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特許7299123吊り荷の水平移動補助装置およびこれを備えたクレーン、吊り荷の水平移動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】吊り荷の水平移動補助装置およびこれを備えたクレーン、吊り荷の水平移動方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/12 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B66C23/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019177279
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054554
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】福川 裕也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-060895(JP,A)
【文献】特開平04-303390(JP,A)
【文献】特開昭59-143895(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01392223(GB,A)
【文献】中国特許出願公開第102131728(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0978467(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、
前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、
所定の回転軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、
前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、
前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、を有するクレーンに装着され、前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる水平移動動作を補助することが可能な吊り荷の水平移動補助装置であって、
前記起伏体を起伏させるための操作を受け付ける被操作部であって、前記起伏体の起立方向および倒伏方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている、被操作部と、
前記起伏体のうちの少なくとも一つの部位の起伏角を検出および出力することが可能な起伏角検出部と、
前記被操作部が受ける前記操作の操作方向および操作量に対応して前記起伏体が起伏するように前記起伏用ウインチの回転を制御する起伏ウインチ制御部と、
前記起伏ウインチ制御部によって制御される前記起伏用ウインチの前記回転軸回りの回転角度に対応する情報である第1回転角度情報を検出する第1回転角度情報検出部と、
前記起伏用ウインチが前記起伏ウインチ制御部によって制御されることに伴う前記起伏体の起伏動作の開始時に前記起伏角検出部によって検出される起伏角である初期起伏角と、前記起伏体の起伏動作中に前記第1回転角度情報検出部によって検出される前記第1回転角度情報とに基づいて、前記起伏体の起伏角の推定値である推定起伏角を演算する起伏角演算部と、
前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくとも前記起伏角演算部によって演算された前記推定起伏角と前記起伏体の長さに対応する長さ情報とに基づいて演算する制御量演算部と、
少なくとも前記制御量演算部によって演算された前記フィードフォワード制御量に基づいて、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における前記移動量を相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御する吊り荷ウインチ制御部と、
を備える、吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項2】
前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記起伏角演算部は、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応して前記起伏体の前記推定起伏角を演算する、請求項1に記載の吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項3】
前記クレーンの前記ベース部は、クレーン本体と前記クレーン本体に起伏可能に支持されたブームとを有し、前記起伏体は前記ブームの先端部に起伏可能に支持されたジブであって、前記起伏体支持機構は、前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に支持されたフロントストラットおよびリヤストラットを有し、
前記記憶部は、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺が前記起伏用ロープによって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラットおよび前記リヤストラットによって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブによって構成されている前記モデル情報を記憶し、
前記起伏角演算部は、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで前記ジブの前記推定起伏角を演算する、請求項2に記載の吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項4】
前記制御量演算部は、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて更に演算し、
前記吊り荷ウインチ制御部は、前記制御量演算部によって演算された前記フィードフォワード制御量および前記フィードバック制御量に基づいて、前記吊り荷ウインチの回転を制御する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項5】
前記吊り荷ウインチ制御部によって制御される前記吊り荷ウインチの回転角度に対応する情報である第2回転角度情報を検出する第2回転角度情報検出部を更に備え、
前記制御量演算部は、前記第2回転角度情報検出部によって検出された前記第2回転角度情報から吊り荷の現在の高さの推定値である推定高さを演算する一方、前記起伏角検出部によって検出される前記起伏体の前記起伏角と前記起伏体の前記長さ情報とに基づいて前記吊り荷の高さの目標値である目標高さを演算し、前記目標高さと前記推定高さとの差から前記偏差を演算し、当該演算された偏差に予め設定されたゲインを乗じることで前記フィードバック制御量を演算する、請求項4に記載の吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項6】
前記起伏角検出部は、前記起伏体基端部の前記起伏角を検出する第1起伏角検出部と、前記起伏体先端部の前記起伏角を検出する第2起伏角検出部と、を含み、
前記制御量演算部は、前記第1起伏角検出部および前記第2起伏角検出部によってそれぞれ検出された前記起伏角の平均値と前記起伏体の前記長さ情報とに基づいて前記目標高さを演算する、請求項5に記載の吊り荷の水平移動補助装置。
【請求項7】
ベース部と、
水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、
前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、
所定の回転中心軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、
前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、
前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、
前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる水平移動動作を補助することが可能な、請求項1乃至6の何れか1項に記載の吊り荷の水平移動補助装置と、
を備える、クレーン。
【請求項8】
ベース部と、
水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に 支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、
前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、
所定の回転軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、
前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、
前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、
前記起伏体を起伏させるための操作を受け付ける被操作部であって、前記起伏体の起立方向および倒伏方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている、被操作部と、
を有するクレーンにおいて、前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる吊り荷の水平移動方法であって、
前記起伏体先端部から垂下される前記吊り荷ロープに吊り荷を接続し、前記吊り荷ウインチによって前記吊り荷ロープを巻き取ることで前記吊り荷を地面から上方に離間させ空中に配置することと、
前記吊り荷が空中に配置された状態で、前記被操作部が受ける操作に応じて前記起伏用ウインチを制御して前記起伏体を起伏させる起伏動作の開始時に、前記起伏体のうちの少なくとも一つの部位の起伏角である初期起伏角を検出することと、
前記初期起伏角と、前記起伏体の起伏動作中における前記起伏用ウインチの前記回転軸回りの回転角度に対応する情報である第1回転角度情報とに基づいて、前記起伏体の起伏角の推定値である推定起伏角を演算することと、
前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくとも前記推定起伏角と前記起伏体の長さに対応する長さ情報とに基づいて演算することと、
前記フィードフォワード制御量に基づいて、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における前記移動量を相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御し、前記起伏体の起伏動作に応じて前記吊り荷を水平移動させることと、
を備える、吊り荷の水平移動方法。
【請求項9】
前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶する記憶部を準備することを更に備え、
前記起伏体の前記推定起伏角を演算することは、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応して前記起伏体の前記推定起伏角を演算することを含む、請求項8に記載の吊り荷の水平移動方法。
【請求項10】
前記クレーンの前記ベース部は、クレーン本体と前記クレーン本体に起伏可能に支持されたブームとを有し、前記起伏体は前記ブームの先端部に起伏可能に支持されたジブであって、前記起伏体支持機構は、前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に支持されたフロントストラットおよびリヤストラットを有し、
前記記憶部として、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺が前記起伏用ロープによって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラットおよび前記リヤストラットによって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブによって構成されている前記モデル情報を記憶するものを準備することと、
前記起伏体の前記推定起伏角を演算することは、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで前記ジブの前記推定起伏角を演算することを含む、請求項9に記載の吊り荷の水平移動方法。
【請求項11】
前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて演算することと、
前記フィードバック制御量に基づいて、前記吊り荷ウインチの回転を制御することと、を更に備える、請求項8乃至10の何れか1項に記載の吊り荷の水平移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り荷の水平移動補助装置およびこれを備えたクレーン、吊り荷の水平移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンとして、クレーン本体と、クレーン本体に起伏方向に回動可能に支持されたブームやジブなどの起伏体と、起伏用ロープと、起伏用ウインチと、吊り荷ロープと、吊り荷用ウインチと、を備えたクレーンが知られている。起伏用ロープは起伏体の先端部に接続されており、起伏用ウインチが起伏用ロープの巻き取り、繰り出しを行うと、起伏体が起伏する。また、吊り荷用ウインチから引き出された吊り荷ロープは、起伏体の先端部に配置されたシーブを介して起伏体の先端部から垂下される。吊り荷用ウインチが吊り荷ロープを巻き取ると、吊り荷ロープの先端部に接続されたフックによって吊り荷が吊り上げられる。
【0003】
特許文献1および2には、クレーンにおける吊り荷の水平移動制御(水平引き込み制御)方法がそれぞれ開示されている。当該方法では、ブームを操作するための操作入力部に入力される操作に応じて、制御部が起伏用ウインチおよび吊り荷用ウインチのそれぞれに駆動制御信号を入力する。この際、ブームの起伏に伴う吊り荷の上下移動を吊り荷ロープの巻き上げまたは巻き下げによって相殺し、吊り荷を水平移動させる。また、当該技術では、ブームに備えられた角度検出器がブームの起伏角を検出し、制御部が検出された前記起伏角に応じてフィードフォワード制御に基づいて、吊り荷ロープの巻き上げ量または巻き下げ量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-060897号公報
【文献】特開昭62-201790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、ブームの基端部に装着された角度検出器がブームの起伏角を検出する。ブームなどの起伏体は、長尺形状を有しているため、その撓みに起因して周期的な振動が発生しやすい。このような振動が発生すると、角度検出器が検出する起伏角の出力値も周期的な振動成分を含む。この結果、制御部が実行する吊り荷用ウインチのフィードフォワード制御の制御量にも周期的な振動成分が含まれ、吊り荷の挙動が不安定になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、吊り荷の水平移動を安定して行うことが可能な吊り荷の水平移動補助装置およびこれを備えたクレーン、吊り荷の水平移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る吊り荷の水平移動補助装置は、ベース部と、水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、所定の回転軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、を有するクレーンに装着され、前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる水平移動動作を補助することが可能な吊り荷の水平移動補助装置である。当該水平移動補助装置は、起伏体を起伏させるための操作を受け付ける被操作部であって、前記起伏体の起立方向および倒伏方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている、被操作部と、前記起伏体のうちの少なくとも一つの部位の起伏角を検出および出力することが可能な起伏角検出部と、前記被操作部が受ける前記操作の操作方向および操作量に対応して前記起伏体が起伏するように前記起伏用ウインチの回転を制御する起伏ウインチ制御部と、前記起伏ウインチ制御部によって制御される前記起伏用ウインチの前記回転軸回りの回転角度に対応する情報である第1回転角度情報を検出する第1回転角度情報検出部と、前記起伏用ウインチが前記起伏ウインチ制御部によって制御されることに伴う前記起伏体の起伏動作の開始時に前記起伏角検出部によって検出される起伏角である初期起伏角と、前記起伏体の起伏動作中に前記第1回転角度情報検出部によって検出される前記第1回転角度情報とに基づいて、前記起伏体の起伏角の推定値である推定起伏角を演算する起伏角演算部と、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくとも前記起伏角演算部によって演算された前記推定起伏角と前記起伏体の長さに対応する長さ情報とに基づいて演算する制御量演算部と、少なくとも前記制御量演算部によって演算された前記フィードフォワード制御量に基づいて、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における前記移動量を相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御する吊り荷ウインチ制御部と、を備える。
【0008】
本構成によれば、起伏角演算部が、起伏角検出部によって検出される初期起伏角と、起伏体の起伏動作中に第1回転角度情報検出部によって検出される起伏用ウインチの第1回転角度情報とに基づいて、起伏体の推定起伏角を演算する。そして、制御量演算部は、起伏角演算部によって演算された前記推定起伏角と起伏体の長さ情報とに基づいて吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードフォワード制御量を演算する。第1回転角度情報検出部が検出する起伏用ウインチの第1回転角度情報は、起伏角検出部が直接検出する起伏角と比較して、起伏体の撓みの影響を受けにくい。このため、吊り荷ウインチのフィードフォワード制御量の演算に起伏体の起伏角として前記推定起伏角を用いることで、前記起伏角検出部が検出する起伏角を用いる場合と比較して、前記制御量の中に起伏体の振動成分が含まれることが抑止される。この結果、起伏体の起伏動作に対応した吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて安定して相殺することが可能となり、吊り荷の水平移動を精度良く補助することが可能となる。
【0009】
上記の構成において、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶する記憶部を更に備え、前記起伏角演算部は、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応して前記起伏体の前記推定起伏角を演算することが望ましい。
【0010】
本構成によれば、前記起伏用ウインチが前記起伏用ロープの巻き取りまたは繰り出しを行うと、起伏角演算部は、複数の幾何学図形の形状変化から起伏体の推定起伏角を演算することが可能となる。
【0011】
上記の構成において、前記クレーンの前記ベース部は、クレーン本体と前記クレーン本体に起伏可能に支持されたブームとを有し、前記起伏体は前記ブームの先端部に起伏可能に支持されたジブであって、前記起伏体支持機構は、前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に支持されたフロントストラットおよびリヤストラットを有し、前記記憶部は、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺が前記起伏用ロープによって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラットおよび前記リヤストラットによって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブによって構成されている前記モデル情報を記憶し、前記起伏角演算部は、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで前記ジブの前記推定起伏角を演算することが望ましい。
【0012】
本構成によれば、起伏角演算部は、記憶部に記憶されたモデル情報の複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで、起伏用ウインチの回転に応じた起伏用ロープの長さの変化に基づいて、前記ジブの前記推定起伏角を容易に演算することができる。
【0013】
上記の構成において、前記制御量演算部は、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて更に演算し、前記吊り荷ウインチ制御部は、前記制御量演算部によって演算された前記フィードフォワード制御量および前記フィードバック制御量に基づいて、前記吊り荷ウインチの回転を制御することが望ましい。
【0014】
本構成によれば、上記のフィードフォワード制御に加え、フィードバック制御に基づいて吊り荷の高さを制御することができる。このため、フィードフォワード制御量の演算に含まれる誤差の影響やクレーンに搭載される機器の個体差の影響によって、吊り荷の高さに生じる偏差を低減することができる。
【0015】
上記の構成において、前記吊り荷ウインチ制御部によって制御される前記吊り荷ウインチの回転角度に対応する情報である第2回転角度情報を検出する第2回転角度情報検出部を更に備え、前記制御量演算部は、前記第2回転角度情報検出部によって検出された前記第2回転角度情報から吊り荷の現在の高さの推定値である推定高さを演算する一方、前記起伏角検出部によって検出される前記起伏体の前記起伏角と前記起伏体の前記長さ情報とに基づいて前記吊り荷の高さの目標値である目標高さを演算し、前記目標高さと前記推定高さとの差から前記偏差を演算し、当該演算された偏差に予め設定されたゲインを乗じることで前記フィードバック制御量を演算することが望ましい。
【0016】
本構成によれば、制御量演算部は、吊り荷ウインチの回転角度に基づく吊り荷の推定高さと起伏体の起伏角に基づく吊り荷の目標高さとの差から、吊り荷の偏差を容易に演算し、フィードバック制御量を演算することができる。
【0017】
上記の構成において、前記起伏角検出部は、前記起伏体基端部の前記起伏角を検出する第1起伏角検出部と、前記起伏体先端部の前記起伏角を検出する第2起伏角検出部と、を含み、前記制御量演算部は、前記第1起伏角検出部および前記第2起伏角検出部によってそれぞれ検出された前記起伏角の平均値と前記起伏体の前記長さ情報とに基づいて前記目標高さを演算することが望ましい。
【0018】
本構成によれば、起伏体に撓みが発生している場合でも、制御量演算部が、吊り荷の目標高さの演算に対する起伏体の撓みの影響を抑えながら、フィードバック制御量を精度良く演算することができる。
【0019】
本発明の他の局面に係るクレーンは、ベース部と、水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、所定の回転中心軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる水平移動動作を補助することが可能な、請求項1乃至6の何れか1項に記載の吊り荷の水平移動補助装置と、を備える。
【0020】
本構成によれば、吊り荷の水平移動を安定して行うことが可能なクレーンが提供される。
【0021】
また、本発明の他の局面に係る吊り荷の水平移動方法は、ベース部と、水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に前記ベース部に 支持された起伏体基端部と、当該起伏体基端部とは反対の起伏体先端部と、を有する起伏体と、前記起伏体先端部に接続される接続部と当該接続部に接続される起伏用ロープとを含み前記起伏体が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するように前記起伏体の前記起伏体先端部を支持する起伏体支持機構と、所定の回転軸回りに回転し、前記起伏体支持機構の前記起伏用ロープを巻き取ることで前記起伏体を前記ベース部に対して起立方向に回動させる一方、前記起伏用ロープを繰り出すことで前記起伏体を前記ベース部に対して倒伏方向に回動させることが可能な起伏用ウインチと、前記起伏体先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、前記吊り荷ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うための吊り荷ウインチと、前記起伏体を起伏させるための操作を受け付ける被操作部であって、前記起伏体の起立方向および倒伏方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている、被操作部と、を有するクレーンにおいて、前記吊り荷ロープに接続された吊り荷を空中で水平に移動させる吊り荷の水平移動方法であって、前記起伏体先端部から垂下される前記吊り荷ロープに吊り荷を接続し、前記吊り荷ウインチによって前記吊り荷ロープを巻き取ることで前記吊り荷を地面から上方に離間させ空中に配置することと、前記吊り荷が空中に配置された状態で、前記被操作部が受ける操作に応じて前記起伏用ウインチを制御して前記起伏体を起伏させる起伏動作の開始時に、前記起伏体のうちの少なくとも一つの部位の起伏角である初期起伏角を検出することと、前記初期起伏角と、前記起伏体の起伏動作中における前記起伏用ウインチの前記回転軸回りの回転角度に対応する情報である第1回転角度情報とに基づいて、前記起伏体の起伏角の推定値である推定起伏角を演算することと、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくとも前記推定起伏角と前記起伏体の長さに対応する長さ情報とに基づいて演算することと、前記フィードフォワード制御量に基づいて、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における前記移動量を相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御し、前記起伏体の起伏動作に応じて前記吊り荷を水平移動させることと、を備える。
【0022】
本方法によれば、吊り荷ウインチのフィードフォワード制御量の演算に起伏体の起伏角として前記推定起伏角を用いることで、前記制御量の中に起伏体の振動成分が含まれることが抑止される。この結果、起伏体の起伏動作に対応した吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて安定して相殺することが可能となり、吊り荷の水平移動を精度良く行うことが可能となる。
【0023】
上記の方法において、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶する記憶部を準備することを更に備え、前記起伏体の前記推定起伏角を演算することは、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応して前記起伏体の前記推定起伏角を演算することを含むことが望ましい。
【0024】
本方法によれば、前記起伏用ウインチが前記起伏用ロープの巻き取りまたは繰り出しを行うと、複数の幾何学図形の形状変化から起伏体の推定起伏角を演算することが可能となる。
【0025】
上記の方法において、前記クレーンの前記ベース部は、クレーン本体と前記クレーン本体に起伏可能に支持されたブームとを有し、前記起伏体は前記ブームの先端部に起伏可能に支持されたジブであって、前記起伏体支持機構は、前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に支持されたフロントストラットおよびリヤストラットを有し、前記記憶部として、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーンが複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺が前記起伏用ロープによって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラットおよび前記リヤストラットによって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブによって構成されている前記モデル情報を記憶するものを準備することと、前記起伏体の前記推定起伏角を演算することは、前記起伏用ウインチの回転に伴う前記起伏用ロープの長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで前記ジブの前記推定起伏角を演算することを含むことが望ましい。
【0026】
本方法によれば、記憶部に記憶されたモデル情報の複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで、起伏用ウインチの回転に応じた起伏用ロープの長さの変化に基づいて、前記ジブの前記推定起伏角を容易に演算することができる。
【0027】
上記の方法において、前記起伏体の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように前記吊り荷ウインチの回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて演算することと、前記フィードバック制御量に基づいて、前記吊り荷ウインチの回転を制御することと、を更に備えることが望ましい。
【0028】
本方法によれば、上記のフィードフォワード制御に加え、フィードバック制御に基づいて吊り荷の高さを制御することができる。このため、フィードフォワード制御量の演算に含まれる誤差の影響やクレーンに搭載される機器の個体差の影響によって、吊り荷の高さに生じる偏差を低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、吊り荷の水平移動を安定して行うことが可能な吊り荷の水平移動補助装置およびこれを備えたクレーン、吊り荷の水平移動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るクレーンの側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るクレーンの油圧回路図である。
図3】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動補助装置のブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいて実行される水平移動制御のフローチャートの一部である。
図5】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいて実行される水平移動制御のフローチャートの一部である。
図6】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御において吊り荷高さの偏差を算出するためのモデル図である。
図7】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図8】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図9】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図10】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図11】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図12】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図13】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図14】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図15】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御においてジブの起伏角を算出するためのモデル図である。
図16】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御におけるジブおよび吊り荷ロープの軌跡を示した図である。
図17】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御および他の水平移動制御におけるジブ起伏角速度の推移をそれぞれ示したグラフである。
図18】本発明の一実施形態に係るクレーンの水平移動制御および他の水平移動制御における吊り荷高さの偏差の推移をそれぞれ示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10(作業機械)の側面図である。なお、図1には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向や使用態様などを限定するものではない。なお、以下、「左右方向」あるいは「幅方向」と記す方向は、図1において紙面と直交する方向を示すものとする。
【0032】
クレーン10は、地面G上を走行可能な下部走行体101と、機体に相当し下部走行体101に旋回可能に支持された上部旋回体102と、上部旋回体102の前端部に配置されオペレータが搭乗することを許容するキャブ103と、ブーム104およびジブ105(起伏体)と、を備える。また、クレーン10は、ジブポイントシーブ106と、主巻ロープ107と、フック108と、ガイドシーブ109と、主巻ウインチ110と、ブーム起伏ウインチ111と、ジブ起伏ウインチ112と、ブーム起伏ロープ113と、ブームガイライン114と、ジブ起伏ロープ115と、ジブガイライン116および117と、ストラットリンク118と、下部スプレッダ121と、上部スプレッダ122と、下部スプレッダ123と、上部スプレッダ124と、フロントストラット125と、リヤストラット126と、ストラット支点部127と、ガントリ128と、を更に備える。
【0033】
ブーム104は、上部旋回体102に起伏方向に回動可能に支持されるブーム基端部と、長手方向においてブーム基端部とは反対側に配置されるブーム先端部と、を有する。本実施形態では、ブーム基端部に備えられたブームフット104Sが、上部旋回体102の不図示の軸支部に左右方向に延びる回転中心軸回りに回動可能に支持される。なお、図1に示されるブーム104は、いわゆるラチス型であり、ブームフット104Sを含む下部ブーム104Aと、一または複数の中間ブーム104B、104C、104Dと、上部ブーム104E(ブームヘッドともいう)とから構成される。なお、図1に示すように、上部ブーム104Eは、中間ブーム104Dよりも前方に突出した形状を有している。上部ブーム104Eの前側の基端部であって、中間ブーム104Dとの接続部分が、ブームヘッド基端部104Tと定義される。また、ブーム104の先端部(上端部)には、ガイドシーブ109が回転可能に支持されている。
【0034】
ジブ105は、ブーム104に起伏方向に回動可能に支持されるジブ基端部と、長手方向においてジブ基端部とは反対側に配置されるジブ先端部と、を有する。本実施形態では、ジブ基端部に備えられたジブフット105Sが、ブーム104の上部ブームの不図示の軸支部に左右方向に延びる回転中心軸回りに回動可能に支持される。なお、図1に示されるジブ105は、いわゆるラチス型であり、ジブフット105Sを含む下部ジブ105Aと、一または複数の中間ジブ105Bと、上部ジブ105Cとから構成される。
【0035】
なお、上部ブーム104Eの先端部(前端部)であってブームヘッド基端部104Tの上方かつ前方部分に上記のジブフット105Sが支持されている。また、上部ブーム104Eのうちジブフット105Sが支持される部分よりも後方であって、ガイドシーブ109の前方部分にはストラット支点部127が配置されている。なお、上部旋回体102およびブーム104は、本実施形態におけるベース部10Aを構成する。そして、ジブ105は、水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能にベース部10Aに支持された前述のジブ基端部(起伏体基端部)と、当該ジブ基端部とは反対のジブ先端部(起伏体先端部)と、を有する。
【0036】
フロントストラット125は、ジブ105の後方においてストラット支点部127に回動可能に支持されている。同様に、リヤストラット126は、フロントストラット125の後方においてストラット支点部127に回動可能に支持されている。フロントストラット125の回動端部125S(先端部)およびリヤストラット126の回動端部126S(先端部)は、ストラットリンク118によって互いに接続されている。図1に示すように、フロントストラット125、リヤストラット126およびストラットリンク118は三角形状を形成しており、この三角形は固定されたまま、ストラット支点部127を支点として回動する。また、ジブガイライン117は、フロントストラット125の回動端部と、ジブ105(上部ジブ105C)の先端部とを互いに接続している。
【0037】
ガントリ128は、ブーム104の後方で上部旋回体102に支持されている。下部スプレッダ123は、ガントリ128の先端部に接続されており、不図示の下部シーブブロックを有する。下部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
【0038】
上部スプレッダ124は、下部スプレッダ123の上方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ124は、ブームガイライン114を介してブーム104の先端部に接続される。上部スプレッダ124は、不図示の上部シーブブロックを有する。上部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。なお、ブームガイライン114は、図1の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ブームガイライン114は、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などを含む。後記の他のガイラインも同様である。
【0039】
ブーム起伏ロープ113は、ブーム起伏ウインチ111から引き出され、下部スプレッダ123の下部シーブブロックと上部スプレッダ124の上部シーブブロックとの間で複数回掛け回される。なお、下部シーブブロックおよび上部シーブブロックに掛け回された後のブーム起伏ロープ113の先端部は、ガントリ128の先端部に固定される。
【0040】
ブーム起伏ウインチ111は、上部旋回体102の後端部に配置される。ブーム起伏ウインチ111は、ブーム起伏ロープ113の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ123の下部シーブブロックと上部スプレッダ124の上部シーブブロックとの間の距離を変化させ、ブーム104をガントリ128(上部旋回体102)に対して相対的に回動させながらブーム104を起伏させる。
【0041】
下部スプレッダ121は、上部旋回体102のうちキャブ103の後側部分に支持されており、不図示の下部シーブブロックを有する。下部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
【0042】
上部スプレッダ122は、下部スプレッダ121の上方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ122は、ジブガイライン116を介してリヤストラット126の回動端部126Sに接続される。上部スプレッダ122は、不図示の上部シーブブロックを有する。上部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。なお、ジブガイライン116は、図1の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。
【0043】
ジブ起伏ロープ115は、ジブ起伏ウインチ112から引き出され、下部スプレッダ121の下部シーブブロックと上部スプレッダ122の上部シーブブロックとの間で複数回掛け回される。なお、下部シーブブロックおよび上部シーブブロックに掛け回された後のジブ起伏ロープ115の先端部は、上部旋回体102のうち下部スプレッダ121の近傍に固定される。
【0044】
ジブ起伏ウインチ112(起伏用ウインチ)は、ブーム起伏ウインチ111の前側において上部旋回体102に配置され、左右方向(水平方向)に延びる回転軸回りに回転する。ジブ起伏ウインチ112は、ジブ起伏ロープ115の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ121の下部シーブブロックと上部スプレッダ122の上部シーブブロックとの間の距離を変化させ、フロントストラット125、リヤストラット126およびストラットリンク118の構造体を一体でストラット支点部127回りに回動させる。この結果、フロントストラット125の回動端部125Sにジブガイライン117を介して接続されたジブ105がジブフット105S回りに起伏する。
【0045】
なお、本実施形態では、ブーム起伏ロープ113、下部スプレッダ121、上部スプレッダ122、ジブガイライン116、ジブガイライン117、ストラットリンク118、フロントストラット125およびリヤストラット126が、起伏体支持機構10Bを構成する。当該起伏体支持機構10Bは、ジブ105のジブ先端部に接続されるジブガイライン117(接続部)と当該ジブガイライン117に接続されるジブ起伏ロープ115(起伏用ロープ)とを含み、ジブ105が前記回転中心軸回りに起伏することを許容するようにジブ105の前記起伏体先端部を支持する。そして、ジブ起伏ウインチ112は、起伏体支持機構10Bのジブ起伏ロープ115を巻き取ることでジブ105をベース部10Aに対して起立方向に回動させる一方、ジブ起伏ロープ115を繰り出すことでジブ105をベース部10Aに対して倒伏方向に回動させる。
【0046】
主巻ウインチ110は、吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行うために上部旋回体102のうちジブ起伏ウインチ112の前側部分に搭載される。なお、主巻ウインチ110は、ブーム104に搭載されてもよい。
【0047】
主巻ウインチ110は、主巻ロープ107の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行う。この主巻について、ブーム104のブーム先端部には前述のガイドシーブ109が回転可能に設けられるとともに、ジブ105の先端部にはガイドシーブ105Tが回転可能に設けられている。さらに、ジブ105の先端部にはガイドシーブ105Tに隣接する位置に複数のジブポイントシーブ106が設けられている。ジブポイントシーブ106から垂下された主巻ロープ107には、吊り荷に接続されるフック108が連結されている。そして、主巻ウインチ110が主巻ロープ107の巻き取りや繰り出しを行うと、フック108を介して吊り荷の巻き上げ及び巻き下げが行われる。
【0048】
クレーン10は、水平移動補助装置10Cを更に有する。水平移動補助装置10Cは、主巻ロープ107に接続された吊り荷を空中で水平に移動させる水平移動動作を補助することが可能とされている。図2は、本実施形態に係るクレーン10の油圧回路図である。図3は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動補助装置10Cのブロック図である。
【0049】
図2を参照して、クレーン10は、更に、油圧ポンプ21と、ジブ起伏用制御弁22Aと、主巻用制御弁22Bと、ジブ起伏ウインチ112を回転駆動させるためのジブ起伏用油圧モータ23Aと、主巻ウインチ110を回転駆動させるための主巻用油圧モータ23Bと、電磁比例減圧弁26Aと、電磁比例減圧弁26Bと、電磁比例減圧弁27Aと、電磁比例減圧弁27Bと、電磁切替弁28と、電磁切替弁29と、ジブ起伏用リモコン弁32Aと、主巻用リモコン弁32Bと、ジブ操作用レバー33Aと、主巻操作用レバー33Bと、パイロット油圧ポンプ34と、パイロット圧力計36と、パイロット圧力計37と、を有する。
【0050】
油圧ポンプ21は、上部旋回体102に搭載された不図示のエンジンによって回転駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ21から吐出された作動油は、ジブ起伏用制御弁22Aを介してジブ起伏用油圧モータ23Aに供給される。ジブ起伏用制御弁22Aは、ジブ起伏用油圧モータ23Aの2つのポートのうちの一方のポートに作動油を選択的にかつその流量を制御しながら供給することで、ジブ起伏用油圧モータ23Aを正逆方向にそれぞれ回転させる。この結果、ジブ起伏用油圧モータ23Aによってジブ起伏ウインチ112が正逆方向にそれぞれ回転駆動され、ジブ105が起伏する。
【0051】
また、油圧ポンプ21から吐出された作動油は、主巻用制御弁22Bを介して主巻用油圧モータ23Bに供給される。主巻用制御弁22Bは、主巻用油圧モータ23Bの2つのポートのうちの一方のポートに作動油を選択的にかつその流量を制御しながら供給することで、主巻用油圧モータ23Bを正逆方向にそれぞれ回転させる。この結果、主巻用油圧モータ23Bによって主巻ウインチ110が正逆方向にそれぞれ回転駆動され、主巻ロープ107の巻き取り、繰り出しが行われる。
【0052】
ジブ起伏用制御弁22Aおよび主巻用制御弁22Bは、一対のパイロットポートをそれぞれ有する。ジブ起伏用制御弁22Aの一対のパイロットポートには、電磁比例減圧弁26Aの二次側回路24Aと、電磁比例減圧弁27Aの二次側回路25Aとがそれぞれ接続されている。同様に、主巻用制御弁22Bの一対のパイロットポートには、電磁比例減圧弁26Bの二次側回路24Bと、電磁比例減圧弁27Bの二次側回路25Bとがそれぞれ接続されている。
【0053】
一方、電磁比例減圧弁26Aおよび電磁比例減圧弁27Aの一次側回路には、ジブ起伏用リモコン弁32Aの二次側回路30Aおよび二次側回路31Aがそれぞれ接続されている。当該ジブ起伏用リモコン弁32Aは、不図示の一対の可変減圧弁を有しており、ジブ操作用レバー33Aの操作方向および操作量に応じて、二次側回路30Aまたは二次側回路30Bに入力する二次圧力を制御する。ジブ操作用レバー33A(被操作部)は、ジブ105を起伏させるための操作を受け付けるものであって、ジブ105の起立方向および倒伏方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている。
【0054】
また、ジブ起伏用リモコン弁32Aの二次側回路30Aおよび二次側回路31Aには、それぞれ、パイロット圧力計36およびパイロット圧力計37が配置されている。当該パイロット圧力計36、37は、それぞれ、ジブ起伏用リモコン弁32Aからの二次圧力を検出する。この結果、パイロット圧力計36、37は、ジブ操作用レバー33Aが受ける操作方向および操作量を検出する。
【0055】
一方、電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bの一次側回路は、電磁切替弁28および電磁切替弁29の二次側回路にそれぞれ接続されている。また、電磁切替弁28および電磁切替弁29の一次側回路には、主巻用リモコン弁32Bの二次側回路30Bおよび二次側回路31Bのうちの対応する一方と、前述のエンジンによって駆動されるパイロット油圧ポンプ34の二次側回路35とが、互いに切替自在に接続されている。主巻用リモコン弁32Bは、ジブ起伏用リモコン弁32Aと同様に、不図示の一対の可変減圧弁を有しており、主巻操作用レバー33Bが受ける操作方向および操作量に応じて、二次側回路30Bまたは二次側回路31Bに入力する二次圧力を制御する。主巻操作用レバー33Bは、主巻ウインチ110を回転させるための操作を受け付けるものであって、主巻ロープ107の巻き取り方向および繰り出し方向に対応した前記操作の操作方向および操作量がそれぞれ可変とされている。なお、吊り荷の水平移動制御中は、主巻操作用レバー33Bが受ける操作は無視される。また、図2の各回路に配置されたCVは、チェック弁を示している。
【0056】
なお、図2では、ジブ起伏用油圧モータ23Aによってジブ起伏ウインチ112を回転駆動させ、主巻用油圧モータ23Bによって主巻ウインチ110を回転駆動させるための油圧回路について示しているが、ジブ起伏用油圧モータ23Aによるジブ起伏ウインチ112の駆動構造と同様の回路が、ブーム起伏ウインチ111を回転駆動させるために設けられている。図2では、ブーム起伏ウインチ111を回転駆動させるための当該構造の図示を省略している。
【0057】
図3を参照して、クレーン10の水平移動補助装置10Cは、第1回転角検出部52Aと、第2回転角検出部52Bと、第1ジブ角度計53と、第2ジブ角度計54と、制御部90と、を更に有する。
【0058】
第1回転角検出部52A(第1回転角度情報検出部)は、ジブ起伏ウインチ112の不図示の回転軸に装着されており、ジブ起伏ウインチ112の前記回転軸回りの回転角度(回転量、第1回転角度情報)を検出および出力する。第1回転角検出部52Aによって検出されたジブ起伏ウインチ112の回転角は、後記の制御部90のジブ起伏角演算部902によって参照される。
【0059】
第2回転角検出部52B(第2回転角度情報検出部)は、主巻ウインチ110の不図示の回転軸に装着されており、主巻ウインチ110の回転角度(回転量、第2回転角度情報)を検出および出力する。第2回転角検出部52Bによって検出された主巻ウインチ110の回転角は、後記の制御部90の主巻ウインチ指令値演算部903によって参照される。
【0060】
第1ジブ角度計53(起伏角検出部、第1起伏角検出部)は、ジブ105の基端部に装着されており、当該基端部におけるジブ105の起伏角(対地角)を検出および出力する。第1ジブ角度計53によって検出されるジブ105の起伏角は、ジブ起伏角演算部902によって参照される。
【0061】
第2ジブ角度計54(起伏角検出部、第2起伏角検出部)は、ジブ105の先端部に装着されており、当該先端部におけるジブ105の起伏角を検出および出力する。第2ジブ角度計54によって検出されるジブ105の起伏角も、ジブ起伏角演算部902によって参照される。なお、第2ジブ角度計54は、後記の変形実施形態において使用されるため、本実施形態では必ずしも必要ではない。すなわち、本発明に係る起伏角検出部は、ジブ105のうちの少なくとも一つの部位の起伏角を検出すればよい。
【0062】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部90には、ジブ操作用レバー33A、主巻操作用レバー33B、第1回転角検出部52A、第2回転角検出部52B、第1ジブ角度計53、第2ジブ角度計54に加え、主巻ウインチ110、ジブ起伏ウインチ112を駆動する油圧回路の一部の部材が電気的に接続されている。制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、駆動制御部901、ジブ起伏角演算部902、主巻ウインチ指令値演算部903、記憶部904および判定部905を備えるように機能する。
【0063】
駆動制御部901(起伏ウインチ制御部、吊り荷ウインチ制御部)は、主巻ウインチ110、ジブ起伏ウインチ112およびその他の駆動機構を駆動するための駆動指令信号を出力する。特に、吊り荷の水平移動制御では、駆動制御部901は、ジブ操作用レバー33Aが受ける前記操作の操作方向および操作量に対応してジブ105が起伏するようにジブ起伏ウインチ112の回転を制御する。また、駆動制御部901は、少なくとも主巻ウインチ指令値演算部903によって演算された後記のフィードフォワード制御量およびフィードバック制御量に基づいて、ジブ105の起伏動作に対応した吊り荷の上下方向における移動量を相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御する。なお、本実施形態において、主巻ウインチ110およびジブ起伏ウインチ112に対する駆動指令信号は、図2の電磁比例減圧弁26A、電磁比例減圧弁26B、電磁比例減圧弁27Aおよび電磁比例減圧弁27Bに入力される。
【0064】
ジブ起伏角演算部902(起伏角演算部)は、吊り荷の水平移動制御において、ジブ105の起伏角(対地角)を演算する。より詳しくは、ジブ起伏角演算部902は、ジブ起伏ウインチ112が駆動制御部901によって制御されることに伴うジブ105の起伏動作の開始時に第1ジブ角度計53によって検出されたジブ105の起伏角である初期起伏角と、ジブ105の起伏動作中に第1回転角検出部52Aによって検出されるジブ起伏ウインチ112の回転角度(第1回転角度情報)とに基づいて、ジブ105の起伏角の推定値である推定起伏角を演算する。
【0065】
主巻ウインチ指令値演算部903(制御量演算部)は、吊り荷の水平移動制御において、ジブ起伏角演算部902によって演算されるジブ105の起伏角に基づいて、主巻ウインチ110を回転させるための指令値(制御量)を演算する。より詳しくは、主巻ウインチ指令値演算部903は、ジブ105の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくともジブ起伏角演算部902によって演算された前記推定起伏角とジブ105の長さL(長さ情報)とに基づいて演算する。また、主巻ウインチ指令値演算部903は、ジブ105の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて演算する。なお、上記の各制御量の演算については、後記で詳述する。
【0066】
記憶部904は、ジブ起伏角演算部902および主巻ウインチ指令値演算部903によって参照される各種の演算式、閾値、定数などを記憶している。また、記憶部904は、
後述のように、ジブ105の回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーン10が複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶している(図6参照)。当該モデル情報では、前記複数の三角形のうちの一の三角形の一辺がジブ起伏ロープ115によって構成され、かつ、前記一の三角形とは異なる他の三角形の一辺がジブ105(ジブ105の中心線)によって構成されている。
【0067】
判定部905は、後記の水平移動制御における各種の判定動作を実行する。
【0068】
<吊り荷の水平移動制御について>
クレーン10においてフック108に接続された吊り荷が地面から吊り上げられた後、当該吊り荷を前後方向(水平方向)に沿って移動させる作業(水平引き込み作業、水平押し出し作業)を行う場合、オペレータはキャブ103(図1)内の不図示の操作パネルを操作し、水平移動制御を実行するための操作を入力する。これに伴って、図2の電磁切替弁28および電磁切替弁29は、図の上側の位置にそれぞれ切り替えられる。この結果、パイロット油圧ポンプ34の二次側回路35から電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bの一次側にパイロット油が供給される。この際、主巻操作用レバー33Bに入力される操作に関わらず、上記の動作が強制的に実行される。
【0069】
次に、オペレータがジブ操作用レバー33Aを操作すると、その操作方向および操作量に応じて、ジブ起伏用リモコン弁32Aから電磁比例減圧弁26Aおよび電磁比例減圧弁27Aにパイロット油が供給される。この際、電磁比例減圧弁26A、電磁比例減圧弁27A、電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bは、制御部90の駆動制御部901から入力される指令信号に応じて作動し、二次側回路24A、二次側回路25A、二次側回路24Bおよび二次側回路25Bのパイロット圧が調整される。これらのパイロット圧は、ジブ起伏用制御弁22Aおよび主巻用制御弁22Bのパイロットポートにそれぞれ供給される。この結果、ジブ起伏用制御弁22Aが図2の上側のジブ起立用位置または図2の下側のジブ倒伏用位置に切り替えられ、油圧ポンプ21から吐出された作動油がジブ起伏用油圧モータ23Aの所定のポートに供給される。この結果、ジブ起伏用油圧モータ23Aが所定の方向に回転し、ジブ起伏ウインチ112によるジブ起伏ロープ115の巻き取り、繰り出しが行われる。
【0070】
一方、図2の主巻用制御弁22Bは、制御部90の駆動制御部901からの信号に基づく電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bの動作に応じて、図2の上側の巻き上げ用位置または図2の下側の巻き下げ用位置に切り替えられ、油圧ポンプ21から吐出された作動油が主巻用油圧モータ23Bの所定のポートに供給される。この結果、主巻用油圧モータ23Bが所定の方向に回転し、主巻ウインチ110による主巻ロープ107の巻き取り、繰り出しが行われ、フック108に接続された吊り荷の巻き上げ、巻き下げが行われる。
【0071】
上記のように、ジブ105の先端から垂下された主巻ロープ107にフック108を介して吊り荷が接続され、オペレータの操作に応じてジブ105が起伏すると、その起伏に起因する吊り荷の上下移動を相殺するように、主巻ウインチ110が主巻ロープ107の巻き上げ、巻き下げを行うことで、吊り荷の高さを一定に保ちながら当該吊り荷を前後に移動(水平移動)させることができる。本実施形態では、ジブ105の起伏動作に応じて制御部90が主巻ウインチ110を制御することで、安定した吊り荷の水平移動を行うことができる。なお、当該制御において、ジブ起伏用油圧モータ23Aおよび主巻用油圧モータ23Bの回転数は、電磁比例減圧弁26A、電磁比例減圧弁27A、電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bに入力される指令信号の大きさによって制御される。
【0072】
図4および図5は、本実施形態に係るクレーン10において実行される吊り荷の水平移動制御モードのフローチャートの一部である。なお、図4および図5は各図の「A」および「B」において互いに接続された1つのフローチャートを示している。
【0073】
クレーン10の使用が開始されると、制御部90は、第1回転角検出部52A、第2回転角検出部52B、第1ジブ角度計53および第2ジブ角度計54の出力値を、たとえば0.1秒間隔で取り込み、記憶部904に随時記憶する(図4のステップS01)。次に、判定部905が、水平移動制御モードが実行されているか否かを判定する(ステップS02)。前述のように、オペレータがキャブ103(図1)内の不図示の操作パネルを操作し、水平移動制御モードを実行するための操作を予め入力していると(ステップS02でYES)、判定部905は、前のフローにおいて水平移動制御モードが実行されていたか否かを更に判定する(ステップS03)。前のフローにおいて水平移動制御モードが実行されていた場合(ステップS03でYES)、ジブ起伏角演算部902がジブ起伏用指令値の演算を行う(ステップS04)。ここでは、オペレータがジブ操作用レバー33Aを操作する操作方向および操作量に応じて、電磁比例減圧弁26Aおよび電磁比例減圧弁27Aに入力される指令信号を決定するための指令値が演算される。この際、ジブ起伏用リモコン弁32Aを介して二次側回路30Aまたは二次側回路31Aに供給される二次圧に所定のレートリミッタ、すなわち、時間当たりの変化量を線形に制限する特性が適用された上で、上記の指令値が演算されてもよい。これによって、ジブ105が起伏する。
【0074】
なお、図4のステップS02において、オペレータの操作に基づいた水平移動制御モードが実行されていない場合(ステップS02でNO)、ステップS03以降の各ステップは実行されない。また、ステップS03において、前フローにおいて水平移動制御モードが実行されていない場合(ステップS03でNO)、判定部905は、不図示のエンジンの状態などに基づいてクレーン10の動作が停止しているか否かを判定する(ステップS22)。そして、クレーン10の動作が停止している場合(ステップS22でYES)、ステップS21と同様に、ステップS03以降の各ステップは実行されない。一方、クレーン10の動作が停止していない場合(ステップS22でNO)、現在のフローが今回の水平移動制御モードにおける最初のフローであるため、第1ジブ角度計5353が検出する現在のジブ105の起伏角を初期ジブ起伏角として記憶部904に記憶させる(ステップS24)。
【0075】
一方、ステップS04においてジブ起伏用指令値が演算されると、主巻ウインチ指令値演算部903が吊り荷高さの変化量を演算する(ステップS05)。なお、ステップS05からステップS07は、吊り荷の高さに基づいて主巻ウインチ110のフィードバック制御を実行するためのステップである。図6は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動制御において吊り荷の高さの偏差Hbを算出するためのモデル図である。図6では、吊り荷の水平移動制御において、ジブ105の起伏角(対地角)がθからθ’に変化している様子を示している。ステップS05では、主巻ウインチ指令値演算部903が、第2回転角検出部52Bによって検出される主巻ウインチ110の回転角から、主巻ロープ107の巻き取り、繰り出し量に基づく吊り荷の高さの変化量Δh(吊り荷の高さの推定値:推定高さ)を演算する。次に、図6を参照して、主巻ウインチ指令値演算部903は、吊り荷の高さの目標値h’を以下の式1に基づいて演算する。
【0076】
h’=L×(sinθ’―sinθ) ・・・(式1)
なお、図6に示すようにLはジブ105の長さであり、θは水平移動制御開始時のジブ105の起伏角であり、θ’は第1ジブ角度計53によって検出される現在のジブ105の起伏角である。このようにして演算された目標値h’と、前述の吊り荷の高さの変化量Δhとから、主巻ウインチ指令値演算部903は、以下の式2に基づいて吊り荷高さの偏差Hbを演算する(ステップS06)。
【0077】
Hb=h’-Δh ・・・(式2)
偏差Hbは、ジブ105の起伏角の変化から推定される吊り荷の高さ(目標高さ)と、主巻ロープ107の巻き取り、繰りだし量に基づく吊り荷の高さ(推定高さ)との間の差を意味する。なお、図6において、距離h0およびh1は、それぞれ、ジブ105の起伏角がθおよびθ’の場合のジブ105の先端部から吊り荷までの距離を意味し、h1=h0+Δhの関係を満たしている。
【0078】
更に、主巻ウインチ指令値演算部903は、上記の偏差Hbから以下の式3に基づいて、フィードバック制御量ubを演算する(ステップS07)。
【0079】
ub=Kp×Hb+Ki×∫(Hb)dt
=Kp×Hb+Ki×(Hb)/s ・・・(式3)
なお、KpおよびKiは所定のフィードバックゲインであり記憶部904に予め格納されている。また、sはラプラス演算子を示している。このように演算されたフィードバック制御量ubは、後記のフィードフォワード制御量ufに加算され、主巻ウインチ110を回転駆動させるための指令値の算出に適用される。
【0080】
次に、ジブ起伏角演算部902が、ジブ105の起伏角(推定起伏角)を演算する(ステップS08)。なお、ステップS08からステップS09は、ジブ105の起伏角に基づいて主巻ウインチ110のフィードフォワード制御を実行するためのステップである。図7乃至図15は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動制御においてジブ105の起伏角を算出するためのモデル図である。
【0081】
本実施形態では、図7に示すように、ジブ起伏角演算部902がジブ105の起伏角を演算するために、クレーン10の構造が簡略された演算用モデルが記憶部904に予め準備されている。当該演算用モデルは、ジブ起伏ウインチ112によるジブ起伏ロープ115の巻き取り、繰り出し量から、ジブ105の起伏角を演算するために使用される。以下に、ジブ起伏角演算部902が実行するその演算手順を説明する。
【0082】
図1および図7を参照して、本モデルでは、クレーン10が、2つの四角形と2つの三角形とから構成される。すなわち、1つ目の四角形は、ブームフット104S、ブームヘッド基端部104T、ストラット支点部127および回動端部126Sを頂点とする四角形である。また、2つ目の四角形は、ジブポイントシーブ106と、ジブフット105Sと、ストラット支点部127と、回動端部125Sとを頂点とする四角形である。なお、これらの2つの四角形は後記のとおりそれぞれ2つの三角形に分割される。また、1つ目の三角形は、ジブフット105Sと、ブームヘッド基端部104Tと、ストラット支点部127とを頂点とする三角形であり、2つ目の三角形は、回動端部125Sと、ストラット支点部127と、回動端部126Sとを頂点とする三角形である。なお、図1に示すように、下部スプレッダ121はブームフット104Sに近い位置に配置されているため、本モデルでは、下部スプレッダ121がブームフット104Sに位置すると仮定している。下部スプレッダ121がブームフット104Sから離れている場合には、両者の距離だけ図7のモデルにおけるブームフット104Sを下方に移動させることで、同様のモデルを構築することができる。
【0083】
一例として、ジブ105が起立方向に回動され、吊り荷の水平引き作業(水平移動作業)が行われると仮定すると、図7において、ジブ起伏角演算部902は、ジブ起伏ウインチ112によるジブ起伏ロープ115の巻き取り量からブームフット104Sと回動端部126Sとの距離L1を演算する。すなわち、ジブ105の起立動作(ジブ起伏ウインチ112の回転動作)に伴う距離L1の変化量をΔL1(cm)とすると、以下の式4が満たされる。
【0084】
ΔL1=(θ_drum-θ_drum_old)×r_drum/B+L1_old ・・・(式4)
なお、θ_drum(rad)は、第1回転角検出部52Aによって検出される現在のジブ起伏ウインチ112の回転角であり、θ_drum_old(rad)は、前回のフローにおいて第1回転角検出部52Aによって検出されたジブ起伏ウインチ112の回転角である。更に、r_drum(cm)は、ジブ起伏ウインチ112の回転半径であり、Bは、下部スプレッダ121と上部スプレッダ122との間におけるジブ起伏ロープ115の掛け本数である。更に、L1_old(cm)は、前回のフローにおいて演算された距離L1である。式4から、現在の距離L1は、以下の式5によって算出される。
【0085】
L1=L1_1st+ΔL1 ・・・(式5)
なお、L1_1st(cm)は、水平移動制御開始時の距離L1である。
【0086】
図8を参照して、ジブ起伏角演算部902は、上記のように距離L1を算出すると、当該距離L1に加え、それぞれ予め記憶部904に格納されているリヤストラット126の長さL2(cm)、ストラット支点部127とブームフット104Sとの距離L3(cm)とから、三角関数に基づき角度θ1を算出する。
【0087】
次に、図9を参照して、ジブ起伏角演算部902は、距離L3に加え、それぞれ予め記憶部904に格納されている、ブームヘッド基端部104Tとブームフット104Sとの距離L4(cm)と、ストラット支点部127とブームヘッド基端部104Tとの距離L5(cm)とから、三角関数に基づき角度θ2を算出する。
【0088】
次に、図10を参照して、ジブ起伏角演算部902は、距離L5に加え、予め記憶部904に格納されている、ジブフット105Sとブームヘッド基端部104Tとの距離L6(cm)、ストラット支点部127とジブフット105Sとの距離L7(cm)とから、三角関数に基づき角度θ3を算出する。
【0089】
次に、図11を参照して、ジブ起伏角演算部902は、距離L2に加え、予め記憶部904に格納されている、回動端部125Sと回動端部126Sとの距離L8(cm)、ストラット支点部127と回動端部125Sとの距離L9(cm)とから、三角関数に基づき角度θ4を算出する。
【0090】
次に、図12を参照して、ジブ起伏角演算部902は、角度θ1、θ2、θ3およびθ4から、下記の式6に基づいて、角度θ5を算出する。
【0091】
θ5=360-(θ1+θ2+θ3+θ4) ・・・(式6)
次に、図13を参照して、ジブ起伏角演算部902は、角度θ5、距離L7および距離L9から、三角関数に基づきジブフット105Sと回動端部125Sとの距離L10を算出する。
【0092】
次に、図14を参照して、ジブ起伏角演算部902は、距離L7、距離L9および距離L10から、三角関数に基づき角度θ6を算出する。
【0093】
次に、図15を参照して、ジブ起伏角演算部902は、距離L10に加え、予め記憶部904に格納されている、回動端部125Sとジブポイントシーブ106との距離L11(cm)、ジブフット105Sとジブポイントシーブ106との距離L12(cm)とから、三角関数に基づき角度θ7を算出する。
【0094】
最後に、ジブ起伏角演算部902は、角度θ6および角度θ7から、ジブ105の起伏角θjの推定値を算出することができる。すなわち、ジブ105の起伏角θjは、以下の式7によって算出される。
【0095】
θj=θ0+Δθ6+Δθ7 ・・・(式7)
なお、θ0は、図4のステップS01において第1ジブ角度計53によって検出されたジブ105の起伏角θjの初期値である。また、なお、当該ジブ105の起立動作時には、上記のΔθ6およびΔθ7はそれぞれマイナスの値となる。また、ジブ105の倒伏動作に伴う吊り荷の水平移動(水平押し出し作業)時には、上記のΔθ6およびΔθ7はそれぞれプラスの値となる。
【0096】
次に、ジブ起伏角演算部902は、式7によって得られたジブ起伏角θjおよびその微分値であるジブ起伏角速度を用いて、以下の式8から、フィードフォワード制御量ufを算出する(ステップS09)。
【0097】
uf=L×cosθj+dθj/dt ・・・(式8)
なお、dθj/dtは、推定されるジブ起伏角θjの時間に関する微分値(ジブ起伏角速度)である。
【0098】
次に、主巻ウインチ指令値演算部903が、主巻ロープ107の繰出目標速度Vtを演算する(ステップS10)。具体的に、主巻ウインチ指令値演算部903は、まず、フィードフォワード制御量uf(cm/sec)とフィードバック制御量ub(cm/sec)との和である合計制御量up(cm/sec)を算出する(up=uf+ub)。次に、主巻ウインチ指令値演算部903は、上記の合計制御量upに主巻ウインチ110のロープ掛け数Cを掛けることで、式9から主巻ロープ107の繰出目標速度Vtを演算する。
【0099】
Vt=up×C ・・・(式9)
次に、主巻ウインチ指令値演算部903は、主巻ウインチ110を回転駆動させる主巻用油圧モータ23Bの減速比N、主巻ウインチ110のウインチ半径rから、式10に基づいて、主巻用油圧モータ23Bの目標回転速度Utを演算する(ステップS11)。
【0100】
Ut=Vt×N/r ・・・(式10)
更に、主巻ウインチ指令値演算部903は、上記の目標回転速度Utに対応した指令パイロット圧を演算する(ステップS12)。この結果、制御部90の駆動制御部901から上記の指令パイロット圧に応じた指令信号が電磁比例減圧弁26Bまたは電磁比例減圧弁27Bに入力され、吊り荷を所定の高さに維持するための主巻用油圧モータ23Bの回転量(回転速度)が設定される。なお、ステップS12において指令パイロット圧が演算されると、判定部905はジブ操作用レバー33Aが引き続き操作されているか否か、換言すれば、ジブ操作用レバー33Aが中立位置に配置されているかを判断する(ステップS13)。ここで、ジブ操作用レバー33Aが中立位置に設定されている場合(ステップS13でYES)、吊り荷の水平移動制御が終了する。一方、ジブ操作用レバー33Aが引き続き操作されている場合には(ステップS13でNO)、ステップS01以下が繰り返される。
【0101】
以上のように、吊り荷の水平移動制御では、ジブ操作用レバー33A(図2)が受ける操作に応じてジブ起伏ウインチ112の回転を制御するために、図4のステップS04においてジブ起伏用指令値が演算され、当該指令値に応じて電磁比例減圧弁26Aおよび電磁比例減圧弁27Aに指令信号が入力されると、ジブ起伏用制御弁22Aを通じてジブ起伏用油圧モータ23Aの回転が制御される。一方、ジブ起伏ウインチ112の回転、すなわち、ジブ105の起伏に伴う吊り荷の上下移動をキャンセルするために、ステップS05からS12では、前述のフィードバック制御およびフィードフォワード制御に基づいて、主巻用油圧モータ23Bの回転を制御するための指令パイロット圧が演算される。この結果、当該パイロット圧が電磁比例減圧弁26Bおよび電磁比例減圧弁27Bに入力され、主巻用制御弁22Bを通じて主巻用油圧モータ23B、更には主巻ウインチ110の回転が制御される。
【0102】
図16は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動制御におけるジブ105およびフック108(吊り荷)の軌跡を示した図である。図16に示すように、本実施形態に係る水平移動制御によれば、ジブ105の起立動作(矢印D1)に応じて、主巻ウインチ110による主巻ロープ107の繰り出し量が適切に調整され、フック108を水平に移動させることが可能となる(矢印D2)。
【0103】
また、図17は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動制御および他の水平移動制御におけるジブ起伏角速度の推移をそれぞれ示したグラフである。本実施形態では、前述のように、フィードフォワード制御中において使用されるジブ105の起伏角、起伏角速度が第1ジブ角度計53の検出結果ではなく、ジブ起伏ウインチ112の繰り出し量(巻き取り量)に基づいて演算される。図17は、ジブ105の起立動作における起伏角速度(角度の微分値)の時間推移を示しており、「ウインチ回転角換算値」は本実施形態の水平移動制御において図5のステップS08、S09において演算されるdθj/dt(式8)に相当する。一方、「ジブ角度計微分値」は第1ジブ角度計53によって検出されたジブ105の起伏角の推移を時間で微分したものである。図17に示すように、「ジブ角度計微分値」では、ジブ105の振動の影響を受けてジブ起伏角速度も振動的になっており、この値を用いてフィードフォワード制御量を演算すると、その制御量も振動的になる。そして、この制御量を元にジブ105の起伏動作を制御すると、さらにジブ105の振動が増加し制御が不安定になる。一方、本実施形態に相当する「ウインチ回転角換算値」では、上記のような周期的な大きな振動が含まれておらず、ジブ105の起伏角速度を安定して取得することが可能となる。この結果、当該起伏角速度(式8)に基づく、主巻ウインチ110のフィードフォワード制御によって吊り荷の高さを安定して維持することができる。
【0104】
更に、図18は、本実施形態に係るクレーン10の水平移動制御および他の水平移動制御における吊り荷の偏差の推移をそれぞれ示したグラフである。図18では、偏差ゼロの場合、吊り荷が水平に移動していることを意味する。図18に示すように、前述の「ジブ角度計微分値」では、ジブ105の振動の影響を受けて、吊り荷の偏差が振動的に増大している。一方、本実施形態に相当する「ウインチ回転角換算値」では、その偏差に上記のような振動が含まれておらず、偏差がゼロ付近で安定して推移し、吊り荷の水平移動が実現されている。
【0105】
以上のように、本実施形態では、ジブ起伏角演算部902が、第1ジブ角度計53によって検出されるジブ105の初期起伏角と、ジブ105の起伏動作中に第1回転角検出部52Aによって検出されるジブ起伏ウインチ112の回転角度(第1回転角度情報)とに基づいて、ジブ105の起伏角(推定起伏角)を演算する。そして、主巻ウインチ指令値演算部903は、少なくともジブ起伏角演算部902によって演算された前記推定起伏角とジブ105の長さL(長さ情報)とに基づいて主巻ウインチ110の回転を制御するためのフィードフォワード制御量を演算する。このため、ジブ105の起伏動作に対応した吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて安定して相殺することが可能となり、吊り荷の水平移動を精度良く補助することが可能となる。特に、起伏動作に応じて変化するジブ105の起伏角として第1ジブ角度計53の検出角度を、主巻ウインチ110のフィードフォワード制御量の演算に直接用いる場合と比較して、前記制御量の中にジブ105の振動成分が多く含まれることが抑止される。
【0106】
また、本実施形態では、クレーン10が複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化されたモデル情報を記憶部904が予め記憶しており、ジブ起伏角演算部902は、ジブ起伏ウインチ112の回転に伴うジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応してジブ105の推定起伏角を演算することができる。このため、ジブ起伏ウインチ112がジブ起伏ロープ115の巻き取りまたは繰り出しを行うと、ジブ起伏角演算部902が複数の幾何学図形の形状変化からジブ105の推定起伏角を容易に演算することが可能となる。
【0107】
特に、本実施形態では、クレーン10のベース部10Aは、上部旋回体102(クレーン本体)と上部旋回体102に起伏可能に支持されたブーム104とを有し、前記起伏体は前記ブーム104の先端部に起伏可能に支持されたジブ105であって、前記起伏体支持機構10Bは、前記ブーム104の先端部または前記ジブ105の基端部に回動可能に支持されたフロントストラット125およびリヤストラット126を有している。そして、前記記憶部904は、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーン10が複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺がジブ起伏ロープ115によって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラット125および前記リヤストラット126によって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブ105(ジブ105の中心線)によって構成されている前記モデル情報を記憶している。更に、ジブ起伏角演算部902は、ジブ起伏ウインチ112の回転に伴うジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで前記ジブ105の前記推定起伏角を演算する。なお、前記推定起伏角は、前記複数の三角形のうちの少なくとも一つの三角形の内角の変化に基づいて演算される。このような構成によれば、ジブ起伏角演算部902は、記憶部904に記憶されたモデル情報の複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで、ジブ起伏ウインチ112の回転に応じたジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づいて、前記ジブ105の前記推定起伏角を容易に演算することができる。
【0108】
更に、本実施形態では、上記のフィードフォワード制御に加え、フィードバック制御に基づいて吊り荷の高さを制御することができる。このため、フィードフォワード制御量の演算に含まれる誤差の影響やクレーン10に搭載される機器の個体差の影響によって、吊り荷の高さに生じる偏差を低減することができる。
【0109】
また、本実施形態では、主巻ウインチ指令値演算部903は、第2回転角検出部52Bによって検出された主巻ウインチ110の回転角度(第2回転角度情報)から吊り荷の現在の高さの推定値である推定高さを演算する一方、第1ジブ角度計53によって検出されるジブ105の起伏角とジブ105の前記長さ情報とに基づいて前記吊り荷の高さの目標値である目標高さを演算し、前記目標高さと前記推定高さとの差から前記偏差Hbを演算し、当該演算された偏差Hbに予め設定されたゲインを乗じることで前記フィードバック制御量を演算する。このため、主巻ウインチ110の回転角度に基づく吊り荷の推定高さとジブ105の起伏角に基づく吊り荷の目標高さとの差から、吊り荷の偏差Hbを容易に演算し、フィードバック制御量を演算することができる。
【0110】
また、上記のように、本実施形態では、ベース部10Aと、起伏体であるジブ105と、起伏体支持機構10Bと、ジブ起伏ウインチ112と、主巻ロープ107と、ジブ操作用レバー33Aと、を有するクレーン10において、主巻ロープ107に接続された吊り荷を空中で水平に移動させるための吊り荷の水平移動方法が示されている。当該吊り荷の水平移動方法は、ジブ105の先端部から垂下される主巻ロープ107に吊り荷を接続し、主巻ウインチ110によって主巻ロープ107を巻き取ることで前記吊り荷を地面から上方に離間させ空中に配置することと、前記吊り荷が空中に配置された状態で、ジブ操作用レバー33Aが受ける操作に応じてジブ起伏ウインチ112を制御してジブ105を起伏させる起伏動作の開始時に、ジブ105のうちの少なくとも一つの部位の起伏角である初期起伏角を検出することと、前記初期起伏角と、ジブ105の起伏動作中におけるジブ起伏ウインチ112の回転軸回りの回転角度に対応する情報である第1回転角度情報とに基づいて、ジブ105の起伏角の推定値である推定起伏角を演算することと、ジブ105の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御するためのフィードフォワード制御量を、少なくとも前記推定起伏角とジブ105の長さに対応する長さ情報とに基づいて演算することと、前記フィードフォワード制御量に基づいて、ジブ105の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における前記移動量を相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御し、ジブ105の起伏動作に応じて前記吊り荷を水平移動させることと、を備える。
【0111】
本方法によれば、主巻ウインチ110のフィードフォワード制御量の演算にジブ105の起伏角として前記推定起伏角を用いることで、前記制御量の中にジブ105の振動成分が含まれることが抑止される。この結果、ジブ105の起伏動作に対応した吊り荷の上下方向における移動量をフィードフォワード制御に基づいて安定して相殺することが可能となり、吊り荷の水平移動を精度良く行うことが可能となる。
【0112】
上記の方法において、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーン10が複数の幾何学図形の組み合わせによってモデル化された情報であるモデル情報を記憶する記憶部904を準備することを更に備え、ジブ105の前記推定起伏角を演算することは、前記ジブ起伏ウインチ112の回転に伴うジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づく前記幾何学図形の形状変化に対応してジブ105の前記推定起伏角を演算することを含むことが望ましい。
【0113】
本方法によれば、ジブ起伏ウインチ112がジブ起伏ロープ115の巻き取りまたは繰り出しを行うと、複数の幾何学図形の形状変化からジブ105の推定起伏角を演算することが可能となる。
【0114】
上記の方法において、クレーン10のベース部10Aは、上部旋回体102と上部旋回体102に起伏可能に支持されたブーム104とを有し、前記起伏体は前記ブーム104の先端部に起伏可能に支持されたジブ105であって、前記起伏体支持機構10Bは、前記ブーム104の先端部または前記ジブ105の基端部に回動可能に支持されたフロントストラット125およびリヤストラット126を有し、前記記憶部904として、前記回転中心軸と平行な方向から見て前記クレーン10が複数の三角形の組み合わせによってモデル化された情報である前記モデル情報であって、前記複数の三角形のうちの第1の三角形の一辺がジブ起伏ロープ115によって構成され、前記第1の三角形とは異なる第2の三角形が前記フロントストラット125および前記リヤストラット126によって構成され、前記第1の三角形および前記第2の三角形とは異なる第3の三角形の一辺が前記ジブ105によって構成されている前記モデル情報を記憶するものを準備することと、ジブ105の前記推定起伏角を演算することは、ジブ起伏ウインチ112の回転に伴うジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づく前記第1の三角形の形状変化に対応して、前記モデル情報の前記複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することでジブ105の前記推定起伏角を演算することを含むことが望ましい。
【0115】
本方法によれば、記憶部904に記憶されたモデル情報の複数の三角形に三角関数をそれぞれ適用することで、ジブ起伏ウインチ112の回転に応じたジブ起伏ロープ115の長さの変化に基づいて、ジブ105の前記推定起伏角を容易に演算することができる。
【0116】
上記の方法において、ジブ105の起伏動作に対応した前記吊り荷の上下方向における移動量をフィードバック制御に基づいて相殺するように主巻ウインチ110の回転を制御するためのフィードバック制御量を、前記吊り荷の高さの偏差に基づいて演算することと、前記フィードバック制御量に基づいて、前記吊り荷ウインチの回転を制御することと、を更に備えることが望ましい。
【0117】
本方法によれば、上記のフィードフォワード制御に加え、フィードバック制御に基づいて吊り荷の高さを制御することができる。このため、フィードフォワード制御量の演算に含まれる誤差の影響やクレーンに搭載される機器の個体差の影響によって、吊り荷の高さに生じる偏差を低減することができる。
【0118】
以上、本発明の一実施形態に係る吊り荷の水平移動補助装置10Cおよびこれを備えたクレーン10、吊り荷の水平移動方法について説明した。このようなクレーン10によれば、吊り荷の水平移動を安定して行うことが可能とされる。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
【0119】
(1)上記の実施形態では、図4のステップS05からステップS07において、吊り荷の高さに基づいて主巻ウインチ110にフィードバック制御を実行している。この際、主巻ウインチ指令値演算部903が、式1、式2から吊り荷高さの偏差Hbを算出し、更に式3からフィードバック制御量ubを演算する。ここで、式1の角度θ’は第1ジブ角度計53によって検出される制御中のジブ105の起伏角である。ジブ105は図1に示すように、長尺であるとともに、一般的にブーム104と比較して相対的に剛性が低い。このため、吊り荷の重量が大きい場合には、ジブ105がその長手方向に沿って撓む場合がある。そこで、本変形実施形態では、図3の第1ジブ角度計53に加え、第2ジブ角度計54が上記のフィードバック制御に使用される。具体的に、式1において、角度θ’は、以下の式11によって算出される角度θaに置換される。
【0120】
θa=(θ’+θ’’)/2 ・・・(式11)
なお、θ’’は、第2ジブ角度計54によって検出されるジブ105の起伏角である。吊り荷の重量によってジブ105が撓んでいる場合、第1ジブ角度計53が検出する角度θ’と、第2ジブ角度計54が検出する角度θ’’との間に差が生じる。本変形実施形態では、主巻ウインチ指令値演算部903は、第1ジブ角度計53および第2ジブ角度計54によってそれぞれ検出された起伏角の平均値とジブ105の長さLとに基づいて吊り荷の目標高さh’を演算する。このように、上記の式11によって、2つの角度の平均値からなる角度θaが式1に適用されることで、ジブ105の撓みの影響を低減した吊り荷の高さの推定値に基づいて、吊り荷の水平移動を安定して補助することが可能となる。
【0121】
(2)また、上記の各実施形態に係る振れ角度検出装置が適用されるクレーンの構造は、図1に示されるクレーン10に限定されるものではなく、他の構造を有するクレーンであってもよい。一例として、クレーン10はジブ105を備えず、ベース部としての上部旋回体102に対して起伏体としてのブーム104が起伏可能に支持され、ブーム104の先端部から主巻ロープ107が垂下されるものでもよい。
【0122】
(3)なお、先の実施形態では、本発明が図1に示すいわゆるタワータイプのクレーン10に適用される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、ジブを備えずブームだけを備えるクレーン仕様、ブームに対するジブの角度が固定された固定ジブ仕様(この場合、ストラットは1本で可)、フロントストラットおよびリヤストラットを備え、ブームおよびジブがそれぞれ起伏しながら作業を行うことが可能なラッフィング仕様などの各クレーン仕様にも適用可能である。この際、それぞれのクレーン仕様において、ブームを支持する支持部材はガントリ、箱マストおよびラチスマストなどから選択されることが可能であり、各ウインチは上部旋回体およびブーム(下部ブーム)のいずれに配置されてもよい。また、起伏用のスプレッダの使われ方も各クレーン仕様に応じて選択されることが可能である。
【符号の説明】
【0123】
10 クレーン
101 下部走行体
102 上部旋回体
103 キャブ
104 ブーム
104S ブームフット
104T ブームヘッド基端部
105 ジブ(起伏体)
105S ジブフット
106 ジブポイントシーブ
107 主巻ロープ(吊り荷ロープ)
108 フック
109 ガイドシーブ
10A ベース部
10B 起伏体支持機構
10C 水平移動補助装置
110 主巻ウインチ(吊り荷ウインチ)
111 ブーム起伏ウインチ
112 ジブ起伏ウインチ(起伏用ウインチ)
113 ブーム起伏ロープ
114 ブームガイライン
115 ジブ起伏ロープ
116 ジブガイライン
117 ジブガイライン
118 ストラットリンク
121 下部スプレッダ
122 上部スプレッダ
125 フロントストラット
125S フロントシーブ
126 リヤストラット
126S リヤシーブ
127 ストラット支点部
21 油圧ポンプ
22A ジブ起伏用制御弁
22B 主巻用制御弁
23A ジブ起伏用油圧モータ
23B 主巻用油圧モータ
32A ジブ起伏用リモコン弁
32B 主巻用リモコン弁
33A ジブ操作用レバー(被操作部)
33B 主巻操作用レバー
52A 第1回転角検出部(第1回転角度情報検出部)
52B 第2回転角検出部(第2回転角度情報検出部)
53 第1ジブ角度計(起伏角検出部、第1起伏角検出部)
54 第2ジブ角度計(起伏角検出部、第2起伏角検出部)
90 制御部
901 駆動制御部(起伏ウインチ制御部、吊り荷ウインチ制御部)
902 ジブ起伏角演算部(起伏角演算部)
903 主巻ウインチ指令値演算部(制御量演算部)
904 記憶部
905 判定部
図1
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