(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】カラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230620BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230620BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20230620BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230620BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20230620BHJP
C08F 297/02 20060101ALI20230620BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230620BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20230620BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/032
C09B67/20 L
C09B67/20 F
C09B57/00 Z
C08F297/02
C08L101/00
C08L53/00
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2019100753
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】山田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】関 伸章
(72)【発明者】
【氏名】荒明 遼一
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-241247(JP,A)
【文献】特開2005-316388(JP,A)
【文献】特開2003-064293(JP,A)
【文献】特開2018-090788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び有機溶剤を含有するカラーフィルター用顔料分散組成物であって、
該顔料分散剤がアミノ基及び/又はピリジン環を含有する、リビング重合で合成されたアクリル系ブロック重合体を含有し、かつ
該アルカリ可溶性樹脂が、リビング重合で合成されたブロック重合体
であって、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体からなるブロックを含むブロック重合体を含有する、カラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項2】
光重合性化合物を含有する請求項1に記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項3】
着色顔料に対して、ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂を1~200質量%含有する請求項1又は2に記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項4】
アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤に含まれるアミンが3級アミンまたは4級アミンである、請求項1~3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項5】
ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂が、ブロック重合体の分子中において、アルカリ可溶性の部位が局在化されている請求項1~4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項6】
アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤が、ブロック重合体の分子中において、アミン部位が局在化されている請求項1~5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項7】
ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂の酸価が5~250mgKOH/gである請求項1~6のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項8】
アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤のアミン価が40~200mgKOH/gである請求項1~7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物を含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年高色再現用途のカラーフィルターの開発が高度化しており、それに伴いカラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に求められる要求性能も厳しくなっている。最終製品であるカラーフィルターの品質もさることながら、レジスト中の顔料分散組成物を多く含むことになり、工程面の要求も難しくなっている。
特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)への再溶解性の向上と、アルカリ現像液への溶解性の向上との相反する性能を両立させることが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決する課題は、カラーフィルター用顔料分散組成物を基にしてカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を調製したときに、そのカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の低粘度化、粘度安定性、PGMEA再溶解性、アルカリ現像液溶解性(水酸化カリウム水溶液溶解性、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液溶解性)及び耐熱性の向上、さらに現像残渣がないことを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明ではカラーフィルター用顔料分散組成物が含有する顔料分散剤、及びアルカリ可溶性樹脂を検討した。
そのため、本発明は、以下の組成物からなる。
1.着色顔料、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び有機溶剤を含有するカラーフィルター用顔料分散組成物であって、顔料分散剤がアミノ基及び/又はピリジン環を含有するアクリル系ブロック重合体を含有し、かつ該アルカリ可溶性樹脂がブロック重合体を含有するカラーフィルター用顔料分散組成物。
2.光重合性化合物を含有する1に記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
3.着色顔料に対して、ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂を1~200質量%含有する1又は2に記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
4.アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤、及び/又は、ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂が、リビング重合で合成されたものである、1~3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
5.アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤に含まれるアミンが3級アミンまたは4級アミンである、1~4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
6.ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂が、ブロック重合体の分子中において、アルカリ可溶性の部位が局在化されている1~5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
7.アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤が、ブロック重合体の分子中において、アミン部位が局在化されている1~6のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
8.ブロック重合体のアルカリ可溶性樹脂の酸価が5~250mgKOH/gである1~7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
9.アクリル系ブロック重合体の顔料分散剤のアミン価が40~200mgKOH/gである1~8のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物。
10.1~9のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散組成物を含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、カラーフィルター用顔料分散組成物を基にしてカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を調製したときに、そのカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の低粘度化、粘度安定性、PGMEA再溶解性、アルカリ現像液溶解性(水酸化カリウム水溶液溶解性、TMAH水溶液溶解性)及び耐熱性の向上、さらに現像残渣がないことが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物について詳しく説明する。
【0008】
本発明は主に表示装置用のカラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に関する発明であり、そのカラーフィルター用顔料分散組成物としては、レジストでない組成物であっても良い。
いずれにしても、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物及びカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、主に表示装置のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を調製したときに、その効果として、そのカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の低粘度化、粘度安定性、PGMEA再溶解性、アルカリ現像液溶解性(水酸化カリウム水溶液溶解性、TMAH水溶液溶解性)及び耐熱性の向上、さらに現像残渣がないことが可能である。
レジスト等の組成物として低粘度化できない場合には、塗布工程が複雑又は難しい塗布条件になる可能性がある。
PGMEA再溶解性が優れない場合には、コーターにてレジスト液塗工後、乾燥膜が発生する可能性があり、容易にTMAHやPGMEAへ再溶解しない場合は、その後の処理時において、乾燥膜が異物となる可能性があり、アルカリ現像液溶解性が優れない場合、つまり、アルカリ現像液に対して塗膜の溶解性が低い、または塗膜が溶解せずに剥離する場合は、アルカリ現像の際直線性に優れたパターニングが困難になる可能性がある。さらに現像残渣を有するときには、残渣を溶解させるための追加の工程を要する。
本発明は、カラーフィルター用顔料分散組成物と、そのカラーフィルター用顔料分散組成物に対してアルカリ可溶性樹脂や光重合性化合物等を配合してなるカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物である。
なお、カラーフィルター用顔料分散組成物は、光硬化型とそうでないものを包含する。
【0009】
[A.カラーフィルター用顔料分散組成物の組成]
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物は、着色顔料、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び有機溶剤から主として構成され、顔料分散剤及びアルカリ可溶性樹脂としてブロック重合体を含有する。
【0010】
(着色顔料)
使用できる着色顔料としては、青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料等各種の顔料である。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等の無機顔料等も利用可能である。
これらの顔料の例は以下の通り。
【0011】
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、97、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、184、185、187、188、190、192、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、230、231、232、233、235、236、237、238、239、240、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276の一種以上である。
【0012】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、22、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、64、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6の一種以上である。
【0013】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55の一種以上である。
【0014】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、86、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、125、126、127、127:1、128、129、133、134、136、137、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208の一種以上である。
【0015】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、51、55、59、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79の一種以上である。
【0016】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、30、31、32、37、39、40、42、44、47、49、50の一種以上である。
【0017】
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に高い明度やコントラストを付与するために、上記の各着色顔料として微粒子化処理した顔料を使用することが好ましい。微粒子化処理を行うことにより、着色顔料の一次粒子径を更に微細にかつ均一にすることができる。
上記微粒子化処理としては、例えば、未処理着色顔料、水溶性の無機塩(塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム等であって、好ましくは塩化ナトリウムで、使用する水溶性の無機塩の平均粒子径としては50μm以下のものが好ましい)、及び、上記水溶性の無機塩を実質的に溶解しない水溶性分散媒体(アルコキシアルコール類、グリコール類、エーテル類等)を含む混合物を、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、特開2006-192385号公報に記載のプラネタリーミキサーである(株)井上製作所社製のトリミックス(商標名)、連続式一軸混練機である浅田鉄工(株)社製のミラクルKCK(商標名)等の混練装置で混練した後、上記水溶性の無機塩及び上記水溶性分散媒体を除去するソルトミリングを行い、微粒子化処理を行うことが好ましい。
さらに、着色顔料の結晶成長を抑えて均一に微細化できる点より、後述する顔料分散助剤の存在下、微粒子化処理をすることが好ましい。その際の顔料分散助剤の使用量は、着色顔料100質量部に対して0.5~30質量部、好ましくは3~10質量部である。
【0018】
(顔料分散助剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に使用しても良い顔料分散助剤としては、使用する顔料の分子構造と同一または類似の分子構造を有する基本骨格に、有機溶剤との親和性を高める酸基を導入して、酸基を有する顔料分散助剤としたものが好適である。このような顔料分散助剤は、顔料の微粒子化や分散の工程において、基本骨格の部分が顔料表面に吸着し、酸基が有機溶剤や顔料分散剤との親和力を高めることにより、顔料の分散時の微細化や分散後の経時分散安定性などを向上させる効果を有する。また、顔料分散助剤自身が有機溶剤中に溶解あるいは微粒子で分散状態になるものが、顔料表面のより広い範囲にわたって吸着することができるためにさらに好適である。
なかでも、酸基としてスルホン酸基を有する顔料分散助剤等を使用すると、良好な結果を得ることができる。
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物において、酸基を有する顔料分散助剤の使用量は、着色顔料100質量部に対して0.5~30質量部である。上記酸基を有する顔料分散助剤の含有量が0.5質量部より小さいと顔料分散効果が低下し、一方30質量部を超える場合は、顔料分散効果がそれ以上には向上しない。
【0019】
上記酸基を有する顔料分散助剤の使用方法は、例えば以下の通り。
(1)酸基を有する顔料分散助剤の非存在下で微粒子化処理された着色顔料を用いる場合は、微粒子化処理された着色顔料の分散時に着色顔料100質量部に対して酸基を有する顔料分散助剤を0.5~30質量部、好ましくは3~15質量部を使用する。
(2)酸基を有する顔料分散助剤の存在下で微粒子化処理した着色顔料を用いる場合は、着色顔料の微粒子化処理時に着色顔料の100質量部に対して顔料分散助剤を0.5~30質量部、好ましくは3~15質量部を使用し、微粒子化処理された着色顔料の分散時に着色顔料100質量部に対して酸基を有する顔料分散助剤を0~29.5質量部、好ましくは0~12質量部を使用する。
尚、微粒子化処理時に使用する酸基を有する顔料分散助剤の使用量と微粒子化処理した着色顔料の顔料分散時に使用する酸基を有する顔料分散助剤の使用量の合計は、着色顔料100質量部に対して酸基を有する顔料分散助剤を0.5~30質量部、好ましくは3~15質量部を使用する。
より具体的に酸基を有する顔料分散助剤として、スルホン酸基を有する顔料分散助剤を使用する場合について説明する。
青色顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6を分散させる際には、ε銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントブルー15:6と同一骨格のアントラキノン骨格を有する顔料及び/又は色素のスルホン化物を顔料分散助剤とする。
【0020】
(顔料分散剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に顔料分散剤を配合する。この顔料分散剤はブロック重合体を含み、さらにアミン化合物及び/又はピリジン環含有化合物を単量体として含有する、アミノ基及び/又はピリジン環を含有するアクリル系ブロック重合体である。このアミン化合物及び/又はピリジン環含有化合物を単量体とするブロックは、アミン部位及び/又はピリジン環部位としてブロック重合体の分子中に局在化する。
アクリル系ブロック重合体のアミン価としては、40~200mgKOH/gが好ましい。なお、本発明においてアミン価とは、樹脂の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237に記載の方法に準ずる方法により測定される値である。
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物において、ブロック重合体である顔料分散剤を使用する際の使用量は、着色顔料100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、より好ましくは1~60質量部である。上記顔料分散剤の含有量が1質量部より小さいと顔料分散効果が低下し、さらに組成物調整後の初期粘度が高くなり、及び保存後に大きく粘度が増加する場合があり、一方100質量部を超える場合は、アルカリ現像性が低下する等のおそれがある。
上記アミン化合物である単量体を含有するアクリル系ブロック重合体を構成するブロックの種類は2種でも良く3種以上でも良く、以下のものが挙げられる。
そのうち1種以上のブロックはアミン化合物であるラジカル重合性不飽和結合を有する単量体を含有するブロックである。
このブロックを構成する単量体としては、アミノ基を含有する単量体として非環式アミン化合物、複素環式アミン化合物、又は4級アンモニウムカチオン化合物であり、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の非環式アミン化合物、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等の複素環式アミン化合物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートを塩化ベンジルにより4級化しカチオン化してなる化合物等の4級アンモニウムカチオン化合物、ピリジン環を含有する単量体としてビニルピリジン等の化合物が好ましい。これらの単量体のうちの1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックや、2種以上の単量体がブロック重合してなるブロックでも良い。
アミン化合物である単量体に由来するブロックと共重合する他の重合可能なブロックとしては、1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックでも良い。アミノ基やピリジン環を含有する単量体由来の単位を有しないことが好ましい。また、カルボン酸基、水酸基、チオール基、硫黄やリン含有の基を有しないことがさらに好ましい。なお、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックは1種でも良く、2種のブロックであっても良い。
この他の重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノアクリレート等のグリセロール(メタ)アクリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。但し、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用できる。
【0021】
本発明中のブロック重合体である顔料分散剤に加えて、従来からカラーフィルター分野で使用されている塩基性基を有する従来の高分子顔料分散剤を併用することができる。但し、従来の高分子顔料分散剤の含有量は本発明による効果を毀損しない範囲である。
このような塩基性基を有する高分子顔料分散剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等の、ポリ(低級)アルキレンアミン等)のアミノ基及び/又はイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド及びポリエステルアミドからなる群より選択される少なくとも1種との反応生成物。
(2)分子内にポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖、及びポリアクリル側鎖からなる群より選択される少なくとも1種の側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(3)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物。
(4)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2~3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族又は複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物。
(5)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物にポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた反応生成物。
(6)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物。
(7)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物。
(8)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマー及び2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物。
(9)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物。
(10)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合性モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体。
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等の塩基性基を有するブロックと塩基性官能基を有していないブロックとからなるアクリル系ブロック共重合体等。
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤。
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物。
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15~85%である化合物、等。
【0022】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物にアルカリ可溶性樹脂を配合する。そのような樹脂としては、顔料に対してバインダーとして作用し、かつカラーフィルターを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に対して可溶性を有するものである。
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、ブロック共重合体であることが必要である。ブロック共重合体を採用することにより、他の共重合体よりも、顔料分散能が向上し、かつPGMEAやアルカリ現像液への溶解性を付与することができる。ランダム共重合体を使用したときには、顔料分散レジスト組成物の現像液溶解性が悪化する。
そのブロック共重合体のなかでも、カルボキシル基を有するものが好ましい。
特に1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば(メタ)アクリル酸やマレイン酸からなるブロックと、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックを有するブロック共重合体が好ましい。ブロックの種類は2種でも良く3種でも良い。このブロックはアルカリ可溶性の部位であり、ブロックとして共重合体の分子中に局在化する。
1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体からなるブロックは、1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックや、2種以上の単量体がブロック重合してなるブロックでも良い。好ましくはメタクリル酸のみからなるブロックである。
他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックは、1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックでも良い。カルボキシル基を有する単量体由来の単位を有しないことが好ましい。なお、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックは1種でも良く、2種のブロックであっても良い。
この他の重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノアクリレート等のグリセロール(メタ)アクリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。但し、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用できる。
また、本アルカリ可溶性樹脂は、光重合性の官能基を有していても良い。
【0023】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価としては、現像特性の点から5~250mgKOH/gが好ましく、さらに好ましくは10~200mgKOH/gであり、より好ましくは60~150mgKOH/gである。なお、本発明においては、上記酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその含有量に基づいて算術的に求めた値である。
また、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、通常、現像特性や有機溶剤への溶解性の点から1,000~100,000が好ましく、さらに好ましくは3,000~50,000であり、より好ましくは7,000~20,000である。なお、本発明において、上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。本発明において、装置としてはWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてはPLgel 5μm MIXED-D(Agilent Technologies社製)を用いる。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の使用量は、使用する着色顔料100質量部に対して1~200質量部が好ましく、さらに好ましくは、10~150質量部である。この場合、アルカリ可溶性樹脂の使用量が1質量部未満では、現像特性が低下するおそれがある。一方200質量部を超えると、相対的に着色剤濃度が低下するため、薄膜として目的とする色濃度を達成することが困難となるおそれがある。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、1級、2級、及び3級の何れのアミノ基も含有せず、さらに4級アンモニウム基も含有しないことが好ましい。さらに、塩基性基を有しないことがより好ましい。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、ブロック共重合体以外の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を配合してもよい。
【0024】
(その他の樹脂)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に使用する樹脂としては、可視光領域の400~700nmの全波長領域において透過率が80%以上、好ましくは95%以上の樹脂を使用することができる。これらの樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、アルカリ可溶性樹脂、また下記の光重合性化合物を使用できる。
このような樹脂は、カラーフィルター用顔料分散組成物の全固形分に対して質量分率で、使用する樹脂の合計量で好ましくは5~94質量%、より好ましくは20~50質量%の範囲である。
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、エポキシ樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
なお、場合によりカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の項にて後述する光重合性樹脂を配合することもできる。
【0025】
(有機溶剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に使用する有機溶剤としては、従来から液晶カラーフィルターレジストの分野で使用されている有機溶剤が好適に使用できる。具体的には、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100~220℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等である。沸点が220℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、カラーフィルター用顔料分散組成物又はこの組成物を含有する組成物を塗布してなる塗膜をプレベークする際に、有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下するおそれがある。また、沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなるおそれがある。
【0026】
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物に使用する有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n-アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n-アミル等が好ましく、より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0027】
(硫酸バリウム)
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物には、耐熱性(輝度)を向上させるために一次粒子径が5~20nmである硫酸バリウムを用いることができる。
硫酸バリウムの使用量は着色顔料100質量部に対して0~25質量部、好ましくは5~20質量部の範囲で使用する。
上記硫酸バリウムは、微粒子化処理した着色顔料の分散時又は分散後に使用する。
【0028】
本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物は、着色顔料、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂及び有機溶剤から主として構成され、これらの成分は、合計で、カラーフィルター用顔料分散組成物中、90~100質量%を占める。顔料分散剤としては前述のものから任意のものを採用できる。
また、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物を、光硬化性を有しないまま、レジスト用組成物として使用することもできる。
【0029】
(必要に応じて添加できる添加剤)
カラーフィルター用顔料分散組成物の製造法に応じて、光重合開始剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。上記光重合開始剤としては、例えば、後述するものを挙げることができる。
【0030】
(本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物の製造方法)
以上の原料を用いてカラーフィルター用顔料分散組成物を製造する方法を説明する。なお、光硬化性ではないカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の場合には、光重合性化合物を配合することは不要である。
そのため、まず、下記のように、顔料分散組成物を調製する。
顔料分散助剤の存在下又は非存在下で微粒子化処理された顔料、アルカリ可溶性樹脂、顔料分散剤、有機溶剤、硫酸バリウム、更に必要に応じてその他の添加剤からなる混合物を得る。得られた混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散機などの各種分散機を用いて、混練し、分散処理し顔料分散組成物を得る。
【0031】
複数の顔料を併用する場合には、以下の方法を採用できる。
(1)予め顔料毎に顔料分散組成物を得ておき、これらの顔料分散組成物を任意の比率となるように混合し、その後必要に応じて樹脂、硫酸バリウム、有機溶剤、その他の添加剤を加えて、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物を製造する。
(2)予め、上記のようにして製造した顔料分散組成物に、必要に応じて補色顔料が所定の割合となるように混合する工程を経て、その後必要に応じて樹脂、硫酸バリウム、有機溶剤、その他の添加剤を加えて顔料分散組成物を製造し、他の顔料を有する顔料分散組成物についても、同様にして顔料分散組成物を製造した後に、これらを混合する工程を経て、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物を製造する。
また、(1)及び(2)により得たカラーフィルター用顔料分散組成物に対して、必要に応じて樹脂、硫酸バリウム、有機溶剤、その他の添加剤を加えて、カラーフィルター用顔料分散組成物を調製してもよい。
次いで、調製したカラーフィルター用顔料分散組成物に、含有する顔料に対して補色顔料を所定の割合となるように混合してカラーフィルター用顔料分散組成物を得ることもできる。
【0032】
上記(1)、(2)の製造方法において、酸基を有する顔料分散助剤の存在下で微粒子化処理された微粒子化顔料を使用する場合は、微粒子化顔料の分散時に酸基を有する顔料分散助剤を含有させなくても製造することは可能である。
また、上記(1)、(2)の製造方法において、樹脂、硫酸バリウムは、顔料分散組成物の作成時及び/又は顔料分散組成物を作成後に加えることができる。
また、上記(1)、(2)の製造方法の中でも、高い着色力及び高い輝度が得られる点から、酸基を有する顔料分散助剤の存在下で微粒子化処理された顔料を使用することが好ましい。
【0033】
現在、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を利用してカラーフィルターを製造する方法としては、光硬化性の組成を用いた光レジスト法が主であるが、以後は光レジスト法にて用いるカラーフィルター用光硬化性顔料分散組成物と、そうでない光硬化性ではないカラーフィルター用顔料分散組成物に分けて、それぞれに含有される成分等について、以下に説明する。
【0034】
[B.カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が光硬化性であるとき]
次に、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が、光硬化性であるときについて説明する。
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が、光硬化性であるときには、その組成物は活性エネルギー線硬化性を有し、アルカリ現像可能なレジスト組成物であり、顔料、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び有機溶剤から主として構成され、硫酸バリウム、さらに光重合性化合物を含むものである。
顔料、顔料分散剤、光重合性化合物以外の樹脂、硫酸バリウム及び有機溶媒の種類や配合量としては、上記のカラーフィルター用顔料分散組成物の説明の通りに使用する。
【0035】
なお、有機溶剤については、上記アルカリ可溶性樹脂の溶解性、着色顔料の分散性、塗布性等の点から、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中に、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上含有させることがより好ましい。
【0036】
(光重合性化合物)
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に使用する光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する単量体、オリゴマー、光重合性樹脂等で、上記カラーフィルター用顔料分散組成物で記載したものと同じものを使用する。光重合性不飽和結合を有する単量体、オリゴマー等とは、後述する光重合開始剤が、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により分解した際に発生するラジカルやカチオンの作用により、重合して樹脂化できる不飽和結合を有するものである。
光重合性化合物として、光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとしては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;イソボルニルメタクリレート又はアクリレート;グリセロールメタクリレート又はアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等が挙げられる。
【0037】
光重合性化合物としての光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとしては、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、光重合性化合物を重合して得られたオリゴマーを使用することができる。
光重合性化合物としての光重合性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等の光架橋性基を導入した樹脂が用いられる。スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した重合物も用いられる。
これらの樹脂を形成することができる光重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、光重合性化合物の使用量は、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは3~50質量%の範囲である。
【0038】
(光重合開始剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に使用する光重合開始剤としては、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射されることにより、ラジカルやカチオンを発生することのできるものであれば特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本発明において、上記光重合開始剤の含有量は、上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは1~20質量%の範囲である。
【0039】
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、着色顔料、顔料分散助剤、顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、硫酸バリウム及び有機溶剤から主として構成され、これらの成分は、合計で、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中に、90~100質量%占める。
【0040】
(必要に応じて添加できる添加剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、それが光硬化性であるとき、必要に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0041】
[C.カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が光硬化性でないとき]
カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が光硬化性でないときは、上記のB.カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物が光硬化性であるときにおいて使用した光重合性化合物や光重合開始剤を含有せず、必要に応じてさらに上記のカラーフィルター用顔料分散組成物の組成の説明にて示した光重合性化合物以外の樹脂を配合できる。
【0042】
(必要に応じて添加できる添加剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、それが光硬化性でないとき、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0043】
(本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の製造方法)
以上の材料を用いてカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を製造する方法を説明する。カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、それが光重合性のとき、上記で得たカラーフィルター用顔料分散組成物に対して、さらに光重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じてアルカリ可溶性樹脂、硫酸バリウム、有機溶剤、その他の添加剤を加えて本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を得る。
またそれが光重合性でないとき、さらに、アルカリ可溶性樹脂、硫酸バリウム、有機溶剤、その他の添加剤等のいずれかを加えて本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を得ることができる。上記の製造方法においても同様である。
また、本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物を使用して、カラーフィルターを製造する方法としては、それに必要な装置を含め、該顔料分散組成物以外の構成として公知の手段を採用して製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものとする。
【0045】
<アクリル系分散剤>
下記表1に示すアクリル系分散剤を得た。
下記表1及び表2において、
組成欄中の( )で括った部分はブロックを示し、「/」で区別された数値は各単量体が有する質量比率を示す。「//」は各ブロックの質量比率を示す。各分散剤は全て、組成及び混合比率がPGMEA:PGME=2:1である混合溶媒中固形分濃度が40質量%となるように溶解してなる溶液の形態である。
組成欄中の「-b-」はその両側の( )で括った単量体からなるブロック同士がブロック共重合していることを示す。( )で括らない場合にはランダム重合体である。例えば表1中のアクリル系分散剤1は、MMAとBMAがランダム重合したブロックと、DMが重合したブロックがブロック重合したものである。そして組成中の数値は、このブロック共重合体全体中、下記のアクリル系分散剤1の溶液の製造の項に記載のように、MMAが34質量部、BMAが33質量部及びDMが33質量部であることを示す。
【0046】
【0047】
(単量体)
MMA:メタクリル酸メチル
BMA:メタクリル酸ブチル
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DM-DMBQ:DMの塩化ベンジル4級化物
2VP:2-ビニルピリジン
PMPMA:ペンタメチルピペリジニルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
<有機溶剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0048】
(アクリル系分散剤1の溶液の製造)
脱気したガラス製装置にMMAを34g、BMAを33g、THFを1L投入し、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液を4.5mmol投入した(ここでMMAとBMAのランダム共重合体部分が合成される)。
次いで-78℃まで冷却し、2時間撹拌した。次いで、DMを33g投入して、MMAとBMAのランダム共重合体部分に結合したDMのブロック部分を合成し、2時間撹拌後反応を停止した。
大量のメタノールに合成終了した溶液を滴下し、沈殿させる。ろ紙にて分散剤を採取し、メタノールで数回洗浄し、60℃で減圧乾燥する。
得た分散剤をPGMEA:PGME=2:1に投入し、40質量%のアクリル系分散剤1の溶液を得た。
【0049】
(アクリル系分散剤2の溶液の製造)
アクリル系分散剤1の製造に用いたDMを2VPに変更する以外は同様にして、アクリル系分散剤2の溶液を得た。
【0050】
(アクリル系分散剤3の溶液の製造)
アクリル系分散剤1の溶液に塩化ベンジルを10g攪拌中投入し、140℃で6時間還流し、アクリル系分散剤3の溶液を得た。
【0051】
(アクリル系分散剤4の溶液の製造)
アクリル系分散剤1の製造に用いたDMをPMPMAに変更する以外は同様にして、アクリル系分散剤4の溶液を得た。
【0052】
<アルカリ可溶性樹脂>
下記表2に示すアルカリ可溶性樹脂を得た。
アルカリ可溶性樹脂1はブロック重合体であり、PGMEA溶液中39.7質量%の溶液である。
アルカリ可溶性樹脂2はランダム重合体であり、PGMEA溶液中40.6質量%の溶液である。
【0053】
【0054】
(アルカリ可溶性樹脂1の溶液の製造)
脱気したガラス製装置にMMAを30g、BMAを50g、THFを1L投入し、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液を4.5mmol投入した(ここでMMAとBMAのランダム共重合体部分が合成される)。
次いで-78℃まで冷却し、2時間撹拌。次いで、MAAを20g投入して、MMAとBMAのランダム共重合体部分に結合したMAAのブロック部分を合成し、2時間撹拌後反応を停止。
大量のメタノールに合成終了した溶液を滴下し、沈殿させる。ろ紙にて樹脂を採取し、メタノールで数回洗浄し、60℃で減圧乾燥する。
得た樹脂をPGMEAに投入し、39.7質量%のアルカリ可溶性樹脂溶液1の溶液を得た。
【0055】
(アルカリ可溶性樹脂溶液2の製造)
フラスコにMMAを3g、BMAを5g、MAAを2g投入し、AIBNを1700mg投入し、撹拌後凍結脱気を行う。
次いでベンゼンを10g投入し、乾燥窒素を充填しながら撹拌する。
60℃の湯浴に浸し、24時間反応させたのちドライアイスメタノール浴に浸して反応を停止する。
同量のベンゼンで希釈し、300mlのメタノール中に注いで生成した樹脂を沈殿させる。
ろ紙にて樹脂を採取し、メタノールで数回洗浄し、60℃で減圧乾燥する。
得た樹脂(MMAとBMAとMAAのランダム共重合体)をPGMEAの溶媒に投入し、40.6質量%のアルカリ可溶性樹脂溶液2を得た。
【0056】
<顔料分散組成物の調整>
P.R.254:ピグメントレッド254
ウレタン系分散剤:Disperbyk 182(43%溶液)
エステル系分散剤:アジスパーPB821(無溶剤)
アルカリ可溶性樹脂1及び2共に固形分濃度が35質量%となるように調整
【0057】
表1に記載のアクリル系分散剤、及び表2に記載のアルカリ可溶性樹脂を使用し、赤色顔料及び溶剤を加え、また比較例2及び3としてウレタン系分散剤又はエステル系分散剤を使用して下記表3に示す組成となるように混合し、これを0.3mmΦのジルコニアビーズを用いてペイントコンディショナーで10時間混練して赤色顔料分散組成物を得た。
【0058】
<初期粘度>
E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて25℃における粘度を測定した。
○:初期粘度が7.0mPa・s未満
△:初期粘度が7.0~10.0mPa・s
×:初期粘度が10.0mPa・s超
【0059】
<粘度安定性>
上記実施例及び比較例のレジスト法に使用するカラーフィルター用顔料分散組成物について、それぞれガラス瓶に採り、密栓して、40℃で1週間保存後に上記E型粘度計で25℃における粘度を測定し、初期値からの変化率によって評価した。
○:保管前後の粘度変化率が10%以下
×:保管前後の粘度変化率が10%超
【0060】
<増粘率>
増粘率は、(40℃1週間後粘度/初期粘度)×100の式により求めた。
【0061】
<異物>
各分散液をガラス瓶に採り、密栓して、5℃で1ヶ月保存後に、ガラス瓶を室温にて放置し、異物発生の有無を目視で確認した。
○:異物の発生無
×:異物の発生有
【0062】
【0063】
実施例A1~A4の赤色顔料分散組成物は、初期粘度及び40℃で1週間保存後の粘度は共に低かった。そのため、増粘率(粘度の増加率)は低かった。
それに対して比較例A5はアルカリ可溶性樹脂がランダム重合体であるため、比較例A6は分散剤がウレタン系でありブロック重合体でもないため、比較例A7は分散剤がエステル系でありブロック重合体でもないため、それぞれ、初期粘度及び40℃で1週間保存後の粘度が共に高く、増粘率も高かった。
下記表5に示すように、異物の発生に関して、実施例A1~A4及び比較例A5及び6によれば○であり、比較例A7では×であった。
よって本発明によれば、顔料分散体としてより低粘度かつ保存安定性に優れたものを得ることができた。
【0064】
<顔料分散レジスト組成物の調整>
表3に記載の実施例及び比較例の赤色顔料分散組成物それぞれと、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物であるDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、光重合開始剤(イルガキュア907)及びPGMEAを、表4の組成になるように高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過し、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を得た。
【0065】
<試料の作成>
実施例及び比較例のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後高圧水銀灯にて露光した。さらに230℃のオーブンにて60分間ポストベークし評価基板を得た。
【0066】
<耐熱性>
実施例及び比較例の上記試料について、色特性(x,y,Y)を分光光度計(島津製作所社製、UV-2500PC、C光源2°視野)にて測色し、色度x=0.600でのy、輝度Yを算出した。また、作成した基板を用いて、壷坂電機社製コントラストテスターCT-1及びトプコン社製輝度計BM-5Aを用いてコントラスト測定を行った。
【0067】
<現像残渣>
顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いてガラス基板に塗布し100℃3分間プレベークした。露光部と未露光部を得るためフォトマスクを用いてUV露(照射量270mJ/cm2)を行った。次いでアルカリ現像液(KOH 0.05wt%)にディッピング現像にて画像形成を行い、下記評価基準にて評価した。
○:非画像部の残渣無
△:非画像部に白色残渣有
×:画像端部に残渣有もしくは非画像部に着色残渣有
【0068】
<アルカリ現像性>
顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いてガラス基板に塗布した。次いで、100℃3分間プレベークした後、KOHが0.05wt%のアルカリ性水溶液、及びTMAHが2.5wt%の水溶液に浸漬させて目視にて溶解状態を評価した。
○ :溶解
〇△:剥離後溶解
△ :弱剥離
× :剥離
【0069】
<PGMEA再溶解性>
顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いてガラス基板に塗布し、100℃3分間プレベークした後、作成した基板をPGMEAに浸漬させて目視にて溶解状態を評価した。
○:溶解
×:剥離
【0070】
【0071】
本発明に沿った例である実施例B1~4によれば、十分に高いコントラストを得ると同時に、現像後に残渣が残らず、水酸化カリウム水溶液及びTMAH水溶液に対して十分に溶解し、かつPGMEAに対する再溶解性にも優れていた。
これに対して、アルカリ可溶性樹脂がブロック重合体ではない比較例B5によれば、水酸化カリウム水溶液及びTMAH水溶液に対して溶解せず剥離するに留まった。
また、アルカリ可溶性樹脂がブロック重合体ではない樹脂を含有する比較例B6によれば、水酸化カリウム水溶液及びTMAH水溶液に対して溶解せず弱剥離~剥離するに留まった。
また比較例B7のように、分散剤がウレタン系でありブロック重合体ではないときには耐熱性に劣り、同時に水酸化カリウム水溶液及びTMAH水溶液に対して溶解せず弱剥離~剥離するに留まった。
比較例B8のように分散剤としてエステル系分散剤を使用し、ブロック共重合体ではないときには、現像時において非画線部に着色残渣を有する結果であった。
【0072】
【0073】
各実施例の結果によれば、実施例A1~4の顔料分散液が低粘度化、及び粘度安定性に優れると共に、実施例B1~4の顔料分散レジスト組成物は、水酸化カリウム水溶液及びTMAH水溶液によりレジストを溶解させることができた。しかしながら、比較例B5~8の結果によれば、再溶解をすることが十分にできないか、あるいは耐熱性に劣っていたり、現像後に残渣がある等が生じた。その結果として本発明のカラーフィルター用顔料分散組成物によって、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の粘度安定性、PGMEA再溶解性、アルカリ現像液溶解性及び耐熱性を全て向上させると共に、残渣無しでの現像を行うことができた。