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特許7299214複合被覆ナノスズ負極材料並びにその製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】複合被覆ナノスズ負極材料並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230620BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230620BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230620BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/134
H01M4/36 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020515753
(86)(22)【出願日】2018-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2018108693
(87)【国際公開番号】W WO2019114373
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】201711317663.6
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507316468
【氏名又は名称】中国科学院物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 周
(72)【発明者】
【氏名】兪 海龍
(72)【発明者】
【氏名】黄 學傑
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1705148(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ系ナノコアと、前記スズ系ナノコアの表面上に被覆されたナノ銅層と、前記ナノ銅層の表面上に被覆された伝導性保護層とを含み、炭素層が前記スズ系ナノコアと前記ナノ銅層との間に設けられる複合被覆ナノスズコア負極材料。
【請求項2】
前記スズ系ナノコアが、スズナノ材料、スズ-炭素ナノ材料、及びスズ合金ナノ材料の1つ以上であり;前記スズナノ材料、前記スズ-炭素ナノ材料、及び前記スズ合金ナノ材料が、ナノ粒子、ナノワイヤ、及びナノシートを含み;前記ナノ粒子が5~1000nmの粒度を有し;前記ナノワイヤが10~5000nmの長さ、5~1000nmの直径を有し;前記ナノシートの長さ及び幅の両方が10~5000nmであり、厚さが1~500nmであり、;前記ナノ銅層の厚さが0.5~100nmであり、前記伝導性保護層の厚さが1~100nmである、請求項1に記載のナノスズコア負極材料。
【請求項3】
前記スズ-炭素ナノ材料及び前記スズ合金ナノ材料中、スズの重量パーセント含有量が2%~70%であり;前記スズ合金が、スズ-アルミニウム合金、スズ-スズ合金、スズ-銀合金、及びスズ-マグネシウム合金の1つ以上から選択される、請求項2に記載のナノスズコア負極材料。
【請求項4】
前記ナノ銅層が、ナノ銅粒子、又は1ナノメートルの厚さを有する銅被覆層であり、前記銅粒子の粒度が0.5~100nm、;前記銅被覆層の厚さが0.5~100nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノスズコア負極材料。
【請求項5】
前記ナノ銅層の重量が、前記ナノスズコア負極材料の2~70重量%を占め;前記伝導性保護層の重量が、前記ナノスズコア負極材料の0.1~20重量%を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノスズコア負極材料。
【請求項6】
前記炭素層の厚さが1~50nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノスズコア負極材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のナノスズコア負極材料の製造方法であって:
(1)スズ系ナノコアを溶媒中に加えて懸濁液を得て、次に前記懸濁液を超音波分散させるステップと;
(2)前記超音波分散させた懸濁液に銅めっき剤を加え、次に還元剤を加えて化学銅めっきを行い、最後に濾過し、洗浄し、それを真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズコア複合材料を得るステップと;
(3)前記ナノ銅被覆ナノスズコア複合材料の表面上に伝導性保護層を被覆するステップと、
ステップ(1)の前に、前記スズ系ナノコアの表面上に炭素層を被覆するステップをさらに含む、方法。
【請求項8】
(4)ステップ(3)で得た前記複合材料を熱処理してそれを硬化させるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スズ系ナノコアの表面上に炭素層を被覆するステップが、熱水炭素被覆又はCVD炭素被覆によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)中の前記溶媒が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びエチレングリコールの1つ以上であり;前記懸濁液中、前記スズ系ナノコアの濃度が0.1~10g・L-1である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(2)中の前記銅めっき剤の組成が:ヘキサフルオロリン酸テトラキス(アセトニトリル)銅(I)、CuCl、CuCl、CuC、Cu(CHCOO)、CuSO、またはCu(NOの1つ以上:1~20g・L-1;酒石酸カリウムナトリウム:5~100g・L-1;エチレンジアミン四酢酸又はアンモニア水:5~100g・L-1;2,2-ビピリジン:1~50mg・L-1;前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ボラン、又はホルムアルデヒドであり、前記還元剤の濃度が1~20g・L-1である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(3)中の前記伝導性保護層が、炭素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアセチレンの1つ以上であり;伝導性保護層を被覆するステップが、熱水被覆、有機被覆、又はCVD被覆によって行われ;前記CVD被覆が、Cガスを用いて炭素を被覆することであり、被覆するステップの条件が:C:1~300sccm;温度:300~450℃;及び時間:5分~10時間を含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
集電体と、前記集電体上に搭載された負極材料、伝導性添加剤、及びバインダーとを含む負極であって、前記負極材料が、請求項1~6のいずれか一項に記載の負極材料である、負極。
【請求項14】
電池シェルと、電極組立体と、電解質とを含むリチウムイオン電池であって、前記電極組立体及び電解質が前記電池シェル中に封入され、前記電極組立体が、正極、セパレーター、及び負極を含み、前記負極が請求項13に記載の負極である、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用の負極材料の分野に関し、特に、複合被覆ナノスズ負極材料、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高電圧、高エネルギー密度、良好な安全性、軽量、低い自己放電、長いサイクル寿命、メモリー効果がないこと、汚染がないことなどのそれらの利点のために、世界中で広く関心が持たれている。リチウムイオン電池の電極材料は、世界的な電池産業における研究のホットスポットにもなっている。黒鉛は、リチウムイオン電池の市販の負極材料であり、良好なサイクル性能を有する。しかし、黒鉛の容量は比較的低く、リチウム貯蔵後の電極の電位は、リチウム金属の電位とほぼ同等である。電池が過充電されると、リチウム金属が炭素電極の表面上に析出する傾向にあり、デンドライトが形成されたり、短絡が生じたりなどが起こる。
【0003】
スズ系材料は、それらの高い容量、良好な加工特性、良好な電気伝導率、溶媒共インターカレーションの問題がないこと、急速充電及び放電が可能なことなどの理由で、炭素負極材料の代替となる候補の1つと見なされている。しかし、Li-Sn合金の可逆的な形成及び分解に大きな体積変化が伴い、これによってスズ粒子が容易に粉砕され、活物質の集電体からの剥離が生じ、その結果としてスズ系材料のサイクル寿命が不十分となる。同時に、スズ粒子が電解質に曝露すると、スズ表面上に不安定なSEI膜が形成され、これによって電極材料のサイクル性能が低下する。したがって、リチウムインターカレーション/デインターカレーションプロセス中のスズ負極の粉砕、不十分な伝導率、及び不安定なSEIの形成の問題を解決できる場合には、電子製品及び新エネルギー車の分野におけるスズ負極の用途が得られ、それによって人間の生活及び環境が改善される。このことが、克服する必要があるスズ系材料の最大の問題である。
【0004】
リチウムインターカレーション/デインターカレーションプロセス中のスズ負極の粉砕及び不安定なSEIの問題を解決するために、表面被覆方法が一般に使用されて、スズ負極材料のサイクル性能が改善される。一方では、ナノスズの使用によって、リチウムイオンインターカレーションによって生じるスズ粒子の絶対体積変化を軽減し、複合材料の内部応力を減少させることができ;他方では、ナノスズ表面上に良好な伝導率を有する材料を被覆することで、その伝導率が増加し、これと同時に、スズと電解質との間の直接接触が回避され、それによって安定なSEI膜が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠陥を補償すること、及びスズ負極材料の電気化学的サイクル特性の改善が可能なリチウムイオン負極材料を提供すること、並びにその製造方法及びその使用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スズ系ナノ材料と、スズ系ナノ材料の表面上に被覆されたナノ銅層と、ナノ銅層の表面上に被覆された伝導性保護層とを含む複合被覆ナノスズ負極材料を提供する。
【0007】
本発明によるナノスズ負極材料中、ナノ銅層は、スズ系ナノ材料の体積膨張を軽減することができ、良好な塑性を有する。
【0008】
本発明によるナノスズ負極材料中、スズ系ナノ材料は、スズナノ材料、スズ-炭素ナノ材料、及びスズ合金ナノ材料の1つ以上であってよい。ナノ材料は、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノシートなどの形態であってよい。スズ-炭素ナノ材料及びスズ合金ナノ材料中、スズの重量パーセント値の含有量は10%~90%であってよい。スズ合金は、スズアンチモン合金、スズケイ素合金、スズ銀合金、スズ銅合金などの1つ以上から選択することができる。
【0009】
スズ系ナノ材料中、ナノ粒子の粒度は5~1000nm、好ましくは20~300nmであってよく;ナノワイヤの長さは10~5000nmであってよく、直径は5~1000nmであってよく、好ましい長さは100~2000nmであり、好ましい直径は20~300nmである。ナノシートの長さ及び幅の両方は10~5000nmであってよく、厚さは1~500nmであってよく、好ましくは、ナノシートの長さ及び幅は100~2000nmであり、厚さは1~100nmである。ナノ銅層は、ナノ銅粒子、又はナノメートルの厚さを有する銅被覆層であってよい。銅粒子の粒度は0.5~100nm、好ましくは1~20nmであってよく;銅被覆層の厚さは0.5~100nm、好ましくは1~50nmであってよい。
【0010】
スズ及び銅の合金の形成を防止するために、本発明の好ましい一実施形態では、スズ系ナノ粒子とナノ銅層との間に炭素層をさらに設けることができ、炭素層の厚さは1~50nm、好ましくは5~20nmであってよい。
【0011】
本発明によるナノスズ負極材料中、伝導性保護層の厚さは1~100nm、好ましくは2~20nmであってよい。
【0012】
本発明によるナノスズ負極材料中、銅層の量は、ナノスズ負極材料の2~70重量%、好ましくは10~30重量%を占め、伝導性保護層の量は、ナノスズ負極材料の0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%を占める。
【0013】
本発明は、上記複合被覆ナノスズ負極材料の製造方法であって:
(1)スズ系ナノ材料を溶媒中に加えて懸濁液を得て、次に懸濁液を超音波分散させるステップと;
(2)超音波分散させた懸濁液に銅めっき剤を加え、次に還元剤を加えて化学銅めっきを行い、最後に濾過し、洗浄し、それを真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆スズ系ナノ複合材料を得るステップと;
(3)ナノ銅被覆スズ系ナノ複合材料の表面上に伝導性保護層を被覆するステップと、
を含む、製造方法も提供する。
【0014】
本発明による製造方法では、この方法は:(4)ステップ(3)で得られた複合材料を熱処理してそれを硬化させるステップをさらに含むことができる。
【0015】
本発明による製造方法では、この方法は:ステップ(1)の前にナノスズ系材料の表面上に炭素層を被覆するステップをさらに含むことができる。ナノスズ系材料の表面上の炭素層の被覆は、熱水炭素被覆、又はCVD炭素被覆などの方法、好ましくはCVD炭素被覆によって行うことができる。
【0016】
本発明による製造方法では、ステップ(1)中の溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びエチレングリコールの1つ以上、好ましくは水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びエチレングリコールの2つ以上;より好ましくは水とエタノールとの混合物、又は水とメタノールとの混合物であってよく、エタノール又はメタノールは分散剤として機能することができる。ナノスズ懸濁液中、ナノスズの濃度は、0.1~10g・L-1、好ましくは0.5~5g・L-1であってよい。
【0017】
本発明による方法では、ステップ(2)中の銅めっき剤の組成は以下の通りであってよい:可溶性銅塩:1~20g・L-1、好ましくは1~10g・L-1;酒石酸カリウムナトリウム(CKNa):5~100g・L-1、好ましくは10~30g・L-1;エチレンジアミン四酢酸(C1016)若しくはアンモニア水(NH・HO):5~100g・L-1、好ましくは10~30g・L-1;及び2,2-ビピリジン(C10):1~50mg・L-1、好ましくは5~15mg・L-1。この方法では、可溶性銅塩は、ヘキサフルオロリン酸テトラキス(アセトニトリル)銅(I)(C12CuFP)、CuCl、CuCl、CuC、Cu(CHCOO)、CuSO、及びCu(NOの1つ以上を含む。好ましくは、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ボラン、又はホルムアルデヒドであり、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであり、還元剤の濃度は1~20g・L-1、好ましくは2~5g・L-1であってよい。
【0018】
本発明による方法では、ステップ(3)中の銅層の表面上の伝導性保護層は、炭素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、又はその他の伝導性ポリマーであってよい。伝導性保護層の被覆方法は、熱水被覆、有機被覆、及びCVD被覆、好ましくはCVD被覆を含む。好ましくは、CVD被覆は、Cガスを用いて炭素を被覆することであり、その被覆条件は:C:1~300sccm、好ましくは50~150sccm;温度:300~450℃、好ましくは350~400℃;及び時間:5分~10時間、好ましくは1~4時間を含む。
【0019】
本発明による方法では、ステップ(4)中の熱処理は、熱放射及びマイクロ波加熱、好ましくはマイクロ波加熱を含む。
【0020】
本発明は、集電体と、集電体の上に搭載された負極材料、伝導性添加剤、及びバインダーとを含む負極も提供し、この負極材料は、本発明の負極材料、又は本発明の方法によって製造される負極材料である。
【0021】
本発明は、リチウムイオン電池であって、電池シェル、電極組立体、及び電解質を含み、電極組立体及び電解質が電池シェル中に封入され、電極組立体が正極、セパレーター、及び負極を含み、負極が本発明の負極である、リチウムイオン電池も提供する。
【0022】
本発明によるナノスズ負極材料及びその製造方法は、以下の利点及び有益な効果を有する。
【0023】
1.本発明によって採用される合成方法は単純であり、使用される設備は従来の設備であり、コストが低く;使用されるナノスズ系材料は、工業化された低コストのスズ粉末であってよく、銅めっき及び炭素被覆の方法は単純で効率的である。複合被覆ナノスズ負極材料は、リチウムイオン電池の負極材料として使用される場合に優れた電気化学的性能を有し、携帯モバイル機器及び電気自動車における潜在用途の可能性を有する。
【0024】
2.本発明は複合被覆方法を使用し、ナノスズの表面上の被覆層は、銅被覆層及び伝導性被覆層からなり、銅被覆層はナノスズの外面を包み、伝導性被覆層は銅被覆層の外面を包む。ナノ銅は超塑性延性及び導電性を有し;リチウムイオンはナノ銅を貫通できることが分かっており;したがって、銅被覆層は以下の効果を有する:(1)ナノスズの体積膨張を抑制し、ナノスズ粒子の亀裂を回避すること;(2)安定なSEIを形成するために、ナノスズと電解質との間の直接接触を効果的に回避すること;及び(3)電極の伝導率を増加させること。しかし、ナノ銅は酸化して酸化銅及び酸化第一銅を形成して、表面上に望ましくないSEIを形成する傾向にあり、それによって電池の電気化学的サイクル性能に大きな悪影響が生じる。したがって、ナノ銅の酸化を効果的に抑制して電気化学的性能を改善するために、ナノ銅の表面はさらなる伝導性層で被覆される。しかし、銅とスズとの間の直接接触によって多量の銅-スズ合金が形成され、これは電池の性能には役立たない。したがって、銅とスズとの間に薄い炭素層を加えることで、その電気化学的性能がさらに改善される。
【0025】
3.本発明の方法では、複合被覆ナノスズ負極材料を低温急速熱処理によって硬化させることで、銅粒子が溶融して、それらが連結して銅膜を形成し、それによってナノスズ粒子の銅による完全な被覆が保証される。
【0026】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ材料のXRDスペクトルである。
図2】比較例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料のSEM画像である。
図3】比較例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料のTEM画像である。
図4】本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料のSEM画像である。
図5】本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料のTEM画像である。
図6】実施例3で作製した銅のみを被覆したナノスズ負極材料のSEM画像である。
図7】70サイクル後のリチウムインターカレーション状態における本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池のSEM画像である。
図8】70サイクル後のリチウムインターカレーション状態における本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池のTEM画像である。
図9】本発明の実施例1で作製した複合被覆ナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池の充電-放電サイクルの放電容量及び充電-放電効率を示すグラフである。
図10】本発明の実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池の充電-放電サイクルの放電容量及び充電-放電効率を示すグラフである。
図11】本発明の実施例3で作製した複合被覆ナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池の充電-放電サイクルの放電容量及び充電-放電効率を示すグラフである。
図12】比較例2で作製したナノ銅のみを被覆したナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池の充電-放電サイクルの放電容量及び充電-放電効率を示すグラフである。
図13】比較例1で作製した被覆していないナノスズ負極材料を含むリチウムイオン電池の充電-放電サイクルの放電容量及び充電-放電効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特定の実施形態を参照しながら、以下に本発明をさらに詳細に説明する。提供される実施例は、本発明の説明のみを目的としており、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【実施例
【0029】
実施例1
(1)100nmの粒度を有する2gのスズ粉末を計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れ、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に、1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ負極材料を得た。
【0030】
実施例2
(1)80nmの粒度を有する2.5gの二酸化スズ粉末を計量し、管状炉中に入れ、窒素中のCによって炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は50sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を600℃で30分間維持した;
(2)この炭素被覆スズ系材料を5%過酸化水素中に10分間浸漬し、次にこれを濾過し、オーブン乾燥させ、次にこれを1000mlの水中に入れ、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(3)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれをナノスズ溶液に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(4)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持した。
【0031】
実施例3
(1)100nmの粒度を有する2gのスズ粉末を計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ負極材料を得た;そして
(4)この炭素被覆ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を、窒素で保護された超高速マイクロ波加熱炉中に入れ、300℃までマイクロ波加熱し、次に冷却して二重層複合被覆ナノシリコン負極材料を得た。
【0032】
実施例4
(1)100nmの粒度を有する2gのスズ粉末を計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を200mlの反応釜中にいれ、次に1gのトルエン及び0.2gのTi(OBu)-AlEt触媒を加え、次に反応釜にアセチレンを満たし、反応釜を-78℃のオーブン中に入れて10時間反応させた。反応終了後、100mlの10%塩酸を混合物に加えて触媒を破壊し、最後にこれを濾過し、洗浄し、オーブン乾燥させて、銅層の表面上に被覆されたポリアセチレンを有する複合材料を得た。
【0033】
実施例5
(1)100nmの粒度を有する2gのスズ粉末を計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料及び2mlのアニリンを50mlの脱イオン水中に加え、超音波混合し、次にこの混合溶液に0.5gの過硫酸アンモニウムを加え、2時間反応させた後、混合物を濾過し、洗浄し、オーブン乾燥させて、銅層の表面上に被覆されたポリアニリンを有する複合材料を得た。
【0034】
実施例6
(1)100nmの粒度を有する1gのスズ-炭素粉末(Sn:C=1:1)を計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に2gのCuSO、20gの酒石酸カリウムナトリウム、20gのエチレンジアミン四酢酸、及び10mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に1gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ-炭素複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を380℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ-炭素負極材料を得た。
【0035】
実施例7
(1)100nmの粒度を有する1.5gのスズ-アルミニウム合金(Sn:Al=95:5)を計量し、1000mlの水中に加え、次に10mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ-アルミニウム複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を380℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ-アルミニウム負極材料を得た。
【0036】
実施例8
(1)長さ1000nm及び直径100nmの2gのスズナノワイヤを計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ負極材料を得た。
【0037】
実施例9
(1)長さ1000nm及び直径100nmの2gのスズナノワイヤを計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ負極材料を得た。
【0038】
実施例10
(1)長さ200nm、幅100nm、及び厚さ20nmの2gのスズナノシートを計量し、1000mlの水中に加え、次に20mlのエタノールを加えてナノスズ懸濁液を得て、次にこのナノスズ懸濁液を超音波装置中に入れて、超音波処理を2時間行った;
(2)超音波分散させたナノスズ懸濁液をマグネチックスターラーで連続撹拌しながら、窒素ガスを溶液中に連続的に導入した。次に1gのCuSO、10gの酒石酸カリウムナトリウム、10gのエチレンジアミン四酢酸、及び5mgの2,2-ビピリジンの組成を有する銅めっき剤を溶液に加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した。次に0.6gの水素化ホウ素ナトリウムを200mlの水中に加え、水酸化ナトリウムも加えてpHを10に調整し、次にこれを上記ナノスズ懸濁液中に約30滴/分の速度で滴下し、最後にこれを濾過し、銅保護剤を加えて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、ナノ銅被覆ナノスズ複合材料を得た;そして
(3)このナノ銅被覆ナノスズ複合材料を管状炉中に入れ、窒素中のCを用いて炭素を被覆し、このN流量は300sccmであり、C流量は100sccmであり、加熱速度は50℃/分であり、温度を300℃で90分間維持して、複合被覆ナノスズ負極材料を得た。
【0039】
実施例1~7で作製した負極材料の電気的性質について試験を行った。試験ステップは以下の通りであった:
作製した複合被覆ナノスズ負極材料をsuper-p(導電性カーボンブラック)及びアルギン酸ナトリウムと6:3:1の質量比でミキサーで均一に混合し、次にこれを銅箔上に均一に被覆し、真空乾燥オーブン中に入れ、120℃で12時間真空乾燥させ、取り出して電極板を作製した。
【0040】
対極としてリチウム板を使用し、電解質はEC+DMC(体積基準で1:1)中の1mol/lのLiPFであり、PP/PE/PPの3層フィルムをセパレーターとして使用し(Celgard Corporation,USAより購入)、アルゴンを充填したグローブボックス中でCR2032ボタン電池を組み立てた。
【0041】
組み立てた電池の電気化学的特性の試験は、Land試験機(Wuhan LAND Electronics Co.Ltd.より購入)を用いて、0.05Cのレートで1サイクルのサイクリング、次に0.2Cのレートで別の49サイクルのサイクリングで、0.01V~1.0Vの範囲の充電-放電カットオフ電圧で行った。
【0042】
比較例1
上記のボタン電池作製方法により、100nmの粒度を有するスズ粒子から直接ボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0043】
比較例2
上記のボタン電池作製方法により、実施例1のステップ(2)で作製した銅のみを被覆したスズナノ粒子からボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0044】
比較例3
上記のボタン電池作製方法により、長さ1000nm及び直径100nmを有するスズナノワイヤからボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0045】
比較例4
上記のボタン電池作製方法により、長さ200nm、幅100nm、及び厚さ20nmを有するスズナノシートからボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0046】
比較例5
上記のボタン電池作製方法により、100nmの粒度を有するスズ-炭素複合粒子から直接ボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0047】
比較例6
上記のボタン電池作製方法により、100nmの粒度を有するスズ-アルミニウム合金からボタン電池を作製し、その電池に対して、電気化学的性能試験条件による充電-放電サイクル性能試験を行った。
【0048】
試験結果及び分析
図1のXRDスペクトルから、実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料のXRDスペクトル中に元素スズ及び元素銅のみのピークが存在し、他の元素のピークは存在しないことが確認できる。
【0049】
図2のSEM画像から、比較例2で作製した銅のみを被覆したナノスズ負極材料中、ナノスズ粒子の表面上に明らかに被覆層が存在し、被覆は一体化しており、スズは完全に被覆されていることが確認できる。
【0050】
図3のTEM画像から、比較例2で作製した銅のみを被覆したナノスズ負極材料中、ナノスズ粒子の表面上に明らかに1つの被覆層が存在し、被覆は一体化していることが確認できる。
【0051】
図4のSEM画像から、実施例2で作製した複合被覆ナノスズ材料中、スズの表面上に数ナノメートル~数十ナノメートルの幾つかの銅粒子が存在し、外層上に炭素被覆層が存在することが確認できる。
【0052】
図5のTEM画像から、実施例2で作製した複合被覆ナノスズ材料中、ナノスズの表面上に、1ナノメートルの厚さの銅被覆層が存在し、表面上に幾つかのナノ銅粒子も存在し、被覆は一体化して、スズが被覆層の完全に内部に存在することが確認できる。
【0053】
図6のSEM画像から、実施例3で作製した複合被覆ナノスズ負極材料は、スズ粒子の表面上に明らかな被覆層を有することが確認できる。
【0054】
図7のSEM画像から、実施例2で作製した複合被覆ナノスズ負極材料、70サイクルのリチウムインターカレーション後に、複合被覆ナノスズ材料に亀裂が生じていないことが確認できる。
【0055】
図8のTEM画像から、実施例2から作製した複合被覆ナノスズ負極材料、70サイクルのリチウムインターカレーション後、複合被覆ナノスズ粒子は、明らかな体積膨張を示しているが、依然として亀裂はなく、さらに外部被覆層は破壊されず、複合被覆ナノスズ粒子の形状は依然として維持されていることが確認できる。
【0056】
図9~13中の実施例1、2、3並びに比較例1及び2の試料の充電-放電サイクル曲線から、ナノ銅被覆ナノスズ負極の電気化学的サイクル性能は、被覆していないナノスズ負極の性能よりもはるかに優れており、炭素-銅複合被覆ナノスズ負極の電気化学的サイクル性能は、ナノ銅のみを被覆したナノスズ負極の性能よりも有意に優れていることが確認できる。
【0057】
表1は、本発明の実施例(Ex.)及び比較例(CE.)で作製した負極材料の電気化学的性能の比較を示している。表2は、異なる被覆条件下でのナノスズ負極材料の電気化学的性能の比較を示している。
【0058】
【表1】
【0059】
表1中のデータから、ナノ銅被覆ナノスズ負極の電気化学的サイクル性能は、被覆していないナノスズ負極の性能よりもはるかに優れており、伝導性保護層及び銅の複合被覆のナノスズ負極の電気化学的サイクル性能は、ナノ銅のみを被覆したナノスズ負極の性能よりも有意に優れていることが確認できる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2中のデータから、スズ濃度が約2g/Lであり、粒度が50~100nmであることが最も適切であり;銅被覆が少なすぎる場合及び銅被覆が多すぎる場合の両方は、電池性能に対して悪影響が生じ;スズ-銅質量比は好ましくは5:1に制御されることが確認できる。電池の電気化学的性能は、銅層が伝導性保護層で被覆された後に明らかに改善されるが、伝導性保護層材料の重量パーセント値は好ましくは5%~10%に制御される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13