(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20230620BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C02F1/32
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2019147799
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 直人
(72)【発明者】
【氏名】神野 すみれ
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506296(JP,A)
【文献】特開昭47-032857(JP,A)
【文献】特開2016-221486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/32
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる流路を構成する筒状部と、
前記筒状部の一端に設けられ前記流路に対して前記長手方向に沿って対象物を流入させる流入口と、
前記流入口と前記流路との間に設けられ、平面視が円形であり、且つ表裏間を通じる開口孔を有し、開口率が中心ほど大きく、周辺に近いほど小さくなるように設定されている板と、
前記筒状部の他端に設けられ前記流路を流れる前記対象物に向けて前記長手方向に沿って紫外光を照射可能であり、且つ当該紫外光の強度分布が、前記長手方向と直交する前記流路の断面において、中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い発光素子と、
前記対象物が前記流路にあることを検知する流体検知器と、
当該流体検知器の検知信号に基づき前記発光素子を駆動制御する制御部と、を備え
、
前記板を同心円で面積が等しい3つのエリアに分割したとき、最も外側のエリアの前記開口率に対して、最も内側のエリアの前記開口率が6倍以上10倍以下である
紫外線照射装置。
【請求項2】
前記最も外側のエリアの前記開口率に対して、前記最も内側のエリアの前記開口率が6.3倍以上8.6倍以下である
請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記流体検知器は歯車式である、請求項1
又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記流体検知器は電磁式である、請求項1
又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記流体検知器は、超音波式である、請求項1
又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記流体検知器は、前記検知信号として、単位時間当たりに前記流路を通過する前記対象物の量に応じて変化する信号を出力する、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記
制御部は、前記検知信号に基づき前記紫外光の強度を調整する、請求項
6に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記板の前記開口率が10%以上50%以下である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記筒状部は前記一端に前記長手方向に沿って内径が次第に増加して前記流路に連通するテーパ部を含み、
前記テーパ部の小径側の端部に前記流入口が設けられている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記テーパ部のテーパ形状において、テーパ比が0.2以上0.68以下である請求項9に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
殺菌モジュールに適用される請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記対象物は液体である請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体検知器を備えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光には、殺菌能力があることから、水等の流体に紫外光を照射することで、流体を連続的に殺菌する装置が提案されている。このような装置として、例えば、長手方向に延びる流路を構成する直管と、流路を層流状態で流れる流体に向けて長手方向に紫外光を照射する光源とを備えた流体殺菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この流体殺菌装置では、流路のレイノルズ数が層流状態の臨界レイノルズ数以下となるように、流体殺菌装置の内径及び平均流速を調整するようにしており、例えばレイノルズ数が3000以下(好ましくは2320以下)の層流で流体を導入し、ポワズイユ分布状の流れの流体の流速が大きい領域に高いLED強度の光が照射されるようにすることで、殺菌効率を向上させるようにしている。
【0003】
発光素子は、中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い強度分布となり、層流状態の流体はポワズイユ分布状の流れとなり、前述のようにポワズイユ分布状の流れの流体の流速が大きい領域に高いLED強度の光が照射されるようにすることができるため、プラグ流れの流体と比較して高い殺菌効率を得ることができる。
ポワズイユ分布状の流れの流体は、レイノルズ数を小さくすることで形成することができるが、レイノルズ数を小さくするために流量を一定とすると、円管内を流れる流体の速度を遅くするために円管の径を大きくする必要がある。円管の径を大きくするということはすなわち装置の大型化につながる。
【0004】
そのため、流速を低下させることなく小型且つ簡易な装置で流体に対して効率よく紫外線照射を行うことの可能な紫外線照射装置が検討されている。しかしながら、紫外線照射装置には、目的の性能を得るために必要なだけの投入エネルギーに調整するための機構は備えられておらず、所定の性能をより低い投入エネルギーで得ようとする使用者には、外部から殺菌装置を制御する機構を要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、紫外線照射装置を有効に機能させるためには、殺菌対象物が処理流路を流れている間に発光素子を点灯させ、流れていないときには消灯する必要がある。そのため例えば、殺菌対象物が処理流路に流れている状態を装置外部で検知し、電気信号として紫外線照射装置に入力することで発光素子を制御することが必要である。例えば、一般家庭において水道水の殺菌を目的として紫外線照射装置を設置する場合、殺菌対象物が処理流路を流れている状態を検知する方法として、蛇口の開閉状態を監視することが考えられる。しかしながら、一般家庭で用いられる蛇口等の流量調整弁には開閉に対応した電気信号を発する機能は搭載されていない。そのため、紫外線照射装置を有効に機能させることは困難である。
【0007】
そこで、この発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、小型且つ簡易な装置で流体に対して効率よく紫外線照射を行うことの可能な紫外線照射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置は、長手方向に延びる流路を構成する筒状部と、前記筒状部の一端に設けられ前記流路に対して前記長手方向に沿って対象物を流入させる流入口と、前記流入口と前記流路との間に設けられ、平面視が円形であり、且つ表裏間を通じる開口孔を有し、開口率が中心ほど大きく、周辺に近いほど小さくなるように設定されている板と、前記筒状部の他端に設けられ前記流路を流れる前記対象物に向けて前記長手方向に沿って紫外光を照射可能であり、且つ当該紫外光の強度分布が、前記長手方向と直交する前記流路の断面において、中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い発光素子と、前記対象物が前記流路にあることを検知する流体検知器と、当該流体検知器の検知信号に基づき前記発光素子を駆動制御する制御部と、を備え、前記板を同心円で面積が等しい3つのエリアに分割したとき、最も外側のエリアの前記開口率に対して、最も内側のエリアの前記開口率が6倍以上10倍以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、小型且つ簡易な装置で流体に対して効率よく紫外線照射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る紫外線照射装置を適用した殺菌モジュールの一例を示す外観図である。
【
図9】光源の紫外光強度を説明するための説明図である。
【
図10】殺菌モジュール内における流速分布の一例を示す分布図である。
【
図11】計算機上でシミュレーションを行う際に想定した本実施形態に係る殺菌モジュールの内側流路の一例である。
【
図12】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた光学シミュレーション結果の一例である。
【
図13】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションで想定した整流用の板の一例である。
【
図14】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションにおける紫外光強度の比率の一例である。
【
図15】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションによる、整流用の板の開口率と紫外光強度の比率の標準偏差との対応の一例である。
【
図16】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションによる、圧力損失の演算で想定した整流用の板の一例である。
【
図17】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションによる、整流用の板の開口率と安全率との対応の一例である。
【
図18】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションで想定したテーパ比の一例である。
【
図19】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションによる、テーパ比と紫外光強度の比率との対応の一例である。
【
図20】本実施形態に係る殺菌モジュールを用いた流速シミュレーションによる、テーパ比と、整流用の板の開口率と、紫外光強度の比率の標準偏差と、の対応の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
〔構成〕
図1は、本発明に係る紫外線照射装置を、殺菌モジュールに適用したものであり、殺菌モジュールの概略構成の一例を示す正面図である。また、
図2は
図1の要部の縦断面図である。
殺菌モジュール1は、
図1に示すように、流入部2と、円筒部(筒状部)3と、発光部4と、流出部5と、流体検知器7と、制御部8と、を備える。流入部2は円筒部3の一端に取り付けられ、円筒部3の他端に発光部4が取り付けられている。
流入部2は、端部21と、テーパ部22とを備え、端部21の一端には円筒部3の長手方向に沿って流体を流入させる流入口21aと、流入口21aを他の配管等に接続するためのフランジ21bと、が形成されている。
【0013】
テーパ部22は、流入された流体の流れ方向に拡径するテーパ形状に形成され、テーパ部22の小径側が端部21の他端に接続され、テーパ部22の大径側は、
図2に示すように、板6を介して円筒部3の一端に取り付けられている。
テーパ部22は、流入された流体の流れをポワズイユ分布状の流れにする目的で設けられている。ポワズイユ分布状の流れは、流体の流入口が狭く、その後広がるテーパ形状とすることで形成することができる。テーパ形状としては、テーパ比が0.2以上0.68以下であることが好ましい。テーパ比をこの範囲とすることで、より長い距離においてポワズイユ分布状の流れを実現することができる。
なお、テーパ比は
図3に示すように、テーパ部22の内側の、小径側の直径をd、大径側の直径をD、テーパ部22の長さ、つまり小径側の端部から大径側の端部までの距離をLとしたとき、次式(1)で表される。
テーパ比=(D-d)/L ……(1)
【0014】
円筒部3は、
図1に示すように流入部2側の第一部材31と、発光部4側の第二部材32とを有し、第一部材31と第二部材32とは、接合部材33によって一体に結合されている。また、円筒部3の発光部4側の端面には、
図2に示すように発光部4に収容されている光源41からの紫外光を透過させるための窓部34が設けられている。窓部34は、石英(SiO
2)やサファイア(Al
2O
3)、非晶質のフッ素系樹脂等の紫外光の透過率が高い部材で構成される。
円筒部3には、
図2に示すように、その内部を、テーパ部22の大径側と同等程度の内径を有する内側流路35と、内側流路35の外側に形成された外側流路36とに分離する分離壁37が設けられている。分離壁37の発光部4側の端部寄りには、内側流路35と外側流路36とを連通する複数の連通孔38が形成されている。
【0015】
また、円筒部3の流入部2側の端部寄りの外周には、殺菌モジュール1内の流体を流出する流出部5が設けられている。流出部5の一端は外側流路36と連通し、他端には流体を流出させる流出口51と、流出口51を他の配管等に接続するためのフランジ52とが形成されている。
これによって、流入口21aから流入された流体はテーパ部22、内側流路35、連通孔38、外側流路36を通って流出口51から流出される。
【0016】
発光部4は光源41を備え、光源41は照射面が窓部34と対向し、且つ、照射面の中心と、流体の流れる方向から見て内側流路35の中心とが対向するように配置される。光源41は、殺菌効率の高い波長である260nm~270nm付近の紫外光を発光し、例えば、中心波長が230nm以上300nm以下の紫外線発光ダイオード等の発光素子で構成される。発光部4には、
図2に示すように、光源41の配置位置の近傍に、流体殺菌モジュール1を駆動制御する制御部8が搭載された制御基板(図示せず)を配置するための格納部42が形成されている。
【0017】
板6は、流入された流体の流れをポワズイユ分布状の流れにする目的で設けられている。ポワズイユ分布状の流れは、板6を設けることでより理想に近い形に形成することができる。板6は、平面視が円形であって、表裏間を通じる開口孔6aを複数有する。開口孔6aは、板6の開口率が中心部分は大きく、周辺部分は小さくなるように配置されている。板6は、例えば
図4に示すように、板6を同心円で面積が等しい3つのエリアに分割したとき、最も外側のエリア(以後、外側エリアという。)Aoutの開口率に対して、最も内側のエリア(以後、内側エリアという。)Ainの開口率が6倍以上10倍以下であることが好ましい。内側エリアAinと外側エリアAoutとの間に存在する中間エリアAmidの開口率は、外側エリアAoutの開口率又は内側エリアAinの開口率のどちらかと同一又は、両者の開口率の間の開口率とする。外側エリアAoutの開口率に対して内側エリアAinの開口率を6倍以上にすると、より長い距離においてポワズイユ分布状の流れを維持することができ、10倍以下とすることで、板6の板としての信頼性を維持することができる。
【0018】
なお、板6全体の開口率は、モジュール圧力損失を抑制する観点から10%以上が好ましく、整流性能の点から50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
また、板6は、開口率を三段階に分ける場合に限るものではなく、任意の段階に分けてもよく、要は、レイノルズ数3000以上で導入される流体を、板6を通過させることで、ポワズイユ分布状の流れを形成することができればよく、同様に、開口孔6aの大きさや配置位置も任意に設定することができる。
【0019】
図5~
図7は、板6の開口孔6aの配置例を示したものである。
図5は、開口率を三段階に分けたものであり、内側エリアAinと、中間エリアAmidと、外側エリアAoutとで、開口孔6aの配置数を異ならせることによって開口率を異ならせるようにしたものである。つまり、開口孔6aの大きさは同一であり、内側エリアAinにおける開口孔6aの配置数が最も多く、次に中間エリアAmidにおける開口孔6aの配置数が多く、外側エリアAoutにおける開口孔6aの配置数が最も少なくなるように配置すればよい。
【0020】
図6は、開口率を二段階に分けたものであり、開口孔の大きさを異ならせることで、開口率を異ならせるようにしたものである。つまり、平面視で円形の板6において、中心部に孔径が比較的大きな開口孔6bを設け、板6の同心円上となる位置に、開口孔6bを囲むように、開口孔6bよりも孔径の小さい複数の開口孔6cを配置する。これによって、開口率を二段階に分けることができる。なお、開口孔6bの大きさと、開口孔6cの配置数との両方を調整することで、開口率を調整するようにしてもよい。
【0021】
図7は、開口孔の配置数を異ならせることによって、開口率を二段階に分けるようにしたものである。開口孔6dは同一の孔径を有し、
図7(a)は、内側エリアAinに145個の開口孔6dを配置し、外側エリアAoutに124個の開口孔6dを配置し、開口率比が2:1となるようにしている。
図7(b)は、内側エリアAinに165個の開口孔6dを配置し、外側エリアAoutに104個の開口孔6dを配置し、開口率比が3:1となるようにしている。
このような構成を有する殺菌モジュール1において、流入口21aに流入される流体のレイノルズ数Reは3000以上とする。
【0022】
図1に戻って、流体検知器7は、流入口21aに連通する流入配管61に設けられる。流体検知器7は、流入配管61を通過する流体の流れを検知し、検知したことを表す電気信号からなる検知信号を制御部8に出力する。流体検知器7は、歯車式、超音波式、電磁式等、いずれの検知方式であっても適用することができる。また、流体検知器7は、流入配管61を通過する流体の流れを検知することができればよく、流入配管61を流れる流体の速度、粘度、温度等に応じて適用する流体検知器の方式を選定すればよい。
【0023】
制御部8は、流体検知器7からの検知信号に基づき光源41を駆動制御すると共に、流体殺菌モジュール1全体の制御を行う。制御部8では、具体的には、流体検知器7で流体の流れを検知したとき光源41を起動し、流体検知器7で流体の流れを検知しなくなったとき光源41を停止させる。
流体検知器7と制御部8との間は、有線で接続されていてもよく無線で接続されていてもよい。なお、制御部8は、実際には、前述のように、
図2に示す格納部42に、制御基板に搭載されて設けられているが、
図1では説明のため制御部8を明示している。
【0024】
〔動作〕
次に、上記実施形態の動作を説明する。
流入配管61を介して内側流路35内に殺菌対象の流体である対象物が流入されていないときには、流入配管61に設けられた流体検知器7では、流体の流れを検知しない。制御部8では、流体検知器7からの検知信号を入力し、流入配管61を通過する流体の流れが検知されないときには、内側流路35内の対象物が静止していると判断して、光源41を動作させない。
【0025】
一方、流入配管61を通して内側流路35内に対象物が流入される状態となると、流体検知器7では流体の流れを検知する。制御部8では、流体検知器7で流入配管61を通過する流体の流れが検知されたことから、内側流路35内の対象物が流動していると判断し、光源41を起動する。そのため、流入配管61を通して内側流路35内を通過する対象物に対して紫外線照射が行われる。
この状態から、流体検知器7で流体の流れを検知しない状態となると、制御部8では光源41を停止させる。これにより、紫外線照射が停止する。
【0026】
〔流体検知器を設けることによる効果〕
(1)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、流入配管61を通過する流体の流れを検出する流体検知器7を設け、流体検知器7の検知信号に基づき、内側流路35内の対象物が流動しているとみなされる状態となったときに紫外線照射を行い、流入配管61を通る流体の流れを検知できない状態となると紫外線照射を停止するようにしている。そのため、内側流路35内の対象物が静止している状態で紫外線照射が行われることを回避することができ、その分、不要な紫外線照射を行うことを回避することができる。その結果、紫外線照射を効率よく行うことができ、流体殺菌モジュール1の寿命を伸ばすことができ、また、コスト削減を図ることができる。
【0027】
(2)本発明の一実施形態に係る殺菌モジュール1において、流体検知器7を、流入配管61に設け、流入配管61を通過する流体の流れを検知するようにしている。そのため、実際に内側流路35内に対象物が流入される以前の時点で光源41を起動させることができる。つまり、流体検知器7で流体の流れを検知した時点から実際に紫外線照射が開始されるまでのタイムラグを考慮して光源41を起動することができる。そのため、内側流路35内に流入される対象物に対し、より一層照射漏れが生じることなく紫外線照射を行うことができる。
【0028】
「流体検知器7が流体の流れを検知した時点から実際に紫外線照射が開始されるまでの所要時間」が、「“流体検知器7の配置位置から内側流路35の紫外線照射が可能な地点までの体積”を“単位時間当たりの対象物の流量”で割り算した値」以下である、という配置条件を満足すれば、内側流路35内に対象物が流入された初期の段階から対象物に対する殺菌を行うことができる。したがって、前記配置条件、つまり、「流体検知器7が流体の流れを検知した時点から実際に紫外線照射が開始されるまでの所要時間」が「流体検知器7で検出された流体が内側流路35内の紫外線照射が可能な地点に到達するまでの所要時間」以下となるように流体検知器7を配置すれば、内側流路35内に流入される対象物に対し、より確実に紫外線照射を行うことができる。
【0029】
〔流体検知器を設ける場合の変形例〕
(1)上記実施形態においては、流入配管61を流れる流体の有無を検知するセンサを用いているが、流体検知器7は、単位時間当たりに流入配管61を流れる流体量に応じた信号を出力するセンサであってもよい。
流体検知器7が、単位時間当たりに流入配管61を流れる流体量に応じた信号を出力するセンサである場合には、制御部8において、単位時間当たりの流体量に応じて、光源41の紫外線照射量、すなわち紫外光の強度を調整するようにしてもよい。つまり、単位時間当たりの流体量が多いときには紫外線照射量を増加させ、単位時間当たりの流体量が少ないときには紫外線照射量を減少させるようにしてもよい。このようにすることによって、内側流路35内に流入される対象物の量に応じた、より過不足のない紫外線照射量で照射することができる。そのため、不要な紫外線照射を行うことをより一層抑制することができる。また、流体検知器7によって、対象物の流速を検出するようにし、流速に応じて紫外線照射量を調整するように構成してもよい。
【0030】
(2)上記実施形態では、流体検知器7により、流入配管61を通過する流体の流れを検知する場合について説明しているが、流入配管61を流れる対象物が粉体等流体でない場合には、対象物が流入配管61を流れていることを検知することができるセンサを適用すればよい。
【0031】
(3)上記実施形態においては、流体検知器7により、流入配管61を通過する流体の流れを検知する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、
図8に示すように、流出口51に連通する流出配管62に流体検知器7を設け、制御部8では、流出配管62を通過する流体の流れに応じて、光源41を制御するようにしてもよい。具体的には制御部8では、流出配管62を通過する流体の流れを検知したときには、内側流路35内の対象物が流動しているとみなして光源41を駆動し、流出配管62を通過する流体の流れを検知しないときには内側流路35内の対象物が静止しているとみなして光源41を停止させる。
【0032】
この場合も不要な紫外線照射を行うことを回避することができる。また、流体検知器7は、流出配管62を通過する流体が検知されなくなった時点で紫外線照射を停止するようにしているため、流体検知器7を通過した流体は、紫外線照射が行われた後の流体である。つまり、流体検知器7を通過する流体は殺菌済みである。ここで、流体検知器7が、流出配管62を通過する流体と接触して流体の有無を検知する型式のセンサである場合、流体検知器7に対象物が接触することによって、流体検知器7にバイオフィルム等が生じる可能性がある。しかしながら、流体検知器7を通過する流体は、紫外線照射が行われた後の流体であるため、流体検知器7にバイオフィルム等が生じるリスクを低減することができる。また、流体検知器7を通過する流体は既に紫外線照射が行われた後であるため、流体検知器7は、流出配管62の流出口51により近い位置に設けることが好ましい。このようにすることによって、紫外線照射を行うべき対象物に対する紫外線照射が終了した後、より早い時点で紫外線照射を停止することができるため、不要な紫外線照射を行うことをより早い段階で終了することができる。
【0033】
(4)上記実施形態においては、流体検知器7を、流入配管61及び流出配管62のいずれか一方に配置する場合について説明したが、流体検知器7を流入配管61と流出配管62との両方に設けてもよい。この場合には、制御部8は、流入配管61に設けた流体検知器7で流体の流れを検知した時点で光源41を起動し、流出配管62に設けた流体検知器7で流体の流れが停止したことを検知した時点で光源41を停止させるようにすればよい。このようにすることによって、対象物に対する殺菌処理を開始する時点及び終了時点ともに的確なタイミングで光源41を起動及び停止することができ、より一層、不要な紫外線照射を行うことを回避することができる。さらに流出配管62に設けた流体検知器7の寿命の延長を図ることができる。
【0034】
(5)上記実施形態においては、流体検知器7により、流入配管61を通過する流体の流れを検知する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、流入配管61内に対象物が存在するか否かを検出するようにしてもよい。同様に、流出配管62内に対象物が存在するか否かを検出するようにしてもよい。つまり、内側流路35内の対象物が流動しているか否かに関係なく、流入配管61に設けた流体検知器7により流体を検知したときには内側流路35内に対象物が存在するとみなして光源41による紫外線照射を行い、流体検知器7により流体を検知しないときには内側流路35内に対象物が存在しないとみなして紫外線照射を停止する。流出配管62に流体検知器7を設けた場合も同様に光源41を制御する。
【0035】
上記実施形態では流体検知器7により流体の流れを検知しているため、内側流路35内に対象物が存在していても対象物が流動していなければ、流体検知器7で検知されないため、紫外線照射は行われない。これに対し、流体検知器7で流体の有無を検知することにより、内側流路35内に対象物が存在するか否かに応じて紫外線照射を起動及び停止させることができる。
【0036】
〔流体殺菌モジュールの構成の効果〕
(1)本発明の一実施形態に係る流体殺菌モジュール1は、流入口21aに流入される流体のレイノルズ数Reを3000以上としている。
ここで、流路を流れる流体がポワズイユ分布状の流れを形成するためには、流路を流れる流体のレイノズル数を層流状態の臨界レイノルズ数以下とする必要があり、例えば、円管内の流れの臨界レイノズル数は約2300であることが知られている。そのため、レイノズル数が3000以上の流体を円管に流入したとしてもこの状態では、ポワズイユ分布状の流れとなりにくい。
【0037】
一方、
図2に示す殺菌モジュール1において、流入口21aに流入された流体は、テーパ部22を通り、さらに板6を通過して内側流路35に流入される。
ここで、テーパ部22は入り口側の管径が小さく、その後拡径するため、テーパ部22内では、流体の流れがテーパ部22の側壁方向に広がることになる。つまり、
図2中に矢印で示すように、流体が流れる方向から見て、テーパ部22の中心部分に流れが集中することになり、すなわち、ポワズイユ分布状の流れが形成されることになる。そして、テーパ部22のテーパ比を、0.2以上0.68以下となるようにしているため、内側流路35の長い距離においてポワズイユ分布状の流れを維持することができる。
【0038】
さらに、テーパ部22と内側流路35との間に板6を設けており、この板6は、同心円で面積の等しい3つのエリアにしたときに、外側エリアの開口率に対して内側エリアの開口率の方が大きくなるようにしている。板6を設けることにより、流体の流れは、内側流路35の側壁方向に広がることになるが、内側エリアの開口率が大きいため、外側エリアに比較して内側エリアに流れる流量が大きくなる。そのため、
図2中に矢印で示すように、流体が流れる方向から見て、内側流路35の中心部分を流れる流体の流速が早くなり、内側流路35の側壁寄りを流れる流体の速度は中心部分を流れる流体に比較して遅くなる。つまり、ポワズイユ分布状の流れが形成されることになる。そして、内側エリアの開口率を、外側エリアの開口率に対して6倍以上10倍以下としている。そのため、板6を設けることによっても内側流路35の長い距離においてポワズイユ分布状の流れを維持することができる。
【0039】
そして、光源41は、
図9に示すように、照射面の中心ほど発光強度が強く、照射面の縁部に近づくほど発光強度は弱くなる強度の分布特性を有する。また、光源41を、照射面の中心と、流体の流れる方向から見て内側流路35の中心とが対向するように配置している。そのため、光源41は、流速の高い中心部を、発光強度が最も強い部分で照射することになる。その結果、ポワズイユ分布状の流速分布となって内側流路35を通過する流体に作用する紫外光のエネルギー量を、流体が通過する径方向の位置によらず均一化することができる。これにより、内側流路35を流れる流体の全体に対して所定以上のエネルギー量の紫外光を照射することができ、流体全体に対する殺菌効果を高めることができる。
【0040】
図10は、
図1に示す殺菌モジュール1に流体を流入させた場合の流速分布の一例を示したものである。
図10に示すように、殺菌モジュール1において流体が流れる方向から見て中心部付近が、流速が最も大きいことがわかる。
【0041】
〔流体殺菌モジュールの構成の変形例〕
(1)上記実施形態では、
図2に示すように、テーパ部22と、板6とによって、ポワズイユ分布状の流れを形成する場合について説明したが、これに限るものではない。前述のように、テーパ部22と板6との少なくともいずれか一方を設けることによって、ポワズイユ分布状の流れを形成することができるため、テーパ部22と板6の一方のみを設けた場合であっても、ポワズイユ分布状の流れを形成することができる。
【0042】
(2)上記実施形態においては、本発明に係る紫外線照射装置を
図2に示すように、二重構造の殺菌モジュールに適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、流路内を通過する流体に対して紫外線を照射するようにした殺菌モジュールであっても適用することができる。また、殺菌モジュールの形状は
図2に示す二重構造に限るものではなく、円管や筒状の部材の内部を流路として通過させるようにした場合であっても適用することができる。
【0043】
(3)上記実施形態においては、流体の殺菌を行う場合について説明したが、殺菌対象は、水、水溶液、コロイド分散液等の流体であってもよく、また、空気等の気体や、氷や固体の微粉末等であってもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明に係る紫外線照射装置を用いた殺菌モジュールの実施例を説明する。
本発明に係る殺菌モジュール1について、計算機上で光学シミュレーション及び流速シミュレーションを行った。
これら光学シミュレーション及び流速シミュレーションでは、内側流路35として、
図11(a)に示す、断面が円となる直管の内側を想定して計算機上でシミュレーションを行った。
【0046】
具体的には、管径40〔mm〕、長さ300〔mm〕の直管を想定した。対象物を流す条件は、流量が5〔L/min〕、平均流速が0.07〔m/s〕、レイノルズ数が2957とし、乱流を発生させた。また助走区間距離は1000〔mm〕以上1600〔mm〕以下とした。
また、直管はポリテトラフルオロエチレン製であり、紫外線領域における反射率は96〔%〕、紫外線領域における拡散率は100〔%〕とした。
【0047】
〔光学シミュレーション〕
このような直管からなる流路において、直管の流入口側の端部から下流側の、200〔mm〕の地点における断面において対象物に対する光学的な評価を行った。なお、
図11(a)において、
図11(b)に示すように、直管が延びる方向をZ軸とした。また、断面における円中心つまり管中心を基準とする、Z軸に垂直な方向(
図11(b)では上方向)をY軸とし、同じく管中心を基準とするZ軸及びY軸に垂直な方向をX軸方向とし、管中心におけるX軸及びY軸の座標をそれぞれX=0、Y=0とした。このXYZ座標系において、Z=200〔mm〕、X=0を通る、Y軸上で、Y=-20〔mm〕から+20〔mm〕までの範囲における、0.5〔mm〕毎の点を試算点とし、各試算点について、ドーズ量相当の値として、「紫外光強度×(1/流速)」(以後、紫外光強度の比率ともいう。)を演算した。
【0048】
Z=200、X=0を通る断面において、40の試算点における紫外光強度の比率の分布が、管中心(X=0、Y=0、Z=200)から直管の周縁部にかけて均一であれば効率がよく、逆に、管中心から直管の周縁部にかけてばらつきがあれば、効率が悪いとみなすことができる。
そこで、光学シミュレーションを行い、40の試算点における紫外光強度の比率の標準偏差を試算し、評価を行った。
【0049】
図12(a)は、光学シミュレーションの結果得られた
図11(a)で想定した直管の流入側端部から流出側端部までにおける紫外光の分布を示したものである。また、
図12(b)は、
図11(a)で想定した直管を用いた流路の、Z=200〔mm〕、X=0を通る断面における、紫外光強度の比率を示したものであり、横軸は、断面における管中心(X=0、Y=0、Z=200)からのY軸方向の距離〔mm〕を表し、縦軸は、紫外光強度の比率を表す。
図12(b)に示すように、Z=200〔mm〕、X=0を通る断面において、紫外光強度の比率は、管中心近傍が最も大きく、周縁部に近づくほど小さくなっていることがわかる。
【0050】
〔流速シミュレーション(整流用の板)〕
図11(a)で想定した直管を用いて、板6として、板6-1~6-6を設けた場合について計算機上で流速シミュレーションを行った。なお、テーパ部22は設けていない。
板6として
図13(a)~
図13(f)に示す開口率の異なる6種類の板6-1~6-6を用いた。板6-1~6-6の仕様を表1に示す。なお、板6-1~6-6は、
図4と同様に、同心円で面積が等しい3つのエリアに分割した。
【0051】
【0052】
この板6-1~6-6を用いて、光学シミュレーション時と同様に、
図11(a)に示す直管を想定し、流速シミュレーションを行った。流速シミュレーションにおいて、対象物を流す条件は、光学シミュレーション時と同様である。
【0053】
〔「内側エリアの開口率÷外側エリアの開口率」の範囲の検証〕
光学シミュレーション時と同様の40の試算点について、紫外光強度の比率を演算した。その演算結果を
図14(a)~(f)に示す。
図14の各図において、横軸は、Z=200、X=0を通る断面における管中心(X=0、Y=0、Z=200)からのY軸方向の距離〔mm〕を表し、縦軸は、紫外光強度の比率を表す。
図15は、板6-1~6-6それぞれについて、紫外光強度の比率の標準偏差と、「内側エリアの開口率÷外側エリアの開口率」との対応を表したものである。
【0054】
ここで、
図11(a)で想定した直管において、板6を設けない場合について、流速シミュレーションを行い、前述の40の試算点について、紫外光強度の比率を演算し、この紫外光強度の比率の標準偏差を求めた。この標準偏差を標準偏差の基準値σs1とする。各板6-1~6-6において得られた紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs1よりも小さければ、板6を設けることにより標準偏差が小さくなったとみなすことができる。したがって、各板6-1~6-6のうち、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs1より小さい整流用の板は、この整流用の板を用いることで、紫外線照射量のばらつきが小さく効率がよくなっているとみなすことができる。逆に、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs1以上である場合には、この整流用の板を用いることで、紫外線照射量のばらつきが大きくなり、効率が悪くなるとみなすことができる。
【0055】
各板6-1~6-6について得られた紫外光強度の比率の標準偏差が、
図15に示すように、例えば、0.15程度から0.25程度の値をとり、このときの標準偏差の基準値σs1が例えば0.2である場合には、標準偏差が標準偏差の基準値σs1よりも小さくなる、板6-3及び6-4を用いた場合に、紫外線の照射効率が向上するとみなすことができる。
つまり、「内側エリアの開口率÷外側エリアの開口率」は、
図15において、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs1を下回る、6.3以上8.6以下程度の範囲にあれば、効率のよい整流用の板であるとみなすことができる。
したがって、
図4に示すように、整流用の板を同心円で面積が等しい3つのエリアに分割したとき、最も外側のエリアAoutの開口率に対して、最も内側のエリアAinの開口率が6倍以上10倍以下であることが好ましく、より好ましくは、6.3以上8.6以下であることが好ましいことがわかる。
【0056】
〔開口率の範囲の検証〕
次に、
図16に示す開口率の異なる二つの板6-11、6-12を用いて流速シミュレーションを行った。この流速シミュレーションも、
図11(a)に示す直管を用いて計算機上で行った。なお、テーパ部22は設けていない。
流速シミュレーション結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
板6-11は、穴数が151であり、開口率が9.4〔%〕である。板6-12は、穴数が265、開口率が16.6〔%〕である。
流速シミュレーションにより、
図11(a)に示す直管の流入側端部と、出力側端部それぞれにおける圧力を演算し、圧力損失を演算した。
その結果、表2に示すように、板6-11の圧力損失は0.5〔kPa〕であり、板6-12の圧力損失は0.2〔kPa〕であった。圧力損失は、開口率9.4〔%〕の場合、開口率16.6〔%〕の2.5倍になる。
表2から、圧力損失を0.5〔kPa〕程度に抑えるためには、開口率を10〔%〕以上とすることが好ましいことがわかる。
【0059】
次に、開口率の異なる板6-21~6-24について、安全率を演算した。その結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
板6-21~6-24としてステンレス鋼SUS304を用いた。引張強度は520〔MPa〕である。板6-21~6-24の仕様は、表3に示す通りであり、板6-21の開口率は22〔%〕、板6-22の開口率は30〔%〕、板6-23の開口率は41〔%〕、板6-24の開口率は50〔%〕である。
各板6-21~6-24に対して、3〔MPa〕の圧力がかかった場合の応力として、ミーゼスの相当応力を演算した。そして、安全率を演算した(=引張強度÷ミーゼスの相当応力)。
【0062】
図17は、整流用の板の開口率と安全率との対応を示したものであり、横軸は整流用の板の開口率、縦軸は安全率である。
図17に示すように開口率が大きくなるほど安全率は低下する。安全率が低下すると整流用の板が破断する可能性があることから、安全率は「1」以上であることが好ましく、開口率が55〔%〕程度で安全率が「1」より小さくなることから、開口率は50〔%〕以下であることが好ましい。
以上から、圧力損失と安全率との観点から、開口率は、10〔%〕以上50〔%〕以下が好ましいことがわかる。
【0063】
〔流体シミュレーション(テーパ形状)〕
次に、
図11(a)に示す直管を用いて、テーパ部22を備える場合について計算機上で流体シミュレーションを行った。なお、板6は設けていない。
テーパ部22として、
図18に示すように、テーパ部22-1~テーパ部22-5を用いた。テーパ部22-1のテーパ比は1/4、テーパ部22-2のテーパ比は3/8、テーパ部22-3のテーパ比は1/2、テーパ部22-4のテーパ比は3/4、テーパ部22-5のテーパ比は7/8である。流体シミュレーションにおいて、対象物を流す条件は、光学シミュレーション時と同様である。
【0064】
光学シミュレーション時と同一の40の試算点について、紫外光強度の比率を演算した。その演算結果を
図19(a)~(e)に示す。
図19の各図において、横軸は、Z=200、X=0を通る断面における管中心(X=0、Y=0、Z=200)からのY軸方向の距離〔mm〕を表し、縦軸は、紫外光強度の比率を表す。
図20は、テーパ部22-1~22-5それぞれについて、紫外光強度の比率の標準偏差と、テーパ比との対応を表したものである。
ここで、
図11(a)に示す直管において、テーパ部を設けない場合について、流体シミュレーションを行い、前述の40の試算点について、紫外光強度の比率を演算し、この紫外光強度の比率の標準偏差を求めた。この標準偏差を標準偏差の基準値σs2とする。
【0065】
各テーパ部22-1~22-5について得られた紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs2よりも小さければ、テーパ部を設けることにより標準偏差が小さくなったとみなすことができる。したがって、各テーパ部22-1~22-5のうち、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs2より小さいテーパ部は、このテーパ部を用いることで、紫外線照射量のばらつきが小さく効率がよくなっているとみなすことができる。逆に、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs2以上である場合には、このテーパ部を用いることで、紫外線照射量のばらつきが大きくなり、効率が悪くなるとみなすことができる。
【0066】
各テーパ部22-1~22-5について得られた紫外光強度の比率の標準偏差が、
図20に示すように、例えば、0.13程度から0.23程度の値をとり、このときの標準偏差の基準値σs2が例えば0.2である場合には、標準偏差が標準偏差の基準値σs2よりも小さくなる、テーパ部22-1、22-2、22-3を用いた場合に、紫外線の照射効率が向上するとみなすことができる。
つまり、テーパ比は、
図20において、紫外光強度の比率の標準偏差が、標準偏差の基準値σs2を下回る、0.2以上0.68以下程度の範囲にあれば、効率のよいテーパ比であるとみなすことができる。
したがって、テーパ部22のテーパ比は、0.2以上0.68以下であることが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0067】
1 殺菌モジュール
2 流入部
3 円筒部
4 発光部
5 流出部
6 板
6a 開口孔
7 流体検知器
8 制御部
21a 流入口
22 テーパ部
34 窓部
35 内側流路
41 光源