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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】電気化学セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20230620BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230620BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230620BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/595 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20230620BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20230620BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M50/109
H01M50/564
H01M4/13
H01M50/531
H01M50/586
H01M50/595
H01M50/411
H01M50/545
H01M50/548 201
H01M50/56
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019109514
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020202121
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100122(JP,A)
【文献】特開平10-334877(JP,A)
【文献】特開2002-329495(JP,A)
【文献】特開2007-141864(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008248(WO,A1)
【文献】特開2008-204920(JP,A)
【文献】特開2005-285691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/0587、10/04
H01M50/10、50/40、50/50
H01M4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極と、帯状の負極を有し、
前記正極と前記負極の少なくとも一方の表裏両面に、前記正極と前記負極の少なくとも一方の幅方向一側端縁または幅方向他側端縁を除いて形成した塗膜硬化層からなるセパレータ層を介し、前記正極と前記負極をそれらの幅方向一側の端縁と他側の端縁を幅方向に所定幅ずらして重ね合わせた積層体を、任意の巻き中心軸を周回するように巻回して構成された電極積層構造体と、
巻回された前記正極の幅方向一側の端縁に該端縁に隣接する前記負極の一側端縁より外側にはみ出す正極突出部を電気的に接続した正極側容器と、
巻回された前記負極の幅方向他側の端縁に該端縁に隣接する前記正極の他側端縁より外側にはみ出す負極突出部を電気的に接続し、前記正極側容器とともに前記電極積層構造体を収納する収納空間を画成する負極側容器と、を備え、
前記帯状の正極が、帯状の正極側集電体シートと、該集電体シートの表裏両面における前記正極突出部を除く部分に形成された正極活物質層を備えて構成され、
前記帯状の負極が、帯状の負極側集電体シートと、該集電体シートの表裏両面における前記負極突出部を除く部分に形成された負極活物質層を備えて構成され、
前記正極の長さ方向両端側端縁の表裏面を所定幅で覆う正極側端部絶縁層が形成され、
前記負極の長さ方向両端側端縁の表裏面を所定幅で覆う負極側端部絶縁層が形成されたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記正極側端部絶縁層が、前記正極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記正極側活物質層と前記正極側集電体シートと前記正極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および正極側延出部からなり、
前記負極側端部絶縁層が、前記負極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記負極側活物質層と前記負極側集電体シートと前記負極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および負極側延出部からなることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記負極の表裏両面に前記負極活物質層を覆うセパレータ層が形成され、前記負極突出部近傍に位置する前記セパレータ層の幅方向一側端縁と、前記負極幅方向他側に位置する前記セパレータ層の他側端縁が、いずれも、これらに隣接する前記正極活物質層の幅方向端縁よりも前記電極積層構造体における外側に突出されたことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記正極側端部絶縁層を構成する前記被覆部と前記正極側延出部は、前記正極側集電体シートの長さ方向端部側端面と該端面に隣接する前記正極側活物質層の端面を覆い、
前記負極側端部絶縁層を構成する前記被覆部と前記負極側延出部は、前記負極側集電体シートの長さ方向端部側端面と該端面に隣接する前記負極側活物質層の端面を覆うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記正極側容器と前記正極突出部が導電材を介し電気的に接続されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記負極側容器と前記負極突出部が導電材を介し電気的に接続されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記正極側端部絶縁層と前記負極側端部絶縁層が絶縁テープからなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法であって、
帯状の負極側集電体シートとその幅方向一側端縁を除く部分に形成された負極活物質層を備えた負極を用い、この負極の長さ方向両端部表裏面に負極側端部絶縁層を形成し、前記負極側端部絶縁層により前記負極側集電体シートの表裏面両端部と該両端部に位置する前記負極活物質層を覆う工程と、
帯状の正極側集電体シートとその幅方向他側端縁を除く部分に形成された正極活物質層を備えた正極を用い、この正極の長さ方向両端部表裏面に正極側端部絶縁層を形成し、前記正極側端部絶縁層により前記正極側集電体シートの表裏面両端部と該両端部に位置する前記正極活物質層を覆う工程と、
前記端部絶縁層を形成した前記正極側集電体シートと前記負極側集電体シートの少なくとも一方に対し、前記シート表裏面の幅方向一側端縁を除く部分に絶縁塗膜を形成する工程と、
前記絶縁塗膜を硬化させてセパレータ層を形成する工程と、
前記負極側集電体シートと前記正極側集電体シートをそれらの幅方向の一側端縁と幅方向他側端縁をそれらの幅方向に所定幅ずらして前記セパレータ層を介し重ね合わせつつ任意の巻き中心軸に沿って巻回し電極積層構造体を形成する巻回工程と、
前記巻回により前記負極側集電体シートの一側縁を前記電極積層構造体の一側端面に突出させて形成した負極突出部を負極側容器に電気的に接続する負極側接続工程と、
前記巻回により前記正極側集電体シートの他側縁を前記電極積層構造体の他側端面に突出させて形成した正極突出部を正極側容器に電気的に接続する正極側接続工程を備えたことを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項9】
前記正極側端部絶縁層として、前記正極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記正極側活物質層と前記正極側集電体シートと前記正極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および正極側延出部からなる正極側端部絶縁層を用い、
前記負極側端部絶縁層として、前記負極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記負極側活物質層と前記負極側集電体シートと前記負極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および負極側延出部からなる負極側端部絶縁層を用いることを特徴とする請求項8に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
前記正極突出部を前記正極側容器に電気的に接続する場合、前記正極側容器の内面に塗布したペースト状の正極側導電材を介し接続することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
前記負極突出部を前記負極側容器に電気的に接続する場合、前記負極側容器の内面に塗布したペースト状の負極側導電材を介し接続することを特徴とする請求項8~請求項10の何れかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
前記正極側集電体シートに形成する前記正極側端部絶縁層を絶縁テープの貼り付けにより形成し、前記負極側集電体シートに形成する前記負極側端部絶縁層を絶縁テープの貼り付けにより形成することを特徴とする請求項8~請求項11のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
複数の正極側集電体シートを帯状に一直線状に前記正極側端部絶縁層を介して接続し、複数の負極側集電体シートを帯状に一直線状に前記負極側端部絶縁層を介して接続し、接続した複数の正極側集電体シートと接続した負極側集電体シートを個別に前記巻回工程に順次供与すること特徴とする請求項8~請求項12のいずれか一項に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解化学セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン、ウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいて、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極どうしの面積を可能な限り大きくすることが必要とされている。電気化学セルの構造として、一対の帯状の正極電極と負極電極を帯状のセパレータを介し巻回してケースに収め、電解液をケースに封入した構造が知られている。
【0003】
例えば、電池用の多孔性セパレータとして、以下の特許文献1には、電極上にセパレータ前駆体の薄い層を印刷する工程とこの薄い層を加硫して微孔性複合セパレータ構造に変化させる工程を備える製造方法が開示されている。
以下の特許文献2には、高分子固体電解質樹脂溶液を延伸多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に含浸した後、溶媒を除去して得られた高分子固体電解質と、延伸多孔質PTFEの空隙中に電極触媒と高分子固体電解質を含む電極成分を充填した電極とを一体成形した複合高分子固体電解質膜/電極一体成形体が記載されている。
また、以下の特許文献3に記載のように、帯状の正極および負極とシート状のセパレータを介し巻回して電極群を構成し、この電極群を正極側容器と負極側容器からなる外装体の内部に収容した電気化学セルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-334877号公報
【文献】特開平08-329962号公報
【文献】特開2016-100122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の構成にあっては、帯状の正極と負極、および、シート状のセパレータを巻回して電極群を構成する場合、正極と負極をそれらの幅方向に互い違いにずらして巻回し、電極群の一方の端面に正極突出部を構成し、電極群の他方の端面に負極突出部を構成し、これらを正極側容器の内面と負極側容器の内面に接続した構成が採用されている。
しかし、特許文献3に記載の構造を採用した場合、正極と負極とセパレータに巻きズレを生じると、正極と負極のショートリスクが発生する問題がある。
ショートリスクを回避するためには、セパレータの幅を大きくする必要があるが、セパレータの幅を必要以上に大きくすると、電池として体積効率が悪化し、その結果として、体積当たりの電池容量密度が低下する課題がある。また、正極側容器と負極側容器に接続するための正極突出部と負極突出部を長くして確実な導通を確保しようとした場合、正極と負極に設ける活物質層の体積が少なくなるので、電池として体積効率が悪化し、その結果として、体積当たりの電池容量密度が低下するという課題があった。
【0006】
本発明は、以上説明のような従来の実情に鑑みなされたものであり、帯状の正極と負極をセパレータを介し巻回して電極積層構造体を構成する電気化学セルの場合、ショートリスクの発生を抑制し、電気化学セルとしての体積効率向上を図ることのできる電気化学セルとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記課題を解決するため、本発明の一形態に係る電気化学セルは、帯状の正極と、帯状の負極を有し、前記正極と前記負極の少なくとも一方の表裏両面に、前記正極と前記負極の少なくとも一方の幅方向一側端縁または幅方向他側端縁を除いて形成した塗膜硬化層からなるセパレータ層を介し、前記正極と前記負極をそれらの幅方向一側の端縁と他側の端縁を幅方向に所定幅ずらして重ね合わせた積層体を、任意の巻き中心軸を周回するように巻回して構成された電極積層構造体と、巻回された前記正極の幅方向一側の端縁に該端縁に隣接する前記負極の一側端縁より外側にはみ出す正極突出部を電気的に接続した正極側容器と、巻回された前記負極の幅方向他側の端縁に該端縁に隣接する前記正極の他側端縁より外側にはみ出す負極突出部を電気的に接続し、前記正極側容器とともに前記電極積層構造体を収納する収納空間を画成する負極側容器と、を備え、前記帯状の正極が、帯状の正極側集電体シートと、該集電体シートの表裏両面における前記正極突出部を除く部分に形成された正極活物質層を備えて構成され、前記帯状の負極が、帯状の負極側集電体シートと、該集電体シートの表裏両面における前記負極突出部を除く部分に形成された負極活物質層を備えて構成され、前記正極の長さ方向両端側端縁の表裏面を所定幅で覆う正極側端部絶縁層が形成され、前記負極の長さ方向両端側端縁の表裏面を所定幅で覆う負極側端部絶縁層が形成されたことを特徴とする。
【0008】
塗膜硬化型のセパレータ層を備えた正極と負極を巻回した構造の電極積層体であれば、セパレータ層が確実に正極と負極を絶縁分離するので、正極と負極に巻ずれを生じてもショートリスク発生の少ない電解化学セルを提供できる。
また、電極積層構造体の一方の端面側に形成した正極突出部を正極側容器に接続し、他方の端面側に形成した負極突出部を負極容器に接続することで、導通用のタブなどを別途用いることなく接続ができる。このため、導通用のタブを略することができ、導通用のタブを設けていたスペースに電極を配置できるので、体積当たりの電池容量密度の高い電気化学セルを提供できる。
これらに対し、テープ状のセパレータを正極と負極とともに巻回した構造であると、巻ズレを生じた場合、内部ショートを引き起こすおそれがある。内部ショートのリスクを回避するため、セパレータを単純に大きくすると、電気学セルとして、体積当たりの電池容量密度が低下する。このため、塗膜硬化型のセパレータ層を備えた正極と負極からなる電気化学セルであれば、体積当たりの電池容量密度低下を引き起こすことのない電気化学セルを提供できる。
【0009】
(2)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側端部絶縁層が、前記正極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記正極側活物質層と前記正極側集電体シートと前記正極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および正極側延出部からなり、前記負極側端部絶縁層が、前記負極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記負極側活物質層と前記負極側集電体シートと前記負極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および負極側延出部からなることが好ましい。
【0010】
正極側集電体シートと正極活物質層からなる正極の必要部分をセパレータ層で覆い、負極側集電体シートと負極活物質層からなる負極の必要部分をセパレータ層で覆うことにより、巻回構造の電極積層構造体において正極と負極を絶縁した構造を実現できる。
また、正極の長さ方向両端部を所定幅に渡り正極側端部絶縁層で覆い、負極の長さ方向両端部を所定幅に渡り負極側端部絶縁層で覆うことにより、巻回構造の電極積層構造体を構成した場合、巻き始めの部分と巻き終わりの部分において集電体シートの一部が露出する可能性のある部分周りに端部絶縁層を配置することができ、絶縁性の高い構造を提供できる。
【0011】
(3)本発明に係る一形態に係る電気化学セルにおいて、前記負極の表裏両面に前記負極活物質層を覆うセパレータ層が形成され、前記負極突出部近傍に位置する前記セパレータ層の幅方向一側端縁と、前記負極幅方向他側に位置する前記セパレータ層の他側端縁が、いずれも、これらに隣接する前記正極活物質層の幅方向端縁よりも前記電極積層構造体における外側に突出されたことを特徴とする。
【0012】
正極と負極を巻回した電極積層構造体において、負極活物質層を覆ったセパレータ層において負極の幅方向両端部に位置するセパレータ層の端縁が、該端縁に隣接する正極活物質層の幅方向端縁よりも外側に突出されていることが好ましい。
電気化学セルの構成上、負極幅を正極幅より大きくして正極端縁が負極端縁の外側にはみ出さない構造とする必要がある。このため、正極活物質層の幅方向端縁よりセパレータ層の端縁を外側に突出させた構造とすることで、正極端縁の負極端縁より外側へのはみ出しを防止できる。また、正極と負極を巻回して電極積層構造体を構成した場合に、多少の巻き乱れを生じたとしても、正極の幅方向端縁を負極の幅方向端縁の内側に配置できる。
【0013】
(4)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側端部絶縁層を構成する前記被覆部と前記正極側延出部は、前記正極側集電体シートの長さ方向端部側端面と該端面に隣接する前記正極側活物質層の端面を覆い、前記負極側端部絶縁層を構成する前記被覆部と前記負極側延出部は、前記負極側集電体シートの長さ方向端部側端面と該端面に隣接する前記負極側活物質層の端面を覆うことが好ましい。
【0014】
正極側延出部を設けることにより正極側集電体シートの両端部端面部分の絶縁性を向上でき、負極側延出部を設けることにより負極側集電体シートの両端部端面部分の絶縁性を向上できるので、巻回構造の電極積層構造体を構成した場合、巻き始めの部分と巻き終わりの部分の絶縁性を更に向上できる。
【0015】
(5)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側容器と前記正極突出部が導電材を介し電気的に接続されたことが好ましい。
導通材を介し正極突出部を正極側容器に接続することで正極と正極側容器の確実な導通を得ることができる。
【0016】
(6)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記負極側容器と前記負極突出部が
導電材を介し電気的に接続されたことが好ましい。
導通材を介し負極突出部を負極側容器に接続することで負極と負極側容器の確実な導通を得ることができる。
【0017】
(7)本発明の一形態に係る電気化学セルにおいて、前記正極側端部絶縁層と前記負極側端部絶縁層が絶縁テープからなることが好ましい。
【0018】
端部絶縁層を絶縁テープから構成することにより、正極あるいは負極の集電体シートの両端部を必要な幅で簡単に絶縁することができる。これにより、巻回構造の電極積層構造体において、巻き始めの部分と巻き終わりの部分において更に良好な絶縁性を確保した構造を提供できる。
【0019】
(8)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法は、(1)~(7)のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法であって、帯状の負極側集電体シートとその幅方向一側端縁を除く部分に形成された負極活物質層を備えた負極を用い、この負極の長さ方向両端部表裏面に負極側端部絶縁層を形成し、前記負極側端部絶縁層により前記負極側集電体シートの表裏面両端部と該両端部に位置する前記負極活物質層を覆う工程と、帯状の正極側集電体シートとその幅方向他側端縁を除く部分に形成された正極活物質層を備えた正極を用い、この正極の長さ方向両端部表裏面に正極側端部絶縁層を形成し、前記正極側端部絶縁層により前記正極側集電体シートの表裏面両端部と該両端部に位置する前記正極活物質層を覆う工程と、前記端部絶縁層を形成した前記正極側集電体シートと前記負極側集電体シートの少なくとも一方に対し、前記シート表裏面の幅方向一側端縁を除く部分に絶縁塗膜を形成する工程と、前記絶縁塗膜を硬化させてセパレータ層を形成する工程と、前記負極側集電体シートと前記正極側集電体シートをそれらの幅方向の一側端縁と幅方向他側端縁をそれらの幅方向に所定幅ずらして前記セパレータ層を介し重ね合わせつつ任意の巻き中心軸に沿って巻回し電極積層構造体を形成する巻回工程と、前記巻回により前記負極側集電体シートの一側縁を前記電極積層構造体の一側端面に突出させて形成した負極突出部を負極側容器に電気的に接続する負極側接続工程と、前記巻回により前記正極側集電体シートの他側縁を前記電極積層構造体の他側端面に突出させて形成した正極突出部を正極側容器に電気的に接続する正極側接続工程を備えたことを特徴とする。
【0020】
負極と正極の少なくとも一方に絶縁塗膜を硬化させたセパレータ層を形成し、このセパレータ層を介し負極と正極を巻回することで負極と正極ににおいて絶縁性に優れた電極積層構造体を得ることができる。
塗膜硬化型のセパレータ層を備えた正極と負極を巻回した構造の電極積層体であれば、セパレータ層を正極と負極の必要な位置に正確に形成でき、セパレータ層が確実に正極と負極を絶縁分離するので、巻回時に正極と負極の巻ずれを生じてもショートリスク発生のおそれのない電解化学セルを提供できる。
【0021】
(9)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、前記正極側端部絶縁層として、前記正極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記正極側活物質層と前記正極側集電体シートと前記正極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および正極側延出部からなる正極側端部絶縁層を用い、前記負極側端部絶縁層として、前記負極の長さ方向両端側端縁表裏面に各々位置する前記負極側活物質層と前記負極側集電体シートと前記負極突出部をこれらの外側に延出して覆うための被覆部および負極側延出部からなる負極側端部絶縁層を用いることが好ましい。

【0022】
負極活物質層を備えた負極側集電体シートによる負極と、正極活物質層を備えた正極側集電体シートによる正極のそれぞれに端部絶縁層を設け、これら負極と正極を巻回することにより、巻き始めの部分と巻き終わりの部分に端部絶縁層を配置することができ、巻き始めの部分と巻き終わりの部分においてショートリスクの少ない、絶縁性に優れた電極積層構造体を提供できる。
【0023】
(10)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、前記正極突出部を前記正極側容器に電気的に接続する場合、前記正極側容器の内面に塗布したペースト状の正極側導電材を介し接続することが好ましい。
ペースト状の正極側導電材を介し接続することで、正極突出部と正極側容器の良好な導通をとることができる。
【0024】
(11)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、前記負極突出部を前記負極側容器に電気的に接続する場合、前記負極側容器の内面に塗布したペースト状の負極側導電材を介し接続することが好ましい。
ペースト状の負極側導電材を介し接続することで、負極突出部と負極側容器の良好な導通をとることができる。
【0025】
(12)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、前記正極側集電体シートに形成する前記正極側端部絶縁層を絶縁テープの貼り付けにより形成し、前記負極側集電体シートに形成する前記負極側端部絶縁層を絶縁テープの貼り付けにより形成することが好ましい。
【0026】
端部絶縁層を形成する場合、絶縁テープの貼り付けによると、正極側集電体シートの端部であっても負極側集電体シートの端部であっても必要な幅の端部絶縁層を簡単に形成できる。絶縁テープからなる端部絶縁層を備えた正極と負極を用いてショートリスクの少ない電極積層構造体を形成することができ、ショートリスクの少ない電気化学セルを得ることができる。
【0027】
(13)本発明の一形態に係る電気化学セルの製造方法において、複数の正極側集電体シートを帯状に一直線状に前記正極側端部絶縁層を介して接続し、複数の負極側集電体シートを帯状に一直線状に前記負極側端部絶縁層を介して接続し、接続した複数の正極側集電体シートと接続した負極側集電体シートを前記巻回工程に順次供与することが好ましい。
【0028】
複数の正極側集電体シートを正極側端部絶縁層を介し直線状に接続したもの、あるいは、複数の負極側集電体シートを接続用絶縁テープを介し直線状に接続したものを巻回工程に用いるならば、巻回工程に正極側集電体シートと負極側集電体シートを順次供給することで電極積層構造体を連続的に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明による、塗膜硬化型のセパレータ層を備えた正極と負極を巻回した構造の電極積層体であれば、セパレータ層により確実に正極と負極を絶縁分離できるので、正極と負極の巻ずれを多少生じてもショートリスク発生の少ない電解化学セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る第1実施形態の二次電池(電気化学セル)の断面図。
図2】同実施形態の二次電池に用いられるセパレータ層付きの正極および負極を巻回するために積層する状態を示す斜視図。
図3図1に示す二次電池を製造するために用いる電極を示すもので、(A)は負極用集電体シートに負極活物質層を形成し、長さ方向両端部に端部絶縁層を形成した状態を示す平面図、(B)は塗膜硬化型のセパレータ層を形成した負極側巻回用電極シートを示す平面図、(C)は(B)に示す状態の側面図、(D)は正極用集電体シートに正極活物質層を形成し、長さ方向両端部に端部絶縁層を形成した状態を示す平面図、(E)は塗膜硬化型のセパレータ層を形成した正極側巻回用電極シートを示す平面図、(F)は(B)に示す負極側巻回用電極シートと(E)に示す正極側巻回用電極シートを巻回した電極積層構造体を示す斜視図。
図4】本発明に係る第1実施形態の二次電池について、製造方法の一例を示すための図であり、正極缶の内部にガスケットを取り付けた状態の一例を示す断面図。
図5】同製造方法の一例を示すための図であり、正極缶の底面に導電材料を塗布した状態を示す断面図。
図6】同製造方法の一例を示すための図であり、導電材料を塗布した正極缶に電極積層構造体を収容した状態を示す断面図。
図7】本発明に係る第2実施形態の二次電池(電気化学セル)の断面図。
図8】帯状の負極側巻回用電極シートを絶縁テープを介し直線状に複数接続した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る電極の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、電気化学セルの一例として、コイン型のリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を挙げ、この電池に搭載される電極について説明する。
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る電解化学セルを二次電池に適用した第1実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の二次電池1は、いわゆるボタン型の二次電池1であって、外装体2と、外装体2内に図示略の電解液とともに収納された電極積層構造体3を備えている。なお、電解液は支持塩を非水溶媒に溶解した電解液などが好適に用いられる。
【0033】
外装体2は、平面視で円形状を呈している。具体的に、外装体2は、有底筒状の正極側容器11と、この正極側容器11にガスケット12を介し組み付けられ、正極側容器11との間に収納空間Sを画成する有頂筒型の負極側容器13を有している。
図1に示す実施形態において、正極側容器11および負極側容器13のそれぞれの中心軸線が共通軸上に配置されている。以下、この共通軸を軸線Oと称し、軸線O方向に沿う負極側容器13側を上側と称し、正極側容器11側を下側と称し、軸線O方向から見た平面視で軸線Oに直交する方向を径方向と称し、軸線O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0034】
正極側容器11および負極側容器13は、例えばステンレス鋼板等の金属板材を絞り加工等して形成されている。図示の例において、正極側容器11の内径は、負極側容器13の外径よりも大きくされている。
ガスケット12は、軸線Oと同軸状に配置された環状とされ、正極側容器11の周壁部11a内に嵌合されている。ガスケット12には、負極側容器13の周壁部13aを保持する溝部14が全周に渡り形成されている。負極側容器13は、周壁部13aをガスケット12の溝部14内に保持した状態で、正極側容器11の周壁部11aを径方向の内側にカシメることで正極側容器11に固定されている。なお、ガスケット12は、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン(PP))等の絶縁性を有する材料により形成されている。
【0035】
電極積層構造体3は以下に説明する帯状の正極21と帯状の負極22を互いの幅方向に若干ずらして重ね合わせた状態で平面視渦巻き状に巻回した構造を有する。
負極22は、図2に示すように巻回前の展開状態で一定幅の帯状を呈する負極側集電体シート32と、負極側集電体シート32の表裏両面に塗布された一対の帯状の負極活物質層33と、これら負極活物質層33を覆って設けられた塗膜硬化層からなる負極側セパレータ層35を備えている。
負極側集電体シート32の幅方向一側端縁(図2の右奥側端縁)には一定幅で負極活物質層33を塗布していない領域が形成され、この領域の負極側集電体シート32から後に説明する負極突出部34が形成される。
【0036】
負極側集電体シート32に対し負極活物質層33は、軸線O方向に沿う幅が小さく形成されているが、負極活物質層33の長さは負極側集電体シート32の長さと同等とされている。従って、負極側集電体シート32の長さ方向端部の端面と負極活物質層33の長さ方向端部の端面とが面一に形成されている。また、負極側集電体シート32の幅方向他側端面(図2の左前側端面)と負極活物質層33の幅方向他側端面(図2の左前側端面)とが面一に形成されている。
【0037】
負極側セパレータ層35は、負極側集電体シート32の表裏両面の負極活物質層33を覆う帯状の主被覆部35aを有している。また、主被覆部35aの幅方向において負極突出部34に近い一側(図2の右奥側)には負極突出部34に近い側の負極活物質層33の端縁を覆う副被覆部35bが形成され、主被覆部35aの幅方向他側(図2の左手前側)には負極側集電体シート32の表裏両面に形成されている主被覆部35aを一体化する連結被覆部35cが形成されている。
【0038】
負極側セパレータ層35を構成するための塗料としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、もしくはそれらの共重合体と電解液に支持塩として加えたリチウム塩をアセトニトリル等の溶媒に溶かした塗料を用いることができる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と電解液に支持塩として加えたリチウム塩をN-メチル-2-ピロリドン (NMP)等の溶媒に溶かした溶液を用いても良い。
これら塗料を塗布して塗膜を形成した後に、加熱や光照射、乾燥等の手段で溶媒を飛ばし、塗膜を硬化することで、負極側セパレータ層35を形成できる。
また、セパレータとしての強度を補強するために、無機または有機の粉末を同時に塗料中に溶かし込むことも効果的である。
【0039】
正極21は、図2に示すように巻回前の展開状態で一定幅の帯状を呈する正極側集電体シート25と、正極側集電体シート25の表裏両面に塗布された一対の正極活物質層26と、これら正極活物質層26を覆って設けられた塗膜硬化層からなる正極側セパレータ層27を備えている。正極側セパレータ層27の構成材料は負極側セパレータ層35の構成材料と同等で良い。
正極側集電体シート25の幅方向他側端縁(図2の左手前側端縁)には一定幅で正極活物質層26が塗布されていない領域が形成され、この領域の正極側集電体シート25から後に説明する正極突出部28が形成される。
【0040】
正極側集電体シート25に対し正極活物質層26は、軸線O方向に沿う幅が小さく形成されているが、正極活物質層26の長さは正極側集電体シート25の長さと同等とされている。従って、正極側集電体シート25の長さ方向端部の端面と正極活物質層26の長さ方向端部の端面とが面一に形成されている。また、正極側集電体シート25の幅方向一側端面(図2の右奥側端面)と正極活物質層26の幅方向一側端面(図2の右奥側端面)とが面一に形成されている。
【0041】
正極側セパレータ層27は、正極側集電体シート25の表裏両面の正極活物質層26を覆う帯状の主被覆部27aを有している。また、主被覆部27aの幅方向一側(図2の右奥側)には正極側集電体シート25の表裏両面に形成されている主被覆部27aを一体化する連結被覆部27cが形成されている。更に、主被覆部27aの幅方向他側(図2の左手前側)には正極突出部28に近い側の正極活物質層26の端縁を覆う副被覆部27bが形成されている。
【0042】
負極活物質層33において軸線O方向に沿う幅は、正極活物質層26の同方向に沿う幅に比べて若干大きく形成されており、図1に示す正極活物質層26と負極活物質層33の重合部分(重なり部分)に対して負極活物質層33は上下方向に向けてはみ出している。
なお、電極積層構造体3のうち、正極活物質層26および負極活物質層33を重ね合わせた領域が電極の重合部分を構成する。
そして、図1に示すように負極突出部34の上端部が、後述する負極側導電材36を介して負極側容器13の天壁部13bに電気的に接続され、正極突出部28の下端部が、後述する正極側導電材31を介して正極側容器11の底壁部11bに電気的に接続されている。
【0043】
正極側集電体シート25はアルミニウムまたはアルミニウム合金もしくはステンレス鋼などからなる金属箔が好適に用いられる。金属箔の厚さは一例として10数μm程度である。
また、正極活物質層26の形成材料として、例えば正極活物質や、導電助剤(例えば、グラファイト等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して正極用スラリーを作製する。以下、正極活物質層26を形成するための構成材料を含む塗布液を「正極用スラリー」という。この正極用スラリーを正極側集電体シート32に塗布し、乾燥させることにより正極活物質層26を形成できる。
【0044】
負極側集電体シート32としては、例えば銅合金や、純銅、ニッケル等の金属箔が好適に用いられる。金属箔の厚さは一例として、10数μm程度である。
また、負極活物質層33の形成材料として、例えば負極活物質や、導電助剤(例えば、グラファイト等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して負極用スラリーを作製する。以下、負極活物質層33を形成するための構成材料を含む塗布液を「負極用スラリー」という。この負極用スラリーを負極側集電体シート32に塗布し、乾燥させることにより負極活物質層33を形成できる。
【0045】
図1に示す構造において、負極側セパレータ層35の上端面が正極側セパレータ層27の上端面より上方に位置し、負極側セパレータ層35の下端面が正極21の下端面より下方に位置する。更に、負極活物質層33の上端面が正極活物質層26の上端面より上方に位置し、負極活物質層33の下端面が正極活物質層26の下端面より下方に位置する。
負極活物質層33を覆った負極側セパレータ層35と正極活物質層26を覆った正極側セパレータ層27が正極21と負極22を隔離している。
なお、負極活物質層33の幅(図1の上下方向の高さ)は正極活物質層26の幅よりも幅広に形成されていることが好ましい。また、図1に示す断面において、負極側セパレータ層35の上端部(上端縁)が正極活物質層26の上端縁よりも上方に位置することが好ましく、負極側セパレータ層35の下端部が正極活物質層26の下端よりも下方に位置することが好ましい。換言すると、負極側セパレータ層35の上端部(上端縁)が正極活物質層26の上端縁よりも電極積層体3の外側に位置することが好ましく、負極側セパレータ層35の下端部が正極活物質層26の下端よりも電極積層体3の外方に位置することが好ましい。
【0046】
正極側容器11の底壁部11bと、正極21の正極突出部28との間に、炭素系材料を含む正極側導電材31が介在されている。この正極側導電材31は、正極側容器11の底壁部11bの上面(接触面)のうち、軸線O方向で電極積層構造体3と対向する領域の全面(ガスケット12の内側に位置する領域)に亘って層状に形成されている。電極積層構造体3の正極21は、正極側導電材31を介して正極側容器11に電気的に接続されている。
【0047】
一方、負極側容器13の天壁部13bと、負極22の負極突出部34との間に、上述した正極側導電材31と同様の材料からなる負極側導電材36が介在されている。この負極側導電材36は、負極側容器13における天壁部13bの下面のうち、軸線O方向で電極積層構造体3と対向する領域の全面(天壁部13bの全面)に亘って層状に形成されている。電極積層構造体3の負極22は、負極側導電材36を介し負極側容器13に電気的に接続されている。
【0048】
[二次電池の製造方法]
次に、上述した構成の二次電池1の製造方法について説明する。
以下の説明では、図3を基に正極21と負極22を製造する方法について説明し、図2を基に電極積層構造体3を製造する方法について説明し、図4図6を基に正極21と負極22を用いて正極側容器11、負極側容器13に接続する方法について主に説明する。
【0049】
図3(A)に示すように、銅箔等の金属箔からなる帯状の所定長さの負極側集電体シート32の表裏両面に、幅方向一側端縁(図3(A)では負極側集電体シート32の上側端縁)を所定幅残して負極用スラリーを塗布し乾燥させ、負極活物質層33を形成する(負極活物質層の形成工程)。
負極用スラリーは、上述の負極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。なお、スラリーの溶媒として、結着剤及び増粘剤を溶解し、かつ活物質及び導電助剤を分散するものであればよい。
続いて、負極側集電体シート32の長さ方向両端部表裏面に各々各端部を所定幅で覆うように粘着性の絶縁テープなどからなる負極側端部絶縁層40を形成する(負極側端部絶縁層の形成工程)。
【0050】
負極側端部絶縁層40は負極側集電体シート32の端部と負極活物質層33の端部を所定幅で覆う被覆部40aを有するとともに、負極側集電体シート32の端面と負極活物質層33の端面を覆い、更に負極側集電体シート32の端部外方まで延在する負極側延出部40bを備えている。図3(c)に示すように負極側集電体シート32の端部表裏面にそれぞれ負極側端部絶縁層40を貼り付け、負極側集電体シート32の長さ方向端部からはみ出した負極側延出部40bどうしを貼り合わせる。これにより、負極側集電体シート32の長さ方向端部端面と負極活物質層33の長さ方向端部端面を負極側延出部40bで覆うことができる。
【0051】
負極側集電体シート32の両方の端部を負極側端部絶縁層40により個々に覆ったならば、図3(B)に示すようにセパレータ層形成用の塗料を塗布し、硬化させて負極側セパレータ層35を形成し、負極側巻回用電極シート45を構成する。(負極側セパレータ層形成工程)
塗料を塗布する場合、負極側集電体シート32の表裏面に設けた負極側端部絶縁層40、40の間に存在する負極活物質層33の表面を塗料が覆うように塗布する。また、各負極活物質層33の幅方向一側端縁(図3(A)では上側端縁)33aを所定幅で塗料が覆うように塗布する。更に、各負極活物質層33の表面を覆うように塗料を塗布する場合、各負極活物質層33の幅方向の他側端面(図3(B)では下側の端面)33dと負極側集電体シート32の幅方向の他側端面(図3(B)では下側の端面)にも塗料が十分に回り込んで表裏面の両側から塗布した塗料が連結して一体化するように塗布する。
【0052】
セパレータ層形成用の塗料を塗布する場合、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、インクジェット塗布法、スプレー塗布法、ディッピング法、ダイコート法などの常法で印刷することができる。これらの印刷法で塗布する場合、印刷精度の高い印刷装置を用いるならば、μmオーダーの高精度で印刷ができる。また、これらの印刷置により、負極側集電体シート32の端面側と負極活物質層33の端面側にも容易に塗料の回り込みを生じさせることができる。
塗料については先に説明した各種塗料を用いることができるが、熱により硬化する塗料を用いた場合は硬化温度まで加熱し、紫外線等の光照射により硬化する塗料を用いた場合は硬化のために必要な波長の光を必要な強度で照射し、乾燥により硬化する塗料の場合は適切な温度で乾燥することにより、塗料を硬化できる。
【0053】
負極活物質層33の表面を覆った塗料を硬化させることにより主被覆部35aを形成でき、負極活物質層33の幅方向一側端縁33aを所定幅で覆った塗料を硬化させることにより副被覆部35bを形成できる。更に、負極活物質層33の端面33dと負極側集電体シート32の端面を覆った塗料を硬化させることで連結被覆部35cを形成できる。
以上により、主被覆部35aと副被覆部35bと連結被覆部35cを有する負極側セパレータ層35を形成でき、図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45を得ることができる。
【0054】
次に、図3(D)に示すように、アルミニウム箔等の金属箔からなる帯状の所定長さの正極側集電体シート25の表裏両面に、幅方向一側端縁(図3(D)では正極側集電体シート25の下側端縁)を所定幅残して正極用スラリーを塗布して乾燥させ、正極活物質層26を形成する。(正極活物質層形成工程)
正極用スラリーは、上述の正極活物質、導電助剤、結着剤及び増粘剤等を含む。なお、スラリーの溶媒としては、結着剤及び増粘剤を溶解し、かつ活物質及び導電助剤を分散するものであればよい。
続いて、正極側集電体シート25の長さ方向両端部表裏面に各々各端部を所定幅で覆うように粘着性の絶縁テープなどからなる正極側端部絶縁層41を形成する。(正極側端部絶縁層形成工程)
【0055】
正極側端部絶縁層41は正極側集電体シート25の端部と正極活物質層26の端部を所定幅で覆う被覆部41aを有するとともに、正極側集電体シート25の端面と正極活物質層26の端面を覆い、更に正極側集電体シート25の端部外方まで延在する正極側延出部41bを備えている。
図3(D)に示すように正極側集電体シート25の端部表裏面にそれぞれ正極側端部絶縁層41を貼り付け、正極側集電体シート25の長さ方向端部からはみ出した正極側延出部41bどうしを貼り合わせる。これにより、正極側集電体シート25の長さ方向端部端面と正極活物質層26の長さ方向端部端面を正極側延出部41bで覆うことができる。
【0056】
正極側集電体シート25の両端部を端部絶縁層41により覆ったならば、図3(E)に示すようにセパレータ層形成用の塗料を塗布し硬化させて正極側セパレータ層27を形成することにより正極側巻回用電極シート46を得ることができる。(正極側セパレータ層形成工程)
塗料を塗布する場合、正極側集電体シート25の表裏面に設けた正極側端部絶縁層41、41の間に存在する正極活物質層26の表面を塗料が覆うように塗布する。また、各正極活物質層26の表面を覆うように塗料を塗布する場合、各正極活物質層26の幅方向の一側端面(図3(E)では上側の端面)26dと正極側集電体シート25の幅方向の一側端面(図3(E)では上側の端面)にも塗料が十分に回り込んで表裏面の両側から塗布した塗料が連結して一体化するように塗布する。更に、各正極活物質層26の幅方向他側端縁(図3(E)では下側端縁)26aを所定幅で塗料が覆うように塗布する。
塗料の塗布には負極側集電体シート32に塗料を塗布した場合と同様の一般的な印刷方法を用いることができる。
【0057】
正極活物質層26の表面を覆った塗料を硬化させることにより主被覆部27aを形成でき、正極活物質層26の幅方向一側端縁26aを所定幅で覆った塗料を硬化させることにより副被覆部27bを形成できる。更に、正極活物質層26の端面と負極側集電体シート32の端面を覆った塗料を硬化させることで連結被覆部27cを形成できる。
以上により、主被覆部27aと副被覆部27bと連結被覆部27cを有する正極側セパレータ層27を形成し、図3(E)に示す正極側巻回用電極シート46を得ることができる。
【0058】
両端部を負極側端部絶縁層40で覆ったセパレータ層付きの負極側巻回用電極シート45と、両端部を正極側端部絶縁層41で覆ったセパレータ層付きの正極側巻回用電極シート46を作製したならば、図2を基に以下に説明する手順により電極積層構造体3を形成する。
具体的には、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46を順に積層した積層体を形成する。この積層体は、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46をそれらの幅方向(軸線O方向)に若干ずらした積層体とする。この積層体では、幅方向一側に負極突出部34が突出され、幅方向他側に正極突出部28が突出されている。
この積層体について負極側を内側、正極側を外側として図2に示す巻芯50に巻付装置を用いて巻回することで、図1に示す渦巻状の電極積層構造体3を得ることができる(電極積層構造体製造工程:巻回工程)。
なお、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46を積層して巻付装置で巻回する場合、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46を積層しながら巻回しても良い。
【0059】
次に、図4に示すように、正極側容器11の周壁部11a内にガスケット12をセットする(ガスケット配置工程)。
続いて、図5に示すように、正極側容器11の底壁部11b上において、ガスケット12の内側に位置する領域にペースト状の熱硬化性の正極側導電材料51を塗布する(導電材料塗布工程)。
なお、塗布工程では、パッド印刷等を用いて底壁部11b上の所定領域に正極側導電材料51を塗布しても構わない。
【0060】
次に、図6に示すように、先に製造した電極積層構造体3を正極側容器11内にセットする(セット工程)。
具体的には、電極積層構造体3の正極突出部28と正極側容器11とを軸線O方向で対向させた状態で、電極積層構造体3と正極側容器11とを軸線O方向に相対的に接近移動させ、正極突出部28の下端面を正極側導電材料51に押し付けて接触させる。
その後、正極突出部28の下端面を正極側導電材料51に接触させた状態で、正極側導電材料51を加熱して硬化させる(硬化工程:正極側接続工程)。
この工程により、正極突出部28を正極側容器11に正極側導電材31を介し電気的に接合できる。なお、セット工程に先立ち、負極突出部34の上端面(負極側容器13の天壁部13bとの接触面)上に負極側導電材料52を予め塗布し、負極側容器13を当接させた後、上述した硬化工程において正極側導電材料51とともに負極側導電材料52を硬化させても構わない。
【0061】
また、負極側容器13の天壁部13b上に、上述した塗布工程と同様の方法により、負極側導電材料52を塗布し、その後導電材料を加熱して硬化させる(負極側接続工程)。
この工程により、負極側容器13の天壁部13b上に負極側導電材36を形成する。なお、負極接続工程の前に予め正極側容器11内に電解液を注液しておく。
【0062】
最後に、負極側容器13を正極側容器11に固定する。具体的には、負極側容器13の周壁部13aをガスケット12の溝部14内に挿入した後、正極側容器11の周壁部11aを径方向の内側に向けてカシメ加工する。
これにより、負極側容器13を正極側容器11に固定することができ、上述した二次電池1が完成する。
【0063】
以上説明の二次電池1では、正極突出部28と正極側容器11の間に、炭素系材料を含む正極側導電材31を介在させているため、正極突出部28と正極側容器11を単に当接させて接続する場合に比べて、電気的信頼性を確保することができ、ハイレートの充放電特性を向上させることができる。
また、正極側導電材31と正極突出部28とを接触させるだけの構成のため、例えば正極21とは別体のタブを溶接等により正極側容器11に接続する構成に比べて、構成の簡素化や、製造工数の削減、製造コストの削減を図った上で、電気的信頼性を確保できる。
【0064】
本実施形態の二次電池1では、負極突出部34と負極側容器13も負極側導電材36により電気的に確実に接続しているため、更なる電気的信頼性を確保できる。
また、負極側集電体シート32に従来構造で必要であったタブなどの接続スペースを設ける必要がないため、負極22における負極側容器13との接触面(負極側容器13の天壁部13b)に近い位置まで負極活物質層33を配置できる。
そのため、外装体2の容積を維持した上で、負極活物質層33の面積を確保し、正極21と負極22の重合部分の面積を確保できるので、二次電池1としての体積効率の向上を図ることができる。
【0065】
本実施形態の二次電池1の製造方法では、正極側容器11(底壁部11b)に塗布されたペースト状の正極側導電材料51に正極突出部2を接触させた状態で、正極側導電材料51を硬化させる構成とした。この構成によれば、正極側容器11に対する電極積層構造体3の位置決めと、正極突出部28と正極側導電材31との接続の双方を一括して行うことができるので、製造工数の削減や製造コストの削減を図った上で、電気的信頼性を確保できる。
【0066】
本実施形態の二次電池1は、正極側集電体シート25と正極活物質層26に対し、セパレータ層形成用の塗膜を塗布し、硬化させて正極セパレータ層27を形成しているので、正極側集電体シート25と正極活物質層26に対し正極セパレータ層27を密着できる。また、負極側集電体シート32と負極活物質層33に対し、セパレータ層形成用の塗膜を塗布し、硬化させて負極セパレータ層35を形成しているので、負極側集電体シート32と負極活物質層33に対し負極セパレータ層35を密着できる。
このため、正極21と負極22を巻回して電極積層構造体3を形成する場合、正極21と負極22に巻き乱れを生じたとしても、正極21と負極22の絶縁性を確保できる。このため、ショートリスクが発生しない電極積層構造体3を得ることができる。この点、シート状のセパレータを介し正極と負極を巻回する従来構造の場合は、正極と負極あるいはセパレータの巻き乱れを生じると、ショートリスクが発生することとなる。
【0067】
本実施形態の二次電池1にあっては、正極側集電体シート25に対する塗膜の塗布精度について、一般的な塗布装置により±10μm程度の誤差で制御が可能であり、負極側集電体シート32に対する塗膜の塗布精度について、一般的な塗布装置により±10μm程度で制御が可能である。このため、正極21に設ける正極突出部28の長さと負極22に設ける負極突出部34の長さを±10μm程度の精度で形成できる。このため、規定長さの正極突出部28を導電材31に当接させ、規定長さの負極突出部34を導電材36に当接させることができ、正極側容器11と正極21との電気的コンタクトおよび負極側容器13と負極22との電気的コンタクトを良好に取ることができる。
この点において、シート状のセパレータを介し正極と負極を巻回する従来構造の場合、セパレータの巻き乱れが大きくなり、セパレータの一部が負極突出部あるいは正極突出部の先端近くまで位置ずれすると、負極側容器あるいは正極側容器と電極との電気的コンタクトが不十分となるおそれがある。
【0068】
本実施形態の二次電池1にあっては、負極側セパレータ層35に副被覆部35bを設けることで負極活物質層33の幅方向一側端縁を覆い、連結被覆部35cを設けることで負極活物質層33の幅方向他側端縁を覆っている。このため、負極活物質層33の幅方向両側端縁の絶縁性を確保している。また、正極側セパレータ層27に副被覆部27bを設けることで正極活物質層26の幅方向一側端縁を覆い、連結被覆部27cを設けることで正極活物質層26の幅方向他側端縁を覆っている。このため、正極活物質層26の幅方向両側端縁の絶縁性を確保している。
これらに加えて、負極22では長さ方向両端部を端部絶縁層40で覆うことで両端側の絶縁性を確保し、正極21では長さ方向両端部を端部絶縁層41で覆うことで両端部の絶縁性を確保している。
これらが相俟って、負極側セパレータ層35と端部絶縁層40を設けることで負極22の絶縁性を確保し、正極側セパレータ層27と端部絶縁層41を設けることで正極21の絶縁性を確保できる。
【0069】
ところで、上述した実施形態では、ガスケット12をセットした正極側容器11に対して電極積層構造体3や負極側容器13を組み付ける構成について説明したが、この構成に限らない。
例えば、ガスケット12がセットされた負極側容器13に対して、上述した製造方法と同様の方法を用いて電極積層構造体3や正極側容器11を組み付けても構わない。
具体的には、まずガスケット12がセットされた負極側容器13において、天壁部13b上に負極側導電材料52を塗布した後(塗布工程)、導電材料に負極突出部34が接触するように、負極側容器13内に電極積層構造体3をセットする(セット工程)。
その後、負極突出部34を導電材料に接触させた状態で、負極側導電材料52を硬化させ(硬化工程)、負極側容器13内に電解液を注入する。そして、底壁部11b上に正極側導電材31を予め形成した正極側容器11を用い、ガスケット12に正極側容器11を外挿した後、正極側容器11の周壁部11aを径方向の内側に向けてカシメ加工することにより二次電池1を製造できる。
【0070】
この製造方法においても、ペースト状の負極側導電材料52に負極突出部34を接触させた状態で、負極側導電材料52を硬化させるので、負極側容器13に対する電極積層構造体3の位置決めと、負極突出部34と負極側導電材36の接続の双方と、を一括して行うことができる。なお、セット工程に先立ち、正極突出部28における正極側容器11の底壁部11bとの接触面上に正極側導電材31となる正極側導電材料51を予め塗布しておき、硬化工程において負極22側の負極側導電材料52とともに硬化させても構わない。
【0071】
また、図1に示す構造では、負極側セパレータ層35の上端部(上端縁)を正極活物質層26の上端縁よりも上方に、負極側セパレータ層35の下端部(下端縁)を正極活物質層26の下端縁よりも下方に配置している。
正極21と負極22を巻回して電極積層構造3を作成する場合、多少の巻き乱れは生じるが、負極側セパレータ層35の幅の範囲内に正極活物質層26が納まるように巻回することで、望ましい正極配置の電池1を提供できる。
図1に示す正極活物質層26の幅(上下幅)よりも負極活物質層33の幅(上下幅)を大きくすることは勿論、正極活物質層26の幅よりも負極側セパレータ35の幅を更に大きくしている。このため、幅の大きい分を見込んで負極側セパレータ35の上下幅の範囲内に正極活物質層26を納めるように正極21と負極22を巻回できる。上述の構成であれば、多少の巻き乱れを生じたとしても目的の電池1を得ることができる。
【0072】
<第2実施形態>
図7は本発明に係る第2実施形態の二次電池を示すもので、第2実施形態の二次電池(電気化学セル)60は、第1実施形態の二次電池1において、正極21側に設けていたセパレータ層27を省略した電極積層構造体61を有する構造である。その他の構造は、第1実施形態の二次電池1と同等である。
【0073】
電極積層構造体61は、この第2実施形態では図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45と、図3(D)に示す正極活物質層26と正極側端部絶縁層41、41を備えた正極側集電体シート25を巻回することにより構成されている。
【0074】
図1に示す二次電池1では、正極21と負極22の両方に塗膜硬化型のセパレータ層を設けているので、ショートリスクの発生を第2実施形態の二次電池60より低くすることができる。しかし、図7に示す二次電池60であっても、負極側集電体シート32と負極活物質層33を負極側セパレータ層35で覆い、負極側集電体シート32の長さ方向端面と負極活物質層33の長さ方向端面を端部絶縁層40、41で覆っているので、ショートリスクの発生を十分に低くすることができる。
【0075】
図7に示す二次電池60では、正極21側のセパレータ層27を略しているので、電極積層構造体61を形成する場合、電極積層構造体3と同じ外径として製造すると、セパレータ層27を略した分、正極21と負極22をより多く巻回して組み込むことができる。
このため、二次電池60は、二次電池1よりも電池としての体積効率の高い、体積当たりの電池容量密度の高い二次電池となる。
なお、第2実施形態の二次電池60は、セパレータ層27を略した構成以外は第1実施形態の二次電池1と同等構成であるので、その他の作用効果について、第1実施形態の二次電池1と同等の作用効果を得ることができる。
【0076】
第2実施形態の二次電池60を製造する場合、図3(B)に示した負極側巻回用電極シート45と、図3(D)に示したセパレータ層未形成状態の正極側集電体シート32を用い、図2示す場合と同様に幅方向に若干ずらして積層し、巻芯50を用いて巻回することにより電極積層構造体60を製造できる。
電極積層構造体60において、端面の一側に正極突出部28が突出され、他側に負極突出部34が突出されている構造は第1実施形態の電極積層構造体3と同等構造である。このため、正極側容器11と負極側容器13とから構成される収容空間Sに電極積層構造体60を収容できる点は同じである。また、負極突出部34を導電材36を介し負極側容器13に接続し、正極突出部28を導電材31を介し正極側容器11に接続できる点も同様である。
【0077】
図8は、第1実施形態または第2実施形態の二次電池を大量生産する場合に用いて好適な負極側連続巻回用電極シートの一例構成を示す平面図である。
例えば、二次電池1を大量生産する場合、電極積層構造体3を連続的に複数製造する必要がある。この場合、巻回装置に図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45と図3(E)に示す正極側巻回用電極シート46を連続的に供給して巻回することが好ましい。
【0078】
図8に示す負極側連続巻回用電極シート65は、図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45を複数一列に直線状に接続した構成を有する。負極側連続巻回用電極シート65は、図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45の端部に形成されている端部絶縁層40を絶縁テープから構成し、隣接する負極側集電体シート32の端部どうしを端部絶縁層40を介し複数接続することにより構成されている。
【0079】
図8に示す負極側連続巻回用電極シート65において、隣接する負極側集電体シート32を接続している端部絶縁層40をその幅方向中央部で切断すると図3(B)に示す負極側巻回用電極シート45が得られる。
また、図示は略したが、図3(E)に示す正極側巻回シート46を絶縁テープからなる端部絶縁層41で複数一列に直線状に接続した正極側連続巻回用電極シートを用意する。
この正極側連続巻回用電極シートにおいて、隣接する正極側集電体シートを接続している端部絶縁層をその幅方向中央部で切断すると図3(E)に示す負極側巻回用電極シートが得られる。
【0080】
図8に示す負極側連続巻回用電極シート65と図示略の正極側連続巻回用電極シートから端部絶縁層の部分で切り出すと、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46を得ることができる。これらの切り離した電極シートを積層し、巻付装置に供給することで電極積層構造体3を形成できる。
1つの電極積層構造体3を形成したならば、再度、負極側連続巻回用電極シート65と図示略の正極側連続巻回用電極シートから端部絶縁層の部分で切り離し、負極側巻回用電極シート45と正極側巻回用電極シート46を得、これらを積層し、巻付装置に供給することにより、更に1つの電極積層構造体3を形成できる。
以上の操作を繰り返すことにより、連続的に電極積層構造体3を製造できる。
【0081】
図8に示す負極側連続巻回用電極シート65と図示略の正極側連続巻回用電極シートを用いることにより、大量生産する場合に負極用と正極用の巻回用電極シートを連続的に巻付装置に供給できる。
なお、図8に示す負極側連続巻回用電極シート65と図示略の正極側連続巻回用電極シートはボビン等に巻回して保管し、必要に応じ巻き出して使用することができる。このように使用すると、狭いスペースで大量の巻回用電極シートを保管することができ、巻き出して使用する場合の設置スペースも少なくできる。よって、電極積層構造体3を大量生産する場合に小さなスペースで生産が可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1…二次電池(電気化学セル)、2…外装体、3…電極積層構造体、11…正極側容器、11b…底壁部、12…ガスケット、13…負極側容器、13b…天壁部、21…正極、22…負極、25…正極側集電体シート、26…正極活物質層、27…正極側セパレータ層、27a…主被覆部、27b…副被覆部、27c…連結被覆部、28…正極突出部、
31…正極側導電材、32…負極側集電体シート、33…負極活物質層、34…負極突出部、35…負極側セパレータ層、35a…主被覆部、35b…副被覆部、35c…連結被覆部、36…負極側導電材、40…負極側端部絶縁層、40b…負極側延出部、
41…正極側端部絶縁層、41b…正極側延出部、45…負極側巻回用電極シート、
46…正極側巻回用電極シート、50…巻芯、51…正極側導電材料、52…負極側導電材料、60…二次電池(電気化学セル)、65…負極側連続巻回用電極シート、S…収容空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8