(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】高架構造物の施工システム及び施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20230620BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01B37/00 D
(21)【出願番号】P 2019150152
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 信文
(72)【発明者】
【氏名】石橋 忠良
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典高
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-151607(JP,A)
【文献】特許第3999586(JP,B2)
【文献】特許第5051591(JP,B2)
【文献】特開2014-012492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレキャスト構造体からなる高架構造物を所定の経路に沿って施工するシステムであって、
前記経路に沿って走行可能な搬送台車と、
前記経路に隣接する前記プレキャスト構造体の保管場所において前記プレキャスト構造体が荷積みされた前記搬送台車を、前記保管場所側から当該プレキャスト構造体が施工される施工場所側に走行させる往路走行装置と、
前記施工場所において前記プレキャスト構造体が荷降しされた前記搬送台車を、前記施工場所側から前記保管場所側に走行させる復路走行装置とを備え、
前記複数のプレキャスト構造体は、
前記高架構造物の幅方向に対して所定の横間隔で立設される柱を一組の柱として、前記高架構造物の長さ方向に対して所定の縦間隔で立設される複数組の柱と、
前記柱に対して前記長さ方向及び前記幅方向に架設される複数の梁と、
前記梁に対して前記幅方向に架設される複数のスラブとを含み、
前記搬送台車は、
前記一組の柱が立設される一組の柱位置の
前記幅方向の内側
であって前記梁及び前記スラブの下方、又は
、前記一組の柱位置の前記幅方向の外側を走行する、
ことを特徴とする高架構造物の施工システム。
【請求項2】
前記往路走行装置は、
前記搬送台車を、前記一組の柱位置の
前記幅方向の内側
であって前記梁及び前記スラブの下方、及び
、前記一組の柱位置の前記幅方向の外側のうち一方側に敷設された往路軌道に沿って走行させ、
前記復路走行装置は、
前記搬送台車を、前記一組の柱位置の
前記幅方向の内側
であって前記梁及び前記スラブの下方、及び
、前記一組の柱位置の前記幅方向の外側のうち他方側に、前記往路軌道と並行に敷設された復路軌道に沿って走行させる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の高架構造物の施工システム。
【請求項3】
前記施工場所側に設置されて、前記搬送台車を、前記往路軌道から前記復路軌道に移設する往路台車移設装置と、
前記保管場所側に設置されて、前記搬送台車を、前記復路軌道から前記往路軌道に移設する復路台車移設装置とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項
2に記載の高架構造物の施工システム。
【請求項4】
前記搬送台車は、
前記プレキャスト構造体の一端部を支持する第1の支持台車と、
前記プレキャスト構造体の他端部を支持する第2の支持台車と、
前記第1の支持台車と前記第2の支持台車との間を、前記経路の曲率に従って揺動可能に連結する連結機構とを備え、
前記第1の支持台車及び前記第2の支持台車の各々は、
走行方向の前後に設けられ、前記往路軌道及び前記復路軌道を走行するための車輪を有する一対の車輪台車と、
前記一対の車輪台車にそれぞれ取り付けられた一対の荷台支持部と、
前記一対の荷台支持部により前記経路の曲率に従って回動可能にそれぞれ支持された荷台とを備える、
ことを特徴とする請求項
2又は請求項
3に記載の高架構造物の施工システム。
【請求項5】
前記往路走行装置は、
前記施工場所側に設置されて、前記施工場所側に前記搬送台車を牽引することにより、前記搬送台車を走行させ、
前記復路走行装置は、
前記保管場所側に設置されて、前記保管場所側に前記搬送台車を牽引することにより、前記搬送台車を走行させる、
ことを特徴とする請求項1
乃至請求項4のいずれか一項に記載の高架構造物の施工システム。
【請求項6】
前記保管場所において、前記搬送台車に前記プレキャスト構造体を荷積みする荷積み装置と、
前記施工場所において、前記搬送台車に荷積みされた前記プレキャスト構造体を荷降しし、前記高架構造物の一部として組み立てる組立装置とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の高架構造物の施工システム。
【請求項7】
複数のプレキャスト構造体からなる高架構造物を所定の経路に沿って施工する方法であって、
前記経路に隣接する前記プレキャスト構造体の保管場所において、前記経路に沿って走行可能な搬送台車に前記プレキャスト構造体を荷積みする荷積み工程と、
前記プレキャスト構造体が荷積みされた前記搬送台車を、前記保管場所側から当該プレキャスト構造体が施工される施工場所側に走行させる往路走行工程と、
前記施工場所において、前記搬送台車に荷積みされた前記プレキャスト構造体を荷降しし、前記高架構造物の一部として組み立てる組立工程と、
前記プレキャスト構造体が荷降しされた前記搬送台車を、前記施工場所側から前記保管場所側に走行させる復路走行工程とを含む各工程を、前記施工場所を変更しながら順次繰り返
し、
前記複数のプレキャスト構造体は、
前記高架構造物の幅方向に対して所定の横間隔で立設される柱を一組の柱として、前記高架構造物の長さ方向に対して所定の縦間隔で立設される複数組の柱と、
前記柱に対して前記長さ方向及び前記幅方向に架設される複数の梁と、
前記梁に対して前記幅方向に架設される複数のスラブとを含み、
前記往路走行工程及び前記復路走行工程は、
前記搬送台車を、前記一組の柱が立設される一組の柱位置の前記幅方向の内側であって前記梁及び前記スラブの下方、又は、前記一組の柱位置の前記幅方向の外側を走行させる、
ことを特徴とする高架構造物の施工方法。
【請求項8】
前記往路走行工程は、
前記搬送台車を、前記経路に沿って敷設された往路軌道を走行させ、
前記復路走行工程は、
前記搬送台車を、前記経路に沿って前記往路軌道と並行に敷設された復路軌道を走行させ、
前記組立工程の後に、前記施工場所側において、前記搬送台車を、前記往路軌道から前記復路軌道に移設する往路台車移設工程と、
前記復路走行工程の後に、前記保管場所側において、前記搬送台車を、前記復路軌道から前記往路軌道に移設する復路台車移設工程とをさらに含む、
ことを特徴とする請求項
7に記載の高架構造物の施工方法。
【請求項9】
前記往路走行工程は、
前記施工場所側に前記搬送台車を牽引することにより、前記搬送台車を走行させ、
前記復路走行工程は、
前記保管場所側に前記搬送台車を牽引することにより、前記搬送台車を走行させる、
ことを特徴とする請求項
7又は請求項8に記載の高架構造物の施工方法。
【請求項10】
前記施工方法に含まれる各工程は、
複数の前記搬送台車を使用して並列に実行される、
ことを特徴とする請求項
7乃至請求項
9のいずれか一項に記載の高架構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架構造物の施工システム及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道や道路等の高架構造体を建設する際、工期の短縮や品質の向上を図るために、工場で予め製作されたプレキャストコンクリート製のプレキャスト構造体が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高架線路構造1の建設手順として、工場等で製作したプレハブ軌道支持桁71をトレーラ等の通常の道路輸送手段で運搬し、建設現場に搬入し、揚重機を用いて脚部81の上部に載置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高架構造体が施工される施工現場が、例えば、都市部の市街地や住宅地に位置するような場合、施工現場周辺に存在する既存の建物やインフラ設備(道路、道路構造物、電力設備等)の影響を受けて、十分な広さの作業用地を確保できず、狭隘な場所での施工が要求される。また、施工現場周辺に過大な環境負荷を与えないように、騒音、振動、渋滞、排出ガス等について適切な対策を実施する必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された高架線路構造1の建設手順では、長尺な重量物であるプレハブ軌道支持桁71をトレーラで建設現場に搬入することになるが、都市部では、トレーラが建設現場に直接アクセスするための搬入道路や停車可能なスペースが制限される。そのため、工事区間の変更に伴って搬入道路が変更されたり、工事区間の周辺の状況によっては交通規制や支障物の撤去作業が必要になったりすることもある。
【0007】
そして、プレハブ軌道支持桁71が積載されたトレーラが、建設現場に設置された作業ヤード内を走行する場合には、作業ヤード内での後進走行や方向転換(Uターン)が必要になり、走行時の危険性が高まる。また、トレーラが走行する通路に養生作業が必要になったり、トレーラが既設の構造物と衝突しないように施工順序に制約が生じたりすることにより、作業効率が悪化するため、工期の短縮が困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、施工現場周辺に与える環境負荷を低減するとともに、狭隘な場所でも安全かつ効率的に高架構造物を施工することができる高架構造物の施工システム及び施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る高架構造物の施工システムは、
複数のプレキャスト構造体からなる高架構造物を所定の経路に沿って施工するシステムであって、
前記経路に沿って走行可能な搬送台車と、
前記経路に隣接する前記プレキャスト構造体の保管場所において前記プレキャスト構造体が荷積みされた前記搬送台車を、前記保管場所側から当該プレキャスト構造体が施工される施工場所側に走行させる往路走行装置と、
前記施工場所において前記プレキャスト構造体が荷降しされた前記搬送台車を、前記施工場所側から前記保管場所側に走行させる復路走行装置とを備える、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る高架構造物の施工方法は、
複数のプレキャスト構造体からなる高架構造物を所定の経路に沿って施工する方法であって、
前記経路に隣接する前記プレキャスト構造体の保管場所において、前記経路に沿って走行可能な搬送台車に前記プレキャスト構造体を荷積みする荷積み工程と、
前記プレキャスト構造体が荷積みされた前記搬送台車を、前記保管場所側から当該プレキャスト構造体が施工される施工場所側に走行させる往路走行工程と、
前記施工場所において、前記搬送台車に荷積みされた前記プレキャスト構造体を荷降しし、前記高架構造物の一部として組み立てる組立工程と、
前記プレキャスト構造体が荷降しされた前記搬送台車を、前記施工場所側から前記保管場所側に走行させる復路走行工程とを含む各工程を、前記施工場所を変更しながら順次繰り返す、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る高架構造物の施工システム及び施工方法によれば、プレキャスト構造体の保管場所において、搬送台車にプレキャスト構造体を荷積みし、その荷積みされた搬送台車を、高架構造物が施工される経路に沿って当該プレキャスト構造体が施工される施工場所側に走行させる。そして、施工場所において、当該プレキャスト構造体を搬送台車から荷降しし、その荷降しされた搬送台車を、高架構造物が施工される経路に沿って保管場所側に走行させる。
【0012】
そのため、工場等からプレキャスト構造体を搬入する大型トレーラが走行する道路は、工事区間の変更に伴って施工場所が随時変更される場合でも、プレキャスト構造体の保管場所にアクセスする道路に限定される。したがって、施工現場周辺に与える環境負荷を低減することができる。
【0013】
また、プレキャスト構造体の保管場所側から施工場所側にプレキャスト構造体を搬送する搬送台車は、高架構造物が施工される経路に沿って往復走行する。したがって、搬送台車を、例えば、大型トレーラよりも小型で軽量な構成とすることにより、走行時の危険性を低減するとともに、経路の養生作業を簡素化し、プレキャスト構造体の施工順序や施工可能重量の制約を緩和することができるので、狭隘な場所でも、安全な施工が可能となるとともに、施工の効率化により工事全体の稼働率が向上し、工期の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る高架構造物2の施工システム1の構成例を示す全体図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る高架構造物2の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る搬送台車10の一例を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る搬送台車10の一例を示し、(a)は直線状の軌道を走行する搬送台車10を示す平面図、(b)は曲線状の軌道を走行する搬送台車10を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る往路走行装置12A及び復路走行装置12Bの一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの一例を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの一例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る高架構造物2の施工方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図10】往路走行工程(ステップS2A)にて、往路走行装置12Aが、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aが荷積みされた搬送台車10Aを走行させているときの状況を示す斜視図である。
【
図11】組立工程(ステップS3A)にて、組立装置13が、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aを吊り上げているときの状況を示す斜視図である。
【
図12】組立工程(ステップS3A)にて、組立装置13が、プレキャスト構造体20Aとしてスラブ23を吊り上げているときの状況を示す斜視図である。
【
図13】往路台車移設工程(ステップS4A)にて、往路台車移設装置14Aが、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bを吊り上げて、往路軌道34から復路軌道35に移設しているときの状況を示斜視図である。
【
図14】復路走行工程(ステップS5A)にて、復路走行装置12Bが、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aが荷降しされた搬送台車10Aを走行させているときの状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る高架構造物の施工システム及び施工方法について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る高架構造物2の施工システム1の構成例を示す全体図である。
図2は、本発明の実施形態に係る高架構造物2の一例を示す斜視図である。
【0017】
施工システム1は、施工現場3において、複数のプレキャスト構造体20からなる高架構造物2を所定の経路30に沿って施工するシステムである。
【0018】
高架構造物2は、例えば、地上を走行する鉄道の既設線路と道路との連続立体交差化を図るため、既設線路の代替となる新設線路が敷設される高架橋である。本明細書では、高架構造物2が経路30に沿って延伸する方向を、高架構造物2の長さ方向Xとし、高架構造物2の長さ方向Xに対して直交する方向を、高架構造物2の幅方向Yとする。なお、高架構造物2は、鉄道の線路が敷設される高架橋として使用されるだけでなく、例えば、車両用の道路が形成される高架橋として使用されるものでもよい。
【0019】
高架構造物2は、地中に埋設された基礎杭(不図示)の上に、複数組の柱21、複数の梁22及び複数のスラブ23を含む複数のプレキャスト構造体20を組み立てることにより施工される。プレキャスト構造体20は、プレキャストコンクリート製であり、プレキャスト構造体20同士の接合箇所は、継手(不図示)を介して接合される。
【0020】
複数組の柱21は、高架構造物2の幅方向Yに対して所定の横間隔Y1で立設される柱を一組の柱21A、21Bとして、高架構造物2の長さ方向Xに対して所定の縦間隔X1で立設される。柱21Aが立設される柱位置210Aと、柱21Bが立設される柱位置210Bには、基礎杭がそれぞれ埋設されており、柱21A、21Bは、基礎杭の上に立設される。柱21A、21Bは、例えば、1m角、長さ10m程度の大きさで、25t程度の重量を有し、縦間隔X1が、12.5m程度、横間隔Y1が、5m程度で立設される。
【0021】
複数の梁22は、柱21A、21Bに対して長さ方向X及び幅方向Yに架設される。複数の梁22は、縦梁22Aと、横梁22Bとを含む。縦梁22Aは、長さ方向Xに隣接する2つの柱(隣接する柱21Aと柱21A)の上に架設され、横梁22Bは、幅方向Yに隣接する2つの柱(例えば、隣接する柱21Aと柱21B)の上面に架設される。
【0022】
複数のスラブ23は、平板状に形成されており、横梁22Bに対して幅方向Yに架設される。複数のスラブ23は、スラブ23の短手方向が長さ方向Xと一致し、スラブ23の長手方向が幅方向Yと一致するように、長さ方向Xに架設された2つの横梁22Bの上に架設される。
【0023】
施工現場3は、例えば、都市部に位置し、施工現場3の周辺には、ビルや住宅等の建物(不図示)やインフラ設備(不図示)が密集しているため、プレキャスト構造体20を含む各種資材を搬入するための大型トレーラ4が走行可能な道路や停車可能なスペースが制限される。そのため、大型トレーラ4では、プレキャスト構造体20を、当該プレキャスト構造体20が施工される施工場所32に直接搬入することが困難である。
【0024】
したがって、施工現場3には、経路30に隣接する位置に、大型トレーラ4により搬入道路311を介して搬入されたプレキャスト構造体20を一時的に保管するプレキャスト構造体20の保管場所31が配置されている。保管場所31は、経路30に隣接するとともに、大型トレーラ4により搬入されたプレキャスト構造体20を仮置きする保管スペース310を有する。そして、プレキャスト構造体20は、経路30に沿って走行可能な搬送台車10により、保管場所31側から施工場所32側に順次搬送される。
【0025】
また、施工現場3には、所定の幅を有する作業ヤード33が、経路30に沿って配置されている。作業ヤード33には、搬送台車10が経路30に沿って走行するための往路軌道34及び復路軌道35が、経路30に沿って並行に敷設されている。
【0026】
往路軌道34は、一組の柱21A、21Bが立設される一組の柱位置210A、210Bの内側をそれぞれ通過するように敷設されている。復路軌道35は、一組の柱位置210A、210Bの外側(本実施形態では、
図2に示すように、柱位置210Aの手前側)をそれぞれ通過するように敷設されている。なお、往路軌道34及び復路軌道35は、高架構造物2の完成後に撤去される。
【0027】
高架構造物2の施工システム1は、経路30に沿って往路軌道34及び復路軌道35を走行可能な搬送台車10と、保管場所31において、搬送台車10にプレキャスト構造体20を荷積みする荷積み装置11と、保管場所31においてプレキャスト構造体20が荷積みされた搬送台車10を、往路軌道34に沿って保管場所31側から当該プレキャスト構造体20が施工される施工場所32側に走行させる往路走行装置12Aと、施工場所32において、搬送台車10に荷積みされたプレキャスト構造体20を荷降しし、高架構造物2の一部として組み立てる組立装置13と、施工場所32においてプレキャスト構造体20が荷降しされた搬送台車10を、復路軌道35に沿って施工場所32側から保管場所31側に走行させる復路走行装置12Bとを備える。なお、
図1では、3台の搬送台車10を図示しているが、搬送台車10の台数は任意の数でよい。
【0028】
また、施工システム1は、施工場所32側に設置されて、搬送台車10を、往路軌道34から復路軌道35に移設する往路台車移設装置14Aと、保管場所31側に設置されて、搬送台車10を、復路軌道35から往路軌道34に移設する復路台車移設装置14Bとをさらに備える。
【0029】
ここで、施工システム1が高架構造物2を施工する際の施工計画として、経路30が所定の区間長さで分けられた各区間に対して、柱21、縦梁22A、横梁22B及びスラブ23を施工する施工順序が予め計画されている。そのため、プレキャスト構造体20が施工される施工場所32は、高架構造物2の施工計画の進捗に応じて、順次変更される。したがって、施工場所32において作業する往路走行装置12A、組立装置13、往路台車移設装置14Aは、変更後の施工場所32に合わせて随時移動される。
【0030】
(搬送台車10)
図3は、本発明の実施形態に係る搬送台車10の一例を示す側面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る搬送台車10の一例を示し、(a)は直線状の軌道を走行する搬送台車10を示す平面図、(b)は曲線状の軌道を走行する搬送台車10を示す平面図である。
図5は、本発明の実施形態に係る第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0031】
搬送台車10は、その具体的な構成として、プレキャスト構造体20の一端部20aを支持する第1の支持台車100Aと、プレキャスト構造体20の他端部20bを支持する第2の支持台車100Bと、第1の支持台車100Aと第2の支持台車100Bとの間を、経路30の曲率に従って揺動可能に連結する連結機構101とを備える。
【0032】
第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの各々は、走行方向の前後に設けられ、往路軌道34及び復路軌道35を走行するための車輪を有する一対の車輪台車102A、102Bと、一対の車輪台車102A、102Bにそれぞれ取り付けられた一対の荷台支持部103A、103Bと、一対の荷台支持部103A、103Bにより支持された荷台104と、走行方向の前後に設けられ、手動ブレーキ装置として機能する一対のブレーキレバー105A、105Bとを備える。
【0033】
一対の荷台支持部103A、103Bは、例えば、軸受を有し、軸受の回転軸がZ鉛直方向に一致するように配置されている。そのため、荷台104は、一対の荷台支持部103A、103Bの軸受を介して一対の車輪台車102A、102Bに対して経路30の曲率に従って回動可能にそれぞれ支持されている。また、荷台104は、プレキャスト構造体20が荷積みされた状態で搬送台車10が既設の横梁22Bの下方を通過できるような高さに設計されている。
【0034】
連結機構101は、棒状の部材で形成されており、その一端部101aが、第1の支持台車100Aに揺動可能に連結され、その他端部101bが、第2の支持台車100Bに揺動可能に連結されている。なお、連結機構101は、プレキャスト構造体20の長さに応じて調節可能に構成されていてもよいし、長さが異なる複数の連結機構101が、プレキャスト構造体20の長さに応じて使い分けられるようにしてもよい。
【0035】
搬送台車10は、プレキャスト構造体20が第1の支持台車100Aと第2の支持台車100Bとの間を跨ぐように荷積みされた状態で、経路30(本実施形態では、往路軌道34)に沿って走行する。このとき、経路30の曲率に従って、第1の支持台車100Aと第2の支持台車100Bとの間が連結機構101により揺動するとともに、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bにおいて、荷台104と一対の車輪台車102A、102Bとの間が一対の荷台支持部103A、103Bを介して回動する。そのため、往路軌道34が、
図4(b)に示すように、曲線状であっても、プレキャスト構造体20は、プレキャスト構造体20と、荷台104との間の位置関係が変わらないようにして、荷台104により支持される。
【0036】
(荷積み装置11)
荷積み装置11は、例えば、クローラクレーン等のクレーン車両で構成されており、所定の作業半径110を有する。荷積み装置11は、大型トレーラ4により保管場所31に搬入されたプレキャスト構造体20を大型トレーラ4から荷降しし、保管場所31の保管スペース310に仮置きする。また、荷積み装置11は、保管スペース310に仮置きされた複数のプレキャスト構造体20の中から、高架構造物2の施工計画に応じて、次に施工する施工対象のプレキャスト構造体20を吊り上げて、当該プレキャスト構造体20を、往路軌道34の荷積み位置340で待機する搬送台車10に荷積みする。
【0037】
(往路走行装置12A及び復路走行装置12B)
図6は、本発明の実施形態に係る往路走行装置12A及び復路走行装置12Bの一例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【0038】
往路走行装置12Aは、施工場所32側の往路牽引位置342に設置されて、施工場所32側に搬送台車10を牽引することにより、往路軌道34に沿って荷積み位置340から荷降し位置341に向けて搬送台車10を走行させる。荷積み位置340は、保管場所31側の位置であって、荷積み装置11の作業半径110に含まれる位置である。荷降し位置341は、施工対象のプレキャスト構造体20が施工される施工場所32に応じて設定された施工場所32側の位置であって、組立装置13の作業半径130に含まれる位置である。往路牽引位置342は、荷降し位置341に対して荷積み位置340とは反対側の位置であって、往路走行装置12Aが組立装置13と衝突しないように設定された位置である。
【0039】
復路走行装置12Bは、保管場所31側の復路牽引位置352に設置されて、保管場所31側に搬送台車10を牽引することにより、復路軌道35に沿って走行開始位置350から走行終了位置351に向けて搬送台車10を走行させる。走行開始位置350は、施工場所32側の位置であって、往路台車移設装置14Aが設置された位置に対応する。走行終了位置351は、保管場所31側の位置であって、復路台車移設装置14Bが設置された位置に対応する。復路牽引位置352は、走行終了位置351に対して走行開始位置350とは反対側の位置であって、復路走行装置12Bが荷積み装置11と衝突しないように設定された位置である。
【0040】
往路走行装置12A及び復路走行装置12Bの各々は、その具体的な構成として、往路軌道34及び復路軌道35を走行するための車輪を有する車輪台車120と、牽引ロープ122により搬送台車10を牽引する牽引ウインチ121と、牽引ウインチ121の駆動源となる電力を供給する発電機123と、往路軌道34又は復路軌道35を挟持して車輪台車120の走行を制限可能な軌道クランプ機構124とを備える。なお、牽引ロープ122に代えて、牽引ワイヤを用いてもよい。
【0041】
往路走行装置12Aは、車輪台車120により往路軌道34を移動し、往路牽引位置342にて停止する。そして、往路走行装置12Aは、往路牽引位置342にて軌道クランプ機構124により往路軌道34を挟持し、牽引ロープ122を搬送台車10に接続した状態で牽引ウインチ121を駆動することにより、荷積み位置340から荷降し位置341まで搬送台車10を牽引する。牽引ロープ122は、例えば、組立装置13の車体の下を通過するようにして、搬送台車10に接続される。
【0042】
復路走行装置12Bは、車輪台車120により復路軌道35を移動し、復路牽引位置352にて停止する。そして、復路走行装置12Bは、復路牽引位置352にて軌道クランプ機構124により復路軌道35を挟持し、牽引ロープ122を搬送台車10に接続した状態で牽引ウインチ121を駆動することにより、走行開始位置350から走行終了位置351まで搬送台車10を牽引する。
【0043】
(組立装置13)
組立装置13は、例えば、オールテレーンクレーン等のクレーン車両で構成されており、所定の作業半径130を有する。組立装置13は、往路軌道34の荷降し位置341で待機する搬送台車10からプレキャスト構造体20を吊り上げて、当該プレキャスト構造体20の施工箇所に載置することにより、高架構造物2の一部として組み立てる。
【0044】
(往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14B)
図7は、本発明の実施形態に係る往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの一例を示す平面図である。
図8は、本発明の実施形態に係る往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの一例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【0045】
往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの各々は、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの間の連結機構101による連結が解除された状態で搬送台車10を移設するように、第1の支持台車100Aを移設する第1の門型クレーン140Aと、第2の支持台車100Bを移設する第2の門型クレーン140Bとを備える。第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、同一の構成を有し、往路軌道34又は復路軌道35の長さ方向Xに並べて配置される。
【0046】
第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bの各々は、その具体的な構成として、所定のサイズの矩形フレームで形成された第1の脚部141Aと、第1の脚部141Aよりも大きなサイズの矩形フレームで形成された第2の脚部141Bと、第2の脚部141Bに取り付けられたアウトリガー部143と、第1の脚部141A及び第2の脚部141Bの上部に架設されたガーダ部144と、ガーダ部144に対して水平方向に移動可能に取り付けられた楊重部145とを備える。
【0047】
第1の脚部141A及び第2の脚部141Bは、離間して配置されるとともに、矩形フレームを構成する下辺のフレームには、キャスタ142がそれぞれ取り付けられている。なお、第1の脚部141A、第2の脚部141B、ガーダ部144には、筋交いや火打梁等の補強フレームが取り付けられている。
【0048】
ガーダ部144は、その一端部144aが第1の脚部141Aに取り付けられるとともに、その中間部144bが第2の脚部141Bに取り付けられることにより、その他端部144cが、第2の脚部141Bから張り出すように配置される。
【0049】
楊重部145は、フックを有するチェーンブロック146と、ガーダ部144に対してチェーンブロック146を水平方向に移動させるトロリ部147とを備える。
【0050】
往路台車移設装置14Aが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、往路軌道34の移設作業位置343において、第2の脚部141Bが往路軌道34及び復路軌道35の中間に配置されるとともに、第1の脚部141Aが往路軌道34を跨ぐように配置される。このとき、ガーダ部144の長手方向は、幅方向Yと一致するように配置され、キャスタ142の走行方向は、長さ方向Xに一致するように配置される。
【0051】
そして、往路台車移設装置14Aが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、チェーンブロック146により、往路軌道34の移設作業位置343で待機する搬送台車10を構成する第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ吊り上げて、トロリ部147により復路軌道35側に移動させる。その後、第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ降ろすことにより、搬送台車10を復路軌道35の走行開始位置350に移設する。
【0052】
なお、移設作業位置343が、
図1に示すように、荷降し位置341と異なる位置とする場合には、荷降し位置341で搬送台車10からプレキャスト構造体20が荷降しされた後に、当該搬送台車10を荷降し位置341から移設作業位置343に移動させればよい。また、移設作業位置343が、荷降し位置341と同じ位置とする場合には、組立装置13が、搬送台車10からプレキャスト構造体20を荷降しするときに、往路台車移設装置14Aを、荷降し位置341(=移設作業位置343)から離れた位置に一時的に退避されればよい。
【0053】
復路台車移設装置14Bが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、復路軌道35の走行終了位置351において、第2の脚部141Bが往路軌道34及び復路軌道35の中間に配置されるとともに、第1の脚部141Aが復路軌道35を跨ぐように配置される。このとき、ガーダ部144の長手方向は、幅方向Yと一致するように配置され、キャスタ142の走行方向は、長さ方向Xに一致するように配置される。
【0054】
そして、復路台車移設装置14Bが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、チェーンブロック146により、復路軌道35の走行終了位置351で待機する搬送台車10を構成する第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ吊り上げて、トロリ部147により往路軌道34側に移動させる。その後、第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bは、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ降ろすことにより、搬送台車10を往路軌道34の移設先位置344に移設する。
【0055】
なお、移設先位置344が、
図1に示すように、荷積み位置340と異なる位置とする場合には、搬送台車10が、復路台車移設装置14Bにより移設先位置344に移設された後に、移設先位置344から荷積み位置340に移動させればよい。また、移設先位置344が、荷積み位置340と同じ位置とする場合には、荷積み装置11が、搬送台車10にプレキャスト構造体20を荷積みするときに、復路台車移設装置14Bを、荷積み位置340(=移設先位置344)から離れた位置に一時的に退避されればよい。
【0056】
(高架構造物2の施工方法)
次に、上記構成を有する施工システム1が、高架構造物2を施工するときの施工方法について説明する。
【0057】
図9は、本発明の実施形態に係る高架構造物2の施工方法の各工程を示すフローチャートである。ここでは、施工現場3の状況として、基礎工事により基礎杭が打設されて、作業ヤード33には、往路軌道34及び復路軌道35が敷設された状態であるものとする。そして、2台の搬送台車10A、10Bが使用されて、複数のプレキャスト構造体20A~20Dを、20A→20B→20C→20Dの順番で施工する場合について説明する。
【0058】
まず、搬送台車10Aが使用される各工程(ステップS1A~S6A)として、荷積み工程(ステップS1A)では、荷積み装置11が、保管場所31において、保管スペース310に仮置きされた複数のプレキャスト構造体20の中から施工対象のプレキャスト構造体20Aを吊り上げて、当該プレキャスト構造体20Aを、往路軌道34の荷積み位置340で待機する搬送台車10Aに荷積みする。
【0059】
次に、往路走行工程(ステップS2A)では、
図10に示すように、往路牽引位置342に固定された往路走行装置12Aが、搬送台車10Aに接続された牽引ロープ122を牽引ウインチ121で巻き取ることにより、往路軌道34に沿って荷積み位置340から荷降し位置341まで搬送台車10Aを走行させる。
【0060】
図10は、往路走行工程(ステップS2A)にて、往路走行装置12Aが、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aが荷積みされた搬送台車10Aを走行させているときの状況を示す斜視図である。
【0061】
次に、組立工程(ステップS3A)では、
図11、
図12に示すように、組立装置13が、往路軌道34の荷降し位置341で待機する搬送台車10Aからプレキャスト構造体20Aを吊り上げて、当該プレキャスト構造体20Aの施工箇所に載置することにより、高架構造物2の一部として組み立てる。
【0062】
図11は、組立工程(ステップS3A)にて、組立装置13が、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aを吊り上げているときの状況を示す斜視図である。
図12は、組立工程(ステップS3A)にて、組立装置13が、プレキャスト構造体20Aとしてスラブ23を吊り上げているときの状況を示す斜視図である。組立装置13は、
図11、
図12に示すように、長さ方向X及び幅方向Yにそれぞれ隣接する4つの柱21A、21Bの間に位置し、アウトリガーを幅方向Yに張り出した状態で、組立工程(ステップS3A)を実行する。
【0063】
次に、往路台車移設工程(ステップS4A)では、作業者により、搬送台車10Aが、荷降し位置341から移設作業位置343に移動されるとともに、搬送台車10Aの連結機構101が取り外されて、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの間の連結を解除する。そして、往路台車移設装置14Aが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bが、
図13に示すように、チェーンブロック146により第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ吊り上げて、トロリ部147により復路軌道35側に移動させた後、復路軌道35に降ろすことにより、搬送台車10Aを走行開始位置350に移設する。
【0064】
図13は、往路台車移設工程(ステップS4A)にて、往路台車移設装置14Aが、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bを吊り上げて、往路軌道34から復路軌道35に移設しているときの状況を示斜視図である。第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bは、復路軌道35に降ろされた後、
連結機構101により再び連結される。
【0065】
次に、復路走行工程(ステップS5A)では、
図14に示すように、復路牽引位置352に固定された復路走行装置12Bが、搬送台車10Aに接続された牽引ロープ122を牽引ウインチ121で巻き取ることにより、復路軌道35に沿って走行開始位置350から走行終了位置351まで搬送台車10Aを走行させる。
【0066】
図14は、復路走行工程(ステップS5A)にて、復路走行装置12Bが、プレキャスト構造体20Aとして縦梁22Aが荷降しされた搬送台車10Aを走行させているときの状況を示す斜視図である。
【0067】
次に、復路台車移設工程(ステップS6A)では、作業者により、搬送台車10Aの連結機構101が取り外されて、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの間の連結を解除する。そして、復路台車移設装置14Bが備える第1の門型クレーン140A及び第2の門型クレーン140Bが、チェーンブロック146により第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bをそれぞれ吊り上げて、トロリ部147により往路軌道34側に移動させた後、往路軌道34に降ろすことにより、搬送台車10Aを移設先位置344に移設する。その後、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bは、連結機構101により再び連結されるとともに、搬送台車10Aが、移設先位置344から荷積み位置340に移動される。
【0068】
そして、荷積み工程(ステップS1A)に戻り、次の施工対象のプレキャスト構造体20Cに対して、上記と同様にして、各工程(ステップS1A~S6A)を順番に実行する。
【0069】
また、搬送台車10Aを使用する各工程(ステップS1A~S6A)と並列に、搬送台車10Bを使用する各工程(ステップS1B~S6B)が実行される。すなわち、
図9に示すように、搬送台車10Aを使用して、プレキャスト構造体20Aに対して、往路台車移設工程(ステップS4A)、復路走行工程(ステップS5A)、復路台車移設工程(ステップS6A)が順番に実行され、さらに、プレキャスト構造体20Cに対して、荷積み工程(ステップS1A)、往路走行工程(ステップS2A)、組立工程(ステップS3A)、が順番に実行されている場合、これらの各工程と並列に、搬送台車10Bを使用して、プレキャスト構造体20Bに対して、荷積み工程(ステップS1B)、往路走行工程(ステップS2B)、組立工程(ステップS3B)、往路台車移設工程(ステップS4B)、復路走行工程(ステップS5B)、復路台車移設工程(ステップS6B)を順番に実行する。
【0070】
例えば、プレキャスト構造体20Aが荷降しされた搬送台車10Aに対する復路走行工程(ステップS5A)と並列に、次の施工対象のプレキャスト構造体20Bが荷積みされた搬送台車10Bに対する往路走行工程(ステップS2B)が実行される。すなわち、往路走行装置12Aが、
図14に示すように、搬送台車10Bに接続された牽引ロープ122を牽引ウインチ121で巻き取ることにより、往路軌道34に沿って荷積み位置340から荷降し位置341まで搬送台車10Bを走行させる。なお、次の施工対象のプレキャスト構造体20Bが施工される施工場所32が、プレキャスト構造体20Aの施工場所32に対して変更される場合には、往路走行工程(ステップS2B)の前に、往路走行装置12A、組立装置13、往路台車移設装置14Aが、変更後の施工場所32に合わせて移動される。
【0071】
そして、上記一連の工程を、施工対象のプレキャスト構造体20A~20Dに応じて施工場所32を変更しながら順次繰り返すことにより、高架構造物2を施工する。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る高架構造物2の施工システム1及び施工方法は、プレキャスト構造体20の保管場所31において、搬送台車10にプレキャスト構造体20を荷積みし、その荷積みされた搬送台車10を、高架構造物2が施工される経路30に沿って当該プレキャスト構造体20が施工される施工場所32側に走行させる。そして、施工場所32において、当該プレキャスト構造体20を搬送台車10から荷降しし、高架構造物2の一部として組み立てるとともに、その荷降しされた搬送台車10を、高架構造物2が施工される経路30に沿って保管場所31側に走行させる。
【0073】
そのため、工場等からプレキャスト構造体20を搬入する大型トレーラ4が走行する道路は、工事区間の変更に伴って施工場所32が随時変更される場合でも、プレキャスト構造体20の保管場所31にアクセスする搬入道路311に限定される。したがって、施工現場周辺に与える環境負荷を低減することができる。
【0074】
また、プレキャスト構造体20の保管場所31側から施工場所32側にプレキャスト構造体20を搬送する搬送台車10は、高架構造物2が施工される経路30に沿って往復走行する。したがって、搬送台車10を、例えば、大型トレーラ4よりも小型で軽量な構成とすることにより、走行時の危険性を低減するとともに、経路30の養生作業を簡素化し、プレキャスト構造体20の施工順序や施工可能重量の制約を緩和することができるので、狭隘な場所でも、安全な施工が可能となるとともに、施工の効率化により工事全体の稼働率が向上し、工期の短縮が可能となる。
【0075】
また、往路走行装置12Aは、施工場所32側に設置されて、施工場所32側に搬送台車10を牽引することにより、搬送台車10を走行させ、復路走行装置12Bは、保管場所31側に設置されて、保管場所31側に搬送台車10を牽引することにより、搬送台車10を走行させる。したがって、搬送台車10は、モータやエンジン等の駆動力発生手段を備える必要がないため、搬送台車10を小型で軽量に構成することができる。
【0076】
また、搬送台車10は、幅方向Yに対して一組の柱21A、21Bが立設される一組の柱位置210A、210Bの内側を走行する。したがって、搬送台車10が走行するための空間は、一組の柱位置210Aの内側の空間、すなわち、横梁22B及びスラブ23の下方の空間であるため、作業ヤード33を幅方向Yに対して拡幅する必要がないので、狭隘な場所でも高架構造物2を施工することができる。
【0077】
また、往路走行装置12Aは、搬送台車10を、一組の柱位置210A、210Bの内側に敷設された往路軌道34に沿って走行させ、復路走行装置12Bは、搬送台車10を、一組の柱位置210A、210Bの外側に、往路軌道34と並行に敷設された復路軌道35に沿って走行させる。そのため、例えば、プレキャスト構造体20が荷積みされた搬送台車10が、往路軌道34に沿って走行し、プレキャスト構造体20が荷降しされた空の搬送台車10が、復路軌道35に沿って走行することにより、プレキャスト構造体20が荷積みされた搬送台車10と、プレキャスト構造体20が荷降しされた空の搬送台車10とは、行き違いによる走行が可能になる。したがって、プレキャスト構造体20を含む資材の搬送効率の向上により高架構造物2の工期を短縮することができるとともに、資材搬送時の安全性を向上することができる。
【0078】
また、施工システム1は、施工場所32側に設置されて、搬送台車10を往路軌道34から復路軌道35に移設する往路台車移設装置14Aと、保管場所31側に設置されて、搬送台車10を復路軌道35から往路軌道34に移設する復路台車移設装置14Bとをさらに備える。したがって、搬送台車10が方向転換するための空間が必要ないため、狭隘な場所でも高架構造物2を施工することができる。
【0079】
また、搬送台車10は、プレキャスト構造体20の一端部20aを支持する第1の支持台車100Aと、プレキャスト構造体20の他端部20bを支持する第2の支持台車100Bと、第1の支持台車100Aと第2の支持台車100Bとの間を、経路30の曲率に従って揺動可能に連結する連結機構101とを備え、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bの各々は、一対の車輪台車102A、102Bと、一対の車輪台車102A、102Bにそれぞれ取り付けられた一対の荷台支持部103A、103Bと、一対の荷台支持部103A、103Bにより経路30の曲率に従って回動可能にそれぞれ支持された荷台104とを備える。したがって、経路30が曲線状であっても、プレキャスト構造体20を支持したまま第1の支持台車100Aと第2の支持台車100Bとが経路30の曲率に倣うように配置されるため、搬送台車10は、プレキャスト構造体20を損傷することなく搬送することができる。
【0080】
また、搬送台車10として、複数の搬送台車10A、10Bが使用される場合、
図9に示す各工程(ステップS1A~S6A、S1B~S6B)は、複数の搬送台車10A、10Bを使用して並列に実行される。したがって、本実施形態に係る高架構造物2の施工システム1及び施工方法によれば、高架構造物2の工期を短縮することができる。
【0081】
(他の実施形態)
本発明の一実施形態として、上記実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0082】
例えば、施工システム1が備える荷積み装置11、往路走行装置12A、復路走行装置12B、組立装置13、往路台車移設装置14A、復路台車移設装置14Bは、例えば、全自動又は半自動で動作するものでもよいし、作業者が操縦席や操縦装置(遠隔式を含む)で操縦するものでもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、往路軌道34が、一組の柱位置210A、210Bの内側に敷設され、復路軌道35が、一組の柱位置210A、210Bの外側に敷設されたものとして説明したが、往路軌道34が、一組の柱位置210A、210Bの外側に敷設され、復路軌道35が、一組の柱位置210A、210Bの内側に敷設されたものでもよいし、往路軌道34及び復路軌道35の両方が、一組の柱位置210A、210Bの内側又は外側に敷設されたものでもよい。また、往路軌道34及び復路軌道35の数は、1つずつに限られず、少なくとも一方が複数でもよい。さらに、搬送台車10が、往路軌道34及び復路軌道35のうち一方の軌道を往復走行するようにしてもよく、その場合には、往路軌道34及び復路軌道35のうち他方の軌道を省略してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、搬送台車10が、往路軌道34及び復路軌道35を走行するものとして説明したが、搬送台車10が、無軌道の路面を走行するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、往路台車移設装置14A及び復路台車移設装置14Bの各々は、2つの門型クレーン140A、140Bを備えるものとして説明したが、1つの門型クレーンを備えるものでもよい。その場合には、1つの門型クレーンが、第1の支持台車100A及び第2の支持台車100Bを順番に移設すればよい。
【0086】
また、上記実施形態では、施工現場3の状況として、基礎工事により基礎杭が打設されていることを前提として、施工システム1が、プレキャスト構造体20を取り扱う場合を中心に説明したが、施工システム1が取り扱う資材は、プレキャスト構造体20に限られず、施工現場3で使用される任意の資材を含むものであり、例えば、基礎杭等に用いられるファブレス化された鉄筋籠や鋼管等を含む。
【符号の説明】
【0087】
1…施工システム、2…高架構造物、3…施工現場、4…大型トレーラ、
10、10A、10B…搬送台車、11…荷積み装置、
12A…往路走行装置、12B…復路走行装置、13…組立装置、
14A…往路台車移設装置、14B…復路台車移設装置、
20、20A~20D…プレキャスト構造体、20a…一端部、20b…他端部、
21、21A、21B…柱、22…梁、22A…縦梁、22B…横梁、23…スラブ、
30…経路、31…保管場所、32…施工場所、
33…作業ヤード、34…往路軌道、35…復路軌道、
100A…第1の支持台車、100B…第2の支持台車、
101…連結機構、101a…一端部、101b…他端部、
102A、102B…車輪台車、103A、103B…荷台支持部、
104…荷台、105A、105B…ブレーキレバー、110…作業半径、
120…車輪台車、121…牽引ウインチ、122…牽引ロープ、
123…発電機、124…軌道クランプ機構、130…作業半径、
140A…第1の門型クレーン、140B…第2の門型クレーン、
141A…第1の脚部、141B…第2の脚部、
142…キャスタ、143…アウトリガー部、
144…ガーダ部、144a…一端部、144b…中間部、144c…他端部、
145…楊重部、146…チェーンブロック、147…トロリ部、
210A、210B…柱位置、
310…保管スペース、311…搬入道路、
340…荷積み位置、341…荷降し位置、342…往路牽引位置、
343…移設作業位置、344…移設先位置、
350…走行開始位置、351…走行終了位置、352…復路牽引位置
X…長さ方向、Y…幅方向、Z…鉛直方向、X1…縦間隔、Y1…横間隔