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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B60R3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019103684
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020196342
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】金谷 庸平
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-239888(JP,A)
【文献】特開平11-011217(JP,A)
【文献】特開2017-217965(JP,A)
【文献】特開2017-170974(JP,A)
【文献】特開2003-112578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0013507(US,A1)
【文献】特開2011-245971(JP,A)
【文献】実開平06-027343(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、
前記スロープ板の展開及び格納方向に移動する移動体と、
前記スロープ板に対して回動可能に連結されるとともに前記移動体に対して回動可能に連結される支持アームと、
前記スロープ板と前記移動体との間に介在される引張バネと、を備え、
前記引張バネの上方に前記スロープ板に対する前記支持アームの第1回動連結点が配置されることにより、前記引張バネの弾性力に基づいて、前記展開及び格納方向に前記スロープ板が移動するときの支持位置から前記第1回動連結点が持ち上がる方向の付勢力が付与された車両用スロープ装置であって、
前記第1回動連結点が前記引張バネよりも下方に移動しないように前記移動体に対する第2回動連結点を支点とした前記支持アームの回動を規制する下方支持部材を備えており、
前記移動体を前記スロープ板の展開及び格納方向に案内するガイドレールを備え、
前記移動体は、
前記ガイドレールの延伸方向に延在する状態で該ガイドレールに沿って摺動するサブガイドと、
前記第2回動連結点を有して前記サブガイドの延伸方向に沿って摺動する支持シューと、を備えるとともに、
前記サブガイドが前記下方支持部材を構成する車両用スロープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板の上面に設けられた引き上げ部材を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記引き上げ部材は、前記第1回動連結点が設けられた前記スロープ板の後端部に該スロープ板に対する接続部を有して前記スロープ板の前端部側に延在すること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項4】
請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記引き上げ部材は、前記スロープ板の上面から上方に突出する把持部を有したハンドル部材であること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板が前記展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態で前記第1回動連結点を支点とした前記スロープ板の回動を規制するロック機構を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項6】
請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記ロック機構は、前記支持アームの回動により前記第1回動連結点が持ち上げられたリフトアップ状態で前記スロープ板の回動を規制する機能を備えること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載の車両用スロープ装置において、
前記ロック機構は、前記スロープ板に設けられた第1係合部と前記支持アームに設けられた第2係合部とが係合することにより、前記スロープ板の回動を規制すること、
を特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項8】
請求項~請求項の何れか一項に記載の車両用スロープ装置において、
前記スロープ板の前端部に、前記ロック機構による前記スロープ板の回動規制を解除するための解除操作部を備えること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スロープ板をドア開口部の下端に展開する車両用のスロープ装置がある。例えば、特許文献1に記載のスロープ装置は、スロープ板の展開及び格納方向に移動する移動体と、この移動体及びスロープ板に対して回動可能に連結された支持アームと、を備えている。そして、このスロープ装置は、同じくその移動体及びスロープ板に対して回動可能に連結された伸縮リンクと、この伸縮リンクを伸長方向に付勢する圧縮バネと、を備えている。
【0003】
即ち、上記従来技術のスロープ装置は、スロープ板の後端部を持ち上げることにより、支持アームの回動を伴いながら、そのスロープ板が傾動する。そして、このとき、圧縮バネの弾性力に基づいて、容易に、そのスロープ板の後端部を持ち上げるリフトアップ操作を行うことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5472306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構成では、スロープ板に対する支持リンクの回動連結点よりもスロープ板の後端部側に、その伸縮リンクの回動連結点が形成される。そして、これにより支持リンクが長くなることで、より高い支持剛性が求められるという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残す構成となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コンパクトな構成にて、容易にスロープ板のリフトアップ操作を行うことのできる車両用スロープ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、ドア開口部の下端に展開されるスロープ板と、前記スロープ板の展開及び格納方向に移動する移動体と、前記スロープ板に対して回動可能に連結されるとともに前記移動体に対して回動可能に連結される支持アームと、前記スロープ板と前記移動体との間に介在される引張バネと、を備え、前記引張バネの上方に前記スロープ板に対する前記支持アームの第1回動連結点が配置されることにより、前記引張バネの弾性力に基づいて、前記展開及び格納方向に前記スロープ板が移動するときの支持位置から前記第1回動連結点が持ち上がる方向の付勢力が付与される。
【0008】
上記構成によれば、スロープ板に対する引張バネの接続点を、スロープ板に対する支持アームの第1回動連結点よりもスロープ板の前端部側に設定することで、その第1回動連結点を、よりスロープ板の後端部側に設定することができる。そして、これにより、支持アームの長さを短縮することで、コンパクトな構成にて、その引張バネの弾性力に基づいて、容易に、スロープ板のリフトアップ操作を行うことができる。
【0009】
更に、引張バネには、その両端部を移動体側及びスロープ板側に接続するだけで、その弾性力を利用可能という利点がある。そして、これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記第1回動連結点が前記引張バネよりも下方に移動しないように前記移動体に対する第2回動連結点を支点とした前記支持アームの回動を規制する下方支持部材を備えることが好ましい。
【0011】
即ち、スロープ板に対する支持アームの第1回動連結点が引張バネよりも下方に移動した場合、その引張バネが発生する付勢力の方向が反転することになる。しかしながら、上記構成によれば、支持アームの下方に設けられた下方支持部材によって、その第1回動連結点が下がる方向に向かう支持アームの回動を規制することができる。そして、これにより、その引張バネの弾性力に基づいた安定的な付勢力の付与を担保することができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記移動体を前記スロープ板の展開及び格納方向に案内するガイドレールを備え、前記移動体は、前記ガイドレールの延伸方向に延在する状態で該ガイドレールに沿って摺動するサブガイドと、前記第2回動連結点を有して前記サブガイドの延伸方向に沿って摺動する支持シューと、を備えるとともに、前記サブガイドが前記下方支持部材を構成することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、ガイドレールに沿って摺動するサブガイドがガイドレールを延長することで、そのガイドレールの長さを短縮することが可能になる。そして、これにより、スロープ板が格納状態にある場合に、車外からガイドレールが見え難い構成とすることで、優れた意匠性を確保することができる。
【0014】
更に、サブガイドが下方支持部材として機能することにより、スロープ板が展開及び格納方向に移動するときの支持位置から第1回動連結点が下がる方向に向かう支持アームの回動を規制することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、そのスロープ板に対する支持アームの第1回動連結点が引張バネよりも下方に移動しないようにすることができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板の上面に設けられた引き上げ部材を備えることが好ましい。
上記構成によれば、その引き上げ部材を用いることにより、容易に、スロープ板のリフトアップ操作を行うことができる。
【0016】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記引き上げ部材は、前記第1回動連結点が設けられた前記スロープ板の後端部に該スロープ板に対する接続部を有して前記スロープ板の前端部側に延在することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、スロープ板の前端部側に位置する利用者が、立ち位置を変えることなく、その引き上げ部材を把持することができる。そして、これにより、そのスロープ板を引き出す展開操作に連続して、容易に、このスロープ板をリフトアップ操作することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記引き上げ部材は、前記スロープ板の上面から上方に突出する把持部を有したハンドル部材であることが好ましい。
上記構成によれば、容易に、その引き上げ部材を用いてスロープ板をリフトアップ操作することができる。
【0019】
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板が前記展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態で前記第1回動連結点を支点とした前記スロープ板の回動を規制するロック機構を備えることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、スロープ板の姿勢を安定的に保持した状態で、このスロープ板を展開及び格納方向に移動させることができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記ロック機構は、前記支持アームの回動により前記第1回動連結点が持ち上げられたリフトアップ状態で前記スロープ板の回動を規制する機能を備えることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、その第1回動連結点周りの回動によりスロープ板に与えられた傾斜を安定的に保持することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置において、前記ロック機構は、前記スロープ板に設けられた第1係合部と前記支持アームに設けられた第2係合部とが係合することにより、前記スロープ板の回動を規制することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、簡素な構成にて、信頼性の高いロック機構を形成することができる。
上記課題を解決する車両用スロープ装置は、前記スロープ板の前端部に、前記ロック機構による前記スロープ板の回動規制を解除するための解除操作部を備えることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、スロープ板をドア開口部の下端に引き出した利用者が、立ち位置を変えることなく、スロープ板の前端部側に位置したまま、そのロック機構によるスロープ板の回動規制を解除して、このスロープ板をリフトアップ状態に移行させることができる。そして、これにより、利用者の利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コンパクトな構成にて、容易にスロープ板のリフトアップ操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図(格納状態)。
図2】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図(展開状態)。
図3】(a)(b)は、ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の側面図(a:格納状態、b:展開状態)。
図4】スロープ板を格納ボックスから引き出す展開操作の説明図。
図5】スロープ板の後端部を持ち上げるリフトアップ操作の説明図。
図6】移動体とスロープ板との間に介在された引張バネの説明図(リフトアップ前)。
図7】移動体とスロープ板との間に介在された引張バネの説明図(リフトアップ後)。
図8】第2の実施形態におけるスロープ装置の平面図。
図9】(a)(b)は、第2の実施形態におけるスロープ装置の側面図(a:格納状態、b:展開状態(リフトアップ前))。
図10】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図。
図11】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図。
図12】第2の実施形態におけるスロープ装置の断面図。
図13】ロック機構が設けられたスロープ板の後端部近傍におけるスロープ装置の拡大断面図(ロック状態)。
図14】ロック機構が設けられたスロープ板の後端部近傍におけるスロープ装置の拡大断面図(アンロック状態)。
図15】ロック機構が設けられたスロープ板の後端部近傍におけるスロープ装置の側面図(姿勢保持状態)。
図16】ロック機構が設けられたスロープ板の後端部近傍におけるスロープ装置の側面図(リフトアップ状態)。
図17】ロック機構の係合孔を構成する長孔の作用説明図。
図18】別例の引き上げ部材を構成するハンドル部材の側面図。
図19】別例の引き上げ部材を用いたリフトアップ操作の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1図2、及び図3(a)(b)に示すように、本実施形態の車両1には、車体2に設けられたドア開口部3の下端にスロープ板10を展開するスロープ装置11が設けられている。本実施形態の車両1において、このスロープ装置11は、ドア開口部3の下方に設けられた格納ボックス12内に設置されている。具体的には、この格納ボックス12は、そのドア開口部3と同一方向(図3中、右側)に開口部12aを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この開口部12aを介することにより、その格納ボックス12に格納されたスロープ板10を車外に展開し、及び、その展開したスロープ板10を再び格納ボックス12内に格納する構成になっている。
【0027】
尚、このスロープ装置11が設置されるドア開口部3としては、例えば、車両1の後方開口部(バックドア)、或いは、スライドドアや所謂グライドドアにより開閉される側方開口部(サイドドア)が想定される。そして、このようなドア開口部3に展開されたスロープ板10を利用することで、例えば、車椅子や自転車等を、容易に、車室に積み込むことができる。
【0028】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11は、その格納ボックス12からドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の展開及び格納方向、つまりは、その格納ボックス12内の奥行き方向(図3中、左右方向)に延びる一対のガイドレール20,20を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、これらの各ガイドレール20は、その前端部10fを開口部12a側に配置する状態で格納ボックス12内に格納されるスロープ板10を、その幅方向両側から挟み込む態様で、略平行に配置されている。また、このスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール20の延伸方向に沿って摺動可能に設けられた移動体21としての一対のスライダ22,22を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、その前端部10fを先頭に上記格納ボックス12から車外に展開されるスロープ板10の後端部10rに対し、それぞれ回動可能に連結されるとともに、上記各スライダ22に対して、それぞれ回動可能に連結される一対の支持アーム25,25を備えている。
【0029】
具体的には、図3に示すように、本実施形態の各スライダ22は、それぞれ、その前端部22fに、各支持アーム25との回動連結点を有している。また、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1は、各スライダ22に対する各支持アーム25の第2回動連結点X2よりも前方側、即ち、そのスロープ板10の展開方向に配置されている。更に、各ガイドレール20に沿って各スライダ22が摺動する際には、これらの第1回動連結点X1及び第2回動連結点X2を支点とした各支持アーム25の回動が規制される。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10が、略水平な姿勢を保持する状態で、各スライダ22及び各支持アーム25とともに、各ガイドレール20の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0030】
また、本実施形態のスロープ装置11は、各スライダ22に対する各支持アーム25の第2回動連結点X2が、各ガイドレール20の前端部20fよりも前方側(図3中、右側)、つまりはスロープ板10の展開方向に移動することにより、その第1回動連結点X1及び第2回動連結点X2を支点とした各支持アーム25の回動が許容される。
【0031】
具体的には、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10がドア開口部3の下端に展開された状態にある場合、その各スライダ22に対する第2回動連結点X2を支点として、図3中、反時計回り方向に各支持アーム25を回動させることができる。また、この各支持アーム25の回動によって、そのスロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1が、後方移動しながら上方に持ち上がるとともに、この第1回動連結点X1を支点として、スロープ板10が、図3中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのドア開口部3の下端に展開したスロープ板10に傾斜が与えられる構成になっている。
【0032】
また、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10の後端部10rには、後方に延びるフロア係合部26が設けられている。即ち、本実施形態のスロープ装置11においては、上記のようにスロープ板10が展開及び格納方向に移動するときの支持位置P0から第1回動連結点X1が持ち上がる方向に各支持アーム25が回動することによって、そのスロープ板10の後端部10rがドア開口部3に臨む車両フロア27の縁部27eに近接する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10の後端部10rに設けられたフロア係合部26が車両フロア27の縁部27eに係合することで、そのスロープ板10の荷重が車両フロア27により支えられる構成になっている。
【0033】
尚、本実施形態のスロープ装置11は、このような各支持アーム25の回動によりスロープ板10の後端部10rが持ち上げられたリフトアップ状態に移行する際、そのスロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1が、各スライダ22に対する第2回動連結点X2を超えて後方側(図3中、左側)に移動する。そして、これにより、スロープ板10の後端部10rが、その各支持アーム25の回動により持ち上げられた位置を緩やかに降下させながら車両フロア27に近づくことで、その縁部27eに対して円滑に係合する構成になっている。
【0034】
さらに詳述すると、図4及び図5に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、利用者30が、その前端部10fを把持する状態でスロープ板10を格納ボックス12から引き出すことにより、このスロープ板10をドア開口部3の下端に展開することができる。更に、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10の上面10aに設けられた引き上げ部材31を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この引き上げ部材31を用いて、容易に、そのスロープ板10の後端部10rを持ち上げる、即ちリフトアップ操作を行うことが可能となっている。
【0035】
具体的には、本実施形態の引き上げ部材31は、スロープ板10の後端部10rに接続部31aを有して、そのスロープ板10の長手方向、前端部10f側に向かって延在する棒状部材32としての構成を有している。即ち、この引き上げ部材31は、利用者30がスロープ板10の前端部10f側に位置したまま、その自由端31b側を把持することが可能になっている。更に、この引き上げ部材31は、そのスロープ板10に対する接続部31aを支点として上下に回動する構成になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その格納ボックス12からスロープ板10を引き出した利用者30が、この引き上げ部材31を操作することで、立ち位置を変更することなく、容易に、そのスロープ板10の後端部10rを持ち上げて、リフトアップ状態に移行させることが可能になっている。
【0036】
尚、本実施形態のスロープ装置11は、利用者30が、スロープ板10を前方側に引くことにより、そのスロープ板10のリフトアップ状態を解除することができる。つまり、その各スライダ22に対する第2回動連結点X2を支点として、各図中、時計回り方向に各支持アーム25を回動させることができる。また、この各支持アーム25の回動により、そのスロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1が、前方移動しながら下方に引き下げられるとともに、この第1回動連結点X1を支点として、スロープ板10が、各図中、反時計回り方向に回動する。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10が略水平になった状態で、このスロープ板10を押し込むかたちで格納ボックス12内に格納することが可能となっている。
【0037】
また、図6及び図7に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、スロープ板10と各スライダ22との間に介在される一対の引張バネ33,33を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これらの各引張バネ33の弾性力に基づいて、スロープ板10が展開及び格納方向に移動するときの支持位置P0から、そのスロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1が持ち上がる方向の付勢力が付与されている。
【0038】
具体的には、本実施形態のスロープ装置11において、各引張バネ33の第1端部33aは、各スライダ22に対する各支持アーム25の第2回動連結点X2、詳しくは、各スライダ22の前端部22fにおいて、その第2回動連結点X2を構成する軸部材34に掛止されている。また、スロープ板10には、各支持アーム25の第1回動連結点X1よりも前端部10f側の位置において、このスロープ板10の下面10bから下方に延びる一対の掛止突部35,35が設けられている。そして、各引張バネ33の第2端部33bは、それぞれ、これらの各掛止突部35に掛止されている。
【0039】
更に、本実施形態のスロープ装置11においては、これらの各引張バネ33の上方に、そのスロープ板10に対する各支持アーム25の第1回動連結点X1が配置されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その第1回動連結点X1が設定されたスロープ板10の後端部10rが持ち上がる方向に各支持アーム25を回動させる付勢力、つまりは、スロープ板10をリフトアップする方向の付勢力を、これらの各引張バネ33が発生する構成になっている。
【0040】
即ち、これらの各引張バネ33は、その各スライダ22に対する接続点Maとスロープ板10に対する接続点Mbとの間、つまりは、その第1端部33aが掛止された各スライダ22の前端部22fと第2端部33bが掛止されたスロープ板10側の各掛止突部35との間を互いに引き寄せる方向の弾性力を発生する。更に、この弾性力に基づいて、各支持アーム25及びスロープ板10が、その第1回動連結点X1を支点として略「くの字」に折れ曲がる態様で相対回動しようとする。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、各支持アーム25が、その各スライダ22に対する第2回動連結点X2周りに回動しようとすることで、そのスロープ板10をリフトアップさせる方向の付勢力が付与される構成になっている。
【0041】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各引張バネ33の弾性力に基づき付与される付勢力は、上記のような利用者30によるスロープ板10のリフトアップ操作を補助する程度の大きさに設定されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、スロープ板10の展開及び格納操作時には、そのスロープ板10の姿勢を略水平に維持するとともに、リフトアップ操作時には、小さな力で、容易に、そのスロープ板10の後端部10rを持ち上げることが可能となっている。
【0042】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11は、ドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10と、このスロープ板10の展開及び格納方向に移動する移動体21としてのスライダ22と、そのスロープ板10に対して回動可能に連結されるとともにスライダ22に対して回動可能に連結される支持アーム25と、を備える。また、このスロープ装置11は、そのスロープ板10とスライダ22との間に介在された引張バネ33を備える。更に、このスロープ装置11においては、この引張バネ33の上方に、そのスロープ板10に対する支持アーム25の第1回動連結点X1が配置される。そして、これにより、その引張バネ33の弾性力に基づいて、スロープ板10が展開及び格納方向に移動するときの支持位置P0から第1回動連結点X1が持ち上がる方向の付勢力が付与されている。
【0043】
上記構成によれば、スロープ板10に対する引張バネ33の接続点Mbを、スロープ板10に対する支持アーム25の第1回動連結点X1よりもスロープ板10の前端部10f側に設定することで、その第1回動連結点X1を、よりスロープ板10の後端部10r側に設定することができる。そして、これにより、支持アーム25の長さを短縮することで、コンパクトな構成にて、その引張バネ33の弾性力に基づいて、容易に、スロープ板10のリフトアップ操作を行うことができる。
【0044】
加えて、引張バネ33には、その両端部を移動体21となるスライダ22側及びスロープ板10側に接続するだけで、その弾性力を利用可能という利点がある。そして、これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0045】
(2)スロープ装置11は、スロープ板10の上面10aに設けられた引き上げ部材31を備える。そして、この引き上げ部材31は、支持アーム25との第1回動連結点X1が設けられたスロープ板10の後端部10rに当該スロープ板10に対する接続部31aを有して、そのスロープ板10の前端部10f側に延在する。
【0046】
上記構成によれば、引き上げ部材31を用いることにより、容易に、その利用者30がスロープ板10のリフトアップ操作を行うことができる。更に、スロープ板10の前端部10f側に位置する利用者30が、立ち位置を変えることなく、その引き上げ部材31を把持することができる。そして、これにより、そのスロープ板10を格納ボックス12から引き出す展開操作に連続して、容易に、このスロープ板10をリフトアップ操作することができる。
【0047】
(3)引き上げ部材31は、スロープ板10に対する接続部31aを支点として上下に回動可能な棒状部材32としての構成を有する。
上記構成によれば、掴みやすさを損なうことなく、引き上げ部材31としての高い操作剛性を確保することができる。そして、これにより、単なる引き上げ操作のみならず、全方向の操作入力を可能として、より優れた操作性を確保することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
以下、車両用のスロープ装置を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0049】
図8及び図9(a)(b)に示すように、上記第1の実施形態におけるスロープ装置11との比較において、本実施形態のスロープ装置11Bは、その移動体21Bの構成が相違する。
【0050】
詳述すると、本実施形態の移動体21Bは、ガイドレール20Bの延伸方向に延在する状態で、そのガイドレール20Bに沿って摺動するサブガイド41と、この移動体21Bに対する支持アーム25Bの第2回動連結点X2を有してサブガイド41の延伸方向に沿って摺動する支持シュー42と、を備えている。
【0051】
具体的には、図9図12に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、サブガイド41は、ガイドレール20Bよりも短いレール形状を有している。また、このサブガイド41は、ガイドレール20Bが形成するガイド溝43に嵌合する状態で、そのスロープ板10Bの展開及び格納方向に延びるガイド溝43内を摺動することが可能になっている。更に、支持シュー42もまた、このサブガイド41が形成するガイド溝44に嵌合する状態で、その延伸方向に延びるガイド溝44内を摺動することが可能となっている。そして、本実施形態のサブガイド41は、そのガイド溝44内を支持シュー42が先端部41f側に向かって摺動することにより、この支持シュー42が当接するストッパ45を有している。
【0052】
即ち、本実施形態のスロープ装置11Bは、上記のように、利用者30がスロープ板10Bを格納ボックス12から引き出すことにより(図4参照)、支持アーム25Bを介してスロープ板10Bに連結された支持シュー42が、そのサブガイド41のガイド溝44内を後端部41r側から先端部41f側に向かって摺動する。更に、この支持シュー42が、サブガイド41の先端部41fに設けられたストッパ45に当接することで、サブガイド41もまた、支持シュー42と一体に、そのガイドレール20Bのガイド溝43内を後端部20r側から前端部20f側に向かって摺動する。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、そのサブガイド41の先端部41f側及び支持シュー42が形成する支持アーム25Bとの第2回動連結点X2を含む移動体21Bの大部分がガイドレール20の前端部20fから露出した状態で、そのスロープ板10Bのリフトアップ操作が行われる構成となっている。
【0053】
尚、図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bは、左右の移動体21B,21Bが、その第2回動連結点X2を構成する軸部材34Bを共有する。具体的には、本実施形態の軸部材34Bは、左右の支持シュー42,42を貫通する態様で設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、その左右の移動体21B,21Bが一体に、スロープ板10Bの展開及び格納方向に移動する構成になっている。
【0054】
また、図9図12に示すように、本実施形態のサブガイド41は、その支持シュー42に支持された状態で前方に向かって延びる支持アーム25Bの下方に延在する底板部46を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、この底板部46が、スロープ板10Bに対する第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動しないように、その移動体21Bに対する第2回動連結点X2を支点とした支持アーム25Bの回動を規制する下方支持部材47として機能する構成になっている。
【0055】
即ち、スロープ板10Bに対する支持アーム25Bの第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動した場合、その引張バネ33が発生する付勢力の方向が反転することになる。この点を踏まえ、本実施形態のスロープ装置11Bは、その下方支持部材47としてサブガイド41に設けられた底板部46が、そのスロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの支持位置P0から第1回動連結点X1が下がる方向に向かう支持アーム25Bの回動を規制する。そして、本実施形態のスロープ装置11Bにおいては、これにより、その引張バネ33の弾性力に基づいた安定的な付勢力の付与が担保されている。
【0056】
また、図8及び図9に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bは、スロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態で、その支持アーム25Bの第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制するロック機構50を備えている。
【0057】
詳述すると、図8及び図10に示すように、本実施形態のスロープ板10Bは、略平板状をなすスロープ本体51と、このスロープ本体51の幅方向両側を挟み込む一対の側端部材52,52と、を備えて構成されている。更に、本実施形態の側端部材52は、扁平略角筒形状をなしている。そして、本実施形態のロック機構50は、その主要な構成部材を、これら各側端部材52の中空部52x内に配置する状態で、そのスロープ板10Bの後端部10rに設けられている。
【0058】
さらに詳述すると、図13図15に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、そのスロープ板10Bに対する支持アーム25Bの第1回動連結点X1を構成する支軸53が設けられた側端部材52の外壁部54には、この外壁部54を厚み方向、即ちスロープ板10Bの幅方向に貫通する挿通孔55が設けられている。具体的には、本実施形態のスロープ板10Bは、その第1回動連結点X1を構成する支軸53を前後方向(図13及び図14中、左右方向)に挟む二位置に設けられた一対の挿通孔55a,55bを有している。また、本実施形態のスロープ装置11Bは、これらの挿通孔55a,55bに対し、その先端部分が挿入される状態で側端部材52の中空部52x内に設けられた一対の係合ピン56a,56bを備えている。更に、側端部材52の中空部52x内には、これらの各係合ピン56a,56bが挿通孔55a,55bを介して側端部材52の側方(図13及び図14中、下側)に突出する方向の付勢力を発生する一対の圧縮バネ57a,57bが設けられている。そして、支持アーム25Bには、スロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態、つまり支持アーム25B及びスロープ板10Bが略直線状に並ぶことによりスロープ板10Bの姿勢が略水平となる状態において、このスロープ板10Bに設けられた各挿通孔55a,55bに対向する一対の係合孔58a,58bが設けられている。
【0059】
即ち、本実施形態のロック機構50は、これら支持アーム25B側の係合孔58a,58bに対し、スロープ板10B側の各挿通孔55a,55bから突出した各係合ピン56a,56bが係合することにより、その支持アーム25Bの第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制する構成になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、そのスロープ板10Bの姿勢を安定的に保持した状態で、このスロープ板10Bを展開及び格納方向に移動させることが可能になっている。
【0060】
また、図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bは、スロープ板10Bの前端部10fにおいて、その上面10a側に開口する凹部61と、この凹部61内に設けられた操作レバー62と、を備えている。具体的には、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、凹部61は、スロープ板10Bの前端部10fにおける幅方向略中央位置に設けられている。また、操作レバー62は、前端部62aを引き上げることにより、その支軸62x周りに回動する構成になっている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、この操作レバー62を解除操作部63として、そのロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制を解除することが可能となっている。
【0061】
詳述すると、図8図13及び図14に示すように、本実施形態のロック機構50は、上記各係合ピン56a,56bを連結する連結部材64を備えている。また、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、この連結部材64は、上記各挿通孔55a,55bが設けられた側端部材52の外壁部54に対して接離する方向に移動可能な状態で、その中空部52x内に配置されている。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これらの操作レバー62と連結部材64との間を接続するワイヤーケーブル65を備えている。
【0062】
即ち、本実施形態のスロープ装置11Bは、その操作レバー62に入力された操作力を、このワイヤーケーブル65を介してロック機構50の連結部材64に伝達する。具体的には、上記のように利用者30が操作レバー62を引き上げる力は、この操作レバー62と連結部材64との間を接続するワイヤーケーブル65が、その連結部材64を牽引して上記各挿通孔55a,55bが設けられた側端部材52の外壁部54から離間させる方向の引張力に変換される。更に、この連結部材64の移動によって、当該連結部材64を介して互いに連結された上記各係合ピン56a,56bが、その圧縮バネ57a,57bの付勢力に抗して側端部材52の中空部52x内に没入する。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、これらの各係合ピン56a,56bが、支持アーム25B側の係合孔58a,58bから脱離することで、そのロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制が解除される構成になっている。
【0063】
尚、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、ワイヤーケーブル65は、側端部材52の中空部52x内に配索されている。また、各圧縮バネ57a,57bは、それぞれ、その対応する各係合ピン56a,56bと側端部材52の中空部52x内に設けられた支持壁67との間で圧縮される。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これらの各圧縮バネ57a,57bの付勢力に基づいて、利用者30が操作レバー62から手を離すことにより、再び、その各係合ピン56a,56bが、各挿通孔55a,55bを介して側端部材52の側方に突出する構成になっている。
【0064】
また、図16に示すように、本実施形態の支持アーム25Bには、その第2回動連結点X2を支点とした回動によりスロープ板10に対する第1回動連結点X1が上方に持ち上げられたリフトアップ状態において、そのスロープ板10Bに設けられた挿通孔55aに対向する係合孔68が形成されている。
【0065】
具体的には、図15及び図16に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、この係合孔68は、第1回動連結点X1を構成する支軸53よりもスロープ板10Bの前端部10f側に設けられた挿通孔55aと同じく、その第1回動連結点X1を中心とした同心円Q上に配置されている。即ち、この係合孔68は、移動体21Bに対する第2回動連結点X2を支点とした各支持アーム25Bの回動によりスロープ板10Bに対する第1回動連結点X1が持ち上がる際、各支持アーム25Bに対してスロープ板10が相対回動することにより、そのスロープ板10側に設けられた上記挿通孔55aに対向する位置に移動する。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、そのスロープ板10B側の挿通孔55aから突出した係合ピン56aが支持アーム25B側の係合孔68に係合する構成になっている。
【0066】
即ち、本実施形態のロック機構50は、これらスロープ板10B側に設けられた係合ピン56aと支持アーム25B側の係合孔68との係合により、スロープ板10Bがリフトアップされた状態において、その支持アーム25Bの第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制する機能を有している。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、その第1回動連結点X1周りの回動によりスロープ板10Bに与えられた傾斜を安定的に保持することが可能となっている。
【0067】
さらに詳述すると、図15図17に示すように、本実施形態のスロープ装置11Bにおいて、その支持アーム25B側の係合孔68は、この係合孔68及び挿通孔55aを通る上記同心円Qの周方向に沿って延びる長孔69となっている。即ち、本実施形態のロック機構50は、このような長孔69としての構成を有する係合孔68内を係合ピン56aが移動可能な範囲において、その第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を許容する。そして、本実施形態のスロープ装置11Bは、これにより、リフトアップ状態におけるスロープ板10Bの後端部10rと車両フロア27との位置関係が必ずしも一定ではない場合であっても、安定的に、その後端部10rに設けられたフロア係合部26を、車両フロア27の縁部27eに係合させることが可能になっている。
【0068】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スロープ装置11Bは、スロープ板10Bに対する支持アーム25Bの第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動しないように、その移動体21Bに対する第2回動連結点X2を支点とした支持アーム25Bの回動を規制する下方支持部材47を備える。
【0069】
即ち、スロープ板10Bに対する支持アーム25Bの第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動した場合、その引張バネ33が発生する付勢力の方向が反転することになる。しかしながら、上記構成によれば、支持アーム25Bの下方に設けられた下方支持部材47によって、その第1回動連結点X1が下がる方向に向かう支持アーム25Bの回動を規制することができる。そして、これにより、その引張バネ33の弾性力に基づいた安定的な付勢力の付与を担保することができる。
【0070】
(2)移動体21Bは、スロープ板10Bの展開及び格納方向に延びるガイドレール20Bの延伸方向に延在する状態で当該ガイドレール20Bに沿って摺動するサブガイド41と、移動体21Bに対する支持アーム25Bの第2回動連結点X2を有してサブガイド41の延伸方向に沿って摺動する支持シュー42と、を備える。
【0071】
上記構成によれば、ガイドレール20Bに沿って摺動するサブガイド41がガイドレール20Bを延長することで、そのガイドレール20Bの長さを短縮することが可能になる。そして、これにより、スロープ板10Bが格納状態にある場合に、車外からガイドレール20Bが見え難い構成とすることで、優れた意匠性を確保することができる。
【0072】
(3)サブガイド41は、支持アーム25Bの下方に延在する底板部46を備える。そして、この底板部46が、スロープ板10Bに対する第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動しないように、その支持アーム25Bの回動を規制する下方支持部材47として機能する。
【0073】
上記構成によれば、そのサブガイド41に設けられた底板部46によって、スロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの支持位置P0から第1回動連結点X1が下がる方向に向かう支持アーム25Bの回動を規制することができる。そして、これにより、簡素な構成にて、そのスロープ板10Bに対する支持アーム25Bの第1回動連結点X1が引張バネ33よりも下方に移動しないようにすることができる。
【0074】
(4)スロープ装置11Bは、スロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態で、その第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制するロック機構50を備える。これにより、スロープ板10Bの姿勢を安定的に保持した状態で、このスロープ板10Bを展開及び格納方向に移動させることができる。
【0075】
(5)ロック機構50は、支持アーム25Bの回動により第1回動連結点X1が持ち上げられたリフトアップ状態でスロープ板10Bの回動を規制する機能を備える。これにより、その第1回動連結点X1の回動によりスロープ板10Bに与えられた傾斜を安定的に保持することができる。
【0076】
(6)ロック機構50は、スロープ板10Bに設けられた第1係合部Z1としての係合ピン56と支持アーム25Bに設けられた第2係合部Z2としての係合孔58,68とが係合することにより、その第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制する。これにより、簡素な構成にて、信頼性の高いロック機構50を形成することができる。
【0077】
(7)スロープ板10Bがリフトアップされた状態において、そのスロープ板10B側の係合ピン56aが係合する支持アーム25B側の係合孔68は、長孔69としての構成を有する。
【0078】
上記構成によれば、長孔69としての構成を有する係合孔68内を係合ピン56aが移動可能な範囲において、その第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を許容することができる。そして、これにより、リフトアップ状態におけるスロープ板10Bの後端部10rと車両フロア27との位置関係が必ずしも一定ではない場合であっても、安定的に、そのスロープ板10Bの後端部10rに設けられたフロア係合部26を、車両フロア27の縁部27eに係合させることができる。
【0079】
(8)スロープ装置11Bは、スロープ板10Bの前端部10fに、そのロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制を解除するための解除操作部63を備える。
上記構成によれば、スロープ板10を格納ボックス12から引き出した利用者30が、立ち位置を変えることなく、スロープ板10の前端部10f側に位置したまま、そのロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制を解除して、このスロープ板10Bをリフトアップ状態に移行させることができる。そして、これにより、利用者30の利便性を向上させることができる。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
・上記第1の実施形態に示すスロープ装置11では、引張バネ33は、その第1端部33aが移動体21に対する支持アーム25の第2回動連結点X2を構成する軸部材34に掛止され、その第2端部33bがスロープ板10の下面10bに設けられた掛止突部35に掛止されることとした。しかし、これに限らず、その移動体21に対する引張バネ33の接続点Ma及びスロープ板10に対する引張バネ33の接続点Mbの設定位置については、この引張バネ33の上方にスロープ板10に対する支持アーム25の第1回動連結点X1が配置される限りにおいて、任意に変更してもよい。
【0082】
・上記第1の実施形態に示すスロープ装置11では、スロープ板10の上面10aに設けられた引き上げ部材31は、スロープ板10の後端部10rに接続部31aを有して、そのスロープ板10の前端部10f側に延びる棒状部材32としての構成を有することとした。しかし、これに限らず、例えば、可撓性を有した紐状部材を引き上げ部材31に用いてもよい。
【0083】
・また、引き上げ部材31は、必ずしもスロープ板10の後端部10rに接続部31aを有してスロープ板10の前端部10f側に延在する長尺形状をなすものでなくともよい。
【0084】
例えば、図18及び図19に示すように、スロープ板10Cの上面10aから上方に突出する把持部70xを有したハンドル部材70を、その引き上げ部材31に用いる構成としてもよい。尚、これらの各図中に示すハンドル部材70は、使用時以外には、スロープ板10C上に傾倒させることが可能な構成となっているが、スロープ板10Cの上面10aから上方に突出する状態で保持されたものを用いてもよい。また、このようなハンドル部材70を設ける位置は、必ずしもスロープ板10Cの後端部10rでなくともよく、スロープ板10Cの前端部10f側に設定してもよい。そして、スロープ板10Cの上面10aに設けられた複数の引き上げ部材31を備える構成であってもよい。
【0085】
・上記第2の実施形態に示すスロープ装置11Bにおいては、その移動体21Bを構成するサブガイド41に設けられた底板部46が、下方支持部材47として機能することとした。しかし、上記第1の実施形態に示すスロープ装置11において、その移動体21を構成するスライダ22のように、支持アーム25の第2回動連結点X2が設けられた部材が、上記底板部46のような下方支持部材47として機能する構成であってもよい。そして、その移動体21,21Bとは独立に設けられた下方支持部材47を備える構成であってもよい。
【0086】
・また、上記第2の実施形態に示すスロープ装置11Bにおいては、ロック機構50は、スロープ板10Bに設けられた第1係合部Z1としての係合ピン56と支持アーム25Bに設けられた第2係合部Z2としての係合孔58,68とが係合することにより、その第1回動連結点X1を支点としたスロープ板10Bの回動を規制することとした。しかし、これに限らず、ロック機構50の構成については、任意に変更してもよい。例えば、スロープ板10B側に、その第1係合部Z1としての係合孔が設けられ、支持アーム25B側に、その第2係合部Z2としての係合ピンが設けられた構成であってもよい。そして、第1係合部Z1及び第2係合部Z2の一方側が、鉤状部材であり、他方側が、この鉤状部材に対応した係合突部又は係合凹部である等の構成であってもよい。
【0087】
・更に、ロック機構50は、スロープ板10Bが展開及び格納方向に移動するときの姿勢保持状態でのみ、そのスロープ板10Bの回動を規制する構成であってもよい。そして、スロープ板10Bがリフトアップされた状態においてのみ、そのスロープ板10Bの回動を規制する構成であってもよい。
【0088】
・また、上記第2の実施形態に示すスロープ装置11Bにおいては、スロープ板10Bの前端部10fに、そのロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制を解除するための解除操作部63が設けられることとしたが、解除操作部63の構成及び配置は任意に変更してもよい。そして、その解除操作部63をロック機構50に伝達する接続部材についてもまた、必ずしも、ワイヤーケーブル65を用いなくともよい。
【0089】
・上記各実施形態では、各引張バネ33の弾性力に基づき付与される付勢力は、その利用者30によるスロープ板10のリフトアップ操作を補助する程度の大きさに設定されることとした。しかし、これに限らず、その各引張バネ33の弾性力に基づく付勢力の大きさは、任意に変更してもよい。例えば、ロック機構50によるスロープ板10Bの回動規制を解除することで、利用者30が特に力を加えなくとも、そのスロープ板10Bがリフトアップするような大きな付勢力が付与された構成であってもよい。そして、これにより、より一層、利用者30の利便性を高めることができる。
【0090】
次に、上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記引き上げ部材は、前記接続部を支点として上下に回動可能な棒状部材であること、を特徴とする車両用スロープ装置。
【0091】
上記構成によれば、掴みやすさを損なうことなく、引き上げ部材としての高い操作剛性を確保することができる。そして、これにより、単なる引き上げ操作のみならず、全方向の操作入力を可能として、より優れた操作性を確保することができる。
【0092】
(ロ)前記ロック機構は、前記第1係合部としての係合ピンと前記第2係合部としての係合孔とが係合することにより、前記スロープ板の回動を規制すること、を特徴とする車両用スロープ装置。これにより、簡素な構成にて、信頼性の高いロック機構を形成することができる。
【0093】
(ハ)前記リフトアップ状態において前記係合ピンが係合する前記係合孔が、長孔としての構成を有すること、を特徴とする車両用スロープ装置。
上記構成によれば、長孔としての構成を有する係合孔内を係合ピンが移動可能な範囲において、その第1回動連結点を支点としたスロープ板の回動を許容することができる。そして、これにより、リフトアップ状態におけるスロープ板の後端部と車両フロアとの位置関係が必ずしも一定ではない場合であっても、安定的に、そのスロープ板の後端部を、車両フロアの縁部に係合させることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…車両、2…車体、3…ドア開口部、10,10B,10C…スロープ板、10a…上面、10b…下面、10f…前端部、10r…後端部、11,11B…スロープ装置、12…格納ボックス、12a…開口部、20,20B…ガイドレール、20f…前端部、20r…後端部、21,21B…移動体、22…スライダ、22f…前端部、25,25B…支持アーム、26…フロア係合部、27…車両フロア、27e…縁部、30…利用者、31…引き上げ部材、31a…接続部、31b…自由端、32…棒状部材、33…引張バネ、33a…第1端部、33b…第2端部、34,34B…軸部材、35…掛止突部、41…サブガイド、41f…先端部、41r…後端部、42…支持シュー、43,44…ガイド溝、45…ストッパ、46…底板部、47…下方支持部材、50…ロック機構、51…スロープ本体、52…側端部材、52x…中空部、53…支軸、54…外壁部、55,55a,55b…挿通孔、56,56a,56b…係合ピン、57a,57b…圧縮バネ、58,58a,58b…係合孔、61…凹部、62…操作レバー、62a…前端部、62x…支軸、63…解除操作部、64…連結部材、65…ワイヤーケーブル、67…支持壁、68…係合孔、69…長孔、70…ハンドル部材、70x…把持部、X1…第1回動連結点、X2…第2回動連結点、P0…支持位置、Ma,Mb…接続点、Z1…第1係合部、Z2…第2係合部、Q…同心円。
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