(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】分離装置、及び分離システム
(51)【国際特許分類】
B30B 9/16 20060101AFI20230620BHJP
C02F 11/125 20190101ALI20230620BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B30B9/16
C02F11/125 ZAB
B01D21/24 Q
B01D21/24 T
(21)【出願番号】P 2019158995
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良行
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179569(WO,A1)
【文献】特開2003-164899(JP,A)
【文献】実開昭60-115507(JP,U)
【文献】特開2018-083161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/24
B30B 9/12-18
C02F 11/121-128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が投入される対象物投入口、脱水された前記対象物である濃縮対象物を排出する対象物排出口、及び、脱水により前記対象物から分離された分離液の液位を、前記対象物投入口及び前記対象物排出口よりも鉛直方向上方となる所定液位に保つ液位保持機構が設けられるケージングと、
前記ケージングの内部に設けられるスクリュー軸と、
前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、
前記第1スクリュー羽根に対して前記スクリュー軸の延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備え
、
前記ケージングは、前記対象物投入口及び前記対象物排出口が設けられるケージング本体と、前記液位保持機構とを備え、
前記液位保持機構は、前記対象物投入口よりも鉛直方向上方において前記ケージング本体に接続されて、前記ケージング本体から前記分離液が流入する分離液流入口と、前記分離液流入口よりも鉛直方向上方に設けられて前記分離液を排出する分離液排出口とが設けられて、前記ケージング内での前記分離液の液位を、前記分離液排出口の位置に保ち、
前記対象物排出口は、前記分離液流入口よりも鉛直方向下方に配置される、
分離装置。
【請求項2】
前記スクリュー軸の回転を制御する制御部を備え、前記制御部は、
前記ケージングからの前記分離液の排出を抑える場合、前記スクリュー軸の回転が停止し、
前記ケージングから前記分離液を排出する場合、前記スクリュー軸が回転
させる、請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記対象物排出口に接続される排出ポンプを更に備え、
前記排出ポンプは、停止時には、前記対象物排出口からの前記濃縮対象物の排出を抑え、運転時には、前記対象物排出口から前記濃縮対象物を排出させる、請求項1
又は請求項
2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記スクリュー軸の回転と、前記排出ポンプによる前記濃縮対象物の排出と、前記対象物投入口からの前記対象物の投入とを制御する制御部を更に備える、請求項
3に記載の分離装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記分離液の前記分離液排出口から排出量が多くなる場合、前記スクリュー軸の回転数を上昇させる、請求項4に記載の分離装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の分離装置と、前記対象物を貯留する対象物貯留槽と、を備え、
前記分離装置は、前記対象物投入口から、前記対象物貯留槽に貯留された前記対象物が投入され、前記所定液位を、前記対象物貯留槽内における前記対象物の液位よりも、鉛直方向の下方に設定している、分離システム。
【請求項7】
前記対象物貯留槽は、前記分離装置に投入するための前記対象物が排出される排出口と、前記排出口よりも鉛直方向の上方に設けられて、前記対象物の上澄み液が排出されるオーバーフロー排出口と、が設けられ、前記上澄み液の液位を、前記オーバーフロー排出口の位置に保つ、請求項
6に記載の分離システム。
【請求項8】
前記オーバーフロー排出口より鉛直方向下方に設けられ、前記オーバーフロー排出口から排出された前記上澄み液が流れる液体流路を更に備え、
前記分離装置は、前記分離液が排出される分離液排出口が、鉛直方向において、前記オーバーフロー排出口と前記液体流路との間に位置して、前記分離液排出口から排出された前記分離液を、前記液体流路に供給する、請求項
7に記載の分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、及び分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濃縮機や脱水機などのいわゆる分離装置に採用されている方法として、遠心法、浮上濃縮法、およびスクリーン濃縮脱水法などを挙げることができる。また、対象物としての含水率が高い下水や工場排水等の汚泥を、円筒形状のケージング内に投入し、このケージング内に設けたスクリューを回転させることにより、対象物を搬送しつつ圧搾脱水する分離装置が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2つのスクリュー羽根を設けたスクリューを回転させて、汚泥を搬送しつつ圧搾する分離装置が記載されている。この分離装置は、側面に汚泥投入口が設けられたケージングの内部に、2つのスクリュー羽根に挟まれた第1領域と第2領域を形成する。この装置は、第1領域で、原汚泥を圧搾することにより脱水しつつ搬送し、脱水した汚泥を排出する。また、この分離装置は、脱水により生じた分離液を第2領域で搬送して、分離液を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚泥と分離水との分離処理を行う分離装置には、例えば原汚泥を分離装置に導入するためのポンプ、脱水した汚泥を排出するためのポンプ、及び分離液を排出するためのポンプなど、複数のポンプが設けられる。特許文献1のようなスクリュー型の分離装置に限られず、汚泥と分離水とを分離する分離装置であれば、同様に複数のポンプを設けることがある。しかし、ポンプの数が多くなる場合、ポンプの設置や維持管理のために、コストが高くなってしまう。そのため、コストの上昇を抑えつつ、適切に固液分離を行う事が求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コストの上昇を抑えつつ、適切に固液分離を行うことができる分離装置及び分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の分離装置は、対象物が投入される対象物投入口、脱水された前記対象物である濃縮対象物を排出する対象物排出口、及び、脱水により前記対象物から分離された分離液の液位を、前記対象物投入口及び前記対象物排出口よりも鉛直方向上方となる所定液位に保つ液位保持機構が設けられるケージングと、前記ケージングの内部に設けられるスクリュー軸と、前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、前記第1スクリュー羽根に対して前記スクリュー軸の延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備える。
【0008】
前記ケージングは、前記対象物投入口及び前記対象物排出口が設けられるケージング本体と、前記液位保持機構とを備え、前記液位保持機構は、前記対象物投入口よりも鉛直方向上方において前記ケージング本体に接続されて、前記ケージング本体から前記分離液が流入する分離液流入口と、前記分離液流入口よりも鉛直方向上方に設けられて前記分離液を排出する分離液排出口とが設けられて、前記ケージング内での前記分離液の液位を、前記分離液排出口の位置に保つことが好ましい。
【0009】
前記スクリュー軸の回転を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記スクリュー軸の回転が停止している際には、前記ケージングからの前記分離液の排出を抑え、前記スクリュー軸が回転している際には、前記ケージングから前記分離液を排出することが好ましい。
【0010】
前記対象物排出口に接続される排出ポンプを更に備え、前記排出ポンプは、停止時には、前記対象物排出口からの前記濃縮対象物の排出を抑え、運転時には、前記対象物排出口から前記濃縮対象物を排出させることが好ましい。
【0011】
前記スクリュー軸の回転と、前記排出ポンプによる前記濃縮対象物の排出と、前記対象物投入口からの前記対象物の投入とを制御する制御部を更に備えることが好ましい。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の分離装置は、対象物が投入される対象物投入口と、脱水された前記対象物である濃縮対象物を排出する対象物排出口と、脱水により前記対象物から分離された分離液の液位を、前記対象物投入口及び前記対象物排出口よりも鉛直方向上方となる所定液位に保つ液位保持機構と、が設けられるケージングを備え、前記ケージングは、満管状態で、前記対象物を脱水可能に構成される。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の分離システムは、前記分離装置と、前記対象物を貯留する対象物貯留槽と、を備え、前記分離装置は、前記対象物投入口から、前記対象物貯留槽に貯留された前記対象物が投入され、前記所定液位を、前記対象物貯留槽内における前記対象物の液位よりも、鉛直方向の下方に設定している。
【0014】
前記対象物貯留槽は、前記分離装置に投入するための前記対象物が排出される排出口と、前記排出口よりも鉛直方向の上方に設けられて、前記対象物の上澄み液が排出されるオーバーフロー排出口と、が設けられ、前記上澄み液の液位を、前記オーバーフロー排出口の位置に保つことが好ましい。
【0015】
前記オーバーフロー排出口より鉛直方向下方に設けられ、前記オーバーフロー排出口から排出された前記上澄み液が流れる液体流路を更に備え、前記分離装置は、前記分離液が排出される分離液排出口が、鉛直方向において、前記オーバーフロー排出口と前記液体流路との間に位置して、前記分離液排出口から排出された前記分離液を、前記液体流路に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コストの上昇を抑えつつ、適切に脱水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る分離システムの模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る分離装置の一部断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る分離装置の動作を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る分離装置の動作を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における制御部による分離装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る分離システムの模式図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態における制御部による分離装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
(分離システムの構成)
図1は、第1実施形態に係る分離システムの模式図である。以下において、鉛直方向を、方向Zとする。そして、方向Zのうちの一方の方向を、Z1方向とし、方向Zのうちの他方の方向、すなわちZ1方向と反対の方向を、Z2方向とする。Z1方向は、鉛直方向の上方に向かう方向、すなわち地表と離れる方向であり、Z2方向は、鉛直方向の下方に向かう方向、すなわち地表側に向かう方向である。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態に係る分離システム100は、前段設備110と、対象物貯留槽120と、液体流路130と、液処理設備140と、分離装置1と、濃縮対象物処理設備150と、を備える。分離システム100は、分離装置1によって対象物A0を脱水処理するシステムであり、対象物A0を、濃縮対象物Aと分離液Cとに分離する。対象物A0は、分離装置1に脱水される前の対象物であり、本実施形態では、含水率が高い下水や工場排水等の汚泥である。対象物A0は、凝集剤が添加された汚泥であってもよく、この場合、フロック化された固形成分と水分とを含有する汚泥である。本実施形態においては、対象物貯留槽120や後述の配管T1などにおいて、対象物A0に凝集剤を添加することで、固形物成分をフロック化して、固形物に液体成分が含まれた対象物A0を生成する。ただし、対象物A0の性状は任意であり、例えば、凝集剤が添加されずにフロック化されていない汚泥であってもよい。
【0021】
前段設備110は、対象物貯留槽120に原汚泥である前対象物A0aを投入する設備である。対象物貯留槽120は、前段設備110から投入された前対象物A0aを貯留する槽である。前段設備110から対象物貯留槽120に投入される前対象物A0aの単位時間当たりの量は、任意であり、一定でもよいし時間毎に変化してもよい。
【0022】
第1実施形態においては、対象物貯留槽120は、重力により、前段設備110から投入された前対象物A0aを固液分離する槽である。対象物貯留槽120は、重力濃縮により、前段設備110から投入された前対象物A0aを濃縮する重力濃縮槽であるとも言える。対象物貯留槽120は、前段設備110から投入された前対象物A0aを、重力濃縮で濃縮された対象物A0と、重力濃縮により前対象物A0aから分離された液体である上澄み液C0とに、分離する。対象物A0は、対象物貯留槽120内において、Z2方向側に沈降し、上澄み液C0は、対象物貯留槽120内において、対象物A0のZ1方向側に位置する。
【0023】
対象物貯留槽120は、排出口122とオーバーフロー排出口124とが設けられる。排出口122は、対象物A0を対象物貯留槽120から排出するための開口である。排出口122は、オーバーフロー排出口124よりもZ2方向側に設けられている。排出口122は、Z方向において対象物A0が滞留する位置に開口するように、Z2方向側に設けられているといえる。
図1の例では、排出口122は、対象物貯留槽120の側面におけるZ2方向側の箇所に開口しているが、それには限られず、例えば、対象物貯留槽120の底面(Z2方向側の面)に開口してもよい。オーバーフロー排出口124は、上澄み液C0を対象物貯留槽120から排出するための溝である。オーバーフロー排出口124は、排出口122よりもZ1方向側に設けられる。
図1の例では、オーバーフロー排出口124は、対象物貯留槽120の側面におけるZ1方向側の端部に設けられる溝である。ただし、オーバーフロー排出口124は、溝であることに限られず、例えば対象物貯留槽120の側面に設けられる穴(開口)であってもよい。
【0024】
対象物貯留槽120内においては、対象物貯留槽120内に貯留されている対象物A0及び上澄み液C0の総量が、Z方向における対象物貯留槽120の底面からオーバーフロー排出口124の位置までにおける対象物貯留槽120の容積を超えた場合に、対象物A0上の上澄み液C0が、オーバーフロー排出口124から排出される。そのため、対象物貯留槽120内における上澄み液C0の、Z方向における液面L0の位置である液位は、Z方向におけるオーバーフロー排出口124の位置に保たれる。
【0025】
対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124には、液体流路130が接続されている。液体流路130は、対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124から排出された上澄み液C0が流れる流路である。液体流路130は、Z1方向側が開放されている樋状の流路であり、オーバーフロー排出口124よりも、すなわち対象物貯留槽120内における上澄み液C0の液位(液面L0)よりも、Z2方向側に設けられている。液体流路130は、オーバーフロー排出口124のZ2方向側において、オーバーフロー排出口124が設けられる対象物貯留槽120の外側面に接続されている。従って、液体流路130は、対象物貯留槽120の外側面を介して、オーバーフロー排出口124のZ2方向側に接続されているといえる。なお、液体流路130は、Z1方向側が開放されている樋状の流路であることに限られず、例えばZ1方向側が閉じられている管状の流路であってもよい。すなわち、液体流路130は、オーバーフロー排出口124に接続されてオーバーフロー排出口124から上澄み液C0が供給される流路であれば、形状や位置は任意であってよい。
【0026】
対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124から排出された上澄み液C0は、Z2方向側に落下して、液体流路130に供給される。液体流路130は、液処理設備140にも接続されている。液体流路130内に供給された上澄み液C0は、液体流路130内を液処理設備140に向けて流れて、液処理設備140内に供給される。
【0027】
液処理設備140は、液体流路130を流れる上澄み液C0が供給される設備である。また、詳しくは後述するが、液体流路130には、分離装置1からの分離液Cも供給される。そのため、液処理設備140には、上澄み液C0及び分離液Cが、すなわち上澄み液C0と分離液Cとの混合液が供給される。液処理設備140は、上澄み液C0及び分離液Cに対して、例えば活性汚泥により生物処理を行う設備である。ただし、液処理設備140は、上澄み液C0及び分離液Cが供給される設備であれば、生物処理を行うものに限られない。
【0028】
対象物貯留槽120の排出口122には、配管T1を介して、分離装置1が接続されている。配管T1は、一方の端部T1Aが対象物貯留槽120の排出口122に接続され、他方の端部T1Bが、分離装置1の対象物投入口31Aに接続されている。分離装置1の構成の詳細は後述するが、分離装置1の対象物投入口31Aは、対象物貯留槽120の排出口122よりも、Z2方向側に位置している。また、配管T1には、開閉弁24が設けられている。開閉弁24が開状態である場合には、対象物貯留槽120の排出口122から、対象物A0が排出される。排出口122から排出された対象物A0は、配管T1を流れて、分離装置1の対象物投入口31Aから、分離装置1の内部、より詳しくは後述するケージング10の内部に投入される。開閉弁24が閉状態である場合には、対象物貯留槽120の排出口122からの対象物A0の排出が、言い換えれば、対象物投入口31Aから分離装置1の内部への対象物A0の投入が、停止される。
【0029】
詳しくは後述するが、分離装置1は、投入された対象物A0を、濃縮対象物Aと分離液Cとに分離する。濃縮対象物Aは、分離装置1の対象物排出口31Bから、分離装置1の外部に排出される。具体的には、対象物排出口31Bには、配管T2を介して、濃縮対象物処理設備150が接続される。配管T2は、一方の端部T2Aが分離装置1の対象物排出口31Bに接続され、他方の端部T2Bが、濃縮対象物処理設備150に接続されている。また、配管T2には、排出ポンプ26が設けられている。排出ポンプ26が駆動している場合には、分離装置1内の濃縮対象物Aは、対象物排出口31Bから排出される。対象物排出口31Bから排出された濃縮対象物Aは、配管T2を流れて、濃縮対象物処理設備150に供給される。排出ポンプ26が駆動していない場合には、分離装置1内の濃縮対象物Aの排出が、停止される。
【0030】
濃縮対象物処理設備150は、分離装置1の対象物排出口31Bから排出された濃縮対象物Aが供給される設備である。濃縮対象物処理設備150は、濃縮対象物Aに対して、さらに脱水処理を行う設備である。ただし、濃縮対象物処理設備150は、濃縮対象物Aが供給される設備であれば、脱水処理を行うものに限られない。例えば、濃縮対象物処理設備150は、濃縮対象物Aに含まれる固形成分(ここでは汚泥)を消化する消化槽であってもよい。
【0031】
分離装置1内で対象物A0から分離された分離液Cは、分離装置1に設けられる液位保持機構40の分離液排出口40Bから、分離装置1の外部に排出される。本実施形態では、分離液排出口40Bは、対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124よりも、Z2方向側に位置している。また、分離液排出口40Bは、液体流路130のZ1方向側に位置しており、Z方向において、オーバーフロー排出口124と液体流路130との間に設けられているといえる。分離装置1の分離液排出口40Bから排出された分離液Cは、Z2方向側に落下して、液体流路130内に供給される。液体流路130内に供給された分離液Cは、上澄み液C0と合流して、液体流路130内を液処理設備140に向けて流れて、液処理設備140内に供給される。
【0032】
なお、分離システム100には、流量センサS1及び、水質センサS2が設けられていてもよい。流量センサS1は、対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124から排出される上澄み液C0の流量、すなわち対象物貯留槽120からのオーバーフロー流量を検出するセンサである。
図1の例では、流量センサS1は、液体流路130において、分離液排出口40Bからの分離液Cが供給される位置よりも、上澄み液C0の流れの上流側に設けられている。ただし、流量センサS1は、オーバーフロー排出口124から排出される上澄み液C0の流量が測定可能な位置であれば、任意の位置に設けられてよい。水質センサS2は、対象物貯留槽120から分離装置1に供給される対象物A0の水質を計測するセンサである。具体的には、水質センサS2は、対象物貯留槽120から分離装置1に供給される対象物A0における固体成分の濃度を、すなわち対象物A0の含水率を検出する。水質センサS2は、
図1の例では配管T1に設けられるが、対象物貯留槽120から分離装置1に供給される対象物A0の水質(ここでは含水率)を測定可能な位置であれば、任意の位置に設けられてよい。
【0033】
(分離装置の構成)
次に、分離装置1の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る分離装置の一部断面図である。
図2に示すように、分離装置1は、本実施形態ではスクリュー型分離装置であり、ケージング本体30及び液位保持機構40を備えるケージング10と、スクリュー軸12と、第1スクリュー羽根14と、第2スクリュー羽根16と、第1隔壁部18と、第2隔壁部20と、カバー部22と、開閉弁24と、排出ポンプ26と、傾斜調整部28と、制御部29と、を有している。分離装置1は、対象物投入口31Aからケージング10内に投入された対象物A0を脱水して、脱水した後の濃縮対象物Aを、後述する対象物排出口31Bから排出する。そして、分離装置1は、脱水により対象物A0から分離された分離液Cを、分離液排出口40Bから排出する。
【0034】
以下、地表Gに平行な方向、すなわち水平方向を、方向Xとする。そして、方向Xのうちの一方の方向を、方向X1とし、方向Xのうちの他方の方向、すなわちX1方向と反対の方向を、X2方向とする。
【0035】
ケージング10のケージング本体30は、延在方向Eに沿って一方の端部30Bから他方の端部30Cまで延在し、内部に空間が設けられる筒状の部材である。
図2の例では、ケージング本体30は、端部30B側が縮径されているが、縮径されていることに限られず、例えば、端部30Bから端部30Cまで径が一定の円筒状であってよい。ケージング本体30は、縮径されていない箇所の直径が例えば20cm以上50cm以下程度であるが、その大きさは任意である。延在方向Eは、ケージング本体30の軸方向である。延在方向Eは、端部30B側から端部30C側(X2方向側)に向かう方向であり、端部30B側から端部30C側に向かうに従って、X2方向に対してZ1方向側に傾斜している。すなわち、ケージング本体30は、延在方向Eに沿った中心軸AXが、端部30C(方向X2側)に向かうに従って、Z1方向側に移動する(位置する)向きで、傾斜している。従って、ケージング本体30は、端部30Bが、端部30Cよりも、Z2方向側に位置している。ケージング本体30は、傾斜角度θが、20°以上90°以下であることが好ましく、30°以上45°以下であることがより好ましい。傾斜角度θは、中心軸AXの、水平方向X(地表G)に対する傾斜角度である。
【0036】
ケージング本体30は、中間部30Aに対象物投入口31Aが開口しており、端部30Bに対象物排出口31Bが開口しており、端部30Cに接続口31Cが開口している。中間部30Aは、ケージング本体30の延在方向Eに沿った端部30Bと端部30Cとの間の箇所であり、言い換えれば、延在方向Eに沿った対象物排出口31Bと接続口31Cとの間の箇所である。中間部30Aは、延在方向Eに沿ったケージング本体30の中央に位置しているが、延在方向Eに沿った端部30Bと端部30Cとの間の任意の位置にあてよい。例えば、ケージング本体30は、端部30Bから中間部30Aまでの延在方向Eに沿った長さが、延在方向Eに沿ったケージング本体30の全長に対し、30%以上90%以下であることが好ましい。対象物投入口31Aは、中間部30Aの位置におけるケージング本体30の外周面(側面)に開口している。対象物投入口31Aには、配管T1の端部T1Bが接続されている。
【0037】
対象物排出口31Bは、接続口31C及び対象物投入口31Aよりも、Z2方向側に設けられている。本実施形態において、対象物排出口31Bは、スクリュー軸12が内部を貫通可能になっているが、スクリュー軸12が貫通しない構成であってもよい。また、対象物排出口31Bは、後述する対象物搬送区間K2におけるケージング10の外周面(側面)に設けられていてもよい。対象物排出口31Bには、配管T2の端部T2Aが接続されている。
【0038】
接続口31Cは、対象物排出口31B及び対象物投入口31Aよりも、Z1方向側(延在方向E側)に設けられている。接続口31Cは、スクリュー軸12が通る穴とは別の開口であり、スクリュー軸12よりも方向Z1側に設けられている。ただし、接続口31Cは、スクリュー軸12よりも方向Z1側に設けられることに限られず、例えば端部30Cにおけるスクリュー軸12よりも方向Z2側に設けられていてもよく、スクリュー軸12と同じ位置に設けられて内部にスクリュー軸12を貫通可能になっていてもよい。また、接続口31Cは、後述する分離液搬送区間K3におけるケージング10の外周面(側面)に設けられていてもよい。
【0039】
接続口31Cには、液位保持機構40が接続されている。本実施形態では、液位保持機構40は、一方の端部40aから他方の端部40bまで、Z1方向側に向けて延在する。液位保持機構40は、一方の端部40aに分離液流入口40Aが開口し、他方の端部40bに分離液排出口40Bが開口して、分離液流入口40Aから分離液排出口40Bまでが連通している。液位保持機構40は、管状の部材、すなわち配管である。液位保持機構40は、例えば、金属製の配管、樹脂製の配管(ホース)、金属配管に樹脂被覆が設けられたフレキシブル配管などであってよい。
【0040】
液位保持機構40は、一方の端部40aと他方の端部40bとの間の中間部40cにおいてX方向側に曲がった形状となっている。すなわち、液位保持機構40は、一方の端部40aから中間部40cまでにおいて、Z1方向側に延在し、中間部40cから他方の端部40bまでにおいてX方向側に延在している。ただし、液位保持機構40は、中間部40cにおいてX方向側に曲がる構造に限られず、他方の端部40b(分離液排出口40B)が、一方の端部40a(分離液流入口40A)よりも方向Z1側に位置する構造であればよい。
【0041】
液位保持機構40の分離液流入口40Aは、対象物投入口31AよりもZ1方向側(延在方向E側)で、ケージング本体30に接続されている。具体的には、液位保持機構40の分離液流入口40Aは、ケージング本体30の接続口31Cに接続(連通)されている。すなわち、分離液流入口40A及び接続口31Cは、ケージング本体30と液位保持機構40とを接続(連通)する開口であるといえ、ケージング10の外部に露出(開口)していない。ケージング本体30内の分離液Cは、接続口31C及び分離液流入口40Aを通って、液位保持機構40内に流入可能となっている。
【0042】
液位保持機構40の分離液排出口40Bは、分離液流入口40Aよりも方向Z1側に設けられている。すなわち、液位保持機構40の分離液排出口40Bは、ケージング本体30の対象物排出口31B、接続口31C、及び対象物投入口31Aよりも、方向Z1側に設けられている。分離液排出口40Bは、ケージング10の外部に露出(開口)しており、本実施形態では、上述のように、Z方向において、オーバーフロー排出口124と液体流路130との間に位置している(
図1参照)。
【0043】
なお、液位保持機構40は、分離液流入口40Aから、それよりも鉛直方向上方の分離液排出口40Bまで連通して内部に分離液Cが貯留可能な機構であってよく、以上説明した管状の部材に限られない。例えば、液位保持機構40は、分離液流入口40Aと分離液排出口40Bとの間に、内径が大きい槽が形成されている構成などであってもよい。
【0044】
このように、ケージング10は、開口として、ケージング本体30に設けられる対象物投入口31A、対象物排出口31B、及び接続口31Cと、液位保持機構40に設けられる分離液流入口40A及び分離液排出口40Bとが設けられ、他には開口が形成されていない。ケージング10においては、これらの開口のうち、分離液排出口40Bが、最も方向Z1側に設けられている。言い換えれば、ケージング10は、対象物投入口31A、対象物排出口31B及び分離液排出口40B以外には、外部(ケージング10以外)と連通する開口が設けられておらず、これらの開口のうち、分離液排出口40Bが、最も方向Z1側に設けられている。
【0045】
ケージング10内(液位保持機構40内)の分離液Cは、ケージング10内の対象物A0に含まれる固形成分と液体成分の総量(言い換えればケージング10内の濃縮対象物A及び分離液Cの総量)が、ケージング10内の分離液排出口40Bまでの容積を超えると、分離液排出口40Bから排出される。そのため、ケージング10内における分離液CのZ方向における液面Lの位置である液位は、Z方向における分離液排出口40Bの位置に保たれる。ケージング10は、ケージング10内における分離液Cの液位がケージング10内における分離液排出口40Bの位置に保たれることで、満管状態で分離処理が行われるといえる。ここでの満管状態とは、ケージング10内の分離液排出口40Bの位置よりZ2方向側が、対象物A0の固形成分及び液体成分、すなわち濃縮対象物A及び分離液Cとので満たされ、空気の相を含まない状態を指す。
【0046】
液位保持機構40は、ケージング10内の分離液Cの液位(液面L)を、対象物投入口31A及び対象物排出口31BよりもZ1方向側となる所定液位に保つ機構であるといえる。言い換えれば、液位保持機構40は、ケージング10内での分離液Cの液位が、所定液位より高くなることを抑制している。ここでの所定液位は、Z方向における分離液排出口40Bの位置となる。本実施形態においては、所定液位は、オーバーフロー排出口124、すなわち対象物貯留槽120における分離液Cの液位よりもZ2方向側に設定されている。ただし、所定液位は、オーバーフロー排出口124よりもZ2方向側であることに限られず、Z方向においてオーバーフロー排出口124の位置(対象物貯留槽120における分離液Cの液位)と同じ位置にあってもよいし、オーバーフロー排出口124の位置(対象物貯留槽120における分離液Cの液位)よりもZ1方向側にあってもよい。所定液位は、分離装置1の運転条件や対象物貯留槽120における分離液Cの液位などに応じて、適宜設定してよい。また、本実施形態では、分離液排出口40Bの位置が固定されているため、所定液位の位置も固定されているが、例えばZ方向における分離液排出口40Bの位置を可変とすることで、所定液位の位置を可変にしてもよい。
【0047】
液位保持機構40は、ケージング10内の分離液Cの液位を所定液位に保つことができる機構であれば、上記で説明した構造に限られない。例えば、ケージング本体30と液位保持機構40とを別体にすることなく、ケージング本体30自体を液位保持機構40としてもよい。この場合、ケージング本体30の接続口31Cを、ケージング30の外部に露出する分離液排出口40Bとして使用する。接続口31Cの位置を、これまで説明した分離液排出口40Bの位置に設定することで、すなわち、接続口31Cの位置を、対象物投入口31A及び対象物排出口31BよりもZ1方向側であってオーバーフロー排出口124よりもZ2方向側にすることで、ケージング10内の分離液Cの液位を、所定液位に保つことができる。
【0048】
スクリュー軸12は、円柱形状であり、ケージング10、より詳しくはケージング本体30の内部に設けられて延在方向Eに沿って延在している。スクリュー軸12は、ケージング本体30の内部において、延在方向Eに沿ってケージング本体30を貫通するように設けられている。すなわち、スクリュー軸12の一方の端部12Bは、ケージング本体30の端部30B側に位置しており、ケージング本体30の端部30Bから、ケージング本体30の外側に突出している。同様に、スクリュー軸12の他方の端部12Cは、ケージング本体30の端部30C側に位置しており、ケージング本体30の端部30Cから、ケージング本体30の外側に突出している。スクリュー軸12は、端部12B又は端部12Cの少なくともいずれかが、軸受けによって軸支持されたモータ(いずれも図示せず)に連結されている。スクリュー軸12は、このモータが制御部29によって駆動されることにより、延在方向Eを軸中心として、回転方向Rに回転される。本実施形態では、回転方向Rは、端部12C側から見て、反時計回りの方向であるが、それに限られない。
【0049】
第1スクリュー羽根14は、一方の端部14Bから他方の端部14Cまで、ケージング10、より詳しくはケージング本体30の内部を、スクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在するよう設けられている。端部14Bは、第1スクリュー羽根14の巻回が開始される位置であり、ケージング本体30の対象物排出口31B(端部30B)側の端部である。端部14Bは、対象物投入口31A(中間部30A)よりも対象物排出口31B(端部30C)側に位置している。また、端部14Cは、第1スクリュー羽根14の巻回が終わる位置であり、ケージング本体30の接続口31C(端部30C)側の端部である。端部14Cは、対象物投入口31A(中間部30A)よりも接続口31C(端部30C)側に位置している。第1スクリュー羽根14は、端部14Bから、中心軸AXを中心とした径方向から見た場合に対象物投入口31Aと重なる箇所を経て、端部14Cまで延在する。
【0050】
第1スクリュー羽根14は、端部14Cから端部14Bに向かって、スクリュー軸12の回転方向Rと反対方向に巻回されている。すなわち、スクリュー軸12の回転方向Rが、端部12C側から見て反時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるZ巻き(右手)の螺旋状(スパイラル状)に設けられる。反対に、スクリュー軸12の回転方向Rが、端部12C側から見て時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるS巻き(左手)の螺旋状に設けられる。第1スクリュー羽根14は、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。
【0051】
第1スクリュー羽根14は、外周部14cが、ケージング本体30の内周面30aとの間に、間隙Hが生じるように構成されている。すなわち、第1スクリュー羽根14の外周部14cは、ケージング本体30の内周面30aとは接触せず、間隙Hを隔てて離れている。この間隙Hは、微小な隙間であり、濃縮対象物Aの少なくとも一部の通過を抑制する(せき止める)程度の大きさとなっている。また、間隙Hは、分離液Cなどの液体成分が通過可能な大きさである。間隙Hは、例えば、1mm以上2mm以下程度の隙間である。
【0052】
第2スクリュー羽根16は、ケージング10、より詳しくはケージング本体30の内部において、延在方向Eに沿ってスクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在する。第2スクリュー羽根16は、第1スクリュー羽根14に対して、延在方向Eに沿って所定間隔を隔ててずれた位置に設けられており、第1スクリュー羽根14と同じ巻回方向で巻回されている。第2スクリュー羽根16も、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。第2スクリュー羽根16は、一方の端部16Bから他方の端部16Cまで、螺旋状に延在する。端部16Bは、第2スクリュー羽根16の巻回が開始される位置であり、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Bと、対象物投入口31Aとの間に位置している。端部16Cは、第2スクリュー羽根16の巻回が終わる位置であり、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Cと、対象物投入口31Aとの間に位置している。従って、第2スクリュー羽根16は、端部16Bから、中心軸AXを中心とした径方向から見た場合に対象物投入口31Aと重なる箇所を経て、端部16Cまで延在する。なお、第2スクリュー羽根16の端部16B及び端部16Cは、以上説明した位置にあることに限られない。例えば、第2スクリュー羽根16の端部16Bは、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Bと同じ位置にあってもよいし、第2スクリュー羽根16の端部16Cは、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Cと同じ位置にあってもよい。
【0053】
第2スクリュー羽根16は、外周部16cが、ケージング本体30の内周面30aとの間に、間隙Hが生じるように構成されている。すなわち、第2スクリュー羽根16の外周部16cは、ケージング本体30の内周面30aとは接触せず、間隙Hを隔てて離れている。
【0054】
第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とは以上のような位置に設けられているため、第2スクリュー羽根16の端部16Bから端部16Cまでの区間(以下、この区間を搬送促進区間K1とする)では、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との両方が設けられている。また、第2スクリュー羽根16の端部16Bから第1スクリュー羽根14の端部14Bまでの区間(以下、この区間を対象物搬送区間K2とする)では、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられていない。また、第2スクリュー羽根16の端部16Cから第1スクリュー羽根14の端部14Cまでの区間(以下、この区間を分離液搬送区間K3とする)でも、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられていない。
【0055】
搬送促進区間K1は、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とが設けられるダブルスクリュー区間である。搬送促進区間K1は、延在方向Eにおいて、対象物搬送区間K2と分離液搬送区間K3との間の区間である。搬送促進区間K1は、中心軸AXを中心とした径方向から見て、少なくとも一部の区間において、対象物投入口31Aに重なるように設定されている。言い換えれば、搬送促進区間K1は、少なくとも一部の区間が、延在方向Eにおいて、対象物投入口31Aと同じ位置となっている。延在方向Eに沿った搬送促進区間K1の長さは、ケージング10の延在方向に沿った全長の20%以上60%以下であることが好ましい。
【0056】
搬送促進区間K1においては、対象物A0や濃縮対象物Aが搬送される第1空間S1と、分離液Cが搬送される第2空間S2とが形成される。第1空間S1は、第2スクリュー羽根16の一方の面16aと、一方の面16aに対向する第1スクリュー羽根14の他方の面14bとの間に形成される。第2空間S2は、第2スクリュー羽根16の他方の面16bと、他方の面16bに対向する第1スクリュー羽根14の一方の面14aとの間に形成される。なお、
図2では、第1スクリュー羽根14の端部14B側の面を一方の面14aとし、端部14C側の面を他方の面14bとしているが、それには限られず、端部14C側の面を一方の面14aとし、端部14B側の面を他方の面14bとしてもよい。同様に、
図2では、第2スクリュー羽根16の端部16B側の面を一方の面16aとし、端部16C側の面を他方の面16bとしているが、それには限られず、端部16C側の面を一方の面16aとし、端部16B側の面を他方の面16bとしてもよい。
【0057】
対象物搬送区間K2は、搬送促進区間K1よりも、ケージング10の端部30B側、すなわち対象物排出口31B側の区間である。対象物搬送区間K2内の空間S3は、対象物排出口31Bに連通する。また、空間S3は、搬送促進区間K1の第1空間S1に連通して、第1空間S1から濃縮対象物Aが流入する。空間S3は、後述する第1隔壁部18に遮られることで、間隙H以外の領域においては、搬送促進区間K1の第2空間S2から遮断されている。なお、対象物搬送区間K2は、本実施形態では、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられないシングルスクリュー区間であるが、第1スクリュー羽根14の端部14Bと第2スクリュー羽根16の端部16Bとが同じ位置にある場合は、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方が設けられない区間となる。
【0058】
分離液搬送区間K3は、搬送促進区間K1よりも、ケージング10の端部30C側、すなわち接続口31C側の区間である。分離液搬送区間K3内の空間S4は、接続口31Cを介して、液位保持機構40に連通する。また、空間S4は、搬送促進区間K1の第2空間S2に連通して、第2空間S2から分離液Cが流入する。空間S4は、後述する第2隔壁部20に遮られることで、間隙H以外の領域においては、搬送促進区間K1の第1空間S1とは遮断されている。なお、分離液搬送区間K3は、本実施形態では、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられないシングルスクリュー区間であるが、第1スクリュー羽根14の端部14Bと第2スクリュー羽根16の端部16Bとが同じ位置にある場合は、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方が設けられない区間となる。
【0059】
第1隔壁部18は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第2スクリュー羽根16までにわたって設けられる壁状の部材である。第1隔壁部18は、搬送促進区間K1内の第2空間S2に設けられており、第2空間S2を、対象物搬送区間K2の空間S3から遮蔽する。さらに言えば、第1隔壁部18は、対象物排出口31Bと対象物投入口31Aとの間、ここでは第2スクリュー羽根16の端部16Bに、設けられている。すなわち、第1隔壁部18は、第2空間S2と空間S3とを区切るように設けられており、第2空間S2と空間S3との境界位置に設けられていると言える。なお、第1隔壁部18は、必須の構成でなく、省略可能である。
【0060】
第2隔壁部20は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第2スクリュー羽根16までにわたって設けられる壁状の部材である。第2隔壁部20は、搬送促進区間K1内の第1空間S1に設けられており、第1空間S1を、分離液搬送区間K3の空間S4から遮蔽する。さらに言えば、第2隔壁部20は、接続口31Cと対象物投入口31Aとの間、ここでは第2スクリュー羽根16の端部16Cに、設けられている。すなわち、第2隔壁部20は、第1空間S1と空間S4とを区切るように設けられており、第1空間S1と空間S4との境界位置に設けられていると言える。ただし、第2隔壁部20は、必須の構成でない。第2隔壁部20は、空間S4の分離液Cの第1空間S1への流入を抑制するものであるが、第2隔壁部20が設けられていない場合であっても、例えば、第1空間S1に堆積した濃縮対象物Aに遮られて、空間S4の分離液Cの第1空間S1への流入が抑制される。また、第1空間S1に分離液Cが流入したとしても、第1空間S1で再度対象物A0から分離されて、空間S4に戻すこともできる。
【0061】
カバー部22は、搬送促進区間K1内の第2空間S2を形成する第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との間における、対象物投入口31Aと重なる領域に設けられている。このカバー部22は、対象物投入口31Aと重なる区間における第2空間S2の外周を覆うことで、対象物投入口31Aからの対象物A0が、第2空間S2に投入されることを抑制することができる。ただし、カバー部22は必須の構成ではない。例えば、第2空間S2に重畳しない位置に対象物投入口31Aを設ければ、対象物A0が、第2空間S2に投入されることが抑制できるため、カバー部22が不要となる。
【0062】
開閉弁24は、配管T1に設けられており、配管T1を介して、対象物投入口31Aに接続されているといえる。開閉弁24は、ケージング10内への対象物A0の投入を制御する弁であり、開状態となることで対象物A0をケージング10内に投入し、閉状態となることで対象物A0のケージング10内への投入を停止する。また、開閉弁24は、開度を調整することで、対象物A0の投入量を調整することも可能である。開閉弁24は、制御部29の制御により開閉が制御されて、対象物A0のケージング10内への投入を制御する。
【0063】
排出ポンプ26は、配管T2に設けられており、配管T2を介して、対象物排出口31Bに接続されている。排出ポンプ26は、停止時には、ケージング本体30の端部30Bまで移動してきた濃縮対象物Aをせき止めて、対象物排出口31Bからケージング本体30の外部への濃縮対象物Aの排出を抑える。また、排出ポンプ26は、駆動時には、配管T2を介してケージング本体30内を吸引することにより、ケージング本体30内の濃縮対象物Aを、対象物排出口31Bから強制的に排出することができる。排出ポンプ26は、制御部29の制御により、ケージング本体30内の濃縮対象物Aの排出量を調整することが可能となっている。
【0064】
傾斜調整部28は、ケージング10に取付けられている。傾斜調整部28は、制御部29の制御により、ケージング10の傾斜角度θを変化させる。ただし、傾斜調整部28は必須の構成でなく、傾斜角度θは一定であってもよい。
【0065】
制御部29は、分離装置1の動作を制御する制御装置である。制御部29は、モータによるスクリュー軸12の回転と、開閉弁24による対象物投入口31Aからの対象物A0の投入と、排出ポンプ26による対象物排出口31Bからの濃縮対象物Aの排出とを制御する。また、制御部29は、傾斜調整部28による傾斜角度θを制御してもよい。制御部29は、例えば、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータであり、CPUの演算により、分離装置1の動作を制御する。
【0066】
(分離装置の動作)
次に、上述のように構成された分離装置1の動作および対象物の挙動について説明する。
図3及び
図4は、本実施形態に係る分離装置の動作を説明するための模式図である。
図3は、分離装置1が動作して対象物A0の分離処理を行っている場合を示している。分離処理を行う際には、制御部29は、開閉弁24を開状態にして、排出ポンプ26を駆動して、スクリュー軸12を回転させる。開閉弁24が開状態となることで、
図3に示すように、対象物貯留槽120内に貯留されていた対象物A0は、配管T1を通って、対象物投入口31Aからケージング10(ケージング本体30)内に投入される。対象物投入口31Aの位置は搬送促進区間K1に重なるため、対象物投入口31Aからの対象物A0は、搬送促進区間K1の第1空間S1内に投入される。
【0067】
スクリュー軸12の回転に伴い、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16も回転する。第1空間S1内に投入された対象物A0は、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の回転により、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の表面に押されて、液体成分が分離されつつ、対象物排出口31B側に移動する。第1空間S1内の対象物A0の固形成分は、微小な間隙Hを通り難いため、第2空間S2への侵入が抑えられて、第1空間S1内を通って、対象物排出口31B側に移動する。第1空間S1を通って対象物排出口31B側に移動する対象物A0の固形成分は、第1空間S1に連通する空間S3に流入し、駆動している排出ポンプ26により、液体成分が分離された濃縮対象物Aとして、対象物排出口31Bから、ケージング10(ケージング本体30)の外部に(ここでは配管T2に)排出される。配管T2に排出された濃縮対象物Aは、濃縮対象物処理設備150に搬送される。なお、第1空間S1内の対象物A0の固形成分は、第1空間S1内を対象物排出口31B側に堆積するが、第1空間S1と空間S4とを遮断する第2隔壁部20により、空間S4への侵入がせき止められる。
【0068】
一方、対象物A0から分離された液体成分である分離液Cも、固体成分と共に第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16に押されて、第1空間S1内を対象物排出口31B側に移動する。分離液Cは、間隙Hを通過可能なので、間隙Hから第2空間S2内に流入する。さらに言えば、第1空間S1内の分離液Cは、対象物排出口31B側にある固体成分、すなわち濃縮対象物Aにせき止められて、対象物排出口31Bからの排出が抑制されて、間隙Hから第2空間S2内に流入する。分離液Cは、第2空間S2への流入量の増加に伴い、第2空間S2内での液位が上昇してゆき、第2空間S2に連通する空間S4にまで液位が到達する。そして、更に液位が上昇すると、分離液Cは、接続口31C及び分離液流入口40Aを介して連通する液位保持機構40にまで、液位が到達する。この段階で、ケージング本体30内は、満管状態となる。そして、液位保持機構40内への分離液Cの流入量の増加に伴い、液位保持機構40内での分離液Cの液位は上昇して、所定液位、すなわち分離液排出口40Bの位置まで到達して、ケージング10全体の分離液排出口40BよりZ2方向側が、満管状態となる。さらに分離液Cの流入量が増加することで、ケージング10(液位保持機構40)内の分離液Cが溢れて、分離液排出口40Bから、ケージング10(液位保持機構40)の外部に排出される。
【0069】
次に、
図4を用いて、分離装置1が動作を停止している場合、すなわち対象物A0の分離処理を停止している場合について説明する。
図4は、ケージング10の内部に濃縮対象物Aや分離液Cが残っている場合を例にしている。
図4に示すように、対象物A0の分離処理を行わない場合、制御部29は、開閉弁24を閉状態にして、排出ポンプ26の駆動を停止して、スクリュー軸12の回転を停止させる。開閉弁24が閉状態となることで、対象物貯留槽120内の対象物A0のケージング10(ケージング本体30)内への投入が停止される。また、スクリュー軸12の回転の停止に伴い、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の回転も停止する。また、排出ポンプ26の駆動が停止することで、対象物排出口31Bからの濃縮対象物Aの排出が停止する。従って、ケージング本体30内の濃縮対象物Aは、外部に排出されず、そのままケージング本体30内に残ったままとなる。また、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の回転停止により、分離処理が停止されるため、ケージング10内の第2空間S2内への分離液Cの流入も停止する。分離液Cの流入が停止することで、ケージング10内からの分離液Cの排出も、停止する。このように、分離装置1は、スクリュー軸12の回転が停止している際には、すなわち分離処理を行わない場合には、ケージング10からの分離液Cの排出を抑えるよう構成され、スクリュー軸12が回転している際には、すなわち分離処理を行っている場合には、ケージング10から分離液Cを排出するよう構成されている。ただし、スクリュー軸12の回転が停止している際にも、例えば重力による対象物A0の脱水が若干進行することで、分離液Cが分離されて、ケージング10内から分離液Cが排出されることもある。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る分離装置1は、液位保持機構40により、ケージング10内での分離液Cの液位が、所定液位(ここでは分離液排出40Bの位置)の位置に保持される。液位保持機構40は、ケージング10内での分離液Cの液位が所定液位より低い場合には、ケージング10内に分離液Cを滞留させたままとして、ケージング10からの分離液Cの排出を抑えている。そして、液位保持機構40は、ケージング10内での分離液Cの液位が所定液位に達した場合に、ケージング10内の分離液Cを排出させて、ケージング10内での分離液Cの液位が所定液位より高くなることを抑制している。そのため、分離装置1によると、分離液Cの排出を制御するポンプを設けなくても、濃縮対象物Aをケージング10内に滞留させたまま分離液Cを排出することが可能となり、適切に固液分離を行って、分離液Cを排出することができる。従って、本実施形態に係る分離装置1によると、ポンプの台数の増加を抑えて、適切に固液分離を行うことが可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係る分離装置のようなダブルスクリュー型の分離装置においては、従来、排出ポンプ26と、ケージング10へ対象物A0を投入する投入ポンプと、分離液Cをケージング10から排出するための分離液排出ポンプとが設けられていた。それに対し、本実施形態に係る分離装置1は、液位保持機構40を設けることで、少なくとも分離液排出ポンプが不要となり、ポンプの設置費用や電力消費量の増加を抑えつつ、固液分離率、すなわち汚泥濃縮率を向上させることができる。
【0072】
なお、分離装置1に設けるポンプは、本実施形態に示した、濃縮対象物Aの排出を制御する排出ポンプ26のみを設ける構成に限られない。例えば、配管T1内に、対象物貯留槽120からケージング10への対象物A0の投入を制御する投入ポンプを設ける構成であってもよい。あるいは、投入ポンプと排出ポンプ26の2台のポンプを設ける構成であってもよい。
【0073】
このうち、本実施形態に示した、排出ポンプ26のみを設ける構成とすれば、分離装置1が設けられていない分離システム100に分離装置1を設置する場合に、対象物貯留槽120に予め設けられていたポンプをそのまま排出ポンプ26として用いることができ、ポンプの増設を不要にできる。そのため、分離装置1が設けられていない場合に対し、ポンプの増設を抑えてコストや電力消費量の増加を抑えつつ、固液分離率、すなわち汚泥濃縮率をさらに向上させることができるため、より好ましいといえる。
【0074】
次に、分離装置1によって分離処理を行う際の、制御部29による制御について説明する。
図5は、第1実施形態における制御部による分離装置の制御を説明するためのフローチャートである。
図5に示すように、対象物A0の分離処理を行う際には、制御部29は、開閉弁24を開状態にする(ステップS10)。制御部29は、例えば、開閉弁24を全開状態にする。そして、制御部29は、排出ポンプ26の出力を設定して、設定した出力で排出ポンプを駆動する(ステップS12)。制御部29は、例えばユーザにより設定された、ケージング10から排出したい濃縮対象物Aの量の設定値を取得して、ケージング10からの濃縮対象物Aの排出量がその設定値となるように、排出ポンプ26の出力を設定する。本実施形態においては、ケージング10への対象物A0の投入量よりも、ケージング10からの濃縮対象物Aの排出量が少なくなるように、設定値を設定する。そして、制御部29は、予め設定した設定回転数で、スクリュー軸12を回転させる(ステップS14)。設定回転数は、任意の値であってよく、本実施形態では一定の回転数となる。
【0075】
ステップS10、S12、S14を実行することで、
図3で説明したように、ケージング10内で対象物A0を脱水して、濃縮対象物Aを対象物排出口31Bから排出し、分離液Cを分離液排出口40Bから排出することができる。なお、ステップS10、S12、S14の開始順番は、この順番に限られない。
【0076】
また、制御部29は、分離システム100の状態に基づき、分離装置1を制御してもよい。例えば、制御部29は、流量センサS1(
図1参照)が検出した分離システム100の状態に基づき、分離装置1を制御してよい。具体的には、制御部29は、流量センサS1が検出した、対象物貯留槽120のオーバーフロー排出口124からの上澄み液C0の排出量を取得する。制御部29は、上澄み液C0の排出量が所定の閾値より多くなる場合には、スクリュー軸12の回転数を上昇させる。上澄み液C0の排出量が多くなる場合には、対象物貯留槽120への前対象物A0aの投入量に対し、対象物貯留槽120からの対象物A0の引き抜き量が不十分になっているといえる。この場合にスクリュー軸12の回転数を上昇させることで、単位時間当たりの対象物A0から分離される分離液Cの量を増加させることが可能となり、結果として、ケージング10への対象物A0の投入量を増加させることができる。制御部29は、流量センサS1に所定時間毎に上澄み液C0の排出量を検出させて、上澄み液C0の排出量の検出値が閾値以下となるように、スクリュー軸12の回転数を上昇させてよい。
【0077】
また例えば、対象物貯留槽120内の固形成分が浮上して、対象物貯留槽120内において、固形成分が多い沈降汚泥と、固形成分が少ない中間液と、固形成分が多い浮上汚泥とに分離されることがある。このような場合には、固形成分が少ない中間液を対象物貯留槽120から引き抜くことが求められる。制御部29は、例えばこのような中間液を引き抜くために、水質センサS2(
図1参照)が検出した分離システム100の状態に基づき、分離装置1を制御してよい。具体的には、制御部29は、水質センサS2が検出した、対象物貯留槽120から分離装置1に供給される対象物A0の含水率を取得する。制御部29は、対象物A0の含水率が所定の閾値より高くなる場合には、開閉弁24を開状態としてスクリュー軸12を回転させつつ、排出ポンプ26の駆動を停止させる。対象物A0の含水率が高い場合には、対象物A0の固形成分が少なくなっているといえる。この場合に、開閉弁24を開状態としてスクリュー軸12を回転させたまま、排出ポンプ26の駆動を停止させることで、対象物排出口31Bからの排出を停止させつつ、対象物A0を、固形成分の少ない中間液として、分離液排出口40Bから排出することができる。制御部29は、水質センサS2に所定時間毎に対象物A0の含水率を検出させて、対象物A0の含水率の検出値が閾値以下となるまで、開閉弁24を開状態としてスクリュー軸12を回転させつつ、排出ポンプ26の駆動を停止させることを続けてよい。そして、対象物A0の含水率の検出値が閾値以下となったら、排出ポンプ26の駆動を再開してよい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る分離装置1は、ケージング10と、ケージング10の内部に設けられるスクリュー軸12と、第1スクリュー羽根14と、第2スクリュー羽根16とを備える。ケージング10は、対象物A0が投入される対象物投入口31Aと、脱水された対象物A0である濃縮対象物Aを排出する対象物排出口31Bと、液位保持機構40とが設けられる。液位保持機構40は、脱水により対象物A0から分離された分離液Cの液位を、対象物投入口31A及び対象物排出口31Bよりも鉛直方向上方(Z1方向側)となる所定液位に保つ。第1スクリュー羽根14は、スクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在する。第2スクリュー羽根16は、第1スクリュー羽根14に対してスクリュー軸12の延在方向Eに沿って所定間隔を隔てるように、スクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在する。
【0079】
本実施形態に係る分離装置1は、液位保持機構40により、ケージング10内での分離液Cを所定液位に保つことで、分離液Cの排出を制御するポンプを設けなくても、適切に固液分離を行って、分離液Cを排出することができる。従って、本実施形態に係る分離装置1によると、ポンプの台数の増加を抑えることによりコストの上昇を抑えつつ、適切に固液分離を行うことが可能となる。
【0080】
また、ケージング10は、対象物投入口31A及び対象物排出口31Bが設けられるケージング本体30と、液位保持機構40とを備える。液位保持機構40は、対象物投入口31Aよりも鉛直方向上方においてケージング本体30に接続されてケージング本体30から分離液Cが流入する分離液流入口40Aと、分離液流入口40Aよりも鉛直方向上方に設けられて分離液Cを排出する分離液排出口40Bとが設けられる。液位保持機構40は、ケージング10内での分離液Cの液位を、分離液排出口40Bの位置に保つ。この分離装置1は、ケージング本体30に接続される液位保持機構40により、ケージング10内での分離液Cの液位を、分離液排出口40Bの位置に保つ。これにより、分離装置1によると、ポンプの台数の増加を抑えることによりコストの上昇を抑えつつ、適切に固液分離を行うことが可能となる。また、ケージング本体30に接続される液位保持機構40を設けることで、分離液Cを、ケージング10外の流路(ここでは液体流路130)に容易に排出できる。
【0081】
また、分離装置1は、スクリュー軸12の回転を制御する制御部29を更に備える。制御部29は、スクリュー軸12の回転が停止している際には、ケージング10からの分離液Cの排出を抑え、スクリュー軸12が回転している際には、ケージング10から分離液Cを排出するよう構成される。そのため、分離装置1によると、ポンプの台数の増加を抑えることによりコストの上昇を抑えつつ、適切に固液分離を行うことが可能となる。
【0082】
また、分離装置1は、対象物排出口31Bに接続される排出ポンプ26を更に備える。排出ポンプ26は、停止時には、対象物排出口31Bからの濃縮対象物Aの排出を抑え、運転時には、対象物排出口31Bから濃縮対象物Aを排出させる。分離装置1は、排出ポンプ26を備えることで、ポンプの台数を少なくしたまま、適切に固液分離を行うことが可能となる。
【0083】
また、分離装置1は、スクリュー軸12の回転と、排出ポンプ26による濃縮対象物Aの排出と、対象物投入口31Aからの対象物A0の投入とを制御する制御部29を更に備える。分離装置1は、制御部29を備えることで、適切に固液分離を行うことが可能となる。
【0084】
また、本実施形態に係る分離システム100は、分離装置1と、対象物A0を貯留する対象物貯留槽120と、を備える。分離装置1は、対象物投入口31Aから、対象物貯留槽120に貯留された対象物A0が投入され、所定液位を、対象物貯留槽120内における対象物の液位(ここでは上澄み液C0の液位)よりも、鉛直方向の下方に設定している。分離システム100は、所定液位、すなわちケージング10内での分離液Cの液位を、対象物貯留槽120内における対象物の液位より低くすることで、分離液Cを排出するポンプを設けなくても、高低差(すなわちヘッド圧の差)により、分離液Cを適切に排出できる。
【0085】
また、対象物貯留槽120は、分離装置1に投入するための対象物A0が排出される排出口122と、排出口122よりも鉛直方向の上方に設けられて上澄み液C0が排出されるオーバーフロー排出口124と、が設けられる。対象物貯留槽120は、上澄み液C0の液位を、オーバーフロー排出口124の位置に保つ。分離システム100は、所定液位、すなわちケージング10内での分離液Cの液位を、対象物貯留槽120内における対象物の液位より低くすることで、分離液Cを排出するポンプを設けなくても、高低差(すなわちヘッド圧の差)により、分離液Cを適切に排出できる。さらに、オーバーフロー排出口124により、対象物貯留槽120の液位を一定に保つことができるため、対象物貯留槽120の液位の変動に合わせて分離装置1からの濃縮対象物Aの排出量を制御する必要がなくなるため、分離装置1の運転制御が複雑になることを抑制できる。
【0086】
また、分離システム100は、オーバーフロー排出口124より鉛直方向下方に設けられ、オーバーフロー排出口124から排出された上澄み液C0が流れる液体流路130を更に備える。分離装置1は、分離液Cが排出される分離液排出口40Bが、鉛直方向において、オーバーフロー排出口124と液体流路130との間に位置して、分離液排出口40Bから排出された分離液Cを、液体流路130に供給する。分離システム100は、分離液排出口40Bを、鉛直方向において、オーバーフロー排出口124と液体流路130との間の位置に設定することで、オーバーフロー排出口124とのヘッド圧の差によって排出した分離液Cを、液体流路130に適切に供給できる。
【0087】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る分離システム100aは、対象物貯留槽120aが、重力濃縮槽でない点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0088】
図6は、第2実施形態に係る分離システムの模式図である。
図6に示すように、第2実施形態に係る分離システム1aは、前段設備110と、対象物貯留槽120aと、液体流路130aと、液処理設備140と、分離装置1と、濃縮対象物処理設備150と、を備える。前段設備110と液処理設備140と分離装置1と濃縮対象物処理設備150との構成は、第1実施形態と同様である。
【0089】
対象物貯留槽120aは、前段設備110から投入された対象物A0を貯留する、いわゆる貯留槽である。対象物貯留槽120aは、排出口122aが設けられているが、第1実施形態のように上澄み液を排出するオーバーフロー排出口が設けられてない。排出口122aは、対象物貯留槽120のZ2方向側に設けられており、配管T1を介して、分離装置1の対象物投入口31Aに接続されている。対象物貯留槽120aは、前段設備110から投入された対象物A0を、排出口122aから排出する。
【0090】
対象物貯留槽120aは、オーバーフロー排出口が設けられてないため、貯留している対象物A0の液位(液面L0aのZ方向の位置)が変動する場合がある。分離装置1は、対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位が下がった場合においても、ケージング10内の分離液Cの液位が対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位より低く保たれるように、所定液位が設定されていることが好ましい。なお、対象物貯留槽120aには、対象物貯留槽120a内の対象物A0の液位を検出する液位センサS3が設けられていてよい。また、対象物貯留槽120aには、対象物貯留槽120aの内部に貯留された対象物A0を撹拌する撹拌装置126が設けられていてもよい。
【0091】
第2実施形態に係る液体流路130aは、第1実施形態とは異なり、対象物貯留槽120aからの上澄み液が供給されない。液体流路130aは、分離装置1の分離液排出口40BのZ2方向側に設けられている。そのため、液体流路130aには、分離液排出口40Bから排出された分離液Cが供給される。液体流路130aは、液処理設備140に接続されており、液体流路130aに供給された分離液Cを、液処理設備140に供給する。
【0092】
第2実施形態に係る分離装置1は、第1実施形態と同様の構成であり、第1実施形態と同様に動作する。ただし、第2実施形態に係る分離装置1は、対象物貯留槽120aの液位が変動することに起因して、制御部29による制御が、第1実施形態と異なる。以下、具体的に説明する。
【0093】
図7は、第2実施形態における制御部による分離装置の制御を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、対象物A0の分離処理を行う際には、第2実施形態に係る制御部29は、開閉弁24を開状態にする(ステップS10A)。制御部29は、例えば、開閉弁24を全開状態にする。そして、制御部29は、対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位が予め設定した設定液位範囲内に保たれるように、排出ポンプ26の出力を設定して、設定した出力で排出ポンプを駆動する(ステップS12A)。そして、制御部29は、予め設定した設定回転数で、スクリュー軸12を回転させる(ステップS14A)。
【0094】
ステップS12Aにおいては、制御部29は、液位センサS3が検出した、対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位を、逐次取得する。そして、制御部29は、対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位が設定液位範囲内に保たれるように、対象物排出口31Bから排出される濃縮対象物Aの排出量を設定する。制御部29は、設定した排出量で濃縮対象物Aが排出されるように、排出ポンプ26の出力を設定して、設定した出力で排出ポンプを駆動する。制御部29は、このように排出ポンプ26を駆動することで、対象物貯留槽120a内での対象物A0の液位を一定の範囲に保って、対象物A0を安定して処理できる。なお、制御部29は、液位センサS3が検出した対象物A0の液位が設定液位範囲の上限値より高い場合には、濃縮対象物Aの排出量、すなわち排出ポンプ26の出力を大きくして、液位センサS3が検出した対象物A0の液位が設定液位範囲の下限値より低い場合には、濃縮対象物Aの排出量、すなわち排出ポンプ26の出力を小さくしてもよい。
【0095】
また、制御部29は、第1実施形態と同様に、水質センサS2が検出した分離システム100の状態(対象物A0の含水率)に基づき、分離装置1を制御してもよい。
【0096】
第2実施形態で説明したように、分離装置1は、対象物貯留槽120aが重力濃縮槽でない場合であっても、ポンプの増設を抑えてコスト上昇を抑えつつ、対象物A0を適切に固液分離できる。さらに言えば、対象物貯留槽は、第1実施形態及び第2実施形態で示したものに限られず、例えば沈殿池や、凝集沈殿装置などであってもよい。
【0097】
また、第1実施形態及び第2実施形態に係る分離装置1は、スクリュー軸12、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16を備えた、いわゆるダブルスクリュー型の分離装置であった。ただし、分離装置1は、ダブルスクリュー型の分離装置であることに限られない。すなわち、分離装置1は、対象物A0が投入される対象物投入口31Aと、濃縮対象物Aを排出する対象物排出口31Bと、分離液Cの液位を、対象物投入口31A及び対象物排出口31Bよりも鉛直方向上方となる所定液位に保つ液位保持機構40と、が設けられるケージング10を備えていればよく、スクリュー軸12、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16を備えなくてもよい。この場合、ケージング10は、満管状態で、対象物A0を脱水可能に構成されることが好ましい。分離装置1は、ダブルスクリュー型の分離装置でない場合であっても、液位保持機構40が設けられるケージング10を備えることで、分離液Cの排出のためのポンプを不要としつつ、対象物A0を適切に固液分離することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
1 分離装置
10 ケージング
12 スクリュー軸
14 第1スクリュー羽根
16 第2スクリュー羽根
30 ケージング本体
31A 対象物投入口
31B 対象物排出口
31C 接続口
40 液位保持機構
40A 分離液流入口
40B 分離液排出口
100 分離システム
120 対象物貯留槽
A0 対象物
A 濃縮対象物
C 分離液