(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】複合基板及びその製造方法、並びに、回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/18 20060101AFI20230620BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20230620BHJP
C23C 4/08 20160101ALI20230620BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20230620BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20230620BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C23C4/18
B32B15/04 B
C23C4/08
C23C28/00 E
C23C28/02
H05K1/09 A
(21)【出願番号】P 2019210571
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】弓場 優也
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067801(JP,A)
【文献】特開2009-032996(JP,A)
【文献】特開2007-005332(JP,A)
【文献】特開平07-157857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/18
B32B 15/04
H05K 1/09
C23C 4/08
C23C 28/00
C23C 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス板と、
アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層と、
銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶射層と、をこの順に備え、
前記金属層と前記溶射層との間に、構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在している、複合基板。
【請求項2】
前記金属層と前記溶射層の積層方向に沿って切断したときの切断面をみたときに、前記金属層と前記溶射層との間に、前記金属層と前記溶射層とが直接接する接触部と、前記金属間化合物が介在している介在部と、を有する、請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記金属間化合物は、Cu
9Al
4、CuAl及びCuAl
2からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の複合基板。
【請求項4】
前記金属層と前記溶射層の積層方向に沿って切断したときの切断面をみたときに、前記溶射層の前記金属層側の境界線に沿う前記金属間化合物の長さが15μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項5】
前記金属層と前記溶射層の積層方向に沿って切断したときの切断面をみたときに、前記溶射層の前記金属層側の境界線の長さを基準とする、前記金属間化合物による前記溶射層の被覆率が75%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合基板。
【請求項6】
セラミックス板と、前記セラミックス板上に導体部と、を備え、
前記導体部は、前記セラミックス板側から、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層と、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶射層と、をこの順に備え、
前記金属層と前記溶射層との間に、構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在している、回路基板。
【請求項7】
セラミックス板上に設けられた、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層の表面に、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属粒子を吹き付けて前駆体膜を形成する工程と、
前記前駆体膜を加熱して溶射層を得るとともに、前記金属層と前記溶射層との間に点在するように金属間化合物を生成させる加熱工程と、を有する、複合基板の製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程では、前記前駆体膜を250~290℃の加熱温度で5分間~1時間加熱して前記溶射層を得る、請求項7に記載の複合基板の製造方法。
【請求項9】
セラミックス板上に設けられた、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層の表面に、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属粒子を吹き付けて前駆体膜を形成する工程と、
前記前駆体膜を加熱して溶射層を得るとともに、前記金属層と前記溶射層との間に点在するように金属間化合物を生成させ、前記セラミックス板上に所定パターンを有する導体部を形成する加熱工程と、を有する、回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記加熱工程では、前記前駆体膜を250~290℃の加熱温度で5分間~1時間加熱して前記溶射層を得る、請求項9に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合基板及びその製造方法、並びに、回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モーター等の産業機器、及び電気自動車等の製品には、大電力制御用のパワーモジュールが用いられている。このようなパワーモジュールには、半導体素子から発生する熱を効率的に拡散させるため、高い熱伝導性を有するセラミックス板を備える回路基板等が用いられている。
【0003】
回路基板の金属回路部分には、高電圧で及び高電流が流れる場合もあるため、主として銅が用いられている。しかし、使用時の環境変化、及びスイッチングによる熱等によって熱衝撃を繰り返して受けるため、銅とセラミックスの熱膨張率の差に起因する熱応力によって、セラミックス板から銅回路が剥離することがあった。このため、塑性変形しやすいアルミニウム層をセラミックス板と銅回路との間に設けて、熱応力を緩和する技術が知られている。このような状況の下、特許文献1では、アルミニウム部材と銅部材との間の接合層に、金属間化合物層と共晶層を形成し、接合層におけるクラックの発生を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属間化合物は、硬くて脆いという特性を有する。このため、金属間化合物を層状に形成すると、加熱と冷却を繰り返すヒートサイクルの条件下ではクラック発生の要因となることが懸念される。
【0006】
そこで、本開示では、ヒートサイクルに対する耐久性に優れるとともに高い導電性を有する複合基板及び回路基板を提供する。また、本開示では、ヒートサイクルに対する耐久性に優れるとともに高い導電性を有する複合基板及び回路基板を製造することが可能な複合基板及び回路基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る複合基板は、セラミックス板と、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層と、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶射層と、をこの順に備え、金属層と溶射層との間に構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在している。
【0008】
上記複合基板は、金属層と溶射層との間に構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在していることから、金属層と溶射層が強固に接合しており、高い導電性を有する。また、金属間化合物が層状に形成されるのではなく点在していることからヒートサイクルに伴うクラックの発生を抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0009】
金属層と溶射層の積層方向に沿って切断したときの切断面をみたときに、上記複合基板は、金属層と溶射層との間に、金属層と溶射層とが直接接する接触部と、金属間化合物が介在している介在部と、を有していてよい。これによって、金属層と溶射層との接合強度と、ヒートサイクルに対する耐久性を一層高い水準で両立することができる。
【0010】
上記金属間化合物は、Cu9Al4、CuAl及びCuAl2からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。これによって、金属層と溶射層との接合強度と、ヒートサイクルに対する耐久性をより一層高い水準で両立することができる。
【0011】
金属層と溶射層の積層方向に沿って切断したときの切断面をみたときに、溶射層の金属層側の境界線に沿う金属間化合物の長さが15μm以下であってよい。また、上記切断面をみたときに、溶射層の金属層側の境界線の長さを基準とする、金属間化合物による溶射層の被覆率が75%以下であってよい。このような複合基板は、ヒートサイクルに対する耐久性を十分に高くすることができる。
【0012】
本開示の一側面に係る回路基板は、セラミックス板と、セラミックス板上に導体部とを備え、導体部は、セラミックス板側から、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層と、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶射層と、をこの順に備え、金属層と溶射層との間に、構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在している。
【0013】
上記回路基板における導体部は、金属層と溶射層との間に構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在していることから、金属層と溶射層が強固に接合しており、高い導電性を有する。また、金属間化合物が層状に形成されるのではなく点在していることからヒートサイクルに伴うクラックの発生を抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0014】
本開示の一側面に係る複合基板の製造方法は、セラミックス板上に設けられた、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層の表面に、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属粒子を吹き付けて前駆体膜を形成する工程と、前駆体膜を加熱して溶射層を得るとともに、金属層と溶射層との間に点在するように金属間化合物を生成させる加熱工程と、を有する。
【0015】
上記複合基板の製造方法では、前駆体膜を加熱して、金属層と溶射層との間に構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在するように生成させている。金属間化合物が点在するほどに生成するまで前駆体膜を加熱していることから、加工硬化が十分に緩和された溶射層を得ることができる。このように加工硬化が緩和された溶射層は高い導電性を有する。また、金属間化合物が層状に生成するのではなく点在するように生成していることからヒートサイクルに伴うクラックの発生を抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0016】
本開示の一側面に係る回路基板の製造方法は、セラミックス板上に設けられた、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層の表面に、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属粒子を吹き付けて前駆体膜を形成する工程と、前駆体膜を加熱して溶射層を得るとともに、金属層と溶射層との間に点在するように金属間化合物を生成させ、セラミックス板上に所定パターンを有する導体部を形成する加熱工程と、を有する。
【0017】
上記回路基板の製造方法では、前駆体膜を加熱して、金属層と溶射層との間に構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物が点在するように生成させて導体部を形成している。金属間化合物が点在するほどに生成するまで前駆体膜を加熱していることから、加工硬化が十分に緩和された溶射層を得ることができる。このように加工硬化が緩和された溶射層は高い導電性を有する。また、金属間化合物が層状に形成されるのではなく点在していることからヒートサイクルに伴うクラックの発生を抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、ヒートサイクルに対する耐久性に優れるとともに高い導電性を有する複合基板及び回路基板を提供することができる。また、本開示では、ヒートサイクルに対する耐久性に優れるとともに高い導電性を有する複合基板及び回路基板を製造することが可能な複合基板及び回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る複合基板を示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る回路基板を示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る複合基板(回路基板)の断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、第1前駆体膜及び第2前駆体膜の成膜に用いられる粉体スプレー装置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【
図6】
図6は、実施例3の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【
図7】
図7は、比較例1の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【
図8】
図8は、比較例2の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【
図9】
図9は、比較例3の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【
図10】
図10は、比較例4の回路基板の切断面を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る複合基板100の金属層及び溶射層の積層方向に沿う断面図である。
図1に示す複合基板100は、セラミックス板10と、セラミックス板10を挟むように一対の積層部20と、を備える。積層部20は、セラミックス板10側から、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属層21と、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶射層22と、をこの順に備える。
図1は、金属層21及び溶射層22の積層方向に沿う切断面を示している。
【0022】
積層部20の一方又は双方は、所定パターンを有する導体部(金属回路)であってよい。この場合、複合基板100は回路基板となる。導体部には例えば銀接合層を介して半導体素子が接合され回路が形成される。
【0023】
セラミックス板10としては、通常のセラミックスで構成されるものであってよい。セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)等が挙げられる。セラミックス板10の厚みは、優れた絶縁性を維持しつつ、ヒートサイクルに対する耐久性向上と薄型化を図る観点から、例えば0.2~1.0mmであってよい。
【0024】
金属層21は、複合基板100の熱伝導性を高く維持しつつ、セラミックス板10と溶射層22の熱膨張率の差に起因してヒートサイクルの際に発生する熱応力を低減する機能を有する。このような機能を十分に発揮するため、金属層21は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分として含んでよい。アルミニウム合金としては、アルミニウム-マグネシウム合金、及びアルミニウム-リチウム合金等が挙げられる。ここで、「主成分」とは、金属層21の全体に対する含有量が90質量%以上である成分である。金属層21の厚みは、ヒートサイクルの際に発生する熱応力を十分に低減しつつ、薄型化を図る観点から、例えば0.05~1mmであってもよい。
【0025】
金属層21は、セラミックス板10の主面上にろう材を塗布し金属板を接合することによって形成されるものであってもよいし、セラミックス板10の主面に対して、金属粒子を溶射し加熱処理することによって形成される溶射層であってもよい。溶射層であれば、ろう材を用いずにセラミックス板10の主面上に金属層21を形成することができる。溶射時にマスクを用いれば、エッチングを行うことなく所定パターンを有する導体部を形成することができる。
【0026】
溶射層22は、複合基板100の熱伝導性を高く維持しつつ、導電率を十分に高くする観点から、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分として含んでよい。銅合金の例としては、銅-リン合金、及び銅-モリブデン合金等が挙げられる。ここで、「主成分」とは、溶射層22の全体に対する含有量が90質量%以上である成分である。溶射層22の厚みは、導電性及び熱伝導性を十分に高くしつつ、ヒートサイクルに対する耐久性向上と薄型化を図る観点から、例えば0.1~3mmであってよい。
【0027】
溶射層22は、セラミックス板10の主面に対して、金属粒子を溶射し加熱処理することによって形成される。溶射層22は、ろう材を用いることなく金属層21の主面上に形成することができる。溶射時にマスク材を用いれば、エッチングを行うことなく所定パターンを有する導体部を形成することができる。
【0028】
図2は、一実施形態に係る回路基板200の斜視図である。回路基板200は、セラミックス板10と、セラミックス板10の一方の主面10A上に設けられた複数の導体部20Aを備える。複数の導体部20Aの形状は全て同じであってもよいし、
図2に示すように、異なる形状のものを含んでいてもよい。導体部20Aは、セラミックス板10側から、金属層21と溶射層22をこの順に有する。すなわち、導体部20Aは、
図1の積層部20と同様の積層構造を有する。回路基板200は、セラミックス板10の他方の主面にも同様に複数の導体部20Aを備える。変形例では、一方の主面のみに一つ又は複数の導体部20Aを備えていてもよい。
【0029】
図3は、複合基板100(回路基板200)の金属層21及び溶射層22の積層方向に沿う断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図3は、複合基板100(回路基板200)における一方の金属層21とこれに隣接するセラミックス板10及び溶射層22の一部を示している。溶射層22の金属層21側との境界線Lに沿って、金属間化合物30が点在している。金属間化合物30は、構成元素として銅及びアルミニウムを有する。具体的には、Cu
9Al
4、CuAl及びCuAl
2からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。金属間化合物30の同定は、X線回折によって行うことができる。
【0030】
複合基板100(回路基板200)では、金属層21と溶射層22との間に金属間化合物30が点在している。金属層21と溶射層22との間には、金属層21と溶射層22とが直接接する接触部40と、金属層21と溶射層22との間に金属間化合物30が介在する介在部42とが形成される。
【0031】
介在部42における金属間化合物30は、構成元素として銅及びアルミニウムを有するため、金属層21と溶射層22の両方となじみがよく、両者を強固に接合する機能を有する。これによって金属層21と溶射層22の間の導電性を向上することができる。また、ヒートサイクルによる熱応力に伴う歪を接触部40が担うため、介在部42における金属間化合物30に熱応力が集中することを抑制できる。このようにして、通常は硬くて脆い金属間化合物にクラックが生じることを抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。
【0032】
図3に示すような切断面をみたときに、溶射層22の金属層21側の境界線Lに沿う金属間化合物30(介在部42)の長さは25μm未満である。境界線Lに沿う金属間化合物30の長さは、以下の手順で測定することができる。複合基板を、ダイヤモンドカッター又はバンドソー等を用いて切断し、ダイヤモンド砥粒等で研磨して、
図3に示すような切断面を得る。この切断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、3000倍の拡大画像の写真を撮影する。この写真に映し出されている溶射層22の金属層21側の外縁を境界線Lとし、この境界線Lに沿う金属間化合物30の長さを測定する。長さは、境界線Lに沿って例えば紐を配置し、金属間化合物30の部分の紐の長さと写真の拡大倍率から算出することができる。測定は、上記切断面において、任意に選択され、互いに異なる5箇所の領域において撮影された写真を用いて行う。本開示では、このようにして測定される長さが25μm以上である金属間化合物は層状とみなされる。
【0033】
本開示における「金属間化合物が点在する」とは、上述の5箇所の領域において撮影されたSEM写真において、金属間化合物30の境界線Lに沿う長さの最大値が25μm未満であることを意味する。すなわち、上述の5箇所の領域において撮影されたSEM写真において、金属間化合物30として、境界線Lに沿う長さが25μm未満のもののみを含むことを意味する。上述の5箇所の領域において撮影されたSEM写真において、境界線Lに沿う金属間化合物30の長さは、ヒートサイクルに対する耐久性をさらに向上する観点から、20μm以下であってよく、15μm以下であってもよい。これによって、金属間化合物30に応力が集中することが一層抑制され、ヒートサイクルに対する耐久性を十分に高くすることができる。上記境界線Lに沿う金属間化合物30の長さは、加工硬化が十分に緩和された溶射層22とする観点から、2μm以上であってよく、5μm以上であってもよい。
【0034】
上記切断面をみたときに、溶射層22の金属層21側の境界線Lの長さを基準とする、金属間化合物による溶射層22の被覆率が75%以下であってよく、50%未満であってもよい。これによって、境界線Lにおいて溶射層22と金属層21とが直接接触する接触部40の割合が高くなり、ヒートサイクルの際に金属間化合物30に熱応力が集中することを一層抑制することができる。したがって、ヒートサイクルに対する耐久性を十分に高くすることができる。上記被覆率は、溶射層22の加工硬化を十分に緩和させる観点及び金属層21と溶射層22とを一層強固に接合させる観点から、10%以上であってよく、30%以上であってもよい。
【0035】
上記被覆率は、金属間化合物30の長さの測定と同様に、3000倍の拡大画像の写真と紐を用いて行うことができる。すなわち、境界線Lに沿って例えば紐を配置し、境界線Lの全体の長さ(L0)と、写真に映し出されている金属間化合物30(介在部42)の部分の紐の長さ(L1)とを測定する。金属間化合物30が複数ある場合、長さ(L1)は、各金属間化合物30の境界線Lに沿う長さの合計値となる。測定は、上記切断面において、任意に選択される5箇所の領域において撮影された写真を用いて行う。それぞれの写真を用いて、(L1/L0)×100の計算を行い、この計算値の平均値を、本開示における被覆率とする。
【0036】
複合基板100の製造方法の一例は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第1金属粒子を、不活性ガスとともにセラミックス板10の主面に吹き付けて第1前駆体膜を形成する工程と、
不活性ガス雰囲気下で第1前駆体膜を加熱して金属層21を形成する工程と、
セラミックス板10上に設けられた、金属層21の表面に、銅及び銅合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2金属粒子を吹き付けて第2前駆体膜を形成する工程と、
第2前駆体膜を加熱して溶射層22を得るとともに、金属層21と溶射層22との間に点在するように金属間化合物30を生成させる加熱工程と、を有する。
【0037】
この例では、金属層21及び溶射層22の両方を溶射によって形成している。これらの層の形成には、粉体スプレー装置を用いることができる。具体的には、まず、粉体スプレー装置を用いて、第1金属粒子をセラミックス板10の主面に吹き付ける。これによって、セラミックス板10の主面上に第1前駆体膜が成膜される。このとき、一方の主面上に第1前駆体膜を成膜した後、他方の主面上に第1前駆体膜を成膜してよい。セラミックス板10の一方の主面上のみに積層部20を有する複合基板を製造する場合、片方の主面のみに第1前駆体膜を成膜すればよい。
【0038】
第1金属粒子は、アルミニウム粒子であってもよいし、アルミニウム-マグネシウム合金粒子、及びアルミニウム-リチウム合金粒子等の、他の金属元素を含むアルミニウム合金粒子であってもよい。マグネシウム、及びリチウムのようなアルミニウムよりも酸素親和性の高い金属元素を含有するアルミニウム合金粒子を用いると、成膜後の加熱の際、マグネシウム又はリチウム等の金属元素と、セラミックス板の表面の酸化物とが反応し、これらが強固に接合する傾向がある。ヒートサイクルに対する耐久性を更に向上する観点から、第1金属粒子におけるマグネシウム、リチウム等の金属元素の含有量は、第1金属粒子全体に対して6.0質量%以下であってもよい。
【0039】
セラミックス板上に形成された第1前駆体膜は、不活性ガス雰囲気下で加熱されて金属層21となる。このときの加熱温度は、400~600℃であってよい。第1前駆体膜を400℃以上の温度で加熱することで、アルミニウムとセラミックス板10の表面の酸化物との反応が十分に進行する。これによって、金属層21とセラミックス板10とを強固に接合することができる。また、第1前駆体膜を600℃以下の温度で加熱処理することで、第1前駆体膜が軟化することによる影響を低減することができる。
【0040】
本例では、金属層21を溶射によって形成しているが、これに限定されない。例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む金属板を準備し、これをろう材を用いて接合してセラミックス板10上に金属層21を設けてもよい。この場合、セラミックス板10上に所定パターンの導体部を形成するためには、金属層21のエッチングが必要となる場合がある。
【0041】
溶射の場合、セラミックス板10の主面の一部を覆うマスク材を配置することにより、セラミックス板10上にパターン(回路パターン)を有する金属層21を形成することができる。この方法であれば、成膜後のエッチングのような追加の工程を行うことなく、形状精度の高い導体部を容易に形成することができる。
【0042】
金属層21を形成した後、溶射によって金属層21の主面上に溶射層22を形成する。溶射層22の形成は例えば以下の手順で行う。第2金属粒子を金属層21のセラミックス板10側とは反対側の主面に吹き付けて、第2前駆体膜を形成する。第2金属粒子としては、銅粒子、銅-リン合金粒子及び銅-モリブデン合金粒子等が挙げられる。第2金属粒子における銅以外の金属元素の含有量は、第2金属粒子全体に対して6.0質量%以下であってよい。
【0043】
溶射層22は、金属層21の主面上に成膜された第2前駆体膜を、不活性ガス雰囲気下で加熱して形成する。このときの第2前駆体膜の加熱温度は、250~300℃であってよく、250~290℃であってもよい。加熱処理温度が高くなり過ぎると、金属間化合物30が層状に形成されやすくなり、ヒートサイクルに対する耐久性が低下する傾向がある。一方、加熱処理温度が低過ぎると溶射層22における加工硬化を十分に緩和できず、優れた導電性が損なわれる傾向にある。また、金属間化合物30の生成量が少なくなる傾向にある。
【0044】
第2前駆体膜の上記加熱温度における加熱時間は、5分間~1時間であってよい。加熱時間が短過ぎると、溶射層22の加工硬化を十分に緩和できず、優れた導電性が損なわれる傾向にある。また、金属間化合物30の生成量が少なくなる傾向にある。一方、加熱時間が長過ぎると、金属間化合物30が層状に形成されやすくなり、ヒートサイクルに対する耐久性が低下する傾向がある。なお、第2前駆体膜の加熱温度及び加熱時間を変えることによって、金属間化合物30による溶射層22の被覆率、及び、境界線Lに沿う金属間化合物30の長さを調節することができる。
【0045】
第2前駆体を成膜する際に、第1前駆体を成膜する際と同様のマスク材を用いることによって、金属層21と同様のパターン(回路パターン)を有する溶射層22を形成することができる。この方法であれば、成膜後のエッチングのような追加の工程を行うことなく、形状精度の高い導体部を容易に形成することができる。このようにして、セラミックス板10上に導体部を有する回路基板を製造してもよい。なお、溶射層22は、金属層21よりも一回り小さくなるように形成してもよい。
【0046】
図4は、第1前駆体膜及び第2前駆体膜の成膜に用いられる粉体スプレー装置の一例を示す図である。粉体スプレー装置50は、ガス供給部54、ヒーター56、粒子供給部57、先細末広型のスプレーガンのノズル51及びこれらを連結する配管を備える。ガス供給部54の下流側には第1圧力調節部55aが設けられている。第1圧力調節部55aの下流側で配管が2つに分岐する。分岐した2つの配管の一方に第2圧力調節部55bとヒーター56がこの順に接続され、分岐した2つの配管の他方に第3圧力調節部55cと粒子供給部57とがこの順に接続されている。ヒーター56及び粒子供給部57は配管を介してノズル51に接続されている。
【0047】
ガス供給部54は、作動ガスとして機能する不活性ガスを供給する。不活性ガスは、例えばヘリウムガス、窒素ガス、又はこれらの混合ガスであってよい。ガス供給部54から供給される作動ガスの一部は、第2圧力調節部55bにより圧力が調節された後、必要に応じてヒーター56によって加熱される。加熱温度は、第1前駆体膜を形成する際は例えば10~270℃であってよい。第2前駆体膜を形成する際は例えば10~650℃であってよい。その後、加熱された作動ガスはスプレーガンのノズル51に供給される。ガス供給部54から供給される作動ガスの他部は、第3圧力調節部55cによって圧力が調整された後、粒子供給部57に供給される。粒子供給部57から、作動ガスとともに成膜用の金属粒子がスプレーガンのノズル51に供給される。
【0048】
ノズル51の入口51aにおける作動ガスのゲージ圧力は1.5~5.0MPaであってよい。ヒーター56による加熱温度は、通常、成膜される金属粒子の融点又は軟化点よりも低く設定される。
【0049】
スプレーガンのノズル51に供給された第1金属粒子又は第2金属粒子と作動ガスは、先細の部分を通ることで圧縮され、その下流側の末広の部分で一気に膨張することで加速される。金属粒子は所定の温度に加熱されるとともに所定の速度まで加速された後、ノズル51の出口から噴出される。ノズル51から噴出された第1金属粒子又は第2金属粒子は、セラミックス板10の主面に吹き付けられる。これにより第1金属粒子及び第2金属粒子がセラミックス板10の主面及び金属層21の表面にそれぞれ固相状態で衝突しながら堆積して、第1前駆体膜及び第2前駆体膜が成膜される。
図4では、セラミックス板10の主面に成膜された第1前駆体膜21aが示されている。
【0050】
上述の製造方法によって、セラミックス板10と、その両方の主面上に、セラミックス板10側から、金属層21と溶射層22とをこの順に備える積層部20を有し、金属層21と溶射層22との間に、構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物30が点在している複合基板100を得ることができる。上述の複合基板100に関する説明内容は、複合基板100の製造方法にも適用することができる。
【0051】
回路基板の製造方法の一例は、上述の製造方法によって得られる複合基板100の積層部20をエッチングによってパターニングして、導体部を形成する工程を有していてもよい。別の例では、第1前駆体膜及び第2前駆体膜を成膜する際にマスク材を用いることによって、エッチングを行うことなくセラミックス板10の両方の主面上に導体部を形成することによって製造してもよい。この場合、回路基板の製造方法は、上述の複合基板の製造方法における第1前駆体膜及び第2前駆体膜を形成するそれぞれの工程において、マスク材を用いて所定のパターン形状を有する第1前駆体膜及び第2前駆体膜をそれぞれ成膜すればよい。その他の点については、複合基板と同様にして製造することができる。
【0052】
上述の複合基板100及び回路基板200の製造方法では、構成元素として銅及びアルミニウムを有する金属間化合物30が点在するように第2前駆体膜が加熱されている。このため、加工硬化が緩和された溶射層22を得ることができる。このような溶射層22は優れた導電性を有する。また、金属間化合物30が層状に生成するのではなく点在するように生成していることからヒートサイクルに伴うクラックの発生を抑制し、ヒートサイクルに対する耐久性を向上することができる。このため、複合基板100及び回路基板200が用いられたパワーモジュールは信頼性に優れる。また、点在する金属間化合物30が金属層21と溶射層22との接合を強固にして導電性を向上することができる。
【0053】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、セラミックス板10の両方の主面に積層部20(導体部20A)を設けることは必須ではなく、例えば、セラミックス板10の一方の主面のみに積層部20(導体部20A)を設けてもよい。また、セラミックス板10を挟む一対の積層部20(導体部20A)における金属層21及び溶射層22の厚み、形状及び組成の少なくとも一つは、互いに異なっていてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本開示の内容をさらに具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
(回路基板の作製)
セラミックス板として窒化アルミニウム(AIN)製の基板(サイズ:縦×横×厚み=60mm×50mm×0.635mm、三点曲げ強度:500MPa、熱伝導率:150W/mK、純度:95%以上)を準備した。
【0056】
基板の主面の一部を鉄製のマスク材でマスキングした。粉体スプレー装置によって、アルミニウム粒子(高純度化学研究所社製のガスアトマイズ粉、メジアン径:24μm)を、マスキングした主面に吹き付けて、アルミニウム膜(第1前駆体膜)を形成した。アルミニウム膜の成膜条件は、作動ガスとして窒素ガスを用い、作動ガスの加熱温度を20℃、スプレーガンのノズル入口における作動ガスの圧力を1.5MPaとした。
【0057】
形成されたアルミニウム膜に、窒素雰囲気下、500℃で3時間保持する加熱処理を施し、0.2mmの厚さを有するアルミニウム製の金属層を得た。
【0058】
次に、金属層の一部を鉄製のマスク材でマスキングした。粉体スプレー装置によって、銅粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、水アトマイズ粉、メジアン径:17μm)を金属層の表面に吹き付けて、金属層の表面上に銅膜(第2前駆体膜)を成膜した。銅膜の成膜条件は、作動ガスとして窒素ガスを用い、作動ガスの加熱温度を350℃、スプレーガンのノズル入口における作動ガスの圧力を3MPaとした。
【0059】
形成された銅膜に、窒素雰囲気下、280℃で10分間保持する加熱処理を施し、0.4mmの厚さを有する銅製の溶射層を得た。溶射層は、金属層よりも縦及び横の長さが約50μm小さくなるように形成した。
【0060】
セラミックス板の両方の主面において、上述の手順で金属層及び溶射層を順次形成し、セラミックス板の両方の主面上に、セラミックス板側から、金属層及び溶射層を有する導体部を備える実施例1の回路基板を得た。
【0061】
(回路基板の評価)
<SEM観察による評価>
回路基板を金属層及び溶射層の積層方向に沿ってダイヤモンドカッターを用いて切断し、ダイヤモンド砥粒で研磨してSEM観察用の切断面とした。切断面をSEMで観察し、金属層と溶射層の間における金属間化合物の形態を確認した。結果は表1に示すとおりであった。
図5は、実施例1の回路基板の切断面を示すSEM写真である。
【0062】
図5のようなSEM写真(倍率:3000倍)を互いに異なる5箇所の位置で撮影した。これらのSEM写真において、溶射層の金属層側の境界線Lに沿う金属間化合物の長さの最大値を求めた。また、各SEM写真において、溶射層の金属層側の境界線Lの長さ(L0)と、境界線Lに沿う金属間化合物の長さの合計値(L1)を、紐を用いて測定した。それぞれの写真において、(L1/L0)×100の計算を行い、この計算値の平均値を被覆率として求めた。結果は表1に示すとおりであった。
【0063】
<導電率の測定>
渦電流法によって導体部の導電率測定を行った。測定は、デジタル導電率計(GEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ社製、商品名:AutoSigma3000)を用いて行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0064】
<ビッカース硬度の測定>
溶射層の表面におけるビッカース硬度を測定した。測定は、ダイナミック超微小硬度計(株式会社島津製作所製、商品名:DUH211)を用いて行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0065】
<ヒートサイクル試験>
「180℃の環境に30分放置した後に-45℃の環境に30分放置」を1サイクルとして、1000サイクルのヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後、上述の「SEM観察による評価」と同様にしてSEM観察を行い、金属層及び溶射層の剥離等の有無を検査した。SEM観察の結果、剥離が検知されなかったものを「A」、剥離が検知されたものを「B」と評価した。結果は表1に示すとおりであった。
【0066】
[実施例2],[実施例3]、[比較例1]~[比較例3]
窒素雰囲気下における銅膜の加熱温度及び加熱時間を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製し、各評価を行った。各評価の結果は表1に示すとおりであった。
【0067】
[比較例4]
銅膜の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製し、各評価を行った。各評価の結果は表1に示すとおりであった。
【0068】
図6は、実施例3の回路基板の切断面を示すSEM写真である。
図7は、比較例1の回路基板の切断面を示すSEM写真である。
図8は、比較例2の回路基板の切断面を示すSEM写真である。
図9は、比較例3の回路基板の切断面を示すSEM写真である。
図10は比較例4の回路基板の切断面を示すSEM写真である。各実施例の回路基板では、金属間化合物30が、溶射層22と金属層21の間において点在していることが確認された。一方、比較例1~3の回路基板では、金属間化合物130が溶射層122と金属層121の間において点在しているとはいえず、層状になっていた。
【0069】
【0070】
各実施例の回路基板の導体部は優れた導電性を有していた。また、ビッカース硬度の結果から、各実施例では溶射層の加工硬化が十分に緩和されていることが確認された。一方、金属間化合物が層状に形成されていた比較例1~3は、実施例1~3よりもヒートサイクルの耐久性に劣ることが確認された。また、金属層と溶射層との間に金属間化合物が点在していない比較例4の回路基板は導電性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示によれば、ヒートサイクルに対する耐久性に優れるとともに高い導電性を有する複合基板及び回路基板を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…セラミックス板、10A…主面、20…積層部、20A…導体部、21…金属層、21a…第1前駆体膜、22…溶射層、30…金属間化合物、40…接触部、42…介在部、50…粉体スプレー装置、51…ノズル、51a…入口、54…ガス供給部、55a…第1圧力調節部、55b…第2圧力調節部、55c…第3圧力調節部、56…ヒーター、57…粒子供給部、100…複合基板、200…回路基板。