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特許7299063好ましい側に骨アンカのための拡大された傾斜角度を有する骨固定アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】好ましい側に骨アンカのための拡大された傾斜角度を有する骨固定アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A61B17/80
【請求項の数】 34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019091628
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2019198653
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】15/982,488
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルック ビーダーマン
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521046(JP,A)
【文献】特開2015-205179(JP,A)
【文献】特表2013-529484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドおよびシャンクを有する骨アンカと共に使用するためのプレート部材であって、該プレート部材は、
上側および下側を有するプレート部材を含み、該プレート部材は、前記上側から前記下側まで延びる少なくとも1つの通路を規定しており、該少なくとも1つの通路は、
第1の端部および第2の端部を備える第1のボアを有し、該第1のボアは、前記第1の端部と前記第2の端部との間に第1の中心軸線を規定しており、該第1のボアの前記第1の端部は、第1のエッジにおいて前記上側と交差しており、
前記骨アンカの前記ヘッドを受け入れ、前記骨アンカの前記ヘッドと接触しかつ前記骨アンカの前記ヘッドを支持するように構成されたシート部分を有し、該シート部分は、第2の中心軸線を有し、該第2の中心軸線は、前記第1の中心軸線に対して傾斜させられており、
第1の端部および第2の端部を備える第2のボアを有し、該第2のボアの前記第2の端部は、第2のエッジにおいて前記下側と交差しており、
前記第1のエッジの大部分は、前記第1の中心軸線に中心合わせされた第1の半径を有し、前記第1のエッジの一部は、前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して所定の角度で前記シャンクおよび前記ヘッドのうちの少なくとも一方を受け入れるために、前記第1の半径の外側に第1の隙間を規定しており、
前記第2のエッジの大部分は、第2の半径を有し、前記第2のエッジの一部は、前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して傾斜させられたシャンク軸線に沿って延びる最大のシャンク角度で前記シャンクを受け入れるために、前記第の半径の外側に第2の隙間を規定している、
ヘッドおよびシャンクを有する骨アンカと共に使用するためのプレート部材。
【請求項2】
前記第2の隙間は、前記下側における凹面状の凹所である、請求項1記載のプレート部材。
【請求項3】
前記第2の隙間は、前記第1の半径および前記第2の半径より小さな第3の半径によって規定されている、請求項2記載のプレート部材。
【請求項4】
前記第2の隙間は、前記第1の半径より小さな第3の半径を備える孔の一部によって形成されている、請求項1記載のプレート部材。
【請求項5】
前記孔は、前記第1の中心軸線に対して傾斜させられており、前記第3の半径は、前記シャンク軸線から延びている、請求項4記載のプレート部材。
【請求項6】
前記最大のシャンク角度は、前記第1の中心軸線に対して30°より大きい、請求項1記載のプレート部材。
【請求項7】
前記最大のシャンク角度は、前記第1の中心軸線に対して40°以下である、請求項1記載のプレート部材。
【請求項8】
前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線は、前記シート部分内で互いに交差する、請求項記載のプレート部材。
【請求項9】
ヘッドおよびシャンクを有する骨アンカと共に使用するためのプレート部材であって、該プレート部材は、
上側および下側を有するプレート部材を含み、該プレート部材は、前記上側から前記下側まで延びる少なくとも1つの通路を規定しており、該少なくとも1つの通路は、
第1の端部および第2の端部を備える第1のボアを有し、該第1のボアは、前記第1の端部と前記第2の端部との間に第1の中心軸線を規定しており、該第1のボアの前記第1の端部は、第1のエッジにおいて前記上側と交差しており、前記第1のエッジの少なくとも一部は、前記第1の中心軸線から第1の方向へ延びる第1の凹所を規定しており、
前記骨アンカの前記ヘッドを受け入れ、前記骨アンカの前記ヘッドと接触しかつ前記骨アンカの前記ヘッドを支持するように構成された、中空の、球セグメント状のシート部分を有し、該シート部分は、第2の中心軸線を有し、該第2の中心軸線は、前記第1の中心軸線に対して傾斜させられており、
第1の端部および第2の端部を備える第2のボアを有し、該第2のボアの前記第2の端部は、第2のエッジにおいて前記下側と交差しており、前記第2のエッジの少なくとも一部は、前記第1の中心軸線から、前記第1の方向とは反対の第2の方向へ延びる、前記下側における第2の凹所を規定している、
ヘッドおよびシャンクを有する骨アンカと共に使用するためのプレート部材。
【請求項10】
前記シート部分を規定する面は、前記第2の中心軸線に対して横方向の横断面において円形である、請求項記載のプレート部材。
【請求項11】
前記プレート部材の前記通路は、前記第1のボアと前記シート部分の間に設けられかつ前記第1のボアおよび前記シート部分に向かって開放した第3のボアを有し、該第3のボアは、前記シート部分の最大直径と少なくとも等しくかつ前記第1のボアの最小直径より小さい直径を有し、前記第3のボアは、前記第2の中心軸線に沿って前記第1のボアから前記シート部分まで直径がテーパしている、請求項記載のプレート部材。
【請求項12】
前記第1のボアの前記第2の端部は、第1の平面を規定しており、前記下側に面した、前記シート部分の、内側へ突出する下側エッジは、第2の平面を規定しており、前記第1の平面と、前記第2の平面とは、ゼロでない角度αで互いに交差する、請求項記載のプレート部材。
【請求項13】
前記角度αは、約1~20°である、請求項12記載のプレート部材。
【請求項14】
前記第2のボアは、前記シート部分の最小直径と少なくとも等しい直径を有する、請求項記載のプレート部材。
【請求項15】
前記第2のボアの内径は、前記プレート部材の前記下側向かって増大している、請求項記載のプレート部材。
【請求項16】
前記第1のボアは、雌ねじ山を有する、請求項記載のプレート部材。
【請求項17】
前記第1のボアは、実質的に円筒状である、請求項記載のプレート部材。
【請求項18】
前記第1のエッジの大部分は、前記第1の中心軸線に中心合わせされた第1の半径を有する、請求項記載のプレート部材。
【請求項19】
前記第1のエッジの一部は、前記第1の凹所を規定している、請求項18記載のプレート部材。
【請求項20】
前記第2のエッジの大部分は、前記第2の中心軸線に中心合わせされた第2の半径を有する、請求項18記載のプレート部材。
【請求項21】
前記第2のエッジの一部は、前記第2の凹所を規定している、請求項20記載のプレート部材。
【請求項22】
前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線は、前記通路内で互いに交差する、請求項21記載のプレート部材。
【請求項23】
哺乳類の体内へ埋め込むためのプレート部材アセンブリであって、
上側および下側を有するプレート部材を含み、該プレート部材は、前記上側から前記下側まで延びる少なくとも1つの通路を規定しており、該少なくとも1つの通路は、
第1の端部および第2の端部を備える第1のボアを有し、該第1のボアは、前記第1の端部と前記第2の端部との間に第1の中心軸線を規定しており、該第1のボアの前記第1の端部は、第1のエッジにおいて前記上側と交差しており、
アンカのッドを受け入れ、前記骨アンカの前記ヘッドと接触しかつ前記骨アンカの前記ヘッドを支持するように構成されたシート部分を有し、該シート部分は、第2の中心軸線を有し、該第2の中心軸線は、前記第1の中心軸線に対して傾斜させられており、
第1の端部および第2の端部を備える第2のボアを有し、該第2のボアの前記第2の端部は、第2のエッジにおいて前記下側と交差しており、
前記第1のエッジの大部分は、前記第1の中心軸線に中心合わせされた第1の半径を有し、前記第1のエッジの一部は、前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して所定の角度でャンクおよび前記ヘッドのうちの少なくとも一方を受け入れるために、前記第1の半径の外側に第1の隙間を規定しており、
前記第2のエッジの大部分は、第2の半径を有し、前記第2のエッジの一部は、前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して傾斜させられたシャンク軸線に沿って延びる最大のシャンク角度で前記シャンクを受け入れるために、前記第の半径の外側に第2の隙間を規定しており、
前記シート部分に受入れ可能なヘッドと、シャンク軸線を規定するシャンクとを有する骨アンカを含み、
前記ヘッドは、前記シャンク軸線が、前記第2の中心軸線と同軸のゼロ位置になるように、前記シート部分に受入れ可能であり、
また、前記シャンクが前記最大のシャンク角度に向けられ、前記シャンク軸線が前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して傾斜させられかつ前記シャンクが前記第2のエッジの一部内に位置するように、前記ヘッドは前記シート部分に受入れ可能である、
哺乳類の体内へ埋め込むためのプレート部材アセンブリ。
【請求項24】
記通路は、前記骨アンカが前記シート部分において前記第1の中心軸線に対して好ましい方向へ30°よりも大きく回動することができるように、構成されている、請求項23記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項25】
記通路は、前記骨アンカが前記シート部分において前記第1の中心軸線に対して好ましい方向へ40°以下だけ回動することができるように、構成されている、請求項23記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項26】
前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線は、前記通路内で互いに交差する、請求項23記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項27】
前記第1のボアに受け入れられかつ前記シート部分における前記骨アンカの位置を維持するように構成されたロッキングエレメントをさらに含む、請求項23記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項28】
前記ロッキングエレメントは、骨アンカのヘッドに面するように構成された下側と、前記ロッキングエレメントの前記下側と反対の上側とを備える、実質的に円筒の形状であり、前記ロッキングエレメントは、前記ヘッドの少なくとも一部を収容するための、前記ロッキングエレメントの前記下側における第1の凹所と、ドライバと係合するための、前記ロッキングエレメントの前記上側における第2の凹所とを有する、請求項27記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項29】
プレート部材アセンブリであって、
プレート部材を含み、
該プレート部材は、上側および下側を有し、前記プレート部材は、前記上側から前記下側まで延びる少なくとも1つの通路を規定しており、該少なくとも1つの通路は、
第1の端部および第2の端部を備える第1のボアを有し、該第1のボアは、前記第1の端部と前記第2の端部との間に第1の中心軸線を規定しており、該第1のボアの前記第1の端部は、第1のエッジにおいて前記上側と交差しており、前記第1のエッジの少なくとも一部は、前記第1の中心軸線から第1の方向へ延びる第1の凹所を規定しており、
アンカのッドを受け入れ、前記骨アンカの前記ヘッドと接触しかつ前記骨アンカの前記ヘッドを支持するように構成されたシート部分を有し、該シート部分は、第2の中心軸線を有し、該第2の中心軸線は、前記第1の中心軸線に対して傾斜させられており、
第1の端部および第2の端部を備える第2のボアを有し、該第2のボアの前記第2の端部は、第2のエッジにおいて前記下側と交差しており、前記第2のエッジの少なくとも一部は、前記第1の中心軸線から、前記第1の方向と反対の第2の方向へ延びる、前記下側における第2の凹所を規定しており、
前記シート部分に受入れ可能なヘッドと、シャンク軸線を規定するシャンクとを有する骨アンカを含み、
前記ヘッドは、前記シャンク軸線が、前記第2の中心軸線と同軸のゼロ位置になるように、前記シート部分に受入れ可能であり、
また、前記シャンクが最大のシャンク角度に向けられ、前記シャンク軸線が前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線に対して傾斜させられかつ前記シャンクが前記第2の凹所内に位置するように、前記ヘッドは前記シート部分に受入れ可能である、
プレート部材アセンブリ。
【請求項30】
記通路は、前記骨アンカが前記シート部分において前記第1の中心軸線に対して好ましい方向へ30°よりも大きく回動することができるように、構成されている、請求項29記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項31】
記通路は、前記骨アンカが前記シート部分において前記第1の中心軸線に対して好ましい方向へ40°以下だけ回動することができるように、構成されている、請求項29記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項32】
前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線は、前記通路内で互いに交差する、請求項29記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項33】
前記第1のボアに受け入れられかつ前記シート部分における前記骨アンカの位置を維持するように構成されたロッキングエレメントをさらに含む、請求項29記載のプレート部材アセンブリ。
【請求項34】
前記ロッキングエレメントは、骨アンカのヘッドに面するように構成された下側と、前記ロッキングエレメントの前記下側と反対の上側とを備える、実質的に円筒の形状であり、前記ロッキングエレメントは、前記ヘッドの少なくとも一部を収容するための、前記ロッキングエレメントの前記下側における第1の凹所と、ドライバと係合するための、前記ロッキングエレメントの前記上側における第2の凹所とを有する、請求項33記載のプレート部材アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2014年4月17日に出願された米国仮特許出願第61/981058号明細書(U.S. Provisional Patent Application Serial No.61/981,058)の利益を主張する2015年4月16日に出願された米国特許出願第14/688970号明細書(U.S. Serial No.14/688,970)に関し、その全内容は、引用により本明細書に記載されたものとする。
【0002】
背景
分野
本発明は、骨または骨片の固定のための骨固定アセンブリに関する。特に、本発明は、骨プレートおよび骨アンカを含む骨固定アセンブリに関し、骨固定アセンブリは、骨アンカ孔の位置においてプレートを通る鉛直方向軸線に対して、骨アンカのための一方の側への拡大された傾斜角度を許容する。
【0003】
従来技術
米国特許出願公開第2012/0059425号明細書(US 2012/0059425 A)には、増大された角運動範囲および低い高さを有する、骨プレートアセンブリの骨アンカとプレート部材との間の多軸継手を備える骨固定アセンブリが記載されている。
【0004】
ロリッチDGおよびガードナーMJは、長手方向平面における骨アンカの25°の傾斜、および横断平面における7°以下の傾斜を許容する細長い孔を備える、制限接触式ダイナミック圧縮プレートアセンブリを説明している(Ruedi TP, Buckley R, Moran CG (2007) AO Principles of Fracture Management. 2nd ed. Vol.1. Stuttgart New York: Thieme-Verlag)。
【0005】
脊椎手術の分野において、米国特許第8409260号明細書(US 8,409,260 B2)には、骨アンカと、一方の側への骨アンカの拡大された回動角度を許容する収容部とを含む、骨固定アセンブリが記載されている。
【0006】
公知の骨固定アセンブリは、それぞれ反対の側へ等しい傾斜角度で骨プレートに対する骨ねじの多軸調節を提供することができるが、プレートねじ構成の低い高さおよび高い安定性を依然として提供しながら、好ましい側への、骨アンカ孔の位置においてプレートを通る鉛直方向軸線に対する増大した傾斜角度を許容する、改良された骨プレートアセンブリの必要性が依然として存在する。例えば、骨アンカ孔の位置においてプレートを通る鉛直方向軸線に対する傾斜角度が一方の側へのみ増大させられるべきであるという解剖学的状況があり得る。これは、例えば、手または肩の骨折に関連するケースである場合がある。
【0007】
概要
本発明の実施の形態の1つの態様によれば、骨固定アセンブリは、小さな厚さおよび高い角度安定性の観点から低い高さを同時に提供しながら、一方の側への拡大された傾斜角度を有する、骨アンカおよびプレートエレメントの多軸調節を許容する。
【0008】
本発明の実施の形態の態様および特徴は、幾つかの典型的な実施の形態に関して本明細書において説明されかつ請求項に示される。
【0009】
本発明の1つまたは複数の実施の形態による骨固定アセンブリは、骨アンカのためのシートを有し、シートの中心軸線は、骨アンカ孔の位置においてプレートを通る鉛直方向軸線に対して傾斜させられている。シートは、シートにおける骨アンカのゼロ位置に関して約20°以下の骨アンカの挿入を許容するように構成されており、これは、少なくとも40°以下の合計運動範囲に相当する。プレート部材における孔の設計、特に骨アンカのためのシートの傾斜した位置により、運動円錐が傾斜させられ、好ましい側への増大した角度付けを提供する。さらに、プレート孔を包囲する、プレートの上面および下面の周囲部分は、プレート部材による妨害なしに好ましい側へのねじのさらに増大された傾斜を可能にするように、除去されている。これにより、例えば、一方の側への40°の増大された挿入角度を達成することができる。
【0010】
ある解剖学的状況では、プレート部材は、屈曲されていてもよく、例えば手の手術における遠位半径プレートであってもよい。この場合、本発明は、プレートの厚さを増大させることなく、プレート部材の屈曲した部分の好ましい方向への拡大された傾斜角度を提供する。さらに、ロッキング骨プレートの場合、ロッキングねじのためのねじ山のねじ山軸線を、骨プレートの面に対して垂直に提供することができる。したがって、円錐形のねじ山付き孔または傾斜したねじ山付き孔が回避される場合がある。
【0011】
孔の数および拡大された傾斜角度の所望の側を規定するそれらの設計は、解剖学的要求に容易に適応させることができ、これにより、様々な用途を提供する。
【0012】
骨アンカは、ロッキングエレメントによってプレート部材に対して固定されてもよい。ロッキングエレメントにより、骨アンカの角度安定性が高められることがあり、骨アンカは、引き抜きを防止されることがある。完全なロッキングまたは摩擦ロッキングを達成するためにまたは骨アンカの引き抜きのみを防止しながら自由な角度付けを許容するために、様々なロッキングエレメントを提供することができる。本発明による骨固定アセンブリのロッキングプレート部材としての適用の他に、固定アセンブリは、ロッキングエレメントなしで、すなわち非ロッキングプレートとして使用することもできる。
【0013】
本発明による骨固定アセンブリは、臨床用途に応じて1つの孔または2つ以上の孔、すなわち複数の孔を有してもよい。さらに、プレート部材は、より多様な利用のために中心長手方向線からずれたオフセット孔を有してもよい。プレート部材は、最小骨接触領域を有するように設計することができ、ダイナミックプレートとして使用することができる。また、プレート部材は、特定の臨床用途のための特定の形状を提供するように輪郭づけられていてもよい。
【0014】
骨プレートアセンブリは、様々な臨床用途に適している。例えば、骨プレートアセンブリは、骨または骨部分を含む領域における適用に適しており、例えば手または肩の骨折に関連して、骨プレートと骨アンカとの間の増大した角度が、解剖学的状況に最も良く適応するために有利である。孔の設計は、骨プレートアセンブリ全体の低い高さにつながり、これは、手または骨盤などの場合に、最小限の柔軟組織被覆面積を備える領域における適用に適したものにする。
【0015】
本発明の別の特徴および利点は、添付の図面を参照した幾つかの実施の形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態による、孔を備える骨固定アセンブリのプレート部材の概略的な断面図を示している。
図2図1における孔およびシートを規定する、エッジおよび平面の幾何学的配置の概略図を示している。
図3】第1の実施の形態による、孔と、ねじと、ロッキングエレメントとを備える骨固定アセンブリの概略的な部分断面図を示している。
図4】1つの実施の形態による、複数の孔を備える骨固定アセンブリのプレート部材の概略的な断面図を示している。
図5】複数の孔と、ねじと、ロッキングエレメントとを備える、図4による骨固定アセンブリの概略的な断面図を示している。
図6図5による骨固定アセンブリの下面図を示している。
図7】1つの実施の形態による、概略的な運動円錐を備える、屈曲した骨プレートの断面図を示している。
図8】1つの実施の形態による骨固定アセンブリのプレート部材の概略的な平面図を示している。
図9図8における線9-9に沿った概略的な断面図を示している。
図10図8のプレート部材の概略的な下面図を示している。
図11】骨ねじがプレート部材のねじ穴に挿入された、図8と同様の図を示している。
図12】骨ねじおよびロッキングエレメントがプレート部材のねじ穴に挿入された、図8と同様の図を示している。
図13】1つの実施の形態による骨固定アセンブリのプレート部材の概略的な平面図を示している。
図14図13における線14-14に沿った概略的な断面図を示している。
図15図13のプレート部材の概略的な下面図を示している。
図16】別の実施の形態の概略的な断面図を示している。
図17】さらに別の実施の形態の概略的な断面図を示している。
【0017】
詳細な説明
ここで、骨固定アセンブリの第1の実施の形態を、図1図3を参照して説明する。第1の実施の形態の骨固定アセンブリは、ロッキングタイプであるが、非ロッキングプレートとして使用することもできる。図1に見られるように、骨固定アセンブリは、上側1aおよび下側1bを備えるプレート部材1を含み、上側1aおよび下側1bは実質的に互いに平行である。通路2を形成する孔が、プレート部材1を貫通して上側1aから下側1bまで延びている。通路2は、3つのボア2a,2b,2dと、骨アンカのヘッドを受け入れるように構成された、それらの間のシート部分2cとによって形成されている。
【0018】
さらに、アセンブリは、図3に見られるように、ヘッド7およびシャンク8を備える骨アンカ6を含んでもよい。この実施の形態において、骨アンカ6は、球状の外面部分を備えるヘッド7と、骨ねじ山9およびシャンク軸線Sを備えるシャンク8とを有する、骨ねじである。一般的に、ヘッドは、ドライバのための係合構造7aを有する。
【0019】
通路2の第1のボア2aは、プレート部材1の上側1aに向かって開放した第1の端部を有する。上側1aにおいて、第1のボアは、エッジ14を規定している。第1のボア2aは、エッジ14によって区切られた円形の断面と、ロッキングエレメント10と係合するための雌ねじ山5とを有する。ねじ山5は、ボア2aの軸方向全長に沿ってまたはボア2aの長さの一部に沿って延びていてもよい。さらに、第1のボア2aは、骨アンカ6のヘッド7の最大直径より大きな直径を有する。図1および図3に見られるように、第1のボア2aは、実質的にプレート部材1内へ延びており、その第2の端部において、プレート部材1の厚さの約半分において終わっており、第2の端部において、通路2内に環状の肩部3を形成している。図1および図2に見られるように、この環状の肩部3は第1の平面P1を規定している。第1のボア2aは、さらに、第1の平面P1の中心軸線でもあるボア軸線または中心軸線C1を有する。上側1aが下側1bに対して平行な場合、C1は、プレート部材1の上側1aおよび下側1bに対して垂直である。これは、ロッキングエレメントの挿入および締付けを容易にし、ねじ山の交差のリスクが最小限に減じられる。
【0020】
第2のボア2bは、円錐形であり、プレート部材1の下側1bに向かって開放しており、内面を形成している。下側1bにおいて、第2のボアは、円形または楕円形のエッジ15を規定している。第2のボア2bの直径は、シート部分2cの最小直径と少なくとも等しく、内径は、プレート部材の下側1bにおける開放した端部に向かって増大している。
【0021】
シート部分2cは、骨アンカ6のヘッド7を全周にわたって支持するように適応されている。シート部分2cは、第1のボア2aと第2のボア2bとの間に延びる中空の球セグメント状部分によって形成されており、第2のボア2bに向かって減少する内径を有している。以下ではシート中心軸線C3と呼ぶ、シートの対称中心軸線C3は、シート部分2cを通って延びている。シート部分2cのシート中心軸線C3は、第1のボア2aの中心軸線C1に対して角度αだけ傾斜させられている。この実施の形態では、角度αは約10°である。シート中心軸線C3は、球状のシート2cによって規定された球の中心点に対応する通路2における位置において、中心軸線C1と交差する。シート部分2cのテーパした設計によって、シート部分2cと第2のボア2bとの間に、内側へ突出する環状のエッジ4が形成されている。内側へ突出する環状のエッジ4は、通路2の最小直径を規定している。さらに、内側へ突出する環状のエッジ4によって、第2の平面P2が、シート中心軸線C3に対して垂直になるように規定されている。これによって、第2の平面P2は、第1の平面P1に対して傾斜させられており、平面P1と角度αで交差する。骨アンカ6のゼロ位置(0°位置)は、シャンク軸線Sがシート中心軸線C3に対して同軸であることによって規定される。
【0022】
シート部分2cは、プレート部材1の下側1bまで部分的に延びている。図1に見られるように、シート部分2cの中心軸線C3に関する一方の側において、シート部分2cの最も下側の部分は、プレート部材1の下側1bに位置していてもよいのに対し、反対側は、下側1bから所定の距離だけ離れている。しかしながら、シート部分2cの最も下側の部分も、下側1bからある程度の距離に配置されてもよい。シート部分2cの最も上側の部分は、第1の平面P1に位置することができるか、または第1のボア2aへ移行していることができる。
【0023】
加えて、通路2は、第3のボア2dを有する。第3のボア2dは、第1のボア2aとシート部分2cとの間に配置されており、第1のボア2aとシート部分2cとを接続している。図1に見られるように、第3のボア2dの直径は、ねじ4のヘッド7の最大直径と等しいか、またはそれよりも大きく、第1のボア2aの直径より小さくてもよい。ヘッド7は、挿入されるとき第3のボア2dによって案内されてもよい。
【0024】
シャンク軸線Sがシート中心軸線C3に対して成すことができる最大傾斜角度は、ヘッド7の最大外径に対するボア2aの直径と、ドライバのための係合構造7aのサイズおよび位置とによって規定されてもよい。加えて、第2のボア2bの幅は、最大傾斜角度を制限してもよい。シート部分における骨アンカの回動角度またはシート中心軸線C3を中心とする骨アンカの挿入角度は、角度βであり、その結果、2βの全運動範囲を生じる。
【0025】
シート中心軸線C3は、上述のように骨アンカ6のゼロ位置を規定しているので、図3の左側に示された骨アンカ6は、ゼロ位置において平面P1の中心軸線C1に対して角度αで傾斜させられている。これにより、ゼロ位置において、骨アンカ6のシャンク軸線Sは、第1のボア2aの中心軸線C1に関して好ましい側へ既に傾斜させられている。これは、この実施の形態では10°である。第1のボア2aのサイズに応じてかつ第2のボア2bの設計により、骨アンカ6を骨内へゼロ位置に関して好ましい側へβの角度で挿入することが可能である。その結果、骨アンカ6のシャンク軸線Sは、好ましい側へ最大角度で傾斜させられてもよく、この最大角度は、α+βの合計であり、平面P1の中心軸線C1に対して約30°であってもよい。運動円錐は、円形であり、ひいては中心軸線C3を中心として対称的であるので、好ましい側とは反対の側への傾斜角度は、骨アンカのゼロ位置からの角度αだけ減じられ、ひいては、合計でβ-αとなる。しかしながら、これは、不利ではない。なぜならば、好ましい側が、ねじの角度位置のために使用されることが意図されているからである。
【0026】
プレート1に対する骨アンカ6の位置を、上述のロッキングエレメント10によってロックまたは安定化することができる。図示された実施の形態では、ロッキングエレメント10は、実質的に円筒状であり、上側10aと、上側10aと反対側の下側10bと、それらの間の外面部分10cとを有する。ロッキングエレメント10の直径は、第1のボア2aの直径に対応する。組み立てられた状態では、下側10bは、骨アンカ6のヘッド7に面している。図3に見られるように、ヘッド7の少なくとも一部を受け入れるための第1の凹所11が、下側10bに設けられている。凹所11は、ヘッド7の球状の外面部分に対応する、球状の内面部分を有する。上側10aには、ドライバと係合するための少なくとも別の凹所12が設けられている。さらに、ロッキングエレメント10は、その外面部分10cにおいて雄ねじ山13を有する。雄ねじ山13は、プレート部材1の雌ねじ山5と螺合するように構成されている。ロッキングエレメント10の高さは、プレート部材1におけるねじ山付きボア2aの深さより小さい。ヘッド7がロッキングエレメント10によってロックされているとき、ロッキングエレメント10の上側10aはプレート部材1の上側1aと実質的に同一平面にあることが望ましい場合がある。
【0027】
プレート部材1は、第2の通路2’を有してもよい。第2の通路2’は、中心軸線C1’を有する第1のボア2a’と、第2のボア軸線C1’を有する第2のボア2bと、中心軸線C3’を有する、それらの間のシート部分2c’と、第1のボア2a’とシート部分2c’との間の第3のボア2d’とを含む。第1のボア2a’は、ねじ山を有してもよい。肩部3’は、プレート部材1内で第1のボア2a’と第3のボア2d’との間に形成されており、中心軸線C1’に対して直行する平面P1’を規定している。さらに、シート部分2c’は、第2の平面P2’を規定する、内側へ突出する環状のエッジ4’を形成している。前述の通路2とは異なり、軸線C1’およびC3’は、通路2’を通って同軸にかつプレート部材1の上側1aおよび下側1bに対して直交方向に延びている。さらに、平面P1’およびP2’は、互いに平行に延びている。さらに、骨アンカ6およびロッキングエレメント10が設けられていてもよく、ロッキングエレメント10は、上記で説明したように骨アンカをロックするためのものである。
【0028】
プレート部材1は、通路2および/または通路2’のタイプの通路を備える複数の孔を有してもよい。
【0029】
ここで、第1の実施の形態による骨プレートアセンブリの使用を説明する。骨アンカの必要な数およびタイプが決定されると、プレート部材1が骨折部位に位置決めされる。次いで、骨アンカが、第1のタイプの通路2および/または第2のタイプの通路2’に挿入され、所望の角度で骨部分に挿入される。球状のシートは、この角度での孔におけるねじのヘッドの配置を可能にする。第1の通路タイプ2に挿入された骨アンカ6は、第2の通路タイプ2’に挿入された骨アンカと比較して、好ましい側への10°以上の傾斜角度を形成することができる。
【0030】
骨アンカとプレート部材との間の接続をさらに安定させるために、選択的に、ロッキングエレメント10を使用することができる。ロッキングエレメント10は、第1のボア2a,2a’に挿入され、ヘッド7をロックするように締め付けられる。望まれるならば、完全ロッキングを提供する、摩擦ロッキングを提供する、またはロッキング部材が上述のようにねじの引き抜きのみを防止するところではロッキングを提供しないために、異なるロッキングエレメントを異なる骨アンカに対して適用することができる。ヘッド7をロックするために、ねじ山ではなく、別のロッキング構造を有するロッキングエレメントが使用されてもよいことに留意されたい。
【0031】
代替的に、非ロッキングプレートとして、ロッキングエレメントを用いることなく骨プレートを使用することができる。
【0032】
いわゆる非ロッキングプレートの第2の実施の形態において、第1のボア2a,2a’は、ねじ山を有することなく設けられてもよい。
【0033】
第3の実施の形態を、図4図6を参照して説明する。この実施の形態では、骨プレートアセンブリは、細長いプレート部材1’’を含み、細長いプレート部材1’’は、平坦な上側1aと、平坦な上側1aに対して平行な平坦な下側1bと、第1および第2の側壁1cおよび1dと、第1および第2の湾曲した側壁1eおよび1fとを備える。さらに、プレート部材1’’は、中心長手方向軸線Lと、第1のボア2aおよび2a’それぞれの各中心軸線C1およびC1’それぞれに対して平行な鉛直方向軸線Tとを有し、鉛直方向軸線Tは、細長いプレート部材1の上側1aおよび下側1bから直交方向に延びている。5つの孔I~Vが、長手方向軸線Lにおいて細長いプレート部材1’’を貫通して延びており、第1の4つの孔I~IV(左から右へ)は、第1の実施の形態による通路によって形成されている。これとは異なり、第5の孔Vは、1つの共通の中心軸線を備えるボアのみを有する。
【0034】
図5および図6に最も分かりやすく見られるように、シート部分2cの向きは、第1の4つのねじ6a~6dのゼロ位置が第5のねじ6fのゼロ位置とは異なるようになっている。第1の4つのねじのゼロ位置は、第5のねじのゼロ位置に対して所定の角度、例えば約10°だけ、それぞれ第5のねじのゼロ位置に対して4つの異なる方向に傾斜させられている。これは、特定の解剖学的条件において有効である場合がある。ゼロ位置の数および角度は、このような特定の条件に適応させられていてもよい。
【0035】
ここで、第4の実施の形態を、図7を参照して説明する。この実施の形態は、上方へ屈曲した細長いプレート部材1’’’を備える骨プレートアセンブリを含む。骨プレート部材は、上方へ屈曲した骨プレート部分100と、平坦な骨プレート部分101とを有する。2つの通路は、屈曲した骨プレート部分100を貫通して延びており、4つの通路は、平坦な骨プレート部分101を貫通して延びている。さらに、骨アンカの対応するゼロ位置および対応する運動円錐が示されている。この実施の形態では、屈曲した骨プレート部分100における第1および第2の孔は、第1または第2の実施の形態による構成を有し、骨プレート部材1’’’の傾斜方向における骨アンカの増大した挿入角度を可能にしている。
【0036】
ここで図8図12を参照すると、第5の実施の形態が示されている。説明するように、骨プレートの第5の実施の形態は、骨アンカ6が、ねじ通路202において、一方の好ましい方向へ通路の中心軸線C1に対して40°以下の角度で、かつ反対方向へ通路の中心軸線C1に対して20°以下の角度で延びることを可能にするように適応されており、通路の中心軸線C1に対して合計で60°の角度変位を提供している。第5の実施の形態の骨プレートアセンブリは、ロッキングタイプであるが、非ロッキングプレートとして使用することもできる。骨プレートアセンブリは、上側201aおよび下側201bを備えるプレート部材200を含み、上側201aおよび下側201bは実質的に互いに平行である。通路202を形成する孔が、プレート部材201を貫通して上側201aから下側201bまで延びている。通路202は、3つのボア202a,202b,202dと、骨アンカ6のヘッド7を収容および支持するように構成された、第1および第2のボア202a,202bの間のシート部分202cと、好ましい角度方向への骨アンカの増大された変位を可能にするように適応された第1、第2および第3の側部凹所230,232,234とによって形成されている。
【0037】
通路202の第1のボア202aは、プレート部材201の上側201aに向かって開放した第1の端部を有する。上側201aにおいて、第1のボア202aは第1のエッジ214を規定している。第1のエッジ214は、好ましくは、第1の部分250および第2の部分252によって形成されている。第1の部分250は、ボア軸線または中心軸線C1を中心に同心状に延びており、第1の曲率半径を有する。第2の部分252は、周縁部の残りに沿って、第1のボア202aの中心軸線C1からさらに遠くに延びている。図示された実施の形態では、第1のエッジ214の第2の部分252は、第1の半径より小さな第2の曲率半径を有し、第1のボア202aと同心状ではない。上側201aが下側201bに対して平行な場合、中心軸線C1は、プレート部材201の上側201aおよび下側201bに対して垂直である。第1のボア202aの第1の部分250は、ロッキングエレメント10(図12)と係合するための雌ねじ山205を有するのに対し、第1のボア202aの第2の部分252には雌ねじ山は設けられていない。ねじ山205は、第1のボア202aの軸方向全長に沿ってまたはボア202aの長さの一部にわたって延びていてもよい。第1のボア202aは、骨アンカ6のヘッド7の最大直径より大きな直径を有する(図10)。図8および図9に見られるように、第1のボア202aは、実質的にプレート部材201内へ延びており、第2の端部において、プレート部材201の厚さの約半分において終わっており、第2の端部において、通路202内に環状の肩部203を形成している。この環状の肩部203は、C1に対して垂直な第1の平面P1を規定している。これは、ロッキングエレメント10の挿入および締付けを容易にし、ねじ山の交差のリスクを最小限に減じる。
【0038】
第2のボア202bは、円錐形であり、プレート部材201の下側201bに向かって開放しており、下側201bにおいて第2のエッジ215を規定する内面を形成している。第2のエッジ215は、第1の部分260と、第2の部分262とを有する。第2のエッジ215の第1の部分260は、第2のボア202bの周縁部の一部に沿って延びており、中心軸線C1と同心状の第1の曲率半径を有する。第2のエッジ215の第2の部分262は、第1のボア202aの第2の部分252の延びとは反対の第2のボア202bの側において、(軸線C1に関して測定された)80°~120°の円弧にわたって延びている。第2のボア202bの直径は、シート部分202cの最小直径と少なくとも等しく、内径は、プレート部材の下側201bにおける開放した端部に向かって増大している。
【0039】
シート部分202cは、骨アンカ6のヘッド7を支持するように適応されている。シート部分202cは、第1のボア202aと第2のボア202bとの間に延びる中空の球セグメント状部分によって形成されており、第2のボア202bに向かって減少する内径を有している。シートの中心軸線C3は、シート部分202cを通って延びている。シート部分のシート中心軸線C3は、第1のボア202aの中心軸線C1に対して角度αだけ傾斜させられている。この実施の形態では、角度αは約10°であるが、その他の角度も可能である。シート中心軸線C3は、球状のシート202cによって規定された球の中心点に対応する通路202における位置において、中心軸線C1と交差する。シート部分202cのテーパした設計によって、シート部分202cと第2のボア202bとの間に、内側へ突出する環状のエッジ204が形成されている。内側へ突出する環状のエッジ204は、通路202の最小直径を規定している。さらに、内側へ突出する環状のエッジ204によって、第2の平面P2が、シート中心軸線C3がそれに対して垂直になるように規定されている。これによって、第2の平面P2は、第1の平面P1に対して傾斜させられており、平面P1と角度αで交差する。骨アンカ6のゼロ位置(0°位置)は、シャンク軸線Sがシート中心軸線C3に対して同軸であることによって規定される。
【0040】
シート部分202cは、プレート部材201の下側201bまで部分的に延びていてもよい。図9および図10に見られるように、シート部分202cの中心軸線C3に関する一方の側において、シート部分202cの最も下側の部分は、プレート部材201の下側201bに位置していてもよいのに対し、反対側は、下側201bから所定の距離だけ離れている。しかしながら、シート部分202cの最も下側の部分も、下側201bからある程度の距離に配置されてもよい。シート部分202cの最も上側の部分は、第1の平面P1に位置することができるか、または第1のボア202aへ移行していることができる。
【0041】
加えて、通路202は、第3のボア202dを有する。第3のボア202dは、第1のボア202aとシート部分202cとの間に配置されており、第1のボア202aとシート部分202cとを接続している。図11に見られるように、第3のボア202dの直径は、骨アンカ6のヘッド7の最大直径と等しいまたはそれよりも大きく、第1のボア202aの直径より小さくてもよい。ヘッド7は、挿入されるとき第3のボア202dによって案内されてもよい。
【0042】
第1の側部凹所230は、第1のエッジ214の第2の部分252と、プレート201の上側201aとの交差部に形成されている。第1の側部凹所230の上部は、中心軸線C1から離れるように、外方へ傾斜している。
【0043】
第2の側部凹所232は、下側201bにおいて、第2のエッジ215の第2の部分262によって区切られている。第2の側部凹所232は、第2のボア202b、シート部分202c、第3のボア202dおよび肩部203を通って延びている。第2の側部凹所232は、中心軸線C1に対して最大の好ましい角度で骨アンカ6のシャフト8を受け入れるように十分な大きさの、軸線C4に対して垂直に延びる半径によって規定されている。図示された実施の形態において、最大の好ましい角度は、中心軸線C1に対して40°である。プレート201および通路202は、その他の最大の好ましい角度のために適応させることができる。
【0044】
第3の側部凹所234は、シート部分202c、第3のボア202dおよび肩部203の一部を、全て、通路202の、第1の側部凹所230と同じ側かつ第2の側部凹所232とは反対側において通って延びている。上記のことから、第1および第3の側部凹所230,234は、骨アンカが通路202を通って挿入されるときに骨アンカ6のシャフト8のための隙間、および骨アンカが最大の角度に向けられるときにドライバが骨アンカのヘッド7における係合構造7aと係合させられるための隙間を提供し、第2の側部凹所232は、傾斜させられたシャフト8のための隙間を提供する。
【0045】
上記のことを考慮して、第1のエッジ214の少なくとも大部分は、第1の中心軸線C1に中心合わせされた第1の半径を有し、第1のエッジの一部は、中心軸線C1から第1の方向へ延びる第1の凹所230を規定しており、第2のエッジ215の少なくとも大部分は、第2の中心軸線C3に中心合わせされた第2の半径を有し、第2のエッジ215の一部は、少なくとも部分的に、第1の方向とは反対の第2の方向に中心軸線C1から延びる第2の凹所232を規定していると、と要約することができる。
【0046】
シャンク軸線Sがシート中心軸線C3に対して成すことができる最大傾斜角度は、骨アンカ6のヘッド7の最大外径に対するボア202aの幅と、ドライバのための係合構造7aのサイズおよび位置とによって規定されてもよい。幅は、第1の方向で測定される。シャンク軸線Sが成すことができる最大傾斜角度は、第1の方向に対して平行でかつ第1の方向と反対の第2の方向で測定された第2のボア202bの幅によっても決定される。シート部分における骨アンカの回動角度またはシート中心軸線C3を中心とする骨アンカの挿入角度は、角度βであるのに対し、第1、第2および第3の凹所230,232,234によって提供される角度φは、中心軸線C1に対して傾斜させられた角度βと一致した、好ましい側に向かう付加的な運動範囲を提供し、その結果、2β+φの合計最大角運動を生じる。
【0047】
シート中心軸線C3は、上述のように骨アンカ6のゼロ位置を規定しているので、図11に示された骨アンカ6は、ゼロ位置において平面P1の中心軸線C1に対して角度αによって規定された角度で傾斜させられている。これにより、ゼロ位置において、骨アンカのシャンク軸線Sは、第1のボア202aの中心軸線C1に関して好ましい側へ既に傾斜させられており、これは、この実施の形態では10°である。第1のボア202aのサイズに応じてかつ第2のボア202bの設計によりかつ第1、第2および第3の側部凹所230,232,234を考慮して、骨アンカ6を骨プレート内へゼロ位置に関して好ましい側へβ+φの角度で挿入することが可能である(または中心軸線C1に対してβ+α+φ)。その結果、骨アンカ6のシャンク軸線Sは、好ましい側へ最大角度で傾斜させられてもよく、この最大角度は、β+α+φの合計であり、平面P1の中心軸線C1に対して約40°であってもよい。この実施の形態における運動円錐は、非円形かつ中心軸線C3に関して非対称であり、中心軸線C1に対して好ましい方向へさらに延びている。好ましい側とは反対側への傾斜角度は、骨アンカのゼロ位置から始まる角度αだけ減じられ、ひいては、合計でβ-αとなる。しかしながら、これは、不利ではない。なぜならば、好ましい側が、ねじの角度位置のために使用されることが意図されているからである。
【0048】
図12を参照すると、プレート201に対する骨ねじ6の位置を、上述のロッキングエレメント10によってロックまたは安定化することができる。
【0049】
ここで図13図15を参照すると、実質的に第5の実施の形態と同じ第6の実施の形態が示されている(同じ部材は、同じ符号に100を加算したもので示されている)。第6の実施の形態は、第2の側部凹所332の構造において第5の実施の形態と異なる。第2の側部凹所332は、下側301bにおいて、第2のエッジ315の第2の部分362によって区切られている。第2の側部凹所332は、第2のボア302b、シート302d、第3のボア302cおよび肩部303の部分を通って鉛直方向に延びている。第2の側部凹所332は、中心軸線C1からずらされかつ中心軸線C1に対して平行な鉛直方向軸線C5に対して垂直に延びる半径r1によって規定されている。半径r1は、好ましくは、第1のボア302a、第2のボア302b、第3のボア302cおよびシート302dのそれぞれの半径より小さい。しかしながら、半径r1は、第5の実施の形態に関して説明したのと同じ、中心軸線C1に対する最大の好ましい角度で、骨アンカ6のシャフト8を受け入れるのに十分に大きい凹所332を提供する。第2の側部凹所332は、必要な隙間を提供するために好ましくは半径r1によって規定されていると説明されるが、凹所は、一定でない半径を備えるカーブまたは屈曲したチャネルを含む別の形状によって形成することができることがさらに認められる。
【0050】
ここで図16を参照すると、ねじ穴202’の第7の実施の形態が示されている。第7の実施の形態は、第5の実施の形態と同じ凹所230’,232’および234’を有するが、同軸に延びる通路の中心軸線C1’およびシートの中心軸線C3’を有する。凹所230’,232’,234’により、骨アンカは、他の方向よりも、好ましい方向に向かってより大きな角度だけ傾斜させられることができる。骨アンカのゼロ位置が軸線C1’およびC3’と同軸であることにより、好ましい方向への最大角度はゼロ位置(C1’)に関してβ+φであるのに対し、好ましい方向とは反対などの、他の方向への最大角度は、βでしかない。
【0051】
ここで図17を参照すると、ねじ穴302’の第8の実施の形態が示されている。第8の実施の形態は、第6の実施の形態と同じ凹所330’,332’および334’を有するが、同軸に延びる通路の中心軸線C1’およびシートの中心軸線C3’を有する。凹所330’,332’,334’により、骨アンカは、他の方向よりも、好ましい方向に向かってより大きな角度だけ傾斜させられることができる。骨アンカのゼロ位置が軸線C1’およびC3’と同軸であることにより、好ましい方向への最大角度はゼロ位置(C1’)に関してβ+φであるのに対し、好ましい方向とは反対などの、他の方向への最大角度は、βでしかない。
【0052】
別の実施の形態が可能である。例えば、第1のボア2aは、最小直径がねじヘッドの最大直径と等しい、下側に向かってテーパした円錐形であってもよい。さらに別の実施の形態では、第2のボア2bは、角度βを制限するようなサイズを有する円筒状であってもよい。特定の実施の形態では、シャンク軸線Sが、第1のボア2aの中心軸線C1に対して角度αのみを成すことができるように、βがゼロであってもよい。
【0053】
さらに、シートおよび骨アンカのヘッドがボール・ソケット継手を形成するように、シートは、円錐形またはその他の形状であってもよい。
【0054】
平面P1は、上側1aおよび/または下側1bに対して傾斜させられていてもよい。これは、上側1aおよび下側1bが実質的に平行でないまたは不規則な構造を有するようなケースであってもよい。
【0055】
さらに、骨プレートは、それに加えてまたはそれに代えて、インサートを受け入れるように構成された代替的な孔を有してもよく、インサートは、上述のように屈曲したシート部分2cを有する。
【0056】
様々な孔の数、設計(例えば、向きおよび拡大された傾斜角度の範囲に関して)および配置を、解剖学的状況に従って変更することができることが上記のことから明らかであるべきである。例えば、孔は、中心長手方向軸線Lからずれていてもよい。骨プレートの形状は、細長い、矩形またはその他の形状を有するかつ/または湾曲していてもよく、様々なサイズを有してもよい。さらに、特定用途に必要な特定のプレート部材を提供するために、様々な実施の形態を互いに組み合わせることができる。
【0057】
ねじ山付きシャンクを備える骨ねじの代わりに、突起を備えるまたは突起を備えない、例えば骨くぎなどの、骨に固定するためのシャンクを有するあらゆるその他の骨アンカを使用することができる。シャンクは、骨セメントまたはその他の物質の導入を可能にするために、カニューレが挿入されていてもよいかつ壁部に開口を有してもよい。
【0058】
骨プレートアセンブリの要素は、生体適合性金属、例えばステンレス鋼またはチタン、またはNi-Ti合金、例えばニチノールなどの生体適合性合金などの、生体適合性材料、または生体適合性プラスチック材料、例えばメディカルグレードPEEK、またはそれらの組み合わせ、から形成されている。例えば、プレート部材および骨アンカを、異なる材料から形成することができる。
【0059】
骨プレート部材は、典型的な実施の形態では、骨アンカと共に使用するための骨プレートとして示されているが、プレート部材は、その他の固定アセンブリのために適応させられてもよいと認識される。例えば、プレート部材は、人工関節の構成部品であってもよい。別の例として、プレート部材は、人工肩関節のベースプレート部品であってもよい。より具体的な例として、プレート部材は、リバース型人工肩関節置換術のための関節窩ベースプレートであってもよい。つまり、プレート部材は、骨折固定プレートおよび人工器官ベースプレートに制限されない。プレート部材は、体内への外科的埋込のための整形外科用インプラントまたはインプラントシステムのプレート状部材であってもよい。
【0060】
さらに、プレート部材の一次的使用は、整形外科手術または外傷外科手術のための人体埋込であることが予定されている。しかしながら、プレート部材は、獣医学的使用のためにサイズが容易に適応させられてもよく、あらゆる動物、特に哺乳類において使用されてもよい。
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