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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20230620BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20230620BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20230620BHJP
【FI】
E04D13/00 K
E04D13/18 ETD
H02S20/23 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019157446
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032061
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】荒崎 満
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227576(JP,A)
【文献】特開2019-073899(JP,A)
【文献】特開2007-177391(JP,A)
【文献】特開2019-019501(JP,A)
【文献】特開2009-007782(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140878(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-15/07
E04D 1/00- 3/40
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した設置面に設置物を固定するための固定具であって、
前記設置面上に置かれる板部と、
前記設置物又は前記設置物を支持する支持部材を積載する積載部と、
前記設置面の方に向けて突出し、前記設置面の傾斜方向に沿って延びる止水部と、を有し、
前記板部、前記積載部、及び止水部は、一体に形成されており、
前記設置面は、前記傾斜方向に沿って所定の間隔で複数の段差を有しており、
前記板部の底面の一部の領域に、前記段差の高さに対応するスペーサが設けられており、
前記傾斜方向における前記固定具の水上側の端部から前記スペーサまでの距離は、前記複数の段差どうしの間の間隔と実質的に等しい、固定具。
【請求項2】
前記板部は、前記固定具を前記設置面に取り付ける第1締結部材を通す貫通孔を有し、
前記止水部は、前記設置面に沿った面内で前記傾斜方向に直交する横方向において、前記貫通孔よりも外側に設けられている、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記固定具の前記設置面に面する一面に設けられた防水材を有し、
前記防水材は、少なくとも前記貫通孔の周囲に設けられている、請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記止水部は、前記板部の底面よりも前記設置面側に向けて突出している、請求項1から3のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項5】
前記板部から前記止水部まで連続的に延びる弾性部を有し、
前記弾性部の少なくとも一部は、前記設置面に当接しないよう構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項6】
前記傾斜方向における前記弾性部の水上側の端部は、前記設置面に当接するよう曲げられている、請求項5に記載の固定具。
【請求項7】
前記積載部は、前記設置面から離れる方向に前記板部から連続的に突出した一対の突起部により構成されるレールを含み、
前記レールは、第2締結部材の頭部を受け入れるとともに前記第2締結部材のねじ部を前記設置面から離れる方向に突出させる受け入れ部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関し、特に屋外の傾斜した設置面に設置物を固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
スレート屋根、瓦屋根、陸屋根など、様々な種類の屋根に取り付けられる太陽電池モジュールのような設置物が知られている。このような設置物を設置するため、屋根の種類に応じた適切な固定具が用いられる。
【0003】
下記特許文献1は、太陽電池モジュールをスレート屋根上に設置するための固定構造を開示する。この固定構造は、少なくとも、傾斜を有するスレート屋根上に取り付けられる止水板と、取付ネジによって止水板上に固定される設置金具と、設置金具上に固定される縦材と、を有する。
【0004】
縦材は、傾斜した屋根の水上側から水下側に沿った方向に延びており、略中空の直方体形状からなる棒状部材である。太陽電池モジュールのような設置物は、縦材の載置部上に載置され、締結ボルト及びナット等によりネジ止めすることにより、縦材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-227576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋根に設置物を設置する際、当該設置物の設置個所から屋内に水が浸入することを抑制することが望まれる。特許文献1では、設置物の設置個所から屋内に水が浸入することを防止するため、止水板が設けられている。このため、特許文献1に記載された固定構造は、少なくとも、止水板、止水板上に固定される設置金具、設置金具上に固定される縦材を必要とする。
【0007】
このように設置物を固定するための部品の数が多いと、設置物の施工手順が複雑になる。特に太陽電池モジュールのように傾斜した屋根に取り付けられる設置物は、足場の安定しない場所で施工されるため、より容易に施工可能な固定具が用いられることが望ましい。
【0008】
したがって、設置個所からの水の侵入を抑制するとともに、設置物の施工を簡易化させることが可能な固定具が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る固定具は、傾斜した設置面に設置物を固定するための固定具である。この固定具は、前記設置面上に置かれる板部と、前記設置物又は前記設置物を支持する支持部材を積載する積載部と、前記設置面の方に向けて突出し、前記設置面の傾斜方向に沿って延びる止水部と、を有する。前記板部、前記積載部、及び止水部は、一体に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、設置個所からの水の侵入を抑制するとともに、設置物の施工を簡易化させることが可能な固定具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る設置物の設置構造を示す模式図である。
図2図1の2A-2A線に沿った断面図である。
図3】設置物を支持する支持部材を構成する連結具の斜視図である。
図4】一実施形態に係る固定具の上面図である。
図5】一実施形態に係る固定具の斜視図である。
図6図5の矢印6A方向から見た固定具の平面図である。
図7図5の矢印7A方向から見た固定具の側面図である。
図8】設置物の施工手順を説明するための図である。
図9図8に続くステップを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0013】
図1は、一実施形態に係る設置物の設置構造を示す模式図である。図2は、図1の2A-2A線に沿った断面図である。本実施形態では、設置物は、太陽電池モジュールのようなパネル状モジュール10である。
【0014】
パネル状モジュール10は、水平面から傾斜した設置面50に設置されている。そのような設置面50として、例えば、スレート屋根やアスファルトシングル屋根などが挙げられる。
【0015】
図1に示す例では、複数のパネル状モジュール10が縦方向F1と横方向F2に並んで配置されている。ここで、「縦方向」は、設置面50の傾斜方向、すなわち設置面の水上側と水下側とを結ぶ方向に相当する。また、「横方向」は、設置面50に平行な面内で、縦方向F1に直交する方向に相当する。なお、図1に示す例に限定されず、パネル状モジュール10は、縦方向F1又は横方向F2のいずれか一方のみに沿って並んでいてもよく、1つのみ設置されていてもよい。
【0016】
また、図1では、設置面50は平らに描かれているが、設置面50は、例えばスレート屋根やアスファルトシングル屋根のように、段差を有する面であってよい。図2及び図4に示すように、設置面50は、敷き詰められた複数の屋根材54によって構成されていてよい。この場合、複数の屋根材54は、縦方向F1及び横方向F2にそれぞれ並んでいる。
【0017】
一例として、屋根材54は、横方向F2においては、互いに重複することなく並んでいてよく、縦方向F1においては、互いに部分的に重なるよう並んでいてよい(図2及び図4参照)。
【0018】
パネル状モジュール10は支持部材100によって支持されており、支持部材100は固定具100により設置面50に固定されている。本実施形態では、各々のパネル状モジュール10は、2つの支持部材100によって支持されている。
【0019】
より具体的には、各々のパネル状モジュール10は、互いに対向する両辺において支持部材100で支持されている。本実施形態では、各々の支持部材100は、横方向F2に沿って延びるパネル状モジュール10の端辺を支持する。各々の支持部材100は、横方向F2において、各々のパネル状モジュール10全体にわたって延びていることが好ましい。
【0020】
支持部材100は、第1積載部126a及び第2積載部126bを有していてよい(図2参照)。第1積載部126a及び第2積載部126bは、パネル状モジュール10の端辺を下から支えるよう構成されている。第1積載部126a及び第2積載部126bは、パネル状モジュール10の端辺に沿って、横方向F2に延びていてよい。
【0021】
支持部材100は、第1積載部126aと第2積載部126bとを仕切る側面当接部128を有していてよい。側面当接部128は、第1積載部126a及び第2積載部126bに積載された一対のパネル状モジュール10どうしの間に配置され、一対のパネル状モジュール10の端辺に位置するフレーム12に当接するよう構成されていてよい。
【0022】
支持部材100は、フランジ129を有していてよい。フランジ129は、第1積載部126a及び第2積載部126bに積載された一対のパネル状モジュール10のフレーム12の上面の少なくとも一部を覆っている。したがって、フランジ129は、側面当接部128の上部から、パネル状モジュール10のフレーム12の上面を覆うように、縦方向F1の両側に突出していてよい。フランジ129は、第1積載部126a及び第2積載部126bと同様に、パネル状モジュール10の端辺に沿って横方向F2に延びていてよい。
【0023】
各々のパネル状モジュール10のフレーム12は、フランジ129と第1積載部126a又は第2積載部126bとの間に挟まれている。これにより、各々のパネル状モジュール10の端辺が保持されている。
【0024】
支持部材100は、支持部材100を後述する固定具300に連結させるための連結具200を有していてよい。図3は、設置物を支持する支持部材100を構成する連結具200の斜視図である。
【0025】
連結具200は、支持部材100の本体に対して着脱可能に構成されていてよい。具体的には、支持部材100は、連結具200に係合可能な被係合部124を有していてよい。一方、連結具200は、被保持部124に係合する係合部224を有していてよい。
【0026】
図2及び図3に示す態様では、連結具200の係合部224は、横方向F2に延びた溝によって構成されており、支持部材100の被係合部124は、当該溝に嵌合可能で、かつ横方向F2に延びた突起によって構成されている。これにより、連結具200は、横方向F2からスライドさせることによって、支持部材100の被係合部124に取り付けられる。
【0027】
また、支持部材100の被係合部124としての突起の根本部分は、突起の先端よりも細くなっており、これにより、被係合部124は、上下方向(設置面に直交する方向)においては連結具200の係合部224としての溝から外れないよう構成されている。
【0028】
連結具200は、後述する固定具300上に置かれる底部210と、固定具300と締結するための第2締結部材400が通る孔232を有する固定板部230と、有していてよい。固定板部230は、概ね設置面50に沿った方向に広がった板状の部分である。
【0029】
連結具200は、後述する固定具300と固定される箇所にのみ設けられていてよい。本実施形態では、連結具200は、各々の支持部材100ごとに2つ設けられている。この代わりに、連結具200は、各々の支持部材100ごとに3つ以上設けられていてもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、連結具200は、支持部材100の被係合部124に着脱可能に構成されている。この代わりに、連結具200は、支持部材100の本体と一体不可分に構成されていてもよい。この場合、支持部材100の底部に、固定具300と締結するための第2締結部材400が通る孔232を有する板状の部分があればよい。
【0031】
図4は、一実施形態に係る固定具の上面図である。図5は、一実施形態に係る固定具の斜視図である。図6は、図5の矢印6A方向から見た固定具の平面図である。図7は、図5の矢印7A方向から見た固定具の側面図である。
【0032】
固定具300は、設置面50上に置かれる板部310と、支持部材100を積載する積載部320と、止水部330と、を有していてよい。板部310、積載部320、及び止水部330は、一体に形成されている。
【0033】
板部310は、板部310を貫通する貫通穴312を有していてよい。第1締結部材500が、貫通穴312を通して、屋根材54のような設置面50に取り付けられる。これにより、固定具300は、設置面50に固定される。
【0034】
固定具300の貫通穴312が設けられる領域であって、固定具300の設置面に面する一面に、防水材360が設けられていてよい。具体的には、防水材360は、少なくとも板部310又は後述するスペーサ340の設置面側の一面に設けられていてよい。防水材360は、シート状のゴム部材のような弾性材により構成されていてよい。そのような防水材360は、例えばブチルゴム系の粘着テープにより構成されていてもよい。防水材360により、設置面50を流れる水が、第1締結部材500により設置面50に開けられる穴内に侵入することを抑制することができる。
【0035】
防水材360は、少なくとも貫通穴312の周囲に設けられていてよい。また、防水材360は、少なくとも貫通穴312の周囲から、貫通穴312の周囲の領域から横方向F2に延びた領域にわたって設けられていてよい。より好ましくは、防水材360は、横方向F2において、板部310及び/又は後述するスペーサ340の一端から他端までにわたって延びていてよい。これにより、傾斜方向からの水の侵入をより抑制することができる。なお、防水材360は、第1締結部材500が貫通穴312を貫通する前において、貫通穴312を塞ぐように設けられていてもよい。
【0036】
固定具300の積載部320は、支持部材100、より具体的には支持部材100の連結具200を支持するよう構成されていてよい。本実施形態では、積載部320は、板部310から連続的に上方に突出し、かつ縦方向F1に延びた一対の突起部により構成されるレールである。連結具200の底部は、このレールに当接する。
【0037】
積載部320を構成する一対の突起部どうしの間の空間に、第2締結部材400の頭部410が配置されていてよい(図2も参照)。第2締結部材400のねじ部420は、積載部320を構成する一対の突起部よりも上方へ延出しており、連結具200の固定板部230に設けられた孔232を通ってさらに上方に延びている。すなわち、積載部320を構成するレールは、第2締結部材400の頭部410を受け入れるとともに第2締結部材400のねじ部420を設置面50から離れる方向に突出させる受け入れ部350を有する。なお、第2締結部材400の頭部410の径は、ねじ部420の径よりも大きい。
【0038】
第2締結部材400のねじ部420にナット430が取り付けられている。ナット430は、連結具200の固定板部230の上部側に設けられる。したがって、第2締結部材400による締結によって、連結具200と固定具300がしっかりと固定される。
【0039】
積載部320及び受け入れ部350は、縦方向F1に沿って延びていてよい。これにより、第2締結部材400を緩めた状態において、積載部320上の支持部材100及び連結具200は、第2締結部材400とともに、縦方向F1にスライド可能に構成される。これにより、支持部材100の縦方向F1の位置、すなわちパネル状部材10の縦方向F1の設置位置を微調整することができる。
【0040】
固定具300は、横方向F2おける両端よりも内側の位置であって、積載部320を構成するレールよりも外側の位置に、上方に立設した一対の壁部370を有していてよい。壁部370は、積載部320と同様に、縦方向F1に延びていてよい。壁部370の高さは、積載部320の高さと実質的に同じであることが好ましい。これにより、固定具300は、積載部320と壁部370の両方によって連結具200を支えることができる。
【0041】
止水部330は、設置面50の方に向けて突出し、縦方向F1に沿って延びるよう構成されている。これにより、固定具300が、設置面50上に置かれた際に、止水部330が設置面50に当接する。
【0042】
好ましくは、止水部330は、板部310の底面よりも設置面50側に向けて突出している。これにより、固定具300が、設置面50上に置かれた際に、止水部330が設置面50により強く当接する。
【0043】
止水部330は、板部310を貫通する第1締結部材500、すなわち貫通穴312よりも横方向F2における外側に設けられている。好ましくは、止水部330は、固定具300の横方向F2における端部に設けられている。
【0044】
縦方向F1に沿って延びた止水部330が設置面50に当接するため、水が、横方向F2から固定具300と設置面50との間、より具体的には貫通穴312のところに侵入することを抑制することができる。
【0045】
板部310から止水部330まで連続的に延びる弾性部332が設けられていることが好ましい。弾性部332は、止水部330及び板部310と一体に形成されていてよい。弾性部332は、設置面50に交差する方向の外力に応じて、弾性変形可能に構成されている。
【0046】
本実施形態では、弾性部332は、板部310から横方向F2に延出した部分であり、弾性部332の少なくとも一部は、設置面50から離れた位置に設けられている。より好ましくは、弾性部332の厚みは、板部310の厚みよりも薄い。
【0047】
前述した弾性部332が撓むことにより、止水部330は、設置面50より強く当接することができる。特に、止水部330が板部310の底面よりも設置面50側に向けて突出していれば、固定具300を第1締結部材500で設置面50に締結することで、弾性部332が撓みつつ、止水部330が設置面50により強く当接する。これにより、水が、横方向F2から固定具300と設置面50との間に侵入することをより抑制することができる。
【0048】
板部310の厚み方向において、板部310の底面と止水部330の設置面側の先端との間の距離L2は、例えば0.2mm~5mm、好ましくは0.5mm~3mm程度であってよい(図6参照)。
【0049】
図6に示す態様では、弾性部332は、板部310から横方向F2に連続的に延出した部分により構成されている。この代わりに、弾性部332は、板部310からいったん上方に延び、そこから横方向F2に曲げられて横方向F2に延びていてもよい。この場合、弾性部332の板部310からの高さは、積載部320及び一対の壁部370の板部310からの高さより低いことが好ましい。もっとも、固定具300の製造を容易にするという観点では、弾性部332は、図6に示すように、板部310の側部から横方向F2に延出していることが好ましい。
【0050】
ここで、アスファルトシングル屋根の表面は微細な凹凸を含む。本実施形態の固定具300は、止水部330がアスファルトシングル屋根の表面に強く当接するため、このような微細な凹凸が存在したとしても、水の侵入を抑制することができる。したがって、本実施形態の固定具300は、アスファルトシングル屋根に設置される場合により効果的である。
【0051】
図5に示すように、弾性部332の水上側の端部334は、設置面50に当接するよう曲げられていることが好ましい。言い換えると、弾性部332の水上側の端部334の底面が、板部310の底面と実質的に面一になるよう構成される。これにより、固定具300の水上側の端部全体が設置面50に当接することになるので、縦方向F1における水上側からの水の侵入を抑制することができる。
【0052】
前述したように、設置面50がスレート屋根やアスファルトシングル屋根等により構成されている場合、設置面50は、傾斜方向に沿って段差を有することになる。この段差は、縦方向F1における屋根材54の縁の位置に相当する(図2及び図4参照)。
【0053】
本実施形態の固定具300は、縦方向F1において設置面50の段差を跨って配置されてもよい。この場合、図2及び図7に示すように、固定具300の板部310の設置面側の一部の領域に、段差の高さに対応するスペーサ340が設けられていてよい。例えば、スペーサ340の高さは、屋根材54の厚みに相当していればよい。これにより、図2に示すように、固定具300は、設置面50の段差に跨って安定的に設置される。
【0054】
固定具300が設置面50の段差に跨って配置される場合、第1締結部材500を貫通させる貫通穴312は、ある屋根材54上に相当する領域と、当該屋根材54に対して縦方向F1に隣接する屋根材54上に相当する領域と、の両方に設けられていることが好ましい。これにより、縦方向F1に互いに隣接する屋根材54に固定具300を固定することができるため、固定具300をより安定させることができる。また、この場合、固定具300の水下側に位置する貫通穴312は、スペーサ340も貫通していればよい。
【0055】
また、縦方向F1において、固定具300の水上側の端部からスペーサ340までの距離L1は、設置面50に設けられた複数の段差どうしの間の間隔と実質的に等しいことが好ましい。これにより、固定具300の水上側の端部を、固定具300を設置する屋根材52の水上側の屋根材52に当接するよう、固定具300を設置することができる。
【0056】
前述したスペーサ340が設けられている場合、止水部330は、固定具300の水上側の端部から縦方向F1において少なくともスペーサ340の水上側の端部までわたって延びていてよい。もっとも、止水部330は、固定具300の水上側の端部から水下側の端部までわたって延びていてもよい。
【0057】
また、前述した積載部320を構成するレールは、縦方向F1において、設置面50に設けられた複数の段差どうしの間の間隔よりも長いことが好ましい。これにより、縦方向F1における支持部材100の位置を、設置面50上の段差位置に規制されることなく、柔軟に変更することができる。
【0058】
図8は、設置物の施工手順を説明するための図である。図9は、図8に続くステップを説明するための図である。以下で説明する施工手順は、一例であり、本発明はこれに限定されるわけではないことに留意されたい。
【0059】
まず、設置物としてのパネル状モジュール10と、支持部材100と、固定具300と、を準備する。まず、設置すべきパネル状モジュール10の縦方向F1の端辺の位置と概ね合う領域に、固定具300を設置する。パネル状モジュール10の水上側の一辺に対して2つの固定具300を設置し、パネル状モジュール10の水下側の一辺に対して2つの固定具300を設置すればよい。
【0060】
ここで、設置面50が、スレート屋根やアスファルトシングル屋根である場合、前述したように、固定具300を縦方向F1に隣接する屋根材54に跨って配置することが好ましい。
【0061】
次に、固定具300の積載部320上に支持部材100を取り付ける。支持部材100は、前述した連結具200により固定具300に固定されることが好ましい。なお、連結具200は、予め支持部材100の本体に取り付けられた状態であってよい。
【0062】
ここでは、固定具300を設置面50に固定した後に、固定具300に支持部材100を取り付けた。この代わりに、先に支持部材100に固定具300を取り付けた状態で、固定具300を設置面50に固定してもかまわない。
【0063】
支持部材100を設置した後に、支持部材100の積載部126a,126bに、パネル状モジュール10を取り付ける。この際、パネル状モジュール10の一端辺を一方の支持部材100に取り付けた後に、パネル状モジュール10のもう一方の端辺を別の支持部材100に取り付ければよい。
【0064】
この際、縦方向F1における支持部材100どうしの間隔をパネル状モジュール10の縦方向F1における長さより若干長くなるよう配置しておき、それからパネル状モジュール10を積載部126a,126bに保持させる際に縦方向F1における支持部材100の位置を調整すればよい。この位置の調節は、第2締結部材400を緩めた状態において、縦方向F1に支持部材100及び連結具200を固定具300に関してスライドさせることにより実現できる。これにより、パネル状モジュール10を容易に積載部126a,126bに嵌め込むことができる。
【0065】
上記実施形態で説明した固定具300では、水の侵入を抑制する止水部330と、支持部材100を積載する積載部320とが一体に構成されている。すなわち、止水機能を有する部材と、設置物を積載する積載部320の機能を有する部材と、を互いに別々の部材で構成する必要がない。したがって、設置物を固定するための部品の数が少なくなるととともに、パネル状モジュール10のような設置物の施工が簡易になる。
【0066】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0067】
例えば、上記実施形態では、屋外に設置される設置物は、太陽電池モジュールのようなパネル状モジュール10であるが、これに限定されない。
【0068】
また、支持部材100は、前述した構造に限定されず、設置物を支持可能であれば、どのような構成であってもよい。また、可能であれば、固定具300は、支持部材100を利用することなく、直接的に設置物を固定してもよい。この場合、固定具300の積載部320は、設置物を直接積載するよう構成されていればよい。
【符号の説明】
【0069】
10 パネル状モジュール
50 設置面
100 支持部材
200 連結具
300 固定具
310 板部
320 積載部
330 止水部
332 弾性部
340 スペーサ
360 防水材
400 第2締結部材
500 第1締結部材
F1 縦方向
F2 横方向

図1
図2
図3
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図5
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図9