(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】床版取替工法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230620BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230620BHJP
E01D 2/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 A
E01D2/02
(21)【出願番号】P 2019131792
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591211917
【氏名又は名称】川田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 尚文
(72)【発明者】
【氏名】山岸 俊一
(72)【発明者】
【氏名】辻角 学
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073948(JP,A)
【文献】特開2001-295478(JP,A)
【文献】特開2001-295496(JP,A)
【文献】特開2005-256430(JP,A)
【文献】特開2018-091062(JP,A)
【文献】特開2015-229818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 22/00
E01D 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の床版が取り除かれ
、既設のスタッドジベルが鋼桁の上面に残されていない状態で、ケレンすることなく、前記鋼桁の上に、スタッドジベルが挿入される貫通孔が形成されている版部材を載置し、前記貫通孔を通して、前記スタッドジベルが突設される面をケレンすることを特徴とする床版取替工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼桁上に設けられた既設床版を取り替えるための工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼桁上に床版が設けられる構造においては、鋼桁の上に載置された床版の鋼桁に対する位置ずれを防止するための措置が必要とされるが、その手法として、鋼桁の上面に突設されたスタッドジベルが広く採用されている。つまり、スタッドジベルを介して、鋼桁と床版を接合する手法であるが、その接合をより強固なものとするための様々な提案もなされている。
【0003】
例えば、特開2005-256430公報には、縁端距離の短い2本の高強度スタッドジベルの根元部に高強度スタッドジベルを取り囲むスパイラル筋を配設し、2つのスパイラル筋と複数本の高強度スタッドジベルとでなるスタッドジベルユニットを、プレキャストPC床版のPC鋼材が存在しない位置に穿設されたスタッドジベル孔に挿通した後、スタッドジベル孔にモルタルを充填・固化して鋼主桁とプレキャストPC床版とを接合させる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経年劣化や損傷などの理由により床版の取り替えが必要となった場合、既設の床版を取り除くためには、既設のスタッドジベルを鋼桁から切断し床版と共に取り除く必要がある。そして、新たに設置される床版と鋼桁を接合するためのスタッドジベルを、床版が建設される現場で鋼桁の上面に設ける必要がある。
【0006】
ところが、スタッドジベルを設けるためには、鋼桁の上面をケレンする必要があり、また、ケレンは省略することのできない、しかも時間を要する作業であったため、床版取替工事における、工期短縮の制約となっている。
【0007】
そこで、本発明は、スタッドジベルを現場で設ける工程を含む床版取替工事の工期を短縮し、鋼桁上に設けられた床版をより短い工期で取り替えることを可能とする床版取替工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る床版取替工法では、既設のコンクリート床版が取り除かれ、既設のスタッドジベルが鋼桁の上面に残されていない状態で、ケレンすることなく、前記鋼桁の上に、スタッドジベルが挿入される貫通孔が形成されている版部材を載置し、前記貫通孔を通して、前記スタッドジベルが突設される面をケレンする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スタッドジベルが挿入される貫通孔が形成されている版部材を載置し、貫通孔を通して、スタッドジベルが突設される面をケレンするため、ケレンする範囲を最小限に留めることができる。スタッドジベルが突設される面を、版部材が載置される前にケレンする場合、スタッドジベルが挿入される貫通孔の配置される可能性のある全範囲がケレン対象面となるため、広範囲にわたるケレンが必要となった。これに対し、本発明では、ケレンする範囲を最小限に留めることができるため、ケレン作業に要する時間を短縮することができる。
【0010】
また、版部材を載置しなければできない他の作業を、ケレン作業と同時に進めることができる。従って、スタッドジベルが突設される面を、版部材が載置される前にケレンする従来の工法と比較し、スタッドジベルを設けるために要する工期を短縮し、鋼桁上に設けられた床版を短い工期で取り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る床版取替工法の概略工程を示す斜視図である。
【
図2】鋼桁の上面においてケレンの対象となる領域を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2を参照しながら、本発明に係る床版取替工法の実施形態について説明する。なお、工法の理解を容易にするための便宜上、
図1及び
図2に示されている部材やその部位の寸法の相対関係は正確なものとされていない。
【0013】
図1及び
図2に示す実施形態は、鋼桁1の上に構築されている、老朽化した既設床版2を、新しい床版に取り替えることを目的とした工法である。既設床版2は、一対の鋼桁1の上に型枠を形成し、コンクリートを打設し構築されたものである。なお、
図1(a)には、車輛の走行を可能とするために既設床版2の上に敷設されていた舗装が、取り除かれた状態が示されている。
【0014】
床版の取り替えにあたって、まず、既設床版2を取り除く。この際、鋼桁1と既設床版2を接合しているスタッドジベルは、鋼桁1から切断し、既設床版2と一体に取り除く。そして、
図1(b)に示すように、既設のスタッドジベルが鋼桁1の上面に残されていない状態とする。
【0015】
既設床版2の取り除きが完了したら、続いて、
図1(c)に示すように、新しい床版を構成する版部材3の複数を鋼桁1の上に並べて配置する。なお、版部材3には、予め、スタットジベルが挿入される貫通孔4が形成されている。この実施形態では、版部材3として公知のプレキャスト版(PC版)の使用が想定されているが、版部材3の材質、構造、寸法は、新しい床版の設計に応じて、適切なものとすればよい。
【0016】
版部材3の配置が完了したら、続いて、版部材3に形成されている貫通孔4を通して、鋼桁1におけるスタッドジベルが突設される面をケレンする。このとき、ケレンの対象となる部分は、
図2に示すように、貫通孔4の開口に対応する複数の円形領域5となる。なお、
図2では、一部の版部材3を取り除く形で、ケレンの対象となる部分を表示しているが、実際には、破線で示されている版部材3が載置されている。
【0017】
一方、鋼桁1におけるスタッドジベルが突設される面を、版部材3を配置する前にケレンする場合、貫通孔4の配置される可能性のある全範囲、
図2においては、想像線で示す矩形領域6がケレンの対象となる。すなわち、ケレンの対象が広範囲にわたるため、円形領域5を対象とする場合より多くの時間を要することになる。
【0018】
ケレンが完了したら、貫通孔4にスタッドジベルを配置し、その基端を鋼桁1に固定する。なお、スタッドジベルの固定には、施工条件や床版の設計を考慮し適切な手法を採用すればよい。そして、スタッドジベルが突設された貫通孔4にモルタルを注入し、鋼桁1と版部材3を接合する。
【0019】
更に、版部材3の各々を、図示しない継手構造により連結し床版を形成する。なお、版部材3の各々の間に継手を設置する作業は、ケレンと並行して実施される。そのため、鋼桁1におけるスタッドジベルが突設される面を、版部材3を配置する前にケレンする場合と比較し、スタッドジベルを現場で設ける工程を含む床版取替工事の工期を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0020】
1 鋼桁
2 既設床版
3 版部材
4 貫通孔
5 円形領域
6 矩形領域