(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】地盤支持層の位置判断システムおよび地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20230620BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2019205779
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500038891
【氏名又は名称】信幸建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】三枝 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩太
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】小川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲広
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩二
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183591(JP,A)
【文献】特開2000-054778(JP,A)
【文献】特開平03-028411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる地盤支持層の位置判断システムであって、
コーン貫入試験装置と、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記コーン貫入試験装置のプローブが複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、
前記コーン貫入試験装置によるコーン貫入試験を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記プローブがそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、
前記待機位置の前記プローブをそれぞれの前記撹拌翼による前記対象地盤の撹拌範囲を通過させて下方移動させることにより前記コーン貫入試験が行われ、このコーン貫入試験の結果に基づいて前記対象地盤の支持層の深さ位置が把握される構成にし
て、それぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方に配置されて前記撹拌範囲を上下移動するガイドパイプが備わり、前記待機位置の前記プローブが前記ガイドパイプの下端開口から出没可能に前記ガイドパイプに収容され、前記ガイドパイプの下端開口を塞ぐカバー材が備わり、前記コーン貫入試験を行う際に前記待機位置の前記プローブを下方移動させて前記カバー材を貫通して前記下端開口から下方に突出させることを特徴とする地盤支持層の位置判断システム。
【請求項2】
前記カバー材として樹脂膜またはゴム膜が使用されて、前記プローブが貫通する前記カバー材の貫通孔と前記プローブとの外周面とが前記カバー材によってシールされる構成にした
請求項1に記載の地盤支持層の位置判断システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地盤支持層の位置判断システムを用いて深さ位置把握した前記支持層の上に、前記地盤改良装置を用いて改良地盤を形成する地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤支持層の位置判断システムおよび地盤改良方法に関し、さらに詳しくは、施工設備に対して複雑な加工をすることなく、より確実に対象地盤の支持層の深さ位置を把握できる地盤支持層の位置判断システムおよびこのシステムを用いた地盤改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱土と改良材とを撹拌混合して固化させることにより、軟弱地盤を堅固な地盤に改良するCDM(CementDeepMixing)工法が知られている。CDM工法では、回転駆動される撹拌翼を備えた地盤改良装置が使用される(例えば、特許文献1参照)。この撹拌翼は、長いロッドに取り付けられて地盤中を上下移動する。施工工程としては、まず、撹拌翼を回転させつつ地盤中を下方移動させることにより、地盤を支持層の深さまで掘削する。その後、改良材を地盤中に供給しながら、撹拌翼を回転させつつ上方移動させる。これにより、改良材が地盤中に注入、混合されて地盤が改良される。
【0003】
従来、地盤を支持層の深さまで掘削する際には、撹拌翼の回転駆動に要するトルクと、撹拌翼を吊り下げている処理機に作用する荷重とに基づいて、支持層の深さ位置を間接的に推定している。それ故、支持層の深さ位置を正確に把握するには改善の余地がある。改良地盤は支持層に支持されることで安定するので、地盤改良施工をする際には支持層の深さ位置を精度よく把握することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、施工設備に対して複雑な加工をすることなく、より確実に対象地盤の支持層の深さ位置を把握できる地盤支持層の位置判断システムおよびこのシステムを用いた地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の地盤支持層の位置判断システムは、対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる地盤支持層の位置判断システムであって、コーン貫入試験装置と、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記コーン貫入試験装置のプローブが複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、前記コーン貫入試験装置によるコーン貫入試験を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記プローブがそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、前記待機位置の前記プローブをそれぞれの前記撹拌翼による前記対象地盤の撹拌範囲を通過させて下方移動させることにより前記コーン貫入試験が行われ、このコーン貫入試験の結果に基づいて前記対象地盤の支持層の深さ位置が把握される構成にして、それぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方に配置されて前記撹拌範囲を上下移動するガイドパイプが備わり、前記待機位置の前記プローブが前記ガイドパイプの下端開口から出没可能に前記ガイドパイプに収容され、前記ガイドパイプの下端開口を塞ぐカバー材が備わり、前記コーン貫入試験を行う際に前記待機位置の前記プローブを下方移動させて前記カバー材を貫通して前記下端開口から下方に突出させることを特徴とする。
【0007】
本発明の地盤改良方法は、上記の地盤支持層の位置判断システムを用いて深さ位置を把握した前記支持層の上に、前記地盤改良装置を用いて改良地盤を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の地盤支持層の位置判断システムによれば、前記地盤改良装置に対して、少なくとも、コーン貫入試験装置と、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えればよい。そして、前記コーン貫入試験装置によるコーン貫入試験を行う時に、前記撹拌翼モニタ部による把握データを利用して、前記制御部によって、前記プローブがそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御されるので、施工設備(地盤改良装置)に対して複雑な加工をする必要がない。そして、対象地盤の支持層の深さ位置は、前記プローブをそれぞれの前記撹拌翼による前記対象地盤の撹拌範囲を通過させて下方移動させて実際にコーン貫入試験を行った結果に基づいて、より確実に把握できる。
【0009】
本発明の地盤改良方法によれば、より確実に深さ位置を把握した対象地盤の支持層の上に改良地盤を形成することで、形成した改良地盤のより高い安定性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の地盤支持層の位置判断システムを例示する説明図である。
【
図2】
図1の撹拌翼の近傍を側面視で例示する説明図である。
【
図4】ガイドパイプの先端部の構造を例示する組み立て図である。
【
図5】支持層の深さ位置の予備検出工程を例示する説明図である。
【
図6】
図5の撹拌翼を上方移動させた状態を例示する説明図である。
【
図7】対象シャフトの回転角度位置が制御された時のそれぞれの撹拌翼の平面視の位置を例示する説明図である。
【
図8】コーン貫入試験を実施している工程を例示する説明図である。
【
図9】カバー材を貫通するプローブを例示する説明図である。
【
図10】コーン貫入試験の結果を例示するグラフ図である。
【
図11】
図8のプローブを上方移動させた状態を例示する説明図である。
【
図12】地盤改良施工の工程を例示する説明図である。
【
図13】対象地盤に改良材を吐出して混合する工程を例示する説明図である。
【
図14】形成された改良地盤を例示する説明図である。
【
図15】本発明の別の実施形態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の地盤支持層の位置判断システムおよび地盤改良方法を実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1~
図3に例示する本発明の地盤支持層の位置判断システム1(以下、位置判断システム1という)は、深層混合処理等の地盤改良施工を行う地盤改良装置7に対して適用される。そして、本発明の地盤改良方法は、本発明の位置判断システム1を用いて対象地盤Bを改良する。
【0013】
地盤改良装置7は、対象地盤Bを撹拌する撹拌翼9を備えた複数本のシャフト8A、8B、8C、8Dを有している。複数本のシャフト8A~8Dは互いが隣接して接合されていて、上下に延在するマスト8Mによって支持されている。これらのシャフト8A~8Dは、立設状態で櫓7aに沿って一体的に上下移動する。それぞれのシャフト8A~8Dは、それぞれのシャフト8A~8Dに取り付けられた駆動モータ8によって回転駆動される。これに伴い、それぞれのシャフト8A~8Dに取り付けられた撹拌翼9は、取り付けられたシャフト8A~8Dのシャフト軸芯を中心にして回転駆動される。
【0014】
それぞれのシャフト8A~8Dには、上下間隔をあけた複数位置に撹拌翼9が取り付けられている。1本のシャフト毎に複数の撹拌翼9がシャフト軸芯を中心にして周方向に間隔をあけて配置されている。この実施形態では、それぞれのシャフト8A~8Dに撹拌翼9が上下間隔をあけた三箇所に取り付けられていて、その一箇所毎に2枚の撹拌翼9が周方向に等間隔をあけて配置されている。即ち、1本のシャフト毎に6枚の撹拌翼9が取り付けられている。撹拌翼9は、それぞれのシャフト8A~8Dに上下間隔をあけた三箇所に限らず所望数の箇所に取り付けることができ、その一箇所毎に配置される撹拌翼9の数は2枚に限らず所望数にすることができる。また、その一箇所毎に配置される撹拌翼9の周方向の間隔も所望の間隔にすることができる。シャフト8A~8Dは4本に限らず、例えば、2本、4本、8本など所望の複数本にすることができる。
【0015】
隣接配置されたシャフト8A~8Dの撹拌翼9どうしは、それぞれのシャフトの軸芯を中心にした平面視の回転稼働範囲が重複している。撹拌翼9、シャフト8A~8Dおよび駆動モータ8は、ウインチ10によるワイヤの巻取りおよび繰出しによって一体的に昇降する。
【0016】
それぞれのシャフト8A~8Dでは、所定位置(この実施形態では最上位置および最下位置)の撹拌翼9には吐出口9aが設置されている。吐出口9aには、対象地盤B上に設置された供給タンクから地盤改良用の改良材Cが供給される。吐出口9aは撹拌翼9に直接形成することも、撹拌翼9に取り付けた改良材Cの供給管の一端開口を吐出口9aにすることもできる。改良材Cは公知のものが使用され、具体的にはセメントミルクを例示できる。
【0017】
位置判断システム1は、コーン貫入試験装置2と、それぞれの撹拌翼9の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部3と、撹拌翼モニタ部3による把握データが入力される制御部6とを備えている。この実施形態では、さらに、それぞれの撹拌翼9よりも上方に配置されるガイドパイプ4とガイドパイプ4の下端開口を塞ぐカバー材5と、ディスプレイ6aとが備わっている。
【0018】
コーン貫入試験装置2は、プローブ2aと、プローブ2aの上端部に接続されたロッド2bと、プローブ進退機構2cと、計測部2dとを有している。プローブ2aはプローブ進退機構2cによって、測定対象の地盤に貫入される先端コーンである。プローブ進退機構2cには油圧シリンダなどが用いられる。計測部2dは地盤にプローブ2aを貫入する際の抵抗力(N値)などのデータを測定する。コーン貫入試験装置2は公知のものであり、例えば電気式コーン貫入試験装置を用いる。この実施形態では、待機位置のプローブ2aは、ガイドパイプ4の下端開口4aから進退可能にガイドパイプ4に収容されている。
【0019】
プローブ2aの平面視の位置は、それぞれのシャフト8A~8Dのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定される。
図3に例示するようにこの実施形態では、プローブ2aの平面視の位置はシャフト8Aおよび8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定され、シャフト8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲外に設定されている。したがって、この実施形態では、対象シャフトはシャフト8Aおよび8Bとなる。
【0020】
この実施形態では、プローブ2aはそれぞれシャフト8A~8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されているが、プローブ2aは少なくとも対象シャフト(シャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されていればよい。したがって例えば、プローブ2aの平面視の位置が、シャフト8A、8B、8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定されている場合は、プローブ2aはそれぞれシャフト8A~8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置される。プローブ2aの平面視の位置が、シャフト8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内、かつ、シャフト8Aおよび8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲外に設定されている場合は、プローブ2aは、少なくともシャフト8Cおよび8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置される。ガイドパイプ4も同様に、少なくとも対象シャフト(シャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されていればよい。
【0021】
撹拌翼モニタ部3としては例えば、それぞれのシャフト8A~8Dのシャフト軸芯を中心とした回転角度(回転角度位置)を検知する角度センサが用いられる。尚、この実施形態では、すべてのシャフト8A~8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を把握する構成になっているが、平面視の位置を把握する撹拌翼9は、対象シャフト(この実施形態ではシャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9だけでもよい。
【0022】
ガイドパイプ4は、マスト8Mに固定されていて、それぞれのシャフト8A~8Dに沿って延在している。ガイドパイプ4は、それぞれのシャフト8A~8Dと一体的に昇降する。
【0023】
図4に例示するようにガイドパイプ4の下端開口4aには、カバー材5が環状のフランジ部材4bなどによって着脱自在に取り付けられている。カバー材5としては例えば、下方移動するプローブ2aによって突き破られる樹脂膜またはゴム膜などが用いられる。
【0024】
制御部6とディスプレイ6aとは有線または無線で通信可能に接続されている。ディスプレイ6aには、制御部6に入力されたデータや制御部6により演算されたデータなどが表示される。
【0025】
制御部6には、撹拌翼モニタ部3により把握されたそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を示す把握データが逐次、入力される。それぞれのシャフト8A~8Dの平面視の位置は既知であり、それぞれのシャフト8A~8Dにおけるそれぞれの撹拌翼9の取り付け位置、それぞれの撹拌翼9の平面視の大きさ・形状も既知である。プローブ2aの平面視の位置および平面視の大きさ・形状も既知である。これら既知のデータは制御部6に記憶されている。制御部6は、撹拌翼モニタ部3により検知された入力データと記憶されているデータとに基づいて、それぞれの撹拌翼9の平面視の位置を算出する。制御部6はこれらデータに基づいて様々な演算処理をする。
【0026】
次に、この位置判断システム1によって、対象地盤Bの深さ位置を判断する手順の一例を説明する。
【0027】
図5に例示するように従来同様、ウインチ10のワイヤを繰り出してそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら下方移動させる。これにより、対象地盤Bをそれぞれの撹拌翼9によって撹拌して撹拌範囲Rm(二点鎖線の範囲)を形成する。この工程では、それぞれのシャフト8A~8D(それぞれの撹拌翼9)の回転駆動に要するトルクと、それぞれのシャフト8A~8Dを吊り下げているワイヤに作用する荷重を逐次検知する。これらの検知データに基づいて、シャフト8A~8Dの先端が強固な支持層B1に到達したか否かを推定する。
【0028】
上述のトルクが過大になった時、或いは、上述の荷重が過小になった時に、シャフト8A~8Dの先端が支持層B1に到達したと推定して、支持層B1の深さ位置を予備的に検出する。この支持層B1の深さ位置の推定は従来と同様である。
【0029】
次いで、
図6に例示するように、ウインチ10のワイヤを巻き取ってそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら所定の位置まで上方移動させる。これにより、対象地盤Bをそれぞれの撹拌翼9によってさらに撹拌する。
【0030】
次いで、コーン貫入試験を実施する。この時に、撹拌翼モニタ部3により把握されている把握データに基づいて制御部6によって、対象シャフト8A、8Bの少なくとも1本の回転角度位置を制御して、それぞれのシャフト8A~8Dの回転駆動を停止する。
【0031】
詳述すると
図7に例示するように、制御部6は、待機位置のプローブ2aがそれぞれの対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9に干渉せずに下方移動できる移動領域Zを形成するように、対象シャフト8A、または、対象シャフト8B、或いは、対象シャフト8Aおよび8Bの回転角度位置を制御して回転を停止した状態にする。対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を、ディスプレイ6aに表示すると視覚的に把握できる。
【0032】
対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置が、
図3に例示する状態であると、待機位置にあるプローブ2aは対象シャフト8A、8Bに備わる撹拌翼9に干渉して下方移動できない。そこで、本願発明では、対象となる撹拌翼9の平面視の位置を把握する。移動領域Zの平面視の面積が最大になるように、対象シャフト8A、8Bの少なくとも1本の回転角度位置を制御するとよい。
【0033】
次いで、
図8に例示するように、待機位置のプローブ2aを、それぞれの撹拌翼9(対象シャフト8A、8Bのそれぞれの撹拌翼9)による撹拌範囲Rmを通過させて下方移動させてコーン貫入試験を行う。詳述すると、プローブ進退機構2cによってロッド2bを下方に押圧することでプローブ2aを下方移動させる。下方移動するプローブ2aは、
図9に例示するようにカバー材5を突き破ってカバー材5を貫通してガイドパイプ4の下端開口4aから下方に突出する。これにより、カバー材5には貫通孔5aが形成される。さらに下方移動するプローブ2aは、それぞれの撹拌翼9(対象シャフト8A、8Bのそれぞれの撹拌翼9)による撹拌範囲Rmを通過してコーン貫入試験が行われる。
【0034】
コーン貫入試験では、
図10に例示するように、プローブ2aに作用する先端抵抗qの試験データDが計測部2dによって測定される。プローブ2aがカバー材5を突き破る時(深さ位置d1)には先端抵抗qが若干大きくなり、その後、プローブ2aが支持層B1に到達すると、先端抵抗qが大きく上昇する。プローブ2aの待機位置からの下方移動量は計測部2dによって把握されている。また、待機位置の深さは、ウインチ10のワイヤの繰り出し長さなどに基づいて制御部6に入力されている。したがって、このコーン貫入試験の結果に基づいて、支持層B1の深さ位置d2が把握される。コーン貫入試験を行った後は、
図11に例示するように、プローブ進退機構2cによってロッド2bを介してプローブ2aを上方移動させて、ガイドパイプ4に収容する。
【0035】
上述したように、この位置判断システム1によれば、地盤改良装置7に対して、少なくとも、コーン貫入試験装置2と、撹拌翼モニタ部3と、撹拌翼モニタ部3による把握データが入力される制御部6とを備えればよい。コーン貫入試験を行う時には、撹拌翼モニタ部3による把握データを利用して、制御部6によって、上述した移動領域Zを形成するように、少なくともいずれかの対象シャフト8A、8Bの回転角度位置を制御すればよいので、地盤改良装置7に対して複雑な加工をする必要がない。既存の地盤改良装置7にも大きな困難無く適用することができる。
【0036】
支持層B1の深さ位置d2は、実際にコーン貫入試験を行った結果に基づいているので、より確実に把握できる。また、コーン貫入試験の際に、プローブ2aを撹拌されて相対的に柔らかくなった撹拌範囲Rmを通過させて下方移動させるので、プローブ2a(コーン貫入試験装置2)に対する負荷も軽減できる。
【0037】
さらに、
図5に例示した工程で推定した支持層B1の深さ位置と、位置判断システム1により把握した深さ位置d2とを比較することで、把握した深さ位置d2の妥当性を判断できる。即ち、従来の方法により推定される支持層B1の深さ位置と、位置判断システム1により把握した支持層B1の深さ位置d2とのダブルチェックによって、支持層B1の深さ位置を判断できる。
【0038】
この実施形態では、ガイドパイプ4を備えているので、プローブ2aおよびロッド2bが保護される。そのため、プローブ2aを破損させることなく、対象地盤Bの中で上下移動させ易くなっている。
【0039】
また、カバー材5を備えることで、対象地盤Bの中でガイドパイプ4を下方移動させる際に、プローブ2aに土砂が直接接触しないので、プローブ2aを保護するには益々有利になっている。さらに、ガイドパイプ4の内部に土砂が入り込まないので、プローブ2aがガイドパイプ4の中で詰まることが回避される。そのため、プローブ2aをガイドパイプ4から円滑に突出移動させることができる。
【0040】
カバー材5として樹脂膜またはゴム膜を使用することで、プローブ2aが貫通することで形成されるカバー材5の貫通孔5aとプローブ2aとの外周面とをカバー材5によってシールすることができる。これにより、カバー材5に貫通孔5aが形成された後も、対象地盤Bの中でガイドパイプ4を上下移動させても、ガイドパイプ4の内部に土砂が入り込むことを回避するには有利になる。
【0041】
支持層B1の深さ位置を把握した後は、地盤改良施工を本格的に行う。そこで
図12に例示するように、ウインチ10のワイヤを繰り出してそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら下方移動させる。それぞれのシャフト8A~8Dは、上記の把握した支持層B1の深さ位置d2まで下方移動させる。これにより、対象地盤Bをそれぞれの撹拌翼9によってさらに撹拌して撹拌範囲Rmを形成する。
【0042】
次いで、
図13に例示するように、ウインチ10のワイヤを巻き取ってそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら上方移動させつつ、吐出口9aから改良材Cを吐出して撹拌範囲Rmに改良材Cを注入する。これにより、撹拌範囲Rmの土砂と改良材Cを撹拌混合する。尚、
図12に例示する工程においても吐出口9aから改良材Cを吐出することもできる。
【0043】
この工程を経て、軟弱な対象地盤Bが
図14に例示する強固な改良地盤Rに改良される。この改良地盤Rは、支持層B1が存在している位置として、精度よく把握された深さ位置の上に形成されている。即ち、改良地盤Rは、強固な支持層B1の上に直接載置された状態で形成されているので高い安定性を確保できる。
【0044】
上記の実施形態では対象地盤Bを陸上地盤にしているが、対象地盤Bを海や河川湖沼の水底地盤にすることもできる。この場合は、
図15に例示するように、位置判断システム1および地盤改良装置7は、作業船11などに搭載される。支持層B1の深さ位置を把握する手順、改良地盤Rを形成する施工手順は先の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0045】
1 位置判断システム
2 コーン貫入試験装置
2a プローブ(先端コーン)
2b ロッド
2c プローブ進退機構
2d 計測部
3 撹拌翼モニタ部
4 ガイドパイプ
4a 下端開口
4b フランジ部材
5 カバー材
5a 貫通孔
6 制御部
6a ディスプレイ
7 地盤改良装置
7a 櫓(リーダ)
8 駆動モータ
8A、8B、8C、8D シャフト
8M マスト
9 撹拌翼
9a 吐出口
10 ウインチ
11 作業船
B 対象地盤
B1 支持層
Rm 撹拌範囲
R 改良地盤
C 改良材
Z 移動領域