を有している請求項1~3のいずれかに記載の仮設足場。
【請求項5】
前記巻装ユニット、前記張出し足場ユニット、および前記足場板がそれぞれ15kg以下である請求項1~4のいずれかに記載の仮設足場。
【請求項6】
前記上側押圧部材の前記内周面の位置を前記杭の軸心に対して近接および離反させる方向に進退移動させる移動機構を有している請求項1~5のいずれかに記載の仮設足場。
【請求項7】
外周面の所定の上下範囲に防食層を有して、水域に立設された杭に、仮設足場を構築する仮設足場の構築方法において、
複数の分割体を連結して構成された環状の固定部材と、この固定部材の内周側に設けられた複数の上側押圧部材と、前記固定部材に一端部が固定されて前記杭を中心にして放射状に延在する複数の支持部材と、それぞれの前記支持部材に上端部が連結されて下方に延在する支持脚と、それぞれの前記支持脚の下端部に設けられた下側押圧部材と、前記支持部材に支持される足場板とを有し、それぞれの前記上側押圧部材とそれぞれの前記下側押圧部材のうち、少なくともそれぞれの前記上側押圧部材が、前記杭の外周面に押し当てられる内周面に非金属製の軟質の緩衝材を有し、前記固定部材および複数の前記上側押圧部材が一体化された巻装ユニットと、前記支持部材および前記支持脚および前記下側押圧部材が一体化された複数の張出し足場ユニットと、前記足場板とに分離可能な前記仮設足場を使用し、
前記巻装ユニットの前記固定部材を前記杭の外周に環状に巻装して固定し、それぞれの前記上側押圧部材を前記杭の外周面に押し当てた状態とし、前記杭に固定された前記固定部材に対して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記支持部材を別々に固定して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記下側押圧部材を別々に前記杭の外周面に押し当てた状態にすることで、それぞれの前記張出し足場ユニットを別々に前記杭に対して固定し、前記防食層にはそれぞれの前記緩衝材を押し当てた状態にし、前記杭に対して固定された複数の前記張出し足場ユニットの前記支持部材に前記足場板を支持させることで、前記杭に対して前記仮設足場を構築することを特徴とする仮設足場の構築方法。
【請求項8】
前記巻装ユニットを前記杭の外周に巻装して固定する際に、複数の前記上側押圧部材が前記杭の周方向に互いに間隔をあけて配置された状態にする請求項7に記載の仮設足場
の構築方法。
【請求項9】
前記杭に対して押し当てた状態にする前記上側押圧部材の高さ位置と、前記杭に対して押し当てた状態にする前記下側押圧部材の高さ位置との上下方向の離間距離を変更できる構成の前記仮設足場を使用し、
前記杭に対して押し当てた状態にする前記上側押圧部材の高さ位置と、前記杭に対して押し当てた状態にする前記下側押圧部材の高さ位置との上下方向の離間距離を変更することで、前記杭に対して前記下側押圧部材を押し当てる高さ位置を調整する請求項7または8に記載の仮設足場
の構築方法。
【請求項10】
それぞれの前記下側押圧部材の内周面に設けられている前記緩衝材を、前記防食層に押し当てた状態にする請求項7~9のいずれかに記載の仮設足場の構築方法。
【請求項11】
それぞれの前記下側押圧部材の内周面を、前記防食層よりも下方の前記杭の外周面に押し当てた状態にする請求項7~9のいずれかに記載の仮設足場の構築方法。
【請求項12】
前記杭に構築し終えた前記仮設足場を使用して、その前記仮設足場よりも高い位置に別の前記仮設足場を構築する請求項7~11のいずれかに記載の仮設足場の構築方法。
【請求項13】
複数の前記杭にそれぞれ前記仮設足場を固定し、隣り合う前記仮設足場どうしの間に連結足場板を架け渡す請求項7~12のいずれかに記載の仮設足場の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場および仮設足場の構築方法に関し、さらに詳しくは、防食層を有する水域に立設された杭に対して、防食層の損傷を回避して所望の高さ位置に仮設足場を構築できる仮設足場および仮設足場の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
桟橋などの水上構造物は、水域に立設された複数の杭の上端部にコンクリート製の上部構造体を支持させた構造になっている。上部構造体の下面や、上部構造体と杭との接合部分などの補修作業を行う場合には、上部構造体の下面と水面との間に仮設足場を構築する必要がある。そこで、従来、杭に設置する種々の仮設足場が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、杭の外周に杭側固定体を巻き付けて固定する。次いで、浮体により水面を移動する足場ユニットに設けられている固定部材本体を杭側固定体の外側に巻き付けて、固定部材本体の両端部を連結し、杭側固定体の楔部と固定部材本体の係合溝とを互いに嵌合させて、足場板の基端側を杭の外周に固定する。次いで、可動リングを杭の外側に上下動可能に嵌合させ、その後、展開手段により可動リングを上昇させるとともに折り畳まれていた足場板を水平になる位置まで展開させる。そして、可動リングを杭に固定すると仮設足場の設置が完了する。
【0004】
一般的に、水域に立設されている杭には、水面付近から上部構造体の下面の高さ位置にまで海水による杭の腐食を防止するための防食層が設けられている。防食層は合成樹脂等で形成されているため比較的損傷しやすいが、特許文献1に記載の発明では、防食層の損傷を回避する対策は考慮されていない。それ故、防食層に仮設足場を設置した場合に、防食層を損傷させてしまう恐れがある。そのため、仮設足場を設置できる位置は、防食層を避けた水面付近の位置に限定され、仮設足場を所望の高さ位置に設置できない場合がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の発明では、足場ユニットの重量が重いため、足場ユニットを浮体によって水面に浮かせて移動させているが、この方法では、仮設足場を水面から離れた杭の高い位置に構築することは困難である。それ故、例えば、水面から上部構造体の下面までの高さが高い場合には、作業員が上部構造体の下面に届く高さに仮設足場を構築できない場合がある。また、特許文献1に記載の杭側固定体と固定部材本体とを連結する作業は、波やうねりの影響を大きく受けるため、作業性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、防食層を有する水域に立設された杭に対して、防食層の損傷を回避して所望の高さ位置に仮設足場を構築できる仮設足場および仮設足場の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の仮設足場は、水域に立設された杭に固定される仮設足場において、複数の分割体を連結して構成された前記杭の外周に巻装される環状の固定部材と、この固定部材の内周側に設けられた複数の上側押圧部材と、前記固定部材に一端部が固定されて前記杭を中心にして放射状に延在する複数の支持部材と、それぞれの前記支持部材に上端部が連結されて下方に延在する支持脚と、それぞれの前記支持脚の下端部に設けられた下側押圧部材と、複数の前記支持部材に支持される足場板とを備え、それぞれの前記上側押圧部材とそれぞれの前記下側押圧部材のうち、少なくともそれぞれの前記上側押圧部材が、前記杭の外周面に押し当てられる内周面に非金属製の軟質の緩衝材を有し、前記固定部材および複数の前記上側押圧部材が一体化された巻装ユニットと、前記支持部材および前記支持脚および前記下側押圧部材が一体化された複数の張出し足場ユニットと、前記足場板とに分離可能であり、前記巻装ユニットの前記固定部材が前記杭の外周に巻装されて固定され、それぞれの前記上側押圧部材が前記杭の外周面に押し当てられた状態となり、前記杭に固定された前記固定部材に対して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記支持部材が別々に固定されて、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記下側押圧部材が別々に前記杭の外周面に押し当てられた状態になることで、それぞれの前記張出し足場ユニットが別々に前記杭に対して固定され、前記杭に対して固定された複数の前記張出し足場ユニットの前記支持部材に前記足場板が支持させることで、前記杭に対して前記仮設足場が構築される構成であることを特徴とする。
【0009】
本発明の仮設足場の構築方法は、外周面の所定の上下範囲に防食層を有して、水域に立設された杭に、仮設足場を構築する仮設足場の構築方法において、複数の分割体を連結して構成された環状の固定部材と、この固定部材の内周側に設けられた複数の上側押圧部材と、前記固定部材に一端部が固定されて前記杭を中心にして放射状に延在する複数の支持部材と、それぞれの前記支持部材に上端部が連結されて下方に延在する支持脚と、それぞれの前記支持脚の下端部に設けられた下側押圧部材と、前記支持部材に支持される足場板とを有し、それぞれの前記上側押圧部材とそれぞれの前記下側押圧部材のうち、少なくともそれぞれの前記上側押圧部材が、前記杭の外周面に押し当てられる内周面に非金属製の軟質の緩衝材を有し、前記固定部材および複数の前記上側押圧部材が一体化された巻装ユニットと、前記支持部材および前記支持脚および前記下側押圧部材が一体化された複数の張出し足場ユニットと、前記足場板とに分離可能な前記仮設足場を使用し、前記巻装ユニットの前記固定部材を前記杭の外周に環状に巻装して固定し、それぞれの前記上側押圧部材を前記杭の外周面に押し当てた状態とし、前記杭に固定された前記固定部材に対して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記支持部材を別々に固定して、それぞれの前記張出し足場ユニットの前記下側押圧部材を別々に前記杭の外周面に押し当てた状態にすることで、それぞれの前記張出し足場ユニットを別々に前記杭に対して固定し、前記防食層にはそれぞれの前記緩衝材を押し当てた状態にし、前記杭に対して固定された複数の前記張出し足場ユニットの前記支持部材に前記足場板を支持させることで、前記杭に対して前記仮設足場を構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仮設足場の固定部材を杭の外周に環状に巻装して、それぞれの上側押圧部材およびそれぞれの下側押圧部材を杭の外周面に押し当て、防食層には非金属製の軟質の緩衝材を押し当てた状態にする。これにより、杭の防食層が設けられている位置においても、防食層の損傷を回避しつつ、仮設足場を安定して固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の仮設足場の実施形態において、仮設足場を杭に構築した状態を上面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の仮設足場の巻装ユニットのみを杭に巻装した状態を上面視で例示する説明図である。
【
図5】
図3の巻装ユニットに張出し足場ユニットを取付けた状態を上面視で例示する説明図である。
【
図6】
図1の仮設足場を上下方向に複数設置した状態を断面視で例示する説明図である。
【
図7】
図1の仮設足場どうしの間に連結足場板を架け渡した状態を上面視で例示する説明図である。
【
図8】巻装ユニットを変更した
図1の仮設足場を
図1の杭とは杭径が異なる別の杭に構築した状態を上面視で例示する説明図である。
【
図9】本発明の仮設足場の別の実施形態を上面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の仮設足場および仮設足場の構築方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1および
図2に例示するように、本発明の仮設足場1は、水域に立設されている鋼管杭などの杭20に固定して設置する。一般的に、水域に立設されている杭20は、水面付近の所定の上下範囲に、海水による杭20の腐食を防止する防食層21が設けられている。防食層21としては例えば、杭20にポリエチレンやポリウレタンなどの合成樹脂を塗装したものや、杭20に巻き付けたペトロラタム系防食テープを繊維強化プラスチック(FRP)製のカバーで被覆したものなどがある。本発明の仮設足場1は、防食層21を有する杭20に固定するのに特に適した仕様になっている。
【0014】
仮設足場1は、杭20の外周に巻装される環状の固定部材3と、固定部材3の内周側に設けられた複数の上側押圧部材4と、固定部材3に一端部が固定される複数の支持部材8と、それぞれの支持部材8に上端部が連結されて下方に延在する支持脚9と、それぞれの支持脚9の下端部に設けられた下側押圧部材10と、複数の支持部材8に支持される足場板13とを備えている。
【0015】
この実施形態の仮設足場1は、固定部材3および複数の上側押圧部材4が一体化された巻装ユニット2と、支持部材8および支持脚9および下側押圧部材10が一体化された複数の張出し足場ユニット7と、複数の足場板13とに分離可能な構成になっている。
【0016】
本発明の仮設足場1では、それぞれの上側押圧部材4とそれぞれの下側押圧部材10のうち、少なくともそれぞれの上側押圧部材4が、杭20の外周面に押し当てられる内周面に非金属製の軟質の緩衝材5を有している。緩衝材5には例えば、ゴムや軟質樹脂などの中実体や発泡体を用いる。緩衝材5は、一般的なゴムと同等以下の硬度にするとよい。緩衝材5の杭20に対する押圧面には、防食層21に対してより摩擦抵抗を大きくする加工や処理をするとよい。
【0017】
固定部材3は、複数の分割体3aを連結して構成されている。この実施形態の固定部材3は、6つの分割体3aで構成されていて、隣り合う分割体3aの端部どうしがヒンジ部3bで連結されている。固定部材3の両端部(両端に配置された分割体3aの端部)には、それぞれ連結部3cが設けられていて、連結部3cどうしを連結具3dで着脱可能に連結できる構造になっている。この実施形態では、一続きの固定部材3としているが、例えば、固定部材3が複数のパーツに分離可能な構成にすることもできる。
【0018】
図1に例示するように、この実施形態の仮設足場1は、連結部3cどうしを連結して固定部材3を杭20に巻装した状態で、杭20の軸心Cを中心にして水平方向に60度ずつ固定角度を変えて放射状に延在する6つの上側押圧部材4を有している。それぞれの上側押圧部材4の外周側は固定部材3の内周側に接合されていて、杭20の外周面に押し当てられるそれぞれの上側押圧部材4の内周面に緩衝材5が設けられている。
【0019】
支持部材8は、板状の部材で構成されている。
図1に例示するように、杭20に巻装した固定部材3に支持部材8を固定した状態にすると、複数の支持部材8が、杭20を中心にして放射状に略水平方向に延在した状態になる。この実施形態では、杭20の軸心Cを中心にして固定部材3の外周側に水平方向に60度ずつ固定角度を変えて6つの支持部材8が固定可能な構造になっている。
【0020】
この実施形態では、固定部材3に支持部材8を上側係合具6によって固定する構成になっている。それぞれの分割体3aとそれぞれの支持部材8には2ヶ所ずつ上側係合具6を挿入する挿入孔が形成されている。
図2に例示するように、上側係合具6は、固定部材3と支持部材8とを連結した状態で、上側係合具6の下部が支持部材8の下方にまで突出した状態となり、その突出した上側係合具6の下部に連結部材12の上端部を連結できる構造になっている。それぞれの支持部材8には、さらに、支持部材8に対して足場板13を固定する固定具13aを挿入可能な挿入孔8aが複数形成されている。この実施形態では挿入孔8aとして、支持部材8の長手方向に延在する長孔が形成されている。
【0021】
それぞれの支持脚9は、支持部材8の幅方向に離間して配置された一対の棒状材で構成されていて、それぞれの棒状材の上端部が支持部材8の他端部の側面に連結具9aによって上下方向に回転可能に連結されている。
図2に例示するように、連結具9aによる締付を弱めると支持部材8と支持脚9とがなす角度Dを変更でき、連結具9aによる締付を強めると支持部材8に対して支持脚9を固定できる構造になっている。それぞれの支持脚9は、支持部材8の他端部から杭20に向かって斜め下方向に延在した状態で支持部材8に対して固定される。
【0022】
それぞれの下側押圧部材10は、支持脚9の下端部に連結具10aによって上下方向に回転可能に連結されている。連結具10aによる締付を弱めると支持脚9に対する下側押圧部材10の固定角度を変更でき、連結具10aによる締付を強めると支持脚9に対して下側押圧部材10を固定できる構造になっている。この実施形態では、杭20の外周面に押し当てられるそれぞれの下側押圧部材10の内周面に緩衝材5が設けられている。
【0023】
この実施形態では、それぞれの下側押圧部材10の上部に下側係合具11が設けられていて、それぞれの下側係合具11は、連結部材12の下端部を連結できる構造になっている。連結部材12は例えばワイヤロープや樹脂製のロープなどで構成される。それぞれの連結部材12は、それぞれの支持部材8と支持脚9とのなす角度Dが所定の一定角度になるように、予め長さが調整されている。上側係合具6と下側係合具11は、杭20に仮設足場1を固定した状態で、それぞれの上側係合具6の真下にそれぞれ下側係合具11が位置するように配置されている。この実施形態では、下側係合具11を下側押圧部材10の上部に固定しているが、例えば、下側係合具11を連結具10aや支持脚9の下端部に固定した構成にすることもできる。
【0024】
この実施形態では、張出し足場ユニット7に、下側係合具11と連結部材12とが予め一体化されている。この実施形態の仮設足場1は、張出し足場ユニット7を6組有している。
【0025】
この実施形態では、周方向に隣り合う支持部材8どうしの間にそれぞれ上面視台形状の足場板13を架け渡して、足場板13の両端部をそれぞれ別々の支持部材8に固定具13aで固定する構造になっている。この実施形態の仮設足場1は、足場板13を6枚有している。
【0026】
上述した固定部材3、上側押圧部材4、支持部材8、支持脚9、下側押圧部材10、および足場板13は、それぞれ軽量で耐久性に優れたアルミニウム合金などの軽量金属や、繊維強化プラスチックなどで形成するとよい。巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13はそれぞれ、1人或いは2人の作業者が人力で持ち上げることが可能な重量、具体的には例えば15kg以下にすることが可能である。巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13はそれぞれ水に浮く密度で形成することが可能であり、巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13が落水した場合にも容易に回収できる。例えば、巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13の密度を高くする場合には、巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13に水に浮かぶフロート材を付設することもできる。
【0027】
次に、仮設足場1を使用して水域に立設された杭20に仮設足場を構築する方法を説明する。この実施形態では、杭20の上端部に構築されている上部構造体22の下面と水面との間に仮設足場1を設置する。
【0028】
小型船や筏などを使用して、仮設足場1を構成する巻装ユニット2と、複数の張出し足場ユニット7と、複数の足場板13とを杭20の近傍まで移送する。次いで、
図3および
図4に例示するように、巻装ユニット2を所望の高さ位置で杭20の外周に巻装して固定する。
【0029】
具体的には、固定部材3を所望の高さ位置で杭20に外嵌めし、固定部材3の連結部3cどうしを連結具3dで連結することで、杭20の外周に固定部材3を巻装する。杭20の外周に固定部材3を巻装すると、それぞれの上側押圧部材4に設けられている緩衝材5が、杭20の外周面に密着した状態になる。この実施形態では、それぞれの上側押圧部材4に設けられている緩衝材5をそれぞれ杭20の防食層21に当接させている。複数の上側押圧部材4がそれぞれ杭20の軸心Cに向かって杭20の外周面を押圧することで、複数の上側押圧部材4によって杭20が挟持され、杭20に対して巻装ユニット2が安定して固定された状態になる。
【0030】
次いで、
図5に例示するように、杭20に固定された巻装ユニット2に、それぞれの張出し足場ユニット7を固定する。具体的には、支持部材8を持ち上げた状態で、支持部材8の一端部を固定部材3に上側係合具6を用いて固定する。このとき、支持部材8と支持脚9とを連結する連結具9aによる締付は緩めた状態にし、支持脚9と下側押圧部材10は小型船や筏の上に置いた状態にするとよい。次いで、
図1および
図2に例示するように、下側押圧部材10を持ち上げて、下側係合具11に下端部が連結された状態の連結部材12の上端部を上方に位置する上側係合具6の下部に連結し、下側押圧部材10の内周面を杭20の外周面に押し当てた状態にする。そして、支持部材8と支持脚9とを連結する連結具9aによる締付を強めて、支持部材8に対して支持脚9を固定する。この実施形態では、それぞれの下側押圧部材10の内周面に設けられている緩衝材5をそれぞれ杭20の防食層21に当接させている。
【0031】
巻装ユニット2にすべての張出し足場ユニット7を固定し終えると、固定部材3に支持部材8の一端部が固定されるとともに、複数の下側押圧部材10がそれぞれ杭20の軸心Cに向かって杭20の外周面を押圧することで、複数の下側押圧部材10によって杭20が挟持され、杭20に対して張出し足場ユニット7が安定して固定された状態になる。
【0032】
次いで、
図1および
図2に例示するように、杭20の周方向に隣り合う支持部材8どうしの間に足場板13を架け渡して、足場板13の両端部をそれぞれ別々の支持部材8に固定具13aで固定する。すべての足場板13を固定し終えると、上面視で固定部材3の外周側に環状に連続して足場板13が配置された状態になる。以上により、仮設足場1の設置作業が完了する。このように、杭20に仮設足場1を固定することで、水上における杭20の周囲に作業員が搭乗可能な仮設足場が構築される。この仮設足場1では、緩衝材5のみが防食層21に接触した状態になる。
【0033】
図6に例示するように、例えば、杭20に構築し終えた仮設足場1を使用して、その仮設足場1よりも高い位置に別の仮設足場1を構築することもできる。小型船や筏から巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13を杭20に固定し終えている仮設足場1の上に持ち上げて載置し、その仮設足場1の上で同様に別の仮設足場1の設置作業を行うことができる。
図6では、上下方向に2層の仮設足場1を構築する場合を例示しているが、3層以上の仮設足場1を構築することも可能である。例えば、上下に設置した仮設足場1どうしの間に梯子などを架けることもできる。
【0034】
図7に例示するように、複数の杭20にそれぞれ仮設足場1を固定し、隣り合う仮設足場1どうしの間に連結足場板17を架け渡すことで、杭20どうしの間に仮設足場を構築することもできる。連結足場板17は、板状材や網状材で構成される。連結足場板17は、軽量で耐久性に優れたアルミニウム合金などの軽量金属や、繊維強化プラスチックなどで形成するとよい。
【0035】
仮設足場1は設置作業と逆の手順で撤去することができる。具体的には、連結足場板17を取外す。次いで、それぞれの足場板13を支持部材8から取外す。次いで、上側係合具6と連結部材12との連結を解除し、上側係合具6による固定部材3に対する支持部材8の固定を解除して、それぞれの張出し足場ユニット7を巻装ユニット2から取外す。次いで、連結具3dによる固定部材3の連結部3cの連結を解除して、杭20から巻装ユニット2を取外す。以上により仮設足場1の撤去が完了する。
【0036】
このように、本発明によれば、仮設足場1の固定部材3を杭20の外周に環状に巻装して、それぞれの上側押圧部材4およびそれぞれの下側押圧部材10を杭20の外周面に押し当て、防食層21には非金属製の軟質の緩衝材5を押し当てた状態にする。これにより、杭20の防食層21が設けられている位置においても、防食層21の損傷を回避しつつ、仮設足場1を安定して固定できる。
【0037】
さらに、緩衝材5を設けることで、杭20の外周面に歪みや凹凸がある場合にも、緩衝材5が杭20の外周面の形状に合わせて変形して杭20の外周面に緩衝材5が密着した状態になる。それ故、それぞれの上側押圧部材4とそれぞれの下側押圧部材10による押圧力が局部に集中することなく、杭20に対して均一に押圧力を加えることができる。これにより、杭20に対して仮設足場1を安定して固定しつつ、防食層21が損傷するリスクを低減できる。
【0038】
このように、従来では、防食層21の損傷を回避するために、仮設足場を杭20の防食層21を避けた水中部に潜水士によって固定するなどの対策がとられていたが、本発明では従来と発想を変えて、仮設足場1を防食層21に固定するのに適した仕様にすることで、防食層21の損傷を回避しつつ、仮設足場1を防食層21に固定することを可能にしている。これにより、本発明では、仮設足場1を固定可能な高さ位置が限定されないため、杭20の所望の高さ位置に仮設足場1を構築することが可能となる。
【0039】
この実施形態のように、仮設足場1が、固定部材3および複数の上側押圧部材4が一体化された巻装ユニット2と、支持部材8および支持脚9および下側押圧部材10が一体化された複数の張出し足場ユニット7と、足場板13とに分離可能な構成にすると、巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13をそれぞれ1人或いは2人の少人数の作業者で持ち上げることが可能な重量(例えば、15kg以下)にすることができる。それ故、巻装ユニット2を杭20に巻装して固定し、次いで、巻装ユニット2に複数の張出し足場ユニット7を固定し、次いで、複数の張出し足場ユニット7に足場板13を固定することで、仮設足場1を少人数で容易に構築することができる。
【0040】
また、例えば、仮設足場1の構成部材をより細かく分離した状態で水域において構成部材どうしを組み立ててもよいが、この実施形態のように、予め巻装ユニット2と張出し足場ユニット7を形成しておくと、水域において少ない工数でより容易に仮設足場1を構築できる。撤去作業も少ない工数で容易に行えるので、非常に利便性が高くなる。
【0041】
さらに、巻装ユニット2、張出し足場ユニット7、および足場板13に分けてそれぞれ作業者が人力で持ち上げられる15kg以下の重量にすると、
図6に例示するように、杭20に構築し終えた仮設足場1を使用して、その仮設足場1よりも高い位置に別の仮設足場1を構築することが可能となる。それ故、例えば、水面から上部構造体22の下面までの高さが高い場合にも、仮設足場1を上下方向に複数設置することで、作業員が上部構造体22の下面に届く高さに仮設足場1を構築することが可能となる。
【0042】
この実施形態のように、上側係合具6、下側係合具11、および連結部材12を設けると、杭20に固定された巻装ユニット2に対して張出し足場ユニット7を固定する際に、上側係合具6と下側係合具11とを連結部材12で連結した状態にすることで、下側押圧部材10や支持脚9の荷重を固定部材3に支持させた状態にできる。これにより、巻装ユニット2に対する張出し足場ユニット7の固定作業を少人数の作業員でより行ない易くなる。また、仮設足場1を構築し終えた状態では、上側係合具6、下側係合具11、および連結部材12により、支持脚9の下端部にかかる荷重が固定部材3に支持された状態になる。それ故、支持脚9の上端部と支持部材8との連結部分にかかる負荷を低減でき、固定部材3および支持部材8に対して支持脚9および下側押圧部材10をより安定して固定できる。なお、上側係合具6、下側係合具11、および連結部材12は任意で設けることができる。
【0043】
この実施形態のように、支持部材8に挿入孔8aとして長孔を形成した構成にすると、支持部材8に対する足場板13の固定位置を支持部材8の長手方向に変更することが可能となる。これにより、
図8に例示するように、杭径が異なる杭20に対しても、巻装ユニット2を杭径に応じた別の巻装ユニット2に交換するだけで、同じ張出し足場ユニット7および足場板13を使用して、様々な杭径の杭20に仮設足場1を構築することが可能となる。それ故、支持部材8に挿入孔8aとして丸孔を形成する場合よりも、仮設足場1の利便性をより高くできる。
【0044】
図9および
図10に本発明の仮設足場1の別の実施形態を例示する。
【0045】
この実施形態の仮設足場1は、それぞれの上側押圧部材4の内周面の位置を杭20の軸心Cに対して近接および離反させる方向に進退移動させる移動機構14を有している。それぞれの下側押圧部材10にも同様に移動機構14が設けられている。さらに、それぞれの支持脚9が脚長を可変にする構造になっている。その他の構成は先に例示した実施形態の仮設足場1と同じである。
【0046】
図9および
図10に例示するように、それぞれの上側押圧部材4に設けられている移動機構14は、固定部材3に設けられたボルト孔15と、そのボルト孔15に螺合して固定部材3と上側押圧部材4とを連結する調整ボルト16とで構成されている。調整ボルト16の先端部に上側押圧部材4の外周側端部が接合されていて、調整ボルト16の長手方向の中途部分が固定部材3のボルト孔15に嵌め込まれている。調整ボルト16を回転させることで、上側押圧部材4の内周面の位置を杭20の軸心Cに対して近接および離反させる方向に進退移動させることができる。
【0047】
図10に例示するように、この実施形態のそれぞれの下側押圧部材10は、支持脚9の下端部に連結された第一部材10bと、杭20の外周面に押し当てられる第二部材10cで構成されている。それぞれの下側押圧部材10に設けられている移動機構14は、第一部材10bに設けられたボルト孔15と、そのボルト孔15に螺合して第一部材10bと第二部材10cとを連結する調整ボルト16で構成されている。調整ボルト16の先端部に第二部材10cの外周側端部が接合されていて、調整ボルト16の長手方向の中途部分が第一部材10bのボルト孔15に嵌め込まれている。調整ボルト16を回転させることで、下側押圧部材10(第二部材10c)の内周面の位置を杭20の軸心Cに対して近接および離反させる方向に進退移動させることができる。
【0048】
それぞれの支持脚9は、2つの筒状の分割部材が長手方向に相対移動可能に接続されたテレスコピック構造になっている。支持部材8に連結されている分割部材に対して、下側押圧部材10が連結されている分割部材を相対移動させて分割部材どうしの固定位置を変更することで、支持脚9の脚長を変更できる。
【0049】
この実施形態の仮設足場1を使用した仮設足場の構築方法は先に示した実施形態と概ね同じである。
図10に例示するように、この実施形態では、仮設足場1のそれぞれの下側押圧部材10の内周面を、杭20に設けられている防食層21よりも下方の杭20の外周面に押し当てている。防食層21には上側押圧部材4に設けられている緩衝材5のみを接触させた状態にしている。
【0050】
このように、下側押圧部材10の内周面を防食層21よりも下方の杭20の外周面に押し当てると、下側押圧部材10を防食層21に押し当てる場合よりも、下側押圧部材10を杭20の外周面により強く押し当てることが可能となる。それ故、仮設足場1を杭20に安定して固定するにはより有利になる。この実施形態では、下側押圧部材10が緩衝材5を有する場合を例示しているが、下側押圧部材10を防食層21ではない位置に押し当てる場合には、下側押圧部材10の内周面に緩衝材5を有さない構成にすることもできる。
【0051】
この実施形態のように仮設足場1が移動機構14を有していると、杭20の外径に合わせて、移動機構14によりそれぞれの上側押圧部材4とそれぞれの下側押圧部材10の内周面の位置を進退移動させて調整することで、同じ巻装ユニット2を使用して、仮設足場1を様々な外径の杭20に固定することが可能になる。
【0052】
また、移動機構14を設けると、固定部材3を杭20の外周に巻装した状態で、移動機構14によりそれぞれの上側押圧部材4とそれぞれの下側押圧部材10の内周面の位置を進退移動させて調整することで、杭20に対するそれぞれの上側押圧部材4とそれぞれの下側押圧部材10の押し当て具合(密着度合いや押圧力など)を調整できる。それ故、例えば、
図10に例示するように上側押圧部材4を押し当てる防食層21と下側押圧部材10を押し当てる杭20の外周面との間に段差がある場合や、杭20の外周面に凹凸がある場合などにも、杭20に対して仮設足場1をより安定して固定できる。移動機構14の構造はこの実施形態に限定されず、異なる構造にすることもできる。
【0053】
仮設足場1を、それぞれの支持脚9の上端部が支持部材8に上下方向に回転可能に連結されている構造にすると、支持部材8と支持脚9とがなす角度Dを変更することで、下側押圧部材10の上下方向および水平方向の固定位置を変更することが可能となる。また、それぞれの支持脚9が脚長を可変にする構造にすると、支持脚9の脚長を変更することで、下側押圧部材10の上下方向および水平方向の固定位置を変更することが可能となる。それぞれの下側押圧部材10が支持脚9の下端部に上下方向に回転可能に連結されている構造にすると、支持部材8と支持脚9とがなす角度Dを変更した場合にも、下側押圧部材10の固定角度を下側押圧部材10の内周面を杭20の外周面に押し当てる適切な角度に調整することが可能となる。
【0054】
この実施形態の仮設足場1では、支持部材8と支持脚9とがなす角度Dや、支持脚9の脚長、支持脚9に対する下側押圧部材10の固定角度を変更することで、それぞれの下側押圧部材10を押し当てる位置を杭20の所望の高さ位置に設定できる。それ故、それぞれの下側押圧部材10を押し当てる位置を、杭20の防食層21ではない位置や防食層21の劣化が進んでいない位置に設定することで、防食層21の損傷を回避するにはより有利になる。
【0055】
なお、本発明では、例えば、固定部材3、上側押圧部材4、支持部材8、支持脚9、下側押圧部材10、および一部の足場板13を予め一体化した大組ユニットにした状態で、固定部材3を杭20に巻装することで、杭20に仮設足場1を一括設置する構成にすることもできる。この場合には、大組ユニットの重量は重くなるが、仮設足場1の設置作業や撤去作業に要する作業工数を少なくするには有利になる。
【0056】
上述した実施形態では、横断面視で外周形状が円形状の杭20に固定する場合の仮設足場1を例示したが、仮設足場1は、上側押圧部材4や下側押圧部材10の内周面の位置を杭20の外周形状に合わせて適宜設定することで、例えば、横断面視で外周形状が多角形状の杭20に固定する仕様にすることもできる。
【0057】
固定部材3、上側押圧部材4、上側係合具6、支持部材8、支持脚9、下側押圧部材10、下側係合具11、連結部材12、および足場板13のそれぞれの形状や構造、数、配置などはこの実施形態に限定されず、異なる構成にすることもできる。例えば、固定部材3は、5つ以下の分割体3aで構成することもできるし、7つ以上の分割体3aで構成することもできる。
【0058】
また、固定部材3の連結部3cどうしの連結構造や、固定部材3と支持部材8との連結構造、支持部材8と支持脚9との連結構造、支持脚9と下側押圧部材10との連結構造なども上述した実施形態に限定されず、異なる構成にすることもできる。例えば、支持脚9の上端部が支持部材8に接合されている構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 仮設足場
2 巻装ユニット
3 固定部材
3a 分割体
3b ヒンジ部
3c 連結部
3d 連結具
4 上側押圧部材
5 緩衝材
6 上側係合具
7 張出し足場ユニット
8 支持部材
8a 挿入孔
9 支持脚
9a 連結具
10 下側押圧部材
10a 連結具
10b 第一部材
10c 第二部材
11 下側係合具
12 連結部材
13 足場板
13a 固定具
14 移動機構
15 ボルト孔
16 調整ボルト
17 連結足場板
20 杭
21 防食層
22 上部構造体
C 杭の軸心
WL 水面位置