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特許7299085テープ挟み込み型キャッププライを用いる複合ファブリック翼桁
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  • 特許-テープ挟み込み型キャッププライを用いる複合ファブリック翼桁 図1
  • 特許-テープ挟み込み型キャッププライを用いる複合ファブリック翼桁 図2
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  • 特許-テープ挟み込み型キャッププライを用いる複合ファブリック翼桁 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】テープ挟み込み型キャッププライを用いる複合ファブリック翼桁
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/18 20060101AFI20230620BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20230620BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230620BHJP
   B29C 70/38 20060101ALI20230620BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230620BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
B64C3/18
B64C1/00 B
B29C70/16
B29C70/38
B29K105:08
B29L31:30
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019127640
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2020045088
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】16/134,570
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】フォロウザン・ベザッドポア
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ビー・スティックラー
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01547756(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209744(US,A1)
【文献】特開2019-151783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208616(US,A1)
【文献】特開2016-172437(JP,A)
【文献】特開2011-161808(JP,A)
【文献】特表2008-540168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/18
B64C 1/00
B29C 70/16
B29C 70/38
B29K 105/08
B29L 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機翼桁であって、
前記翼桁の中央部にあるウェブであって、前記ウェブは、前記翼桁の長さに沿って延伸する長さを有し、前記ウェブはプリプレグファブリックから構成される、ウェブと、
前記ウェブの第1の縁部にある第1の桁キャップであって、前記第1の桁キャップは、前記ウェブの前記長さに沿って延伸する長さを有し、前記第1の桁キャップは前記ウェブの前記プリプレグファブリックおよびプリプレグテープから構成される、第1の桁キャップと、
前記ウェブの第2の縁部にある第2の桁キャップであって、前記第2の桁キャップは、前記ウェブの前記長さに沿って延伸する長さを有し、前記第2の桁キャップは前記ウェブの前記プリプレグファブリックおよびプリプレグテープから構成される、第2の桁キャップと
を備え
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの第1の部分が前記ウェブの前記第1の縁部から前記第1の桁キャップ上に向けて延伸し、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの第2の部分が前記ウェブの前記第2の縁部から前記第2の桁キャップ上に向けて延伸すること
をさらに備え、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分が前記ウェブの前記第1の縁部から延伸する際、前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分は第1の屈曲部に形成され、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分が前記ウェブの前記第2の縁部から延伸する際、前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分は第2の屈曲部に形成され、
前記第1の桁キャップの前記プリプレグテープは前記第1の屈曲部から少なくとも0.25インチ離れて位置し、
前記第2の桁キャップの前記プリプレグテープは前記第2の屈曲部から少なくとも0.25インチに位置すること
をさらに備える航空機翼桁。
【請求項2】
プリプレグファブリックのみから構成される前記ウェブ
をさらに備える、請求項1に記載の航空機翼桁。
【請求項3】
前記プリプレグテープは、前記第1の桁キャップの前記長さと前記第2の桁キャップの前記長さとに沿って向きが設定されている1方向プリプレグテープであること
をさらに備える、請求項2に記載の航空機翼桁。
【請求項4】
前記航空機翼桁はC溝断面構成を有すること
をさらに備える、請求項3に記載の航空機翼桁。
【請求項5】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分には前記第1の桁キャップの前記プリプレグテープが挟み込まれ、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分には前記第2の桁キャップの前記プリプレグテープが挟み込まれること
をさらに備える、請求項1に記載の航空機翼桁。
【請求項6】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分には層を交互積層する際に前記第1の桁キャップの前記プリプレグテープが挟み込まれ、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分には層を交互積層する際に前記第2の桁キャップの前記プリプレグテープが挟み込まれること
をさらに備える、請求項5に記載の航空機翼桁。
【請求項7】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分は前記ウェブに対して所定の角度で前記ウェブの前記第1の縁部から延伸し、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分は前記ウェブに対して所定の角度で前記ウェブの前記第2の縁部から延伸すること
をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の航空機翼桁。
【請求項8】
桁であって、前記桁は胴体端と前記桁の反対側の先端との間の長さ寸法を有し、
前記桁は前記桁の中央部にウェブを有し、前記ウェブは、前記ウェブの上部縁部と前記ウェブの反対側の下部縁部との間の高さ寸法を有する長尺矩形構成を有し、前記ウェブは前記桁の前記胴体端と前記桁の前記反対側の先端との間の長さ寸法を有し、前記ウェブは前記ウェブの第1の側面と前記ウェブの反対側の第2の側面との間の厚さ寸法を有する、桁と、
前記ウェブの前記上部縁部にある第1の桁キャップであって、前記第1の桁キャップは長尺矩形構成を有し、前記第1の桁キャップは、前記桁の前記胴体端と前記桁の前記先端との間で前記ウェブの前記上部縁部に沿って延伸する長さ寸法を有し、前記第1の桁キャップは、前記ウェブの前記上部縁部から突出する幅寸法を有し、前記第1の桁キャップは前記第1の桁キャップの上面と前記第1の桁キャップの反対側の底面との間の厚さ寸法を有する、第1の桁キャップと、
前記ウェブの前記下部縁部にある第2の桁キャップであって、前記第2の桁キャップは長尺矩形構成を有し、前記第2の桁キャップは、前記桁の前記胴体端と前記桁の前記先端との間で前記ウェブの前記下部縁部に沿って延伸する長さ寸法を有し、前記第2の桁キャップは、前記ウェブの前記下部縁部から突出する幅寸法を有し、前記第2の桁キャップは前記第2の桁キャップの上面と前記第2の桁キャップの反対側の底面との間の厚さ寸法を有する、第2の桁キャップと
を備えており、
前記ウェブはプリプレグファブリックから構築され、
前記第1の桁キャップは前記ウェブの前記プリプレグファブリックおよび第1のプリプレグテープから構築され、
前記第2の桁キャップは前記ウェブの前記プリプレグファブリックおよび第2のプリプレグテープから構築され、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの第1の部分が前記ウェブの前記上部縁部から前記第1の桁キャップ上に向けて延伸し、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの第2の部分が前記ウェブの前記下部縁部から前記第2の桁キャップにわたって延伸すること
をさらに備え、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分が前記ウェブの前記上部縁部から延伸する際、前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分は第1の屈曲部に形成され、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分が前記ウェブの前記下部縁部から延伸する際、前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分は第2の屈曲部に形成され、
前記第1の桁キャップの前記第1のプリプレグテープは前記第1の屈曲部から少なくとも0.25インチ離間し、
前記第2の桁キャップの前記第2のプリプレグテープは前記第2の屈曲部から少なくとも0.25インチ離間すること
をさらに備える、
航空機翼構築物。
【請求項9】
前記プリプレグファブリックのみから構築される前記ウェブ
をさらに備える、請求項8に記載の航空機翼構築物。
【請求項10】
前記第1の桁キャップの前記第1のプリプレグテープは、前記第1の桁キャップの前記長さ寸法に沿った向きに繊維の向きが設定されている1方向プリプレグテープであり、
前記第2の桁キャップの前記第2のプリプレグテープは、前記第2の桁キャップの前記長さ寸法に沿った向きに繊維の向きが設定されている1方向プリプレグテープであること
をさらに備える、請求項9に記載の航空機翼構築物。
【請求項11】
C溝の断面構成を有する前記桁
をさらに備える、請求項10に記載の航空機翼構築物。
【請求項12】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分には前記第1の桁キャップの前記第1のプリプレグテープが挟み込まれ、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分には前記第2の桁キャップの前記第2のプリプレグテープが挟み込まれること
をさらに備える、請求項8に記載の航空機翼構築物。
【請求項13】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分には層を交互積層する際に前記第1の桁キャップの前記第1のプリプレグテープが挟み込まれ、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分には層を交互積層する際に前記第2の桁キャップの前記第2のプリプレグテープが挟み込まれること
をさらに備える、請求項12に記載の航空機翼構築物。
【請求項14】
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分は前記ウェブに対して所定の角度で前記ウェブの前記上部縁部から延伸し、
前記ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分は前記ウェブに対して所定の角度で前記ウェブの前記下部縁部から延伸すること
をさらに備える、請求項8から13のいずれか一項に記載の航空機翼構築物。
【請求項15】
請求項1に記載の航空機翼桁を構築する方法であって、
プリプレグファブリックのみから構成される中央ウェブを有する翼桁を形成するステップと、
前記中央ウェブの前記プリプレグファブリックの第1の部分と第1の1方向プリプレグテープとから構成される第1の桁キャップを前記翼桁に形成するステップと、
前記中央ウェブの前記プリプレグファブリックの第2の部分と第2の1方向プリプレグテープとから構成される前記翼桁の第2の桁キャップを形成するステップと
を備える航空機翼を構築する方法。
【請求項16】
前記中央ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第1の部分に前記第1の1方向プリプレグテープを挟み込むステップと、
前記中央ウェブの前記プリプレグファブリックの前記第2の部分に前記第2の1方向プリプレグテープを挟み込むステップと
をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複合材料製の航空機翼構築物に関する。特に、本開示は、プリプレグファブリックのみから構築されるウェブを有し、かつウェブの反対側の縁部から所定の角度で突出する第1および第2の桁キャップであって、第1および第2の桁キャップはウェブのプリプレグファブリックと1方向プリプレグテープとの挟み込み部分から構築される、第1および第2の桁キャップを有する翼桁に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は航空機翼12の内部構造の一般的な構築物の概略図である。基本的に、翼12の内部構造は、図1の点線によって表わされている翼の外板18内側に含まれる桁14およびリブ16のフレーム構造からなる。航空機の現状の構築物では、桁14およびリブ16は複合材料から構築される。
【0003】
桁14は、翼12の胴体端すなわち根本端22から翼の先端24までの翼の長さにわたる。桁14の強度の大部分が翼12に与えられる。
【0004】
桁14はプリプレグ複合材料テープから構築されることが多い。桁14の構築は、多くの場合、機械が複数のプリプレグ複合材料テープをレイアップツールまたは硬化ツールの表面に高速レイアップする自動プロセスである。
【0005】
図2は一般的なレイアップツールまたは硬化ツール26の断面図の概略図である。ツール26は、ツール上で構築される桁14の寸法に基本的に対応する寸法を有する。図2にはツール26の断面寸法しか表わされていないが、ツール26はツール上で構築される桁14の長さ寸法に対応する長さ寸法を有すると解するべきである。
【0006】
図3は、プリプレグテープまたはプリプレグストリップをレイアップツールまたは硬化ツール26の表面に自動繊維配置(Automated Fiber Placement)(AFP)機によってレイアップする手法の図である。プリプレグテープ28の層すなわちプライを0°の角度で隣り合わせてツール26の長さに沿ってレイダウンして桁14をツール26上で構築することで、桁14の全長に沿って複合材料の全長にわたる長手方向層を形成する。また、自動繊維配置(AFP)機は、図3に表わされているように、プリプレグテープ30のさらなる層を隣り合わせて-45°で、0°に向けられたプリプレグテープ28の上にレイダウンする。図3には表わされていないが、さらに自動繊維配置(AFP)機は、プリプレグテープのさらなる層を隣り合わせて、ツール26の長さに対して+45°の向きおよび90°の向きにレイダウンする。プリプレグテープの数層のプライを桁14の構築中にツール26にレイアップすることができる。
【0007】
上述のように構築される複合航空機翼桁では、レイアップツールまたは硬化ツール26にレイアップされるプリプレグテープの層にしわが形成し易い。これは、ツール上で形成されている桁14の形状の変化に関連するツールの長さに沿った形状の変化を生じさせるツール26の長さに起因する。翼桁14の一般的な構築物では、桁の胴体端すなわち根本端22から桁の先端24に延伸するにつれて、桁14の幅寸法が先細りになって狭くなる。さらに、桁14が桁の胴体端22から桁の先端24に延伸するにつれて、一般的に桁14の高さ寸法が先細りになって低くなる。またさらに、桁14が胴体端22から桁の先端24に延伸するにつれて、桁14に曲率が生じたり1つ以上の角のある部分が生じたりする場合がある。桁の長さに沿った桁14の形状の当該変化により、桁構築物を構成するプリプレグテープの層すなわちプライ間にしわが形成されることが多い。桁14のプリプレグテープの層間にしわが形成される結果、桁14に顕著な強度低下および剛性低下が生じる場合がある。現在のところ、しわによって生じる桁14の構築物の強度低下および剛性低下を克服するのに用いる解決手段はきわめて多くの時間を要し、コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
航空機翼構築物、特に本開示の航空機翼桁構築物では、本開示の航空機翼桁の構築時にレイアップツールまたは硬化ツールに複合材料プライすなわち複合材料層をレイアップする際にしわの形成が実質的に起こらない。
【0009】
本開示の桁は、桁の胴体端すなわち根本端と桁の反対側の先端との間で延伸する長さ寸法を有する。桁はその長さ寸法に沿ってC溝断面構成を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
桁のC溝断面構成によって、桁には桁の中央部にウェブが設けられる。ウェブは、ウェブの上部縁部すなわち上部へりとウェブの反対側の下部縁部すなわち下部へりとの間の高さ寸法を有する。ウェブは、桁の胴体端と桁の反対側の先端との間の長さ寸法を有する。ウェブは、ウェブの第1の側面とウェブの反対側の第2の側面との間の厚さ寸法も有する。
【0011】
桁のC溝断面構成によって、桁にはウェブの上部縁部に第1の桁キャップも設けられる。第1の桁キャップは、桁の胴体端と桁の先端との間でウェブの上部縁部に沿って延伸する長さ寸法を有する。第1の桁キャップは、ウェブの上部縁部から突出する幅寸法も有し、第1の桁キャップの上面と第1の桁キャップの反対側の底面との間の厚さ寸法も有する。
【0012】
桁のC溝断面構成によって、桁にはウェブの下部縁部に第2の桁キャップも設けられる。第2の桁キャップは、桁の胴体端と桁の先端との間でウェブの下部縁部に沿って延伸する長さ寸法を有する。第2の桁キャップは、ウェブの下部縁部から突出する幅寸法も有し、第2の桁キャップの上面と第2の桁キャップの反対側の底面との間の厚さ寸法も有する。
【0013】
桁のウェブはプリプレグファブリックの層すなわちプライから構築される。ウェブはプリプレグファブリックのみから構築される。
【0014】
第1の桁キャップはウェブのプリプレグファブリックの部分と第1のプリプレグテープとから構築される。第1のプリプレグテープは、桁の長さ寸法に沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。第1の桁キャップを構成するウェブのプリプレグファブリックの部分と第1のプリプレグテープとには、層を交互積層する際に配置されるウェブのプリプレグファブリックの部分と第1のプリプレグテープとが挟み込まれる。
【0015】
第1の桁キャップを構成するウェブのプリプレグファブリックの部分は、プリプレグファブリックの部分がウェブから第1の桁キャップに延伸する際、屈曲部を通って延伸する。屈曲部によって、第1の桁キャップはウェブに対して所定の角度に向く。第1の桁キャップを構成する第1のプリプレグテープは、屈曲部から離間して屈曲部から少なくとも0.25インチ離れた距離にある。
【0016】
第2の桁キャップはウェブのプリプレグファブリックの部分と第2のプリプレグテープとから構築される。第2のプリプレグテープは、桁の長さ寸法に沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。第2の桁キャップを構成するウェブのプリプレグファブリックの部分と第2のプリプレグテープとには、層を交互積層する際に配置されるウェブのプリプレグファブリックの部分と第2のプリプレグテープとが挟み込まれる。
【0017】
第2の桁キャップを構成するウェブのプリプレグファブリックの部分は、プリプレグファブリックの部分がウェブから第2の桁キャップに延伸する際、屈曲部を通って延伸する。屈曲部によって、第2の桁キャップはウェブに対して所定の角度に向く。第2の桁キャップを構成する第2のプリプレグテープは、屈曲部から離間して屈曲部から少なくとも0.25インチ離れた距離にある。
【0018】
本開示の桁の構築物では、ウェブと、ウェブを第1および第2の桁キャップにそれぞれ接続するウェブの上部および下部縁部にある屈曲部とからプリプレグテープが除かれる。これにより、テープにしわが形成されると考えられる桁の領域からプリプレグテープが除かれる。ウェブと、ウェブの上部および下部縁部にある屈曲部との複雑な表面にわたって、しわが寄ることなく、より簡単に桁のプリプレグファブリックが形成される。1方向プリプレグテープに第1の桁キャップおよび第2の桁キャップにおけるプリプレグファブリックの部分が挟み込まれることで、全長にわたる桁の剛性、すなわち桁の長さ寸法に沿った桁の剛性が改善され、これにより、設計が構造上より効率的になる。100%プリプレグファブリックから構築される桁ウェブは剪断荷重に対する耐性を有する。プリプレグファブリックとプリプレグテープとの混成物として構築される桁キャップは曲げ荷重に対する耐性を有する。
【0019】
説明されている形態、機能および効果は様々な実施の形態において別々に実現することができるし、さらに別の実施の形態に組み入れてもよい。これのさらなる詳細は以下の説明および図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】桁およびリブのフレーム構造を備える先行技術の航空機翼の内部構造の概略図である。
図2】レイアップツールまたは硬化ツールにプリプレグテープをレイアップする先行技術のプロセスの概略図である。
図3】先行技術の航空機翼桁の構築時に層すなわちプライを重ねる際のプリプレグテープをレイアップする先行技術のプロセスの概略図である。
図4】本開示の航空機翼桁を備える航空機翼構築物の概略図である。
図5図4に表わされている本開示の航空機翼桁の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図4は、本開示の航空機翼桁34を用いている航空機翼構築物32の内部構造の斜視図の概略図である。航空機翼桁34が1つしか図4に表わされていないが、ここで説明されるタイプの航空機翼桁34を複数用いる航空機翼を構築することができると解するべきである。
【0022】
図4に表わされているように、航空機翼桁34は桁34の胴体端すなわち根本端36と桁の先端38との間の航空機翼32の内部の長さにわたって延伸する。桁34が翼32の内部にわたって延伸するので、従来と同様に、翼の内部の複数のリブ構造42と交差する。ここでさらに詳細に説明されるように、航空機翼桁34の全体が複合材料から構築される。
【0023】
桁34は、桁の胴体端36と桁の反対側の先端38との間で延伸する長さ寸法を有する。桁34はその全長さ寸法に沿ってC溝断面構成を有する。ここで説明される桁34の構築物は、他の断面構成を有する桁に用いることができる。
【0024】
桁34のC溝断面構成によって、桁には桁の中央部にウェブ44が設けられる。ウェブ44は、ウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46とウェブの反対側の下部縁部すなわち下部へり48との間の高さ寸法を有する長尺矩形構成を有する。ウェブ44は、図4に表わされている矩形構成以外の他の長尺構成を有することができる。たとえば、ウェブがウェブの胴体端36からウェブの先端38に延伸するにつれて、ウェブ44は長尺テーパ構成を有することができる。ウェブ44は、ウェブ44の胴体端36を形成する桁34の胴体端36と、ウェブ44の先端38を形成する桁34の反対側の先端38との間の長さ寸法を有する。ウェブ44は、ウェブの第1の側面52とウェブの反対側の第2の側面54との間の厚さ寸法も有する。
【0025】
桁34のC溝断面構成によって、桁にはウェブ44の上部縁部46に第1の桁キャップ56も設けられる。図4に表わされている第1の桁キャップ56は長尺矩形構成を有する。第1の桁キャップ56は他の同等の構成を有することができる。たとえば、第1の桁キャップ56は、第1の桁キャップ56が桁34の胴体端36から桁の先端38に延伸するにつれて先細りする構成を有することができる。第1の桁キャップ56は、第1の桁キャップ56の胴体端36を形成する桁34の胴体端36から、第1の桁キャップ56の先端38を形成する桁34の先端38までの間でウェブ44の上部縁部46に沿って延伸する長さ寸法を有する。第1の桁キャップ56は、ウェブ44の上部縁部46から第1の桁キャップ56の後方縁部58まで突出して延伸する幅寸法も有する。図4に表わされているように、第1の桁キャップ56の幅寸法はウェブ44に対して直角にウェブ44の上部縁部46から延伸する。第1の桁キャップ56の幅寸法は、他の角度の向きでウェブ44の上部縁部46から延伸することができる。第1の桁キャップ56は、第1の桁キャップの上面62と第1の桁キャップの反対側の底面64との間の厚さ寸法も有する。
【0026】
桁34のC溝断面構成によって、桁にはウェブ44の下部縁部48に第2の桁キャップ66も設けられる。第2の桁キャップ66は、桁34の胴体端36から桁の先端38まで延伸する長尺矩形構成を有する。第2の桁キャップ66は他の同等の構成を有することができる。たとえば、第2の桁キャップ66は、桁34の胴体端36から桁の先端38に延伸するにつれて先細りする構成を有することができる。第2の桁キャップ66は、第2の桁キャップ66の胴体端36を形成する桁34の胴体端36から、第2の桁キャップ66の先端38を形成する桁34の先端38までの間でウェブ44の下部縁部48に沿って延伸する長さ寸法を有する。第2の桁キャップ66は、ウェブ44の下部縁部48から第2の桁キャップ66の後方縁部68まで突出して延伸する幅寸法を有する。第2の桁キャップ66の幅寸法は、ウェブ44に対して直角にウェブ44の下部縁部48から突出する。第2の桁キャップ66の幅寸法は、他の角度の向きでウェブ44の下部縁部48から突出することができる。第2の桁キャップ66は、第2の桁キャップ66の上面72と第2の桁キャップ66の反対側の底面74との間の厚さ寸法も有する。
【0027】
図5図4に表わされている航空機翼桁34の構築物の断面の概略図である。図5の中央には、航空機翼桁34の構築時に用いられるレイアップツールまたは硬化ツール76の断面の図がある。図5に表わされているように、レイアップツール76は時計回りに90°回転したC溝断面構成を有する。図5に表わされているレイアップツール76の構成はツールの全長にわたって延伸する。レイアップツール76の長さは、ツール上で構築される航空機翼桁34の長さに対応する。図5に表わされているように、複合プリプレグファブリックの第1の層82がレイアップツールすなわち76にレイアップされる。プリプレグファブリックの第1の層82は、ツール76の上面84、ツール76の第1の側面86およびツール76の第2の側面88を完全に覆って延伸する。また、プリプレグファブリックの第1の層82はツール76の全長さ寸法に沿って延伸する。
【0028】
ツールの第1の側面86に位置するプリプレグファブリックの第1の層82の部分に第1のプリプレグテープ92がレイアップされる。第1のプリプレグテープ92は、プリプレグファブリックの第1の層82の全長さ寸法とツール76の全長さ寸法とに沿って延伸する長さ寸法を有する。第1のプリプレグテープ92は、プリプレグファブリックの第1の層82の長さ寸法とツール76の長さ寸法とに沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。
【0029】
その後、ツール76の第2の側面88を覆うプリプレグファブリックの第1の層82の部分に第2のプリプレグテープ94がレイアップされる。第2のプリプレグテープ94は、プリプレグファブリックの第1の層の全長さ寸法とツール76の全長さ寸法とに沿って延伸する長さ寸法を有する。第2のプリプレグテープ94は、プリプレグファブリックの第1の層82の長さ寸法とツール76の長さ寸法とに沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。
【0030】
その後、プリプレグファブリックの第1の層82、第1のプリプレグテープ92および第2のプリプレグテープ94にわたってプリプレグファブリックの第2の層96がレイアップされる。プリプレグファブリックの第2の層96の幅寸法は、完全に、ツール76の上面84上のプリプレグファブリックの第1の層82と、ツール76の第1の側面86上の第1のプリプレグテープ92と、ツール76の第2の側面88上の第2のプリプレグテープ94とにわたって延伸する。プリプレグファブリックの第2の層96の長さ寸法は、完全に、プリプレグファブリックの第1の層82の長さ寸法とツール76の長さ寸法とにわたって延伸する。
【0031】
その後、ツール76の第1の側面86にわたって延伸するプリプレグファブリックの第1の層82の部分上に位置する第1のプリプレグテープ92にわたって延伸するプリプレグファブリックの第2の層96の部分にさらなる第1のプリプレグテープ98がレイアップされる。さらなる第1のプリプレグテープ98は、第1のプリプレグテープ92と実質的に同じ幅寸法である幅寸法を有する。さらなる第1のプリプレグテープ98は、プリプレグファブリックの第2の層96、第1のプリプレグテープ92、プリプレグファブリックの第1の層82の長さ寸法およびツール76の長さ寸法と実質的に同じである長さ寸法も有する。さらなる第1のプリプレグテープ98は、プリプレグファブリックの第2の層96の長さ寸法とツール76の長さ寸法とに沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。
【0032】
その後、ツール76の第2の側面88にわたって延伸するプリプレグファブリックの第1の層82の部分上に位置する第2のプリプレグテープ94にわたって延伸するプリプレグファブリックの第2の層96の部分にプリプレグテープのさらなる第2の層102がレイアップされる。さらなる第2のプリプレグテープ102は、第2のプリプレグテープ94の幅寸法と実質的に同じである幅寸法を有する。さらなる第2のプリプレグテープ102は、プリプレグファブリックの第2の層96、第2のプリプレグテープ94、プリプレグファブリックの第1の層82の長さ寸法およびツール76の長さ寸法と実質的に同じである長さ寸法を有する。さらなる第2のプリプレグテープ102は、プリプレグファブリックの第2の層96の長さ寸法とツール76の長さ寸法とに沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。
【0033】
その後、プリプレグファブリックの第2の層96、さらなる第1のプリプレグテープ98およびさらなる第2のプリプレグテープ102にプリプレグファブリックの第3の層104がレイアップされる。プリプレグファブリックの第3の層104は、プリプレグファブリックの第2の層96、さらなる第1のプリプレグテープ98およびさらなる第2のプリプレグテープ102を完全に覆う幅寸法を有する。プリプレグファブリックの第3の層104は、プリプレグファブリックの第2の層96、さらなる第1のプリプレグテープ98、さらなる第2のプリプレグテープ102の長さ寸法およびツール76の長さ寸法と実質的に同じである長さ寸法も有する。
【0034】
桁34は、プリプレグファブリックの第1の層82、第1のプリプレグテープ92、第2のプリプレグテープ94、プリプレグファブリックの第2の層96、さらなる第1のプリプレグテープ98、さらなる第2のプリプレグテープ102およびプリプレグファブリックの第3の層104から構築されるように上述されている。これは桁34の構築の一例にすぎない。桁を用いて構築される航空機の使用時に桁34にかかる荷重に応じて考える場合において、桁を用いて構築される翼にかかる荷重に応じてプリプレグファブリック層およびプリプレグテープの数を変更することができる。
【0035】
レイアップに続いて、プリプレグファブリック層、第1のプリプレグテープおよび第2のプリプレグテープは真空バッグ処理され、オートクレーブに入れられ、硬化サイクルを経て航空機翼桁34が形成される。その後、桁34は冷却されてトリム加工され、桁の構築が完了する。
【0036】
上述されているように航空機翼桁34を構築する場合、桁34の中央ウェブ44は、プリプレグファブリックの層すなわちプライ82,96,104から構築され、これらから構成される。中央ウェブ44はプリプレグファブリックのみから構築され、これから構成される。
【0037】
第1の桁キャップ56は、ウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第1のプリプレグテープ92,98とから構築される。第1のプリプレグテープ92,98は、桁34の長さ寸法に沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。第1の桁キャップ56を構成するウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第1のプリプレグテープ92,98とには、層を交互積層する際に配置されるウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第1のプリプレグテープ92,98とが挟み込まれる。
【0038】
第1の桁キャップ56を構成するウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分は、プリプレグファブリックの部分がウェブ44から第1の桁キャップ56に延伸する際、ウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46にある屈曲部を通って延伸する。ウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46にある屈曲部によって、第1の桁キャップ56はウェブ44に対して所定の角度に向く。第1の桁キャップ56を構成する第1のプリプレグテープ92,98は、ウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46にある屈曲部から離間して屈曲部から少なくとも0.25インチ離れた距離にある。
【0039】
第2の桁キャップ66は、ウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第2のプリプレグテープ94,102とから構築される。第2のプリプレグテープ94,102は、桁34の長さ寸法に沿った向きに複合繊維の向きが設定されている1方向テープである。第2の桁キャップ66を構成するウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第2のプリプレグテープ94,102とには、層を交互積層する際に配置されるウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分と第2のプリプレグテープ94,102とが挟み込まれる。
【0040】
第2の桁キャップ66を構成するウェブ44のプリプレグファブリック82,96,104の部分は、プリプレグファブリック82,96,104の部分がウェブ44から第2の桁キャップ66に延伸する際、ウェブ44の下部縁部すなわち下部へり48にある屈曲部を通って延伸する。ウェブ44の下部縁部すなわち下部へり48にある屈曲部によって、第2の桁キャップ66はウェブ44に対して所定の角度に向く。第2の桁キャップ66を構成する第2のプリプレグテープ94,102は、ウェブ44の下部縁部すなわち下部へり48にある屈曲部から離間して屈曲部から少なくとも0.25インチ離れた距離にある。
【0041】
上述の桁34の構築物では、ウェブ44と、ウェブ44を第1の桁キャップ56および第2の桁キャップ66にそれぞれ接続するウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46およびウェブ44の下部縁部すなわち下部へり48にある屈曲部とからプリプレグテープが除かれる。これにより、テープにしわが形成されると考えられる桁34の領域からプリプレグテープが除かれる。ウェブ44と、ウェブ44の上部縁部すなわち上部へり46および下部縁部すなわち下部へり48にある屈曲部との複雑な表面にわたって、しわが寄ることなく、より簡単にプリプレグファブリック層82,96,104が形成される。1方向プリプレグテープ92,98に第1の桁キャップ56におけるプリプレグファブリック82,96,104の部分が挟み込まれ、1方向プリプレグテープ94,102に第2の桁キャップ66におけるプリプレグファブリック82,96,104の部分が挟み込まれることで、全長にわたる桁34の剛性、すなわち桁の長さ寸法に沿った桁34の剛性が改善され、これにより、設計が構造上より効率的になる。全体がプリプレグファブリック82,96,104から構築される桁ウェブ44は剪断荷重に対する耐性を有する。プリプレグファブリック82,96,104とプリプレグテープ92,98との混成物として構築される第1の桁キャップ56と、プリプレグファブリック82,96,104とプリプレグテープ94,102との混成物から構築される第2の桁キャップ66とは曲げ荷重に対する耐性を有する。
【0042】
ここで記載および図示されている航空機構造およびその構築方法には発明の範囲を逸脱しない範囲で様々な修正を行なうことができるが、前述の記載に含まれていたり添付の図面に示されていたりするすべての事項を限定ではなく例として解釈することを意図している。したがって、本開示の幅広さおよび範囲は、上記の典型的な実施の形態のいずれによっても限定されるべきではなく、本明細書に添付される以下の請求項およびその均等物のみにしたがって定義されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
12 航空機翼
14 翼桁
16 リブ
18 外板
22 根本端、胴体端
24 先端
26 レイアップツール、硬化ツール
26 硬化ツール
28 プリプレグテープ
30 プリプレグテープ
32 航空機翼構築物、航空機翼
34 航空機翼桁
36 根本端、胴体端
38 先端
42 リブ構造
44 中央ウェブ、桁ウェブ
46 上部縁部
48 下部縁部
52 側面
54 側面
56 第1の桁キャップ
58 後方縁部
62 上面
64 底面
66 第2の桁キャップ
68 後方縁部
72 上面
74 底面
76 レイアップツール、硬化ツール
82 プリプレグファブリックの第1の層、プリプレグファブリック層、プリプレグファブリック、プライ
84 上面
86 側面
88 側面
92 第1のプリプレグテープ、1方向プリプレグテープ
94 第2のプリプレグテープ、1方向プリプレグテープ
96 プリプレグファブリックの第2の層、プリプレグファブリック層、プリプレグファブリック、プライ
98 さらなる第1のプリプレグテープ、1方向プリプレグテープ
102 さらなる第2のプリプレグテープ、1方向プリプレグテープ
104 プリプレグファブリックの第3の層、プリプレグファブリック層、プリプレグファブリック、プライ
図1
図2
図3
図4
図5