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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20230620BHJP
【FI】
B60R21/217
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019191166
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021066245
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】栗山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忍
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡一
(72)【発明者】
【氏名】早川 遼
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085035(JP,A)
【文献】特開2013-049430(JP,A)
【文献】特開平10-086722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグおよび前記エアバッグ内にガスを供給するインフレータを有するエアバッグモジュールと、前記エアバッグモジュールを収容するケースと、を備えるサイドエアバッグ装置であって、
前記ケースは、金属棒からなるワイヤフレームと、前記ワイヤフレームを覆うパッドと、前記ワイヤフレームおよび前記パッドを覆う表皮部材と、を備え、
前記ワイヤフレームは、前記ケースの外観形状を規定する第1ワイヤと、前記第1ワイヤに沿うように配置された第2ワイヤとを有し、
前記表皮部材は、端部に前記第2ワイヤに係合可能な係合部を有し、
前記第2ワイヤは、前記係合部が係合可能な表皮取付部を有し、
前記表皮取付部は、前記第1ワイヤよりも前記ケースの内側に寄った位置に配置されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記パッドは、前記係合部を受け入れ可能な凹部を有することを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第2ワイヤは、複数の前記表皮取付部を有し、隣り合う2つの表皮取付部の間の部分の少なくとも1箇所が前記第1ワイヤに固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第1ワイヤは、前記インフレータの長手方向に沿うように延びる第1延在部を有し、
前記第2ワイヤは、前記第1延在部に沿うように延び、前記表皮取付部を含む第2延在部を有し、
前記第2延在部は、前側から見て、前記第1延在部よりも前記ケースの左右方向内側に寄った位置に配置されるとともに、前記第1延在部と重なることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグモジュールが取り付けられる第1ブラケットと、
前記インフレータに接続されるハーネスと、を備え、
前記ハーネスは、
前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に配置される第1部分と、
前記インフレータに接続される第2部分であって前記第1ブラケットの前記エアバッグが展開する側と反対側を通って前記第1部分につながる第2部分とを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1ブラケットが取り付けられる第2ブラケットを備え、
前記第1部分は、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットの間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記第1ブラケットは、前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に膨出する膨出部を有し、
前記第1部分は、前記膨出部と前記第2ブラケットの間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記第1部分は、前記第2部分側と反対側の端部が前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に固定されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側に配置されたコネクタを備え、
前記第1ブラケットは、前記第1部分と対向するハーネス対向部と、前記ハーネス対向部よりも前記インフレータから遠い位置に配置されて前記コネクタが固定されるコネクタ固定部とを有し、
前記ハーネスは、前記第1部分の前記第2部分側と反対側の端部から延び、前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側に引き出されて前記コネクタに接続される第3部分を有することを特徴とする請求項8に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記コネクタ固定部は、前記第3部分と対向する端部に前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に向けて屈曲したフランジを有することを特徴とする請求項9に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドエアバッグ装置として、シートのシートバックと車体との間に配置され、エアバッグおよびエアバッグへガスを供給するインフレータを含んで構成されたエアバッグモジュールと、エアバッグモジュールが収納されるケースとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-052493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、出願人等は、サイドエアバッグ装置のケースとして、金属棒からなるワイヤフレームと、ワイヤフレームを覆うパッドと、ワイヤフレームおよびパッドを覆う表皮部材とを備え、表皮部材の端部に設けた係合部をワイヤフレームに係合させて表皮部材をワイヤフレームに固定する構成を検討している。このような構成において、ワイヤフレームに係合した状態の係合部がケースの外側に大きく突出すると、ケースの表面が凸凹となり、サイドエアバッグ装置の見た目が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、見た目を良くすることができるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
また、表皮部材をワイヤフレームにしっかり固定することを目的とする。
また、表皮部材をワイヤフレームに容易に取り付けることを目的とする。
また、エアバッグ展開時にエアバッグとインフレータに接続されるハーネスが接触するのを抑制することを目的とする。
また、ハーネスを保護することを目的とする。
また、車体に取り付ける際の配線作業を行いやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、サイドエアバッグ装置は、エアバッグおよび前記エアバッグ内にガスを供給するインフレータを有するエアバッグモジュールと、前記エアバッグモジュールを収容するケースと、を備えるサイドエアバッグ装置であって、前記ケースは、金属棒からなるワイヤフレームと、前記ワイヤフレームを覆うパッドと、前記ワイヤフレームおよび前記パッドを覆う表皮部材と、を備え、前記ワイヤフレームは、前記ケースの外観形状を規定する第1ワイヤと、前記第1ワイヤに沿うように配置された第2ワイヤとを有し、前記表皮部材は、端部に前記第2ワイヤに係合可能な係合部を有し、前記第2ワイヤは、前記係合部が係合可能な表皮取付部を有し、前記表皮取付部は、前記第1ワイヤよりも前記ケースの内側に寄った位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、第2ワイヤの表皮取付部に係合した状態の係合部がケースの外側に大きく突出するのを抑制することができるので、ケースの外観形状をきれいに出すことができる。これにより、サイドエアバッグ装置の見た目を良くすることができる。
【0008】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記パッドは、前記係合部を受け入れ可能な凹部を有する構成とすることができる。
【0009】
これによれば、係合部がパッドから突出しにくくなるので、ケースの外観形状をよりきれいに出すことができる。これにより、サイドエアバッグ装置の見た目をより良くすることができる。
【0010】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記第2ワイヤは、複数の前記表皮取付部を有し、隣り合う2つの表皮取付部の間の部分の少なくとも1箇所が前記第1ワイヤに固定されている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、係合部を、第2ワイヤの第1ワイヤに固定された剛性の高い部分の近くに係合させることができるので、表皮部材をワイヤフレームにしっかり固定することができる。
【0012】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記第1ワイヤは、前記インフレータの長手方向に沿うように延びる第1延在部を有し、前記第2ワイヤは、前記第1延在部に沿うように延び、前記表皮取付部を含む第2延在部を有し、前記第2延在部は、前側から見て、前記第1延在部よりも前記ケースの左右方向内側に寄った位置に配置されるとともに、前記第1延在部と重なる構成とすることができる。
【0013】
これによれば、係合部がケースの外側に大きく突出するのを抑制しつつ、係合部をケースの表面近くで第2ワイヤに係合させることができる。これにより、表皮部材をワイヤフレームに容易に取り付けることができる。
【0014】
前記したサイドエアバッグ装置は、前記エアバッグモジュールが取り付けられる第1ブラケットと、前記インフレータに接続されるハーネスと、を備え、前記ハーネスは、前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に配置される第1部分と、前記インフレータに接続される第2部分であって前記第1ブラケットの前記エアバッグが展開する側と反対側を通って前記第1部分につながる第2部分とを有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、エアバッグ展開時にエアバッグとハーネスが接触するのを抑制することができる。
【0016】
前記したサイドエアバッグ装置は、前記第1ブラケットが取り付けられる第2ブラケットを備え、前記第1部分は、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットの間に配置されている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、第1ブラケットと第2ブラケットによりハーネスの第1部分を保護することができる。
【0018】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記第1ブラケットは、前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に膨出する膨出部を有し、前記第1部分は、前記膨出部と前記第2ブラケットの間に配置されている構成とすることができる。
【0019】
これによれば、第1ブラケットに凹凸形状が形成されることになるので、第1ブラケットの剛性を向上させることができる。そして、剛性が向上した第1ブラケットによりハーネスの第1部分を効果的に保護することができる。
【0020】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記第1部分は、前記第2部分側と反対側の端部が前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に固定されている構成とすることができる。
【0021】
これによれば、ハーネスの第1部分が動くのを抑制することができるので、第1ブラケットと第2ブラケットの間でハーネスの第1部分を効果的に保護することができる。
【0022】
前記したサイドエアバッグ装置は、前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側に配置されたコネクタを備え、前記第1ブラケットは、前記第1部分と対向するハーネス対向部と、前記ハーネス対向部よりも前記インフレータから遠い位置に配置されて前記コネクタが固定されるコネクタ固定部とを有し、前記ハーネスは、前記第1部分の前記第2部分側と反対側の端部から延び、前記第1ブラケットの前記エアバッグモジュールが配置された側に引き出されて前記コネクタに接続される第3部分を有する構成とすることができる。
【0023】
これによれば、コネクタが第1ブラケットのエアバッグモジュールが配置された側に配置されているので、サイドエアバッグ装置を車体に取り付ける際の配線作業を行いやすい。また、ハーネスの第3部分をコネクタに向けてハーネス対向部よりもインフレータから遠い位置からエアバッグモジュールが配置された側に引き出すことができるので、エアバッグ展開時にエアバッグとハーネスの第3部分が接触するのを抑制することができる。
【0024】
前記したサイドエアバッグ装置において、前記コネクタ固定部は、前記第3部分と対向する端部に前記エアバッグモジュールが配置された側と反対側に向けて屈曲したフランジを有する構成とすることができる。
【0025】
これによれば、ハーネスの第3部分が第1ブラケットのエッジ部分に接触するのを抑制することができるので、ハーネスの第3部分を保護することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、サイドエアバッグ装置の見た目を良くすることができる。
【0027】
また、パッドに表皮部材の係合部を受け入れ可能な凹部を形成することで、サイドエアバッグ装置の見た目をより良くすることができる。
【0028】
また、第2ワイヤの隣り合う2つの表皮取付部の間の部分を第1ワイヤに固定することで、表皮部材をワイヤフレームにしっかり固定することができる。
【0029】
また、第2ワイヤの第2延在部を、前側から見て、第1ワイヤの第1延在部よりもケースの左右方向内側に寄った位置に配置し、かつ、第1延在部と重なる構成とすることで、表皮部材をワイヤフレームに容易に取り付けることができる。
【0030】
また、ハーネスの第1部分を第1ブラケットのエアバッグモジュール側と反対側に配置し、第2部分を第1ブラケットのエアバッグ展開側と反対側を通すことで、エアバッグ展開時にエアバッグとハーネスが接触するのを抑制することができる。
【0031】
また、第1部分を第1ブラケットと第2ブラケットの間に配置することで、ハーネスの第1部分を保護することができる。
【0032】
また、第1部分を第1ブラケットの膨出部と第2ブラケットの間に配置することで、ハーネスの第1部分を効果的に保護することができる。
【0033】
また、第1部分の第2部分側と反対側の端部を第1ブラケットのエアバッグモジュール側と反対側に固定することで、ハーネスの第1部分を効果的に保護することができる。
【0034】
また、コネクタを、第1ブラケットのエアバッグモジュールが配置された側に配置することで、サイドエアバッグ装置を車体に取り付ける際の配線作業を行いやすくすることができる。また、ハーネスの第3部分をインフレータから遠い位置からエアバッグモジュールが配置された側に引き出すことで、エアバッグ展開時にエアバッグとハーネスの第3部分が接触するのを抑制することができる。
【0035】
また、第1ブラケットの第3部分と対向する端部にフランジを設けることで、ハーネスの第3部分を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】サイドエアバッグ装置が設けられた車両を車室内から見た図である。
図2】車体のサイドパネルを車室内側から見た図(a)と、ストライカとベースブラケットを上から見た図(b)である。
図3】サイドエアバッグ装置の分解斜視図である。
図4】エアバッグモジュール、第1ブラケットおよびベース部材を左右外側から見た図である。
図5】第1力布部を通る、サイドエアバッグ装置の横断面図(a)と、力布と表皮の縫合部付近の拡大図(b)である。
図6】第2力布部を通る、サイドエアバッグ装置の横断面図である。
図7】第1取付ワイヤ、第2取付ワイヤおよび固定ワイヤの斜視図である。
図8】サイドエアバッグ装置を左右外側から見た図である。
図9】エアバッグモジュール、第1ブラケット、第2ブラケット、ハーネスおよびコネクタを後ろから見た図である。
図10】第1ブラケット、第2ブラケット、ハーネスおよびコネクタを上から見た図である。
図11】サイドエアバッグ装置の斜視図であり、線ファスナを閉じた状態を示す図(a)と、線ファスナを閉じる前の状態を示す図(b)である。
図12】ストライカ、第1表皮部材、プレート部材、第2表皮部材および布状部材の斜視図である。
図13】サイドエアバッグ装置を左右外側から見た分解斜視図である。
図14】第1ブラケットを第2ブラケットに固定する工程を説明する図である。
図15】スリット孔を通る、パッドと第1カバー部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のサイドエアバッグ装置1は、自動車の後部座席に適用されるものであり、シートSと車体の側壁BSとの間に配置されている。詳細には、シートSは、シートクッションS1とシートバックS2を有し、サイドエアバッグ装置1は、シートバックS2と側壁BSの間に配置されている。
【0038】
シートバックS2は、前に倒すことができるように下端部を軸として前後に回動可能に設けられている。一方、サイドエアバッグ装置1は、車体の側壁BSに固定されており、シートバックS2には固定されていない。このため、シートSを動かしたとき、具体的には、シートバックS2を前に倒したときに、サイドエアバッグ装置1が側壁BSに残った状態で露出する。サイドエアバッグ装置1は、シートバックS2を前に倒したときに、シートS側の面である内側面1S(図11(a)参照)が露出する。シートバックS2が図1に示す起立状態のとき、サイドエアバッグ装置1の前面は、シートバックS2の前面と略面一である。このため、サイドエアバッグ装置1は、通常のシートSの使用時においては、外見的にシートバックS2の一部となる。
【0039】
なお、本実施形態においては、車体の左側(シートSの左側)に配置されるサイドエアバッグ装置1について説明するが、車体の右側にも、左右対称な構成のサイドエアバッグ装置を設けることができる。また、本実施形態においては、特に断りが無い限り、左右方向の内側および外側は、サイドエアバッグ装置1自体ではなく、車体を基準とする。すなわち、車体の左右中心に近い側を内側、車体の左右中心から遠い側を外側とする。サイドエアバッグ装置1から見ると、左右内側は「シートS側」に相当し、左右外側は「車体側」に相当する。また、前後および上下は、特に断りが無い限り、シートSを基準とする。
【0040】
図1のサイドエアバッグ装置1において、前面には、エアバッグ11(図5(a)参照)が展開するときに、裂けて広がる裂開部1Cが上下に長く設けられている。
【0041】
図2(a)に示すように、車体は、サイドパネル300を有している。サイドパネル300は、金属からなり、側壁BSを構成する側壁部310と、側壁部310から左右内側に膨出するホイールハウス320と、ストライカ設置部330とを有している。
【0042】
ホイールハウス320は、タイヤTを収容する部位である。ホイールハウス320のタイヤTの上部に対応した位置には、エアバッグ取付ブラケット340が溶接などにより固定されている。エアバッグ取付ブラケット340は、サイドエアバッグ装置1を車体に取り付けるための部材であり、金属板からなる。図3に示すように、エアバッグ取付ブラケット340は、サイドエアバッグ装置1を固定するボルト93Bが挿通される孔341を有している。また、エアバッグ取付ブラケット340は、左右外側の面にナット93Nが溶接されている。
【0043】
図2(a)に戻り、ストライカ設置部330は、ストライカ350の設置面を確保する部位であり、サイドパネル300の上部に溶接などにより固定されている。図2(b)に示すように、ストライカ350は、車体のサイドパネル300から左右内側に突出するU字形状の部材であり、金属からなる。詳細には、ストライカ350は、サイドパネル300から突出するように設けられた一対の第1棒状部351と、一対の第1棒状部351の先端同士を接続する第2棒状部352とを有している。シートSのシートバックS2は、ストライカ350と係合可能な図示しないラッチ機構を有しており、前に倒した状態から起こされてラッチ機構がストライカ350と係合することで、起立状態にロックされる。
【0044】
ストライカ350は、ベースブラケット360を介して車体のストライカ設置部330に固定されている。ベースブラケット360は、金属板からなり、ストライカ設置部330に取り付けられるベース部361と、ベース部361の上端から左右内側に延びる接続部362と、接続部362の左右内側の端から上方に延びるエアバッグ固定部363とを有している。エアバッグ固定部363には、ボルト92Bが左右内側に突出するように溶接により固定されている。ストライカ350は、ベース部361に溶接などにより固定されている。ベースブラケット360は、複数のボルト364によってストライカ設置部330に固定されている。
【0045】
図3に示すように、サイドエアバッグ装置1は、エアバッグモジュール10と、ケース2と、力布30と、第1ブラケット100とを備える。
【0046】
エアバッグモジュール10は、エアバッグ11と、エアバッグ11内にガスを供給するインフレータ12とを有する。インフレータ12は、突出する2本のボルト12Bを有し、ボルト12Bにおいて第1ブラケット100に固定されている。エアバッグ11は、インフレータ12のガス圧により展開可能なように畳まれて、インフレータ12の周囲にまとめられている。
【0047】
ケース2は、エアバッグモジュール10が内部に取り付けられることで、エアバッグモジュール10を収容する。ケース2は、ベース部材BAと、ベース部材BAを覆うパッド70(図5(a)参照)と、ベース部材BAおよびパッド70を覆う表皮部材80(図5(a)参照)とを備えている。
【0048】
ベース部材BAは、車体に固定される部材であり、第2ブラケット200と、ワイヤフレーム20とを備えている。
第2ブラケット200は、ワイヤフレーム20とともにケース2の骨格を構成する。第2ブラケット200は、第1ブラケット100が取り付けられる板状の部材であり、板金からなる。第2ブラケット200は、本体部210と、切欠き部220と、第1延出部230と、第2延出部240とを有している。
【0049】
本体部210は、ケース2の車体内側の壁の中央から上部にかけて配置されている。切欠き部220は、本体部210の上部の後側の縁に形成されている。切欠き部220は、ストライカ350が通る部分である。
【0050】
本体部210の、切欠き部220の上側の部分には、車体に固定される車体固定部としての第1車体固定部210Aが設けられている。第1車体固定部210Aには、サイドエアバッグ装置1を車体に固定する際に用いられる固定孔211が形成されている。また、本体部210の、切欠き部220の下側の部分には、第1ブラケット100を固定する際に用いられるブラケット固定部212が設けられている。ブラケット固定部212は、本体部210に孔218(図13図14参照)が開けられているとともに、右側の側面にナット91Nが溶接されている。
【0051】
本体部210には、係合孔213が形成されている。係合孔213は、その後側に略上下に延びる第1縁部213Aを有し、下側に略水平に延びる第2縁部213Bを有する。
【0052】
また、本体部210の前縁には、台形状に突出した接合部214が形成され、本体部210の上縁には、台形状に突出した2つの接合部215が形成されている。
【0053】
第1延出部230は、本体部210の下端の後部から下方に延出している。第1延出部230は、本体部210の下端から左右外側の斜め下方に延びる傾斜部231と、傾斜部231の下端から下方に延びる車体固定部としての第2車体固定部232とを有している。第2車体固定部232は、本体部210よりも左右方向外側に位置している。第2車体固定部232は、第1車体固定部210Aよりも下方に配置されている。第2車体固定部232には、サイドエアバッグ装置1を車体に固定する際に用いられる固定孔233と、第1ブラケット100を第2ブラケット200に固定する際に用いられる係合孔234とが形成されている。固定孔233は、ボルト93Bが通る円形の孔であり、係合孔234は、第1ブラケット100の下端の舌部152が係合する矩形の孔である。係合孔234は、固定孔233の下方に配置されている。
【0054】
第2延出部240は、本体部210の下端の前部から下方に延出している。第2延出部240は、本体部210の下端から下方に延びる延在部241と、延在部241の下端から左右外側に延びるブラケット下端部242とを有している。
【0055】
ワイヤフレーム20は、金属のワイヤ(金属棒)からなる。ワイヤフレーム20は、第2ブラケット200に溶接などにより固定されている。なお、図においては、溶接による接合部分をドットハッチにより示している。
ワイヤフレーム20は、第1ワイヤ21と、第2ワイヤ22と、第3ワイヤ23と、第4ワイヤ24とを有し、これら4本のワイヤ21~24を溶接により接合することで構成されている。なお、本実施形態では、4本のワイヤ21~24によりワイヤフレーム20を構成しているが、ワイヤフレーム20を構成するワイヤの数は任意である。
【0056】
第1ワイヤ21は、第3ワイヤ23とともにケース2の外観形状を規定する。第1ワイヤ21は、サイドエアバッグ装置1の前部および上部の左右外側の輪郭に沿って形成されたフレーム部21Aと、フレーム部21Aの下端から後方に延びる接続部21Bとを有している。フレーム部21Aは、インフレータ12の長手方向に沿うように略上下に延びる第1延在部としての前フレーム部21Dと、前フレーム部21Dの上端から後方に屈曲して略前後に延びる上フレーム部21Eとを有している。接続部21Bは、第2ブラケット200のブラケット下端部242に接合されている。
【0057】
第3ワイヤ23は、サイドエアバッグ装置1の前部および上部の左右内側の輪郭に沿って形成されたフレーム部23Aと、フレーム部23Aの上端から左右外側に延びる連結部23Bと、フレーム部23Aの下端から後方に延びる接続部23Cとを有している。連結部23Bの左右外側の端は、前方に屈曲して延びており、この前方に延びた部分が第1ワイヤ21のフレーム部21Aの上端部に接合されている。接続部23Cは、第2ブラケット200に接合されている。また、フレーム部23Aは、第2ブラケット200の接合部214,215の先端部に接合されている。
【0058】
第4ワイヤ24は、一端が第1ワイヤ21のフレーム部21Aに接合され、他端が第3ワイヤ23のフレーム部23Aに接合され、これにより、第1ワイヤ21と第3ワイヤ23を連結している。
【0059】
第2ワイヤ22は、延在部22Aと、延在部22Aの上端から左右内側に延びる連結部22Bと、連結部22Bの左右内側の端から後方に延びる接続部22Cとを有している。図4に示すように、延在部22Aは、第1ワイヤ21の前フレーム部21Dに沿うように略上下に延びる第2延在部としての前延在部22Dと、前延在部22Dの上端から後方に屈曲して上フレーム部21Eに沿うように略前後に延びる上延在部22Eとを有している。また、延在部22Aは、複数の表皮取付部22Fと、屈曲凸部22Gとを有している。
【0060】
表皮取付部22Fは、表皮部材80(図5(a)参照)に設けられたフック81が係合可能な部分であり、前延在部22Dに3箇所設けられ、上延在部22Eに1箇所設けられている。
屈曲凸部22Gは、前に凸となるように屈曲した部分であり、前延在部22Dの上部に形成されている。屈曲凸部22Gは、前延在部22Dの、隣り合う2つの表皮取付部22Fの間、具体的には、前延在部22Dの最も上方に位置する表皮取付部22Fと、その下方に隣接して位置する表皮取付部22Fとの間に形成されている。
【0061】
第2ワイヤ22は、接続部22Cが第2ブラケット200の左右外側の面に接合されており、延在部22Aの下端部が第1ワイヤ21のフレーム部21Aの下端部に接合されている。また、第2ワイヤ22は、屈曲凸部22Gが第1ワイヤ21の前フレーム部21Dに接合されている。これにより、第2ワイヤ22は、隣り合う2つの表皮取付部22Fの間の部分の1箇所が第1ワイヤ21に固定されている。
【0062】
第2ワイヤ22の延在部22Aは、第1ワイヤ21のフレーム部21Aに沿うように配置されている。詳細には、第2ワイヤ22は、左右方向から見て、前延在部22Dが前フレーム部21Dの後方で前フレーム部21Dに沿うように配置され、上延在部22Eが上フレーム部21Eの下方で上フレーム部21Eに沿うように配置されている。
【0063】
また、図5(a)に示すように、前延在部22Dは、前側から見て、前フレーム部21Dよりもケース2の左右方向内側に寄った位置に配置されている(第2ワイヤ22の中心線C1参照)。そして、前延在部22Dは、その一部である左右外側の部分が、前側から見て、前フレーム部21Dの左右内側の部分と前後に重なって配置されている。また、上延在部22E(図4参照)は、後ろにいくにつれて左右内側に位置するように斜めに延びており、その全体が前フレーム部21Dよりもケース2の左右方向内側に寄った位置に配置されている。このような前延在部22Dおよび上延在部22Eの配置により、延在部22Aに設けられた各表皮取付部22Fは、第1ワイヤ21の前フレーム部21Dよりもケース2の内側(内部)、さらに言えば、ケース2の左右内側に寄った位置に配置されている。
【0064】
ケース2は、ワイヤフレーム20および第2ブラケット200がパッド70にインサート成形されている。これにより、パッド70は、ワイヤフレーム20および第2ブラケット200を覆っている。そして、パッド70の外側を表皮部材80が覆っている。
表皮部材80は、サイドエアバッグ装置1の外表面を構成する部材であり、布地や皮革などからなる。表皮部材80は、第2ブラケット200、ワイヤフレーム20およびパッド70を、主に、前側、上側および左右内側から覆っている。表皮部材80の詳細については後述する。
【0065】
パッド70は、エアバッグ11の展開時にエアバッグ11をケース2の外部に出すためのスリット71Aを有している。スリット71Aは、上下に長く延びている。表皮部材80は、パッド70のスリット71Aに入り込んでパッド70の表面に沿って配置されている。表皮部材80のスリット71Aに入り込んだ2枚の部分は、図5(b)に示すように、互いに弱い縫製部85により縫製されている。
【0066】
図3に示すように、力布30は、エアバッグ11の展開時にエアバッグ11の展開方向を規制するとともに、裂開部1Cを開くための部材である。力布30は、インフレータ12の長手方向(以下、単に「長手方向」という。)において、エアバッグモジュール10の一部に対応して設けられた第1力布部31と、長手方向において、第1力布部31と異なる位置に配置された第2力布部32とを有する。本実施形態においては、第2力布部32は、長手方向において、その全体が第1力布部31と異なる位置に配置されている。インフレータ12は、略上下方向に延びており、第2力布部32は、第1力布部31より下に位置する。また、長手方向において、第2力布部32は、第1力布部31より短い。
【0067】
第1力布部31および第2力布部32は、前端部が左右に分かれており、左右に分かれた部分の間にエアバッグ11の展開時にエアバッグ11が出る出口部30Aを有する。第1力布部31は、出口部30Aからエアバッグモジュール10の右側部(一側部)に向けて延びる第1側部31Rと、出口部30Aからエアバッグモジュール10の左側部(他側部)に向けて延びる第2側部31Lとを有する。また、第2力布部32も、出口部30Aからエアバッグモジュール10の右側部(一側部)に向けて延びる第3側部32Rと、出口部30Aからエアバッグモジュール10の左側部(他側部)に向けて延びる第4側部32Lとを有する。
そして、図5(b)に示すように、第1力布部31(31R,31L)および第2力布部32(32R,32L)の各前端部は、出口部30A付近において、表皮部材80に取り付けられている。具体的には、第1力布部31の第1側部31Rおよび第2力布部32の第3側部32Rは、縫製部85よりも丈夫な縫製部86により、右側の表皮部材80に縫製され、第1力布部31の第2側部31Lおよび第2力布部32の第4側部32Lは、縫製部85よりも丈夫な縫製部86により、左側の表皮部材80に縫製されている。
【0068】
図3に戻り、力布30の第1側部31R,32Rおよび第2側部31L,32Lは、力布30とは別の連結部材CNにより、第1ブラケット100に固定された固定ワイヤ60に固定されている。連結部材CNの詳細については後述する。
【0069】
第2力布部32は、第3側部32Rの後端部と第4側部32Lの後端部が上下方向に沿って縫い合わされている。これにより、図6に示すように、第2力布部32は、長手方向から見て、エアバッグモジュール10を囲むループ状に形成されている。なお、第3側部32Rと第4側部32Lは、縫い合わせにより繋げてループ状にするのではなく、一枚の布により構成されていてもよい。
【0070】
図3に示すように、第2力布部32の第3側部32Rは、上部に接続部33を有し、接続部33の上端には、固定部材としてのフック35が固定されている。フック35は、第2ブラケット200の係合孔213における第2縁部213Bに引っ掛けられている(図13参照)。これにより、フック35は、第2力布部32の長手方向における縁、本実施形態では上端縁をケース2に固定している。第2力布部32の接続部33は、フック35に繋がる部分が、フック35から離れるほど幅広となる台形形状を有している。
【0071】
第1ブラケット100は、エアバッグモジュール10が固定される板状の部材であり、板金からなる。第1ブラケット100は、エアバッグモジュール10が取り付けられた状態で第2ブラケット200に固定される。
【0072】
第1ブラケット100は、エアバッグモジュール10が固定される本体部110と、膨出部としてのハーネス対向部120と、コネクタ固定部130と、切欠き部140と、第1固定部150と、第2固定部160と、第3固定部170とを有している。
【0073】
本体部110は、エアバッグモジュール10が固定される部分であり、インフレータ12の2本のボルト12Bがそれぞれ挿通される2つの固定孔111が設けられている。固定孔111には、ボルト12Bが挿入され、ナット12Nがボルト12Bに螺合されることによりエアバッグモジュール10が本体部110に固定されている。エアバッグモジュール10は、本体部110の左右外側に配置される。また、本体部110には、連結部材CNを固定するための固定ワイヤ60が溶接などにより接合されている。
【0074】
ハーネス対向部120は、後述するハーネス400の第1部分410(図4参照)と左右に対向する部分であり、本体部110の上端から上方に延出している。ハーネス対向部120は、本体部110およびコネクタ固定部130に対し、エアバッグモジュール10が配置された左右外側と反対側の左右内側に向けて膨出している(図9も参照)。ハーネス対向部120の下部には、ハーネス400を第1ブラケット100に固定するためのクリップ441(図9参照)が係合する固定孔121が設けられている。
【0075】
コネクタ固定部130は、後述するコネクタ450が固定される部分であり、ハーネス対向部120の上端の前部から上方に延出し、さらに後方に延出している。コネクタ固定部130は、ハーネス対向部120を挟んで本体部110とは反対側に配置されている。このため、コネクタ固定部130は、本体部110に固定されるエアバッグモジュール10のインフレータ12からハーネス対向部120よりも遠い位置に配置される。コネクタ固定部130の下部には、ハーネス400を第1ブラケット100に固定するためのクリップ442(図9図10参照)が係合する固定孔131が設けられている。また、コネクタ固定部130の上部には、コネクタ450を第1ブラケット100に固定するためのクリップ460(図10参照)が係合する固定孔132が設けられている。
【0076】
切欠き部140は、第1ブラケット100の上部の後側の縁に形成されている。切欠き部140は、ストライカ350が通る部分である。
【0077】
第1固定部150は、本体部110の下端部に設けられており、本体部110に対して左右方向内側にずれて位置している。第1固定部150には、サイドエアバッグ装置1を車体に固定する際にボルト93Bが通る固定孔151が設けられている。第1固定部150の下端からは、第1ブラケット100を第2ブラケット200に固定する際に、第2ブラケット200の係合孔234に係合する舌部152が延出している。舌部152は、左右内側に屈曲し、さらに下方にのびている。舌部152の前後方向の幅は、係合孔234の前後方向の幅と略同一である。
【0078】
第2固定部160は、ハーネス対向部120の後端部に設けられており、ハーネス対向部120に対して左右方向内側にずれて位置している。第2固定部160には、第1ブラケット100を第2ブラケット200に固定する際にボルト91Bが挿入される固定孔161が設けられている。
【0079】
第3固定部170は、コネクタ固定部130の後端部に設けられており、コネクタ固定部130に対して左右方向内側にずれて位置している。第3固定部170には、サイドエアバッグ装置1を車体に固定する際にボルト92Bが挿入される固定孔171が設けられている。
【0080】
図7に示すように、連結部材CNは、第1取付ワイヤ40と第2取付ワイヤ50を有する。
第1取付ワイヤ40は、第1力布部31の第1側部31Rが取り付けられる部材であり、第2取付ワイヤ50は、第2側部31Lが取り付けられる部材である。また、固定ワイヤ60は、第1取付ワイヤ40と第2取付ワイヤ50が固定される部材である。第1取付ワイヤ40、第2取付ワイヤ50および固定ワイヤ60は、金属からなる。
【0081】
固定ワイヤ60は、上下に延びるワイヤ取付部61と、ワイヤ取付部61の上下の端から前方に延びる一対の接続部62と、各接続部62の各前端から互いに近づくように上下に延びる一対の被固定部63とを有している。一対の被固定部63は、第1ブラケット100に固定されている(図3参照)。
ワイヤ取付部61は、取付ワイヤ40,50の後述する湾曲部44,54が係合する部分が前方に向けて凸となるように屈曲した上下2つのワイヤ係合部61Aを有している。
【0082】
第1取付ワイヤ40は、上下に延びる第1力布取付部41と、第1力布取付部41の上端から後方に延びた部分である第1上延出部42と、第1力布取付部41の下端から後方に延びた部分である第1下延出部43とを有している。
第1力布取付部41は、第1側部31Rが取り付けられる部分である。第1側部31Rは、後端部にリング部R1を有しており、リング部R1に第1力布取付部41を通すことで、第1側部31Rに第1取付ワイヤ40が取り付けられる。
【0083】
第1上延出部42および第1下延出部43の後端部には、それぞれ、第1湾曲部44が設けられている。第1湾曲部44は、固定ワイヤ60のワイヤ取付部61(ワイヤ係合部61A)に係合する部分であり、後方に凸となるように湾曲している。各第1湾曲部44の各端部44Aは、屈曲して互いに近づくように上下に延びている。
【0084】
なお、本実施形態において、第1下延出部43は、ワイヤ取付部61に近づくにつれ、第1上延出部42に近づいている。これにより、固定ワイヤ60に取り付けられる部分をコンパクトな構成としつつ、第1力布取付部41の上下の長さを確保することができる。このため、コンパクトでありながら、第1側部31Rによってエアバッグ11の展開方向を良好に規制することができる。
【0085】
ところで、図3に示すように、第1ブラケット100の第1固定部150、第2固定部160および第3固定部170は、本体部110に対して左右方向内側にずれており、一方、第2ブラケット200の第2車体固定部232は、本体部210に対して左右方向外側にずれているので、第1ブラケット100と第2ブラケット200を合わせた状態においては、図5(a)に示すように、本体部110と本体部210の間に空間ができる。第1取付ワイヤ40の一部、つまり、連結部材CNの一部は、第1ブラケット100と第2ブラケット200の間の空間に配置されている。
【0086】
図7に示すように、第2取付ワイヤ50は、上下に延びる第2力布取付部51と、第2力布取付部51の上端から左右内側に延びた部分である第2上延出部52と、第2力布取付部51の下端から左右内側に延びた部分である第2下延出部53とを有している。
第2力布取付部51は、第2側部31Lが取り付けられる部分である。第2側部31Lは、後端部にリング部R2を有しており、リング部R2に第2力布取付部51を通すことで、第2側部31Lに第2取付ワイヤ50が取り付けられる。
【0087】
第2上延出部52および第2下延出部53の左右内側の端部には、それぞれ、第2湾曲部54が設けられている。第2湾曲部54は、固定ワイヤ60のワイヤ取付部61(ワイヤ係合部61A)に係合する部分であり、左右内側に凸となるように湾曲している。各第2湾曲部54の各端部54Aは、屈曲して前方に延び、さらに、互いに近づくように上下方向に屈曲している。第2湾曲部54がワイヤ取付部61に係合した状態において、第2湾曲部54の端部54Aは、第1湾曲部44の端部44Aに係合している。このため、第1取付ワイヤ40が固定ワイヤ60に係合し、第2取付ワイヤ50が固定ワイヤ60に係合するだけでなく、第2取付ワイヤ50が第1取付ワイヤ40に係合して、これらの3部品の係合が容易には外れないようになっている。
【0088】
なお、本実施形態において、第2上延出部52および第2下延出部53は、ワイヤ取付部61に近づくにつれ、互いに近づいている。これにより、固定ワイヤ60に取り付けられる部分をコンパクトな構成としつつ、第2力布取付部51の上下の長さを確保することができる。このため、コンパクトで有りながら、第2側部31Lによってエアバッグ11の展開方向を良好に規制することができる。
【0089】
図8に示すように、インフレータ12の2本のボルト12Bは、長手方向において第2力布部32と異なる位置に位置する。具体的には、2本のボルト12Bは、第2力布部32よりも上に位置している。
【0090】
また、2本のボルト12Bは、長手方向において第1力布部31と重なる位置に位置し、かつ、第1力布部31を貫通していない。具体的には、図5(a)に示すように、第1力布部31の第1側部31Rは前後方向に短く、ボルト12Bの真横、つまり右側までは延びていないので、第1側部31Rはボルト12Bと干渉しないように配置されている。そして、第1側部31Rの後端部と固定ワイヤ60とは、前後に長い第1取付ワイヤ40により連結されている。前後方向においてインフレータ12およびボルト12Bが位置する部分には、第1取付ワイヤ40が配置されている。
そして、第1取付ワイヤ40は、図8に示すように左右方向から見てボルト12Bと重ならないように配置されている。すなわち、連結部材CNは、ボルト12Bと干渉しないように配置されている。なお、図8においては、力布30を仮想線で示している。
【0091】
そして、エアバッグモジュール10の、長手方向の一端部の一例である下端部は、第2力布部32に覆われている。
【0092】
また、第1ブラケット100の下の端部は、長手方向における位置が第2力布部32と重なっている。別の言い方をすると、第1ブラケット100の下の端部は、左右方向から見て第2力布部32と重なっている。
【0093】
図4に示すように、エアバッグモジュール10には、インフレータ12に電気を供給するためのハーネス400が接続されている。ハーネス400は、一端部がインフレータ12に電気的に接続され、他端部が第1ブラケット100に固定されたコネクタ450に電気的に接続されている。ハーネス400は、第1部分410と、第2部分420と、第3部分430とを有している。
【0094】
第1部分410は、第1ブラケット100のハーネス対向部120のエアバッグモジュール10が配置された側と反対側、すなわち、左右内側に配置される部分である。また、図9に示すように、第1部分410は、第1ブラケット100が第2ブラケット200に固定された状態で第1ブラケット100と第2ブラケット200の間に配置されている。詳細には、第1部分410は、第1ブラケット100のハーネス対向部120と第2ブラケット200の本体部210との間の空間に配置されている。
【0095】
第1部分410は、第2部分420側の第1端部411と、第3部分430側(第2部分420側と反対側)の第2端部412とを有し、第1端部411および第2端部412が第1ブラケット100の左右内側に固定されている。詳細には、第1端部411は、クリップ441に保持された状態で、クリップ441をハーネス対向部120の固定孔121に左右内側から係合させることで、第1ブラケット100の左右内側に固定されている。また、第2端部412は、クリップ442に保持された状態で、クリップ442をコネクタ固定部130の固定孔131に左右内側から係合させることで、第1ブラケット100の左右内側に固定されている。
【0096】
第2部分420は、第1部分410の第1端部411から延びてインフレータ12(図4参照)に接続される部分である。インフレータ12に接続された第2部分420は、第1ブラケット100のエアバッグ11が展開する側と反対側、すなわち、第1ブラケット100の後側を通って第1部分410につながっている。さらに説明すると、第2部分420は、インフレータ12が配置される第1ブラケット100の左右外側からハーネス対向部120の後側を通って第1ブラケット100の左右内側に引き込まれ、第1部分410の第1端部411につながっている。
【0097】
第3部分430は、第1部分410の第2端部412から延びてコネクタ450に接続される部分である。第3部分430は、第1ブラケット100の左右内側に位置する第1部分410の第2端部412からコネクタ固定部130の前側を通って第1ブラケット100のエアバッグモジュール10が配置された左右外側に引き出され、コネクタ450に接続されている。図10に示すように、第1ブラケット100のコネクタ固定部130は、第3部分430と対向する前端部に左右内側に向けて屈曲したフランジ133を有している。このため、第3部分430は、コネクタ固定部130の前端部に接触したとしても、第1ブラケット100を形成する板金のエッジ部分ではなく、フランジ133の曲面状の屈曲部分に接触する。
【0098】
コネクタ450は、第1ブラケット100の左右外側に配置されている。コネクタ450は、コネクタ450に取り付けられたクリップ460をコネクタ固定部130の固定孔132(図3参照)に左右外側から係合させることで、第1ブラケット100の左右外側に固定されている。コネクタ450には、サイドエアバッグ装置1の外部に設けられた電源装置からインフレータ12に電気を供給するための図示しないハーネスのコネクタが接続される。
【0099】
図5(a)に示すように、表皮部材80は、第1表皮部材510と、第2表皮部材520と、留め具としての線ファスナ550とを備えている。
第1表皮部材510は、第1カバー部としての内側カバー部511と、前側カバー部512と、上側カバー部513(図11(b)参照)と、ベース固定部としての内側固定部514と、外側固定部515と、第3カバー部531と、第4カバー部541とを有している。
【0100】
内側カバー部511は、ベース部材BAおよびパッド70を左右内側から覆う部分である。図11(b)に示すように、内側カバー部511は、サイドエアバッグ装置1が車体に取り付けられた状態で車体に設けられたストライカ350が挿通される第1孔516を有している。また、内側カバー部511は、第2ブラケット200の一部である車体固定部210A,232を露出させる開口517を有している。詳細には、開口517は、第1車体固定部210Aを露出させる第1開口517Aと、第2車体固定部232を露出させる第2開口517Bとを含む。
【0101】
また、内側カバー部511は、パッド70の一部を露出させるスリット孔518および切欠き部519を有している。パッド70は、左右内側の面に、略前後に延び、左右内側に向けて凸となる稜線部72を有している。パッド70の左右内側の面は、車体のサイドパネル300(図2参照)の左右外側の面の形状に倣って、稜線部72の上側の部分が上下方向に沿うように延び、稜線部72の下側の部分が下にいくにつれて左右外側に位置するように斜めに延びている。スリット孔518は、パッド70の稜線部72に沿って略前後に延びるように形成されている。
【0102】
前側カバー部512は、第2ブラケット200やパッド70を前側から覆う部分であり、内側カバー部511の前端から左右外側に向けて延びている。エアバッグ11が展開するときに裂ける裂開部1Cは、前側カバー部512に設けられている。
上側カバー部513は、第2ブラケット200やパッド70を上側から覆う部分であり、前側カバー部512の上端から後側に向けて延び、左右内側の端が前側カバー部512の上端とつながっている。
【0103】
図5(a)に示すように、内側固定部514は、内側カバー部511の後端から左右外側に延びている。内側固定部514は、パッド70の後端部に巻き付くように配置されて端部514Aがパッド70の左右外側の面と対向している。内側固定部514は、端部514Aに第2ブラケット200の係合孔213に係合可能なフック82を有している。フック82は、左右外側から係合孔213の第1縁部213A(図3参照)に引っ掛けられており、これにより、表皮部材80は、第1表皮部材510の内側固定部514がベース部材BAの第2ブラケット200に固定されている。
【0104】
外側固定部515は、前側カバー部512の左右外側の端から後方に延びている。外側固定部515は、端部515Aにワイヤフレーム20の第2ワイヤ22に係合可能な係合部としてのフック81を有している。フック81は、左右外側から第2ワイヤ22の表皮取付部22Fに引っ掛けられており、これにより、表皮部材80は、第1表皮部材510の外側固定部515がベース部材BAのワイヤフレーム20に固定されている。フック81,82は、端部514A,515Aに、縫い付けたり、接着したりすることで取り付けられている。
【0105】
パッド70には、第2ワイヤ22の表皮取付部22Fと対応する縁部に、それぞれ、フック81を受け入れ可能な凹部73が形成されている。凹部73は、左右内側に向けて凹む形状を有しており、これによって、左右外側に開口している。
【0106】
第3カバー部531は、エアバッグモジュール10の左右外側および後側を覆う部分であり、外側固定部515の端部515Aから後側に向けて延びている。詳細には、第3カバー部531は、前端部が端部515Aに縫い付けられている。第3カバー部531の後端部には、フック状の係合部材532が、縫い付けたり、接着したりすることで取り付けられている。
【0107】
第4カバー部541は、内側カバー部511の後側の端部から左右外側に延びている。詳細には、第4カバー部541は、左右内側の端部が内側カバー部511の後端から延びる内側固定部514に縫い付けられている。第4カバー部541は、エアバッグモジュール10の後側に配置されている。第4カバー部541は、第3カバー部531と連結される。詳細には、第4カバー部541の左右外側の端部には、平板状の被係合部材542が、縫い付けたり、接着したりすることで取り付けられており、この被係合部材542を第3カバー部531の係合部材532に係合させることにより第3カバー部531と連結される。
【0108】
第2表皮部材520は、第1表皮部材510の内側カバー部511を覆う第2カバー部521を有している。図11(a)に示すように、第2カバー部521は、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sを形成する部分であり、前端部および上端部が内側カバー部511の前端部および上端部に縫い付けられている。第2カバー部521は、サイドエアバッグ装置1が車体に取り付けられた状態でストライカ350が挿通される第2孔526を有している。
【0109】
線ファスナ550は、第2表皮部材520の第2カバー部521を第1表皮部材510に留めるための部材であり、第1表皮部材510および第2表皮部材520に設けられている。詳細には、図11(b)に示すように、線ファスナ550は、一対のエレメント551と1つのスライダ552を有し、一方のエレメント551が第1表皮部材510の内側カバー部511に取り付けられ、他方のエレメント551が第2表皮部材520の第2カバー部521に取り付けられている。図11(a)に示すように、線ファスナ550は、内側面1Sの後側の端部に沿うように配置されている。詳細には、線ファスナ550は、一方のエレメント551が内側カバー部511の後端部に沿うように配置され、他方のエレメント551が第2カバー部521の後端部に沿うように配置されている。
【0110】
図12に示すように、第1表皮部材510の内側カバー部511には、プレート部材560が取り付けられ、第2表皮部材520の第2カバー部521には、布状部材570が取り付けられている。
【0111】
プレート部材560は、樹脂からなる板状の部材であり、ストライカ350の一対の第1棒状部351が挿通される一対の挿通孔561と、一対の挿通孔561の間で一対の挿通孔561をつなぐように設けられた切れ目562とを有している。プレート部材560は、切れ目562を有することで、ストライカ350の第2棒状部352を通すことができ、これによって、一対の第1棒状部351を一対の挿通孔561に挿通させることができる。プレート部材560は、内側カバー部511の第1孔516の周囲の部分に左右外側から、縫い付けたり、接着したりすることで取り付けられている。
【0112】
布状部材570は、表皮部材80と同様に、布地や皮革などからなる。布状部材570は、第2カバー部521の第2孔526に挿通されたストライカ350の一対の第1棒状部351の間の部分、さらに言えば、内側カバー部511に取り付けられたプレート部材560の一対の挿通孔561の間の部分(切れ目562)を覆う目隠し部571を有している。目隠し部571は、第2孔526から車室内側に露出する。布状部材570は、第2カバー部521の第2孔526の周囲の部分のうち、例えば、第2孔526の上側の部分に左右外側から、縫い付けたり、接着したりすることで取り付けられている。
【0113】
次に、サイドエアバッグ装置1の組立方法と、サイドエアバッグ装置1の車体への取付方法の一例について説明する。
図3に示すように、まず、第2ブラケット200とワイヤフレーム20を溶接により固定してベース部材BAを形成する。次に、ベース部材BAを図示しない金型内に配置して、図5(a)に示すように、パッド70をベース部材BAと一体成形する。
【0114】
次に、表皮部材80の第1表皮部材510に力布30の前端部を結合する。そして、パッド70に表皮部材80(第1表皮部材510)を被せ、表皮部材80を第2ブラケット200およびワイヤフレーム20に固定する。具体的には、内側固定部514の端部514Aに取り付けられたフック82を第2ブラケット200の係合孔213に引っ掛けるとともに、外側固定部515の端部515Aに取り付けられたフック81をワイヤフレーム20の第2ワイヤ22に設けられた表皮取付部22Fに引っ掛ける。
【0115】
次に、力布30をパッド70のスリット71Aの前から後に通す。すると、図13に示すようにパッド70の前側の壁から力布30が後に延出した状態となる。その後、第1取付ワイヤ40を第1力布部31の第1側部31Rに取り付けるとともに、第2取付ワイヤ50を第1力布部31の第2側部31Lに取り付ける。そして、第2力布部32に付いているフック35を係合孔213に引っ掛ける。これにより、第2力布部32は、上端縁の右側部分が、第2ブラケット200側に沿い、上端縁が開いた状態に維持される。
【0116】
一方、図3に示すようにエアバッグモジュール10を第1ブラケット100に取り付けておく。具体的には、2つのボルト12Bを第1ブラケット100の固定孔111に通し、ナット12Nを締結する。
【0117】
また、図9に示すように、エアバッグモジュール10から延びるハーネス400と、ハーネス400の端部に設けられたコネクタ450を第1ブラケット100に取り付ける。具体的には、ハーネス400を第1ブラケット100の後側を通して左右内側に取り回し、第1部分410の第1端部411に取り付けたクリップ441を第1ブラケット100の固定孔121に係合する。また、第1部分410の第2端部412に取り付けたクリップ442を第1ブラケット100の固定孔131に係合する。さらに、ハーネス400を第1ブラケット100の前側を通して左右外側に引き出し、コネクタ450に取り付けたクリップ460を第1ブラケット100の固定孔132に係合する。
【0118】
そして、図13に示すように、ループ状の第2力布部32の上縁部を開き、第1力布部31も左右に開いて、エアバッグモジュール10の下端部を第2力布部32のループの中に挿入する。そして、第1ブラケット100の下端が第2力布部32の高さに位置するまで、エアバッグモジュール10を十分に第2力布部32の中に挿入したら、図7に示すように、第1取付ワイヤ40をエアバッグモジュール10および第1ブラケット100の右側を通して後ろに引っ張り、固定ワイヤ60に引っ掛ける。また、第2側部31Lと第2取付ワイヤ50をエアバッグモジュール10の左側を通して後ろに引っ張り、固定ワイヤ60および第1取付ワイヤ40に引っ掛ける。
【0119】
次に、第1ブラケット100を第2ブラケット200に固定する。具体的には、図14に示すように、まず、舌部152の先端部を係合孔234に差し込む。次に、舌部152付近を中心として、第1ブラケット100を左右内側に回して、第1ブラケット100の固定孔161を第2ブラケット200のナット91N(孔218)に合わせる。そして、図3に示すように、ボルト91Bを固定孔161および孔218に左右外側から通し、ナット91Nに締結する。
【0120】
次に、この段階では露出しているエアバッグモジュール10などを、図5(a)に示すように、第3カバー部531で覆う。具体的には、第3カバー部531をエアバッグモジュール10の左右外側を通して後ろに引っ張るとともに、第4カバー部541を左右外側に引っ張り、被係合部材542を係合部材532に係合する。
【0121】
以上の工程により、サイドエアバッグ装置1を製造することができる。なお、以上の工程は、適宜順番を入れ替えて行ってもよい。
【0122】
サイドエアバッグ装置1を車体に取り付ける場合には、図2に示すように、まず、エアバッグ取付ブラケット340と、ストライカ350が固定されたベースブラケット360をサイドパネル300に固定しておく。また、図11(b)に示すように、表皮部材80の線ファスナ550は開けておく。このとき、第2ブラケット200の固定孔211は、第1表皮部材510の第1開口517Aから露出し、固定孔233は、第2開口517Bから露出する。
【0123】
そして、サイドエアバッグ装置1をサイドパネル300の取り付け位置に配置する。具体的には、サイドエアバッグ装置1を左右内側からサイドパネル300に近づけていき、図12に示すように、ストライカ350を、第1表皮部材510に取り付けられたプレート部材560の切れ目562を通して一対の挿通孔561に挿通するとともに、第1孔516に挿通する。また、図3に示すように、ベースブラケット360に固定されたボルト92Bを、第1ブラケット100の固定孔171と、第2ブラケット200の固定孔211に挿通する。
【0124】
そして、ベースブラケット360のボルト92Bにナット92Nを締結するとともに、ボルト93Bを、第2ブラケット200の固定孔233、第1ブラケット100の固定孔151およびエアバッグ取付ブラケット340の孔341に左右内側から通し、エアバッグ取付ブラケット340に固定されたナット93Nに締結する。
【0125】
そして、図11(b)から図11(a)に示すように、ストライカ350を第2表皮部材520の第2孔526に挿通し、その後、スライダ552をスライドさせて線ファスナ550を閉じ、内側カバー部511を第2カバー部521で覆う。
以上の工程により、サイドエアバッグ装置1を車体に取り付けることができる。
【0126】
以上のような本実施形態のサイドエアバッグ装置1の作用効果について説明する。
第2力布部32は、ループ状になっているため、エアバッグモジュール10の下端部を第2力布部32に入れることで、ケース2に対するエアバッグモジュール10の位置合わせがし易く、ケース2に対してエアバッグモジュール10を組み付けやすい。そして、力布30は、全体がループ状になっているのではなく、下側の一部のみがループ状になっており、上側の第1力布部31は、第1側部31Rと第2側部31Lに分かれているので、第1側部31Rと第2側部31Lを離して開いた状態にすることができる。このため、第1側部31Rと第2側部31Lの間にエアバッグモジュール10を入れるとともにエアバッグモジュール10の下端部を第2力布部32の中に入れる作業を行いやすい。すなわち、サイドエアバッグ装置1の組立作業を容易にすることができる。
【0127】
そして、エアバッグモジュール10の下端部を第2力布部32の中に入れた後、第1取付ワイヤ40と第2取付ワイヤ50を固定ワイヤ60に固定することで、第1側部31Rと第2側部31Lの後端を固定することができる。このため、第1力布部31をしっかりと固定し、力布30によるエアバッグ11の展開方向の規制を確実に行うことができる。
【0128】
また、インフレータ12のボルト12Bは、インフレータ12の長手方向において第2力布部32と異なる位置にあるので、ボルト12Bを第2力布部32に貫通させる必要がない。このため、エアバッグモジュール10を第2力布部32に入れやすい。
【0129】
また、インフレータ12のボルト12Bは、インフレータ12の長手方向において第1力布部31と重なる位置に位置するが、連結部材CNがボルト12Bと干渉しないように配置されているので、第1側部31Rと第2側部31Lを連結部材CNで固定する作業が行いやすい。
【0130】
また、第1ブラケット100の下端部は、左右方向から見て、第2力布部32と重なっているので、エアバッグモジュール10を第2力布部32に入れた後、第1ブラケット100の下端部と第2力布部32の位置関係を見ることで、エアバッグモジュール10を正しく組み付けることが出来たかを確認することができる。
【0131】
また、連結部材CNの一部が第1ブラケット100と第2ブラケット200の間に配置されていることで、エアバッグ11が、連結部材CNに接触しにくい。
【0132】
また、エアバッグモジュール10の下端部を第2力布部32に位置させるので、第2力布部32にエアバッグモジュール10を挿入する作業が行いやすい。
【0133】
また、エアバッグモジュール10を第2力布部32のループに上から挿入するように組み付ければよいので、組付性が良好である。
【0134】
また、インフレータ12の長手方向における第2力布部32の長さが第1力布部31よりも短いので、第2力布部32にエアバッグモジュール10を挿入しやすい。
【0135】
また、フック35により、第2力布部32の縁がケース2に固定されるので、第2力布部32のループ形状の口が開きやすく、第2力布部32にエアバッグモジュール10を挿入しやすい。特に、本実施形態では、第2力布部32の上端縁がケース2に固定されるので、第2力布部32の口が上に開き、第2力布部32にエアバッグモジュール10を挿入する作業を行いやすい。
【0136】
また、第2力布部32のフック35に繋がる部分である接続部33は、フック35から離れるほど幅広となっているので、第2力布部32の縁の広い範囲を開くことが出来、第2力布部32にエアバッグモジュール10を挿入しやすい。
【0137】
また、第2ワイヤ22の表皮取付部22Fが第1ワイヤ21よりもケース2の内側に寄った位置に配置されているので、表皮取付部22Fに係合した状態のフック81がケース2の外側に大きく突出するのを抑制することができる。これにより、ケース2の外観形状をきれいに出すことができ、サイドエアバッグ装置1の見た目を良くすることができる。
【0138】
また、フック81がケース2の外側に大きく突出しないことで、サイドエアバッグ装置1の大型化を抑制してコンパクト化することができる。また、ハーネス400がケース2内、さらに言えば、ワイヤフレーム20と第2ブラケット200により囲まれて形成される空間内に配置されてケース2外に突出しないので、サイドエアバッグ装置1の大型化を抑制してコンパクト化することができる。
【0139】
また、パッド70がフック81を受け入れ可能な凹部73を有するので、フック81がパッド70から突出しにくくなり、ケース2の外観形状をよりきれいに出すことができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の見た目をより良くすることができる。
【0140】
また、第2ワイヤ22の隣り合う2つの表皮取付部22Fの間の部分である屈曲凸部22Gが第1ワイヤ21に固定されているので、フック81を、第2ワイヤ22の第1ワイヤ21に固定された剛性の高い部分の近くに係合させることができる。これにより、表皮部材80をワイヤフレーム20にしっかり固定することができる。
【0141】
また、第2ワイヤ22の前延在部22Dが、前側から見て、第1ワイヤ21の前フレーム部21Dよりもケース2の左右方向内側に寄った位置に配置され、かつ、前フレーム部21Dと重なるので、フック81がケース2の外側に大きく突出するのを抑制しつつ、フック81をケース2の表面近くで第2ワイヤ22に係合させることができる。これにより、表皮部材80をワイヤフレーム20に容易に取り付けることができる。
【0142】
また、ハーネス400は、第1部分410が第1ブラケット100のエアバッグモジュール10が配置された側と反対側に配置され、また、第2部分420が第1ブラケット100のエアバッグ11が展開する側と反対側を通って第1部分410につながるので、エアバッグ11の展開時にエアバッグ11とハーネス400が接触するのを抑制することができる。
【0143】
また、第1部分410が第1ブラケット100と第2ブラケット200の間に配置されているので、第1ブラケット100と第2ブラケット200によりハーネス400の第1部分410を保護することができる。
【0144】
また、第1ブラケット100が左右に膨出するハーネス対向部120を有することで、第1ブラケット100に凹凸形状が形成されることになるので、第1ブラケット100の剛性を向上させることができる。そして、第1部分410がハーネス対向部120と第2ブラケット200の間に配置されているので、剛性が向上した第1ブラケット100によりハーネス400の第1部分410を効果的に保護することができる。
【0145】
また、第1部分410は、端部411,412が第1ブラケット100に固定されているので、第1部分410が動くのを抑制することができる。これにより、第1ブラケット100と第2ブラケット200の間でハーネス400の第1部分410を効果的に保護することができる。
【0146】
また、コネクタ450が、第1ブラケット100のエアバッグモジュール10が配置された側、すなわち、第2ブラケット200側と反対側に配置されているので、サイドエアバッグ装置1を車体に取り付ける際の配線作業を行いやすい。また、ハーネス400の第3部分430をコネクタ450に向けてハーネス対向部120よりもインフレータ12から遠い位置からエアバッグモジュール10が配置された側に引き出すことができるので、エアバッグ11の展開時にエアバッグ11とハーネス400の第3部分430が接触するのを抑制することができる。
【0147】
また、コネクタ固定部130が第3部分430と対向する前端部に屈曲したフランジ133を有するので、第3部分430が第1ブラケット100のエッジ部分に接触するのを抑制することができる。これにより、ハーネス400の第3部分430を保護することができる。
【0148】
また、表皮部材80が第2カバー部521を含む第2表皮部材520を備えるので、第2カバー部521により、第1表皮部材510の内側カバー部511と、ベース部材BAやパッド70の内側カバー部511から露出する部分を覆うことができる。また、第1表皮部材510が内側カバー部511を有するので、第1表皮部材510の内側固定部514をベース部材BAに固定することによって第1表皮部材510に設けられた線ファスナ550が引っ張られてもその位置がずれるのを抑制することができ、線ファスナ550によって第2カバー部521と第1表皮部材510に留めたときに、第2カバー部521の位置がずれるのを抑制することができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目を良くすることができる。
【0149】
また、内側カバー部511にプレート部材560が取り付けられているので、プレート部材560によりストライカ350の一対の第1棒状部351の間の部分の隙間を覆って隠すことができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目をより良くすることができる。
【0150】
また、第2カバー部521に布状部材570が取り付けられているので、布状部材570によりプレート部材560の切れ目562を覆って隠すことができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目をさらに良くすることができる。また、ストライカ350の一対の第1棒状部351の間からサイドエアバッグ装置1内などに異物が入り込むのを抑制することができる。
【0151】
また、内側カバー部511がベース部材BAの車体固定部210A,232を露出させる開口517を有するので、サイドエアバッグ装置1を左右内側から車体に取り付けることができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の取付作業を行いやすい。なお、サイドエアバッグ装置1を車体に取り付けた後は、車体固定部210A,232を第2カバー部521により覆って隠すことができるので、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目の良さは確保される。
【0152】
また、ベース部材BAが第1車体固定部210Aと第2車体固定部232を有し、開口517が第1開口517Aと第2開口517Bを含むので、サイドエアバッグ装置1の取付作業を行いやすくしつつ、複数の車体固定部210A,232によりサイドエアバッグ装置1を車体にしっかり固定することができる。
【0153】
また、内側カバー部511がパッド70の稜線部72に沿って形成されたスリット孔518を有するので、パッド70を覆う内側カバー部511からパッド70の稜線部72付近に不要な力がかかるのを抑制することができる。詳細には、図15に示すように、スリット孔518が無いと、二点鎖線で示すように、表皮部材がまっすぐ張ってしまって表皮部材からパッド70に稜線部72付近をつぶすような力がかかる可能性があるが、スリット孔518を有することでそのような力がかかるのを抑制することができる。これにより、パッド70の変形を抑制することができるので、パッド70の形状をきれいに出すことができ、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目をより良くすることができる。
【0154】
また、線ファスナ550が内側面1Sの後側の端部に沿うように配置されているので、サイドエアバッグ装置1を車体に取り付けた後に線ファスナ550によって第2カバー部521を第1表皮部材510に留めることができる。これにより、サイドエアバッグ装置1の取付作業を行いやすい。また、線ファスナ550が、例えば、内側面1Sの前後方向における中央付近に目立つように配置される場合と比較して、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの見た目をより良くすることができる。
【0155】
また、表皮部材80がエアバッグモジュール10の左右外側および後側を覆う第3カバー部531を備えるので、第3カバー部531によりエアバッグモジュール10を保護することができる。また、第3カバー部531によりエアバッグモジュール10が覆われることで、車体に取り付けられる前のサイドエアバッグ装置1の見た目を良くすることができる。
【0156】
以上に発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態では、固定ワイヤ60が第1ブラケット100に固定されていたが、ケース2、例えば、第2ブラケット200に固定されていてもよい。
【0157】
また、連結部材CNは、第1側部31Rおよび第2側部31Lを第1ブラケット100に固定された固定ワイヤ60に固定していたが、ケース2に固定してもよい。さらに、連結部材CNは、第1側部31Rおよび第2側部31Lを互いに連結するものであってもよい。例えば、第1側部31Rと第2側部31Lを連結部材CNで連結することで、インフレータ12の長手方向から見て、第1側部31R、第2側部31Lおよび連結部材CNがエアバッグモジュール10を取り囲むように構成されていてもよい。
【0158】
また、連結部材CNは、その全体が第1ブラケット100と第2ブラケット200の間に配置されていてもよい。
【0159】
前記実施形態においては、第2力布部32は、インフレータ12の長手方向において、その全体が第1力布部31と異なる位置に配置されていたが、一部が長手方向において第1力布部31と同じ位置に配置されていてもよい。例えば、第1力布部が第2力布部の外側を囲むように第2力布部に重なっていてもよい。
【0160】
前記実施形態においては、第2力布部32が第1力布部31よりも下にあり、第2力布部32の上側の口からエアバッグモジュール10を下に挿入するように構成したが、第2力布部に、下からエアバッグモジュールを挿入するように構成してもよい。例えば、第2力布部が第1力布部より上に位置していてもよい。
【0161】
前記実施形態においては、エアバッグモジュール10の長手方向の一端部は第2力布部32に覆われていたが、エアバッグモジュールの一端部が第2力布部に重ならず、第2力布部を上下に貫通して差し込むように構成してもよい。
【0162】
また、第2力布部は、長手方向において第1力布部より長くてもよい。
【0163】
また、固定部材としてフック35を例示したが、固定部材は、スナップボタンなどであってもよい。さらに固定部材を設けなくても構わない。
【0164】
前記実施形態において、ハーネス400の第3部分430は、コネクタ450を介して第1ブラケット100に固定されていたが、第3部分は、クリップなどにより第1ブラケットのエアバッグモジュールが配置された側に固定されていてもよい。
【0165】
前記実施形態において、ハーネス400の第1部分410は、第1端部411と第2端部412の両方が第1ブラケット100に固定されていたが、第1部分は、一方の端部だけが第1ブラケットに固定される構成であってもよい。また、両端部の間の部分が第1ブラケットに固定される構成であってもよい。
【0166】
前記実施形態において、第2ワイヤ22の前延在部22D(第2延在部)は、前側から見て、第1ワイヤ21の前フレーム部21D(第1延在部)と重なっていたが、第2延在部は、前側から見て、第1延在部と重ならない構成であってもよい。
【0167】
前記実施形態において、第2ワイヤ22は、隣り合う2つの表皮取付部22Fの間の部分の1箇所(屈曲凸部22G)が第1ワイヤ21に固定されていたが、第2ワイヤは、隣り合う2つの表皮取付部の間の部分の複数箇所が第1ワイヤに固定されていてもよい。
【0168】
前記実施形態において、表皮部材80は、第3カバー部531がエアバッグモジュール10の左右外側と後側を覆う構成であったが、第3カバー部と第4カバー部の両方がエアバッグモジュールを覆う構成であってもよい。例えば、第3カバー部がエアバッグモジュールの左右外側を覆い、第4カバー部がエアバッグモジュールの後側を覆う構成であってもよい。また、表皮部材は、第3カバー部および第4カバー部が設けられていない構成であってもよい。また、プレート部材や布状部材を備えない構成であってもよい。
【0169】
前記実施形態においては、ベース部材BAの車体固定部210A,232と、第1表皮部材510の内側カバー部511の開口517A,517Bが2つずつ設けられていたが、車体固定部と開口は、それぞれ、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0170】
前記実施形態において、内側カバー部511(第1カバー部)は、ベース部材BAの一部とパッド70の一部の両方を露出させる構成であったが、第1カバー部は、パッドは露出させずに、車体固定部などのベース部材BAの一部だけを露出させる構成であってもよいし、ベース部材は露出させずに、パッド70の一部だけを露出させる構成であってもよい。また、第1カバー部は、パッドのシート側の面が稜線部の無い平坦な面である場合には、スリット孔518を備えない構成であってもよい。
【0171】
前記実施形態においては、表皮部材80の留め具が線ファスナ550であったが、留め具は、スナップボタンや面ファスナなどであってもよい。また、前記実施形態において、線ファスナ550(留め具)は、サイドエアバッグ装置1の内側面1Sの後側の端部に沿うように配置されていたが、留め具は、内側面の、エアバッグが展開する前側の端部に沿うように配置されていてもよい。また、留め具は、内側面の前後の端部の間に配置されていてもよい。
【0172】
前記実施形態においては、サイドエアバッグ装置1は、前に倒すことができるシートバック部分とは別に、車体に固定されていたが、前または後ろに倒すことができるシートバック部分の一部に構成されていてもよい。
【0173】
前記実施形態においては、サイドエアバッグ装置1は、シートバックS2と車体の側壁BSの間に配置されていたが、サイドエアバッグ装置は、シートクッションと車体の間に配置されていてもよい。この場合、サイドエアバッグ装置は、シートクッション(シート)を前後にスライドさせたときに、内側面が露出するものであってもよい。
【0174】
また、前記実施形態では、サイドエアバッグ装置を自動車の後部座席に適用した例を説明したが、例えば、自動車の前の座席や3列席の中央席などに適用してもよい。
【0175】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 サイドエアバッグ装置
2 ケース
10 エアバッグモジュール
11 エアバッグ
12 インフレータ
20 ワイヤフレーム
21 第1ワイヤ
21D 前フレーム部
22 第2ワイヤ
22D 前延在部
22F 表皮取付部
22G 屈曲凸部
70 パッド
73 凹部
80 表皮部材
81 フック
100 第1ブラケット
120 ハーネス対向部
130 コネクタ固定部
133 フランジ
200 第2ブラケット
400 ハーネス
410 第1部分
412 第2端部
420 第2部分
430 第3部分
450 コネクタ
515A 端部
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