(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】オイルセパレータ
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
F01M13/04 E
(21)【出願番号】P 2019131823
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 直也
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 克也
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩孝
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050949(JP,A)
【文献】特開2015-140679(JP,A)
【文献】特開2003-301710(JP,A)
【文献】国際公開第2015/180767(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207686790(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のブローバイガスを吸気通路に吸引させるブローバイガス通路に配置されており、ハウジングによって区画されたセパレータ空間にブローバイガスが流入する入口部と、前記セパレータ空間からブローバイガスが流出する出口部と、前記セパレータ空間を前記入口部に連通する第1空間と前記出口部に連通する第2空間とに分ける仕切り板と、前記第2空間に設けられており前記仕切り板と対向する衝突面を備える衝突板と、を有し、前記仕切り板には、前記衝突面と対向する位置において前記第1空間と前記第2空間とを繋ぐ連通孔が設けられているオイルセパレータであって、
前記ハウジングは、前記仕切り板と前記衝突板とが並ぶ方向と交差する方向に前記セパレータ空間を広くするとともに、前記仕切り板から前記出口部側に向かう方向に延びている溝状の整流部を備えて
おり、
前記仕切り板から前記出口部側に向かう方向に延びている溝状の前記整流部は、前記出口部を越えて当該方向に延びている
オイルセパレータ。
【請求項2】
内燃機関のブローバイガスを吸気通路に吸引させるブローバイガス通路に配置されており、ハウジングによって区画されたセパレータ空間にブローバイガスが流入する入口部と、前記セパレータ空間からブローバイガスが流出する出口部と、前記セパレータ空間を前記入口部に連通する第1空間と前記出口部に連通する第2空間とに分ける仕切り板と、前記第2空間に設けられており前記仕切り板と対向する衝突面を備える衝突板と、を有し、前記仕切り板には、前記衝突面と対向する位置において前記第1空間と前記第2空間とを繋ぐ連通孔が設けられているオイルセパレータであって、
前記ハウジングは、前記仕切り板と前記衝突板とが並ぶ方向と交差する方向に前記セパレータ空間を広くするとともに、前記仕切り板から前記出口部側に向かう方向に延びている溝状の整流部を備えて
おり、
前記ハウジングは、前記出口部が設けられている壁である第1壁と、該第1壁と反対側の壁であり当該ハウジングの搭載姿勢において前記出口部よりも鉛直方向下方に位置する第2壁と、前記第1壁と前記第2壁とを接続する側壁と、を有し、
前記衝突板は、前記第2壁を基端として該第2壁から突出して前記第2空間に先端が位置しており、
前記整流部は、前記衝突板の先端よりも前記第1壁側に位置している
オイルセパレータ。
【請求項3】
前記整流部を第1整流部とすると、該第1整流部と向かい合う第2整流部を備え、
前記ハウジングにおける前記側壁のそれぞれに前記第1整流部と前記第2整流部とが設けられている
請求項2に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記衝突板は、前記ハウジングにおける前記側壁に対して離間している
請求項2または3に記載のオイルセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているオイルセパレータは、孔の空いた仕切りと、孔を通過したブローバイガスを衝突させる衝突板と、を備えている。孔を通過したブローバイガスを衝突板に衝突させることによって、ブローバイガスに含まれるオイルを液滴として分離させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているようなオイルセパレータでは、衝突板に衝突したブローバイガスは、方向を変えながらオイルセパレータ内を流れる。これによって乱流が発生する。オイルセパレータ内に乱流が発生すると、ブローバイガスから分離させたオイルが乱流によって再び飛散することがある。オイルが飛散すると、飛散したオイルがブローバイガスの流れに乗ってブローバイガスとともにオイルセパレータから流出することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのオイルセパレータは、内燃機関のブローバイガスを吸気通路に吸引させるブローバイガス通路に配置されており、ハウジングによって区画されたセパレータ空間にブローバイガスが流入する入口部と、前記セパレータ空間からブローバイガスが流出する出口部と、前記セパレータ空間を前記入口部に連通する第1空間と前記出口部に連通する第2空間とに分ける仕切り板と、前記第2空間に設けられており前記仕切り板と対向する衝突面を備える衝突板と、を有し、前記仕切り板には、前記衝突面と対向する位置において前記第1空間と前記第2空間とを繋ぐ連通孔が設けられているオイルセパレータであって、前記ハウジングは、前記仕切り板と前記衝突板とが並ぶ方向と交差する方向に前記セパレータ空間を広くするとともに、前記仕切り板から前記出口部側に向かう方向に延びている溝状の整流部を備えていることをその要旨とする。
【0006】
上記構成では、連通孔を通過したブローバイガスが衝突板に当たると、ブローバイガスに含まれるオイルが液滴として分離される。上記構成によれば、ブローバイガスの一部が、セパレータ空間を広くする溝状の整流部に流入する。衝突板に当たって方向が変わったブローバイガスの一部が溝状の整流部に流入すると、整流部に流入したブローバイガスは、出口部側に案内されやすくなる。ブローバイガスの一部が整流部によって出口部側に案内されることによって、第2空間における乱流の発生を軽減できる。乱流の発生が軽減されることによって、分離されたオイルの飛散を抑制することができる。すなわち、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータから流出することを抑制できる。
【0007】
オイルセパレータの一例では、前記仕切り板から前記出口部側に向かう方向に延びている溝状の前記整流部は、前記出口部を越えて当該方向に延びている。
上記構成によれば、整流部に流入したブローバイガスを出口部まで案内することができる。
【0008】
オイルセパレータの一例では、前記ハウジングは、前記出口部が設けられている壁である第1壁と、該第1壁と反対側の壁であり当該ハウジングの搭載姿勢において前記出口部よりも鉛直方向下方に位置する第2壁と、前記第1壁と前記第2壁とを接続する側壁と、を有し、前記衝突板は、前記第2壁を基端として該第2壁から突出して前記第2空間に先端が位置しており、前記整流部は、前記衝突板の先端よりも前記第1壁側に位置している。
【0009】
セパレータ空間のブローバイガスは、出口部側に吸引される。このため、連通孔を通過して衝突板に当たったブローバイガスは、流れの方向を変えながらも出口部側に吸引される。すなわち、ブローバイガスは、出口部が設けられている第1壁側に流れやすい。整流部が第1壁側に位置している上記構成によれば、衝突板に当たったブローバイガスを整流部に流入させやすい。これによって、乱流の発生を軽減でき、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータから流出することを抑制できる。
【0010】
オイルセパレータの一例は、前記整流部を第1整流部とすると、該第1整流部と向かい合う第2整流部を備え、前記ハウジングにおける前記側壁のそれぞれに前記第1整流部と前記第2整流部とが設けられている。
【0011】
一対の整流部を備えていることによって、乱流の発生をより軽減することができる。
オイルセパレータの一例では、前記衝突板は、前記ハウジングにおける前記側壁に対して離間している。
【0012】
仮に衝突板が側壁と接続されている場合、衝突板に当たったブローバイガスが出口部側に流れる際に通過する隙間が衝突板と第1壁との間のみとなり、ブローバイガスの流速が速くなりやすい。第2空間を流れるブローバイガスの流速が速いと、分離されたオイルが飛散しやすくなり、オイルがオイルセパレータから流出しやすくなる。この点、上記構成によれば、衝突板に当たったブローバイガスが衝突板と側壁との間を通過することができる。これによって、衝突板が側壁に接続している場合と比較して、第2空間を流れるブローバイガスの流速を低下させることができる。ブローバイガスの流速が低下されることによって、分離されたオイルの飛散を抑制でき、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータから流出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態のオイルセパレータと、オイルセパレータを搭載する内燃機関と、を示す模式図。
【
図3】第1実施形態のオイルセパレータの内部構造を示す断面図。
【
図6】第2実施形態のオイルセパレータを示す断面図。
【
図9】オイルセパレータの他の変更例を示す断面図。
【
図10】オイルセパレータの他の変更例を示す断面図。
【
図11】オイルセパレータの他の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のオイルセパレータについて、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、オイルセパレータ10と、オイルセパレータ10を搭載する内燃機関90と、を示している。内燃機関90は、クランクケース91と吸気通路92とを連通するブローバイガス通路を備えている。ブローバイガス通路は、オイルセパレータ10と接続管81とを含んでいる。すなわち、オイルセパレータ10は、ブローバイガス通路に配置されている。オイルセパレータ10は、ブローバイガス通路を流れるブローバイガスに含まれるオイルを分離する。オイルセパレータ10は、たとえば、内燃機関90のシリンダヘッドカバーに取り付けられている。オイルセパレータ10と吸気通路92とは、接続管81によって接続されている。
【0015】
図1には、ブローバイガスの流れを実線の矢印で表示している。内燃機関90の運転中に吸気通路92が負圧になると、矢印で示すようにブローバイガスが吸気通路92側に吸引される。これによって、燃焼室からクランクケース91に流出したブローバイガスが吸気通路92に放出され、燃焼室にブローバイガスが還流される。
【0016】
図2に示すように、オイルセパレータ10は、ブローバイガスが流入する流入口24が開口した入口部23を備えている。オイルセパレータ10は、ブローバイガスが流出する流出口44が開口した出口部43を備えている。
図1に示した接続管81は、出口部43に連結される。出口部43は、オイルセパレータ10において
図2における右手側の端部に配置されている。入口部23は、オイルセパレータ10において出口部43よりも
図2における左手側に配置されている。
【0017】
図3に示すように、オイルセパレータ10は、内部にセパレータ空間50を有する箱状である。オイルセパレータ10は、第1壁41と、第1壁41とは反対側の壁である第2壁21と、第1壁41と第2壁21とを接続する側壁と、を備えている。なお、
図3には、オイルセパレータ10が内燃機関90に搭載される姿勢における鉛直方向の上方と下方とを示す矢印と、水平方向を示す矢印と、を表示している。
【0018】
第1壁41は、オイルセパレータ10における鉛直方向上方の壁である。出口部43は、第1壁41に設けられている。出口部43には、第1壁41に接続しているセパレータ側開口45と流出口44とを連通する通路が形成されている。
【0019】
第2壁21は、オイルセパレータ10における鉛直方向下方の壁である。入口部23は、第2壁21に設けられている。第2壁21は、入口部23に近づくほど鉛直方向下方に位置し、出口部43に近づくほど鉛直方向上方に位置する傾斜部22を備えている。すなわち、傾斜部22は、入口部23側ほど第1壁41から離れて、出口部43側ほど第1壁41に近づくように傾いている。このため、オイルセパレータ10は、入口部23側よりも出口部43側の方が、第1壁41と第2壁21との間隔が狭くなっている。
【0020】
図3および
図4に示すように、オイルセパレータ10は、セパレータ空間50に配置されている仕切り板26を備えている。仕切り板26は、セパレータ空間50を第1空間51と第2空間52とに分ける板である。仕切り板26は、水平方向と交差する平面上に位置している。第1空間51と第2空間52とは、水平方向に並んでいる。第1空間51は、セパレータ空間50のうち入口部23に連通する側の空間である。第2空間52は、セパレータ空間50のうち出口部43に連通する側の空間である。仕切り板26には、第1空間51と第2空間52とを連通する二つの連通孔26Aが開口している。さらに、仕切り板26には、第1空間51と第2空間52とを連通するオイル排出孔26Bが開口している。オイル排出孔26Bは、仕切り板26における第2壁21側の端部に位置している。連通孔26Aおよびオイル排出孔26Bは、鉛直方向に並んで設けられている。
【0021】
図4に示すように、オイルセパレータ10の側壁としての第1側壁31および第2側壁33と、第1壁41と、第2壁21と、によって囲われているセパレータ空間50は、断面形状が長方形である。
【0022】
図3および
図5に示すように、オイルセパレータ10は、第2空間52に配置されている衝突板25を備えている。衝突板25は、第2壁21を基端として第1壁41に向けて第2壁21から突出している長方形の板である。衝突板25は、第2壁21との接続部分に基端25Aが設けられ、第2空間52に先端25Bが位置している。すなわち、基端25Aから先端25Bまでの衝突板25の長さは、衝突板25が設けられている位置における第1壁41と第2壁21との間隔よりも短い。たとえば、衝突板25の長さは、第1壁41と第2壁21との間隔の半分である。
【0023】
また、
図5に示すように、衝突板25は、オイルセパレータ10の側壁である第1側壁31に対して離間している。衝突板25は、オイルセパレータ10の側壁である第2側壁33に対しても離間している。すなわち、第2壁21側の基端25Aを除いた衝突板25の三辺は、オイルセパレータ10の内面から離間している。
【0024】
衝突板25と仕切り板26との位置関係について説明する。衝突板25は、
図3に示すように、衝突面25Cが仕切り板26と対向する位置に配置されている。衝突板25と仕切り板26との間には規定の間隔が空いている。
図3には、衝突板25と仕切り板26との間に設けられている間隔を谷部27と示している。
図3および
図4に示すように、仕切り板26の連通孔26Aは、衝突面25Cと対向する位置に開口している。このため、第1空間51側から連通孔26Aを通して第2空間52側を覗いた場合には、衝突板25に遮られてセパレータ側開口45が見えない。
【0025】
以下では、仕切り板26と衝突板25とが並ぶ方向を「長手方向」という。また、仕切り板26と衝突板25とが並ぶ方向と交差する方向であり、第1側壁31と第2側壁33とが並ぶ方向を「幅方向」という。
【0026】
なお、オイルセパレータ10は、
図2および
図3に示すように、入口部23が形成されている第1ハウジング11と、出口部43が形成されている第2ハウジング12と、が組み合わされて箱状に構成されている。第1ハウジング11および第2ハウジング12は、樹脂材料によって成形されている。第2ハウジング12は、第1ハウジング11に溶着されている。セパレータ空間50は、第1ハウジング11および第2ハウジング12によって区画されている。第1ハウジング11は、第2ハウジング12よりも鉛直方向下方に位置している。第2壁21は、第1ハウジング11によって構成されている。第1壁41は、第2ハウジング12によって構成されている。第1側壁31は、第1ハウジング11および第2ハウジング12によって構成されている。第2側壁33は、第1ハウジング11および第2ハウジング12によって構成されている。
【0027】
オイルセパレータ10は、セパレータ空間50における第2空間52を広くする整流部を備えている。整流部としては、
図5に示すように、第1側壁31における第1壁41側の端部に位置する第1整流部32と、第2側壁33における第1壁41側の端部に位置する第2整流部34と、が設けられている。すなわち、第1整流部32および第2整流部34は、衝突板25の先端25Bよりも第1壁41側に位置している。一対の整流部である第1整流部32と第2整流部34とは、互いに向かい合う位置に設けられている。第1整流部32によって、幅方向に外側に向かってセパレータ空間50が拡張されている。同様に、第2整流部34によって、幅方向に外側に向かってセパレータ空間50が拡張されている。すなわち、第1整流部32および第2整流部34は、幅方向にセパレータ空間50を広くしている。換言すれば、第1整流部32および第2整流部34が設けられていない場合と比較して、第1整流部32および第2整流部34の溝状の分だけセパレータ空間50の容積が大きくなっている。
【0028】
オイルセパレータ10では、
図4および
図5に示すように、第2空間52側では、第1空間51側よりも第2ハウジング12が幅方向に長くされている。第2空間52側では、第1ハウジング11と第2ハウジング12との溶着位置が幅方向の外側に移動されていることによって、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間に第1整流部32および第2整流部34を形成している。
【0029】
第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びる溝状である。第1整流部32および第2整流部34が延びている方向は、長手方向と同一方向である。
図3には、整流部のうち、第1壁41に設けられている第1整流部32を図示している。
図3に示すように、第1整流部32は、出口部43のセパレータ側開口45を越えて、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びている。第2整流部34も同様に、出口部43のセパレータ側開口45を越えて、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びている。
【0030】
本実施形態の作用について説明する。
内燃機関90が運転されているとき、吸気通路92を通って燃焼室に吸気が導入される。このとき、吸気通路92が負圧になることによって、接続管81における吸気通路92側の圧力がクランクケース91内よりも低くなる。このため、クランクケース91からブローバイガスが吸気通路92に吸引される。クランクケース91と吸気通路92とを接続するブローバイガス通路にオイルセパレータ10が設けられているため、クランクケース91から吸引されたブローバイガスは、オイルセパレータ10を通過する。オイルセパレータ10では、流入口24からセパレータ空間50にブローバイガスが流入する。セパレータ空間50に流入したブローバイガスは、出口部43側に流れる。
【0031】
オイルセパレータ10は、セパレータ空間50に仕切り板26を備えている。仕切り板26よりも入口部23側の第1空間51を流れて仕切り板26に到達したブローバイガスは、仕切り板26に開口している連通孔26Aを通過して第2空間52に流入する。ブローバイガスは、連通孔26Aを通過することによって流速が速くなる。
【0032】
オイルセパレータ10では、連通孔26Aと対向する位置に衝突板25が設けられている。このため、連通孔26Aから第2空間52に流入して流速が速くなったブローバイガスは、衝突面25Cに衝突する。連通孔26Aを通過したブローバイガスが衝突板25に当たると、ブローバイガスに含まれるオイルが液滴として分離される。
【0033】
オイルセパレータ10は、第2壁21が鉛直方向下方となるように配置されるため、液滴となったオイルは、第2壁21側に落ちる。ブローバイガスが吸気通路92側に吸引されている間、ブローバイガスから分離されたオイルは谷部27に貯留される。
【0034】
オイルセパレータ10は、第2壁21が傾斜部22を備えている。このため、内燃機関90の運転が停止するなどによって吸気通路92側の負圧が解消されると、谷部27に貯留されていたオイルがオイル排出孔26Bを介して第1空間51側に流れ落ちる。
【0035】
オイルセパレータ10は、第2空間52に、第2空間52を拡張する第1整流部32および第2整流部34を備えている。このため、ブローバイガスの一部は、第1整流部32または第2整流部34に流入する。第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びる溝状である。このため、第1整流部32または第2整流部34に流入したブローバイガスは、整流部によって案内されて出口部43側に流れる。
【0036】
出口部43の流出口44からブローバイガスが流出すると、接続管81を介して吸気通路92にブローバイガスが放出される。
本実施形態の効果について説明する。
【0037】
(1-1)オイルセパレータ10では、ブローバイガスの一部が、第1整流部32または第2整流部34に流入することができる。ブローバイガスの一部が溝状の第1整流部32または第2整流部34に流入すると、整流部に流入したブローバイガスは、出口部43側に案内されやすくなる。
【0038】
オイルセパレータ10では、一対の整流部として第1整流部32および第2整流部34を備えていることによって、整流部が一つである場合と比較して、ブローバイガスが出口部43側に案内されやすい。ブローバイガスの一部が第1整流部32または第2整流部34によって出口部43側に案内されることによって、第2空間52における乱流の発生を軽減できる。乱流の発生が軽減されることによって、連通孔26Aと衝突板25とによってブローバイガスから分離されたオイルの飛散を抑制することができる。すなわち、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータ10から流出することを抑制できる。
【0039】
(1-2)オイルセパレータ10では、第1整流部32および第2整流部34によって第2空間52が拡張されている。このため、第1整流部32および第2整流部34が設けられていない場合と比較して、第2空間52を流れるブローバイガスの流速を遅くすることができる。ブローバイガスの流速が遅くなることによって、液滴として分離されたオイルの飛散を抑制することができる。
【0040】
(1-3)オイルセパレータ10では、第1整流部32および第2整流部34が出口部43を越えて延びている。このため、オイルセパレータ10は、第1整流部32または第2整流部34に流入したブローバイガスが流出口44を介して第2空間52から流出するまで、ブローバイガスを案内することができる。
【0041】
(1-4)セパレータ空間50のブローバイガスは、出口部43側に吸引される。このため、連通孔26Aを通過して衝突板25に当たったブローバイガスは、流れの方向を変えながらも出口部43側に吸引される。すなわち、ブローバイガスは、出口部43が設けられている第1壁41側に流れやすい。そして、オイルセパレータ10では、第1壁41に対して衝突板25が離間している。このため、衝突板25に当たったブローバイガスが第1壁41側に流れることが妨げられにくい。すなわち、衝突板25に当たったブローバイガスを第1壁41側に設けられている第1整流部32または第2整流部34に流入させやすい。これによって、乱流の発生を軽減でき、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータ10から流出することを抑制できる。
【0042】
(1-5)仮に衝突板25が第1側壁31および第2側壁33と接続されている場合、衝突板25に当たったブローバイガスが出口部43側に流れる際には、ブローバイガスが通過する隙間が衝突板25と第1壁41との間のみとなり、ブローバイガスの流速が速くなりやすい。この点、本実施形態のオイルセパレータ10では、衝突板25は、第1側壁31および第2側壁33に対して離間している。オイルセパレータ10によれば、衝突板25に当たったブローバイガスが衝突板25と第1側壁31との間を通過することができる。同様に、衝突板25に当たったブローバイガスが衝突板25と第2側壁33との間を通過することができる。これによって、衝突板25が第1側壁31および第2側壁33に接続している場合と比較して、第2空間52を流れるブローバイガスの流速を低下させることができる。ブローバイガスの流速が低下されることによって、分離されたオイルの飛散を抑制でき、オイルがブローバイガスとともにオイルセパレータ10から流出することを抑制できる。
【0043】
(第2実施形態)
図6および
図7を用いて、第2実施形態のオイルセパレータ110について説明する。
上記第1実施形態のオイルセパレータ10は、第2壁21から突出した衝突板25を備えており、衝突板25にブローバイガスが衝突することによってブローバイガスからオイルが分離される。第2実施形態のオイルセパレータ110は、衝突板25に加えて、ブローバイガスを衝突させる突出壁142をさらに備えている。
【0044】
図6および
図7には、第1壁41を基端として第1壁41から突出した突出壁142を備えるオイルセパレータ110を示している。オイルセパレータ110では、突出壁142を備えていること以外の構成は、第1実施形態のオイルセパレータ10と共通である。
図6および
図7では、オイルセパレータ10と共通の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、突出壁142は、衝突板25と出口部43との間に配置されている。
図7に示すように、突出壁142は、第1整流部32および第2整流部34を含めた第2空間52における幅方向の全体に亘って第1壁41から突出している。また、突出壁142における第1壁41からの突出長さは、突出壁142が突出する方向における第1整流部32の長さよりも短い。同様に、突出壁142における第1壁41からの突出長さは、突出壁142が突出する方向における第2整流部34の長さよりも短い。すなわち、第1整流部32においては突出壁142の先端が第1整流部32に位置しており、第2整流部34においては突出壁142の先端が第2整流部34に位置している。
【0046】
本実施形態の作用について説明する。
オイルセパレータ110では、衝突板25に当たって流れの方向を変え、第1壁41側に流れるブローバイガスが突出壁142に衝突する。ブローバイガスに含まれるオイルを分離して突出壁142に付着させることができる。
【0047】
分離されて突出壁142に付着したオイルは、オイルの液滴が大きくなると自重によって鉛直方向下方、すなわち第2壁21側に落下する。第2壁21が傾斜部22を備えているため、オイルの液滴は、仕切り板26側に流れ落ちることができる。
【0048】
本実施形態の効果について説明する。
第2実施形態のオイルセパレータ110によれば、上記第1実施形態における(1-1)~(1-5)の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0049】
(2-1)衝突板25との衝突によってブローバイガスから分離しきることができなかったオイルを、衝突板25よりも出口部43側に配置されている突出壁142によって分離することができる。
【0050】
(2-2)突出壁142における第1壁41からの突出長さが、突出壁142が突出する方向における第1整流部32の長さよりも短いため、第1整流部32によって案内されるブローバイガスは、突出壁142に当たっても第1整流部32が延びる方向に沿って出口部43側に流れることができる。同様に、第2整流部34においても、第2整流部34によって案内されるブローバイガスは、突出壁142に当たっても第2整流部34が延びる方向に沿って出口部43側に流れることができる。
【0051】
(2-3)突出壁142は、第1整流部32および第2整流部34を含めた第2空間52における幅方向の全体に亘って突出している。このため、第1整流部32または第2整流部34に流入するブローバイガスに限らず、第1整流部32または第2整流部34に流入することなく第2空間52を流れるブローバイガスも突出壁142に衝突させることができる。
【0052】
上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・上記各実施形態は、第2壁21から突出している衝突板25を備えている。衝突板としては、第1壁41を基端として第1壁41から突出して第2壁21に向かって延びていてもよい。仕切り板26の連通孔26Aと対向する位置に衝突面が配置されるように衝突板が設けられていれば、衝突板が第1壁41から突出している場合でも、連通孔26Aを通過したブローバイガスを衝突板に当てることができる。
【0054】
・上記各実施形態では、衝突板25は、第1側壁31および第2側壁33に対して離間している。衝突板としては、第1側壁31または第2側壁33と接続されていてもよい。
図8は、第1側壁31および第2側壁33に接続されている衝突板225を備えるオイルセパレータ210を示している。すなわち、オイルセパレータ210では、幅方向における衝突板225の長さは、幅方向における第1側壁31と第2側壁33との間の長さに等しい。
【0055】
その他の例として、衝突板は、第1側壁31と接続されており第2側壁33に対して離間していてもよい。また、衝突板は、第2側壁33と接続されており第1側壁31に対して離間していてもよい。
【0056】
・上記各実施形態では、衝突板25の長さは、第1壁41と第2壁21との間の長さの半分としている。衝突板25の長さは、適宜変更が可能である。
・上記各実施形態は、仕切り板26に二つの連通孔26A孔が開口している。連通孔26Aの数は任意である。また、連通孔26Aの位置は、衝突板25の衝突面25Cと対向する位置であれば、変更が可能である。また、連通孔26Aの大きさも適宜変更が可能である。
【0057】
・上記各実施形態における仕切り板26と衝突板25との間に空けている規定の間隔は、その大きさを変更することができる。当該間隔を変更することによって、オイルの捕集効率を調整することができる。また、衝突板25に当たって方向を変えるブローバイガスの流れを調整することもできる。
【0058】
・上記各実施形態における傾斜部22の傾斜角度は、入口部23に近づくほど鉛直方向下方に位置し出口部43に近づくほど鉛直方向上方に位置する傾斜角度から水平までの範囲で適宜変更が可能である。
【0059】
・上記各実施形態では、内燃機関90に搭載されるオイルセパレータ10,110の姿勢は、変更することができる。たとえば、第1壁41が水平方向に対して傾斜するようにオイルセパレータ10,110を搭載してもよい。オイルセパレータ10,110を搭載する姿勢を変更した場合でも、第2壁21の傾斜部22が、入口部23に近づくほど鉛直方向下方に位置していることが好ましい。
【0060】
・上記各実施形態では、仕切り板26は、水平方向と交差する平面上に位置している。仕切り板の位置は、当該平面上に限られるものではない。たとえば、仕切り板は、第1壁41側よりも第2壁21側の方が衝突板25に近づくように傾斜していてもよい。
【0061】
・上記各実施形態では、第1整流部32および第2整流部34は、出口部43のセパレータ側開口45を越えて、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びている。第1整流部32および第2整流部34としては、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びて、第2空間52を流れるブローバイガスの一部を出口部43まで案内する溝状であればよい。たとえば、第1整流部32および第2整流部34は、セパレータ側開口45に接続するまで仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びていてもよい。
【0062】
・第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びて出口部43側にブローバイガスを案内できればよい。たとえば、第1整流部32および第2整流部34は、必ずしも直線状に延びていなくてもよく、湾曲していてもよい。また、第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26側の端と出口部43側の端とで鉛直方向における位置が異なっていてもよい。すなわち、第1整流部32および第2整流部34は、斜めに延びる溝状でもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26から出口部43側に向かう方向に延びている。第1整流部32および第2整流部34としては、仕切り板26側の始点の位置を変更してもよい。たとえば、第1整流部32および第2整流部34は、仕切り板26と衝突板25との間を始点として、出口部43側に向かう方向に延びていてもよい。
【0064】
・上記各実施形態は、一対の整流部として第1整流部32および第2整流部34を備えている。整流部は、一つでもよいし、三つ以上の整流部を設けることもできる。
・上記各実施形態は、第1側壁31における第1壁41側の端部に位置する第1整流部32を備えている。整流部を設ける位置は、第1側壁31における第1壁41側の端部に限らない。
【0065】
たとえば、
図9には、整流部を設ける位置を変更した例として、第1ハウジング311と第2ハウジング312とによって構成されるオイルセパレータ310を示している。オイルセパレータ310が有する第1整流部332は、第1側壁331における第1壁341側の端部よりも第2壁321側に位置している。同様に、オイルセパレータ310が有する第2整流部334は、第2側壁333における第1壁341側の端部よりも第2壁321側に位置している。
【0066】
・上記各実施形態では、第1整流部32および第2整流部34によって幅方向にセパレータ空間50が拡張されている。整流部としては、幅方向に限らず、仕切り板26と衝突板25とが並ぶ方向と交差する方向にセパレータ空間50を広くしていてもよい。たとえば、第1壁41と第2壁21とが並ぶ方向を高さ方向とした場合、高さ方向に外側に向かってセパレータ空間50を拡張する整流部を設けることもできる。
【0067】
図10に例示するオイルセパレータ410は、第2壁421を有する第1ハウジング411と、第1壁441を有する第2ハウジング412と、によって構成されている。第2ハウジング412は、高さ方向に膨出して第1整流部432および第2整流部434を形成している。このようにして、高さ方向に外側に向かってセパレータ空間50を拡張する整流部を設けることができる。
【0068】
・オイルセパレータは、セパレータ空間50を幅方向に拡張する整流部と、セパレータ空間50を幅方向以外に拡張する整流部との双方を備えていてもよい。
・上記各実施形態では、たとえば
図4に示すように、セパレータ空間50の断面形状が長方形である。オイルセパレータにおいて、セパレータ空間の断面形状は、長方形に限らない。
【0069】
たとえば、
図11には、セパレータ空間の断面形状が三角形であるオイルセパレータ510を示している。オイルセパレータ510では、第1ハウジング511が構成する第1側壁531および第2側壁533と、第2ハウジング512が構成する第1壁541と、によってセパレータ空間50が囲われている。すなわち、オイルセパレータ510では、第1側壁531および第2側壁533によって、鉛直方向下方に位置する壁が構成されている。衝突板25は、第1側壁531および第2側壁533から突出している。こうした構成でも、出口部43を備える第1壁541側に第1整流部532および第2整流部534を設けることによって、上記各実施形態と同様に、第1整流部532および第2整流部534にブローバイガスを流入させることができる。これによって、乱流の発生を軽減することができる。
【0070】
その他、セパレータ空間の断面形状としては、半円等を採用することができる。たとえば、セパレータ空間を区画する壁のうち鉛直方向下方に位置する壁が弧を描くように湾曲している場合、断面形状が半円のセパレータ空間を区画することができる。
【0071】
・上記各実施形態では、第1ハウジングと第2ハウジングとを組み合わせてオイルセパレータを構成している。オイルセパレータとしては、セパレータ空間を区画するハウジングを備えていればよく、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み合わせに限られるものではない。
【符号の説明】
【0072】
10…オイルセパレータ、11…第1ハウジング、12…第2ハウジング、21…第2壁、22…傾斜部、23…入口部、24…流入口、25…衝突板、25A…基端、25B…先端、25C…衝突面、26…仕切り板、26A…連通孔、26B…オイル排出孔、27…谷部、31…第1側壁、32…第1整流部、33…第2側壁、34…第2整流部、41…第1壁、43…出口部、44…流出口、45…セパレータ側開口、50…セパレータ空間、51…第1空間、52…第2空間、81…接続管、90…内燃機関、91…クランクケース、92…吸気通路、110…オイルセパレータ、142…突出壁。