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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】乳化型皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230620BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230620BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/891
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019096830
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020189810
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡本 学
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178828(JP,A)
【文献】特開2018-104309(JP,A)
【文献】特開2013-023456(JP,A)
【文献】特開2016-023150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eおよび成分Fを含有する、乳化型皮膚外用剤。
成分A:凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤
成分B:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
成分C:融点が40℃以上である脂肪酸エステル油
成分D:融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤
成分E:アルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分F:保湿剤
【請求項2】
下記成分Gをさらに含有する、請求項1に記載の乳化型皮膚外用剤。
成分G:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、結晶セルロース、およびセルロースからなる群より選択される1種類以上の粉体(ここで、上記結晶セルロースおよび上記セルロースとは、「化粧品の成分表示名称リスト」に従って定義される)
【請求項3】
上記乳化型皮膚外用剤を100質量%とすると、
上記成分Aの含有量は、1.0~20.0質量%であり、
上記成分Bの含有量は、0.5~10.0質量%であり、
上記成分Cの含有量は、0.1~5.0質量%であり、
上記成分Dの含有量は、0.1~3.0質量%であり、
上記成分Eの含有量は、0.1~1.0質量%であり、
上記成分Fの含有量は、の含有量は、1.0~25.0質量%である、
請求項1または2に記載の乳化型皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化型皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルを配合した化粧料が知られている。例えば、特許文献1は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルを主成分とする、水および/または水溶性有効成分の浸透促進剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、化粧料にとって重要な他の効果については検討していなかった。それゆえ、剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、仕上がり後のベタつき抑制などの効果を同時に成り立たせる点において、改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明の一態様は、剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、および仕上がり後のベタつき抑制を同時に成り立たせた乳化型皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の成分を含有する乳化型皮膚外用剤によれば、上記の課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明の一態様に係る乳化型皮膚外用剤は、以下の発明を包含する。
【0007】
(1)下記成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eおよび成分Fを含有する、乳化型皮膚外用剤。
成分A:凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤
成分B:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
成分C:融点が40℃以上である脂肪酸エステル油
成分D:融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤
成分E:アルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分F:保湿剤。
【0008】
(2)下記成分Gをさらに含有する、請求項1に記載の乳化型皮膚外用剤。
成分G:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、結晶セルロース、およびセルロースからなる群より選択される1種類以上の粉体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、および仕上がり後のベタつき抑制を同時に成り立たせた乳化型皮膚外用剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0011】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、乳化型皮膚外用剤全体の質量を100質量%とした値である。
【0012】
〔従来技術の課題と本発明の技術思想〕
特許文献1に開示されている浸透促進剤は、「水および/または水溶性有効成分の皮膚への浸透を促進する」という効果を奏する。しかし、上記浸透促進剤は、化粧料にとって重要な他の効果(剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、仕上がり後のベタつき抑制など)を達成する方法は、開示されていなかった。
【0013】
本発明者らは、下記成分A~Fを配合した乳化型皮膚外用剤によれば、剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、および仕上がり後のベタつき抑制を達成できることを見出した。
成分A:凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤
成分B:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
成分C:融点が40℃以上である脂肪酸エステル油
成分D:融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤
成分E:アルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分F:保湿剤。
【0014】
以下、それぞれの効果について、どの成分が如何に寄与していると考えられるかを説明する。
【0015】
[剤の伸び・なじみ]
「剤の伸び」とは、皮膚外用剤を皮膚に塗布したときの抵抗感を意味する。この抵抗感が小さければ、「剤の伸びが良い」とされる。「剤のなじみ」とは、皮膚外用剤を塗布した皮膚の感触が、定常状態に達することを意味する。定常状態に達するまでの時間が短ければ、「剤のなじみが良い」とされる。
【0016】
上記成分のうち、成分Aは、剤の伸びの向上に寄与している。これは、油剤により、剤の塗布時の抵抗が抑制されるためである。また、成分Bおよび成分Eは、剤のなじみに寄与している。これは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルにより、水溶性成分の皮膚への吸収が促進されるためである。また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーにより剤を乳化させているため、塗布時に剤の構造が速やかに崩れ、各成分が皮膚上に薄く伸び広がるためでもある。
【0017】
[保湿感]
「保湿感」とは、皮膚外用剤を皮膚に塗布したときに、塗布した箇所がしっとりと感じられることを意味する。
【0018】
上記成分のうち、成分Bおよび成分Fが、保湿感に寄与している。これは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルによって、保湿剤の皮膚への浸透性がさらに向上されているためである。
【0019】
[乾き際のベタつき抑制]
「乾き際のベタつき」とは、皮膚外用剤を皮膚に塗布した後、揮発成分がある程度揮発した時点におけるベタつきを意味する。この時点においては、皮膚に残った剤の粘性が高くなる傾向にある。それゆえ、「乾き際」は、最もベタつきを感じやすい時点ということができる。
【0020】
乾き際のベタつき抑制には、成分A、成分Bおよび成分Cが寄与している。分岐構造を有する油剤は肌なじみに優れ、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルは水溶性成分(保湿成分)のなじみを良くする。つまり、成分Aおよび成分Bにより、油剤および保湿成分のなじみがよくなり、乾き際における剤の粘性が低下する。また、融点が40℃以上である脂肪酸エステル油は、室温で液体状およびペースト状の脂肪酸エステル油と比べて粘着性が低く、皮膚上に塗布後は固体状となることから、乾き際のベタつきを抑制する。
【0021】
[仕上がり後のベタつき抑制]
「仕上がり後のベタつき」とは、皮膚外用剤を皮膚に塗布した後、揮発成分が完全に揮発した時点におけるベタつきを意味する。このように、「乾き際のベタつき」と「仕上がり後のベタつき」とでは、揮発成分の残存量(剤を塗布してからの経過時間)に違いがある。
【0022】
仕上がり後のベタつき抑制には、成分Cおよび成分Dが寄与している。成分Cおよび成分Dは、融点が40℃以上である。それゆえ、上記成分は、皮膚上に塗布後は固体状となり、肌触りを良くし、仕上がり後のベタつきを抑制する。
【0023】
〔各成分〕
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤は、成分A:凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤;成分B:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル;成分C:融点が40℃以上である脂肪酸エステル油;成分D:融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤;成分E:アルキル変性カルボキシビニルポリマー;および、成分F:保湿剤を含有する。
【0024】
上記乳化型皮膚外用剤は、成分G:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、結晶セルロース、およびセルロースからなる群より選択される粉体を含有してもよい。
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤に含まれる、各成分について順に説明する。
【0026】
[成分A:凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤]
成分Aは、凝固点が15℃以下であり、分岐構造を有する油剤である。成分Aは凝固点が15℃以下であるため、室温において液体である。また、成分Aのような分岐構造を有する油剤は、肌触りが良いことが知られている。成分Aは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0027】
成分Aとしては、分岐炭化水素、分岐脂肪酸および分岐脂肪酸エステル油などが挙げられる。上記分岐炭化水素の具体例としては、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリデセン、スクワランなどが挙げられる。上記分岐脂肪酸の具体例としては、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。上記分岐脂肪酸エステル油の具体例としては、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどが挙げられる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Aの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、1.0~20.0質量%であることが好ましく、5.0~10.0質量%であることがより好ましい。成分Aの含有量が1.0質量%以上であるならば、塗布時における剤の伸びが良好となる。成分Aの含有量が20.0質量%以下であるならば、塗布時における剤のなじみが良好となる。
【0029】
[成分B:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル]
成分Bは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルである。成分Bは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0030】
成分Bは、オキシエチレン基の平均付加モル数が、28~20であることが好ましく、25~23であることがより好ましく、24であることがさらに好ましい。また、成分Bは、オキシプロピレン基の平均付加モル数が、28~20であることが好ましく、25~23であることがより好ましく、24であることがさらに好ましい。成分Bにおいて、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの付加する順序は、特に限定されない。また、成分Bにおいて、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合も、特に限定されない。さらに、成分Bにおいて、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とは、ブロック状に付加されていてもよいし、ランダム状に付加されていてもよい。
【0031】
成分Bは、公知の方法によって製造することができる。具体例を挙げると、アルカリ触媒下のグリセリンに対して、130~160℃にて、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合させる方法がある。
【0032】
成分Bとしては、市販品を使用することもできる。上記市販品としては、例えば、「NIKKOL SG-G2424」(日光ケミカルズ製)、「ユニルーブ50TG-32」(日油社製)、「アデカカーポールGH-200」(ADEKA社製)、「ニューポールGEP-2800」(三洋化成工業社製)が挙げられる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Bの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.5~10.0質量%であることが好ましく、1.0~5.0質量%であることがより好ましい。成分Bの含有量が0.5質量%以上であるならば、塗布時における剤のなじみが良好となる。成分Bの含有量が10.0質量%以下であるならば、仕上がり後のベタつきを充分に抑制できる。
【0034】
[成分C:融点が40℃以上である脂肪酸エステル油]
成分Cは、融点が40℃以上である脂肪酸エステル油である。成分Cは融点が40℃以上であるため、皮膚に塗布した後でも固体状を保ち、剤を塗布した箇所の肌触りを良くする。成分Cは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0035】
成分Cの具体例としては、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸コレステリルなどが挙げられる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Cの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.5~2.5質量%であることがより好ましい。成分Cの含有量が0.1質量%以上であるならば、仕上がり後のベタつきを充分に抑制できる。成分Cの含有量が2.5質量%以下であるならば、塗布時における剤のなじみが良好となる。
【0037】
[成分D:融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤]
成分Dは、融点が40℃以上であるノニオン性界面活性剤である。成分Dは融点が40℃以上であるため、皮膚に塗布した後でも固体状を保ち、剤を塗布した箇所の肌触りを良くする。また、成分Dは、成分Eによる乳化を補助する乳化助剤としての機能も有している。成分Dは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0038】
成分Dの具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなど);ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルなど);ソルビタン脂肪酸エステル(モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタンなど);グリセリン脂肪酸エステル(ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリルなど);ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなど);ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ジグリセリル、ベヘン酸ポリグリセリルなど);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコールなど);ポリオキシエチレンヒマシ油;硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレン還元ラノリンなどが挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Dの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~3.0質量%であることが好ましく、0.5~1.5質量%であることがより好ましい。成分Dの含有量が0.1質量%以上であるならば、乳化助剤としての充分な作用が得られる。成分Dの含有量が3.0質量%以下であるならば、仕上がり後のベタつきを充分に抑制できる。
【0040】
[成分E:アルキル変性カルボキシビニルポリマー]
成分Eは、アルキル変性カルボキシビニルポリマーである。アルキル変性カルボキシビニルポリマーとは、主として、アクリル酸とメタクリル酸アルキルの共重合体を指す。成分Eは、剤を乳化させる機能を有している。成分Eは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0041】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、市販品を容易に入手することができる。上記市販品としては、「PEMULEN TR-1」、「PEMULEN TR-2」、「カーボポールETD 2020」、「カーボポールULTREZ 20」(いずれも日本ルーブリゾール株式会社)などが挙げられる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Eの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~1.0質量%であることが好ましく、0.3~0.6質量%であることがより好ましい。成分Eの含有量が0.1質量%以上であるならば、安定なクリーム状の剤が形成される。成分Eの含有量が1.0質量%以下であるならば、塗布時における剤のなじみが良好となる。
【0043】
[成分F:保湿剤]
成分Fは、保湿剤である。成分Fは、剤の塗布後における保湿感を与える機能を有している。成分Fは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0044】
成分Fとしては、多価アルコールおよび糖アルコールが挙げられる。上記多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、グリセリン(1,2,3-プロパントリオール)、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドなどが挙げられる。上記糖アルコールの具体例としては、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトールなどが挙げられる。
【0045】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Fの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、1.0~25.0質量%であることが好ましく、3.0~15.0質量%であることがより好ましい。成分Fの含有量が上記の範囲であるならば、充分な保湿感を与えることができる。
【0046】
[成分G:粉体(任意成分)]
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤は、任意成分として、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、結晶セルロース、およびセルロースからなる群より選択される1種類以上の粉体を含有してもよい。成分Gは、保湿感を向上させ、さっぱりとした仕上がりを与える機能を有している。また、成分Gは、仕上がり後のベタつきをさらに抑制し、ベタつき抑制効果を長続きさせる機能も有している。
【0047】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、成分Gの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.0質量%であることがより好ましい。成分Gの含有量が0.1質量%以上であるならば、仕上がり後のベタつきを充分に抑制できる。成分Gの含有量が2.0質量%以下であるならば、充分な保湿感を与えられる。
【0048】
成分Gの重量基準の平均粒子径(D50)は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。平均粒子径が100μm以下ならば、剤を塗布した際の白浮きを抑制することができる。
【0049】
[その他の任意成分]
本発明の乳化化粧料組成物は、成分G以外の任意成分をさらに含んでいてもよい。このようなその他の任意成分の例としては、水、ポリエチレングリコール、高級アルコール、成分Aおよび成分C以外の油剤、成分D以外の界面活性剤、成分E以外の水溶性高分子が挙げられる。
【0050】
その他の任意成分として含まれる水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、水の含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、60.0~95.0質量%であることが好ましく、70.0~90.0質量%であることがより好ましい。
【0051】
その他の任意成分として含まれるポリエチレングリコールは、特に限定されない。上記ポリエチレングリコールは、25℃において固形状であることが好ましい。異なる性質のポリエチレングリコールを、2種類以上用いてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、ポリエチレングリコールの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~1.0質量%であることが好ましい。ポリエチレングリコールの含有量が上記の範囲ならば、剤のなじみを損なうことなく、乾き際のベタつきをより充分に抑制することができる。
【0053】
その他の任意成分として含まれる高級アルコールは、特に限定されない。上記高級アルコールの炭素数は、好ましくは12~22であり、より好ましくは16~22である。高級アルコールは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール、べへニルアルコールなどが挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤において、高級アルコールの含有量は、上記乳化型皮膚外用剤100質量%中、0.1~1.0質量%であることが好ましい。高級アルコールの含有量が上記の範囲ならば、剤の粘度が適切に保たれる。ただし、剤の伸びおよびなじみの観点からは、高級アルコールを含有させないことが好ましい。
【0055】
上述した以外のさらなる任意成分の例としては、低級アルコール;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤(メチルパラベンなど);香料;着色剤;キレート剤;清涼剤;増粘剤;ビタミン類;中和剤;アミノ酸;pH調整剤;美白剤;抗炎症剤;消臭剤;動植物抽出物;金属封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩など)などの添加剤が挙げられる。これらの任意成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。また、これらの任意成分の含有量は、目的に応じて適宜決定することができる。
【0056】
〔剤型、製造方法および用途〕
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤の剤型としては、例えば、クリーム、乳液などが挙げられる。上述した中では、クリームが好ましい。
【0057】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤は、常法に則って製造することができる。一例を挙げると、上記各成分を混合して、公知の方法(ホモミキサーを用いた転相乳化法など)により乳化させる方法が挙げられる。
【0058】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤の用途は、特に限定されないが、皮膚化粧料が好ましく、より具体的には、例えば、スキンケア化粧料である(保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア用化粧料、アンチエージング化粧料(しわ抑制、たるみ抑制などを目的とする化粧料)など)。上記乳化型皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨などでありうる。
【0059】
本発明の一実施形態に係る乳化型皮膚外用剤を適用する部位は、特に限定されない。一例として、上記乳化型皮膚外用剤の適用部位は、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などである。
【0060】
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0061】
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例における配合量および含有量は、純分に換算した量(質量%)である。
【0063】
〔評価項目〕
(剤の伸び・なじみ)
実施例および比較例で得られた各乳化型皮膚外用剤を、約0.5g手の甲に塗布した。塗布時の「伸び・なじみ」について官能評価を行い、下記基準に従って判定した。なお、評価は25℃の条件下で、3名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
<伸び・なじみの判定基準>
◎(優れる):伸び・なじみが速い。
○(良好):充分に使用可能な伸び・なじみの速さである。
×(不良):伸び・なじみが遅く、使用上不充分である。
【0064】
(保湿感)
実施例および比較例で得られた各乳化型皮膚外用剤を、約0.5g手の甲に塗布した。「伸び・なじみ」評価から3分後に、塗布部分の「保湿感」について官能評価を行い、下記基準に従って判定した。なお、評価は25℃の条件下で、3名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
<保湿感の判定基準>
◎(優れる):しっとりとした保湿感を、○よりも強く感じることができる。
○(良好):しっとりとした保湿感を感じることができる。
×(不良):保湿感を僅かに感じるが、保湿化粧料としては不充分である。
【0065】
(乾き際のベタつき)
実施例および比較例で得られた各乳化型皮膚外用剤を、約0.5g手の甲に塗布した。「伸び・なじみ」評価の直後に、塗布部分の「ベタつき」について官能評価を行い、下記基準に従って判定した。なお、評価は25℃の条件下で、3名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
<乾き際のベタつきのなさ判定基準>
◎(優れる):ベタつきを感じない。
○(良好):ベタつきをやや感じるが、保湿化粧料として充分良好な使用感である。
×(不良):明らかにベタつきを感じ、使用感が悪い。
【0066】
(仕上がり後のベタつき)
実施例および比較例で得られた各乳化型皮膚外用剤を約0.5g手の甲に塗布した。「伸び・なじみ」評価から3分後に、塗布部分の「べたつき」について官能評価を行い、下記基準に従って判定した。なお、評価は25℃の条件下で、3名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
<仕上がり後のベタつきのなさの判定基準>
◎(優れる):ベタつきを感じない。
○(良好):ベタつきをやや感じるが、保湿化粧料として充分良好な使用感である。
×(不良):明らかにベタつきを感じ、使用感が悪い。
【0067】
(外観)
実施例および比較例で得られた各乳化型皮膚外用剤の、表面および流動性を目視で確認した。
<外観の判定基準>
○ :適度な粘度を有したクリーム状。
×1:表面に油滴が確認される。
×2:液状であり、垂れ落ちる。
【0068】
〔実施例1~5、比較例1~5〕
表1の組成に従い、常法に則って、実施例1~5、比較例1~5に係る乳化型皮膚外用剤を調製した。
【0069】
表1中、各成分の詳細は以下の通りである。
・トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル:花王株式会社製、商品名「エキセパールTGO」
・水添ポリデセン:日清オイリオ株式会社製、商品名「ノムコートHP-30VE」
・スクワラン:日光ケミカルズ株式会社製、商品名「NIKKOL シュガースクワラン」
・PPG-24グリセレス-24:日光ケミカルズ株式会社製、商品名「NIKKOL SG-G2424」
・ステアリン酸ステアリル:花王株式会社製、商品名「エキセパールSS」
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール:日光ケミカルズ株式会社製、商品名「NIKKOL MYS-25V」
・モノステアリン酸ソルビタン:日本サーファクタント工業株式会社製、商品名「SS-10V」
・アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体A:日本ルーブリゾール株式会社製、商品名「PEMULEN TR-1」
・アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体B:日本ルーブリゾール株式会社製、商品名「PEMULEN TR-2」
・グリセリン:阪本薬品工業株式会社製、商品名「化粧用濃グリセリン」
・(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー:東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「DOWSIL BY29-129 (DOW CORNING TORAY BY 29-129)」
・結晶セルロース:旭化成株式会社製、商品名「セオラス PH-F20JP」
・セルロース:J.RETTENMAIER & SOHNE製、商品名「VITACEL CS 300 FC」
・乳化剤:日光ケミカルズ株式会社製、商品名「NIKKOL ニコムルス LH」
※具体的な成分は以下の通り:グリセリン、水添レシチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、スクワラン、ステアロイルメチルタウリンNa。
【0070】
【表1】
【0071】
〔結果〕
実施例1~5の結果に示されているように、成分A~成分Fの全てを含有する乳化型皮膚外用剤は、剤の伸び・なじみ、保湿感、乾き際のベタつき抑制、および仕上がり後のベタつき抑制のいずれもが良好な評価であった。一方、成分A~成分Fうちいずれかの成分を欠く場合は、評価項目のうち少なくとも1つが不良であった。
【0072】
成分Eの代わりに乳化剤を含有させた比較例4、5は、特許文献1に記載の実施例5をモデルにした比較例である。比較例4、5に係る乳化型皮膚外用剤は、成分Eを含有しないため、保湿感の向上効果が得られていないことがわかる。
【0073】
〔処方例〕
<保湿クリーム1>
トリオクタノイン 5.00
PPG-24グリセレス-24 3.00
グリセリン 5.00
水添ポリデセン 2.00
ジメチコン 3.00
ステアリン酸PEG-25 1.00
ステアリン酸ステアリル 1.00
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.50
ステアリン酸 0.50
ステアリン酸ソルビタン 1.00
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.50
水酸化K 0.22
ホホバ種子油 0.50
EDTA-2Na 0.10
ヒアルロン酸Na 0.05
加水分解ヒアルロン酸 0.05
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.05
フェノキシエタノール 0.50
香料 0.10
エタノール 3.00
水 残余(100%に調整)。
【0074】
<保湿クリーム2>
トリオクタノイン 3.00
スクワラン 2.00
PPG-24グリセレス-24 3.00
グリセリン 3.00
1,3-ブチレングリコール 1.00
ジメチコン 3.00
ステアリン酸PEG-25 0.50
ステアリン酸ステアリル 1.00
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.20
カルボキシビニルポリマー 0.10
ステアリン酸ソルビタン 0.50
結晶セルロース 0.10
水酸化K 0.10
ホホバ種子油 0.50
EDTA-2Na 0.10
加水分解コラーゲン 0.10
加水分解ヒアルロン酸 0.05
PCA-Na 0.10
フェノキシエタノール 0.50
香料 0.10
エタノール 3.00
水 残余(100%に調整)。
【0075】
<保湿クリーム3>
トリオクタノイン 2.00
スクワラン 1.00
PPG-24グリセレス-24 2.00
グリセリン 3.00
ジプロピレングリコール 2.00
ジメチコン 3.00
ステアリン酸PEG-25 0.50
ステアリン酸ステアリル 1.00
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.50
ステアリン酸ソルビタン 0.50
セルロース 0.10
シリカ 0.10
水酸化K 0.22
EDTA-2Na 0.10
アロエエキス(2) 0.10
加水分解シルク 0.05
ユビキノン 0.01
グルチルリチン酸ジカリウム 0.10
フェノキシエタノール 0.50
香料 0.10
エタノール 3.00
水 残余(100%に調整)。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、乳化型皮膚外用剤に利用することができる。