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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019228540
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095040
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 利広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 理
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】葉山 智明
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109094432(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
車体に取り付け可能であり、前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
上下動可能に前記アッパレールに取り付けられているタイヤと、
前記タイヤを駆動するアクチュエータと、
前記タイヤを前記車体または前記ロアレールに押し付けるバネと、
前記アッパレールに回転可能に連結されているとともに前記バネによって下方へ付勢されている第1ブラケットと、
前記タイヤを支持しており、前記第1ブラケットに回転可能に連結されている第2ブラケットと、
前記第2ブラケットを前記第1ブラケットに拘束する拘束部材であって脱着可能な拘束部材と、
を備えている、シートスライド装置。
【請求項2】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
車体に取り付け可能であり、前記アッパレールをスライド可能に保持しているロアレールと、
上下動可能に前記アッパレールに取り付けられているタイヤと、
前記タイヤを駆動するアクチュエータと、
前記タイヤを前記車体または前記ロアレールに押し付けるバネと、
一端が前記アッパレールに回転可能に連結されている第1ブラケットと、
一端が前記第1ブラケットの他端に回転可能に連結されているとともに、前記第1ブラケットの一端の側へ延びている第2ブラケットと、
前記第2ブラケットを前記第1ブラケットに拘束する拘束部材であって脱着可能な拘束部材と、
を備えており、
前記第1ブラケットの回転軸と、前記第2ブラケットの回転軸は、平行に延びており、
前記第2ブラケットは、前記第1ブラケットの回転軸と前記第2ブラケットの回転軸の間で前記タイヤを支持しており、
前記第2ブラケットは、前記第2ブラケットの回転軸に対して前記タイヤの側とは反対側の位置にて前記バネにより下方へ付勢されている、シートスライド装置。
【請求項3】
前記タイヤは、前記ロアレールまたは前記車体の上のモールの上に押し付けられる、請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記タイヤは、前記ロアレールと前記車体の間の溝を埋めるT形モールの上に押し付けられる、請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記拘束部材は、上から前記第2ブラケットを通過して前記第1ブラケットに固定されるボルトである、請求項1から4のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートを、アクチュエータを使って移動させるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータでシートを移動(スライド)させるシートスライド装置が知られている。シートスライド装置は、車体に取り付けられる長尺のロアレールと、ロアレールに係合しているアッパレールを備えている。アッパレールにシートが取り付けられる。特許文献1のシートスライド装置は、ロアレールの内部にリードスクリュを配置している。一方、アッパレールは、リードスクリュに螺合するスクリューナットと、スクリューナットを回転させるアクチュエータとウォームギアを備えている。アクチュエータとウォームギアでスクリューナットを回転させると、スクリューナットとともにアッパレール(即ちシート)が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-210113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シートの移動範囲が長くなる傾向がある。すなわち、ロアレールが長くなる傾向がある。リードスクリュとウォームギアの組み合わせの機構は、アッパレール(シート)の移動速度が遅く、長い距離の移動には不適である。長い距離の移動に適した移動機構を備えているシートスライド装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するシートスライド装置は、上下動可能にアッパレールに取り付けられているタイヤと、タイヤを駆動するアクチュエータと、タイヤを車体またはロアレールに押し付けるバネを備えている。このシートスライド装置は、タイヤでアッパレール(すなわちシート)を移動させる。タイヤは長い距離の移動に適している。このシートスライド装置は、タイヤを車体またはロアレールに押し付けつつタイヤを駆動するので、アッパレール(すなわちシート)を高速かつ円滑に移動させることができる。
【0006】
一方、ロアレールは車体に設けられた溝に収められることがある。この場合、ロアレールと溝の側面との間の隙間を埋めるT形モールが用いられる。タイヤがT形モールの上に押し付けられていると、T形モールの交換作業が煩雑になる。そこで、シートスライド装置は、次の構造を有しているとよい。
【0007】
シートスライド装置は、第1ブラケット、第2ブラケット、拘束部材を備えている。第1ブラケットは、アッパレールに回転可能に連結されているとともにバネによって下方へ付勢されている。第2ブラケットは、タイヤを支持しており、第1ブラケットに回転可能に連結されている。拘束部材は、第2ブラケットを第1ブラケットに拘束する。拘束部材によって第2ブラケットが第1ブラケットに拘束された状態では、バネがタイヤをロアレールまたは車体に押し付ける。
【0008】
拘束部材を外すと、第2ブラケットとともにタイヤが自由になり、T形モールへの押し付け力がなくなる。このとき、第1ブラケットを付勢しているバネを外す必要がない。タイヤに加わる押し付け力がなくなるので、T形モールを容易に交換することができる。T形モールの交換後、再び拘束部材を取り付ければ第2ブラケットとともにタイヤがT形モール(ロアレールまたはフロアパネル)に押し付けられ、アクチュエータでアッパレール(シート)を移動できるようになる。
【0009】
第1ブラケットと第2ブラケットは、上記の構造に代えて次の第2構造を有していてもよい。第1ブラケットの一端はアッパレールに回転可能に連結されている。第2ブラケットの一端は第1ブラケットの他端に回転可能に連結されている。第2ブラケットは第1ブラケットの一端の側へ延びている。第1ブラケットの回転軸(第1軸)と、第2ブラケットの回転軸(第2軸)は、平行に延びている。第2ブラケットは、第1軸と第2軸の間でタイヤを支持している。第2ブラケットは、第2軸に対してタイヤの側とは反対側の位置にてバネにより下方へ付勢されている。別言すれば、第2ブラケットのバネの連結とタイヤは、第2軸を挟むように位置している。
【0010】
第2の構造によれば。第2ブラケットがバネで下方に付勢されている。第2ブラケットが第1ブラケットに拘束された状態では、第2ブラケットは第1軸の周りに回転可能であり、バネによりタイヤはT形モール(ロアレールまたはフロアパネル)に押し付けられる。
【0011】
拘束部材を外すと、第2ブラケットは、バネの力により、第2軸を中心に回転する。このとき、第2軸よりもバネに近い側が下がり、バネよりも遠い側(すなわち、タイヤが支持されている側)が上がる。拘束部材を外すとバネの力でタイヤがT形モールから離れる。T形モールの交換作業がより容易になる。
【0012】
なお、拘束部材の典型は、上から第2ブラケットを通過して第1ブラケットに固定されるボルトである。ボルトを締めていくと、バネの力に抗して第2ブラケットが第1ブラケットに近づき、タイヤが車体あるいはロアレールに押し付けられる。
【0013】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施例のシートスライド装置の外観図である。
図2図1のII-II線に沿ったシートスライド装置の断面図である。
図3】第1実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット拘束状態)。
図4】第1実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット自由状態)。
図5】第2実施例のシートスライド装置の斜視図である。
図6】第2実施例のシートスライド装置の分解斜視図である。
図7】第2実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット拘束状態)。
図8】第2実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット自由状態)。
図9】第3実施例のシートスライド装置の斜視図である。
図10】第3実施例のシートスライド装置の分解斜視図である。
図11】第3実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット拘束状態)。
図12】第3実施例のシートスライド装置の側面図である(第2ブラケット自由状態)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例のシートスライド装置2を説明する。図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、アッパレール10とロアレール20を備えている。ロアレール20は長尺である。ロアレール20は、その長手方向に移動可能(スライド可能)にアッパレール10を保持する。
【0016】
ロアレール20は不図示のボルトにて車体のフロアパネル60に固定される。ロアレール20はフロアパネル60に設けられた溝に収容されているため、図1ではロアレール20を破線で描いてある。
【0017】
アッパレール10は、シート80のシートクッション81の下部に取り付けられる。アッパレール10は、不図示のフレームを介してシートクッション81の下部に取り付けられる。シートスライド装置2は、シートクッション81の下部の左右に夫々取り付けられる。
【0018】
図中の座標系のX方向がロアレール20とアッパレール10のレールの長手方向に相当する。Y方向がレールの短手方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。以下では、ロアレール20の長手方向(図中の座標系のX方向)をレール長手方向と称する。また、ロアレール20の短手方向(図中の座標系のY方向)をレール短手方向と称する。さらに、説明の便宜上、図の+X側を「前」と定義し、-X側を「後」と定義する。「前」と「後」の定義は説明の便宜上のためであり、図の+X側を「後」と定義し、-X側を「前」と定義しても差し支えない。
【0019】
アッパレール10には、タイヤ31と、タイヤ31を駆動するアクチュエータ32が取り付けられている。アクチュエータ32は、アッパレール10の紙面奥側に配置されているので破線で描いてある。タイヤ31は不図示のT形モールを介してロアレール20に押し当てられている。乗員が不図示のスイッチを操作すると、アクチュエータ32がタイヤ31を駆動し、アッパレール10(すなわちシート80)が前または後に移動する。アクチュエータ32は、モータと、モータの回転を減速するギアセットと、モータとタイヤ31の間の係合を解除するクラッチを含んでいる。
【0020】
図1のII-II線でカットしたシートスライド装置2の断面図を図2に示す。先に述べたように、シートクッション81の下部には車幅方向で並ぶ一対のシートスライド装置2が取り付けられている。一対のシートスライド装置2は同じ構造を有しているため、図2では一方のシートスライド装置2のみを描いてある。
【0021】
先に述べたように、ロアレール20は、フロアパネル60に設けられた溝61に収容される。ロアレール20は、底板21と、底板21のレール短手方向の両端から上方へ延びている一対のローラガイド22を備えている。それぞれのローラガイド22は、底板21の端から上方へ延び、互いに近づく方向に逆U字に湾曲している。
【0022】
フロアパネル60の溝61の内側面と、ロアレール20の側面(ローラガイド22の外側の側面)との間に隙間Gが生じており、その隙間GをT形モール62が埋めている。理解を助けるため、図2では、T形モール62をグレーで示してある。後の図3、4でも、T形モール62はグレーで示してある。T形モール62の垂直部分が隙間Gに入り込み、T形モール62の横棒部分が隙間Gを覆う。T形モール62は、柔らかい樹脂で作られている。
【0023】
アッパレール10の下部(アッパレール下部11)のレール短手方向の両側にはローラ13が取り付けられており、逆U字のローラガイド22と底板21の間にローラ13が収容される。ローラ13が回転することで、アッパレール10はレール長手方向に円滑に動くことができる。すなわち、ロアレール20は、アッパレール10をスライド可能に保持する。
【0024】
説明の便宜上、アッパレール10のロアレール20に収容されている部分をアッパレール下部11と称し、ロアレール20よりも上に露出している部分をアッパレール上部12と称する。
【0025】
詳しくは後述するが、アッパレール上部12には第1ブラケット40が回転可能に連結されており、その第1ブラケット40に第2シャフト51を介して第2ブラケット50が回転可能に連結されており、第2ブラケット50にタイヤ31が支持されている。タイヤ31は、第1ブラケット40と第2ブラケット50により上下に動くことができる。
【0026】
第2ブラケット50はボルト59で第1ブラケット40に拘束されており、第1ブラケット40とアッパレール上部12の間にバネ49が連結されている。バネ49は第1ブラケット40を下方に付勢し、タイヤ31は、第2ブラケット50と第1ブラケット40を介してバネ49で下方に付勢される。
【0027】
タイヤ31は、バネ49により、フロアパネル60またはロアレール20に押し付けられる。タイヤ31は、T形モール62の上面に当接し、T形モール62を介してフロアパネル60またはロアレール20に押し付けられる。
【0028】
アクチュエータ32は駆動軸36を有しており、その駆動軸36がタイヤ31に連結されている。アクチュエータ32はタイヤ31とともに第2ブラケット50に支持されており、タイヤ31とともに上下に動く。
【0029】
タイヤ31がT形モール62を介してフロアパネル60またはロアレール20に押し付けられるので、アクチュエータ32がタイヤ31を駆動すると、アッパレール10が円滑に動くことができる。
【0030】
タイヤ31はバネ49によりT形モール62に押し付けられる。図2に良く示されているように、タイヤ31を上へ移動させなければT形モール62を交換することができない。T形モール62を交換するためにバネ49を外すのは煩わしい。実施例のシートスライド装置2は、バネ49を外すことなく、タイヤ31を上方へ移動させることができる機構を備えている。以下、その機構について説明する。
【0031】
図2に示されているように、レール長手方向(図中の座標系のX方向)からみると、第1ブラケット40は、アッパレール上部12の上から被さるように逆U字形状を有しており、第2ブラケット50は、第1ブラケット40の上から覆い被さるように逆U字形状を有している。第1ブラケット40、第2ブラケット50はともに、アッパレール10の上面に接した位置で回転が規制される。
【0032】
図3に、シートスライド装置2の側面図を示す。図3は、第2ブラケット50が第1ブラケット40に拘束されており、タイヤ31がT形モール62を介してフロアパネル60またはロアレール20に押し付けられている状態を示している。図3(および図4)では、アクチュエータ32はアッパレール10の奥側に位置するので見えない。
【0033】
第1ブラケット40はレール長手方向に沿っており、その後端が第1シャフト41で回転可能にアッパレール10に連結されている。第1ブラケット40の前端にタブ44が設けられており、タブ44にバネ49の上端が連結されている。バネ49の下端はアッパレール10に連結されている。バネ49は引っ張りバネであり、第1ブラケット40を下方に付勢する。
【0034】
第2ブラケット50もレール長手方向に沿っており、その前端が第2シャフト51で第1ブラケット40の前端に回転可能に連結されている。第2ブラケット50は、第1ブラケット40に沿って延びている。第2ブラケット50の後端がボルト59で第1ブラケット40に拘束されている。第2ブラケット50は、レール長手方向に沿って第1シャフト41と第2シャフト51の間でタイヤ31を支持している。
【0035】
第1シャフト41、第2シャフト51、駆動軸36は、平行であり、すべてレール短手方向(図中の座標系のY方向)を向いている。
【0036】
バネ49は、第1ブラケット40と第2ブラケット50を介してタイヤ31をフロアパネル60またはロアレール20(T形モール62)に押し付ける。図4は、ボルト59を外した状態を示している。ボルト59を外すと、第2ブラケット50が拘束から解放され、第2シャフト51を軸として自由に回転可能になる。図4の太線湾曲線が第2ブラケット50の回転方向を示している。第1ブラケット40はバネ49で下方へ付勢されたままであるが、第2ブラケット50が自由に回転できるので、T形モール62から容易に離れることができる。図4は、タイヤ31がT形モール62から高さh1だけ浮いた状態を示している。シートスライド装置2は、バネ49を外すことなく、タイヤ31への付勢力を解放し、タイヤ31をT形モール62から容易に離すことができる。従ってT形モール62の交換作業が楽になる。
【0037】
なお、第2ブラケット50の拘束を解くと、バネ49の弾性力に対する抗力(タイヤ31を介してバネ49に伝わるフロアパネル60またはロアレール20からの抗力)がなくなり、第1ブラケット40の前端が下方へ移動する。先に述べたように、第1ブラケット40は、アッパレール10に覆い被さる逆U字形状を有しているため、第1ブラケット40はアッパレール10の頭頂面12aに当接して回転が規制される。
【0038】
ボルト59は第2ブラケット50の後端を第1ブラケット40に固定する(拘束する)。ボルト59は上から下方に向けて第2ブラケット50を通過して第1ブラケット40に固定される。図4から理解されるように、第2ブラケット50の拘束が解かれている状態からボルト59を締め込んでいくと、第2ブラケット50が徐々に下方に移動し、タイヤ31がT形モール62(フロアパネル60またはロアレール20)に徐々に押し付けられる。すなわち、上から第2ブラケット50を通過して第1ブラケット40に固定されるボルト59によって、タイヤ31の状態を回復する作業も容易になる。
【0039】
第1実施例のシートスライド装置2の特徴を列挙する。アッパレール10は、上下に動くことのできるタイヤ31を備えている。アクチュエータ32で駆動されるタイヤ31がバネ49でT形モール62(フロアパネル60またはロアレール20)に押し付けられる。シートスライド装置2は、第1ブラケット40と第2ブラケット50を備えている。
【0040】
第1ブラケット40は、一端(後端)が第1シャフト41でアッパレール10に回転可能に連結されており、レール長手方向に沿って延びている。第1ブラケット40の他端(前端)がバネ49で下方に付勢されている。第2ブラケット50は、一端(前端)が第2シャフト51で第1ブラケット40の他端(前端)に回転可能に連結されており、第1ブラケット40に沿って延びている。
【0041】
第2ブラケット50の他端(後端)がボルト59で第1ブラケット40の一端(後端)に拘束される。ボルト59は、上から第2ブラケット50を通過し、第1ブラケット40の上面に固定される。
【0042】
第2ブラケット50は、レール長手方向に沿って第1シャフト41と第2シャフト51の間でタイヤ31を回転可能に支持している。
【0043】
上記の構造により、バネ49を外すことなく、タイヤ31をT形モール62(フロアパネル60またはロアレール20)から浮かすことができ、T形モール62の交換作業が容易になる。
【0044】
(第2実施例)図5図8を参照して第2実施例のシートスライド装置2aを説明する。図5に、シートスライド装置2aの斜視図を示す。シートスライド装置2aは、ロアレール20と、アッパレール110を備えている。図6に、アッパレール110の分解斜視図を示す。図7に、シートスライド装置2a(アッパレール110)の側面図を示す。図7(および図8)では、理解を助けるために、T形モール62をグレーで示し、フロアパネル60にはハッチングを施してある。
【0045】
第2実施例のシートスライド装置2aと第1実施例のシートスライド装置2の主な相違点は、バネ49の連結箇所である。バネ49は、第1ブラケット140ではなく、第2ブラケット150に連結されている。
【0046】
アッパレール110は、T形モール62を介してロアレール20に押し付けられているタイヤ31と、タイヤ31を駆動するアクチュエータ32を備えており、電動で動くことができる。
【0047】
アクチュエータ32は、電動モータ33と、ギアボックス35を含んでいる。ギアボックス35は駆動軸36を有しており、駆動軸36にタイヤ31が連結されている。ギアボックス35は、電動モータ33の回転を駆動軸36に伝える。
【0048】
アクチュエータ32(電動モータ33とギアボックス35)とタイヤ31は、レール短手方向でアッパレール110を挟むように位置している。ギアボックス35の駆動軸36は、アッパレール110に設けられた孔111を通過し、タイヤ31に連結される。アクチュエータ32とタイヤ31はともに第2ブラケット150に支持される。詳しくは後述するが、第2ブラケット150は、第1シャフト41または第2シャフト51のまわりに回転可能である。第2ブラケット150の回転に伴って駆動軸36が動けるように、アッパレール110には大きな孔111が設けられている。
【0049】
電動モータ33の先端にはウォームギア34が連結されており、ギアボックス35には、ウォームギア34に係合するウォームホイルと、駆動軸36を電動モータ33から切り離すクラッチを含んでいる。車の乗員が所定の操作を行うと、アクチュエータ32がタイヤ31を駆動し、アッパレール110(すなわちシート)が前または後に移動する。車の乗員が別の所定の操作をすると、クラッチがウォームホイルと駆動軸36の間の係合を解除し、乗員が手動でアッパレール110(すなわちシート)を動かすことができるようになる。
【0050】
アッパレール110は、第1ブラケット140と第2ブラケット150を備えている。第1ブラケット140は、アッパレール110の上部に覆い被さるように逆U字形状をなしており、第2ブラケット150は、第1ブラケット140に覆い被さるように逆U字形状をなしている。図7(および図8)では、第1ブラケット140の第2ブラケット150に隠れた部分を破線で示してある。
【0051】
第1ブラケット140の一端(後端)は、第1シャフト41で回転可能にアッパレール110に連結されている。第1ブラケット140はレール長手方向に沿って延びている。第2ブラケット150の一端(前端150a)は、第2シャフト51で第1ブラケット140の他端(前端)に回転可能に連結されており、第1ブラケット140に沿って延びている。
【0052】
第2ブラケット150の他端(後端150b)は、ボルト59で第1ブラケット140の一端(後端)に固定される。第2ブラケット150は、ボルト59で第1ブラケット140に固定されると、第1ブラケット140に対して拘束される。
【0053】
第2ブラケット150は、レール長手方向に沿って第1シャフト41と第2シャフト51の間でタイヤ31を回転可能に支持している。第1シャフト41、第2シャフト51、タイヤ31の駆動軸36は、レール短手方向に沿って平行に延びている。
【0054】
バネ49は、第2ブラケット150の前端150aとアッパレール110の間に連結されており、第2ブラケット150の前端150aを下方に押し付ける。図6において符号48が示す部品はバネ支持であり、バネ支持48がアッパレール110に固定され、バネ49を保持する。
【0055】
第2ブラケット150はボルト59で第1ブラケット140に拘束されており、第2ブラケット150は第1ブラケット140とともに第1シャフト41のまわりに回転可能である。バネ49の連結点とタイヤ31は、ともに第1シャフト41よりも前側(レール長手方向に沿って第1シャフト41に対して同じ側)に位置する。それゆえ、バネ49が第2ブラケット150の前端150aを下に押し付けると、タイヤ31は、T形モール62を介してフロアパネル60またはロアレール20に押し付けられる。シートスライド装置2aは、タイヤ31をフロアパネル60またはロアレール20に押し付けつつタイヤ31を駆動するので、アッパレール110が高速かつ円滑に動く。
【0056】
第2ブラケット150は後端150bがボルト59で第1ブラケット140に拘束されている。ボルト59を外すと第1ブラケット140に対する第2ブラケット150の拘束が解かれ、第2ブラケット150は第2シャフト51のまわりに回転可能になる。第2シャフト51は、レール長手方向に沿ってバネ49の連結点とタイヤ31の間に位置する。それゆえ、バネ49の弾性力によって第2ブラケット150の第2シャフト51よりも前側が下がると、第2ブラケット150の第2シャフト51よりも後ろ側が上がる。第2シャフト51よりも後ろ側で支持されているタイヤ31が上がり、T形モール62から離れる。
【0057】
図7は、ボルト59によって第2ブラケット150が第1ブラケット140に拘束された状態の側面図である。図8に、ボルト59を外した状態(すなわち、第2ブラケット150の拘束を解いた状態)の側面図を示す。図7図8を比較すると理解されるように、ボルト59を外すと、第2ブラケット150の前端150aが下がり、後端150bが上がる。第2シャフト51よりも後側で第2ブラケット150に支持されているタイヤ31が距離h1だけT形モール62から浮き上がる。タイヤ31がT形モール62から離れるのでT形モール62を容易に交換することができる。
【0058】
第2実施例のシートスライド装置2aでは、レール長手方向に沿って、バネ49の連結点とタイヤ31が第1シャフト41に対して同じ側に位置しており、バネ49の連結点とタイヤ31は第2シャフト51を挟むように位置している。この構造により、第2ブラケット150を第1ブラケット140に拘束し、第1シャフト41の回りに回転可能な状態にすると、バネ49がタイヤ31をフロアパネル60またはロアレール20(T形モール62)に押し付ける。一方、第2ブラケット150の拘束を外し、第2シャフト51の回りに回転可能な状態にすると、バネ49の力によりタイヤ31がT形モール62から浮き上がる。
【0059】
シートスライド装置2aは、第2ブラケット150の拘束を外すとバネ49の力でタイヤ31をT形モールから浮き上がらすことができ、T形モール62の交換作業がより容易になる。
【0060】
(第3実施例)図9図12を参照して第3実施例のシートスライド装置2bを説明する。図9に、シートスライド装置2bの斜視図を示す。シートスライド装置2bは、ロアレール20とアッパレール210を備える。図10に、シートスライド装置2b(アッパレール210)の分解図を示す。図11図12に、シートスライド装置2bの側面図を示す。図11は、第2ブラケット250が第1ブラケット140に拘束されている状態の側面図であり、図12は第2ブラケット250の拘束が解かれた状態の側面図である。別言すれば、図11はタイヤ31がロアレール20に接触している状態を示しており、図12はタイヤ31がロアレール20から浮いた状態を示している。
【0061】
図9図12は、それぞれ、第2実施例の図5図8のそれぞれに対応する。なお、第3実施例のシートスライド装置2bでは、タイヤ31はロアレール20に押し付けられる。それゆえ、図9図12では、フロアパネルは描かれていない。また、第3実施例のシートスライド装置2bはT形モールを伴わない。
【0062】
第3実施例のシートスライド装置2bでは、タイヤ31とアクチュエータ32がアッパレール210の同じ側に配置されている。この構造が、第2実施例のシートスライド装置2aとの主な相違点である。
【0063】
アッパレール210は、第1ブラケット140と第2ブラケット250を備えている。第1ブラケット140は、第2実施例のシートスライド装置2aの第1ブラケット140と同じ形状であり、アッパレール210の上部に覆い被さるように逆U字形状をなしている。第2ブラケット250は、第1ブラケット140の一方の側(図中の座標系の+Y側)に取り付けられる。
【0064】
第2ブラケット250には、アクチュエータ32(モータ33とギアボックス35)が取り付けられており、ギアボックス35の駆動軸にタイヤ31が固定されている。図9図12では、駆動軸はギアボックス35に隠れて見えない。タイヤ31は、アクチュエータ32を介して第2ブラケット250に回転可能に支持される。
【0065】
第1ブラケット140の一端(後端140b)は、第1シャフト41で回転可能にアッパレール210に連結されている。第1ブラケット140の他端(前端140a)には、第2ブラケット250の一端(前端250a)が第2シャフト51で回転可能に連結されている。図11、12では、第1ブラケット140と第1シャフト41はアクチュエータ32に隠れて見えないので、破線で描いてある。
【0066】
第2ブラケット250は、ボルト59で第1ブラケット140に固定される。すなわち、第2ブラケット250は、ボルト59で第1ブラケット140に拘束される。
【0067】
バネ49は、第2ブラケット250の前端150aとアッパレール210の間に連結されており、第2ブラケット250の前端250aを下方に押し付ける。図10において符号248が示す部品はバネ支持であり、バネ支持248がアッパレール210に固定され、バネ49を支持する。
【0068】
第2ブラケット250はボルト59で第1ブラケット140に拘束されており、第2ブラケット250は第1ブラケット140とともに第1シャフト41のまわりに回転可能である。バネ49の連結点とタイヤ31は、ともに第1シャフト41よりも前側(レール長手方向に沿って第1シャフト41に対して同じ側)に位置する。それゆえ、バネ49が第2ブラケット250の前端250aを下に押し付けると、タイヤ31は、ロアレール20に押し付けられる。タイヤ31は、アクチュエータ32で駆動される。シートスライド装置2bは、タイヤ31をロアレール20に押し付けつつタイヤ31を駆動するので、アッパレール210が高速かつ円滑に動く。
【0069】
第2ブラケット250はボルト59で第1ブラケット140に拘束される。ボルト59を外すと第1ブラケット140に対する第2ブラケット250の拘束が解かれ、第2ブラケット250は第2シャフト51のまわりに回転可能になる。図11、12に示されているように、第2シャフト51は、レール長手方向に沿ってバネ49の連結点とタイヤ31の間に位置する。それゆえ、バネ49の弾性力によって第2ブラケット250の前側が下がると、第2ブラケット250の後ろ側が上がる。第2シャフト51よりも後ろ側で支持されているタイヤ31が上がり、タイヤ31はロアレール20から離れる。
【0070】
図11は、第2ブラケット250が第1ブラケット140に拘束された状態を示しており、図12は、第2ブラケット250の拘束が解かれた状態(ボルト59が外された状態)を示している。図11図12を比較すると理解されるように、ボルト59を外すと、第2ブラケット250の前端250aが下がり、後端250bが上がる。第2シャフト51よりも後側で第2ブラケット250に支持されているタイヤ31が距離h1だけロアレール20から浮き上がる。第3実施例のシートスライド装置2bも、第2実施例のシートスライド装置2aと同様に、ボルト59を外すとバネ49の力によりタイヤ31がロアレール20から浮く。
【0071】
第3実施例のシートスライド装置2bも、タイヤ31とロアレール20との間にT形モールが挟まれていてもよい。タイヤ31は、ロアレール20ではなく、フロアパネルに押し付けられてもよい。第1-第3実施例のシートスライド装置2、2a、2bのいずれも、ロアレールまたはフロアパネルの上に配置された単純なフラットなモールの上にタイヤ31が押し付けられてもよい。
【0072】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。バネ49は引っ張りバネであるが、第1ブラケット40(あるいは第2ブラケット150、250)を下方へ付勢するのに圧縮バネを用いてもよい。ボルト59が拘束部材の一例に相当する。第1ブラケットに対して第2ブラケットを拘束する拘束部材はボルトに限られない。第1シャフト41が第1軸の一例に相当し、第2シャフト51が第2軸の一例に相当する。
【0073】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0074】
2、2a、2b:シートスライド装置 10、110、210:アッパレール 20:ロアレール 31:タイヤ 32:アクチュエータ 40、140:第1ブラケット 41:第1シャフト 49:バネ 50、150、250:第2ブラケット 51:第2シャフト 59:ボルト 60:フロアパネル 62:T形モール 80:シート
図1
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図7
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図12