(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】高温及び湿潤条件に耐える複合部品の製造に使用するプリプレグ
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20230620BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230620BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20230620BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
C08L63/00 A
C08L81/06
C08K7/02
(21)【出願番号】P 2020541935
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(86)【国際出願番号】 US2019013794
(87)【国際公開番号】W WO2019152190
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、イェン - セイン
(72)【発明者】
【氏名】エマーソン、ゴードン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190380(JP,A)
【文献】特表2017-505844(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204173(WO,A1)
【文献】特開2012-082394(JP,A)
【文献】特開2010-059225(JP,A)
【文献】特開2018-012797(JP,A)
【文献】特開2014-167103(JP,A)
【文献】特開2014-145018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
C08G59/00-59/72
C08J5/04-5/10
5/24
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤条件下、132℃の温度で少なくとも37
ksi(255MPa)の有孔圧縮強度を有する複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグであって、前記プリプレグが、
A)繊維、並びに
B)
毎分10℃の加熱速度で行われる示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるとき0℃~5℃のサブガラス転移温度を有する未硬化樹脂であって、前記未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて15~19重量パーセントのポリエーテルスルホン、及び
c)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成す
る硬化剤を含む未硬化樹脂
を含
み、
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
【化1】
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
【化2】
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、プリプレグ。
【請求項2】
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
請求項1に記載のプリプレグを硬化させることによって形成された複合部品又は構造物。
【請求項4】
前記複合部品又は構造物は、航空機のエンジンナセルの少なくとも一部を形成する、
請求項3に記載の複合部品又は構造物。
【請求項5】
湿潤条件下、132℃の温度で少なくとも37
ksi(255MPa)の有孔圧縮強度を有する複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグを製造する方法であって、前記方法が、
A)繊維を提供する工程、並びに
B)前記繊維に、
毎分10℃の加熱速度で行われる示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるとき0℃~5℃のサブガラス転移温度を有する未硬化樹脂を含浸させる工程であって、前記未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて15~19重量パーセントのポリエーテルスルホン、及び
c)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成す
る硬化剤を含む、工程
を含
み、
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
【化3】
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
【化4】
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、方法。
【請求項6】
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、
請求項5に記載のプリプレグを製造する方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプリプレグを提供する工程及び前記プリプレグを硬化して、前記複合部品又は構造物を形成する工程を含む、複合部品又は構造物を製造する方法。
【請求項8】
複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグであって、前記プリプレグが、
A)繊維、並びに
B)未硬化樹脂であって、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて12~16重量パーセントのポリエーテルスルホン、
c)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて1~5重量パーセントの熱可塑性粒子構成成分、並びに
d)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成す
る硬化剤
を含む未硬化樹脂
を含
み、
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
【化5】
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
【化6】
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、プリプレグ。
【請求項9】
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂がトリグリシジルパラアミノフェノールエポキシ樹脂である、
請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記四官能性エポキシ樹脂がN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンである、
請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂がトリグリシジルパラアミノフェノールエポキシ樹脂である、
請求項10に記載のプリプレグ。
【請求項12】
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、
請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項8に記載のプリプレグを硬化させることによって形成されている複合部品又は構造物。
【請求項14】
前記複合部品又は構造物が、航空機のエンジンナセルの少なくとも一部を形成する、
請求項13に記載の複合部品又は構造物。
【請求項15】
複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグを製造する方法であって、前記方法が、
B)繊維を提供する工程、並びに
B)前記繊維に未硬化樹脂を含浸させる工程であって、未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて12~16重量パーセントのポリエーテルスルホン、
c)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて1~5重量パーセントの熱可塑性粒子構成成分、並びに
d)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成す
る硬化剤を含む、工程
を含
み、
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
【化7】
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
【化8】
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、方法。
【請求項16】
複合部品又は構造物を製造する方法であって、
請求項8に記載のプリプレグを提供する工程及び前記プリプレグを硬化して、前記複合部品又は構造物を形成する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の分野
本発明は、概して、航空宇宙用構成成分としての使用に特によく適した高性能複合部品を製造する際に使用される予備含浸複合材料(プリプレグ)に関する。本発明は、より具体的には、高温及び湿潤条件への同時暴露に耐えなければならない航空宇宙複合部品又は構造物を製造するために使用されるプリプレグを対象とする。
【0002】
2.関連技術の説明
複合材料は、通常、2つの主要な構成要素として、樹脂マトリックスと強化繊維とで構成される。複合材料は、多くの場合、複合部品又は構造物の物理的限界及び特性が非常に重要な航空宇宙の分野などの要求の厳しい環境で機能する必要がある。
【0003】
予備含浸複合材料(プリプレグ)は、複合部品の製造に広く使用される。プリプレグは、通常、未硬化の樹脂及び繊維を含む組み合わせであり、最終的な複合部品に成形及び硬化する準備が整った形態である。繊維強化材に樹脂を予備含浸させることにより、製造業者は繊維ネットワークに含浸される樹脂の量及び位置を慎重に制御でき、樹脂が所望通りにネットワーク内に分配されることを確実にできる。複合部品内の繊維及び樹脂の相対量、ならびに繊維ネットワーク内の樹脂の分布が、部品の構造特性に影響することは周知である。
【0004】
プリプレグは、耐荷重性又は一次構造部品、特に翼、胴体、隔壁及び操縦翼面などの航空宇宙の一次構造部品の製造に使用するのに好ましい材料である。これらの部品は、十分な強度、損傷許容性、ならびにそのような部品及び構造物に対して慣例的に確立されているその他の要件を有することが重要である。ジェットエンジンを囲むナセルは、重要な熱源に近接しており、ナセルが外部の環境要素にさらされているため、航空機の独特な構造上の構成成分である。ナセルに存在する複合部品及び構造物の多くは、高温と湿潤との両方の条件に耐えることができなければならない。
【0005】
航空宇宙プリプレグで一般的に使用される繊維は、多方向織布又は互いに平行に延びる繊維を含有する単方向テープである。繊維は通常、「トウ」と呼ばれる多数の個々の繊維又はフィラメントの束の形態である。また、繊維又はトウを細断し、樹脂内でランダムに配向して不織マットを形成することもできる。これらの様々な繊維構成は、慎重に制御された量の未硬化樹脂と組み合わされる。得られたプリプレグは、通常、保護層の間に配置され、製造施設への保管又は輸送のために巻き上げられる。
【0006】
硬化した複合部品の圧縮強度は、強化繊維及びマトリックス樹脂の個々の特性、及びこれら2つの構成成分間の相互作用によって左右される。さらに、繊維/樹脂の体積比、及び部品におけるプリプレグの配向は、圧縮強度に影響する要因である。多くの航空宇宙用途では、複合部品が高い圧縮強度を示すことが望ましい。有孔圧縮強度(OHC)試験は、硬化した複合材料の圧縮強度の標準的な尺度である。
【0007】
多くの航空宇宙用途では、複合部品又は構造物が室温/乾燥条件下と高温/湿潤条件下との両方で高い圧縮強度を示すことが望ましい。これは、高温と湿気との両方への暴露が考慮されるジェットエンジンの近くに配置されている複合部品及び構造物に関して特に重要である。ただし、高温及び湿潤条件下で圧縮強度を高く維持しようとすると、プリプレグの形成に使用される未硬化樹脂のガラス転移温度(サブTg)などの他の望ましい特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
未硬化樹脂のサブTgは、樹脂の粘度に関連している。サブTgが高すぎる場合、未硬化の樹脂は、粘性が高くなりすぎて、プリプレグを形成する際の使用に適さなくなる可能性がある。同様に、サブTgが低すぎる場合、未硬化樹脂は、プリプレグ樹脂としての使用には不適切に低い粘度を有する可能性がある。したがって、樹脂配合物を変更して、室温/乾燥条件と高温/湿潤条件との両方で結果として得られる硬化複合材料の圧縮強度を最大化する任意の試みは、未硬化樹脂のサブTgへの潜在的なマイナスの影響と比較検討する必要がある。
【0009】
エポキシ樹脂を含む樹脂は、多くの航空宇宙用プリプレグで一般的に使用されている。異なるタイプのエポキシ樹脂の様々な組み合わせが、未硬化樹脂及び最終複合部品の特性に幅広い変動をもたらす可能性があることが知られている。エポキシ樹脂マトリックスを硬化するために使用される硬化剤も、未硬化樹脂及び最終複合部品の両方の特性に実質的に影響を与える可能性がある。
【0010】
航空宇宙用プリプレグの樹脂マトリックスとして使用するためにエポキシ樹脂を配合する場合、エポキシ樹脂タイプと硬化剤との新しい又は変更された組み合わせが未硬化樹脂及び/又は硬化複合部品の既存の特性にマイナス又はプラスの影響を及ぼすかどうかを予測することは困難である。これにより、特性の望ましい組み合わせを達成するために樹脂配合物を変更するプロセスが特に問題となる。特性の望ましい組み合わせの例は、未硬化樹脂がプリプレグを製造するのに適した粘度を有する場合、及び得られたプリプレグが、高温及び湿潤条件に耐えることができなければならないジェットエンジンナセル部品及び構造物を製造するのに適している場合である。
【0011】
エポキシプリプレグ樹脂に熱可塑性強化剤を添加することも知られている。ポリエーテルスルホン(PES)又はポリエーテルイミド(PEI)などの強化剤は、繊維と組み合わせてプリプレグを形成する前にエポキシ樹脂に溶解される。熱可塑性強化エポキシ樹脂は、航空宇宙プリプレグを製造するために炭素繊維と組み合わせて広く使用されている。強化剤の量を変化させると、未硬化樹脂のサブTg及び粘度、並びに結果として得られる硬化複合材料の特性に影響を及ぼす。
【0012】
既存のエポキシプリプレグ樹脂配合物中の強化剤の量又はタイプを変更することにより、未硬化樹脂及び/又は硬化複合材料の1つ以上の特性にプラス又はマイナスの影響があるかどうかを予測することも困難である。この問題は、エポキシ樹脂及び硬化剤の量及び種類などの他の樹脂配合物変数を変更する場合、さらに複雑で予測不可能になる。1つの望ましい特性を提供する樹脂配合物の変更は、別の特性に望ましくない悪影響をもたらす可能性がある。例えば、硬化した複合材料の高温/湿潤OHCを所望のレベルまで増加させる配合変更は、未硬化樹脂のサブTgの変化をもたらす場合があり、樹脂をプリプレグの製造における使用に不適切にする。
【0013】
既存の航空宇宙用プリプレグは、その目的に十分適している。ただし、航空宇宙用プリプレグを製造するのに適した特性を有する樹脂を開発する必要性がなおも継続してあり、この場合、プリプレグを使用してエンジンナセルの部品又は構造物を製造し、その部品又は構造物の圧縮強度が、ナセル環境に存在する高温及び湿潤条件によって悪影響を受けないようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明によれば、成形して、室温/乾燥条件と高温/湿潤条件との両方で高レベルの圧縮強度を有する複合部品又は構造物を形成できる、予備含浸複合材料(プリプレグ)が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のプリプレグは、繊維及び未硬化の樹脂で構成される。未硬化樹脂は、トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂及び固体エポキシ樹脂から構成される樹脂構成成分を含む。未硬化樹脂は、熱可塑性強化剤及び硬化剤をさらに含む。
【0016】
本発明はまた、プリプレグを製造する方法、及び高温及び湿潤条件にさらされた場合に圧縮強度を保持する複合部品又は構造物にプリプレグを成形する方法を包含する。本発明はまた、改善されたプリプレグを使用して製造される複合部品及び構造物も包含する。本発明は、航空機エンジンナセルの部品及び構造物に特に適用可能である。
【0017】
上記の配合物を有する樹脂は、プリプレグの製造に使用するのに適したサブTg及び粘度を有し、プリプレグを成形して、ジェットエンジンナセルの環境に存在する高温及び湿潤条件に耐えることができる複合部品及び構造物を形成できることを見出した。
【0018】
本発明の上記で記載された及び他の多くの特徴及び付随する利点は、添付の図面と関連させる場合に、以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるプリプレグを使用して製造された部品及び構造物から構成されるナセルを含むジェットエンジンの簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による未硬化エポキシ樹脂組成物は、熱可塑性強化エポキシ樹脂マトリックスが望まれる多種多様な状況で使用されてもよい。未硬化エポキシ樹脂組成物を単独で使用してもよいが、組成物は、本発明では、マトリックス樹脂として使用され、繊維と組み合わされて繊維及び樹脂マトリックスから構成される複合材料を形成する。複合材料は、プリプレグ、部分的に硬化したプリプレグ、又はプリプレグの1つ以上の層から製造された完全に硬化した最終部品の形態であってもよい。プリプレグ、繊維への含浸前の樹脂、繊維に樹脂を含浸させる場合に形成される樹脂マトリックス又は複合材料に関連して本明細書で使用される場合、「未硬化」という用語は、ある程度の硬化が行われた可能性があるが、完全に硬化して最終的な複合部品又は構造物を形成していないアイテムを包含することを意図している。
【0021】
未硬化の複合材料は、任意の意図された目的に使用され得るが、それらは、好ましくは、民間航空機及び軍用航空機などの航空宇宙車両用の部品を製造する際に使用される。例えば、未硬化の複合材料を使用して、非一次(二次)航空機構造物を製造し得る。しかしながら、未硬化複合材料の好ましい使用は、一次航空機構造物などの構造用途のためである。一次航空機構造物又は部品は、固定翼又は回転翼航空機の飛行中に大きな応力を受ける要素であり、航空機が制御された飛行を維持するために不可欠である。
【0022】
航空機ジェットエンジンの内部構成成分を囲むナセルは、一次航空機構造物と見なされる。本発明のプリプレグは、ナセル内に存在する複合部品及び構造物の製造における使用に特によく適している。
【0023】
例示的なジェットエンジンは、
図1の10で示されている。ジェットエンジン10は、矢印14で表されるように一次高温空気流を生成する燃焼コア又は高温セクション12を含む。高温セクション又は高温領域12内の高温空気流は、ジェットエンジンのタイプ及び設計に応じて、500°F(260℃)~750°F(399℃)以上の範囲の温度であることができる。ナセル構造物16は、高温セクション12の周りに配置され、矢印20によって表されるように、そこを通って冷たい二次空気が流れる環状ダクト18を提供する。冷たい空気流は、外気温度に等しい温度でジェットエンジンに入り、環状ダクト18を通過するときに、高温セクション12の温度と同じ又はそれよりわずかに低い温度に加熱される。
【0024】
本発明のプリプレグは、ナセル16に存在する複合部品及び構造物を形成するために現在使用されている既存のプリプレグの代替品として使用され得る。本発明の一態様は、成形されてナセル部品又は構造物を形成するプリプレグを製造するために使用されている既存の樹脂の代わりに、本発明の樹脂配合物を代用することを含む。したがって、本発明の樹脂配合物は、ジェットエンジンナセルに関連する部品及び構造物を製造するために使用されるプリプレグを含む従来の製造及び硬化プロセスにおけるマトリックス樹脂としての使用に適している。
【0025】
本発明のプリプレグは、繊維及び未硬化の樹脂マトリックスで構成される。繊維は、プリプレグ及び複合シート成形業界で使用されている従来の繊維構成のいずれであることもできる。ジェットエンジンナセルの部品及び構造物を製造するために現在使用されている繊維のタイプ及び構成が好ましい。炭素繊維が好ましい繊維タイプである。
【0026】
樹脂マトリックスを形成するために使用される未硬化樹脂は、三官能性エポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂及び固体エポキシ樹脂から構成されるエポキシ樹脂構成成分を含む。樹脂はさらに、熱可塑性強化剤及び硬化剤を含む。
【0027】
好ましい例示的な三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルメタアミノフェノールである。トリグリシジルメタアミノフェノールは、商品名Araldite MY0610としてHuntsman Advanced Materials(The Woodlands、TX)から入手可能である。トリグリシジルメタアミノフェノールはまた、商品名KDS-8808としてKukdo Chemicals(Seoul,South Korea)及び商品名ELM-120としてSumitomo Chemical Co.(大阪、日本)から入手可能である。別の好適な三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルパラアミノフェノールである。トリグリシジルパラアミノフェノールは、商品名Araldite MY0510としてHuntsman Advanced Materials(The Woodlands、TX)から入手可能である。他の三官能性エポキシ樹脂は、それらがトリグリシジルメタアミノフェノール又はトリグリシジルパラアミノフェノールの特性と同じ又は類似の特性を有するという条件で使用されてもよい。
【0028】
例示的な四官能性エポキシ樹脂は、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(TGDDM)であり、Huntsman Advanced Materials(The Woodlands,TX)からAraldite MY720及びMY721又はSumitomo Chemical Industries,Ltd.(東京、中央区)からのELM 434として入手可能である。MY721が好ましい。他の四官能性エポキシ樹脂は、それらがN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンの特性と同じ又は類似の特性を有するという条件で使用されてもよい。例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンビス-ベンゼンアミンに基づく四官能性エポキシ樹脂も適している。そのような樹脂は、商品名Araldite MY9663としてHuntsman Advanced Materials(The Woodlands,TX)から入手可能である。
【0029】
三官能性樹脂と四官能性樹脂との重量比は、1.0:1.4~1.4:1.0であることが好ましい。三官能性樹脂と四官能性樹脂との重量比は、1.2:1.0~1.2:1.0であることが特に好ましい。三官能性エポキシ樹脂と四官能性エポキシ樹脂との重量比が1.0:1.0である配合物が最も好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂構成成分はまた、固体エポキシ樹脂を含む。固体エポキシ樹脂は、室温(20~25℃)で固体又は半固体であり、40~90℃の軟化点を有するエポキシ樹脂と見なされる。第1の例示的な固体エポキシ樹脂は、以下の式を有する。
【化1】
【0031】
第1の例示的な固体エポキシ樹脂は、商品名Tactix 742としてHuntsman(The Woodlands,TX)から入手可能である。Tactix 742は室温で半固体であり、軟化点は48.9℃である。Tactix 742のエポキシ当量は150~170g/eqである。25℃での樹脂の密度は1.23g/cm3であり、樹脂の引火点(クローズドカップ)は204℃である。
【0032】
第2の例示的な固体エポキシ樹脂は、以下の式を有する。
【化2】
【0033】
第2の例示的な樹脂は、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンとしても知られている。第2の例示的な固体エポキシ樹脂は、Shin A T&C(Overland Park,Kansas)から商品名SE 250として入手可能である。
【0034】
第3の例示的な固体エポキシ樹脂は、以下の式を有する。
【化3】
【0035】
式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である。
【0036】
第3の例示的な固体エポキシ樹脂は、Nippon Kayaku(東京,日本)から商品名NC7000Hとして入手可能である。
【0037】
第4の例示的な固体エポキシ樹脂は、以下の式を有する。
【化4】
【0038】
第4の例示的な固体エポキシ樹脂は、商品名HP4770としてDIC(Singapore)から入手可能である。HP4770は、エポキシ当量が200~210g/eq、軟化点が67~77℃のナフタレンタイプのエポキシである。HP4700は、DIC(Singapore)から入手可能なナフタレンタイプのエポキシであり、これもまた好適である。
【0039】
未硬化樹脂は、少なくとも1つの硬化剤を含む。適切な硬化剤は、エポキシ官能性化合物の硬化を促進し、特に、そのようなエポキシ化合物の開環重合を促進するものである。そのような硬化剤には、その開環重合において、エポキシ官能性化合物(単一種または複数種)と重合する化合物が含まれる。一次構造物及び部品の製造に使用される航空宇宙用プリプレグのエポキシ樹脂を硬化させるために使用されてきた硬化剤のいずれも適切である可能性がある。2つ以上のそのような硬化剤を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
例示的な好ましい硬化剤には、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)及び3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)が含まれ、両方ともHuntsman(The Woodlands,TX)から市販されている。3,3’-DDSは好ましい硬化剤である。
【0041】
硬化を向上又は促進するために促進剤も含めてもよい。適切な促進剤は、エポキシ樹脂の硬化に一般的に使用されている任意のウロン化合物である。単独又は組み合わせて使用されてもよい促進剤の具体例には、N,N-ジメチル,N’-3,4-ジクロロフェニル尿素(ジウロン)、N’-3-クロロフェニル尿素(モヌロン)、及び好ましくはN,N-(4-メチル-m-フェニレンビス[N’,N’-ジメチル尿素](例えば、Degussaから入手可能なDyhard UR500)が含まれる。
【0042】
本発明の未硬化樹脂マトリックスはまた、熱可塑性強化剤を含む。典型的には、熱可塑性強化剤は、硬化剤の添加前に加熱することにより樹脂混合物に溶解する粒子として樹脂混合物に添加される。熱可塑剤が高温の樹脂前駆体(すなわちエポキシ樹脂のブレンド)に実質的に溶解すると、前駆体は冷却され、硬化剤が添加され、冷却された樹脂ブレンドと混合される。
【0043】
例として、適切な強化剤は、商品名Sumikaexcel 5003Pとして販売されている粒子状ポリエーテルスルホン(PES)であり、これはSumitomo Chemicals(New York,NY)から市販されている。5003Pの代替品は、Solvayポリエーテルスルホン105RP、又はSolvay 1054Pのような非ヒドロキシル末端化グレードであり、これは、Solvay Chemicals(Houston,TX)から市販されている。高密度化PES粒子を強化剤として使用してもよい。PESの形態は、PESが樹脂の形成中に溶解するため、特に重要ではない。高密度化PES粒子は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,945,154号明細書の教示に従って製造できる。高密度化PES粒子はまた、Hexcel Corporation(Dublin,CA)からHRI-1という商品名で市販されている。強化剤の平均粒径は、樹脂前駆体内のPESの完全な溶解を促進及び保証するために、100ミクロン未満であるべきである。
【0044】
未硬化樹脂にはまた、室温/乾燥条件と高温/湿潤条件との両方で測定した場合に未硬化樹脂の粘度又は硬化した複合材料の圧縮強度に悪影響を及ぼさない限り、性能向上剤又は改質剤などの追加の成分を含めてもよい。性能向上剤又は改質剤は、例えばコアシェルゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、UV吸収剤、抗真菌化合物、充填剤、導電性粒子、及び粘度調整剤から選択されてもよい。
【0045】
例示的なコアシェルゴム(CSR)粒子は、典型的にはブタジエンのコポリマーである架橋ゴムコア、並びにスチレン、メチルメタクリラート、グリシジルメタクリラート及び/又はアクリロニトリルから構成されるシェルから構成される。コアシェル粒子は通常、エポキシ樹脂に分散した粒子として提供される。粒子のサイズ範囲は、典型的には50~150nmである。適切なCSR粒子は、米国特許出願公開US2007/0027233A1に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。好ましいコアシェル粒子はMXコアシェル粒子であり、これはKane Ace(Pasadena,Texas)から入手可能である。未硬化樹脂に含めるための好ましいコアシェル粒子は、Kane Ace MX-418である。MX-418は、四官能性エポキシ樹脂中のコアシェル粒子の25重量%の懸濁液として供給される。MX-418のコアシェル粒子は、平均粒径が100ナノメートルのポリブタジエン(PBd)コアシェル粒子である。
【0046】
適切な充填剤には、例えば、以下のいずれかのもの、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、炭酸カルシウム及び酸化カルシウムの単独又は組み合わせが含まれる。
【0047】
例として、適切な導電性粒子には、以下のいずれかのもの、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、導電性グレードのカーボン、バックミンスターフラーレン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバの単独又は組み合わせが含まれる。金属コーティング充填剤、例えばニッケルコーティング炭素粒子及び銀コーティング銅粒子も使用されてもよい。
【0048】
ポテト形状のグラファイト(PSG)粒子は、適切な導電性粒子である。炭素繊維/エポキシ樹脂複合材料におけるPSG粒子の使用は、米国特許出願公開番号US2015/0179298A1に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。PSG粒子は、SG25/99.95SC粒子としてNGS Naturgraphit(ドイツ)から、又はGHDR-15-4粒子としてNippon Power Graphite Company(日本)から市販されている。これらの市販のPSG粒子は、10~30ミクロンの平均粒径を有し、GHDR-15-4粒子は、PSG粒子の外面上に炭素の蒸着コーティングを有する。
【0049】
未硬化樹脂は、標準的なプリプレグマトリックス樹脂処理に従って製造される。一般に、三官能性エポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂及び固体エポキシ樹脂は、室温で一緒に混合されて、熱可塑性強化剤が添加される樹脂混合物を形成する。次いで、この混合物を約1~2時間約120℃に加熱して、熱可塑性強化剤を溶解する。次いで、混合物を約80℃に冷却する。次いで、硬化剤、熱可塑性粒子、及び存在する場合は追加の成分を樹脂に混合して、最終的に未硬化の樹脂を形成し、これをさらに室温以下に冷却する。
【0050】
未硬化樹脂を繊維強化材に適用(塗布)して、既知のプリプレグ製造技術のいずれかに従って、繊維を取り囲む未硬化樹脂マトリックスを形成する。繊維強化材は、未硬化樹脂で完全に又は部分的に含浸されていてもよい。代替実施形態では、未硬化樹脂は、別個の層として繊維強化材に適用されてもよく、これは繊維強化材に近接し、接触しているが、繊維強化材に実質的に含浸しない。セミプレグとも称されるプリプレグは通常、両側が保護フィルムで覆われ、早期硬化を避けるために通常室温よりも十分に低く維持された温度で保管及び出荷のために巻き上げられる。実際の樹脂マトリックスは、セミプレグをさらに加工するまで形成されない。所望なら、任意の他のプリプレグ製造プロセス及び保管/出荷システムを使用してもよい。
【0051】
繊維強化材又は繊維支持体とも呼ばれるプリプレグの繊維部分は、任意のガラス繊維、炭素又はアラミド(芳香族ポリアミド)繊維から選択されてもよい。繊維強化材は、好ましくは炭素繊維である。好ましい炭素繊維は、3,000~50,000の炭素フィラメント(3K~50K)を含有するトウの形態である。6,000、12,000又は24,000の炭素フィラメント(6K、12K又は24K)を含有する市販の炭素繊維トウが好ましい。
【0052】
プリプレグの繊維部分は、亀裂が入った(すなわち牽切された(stretch-broken))もしくは選択的に不連続な繊維、又は連続繊維を含んでもよい。亀裂が入った繊維又は選択的に不連続な繊維を使用すると、完全に硬化する前に複合材料のレイアップが促進され、成形能力が改善し得る。繊維強化材は、織物、非捲縮、不織、単方向又は多軸のテクスチャ構造形態、例えば疑似等方性細断プリプレグであってもよく、これはシート成形化合物を形成するために使用される。織物形態は、平織り、サテン織り、又は綾織りのスタイルから選択されてもよい。非捲縮及び多軸形態は、多数のプライ及び繊維の配向を有していてもよい。このようなスタイル及び形態は、複合強化材分野でよく知られており、Hexcel Reinforcements(Les Avenieres,France)を含む多くの企業から市販されている。
【0053】
プリプレグは、連続テープ、トウプレグ、ウェブ、又は細断長さの形態であってもよい(細断及び切断操作は、含浸後の任意の時点で実行されてもよい)。プリプレグは、接着剤又は表面仕上げフィルムであってもよく、さらに織物、編物、及び不織の両方の様々な形態で埋め込まれたキャリアを有してもよい。プリプレグは、例えば、硬化中の空気除去を促進するために、完全に又は部分的にのみ含浸されていてもよい。
【0054】
以下の例示的な樹脂配合物を繊維状支持体に含浸させて、本発明によるプリプレグを形成する(すべての重量百分率は、総樹脂重量に基づく):
22重量%~26重量%のトリグリシジル-m-アミノフェノール、22重量%~26重量%の四官能性エポキシ、4重量%~8重量%の固体エポキシ樹脂、15重量%~19重量%のポリエーテルスルホン、及び硬化剤として27重量%~32重量%の3,3’-DDS。
【0055】
以下は、各成分の所与の量を±1重量%変化させてもよい好ましい例示的な樹脂配合物である(すべての重量パーセントは、総樹脂重量に基づく)。
23.8重量%のトリグリシジル-m-アミノフェノール、23.8重量%の四官能性エポキシ、6重量%の固体エポキシ樹脂、16.9重量%のポリエーテルスルホン、および、硬化剤として29重量%の3,3’-DDS。
【0056】
プリプレグは、複合部品の形成に使用される任意の標準的な技術を使用して成形されてもよい。通常、プリプレグの1つ以上の層を適切なモールドに入れ、硬化させて最終的な複合部品を形成する。本発明のプリプレグは、当該技術分野において既知の任意の適切な温度、圧力、及び時間条件を使用して完全に又は部分的に硬化させてもよい。通常、プリプレグは、オートクレーブで160℃~190℃の温度で硬化する。複合材料は、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ放射、又は他の適切な熱若しくは非熱放射から選択される方法を使用して硬化させてもよい。
【0057】
本発明の改良されたプリプレグから製造された複合部品は、ジェットエンジンナセルに存在する複合部品及び構造物の製造における使用に特によく適している。未硬化樹脂のサブTgは、プリプレグの製造に使用するのに適しており、プリプレグから成形される複合部品及び構造物は、ジェットエンジンナセルの環境に存在する高温及び湿潤条件に耐えることができる。
【0058】
この仕様の目的のために、部品又は構造物の硬化複合材料の有孔圧縮強度(OHC)が、ASTM D6484の現行バージョンに記載されている湿潤条件(高温/湿潤OHC)下、132℃で測定した場合に37以上である場合、複合部品又は構造物は高温及び湿潤条件に耐えることができると見なされる。好ましくは、硬化した複合材料の132℃/湿潤OHCは少なくとも38である。
【0059】
この仕様の目的のために、エンジンナセルの部品及び構造物を形成するために成形されるプリプレグを製造するための未硬化樹脂としての使用に適するように、樹脂のサブTgは、毎分10℃の加熱速度で行われる示差走査熱量測定(DSC)によって測定される場合に-10℃から5℃の範囲内である必要がある。好ましくは、サブTgは-5℃~5℃であり、最も好ましくは0℃~5℃である。
【0060】
実施の例は次のとおりである。
【実施例】
【0061】
例1
本発明による第1の好ましい例示的な未硬化樹脂配合物を表1に記載する。未硬化樹脂は、室温でエポキシ成分をポリエーテルスルホンと混合して樹脂ブレンドを形成し、これを120℃にて60分間加熱してポリエーテルスルホンを完全に溶解させることにより調製した。混合物を80℃に冷却し、硬化剤を添加し、完全に混合した。
【表1】
【0062】
樹脂のサブTgはDSCにより10℃/分の加熱速度で測定され、2.2℃であることがわかった。
【0063】
例示的なプリプレグは、一方向炭素繊維の1つ以上の層に表1の樹脂配合物を含浸させることによって調製された。一方向炭素繊維(Hexcel Corporationから入手可能な12K AS4)を使用して、プリプレグを製造したが、ここで、マトリックス樹脂は未硬化プリプレグの総重量の35重量パーセントになり、繊維面積重量は192グラム/平方メートル(gsm)であった。標準のプリプレグ製造手順を使用して、26プライのラミネートを調製した。ラミネートをオートクレーブ内にて177℃で約2時間硬化させた。硬化したラミネートを試験して、室温/乾燥条件下でASTM D6484に従って、82℃/湿潤条件、及び132℃/湿潤条件でOHCを測定した。結果はそれぞれ55.7、45.4及び38.6であった。
【0064】
例2
表2に記載の配合を有する第2の好ましい例示的な未硬化樹脂を、例1と同じ方法で調製した。
【表2】
【0065】
例1と同じ方法で樹脂のサブTgを測定し、2.4℃であることがわかった
【0066】
例1と同じ方法で、26プライのラミネートを調製し、硬化し、OHCについて試験した。室温/乾燥条件、82℃/湿潤条件及び132℃/湿潤条件下でのラミネートのOHCは、それぞれ54.3、42.3及び38.3であった。
【0067】
例3
表3に記載の配合を有する第3の好ましい例示的な未硬化樹脂を、例1と同じ方法で調製した。
【表3】
【0068】
例1と同じ方法で樹脂のサブTgを測定し、2.6℃であることがわかった。
【0069】
例1と同じ方法で、26プライのラミネートを調製し、硬化し、OHCについて試験した。室温/乾燥条件、82℃/湿潤条件及び132℃/湿潤条件下でのラミネートのOHCは、それぞれ53.4、45.0及び37.8であった。
【0070】
例4
表4に記載の配合を有する第4の好ましい例示的な未硬化樹脂を、例1と同じ方法で調製した。
【表4】
【0071】
例1と同じ方法で樹脂のサブTgを測定し、2.4℃であることがわかった。
【0072】
例1と同じ方法で、26プライのラミネートを調製し、硬化し、OHCについて試験した。室温/乾燥条件、82℃/湿潤条件及び132℃/湿潤条件下でのラミネートのOHCは、それぞれ54.7、44.9及び37.1であった。
【0073】
未硬化樹脂はすべて2℃~3℃の間のサブTgを有していたうえに、その樹脂から製造されたラミネートはすべて、132℃/湿潤条件下で37~39の間のOHCを有していたため、すべての好ましい例示的な未硬化樹脂は、ジェットエンジンナセルに存在する複合部品及び構造物の製造に使用されるプリプレグの製造に特に適している。
比較例は次のとおりである。
【0074】
比較例1~7
表5に示される配合を有する未硬化樹脂の比較例は、例1と同じ方法で調製された。26プライラミネートが調製され、硬化され、例1と同じ方法でOHCについて試験された。未硬化の比較樹脂も、例1と同じ方法でサブTgについて試験した。OHC及びサブTg試験の結果を表5に示す。
【表5】
【0075】
比較例1~4は、樹脂配合物に固体エポキシ樹脂がないと、本発明による132℃/湿潤条件下、好ましいサブTg(0℃~5℃)及び/又は好適なOHC(少なくとも37)の達成が妨げられることを示す。比較例5~6は、相当量の固体エポキシ(10重量パーセント超過)を添加すると、132℃/湿潤条件下で適切なOHCが得られることを示すが、そのサブTg(ほぼ17℃)は、ナセルプリプレグを製造するのに適した本発明による好ましいサブTg範囲を大幅に超える。
【0076】
例4に従って調製されたラミネートはまた、ASTM D6484に従って、160℃/湿潤条件下でOHCについて試験された。その160℃/湿潤条件下でのOHCは34.0であったが、これは特に高く、160℃/湿潤条件下での比較例7のOHC(それはわずか22.0であることがわかった)を考慮すると予想外である。比較例7で使用されるTactix556は、Huntsman(The Woodlands,TX)から入手可能なジシクロペンタジエン骨格を有する炭化水素エポキシノボラック樹脂である。Tactix556は、53℃の軟化点を有する半固体樹脂である。
【0077】
積層構造を有する複合部品を形成するために、プリプレグの複数の層が一般に使用される。このような複合部品の層間剥離は重要な破壊モードである。2つの層が互いに剥離すると、層間剥離が生じる。重要な設計制限要因には、層間剥離を開始するために必要なエネルギーとそれを伝播するために必要なエネルギーとの両方が含まれる。層間剥離の開始及び成長は、多くの場合、モードI及びモードIIの破壊靭性を調べることで決定される。破壊靭性は、通常、単方向の繊維配向を有する複合材料を使用して測定される。複合材料の層間破壊靭性は、G1c(ダブルカンチレバービーム)及びG2c(エンドノッチフレックス)試験を使用して定量化される。モードIでは、予め亀裂が入ったラミネートの破壊は剥離力によって支配され、モードIIでは、亀裂は剪断力によって伝播される。
【0078】
本発明によれば、少量の熱可塑性粒子(未硬化樹脂の総重量に基づいて1~5重量%)が熱可塑性粒子構成成分として未硬化樹脂に含まれ、層間破壊靭性を増加させる。好ましくは、熱可塑性粒子構成成分中の熱可塑性粒子の量は、未硬化樹脂の総重量に基づいて、3重量%±1重量%である。
【0079】
熱可塑性粒子構成成分を形成するために、1つ以上のタイプの熱可塑性粒子が未硬化樹脂に含まれてもよい。例示的な熱可塑性粒子は、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンのメチル誘導体と、デカンジカルボン酸及びドデカンジカルボン酸からなる群から選択される脂肪族ジカルボン酸とのポリマー縮合生成物から形成されるポリアミド粒子である。本明細書で「アミン構成成分」と呼ばれるビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンのメチル誘導体は、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタンのメチル誘導体としても知られている。このタイプのポリアミド粒子及びそれらを製造するための方法は、米国特許第3,936,426号明細書及び第5,696,202号明細書に詳細に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
ポリマー縮合生成物のアミン構成成分の式は以下
【化5】
であり、式中、R
2は水素であり、R
1はメチル又は水素のいずれかである。
【0081】
ポリマー縮合生成物のモノマー単位の式は、以下のように表され得る。
【化6】
【0082】
ポリマー縮合生成物の分子数は、14,000~20,000の範囲であり、約17,000の分子数が好ましい。
【0083】
ポリアミド粒子は、100ミクロン未満の粒径を有する必要がある。粒子のサイズは5~60ミクロン、より好ましくは10~30ミクロンの範囲であることが好ましい。平均粒径は15~25ミクロンであることが好ましい。ポリアミド粒子の形状は規則的又は不規則的であってもよい。例えば、粒子は実質的に球形であってもよく、又はギザギザの形状の粒子であることができる。
【0084】
1つの例示的なポリアミド粒子は、ポリマー縮合生成物のアミン構成成分が、R1が両方ともメチルであり、R2が両方とも水素である上記の式を有するポリアミドから製造される。そのようなポリアミド粒子は、3,3’-ジメチル-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-メタン及び1,10-デカンジカルボン酸のポリマー縮合生成物から製造されてもよい。ポリアミド粒子は、加熱された受容器中、13,800グラムの1,10-デカンジカルボン酸及び12,870グラムの3,3’-ジメチル-ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンを30グラムの50%水性リン酸、150グラムの安息香酸及び101グラムの水と組み合わせて製造される。混合物を均質になるまで加圧オートクレーブで撹拌する。圧縮、減圧及び脱気の段階の後、ポリアミド縮合生成物はストランドとして押し出され、冷水の下を通過して造粒されて、ポリアミド粒子が形成される。R1が両方ともメチルであり、R2が両方とも水素であるポリアミド粒子はまた、EMS-Chime(Sumter,SC)から市販されているGRILAMID TR90からも製造できる。GRILAMID TR90は、3,3’-ジメチル-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-メタン及び1,10-デカンジカルボン酸のポリマー縮合生成物である。
【0085】
別の例示的なポリアミド粒子は、ポリマー縮合生成物のアミン構成成分が、R1が両方とも水素であり、R2が両方とも水素である上記の式を有するポリアミドから製造される。そのようなポリアミド粒子は、ポリアミドが3,3’-ジメチル-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-プロパン及び1,10-デカンジカルボン酸のポリマー縮合生成物であることを除いて、上記と同じ方法で製造され得る。R1が両方とも水素であり、R2が両方とも水素であるポリアミド粒子はまた、Evonik(Mobile,AL)から市販されているTROGAMIDE CX7323又はCX9705から製造することができる。CX7323及びCX9705は、3,3’-ジメチル-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-プロパン及び1,10-デカンジカルボン酸のポリマー縮合生成物である。
【0086】
熱可塑性粒子構成成分は、例えば、ポリアミド(PA)11、PA6、PA12、PA6/PA12コポリマー、PA4、PA8、PA6.6、PA4.6、PA10.10、PA6.10及びPA10.12を含む熱可塑性強化エポキシ樹脂で典型的に使用される1つ以上のタイプのポリアミド粒子を含み得る。
【0087】
例示的な熱可塑性粒子構成成分は、架橋ポリアミドを含有しないポリアミド粒子の第1群と、架橋ポリアミドを含有するポリアミド粒子の第2群とを含む。
【0088】
ポリアミド粒子の第1群は、架橋ポリアミドを含有せず、熱可塑性強化エポキシ系プリプレグに通常使用される任意のポリアミド粒子であり得る。そのような粒子は、ポリアミド(PA)11、PA6、PA12、PA6/PA12コポリマー、PA4、PA8、PA6.6、PA4.6、PA10.10、PA6.10及びPA10.12で構成されていてもよい。非架橋ポリアミド粒子は、多くの供給元から市販されている。適切な非架橋ポリアミド12粒子は、Kobo Productsから商品名SP10Lで入手可能である。SP10L粒子には、98重量%を超えるPA12が含まれる。粒径分布は7ミクロン~13ミクロンで、平均粒径は10ミクロンである。粒子の密度は1g/cm3である。PA12粒子は、水分含有量を除いて少なくとも95重量%のPA12であることが好ましい。
【0089】
他の適切な非架橋粒子は、商品名Orgasol 1002粉末及びOrgasol 3803粉末でArkema(Colombes,France)から入手可能である。Orgasol 1002粉末は、20ミクロンの平均粒径を有する100%PA6粒子で構成される。Orgasol 3803は、80%PA12及び20%PA6のコポリマーである粒子で構成され、平均粒径は17~24ミクロンである。Orgasol 2002は、粒子の第1群でも使用され得る非架橋PA12粒子で構成される粉末である。
【0090】
熱可塑性粒子の第1群のための例示的な非架橋ポリアミド粒子はポリアミド11粒子であり、これも多くの供給元から市販されている。好ましいポリアミド11粒子は、商品名Rislan PA11でArkema(Colombes,France)から入手可能である。これらの粒子は、98重量%を超えるPA 11を含有し、15ミクロン~25ミクロンの粒径分布を有する。平均粒径は20ミクロンである。Rislan PA11粒子の密度は1g/cm3である。PA11粒子は、水分含有量を除いて少なくとも95重量%のPA11であることが好ましい。
【0091】
熱可塑性ポリアミド粒子の第2群は、粒子の表面、粒子の内部、又はその両方に架橋ポリアミドを含有する粒子である。架橋ポリアミド粒子は、粒子形成前に架橋されたポリアミドから製造されてもよく、又は非架橋ポリアミド粒子が適切な架橋剤で処理されて、架橋ポリアミド粒子を製造してもよい。
【0092】
適切な架橋粒子は、架橋PA11、PA6、PA12、PA6/PA12コポリマー、PA4、PA8、PA6.6、PA4.6、PA10.10、PA6.10及びPA10.12を含有する。ポリアミドを架橋するために一般的に使用される任意の架橋剤が適している。例示的な架橋剤は、エポキシ系架橋剤、イソシアナート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アシルラクタム系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤である。好ましい架橋粒子は、エポキシ架橋剤で架橋されたPA12を含有するPA12粒子である。ポリアミドを含む熱可塑性ポリマーの架橋に使用される手順は既知である。例えば、米国特許第6399714号明細書、米国特許第8846818号明細書、及び米国公開特許出願第2016/0152782A1号明細書を参照のこと。これら3つの参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
架橋PA12粒子は、CG352としても知られている商品名ORGASOL 2009ポリアミド粉末でArkema(Colombes,France)から市販されている。ORGASOL 2009ポリアミド粉末に存在するPA12粒子は、エポキシ系架橋剤で架橋された少なくとも40%のPA12で構成される。ORGASOL 2009架橋ポリアミド粒子は、14.2ミクロンの平均粒径を有し、粒子のわずか0.2%が30ミクロンを超える直径を有する。ORGASOL 2009架橋粒子の融点は180℃である。ORGASOL 2009粒子の比表面積は1.9であり、粒子の水分含有量は0.34%である。
【0094】
架橋ポリアミド粒子は、それぞれ40~70%の架橋ポリアミドを含有すべきである。好ましくは、架橋ポリアミド粒子はそれぞれ、40~60%の架橋ポリアミドを含有すべきである。
【0095】
好ましくは、非架橋及び架橋ポリアミド粒子の両方が100ミクロン未満の粒径を有するべきである。粒子のサイズは5~60ミクロン、より好ましくは5~30ミクロンの範囲であることが好ましい。平均粒径は5~20ミクロンであることが好ましい。粒子の形状は規則的又は不規則的であってもよい。例えば、粒子は実質的に球形であってもよく、又はギザギザの形状の粒子であることができる。非架橋粒子は、架橋粒子よりも大きい平均粒径を有することが好ましい。好ましくは、平均非架橋粒径は15~25ミクロンの範囲であり、平均架橋粒径は10~20ミクロンの範囲である。
【0096】
非架橋粒子と非架橋粒子との組み合わせを使用する場合、非架橋粒子と架橋粒子との相対量は変動し得る。非架橋粒子と架橋粒子との重量比は、4:1~1.5:1の範囲であり得る。好ましくは非架橋粒子と架橋粒子との重量比は、3.5:1~2.5:1の範囲である。
【0097】
別の例示的な熱可塑性粒子構成成分は、ポリアミド粒子がビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンのメチル誘導体と脂肪族ジカルボン酸とのポリマー縮合生成物で構成される、ポリイミド粒子とポリアミド粒子との組み合わせを含み得る。
【0098】
好ましいポリイミド粒子は、P84ポリイミド成形粉末としてHP Polymer GmbH(Lenzig,Austria)から市販されている。適切なポリアミド粒子はまた、商品名P84NTとしてEvonik Industries(Austria)から市販されている。粒子を製造するために使用されるポリイミドは、米国特許第3,708,458号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。ポリイミドは、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物を、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアナート)とトルエンジイソシアナート(2,4-又は2,6-異性体)との混合物と組み合わせることによって製造される。アミン類似体は、芳香族イソ-及びジイソシアナートの代わりに使用されてもよい。ポリイミドのCAS登録番号は58698-66-1である。
【0099】
ポリイミド粒子は、繰り返しモノマーの式を有する芳香族ポリイミドで構成され、
【化7】
式中、ポリマー全体のR基の10~90%は、式
【化8】
を有する芳香族基であり、ポリマーの残りのR基は以下である。
【化9】
【0100】
粉末中のポリイミド粒子のサイズは、典型的には2ミクロン~35ミクロンの範囲である。好ましいポリイミド粉末は、2~30ミクロンの範囲のサイズの粒子を含み、平均粒径は5ミクロン~15ミクロンの範囲である。好ましくは、粉末中のポリイミド粒子の少なくとも90重量パーセントは、2ミクロン~20ミクロンのサイズ範囲である。ポリイミド粒子の形状は規則的又は不規則的であってもよい。例えば、粒子は実質的に球形であってもよく、又はギザギザの形状の粒子であることができる。
【0101】
ポリイミド粒子は、少なくとも95重量パーセントのポリイミドを含む。粒子の全体的な特性に悪影響を及ぼさない限り、少量(最大5重量パーセント)の他の材料が粒子に含まれていてもよい。
【0102】
ポリイミド粒子のガラス転移温度(Tg)は約330℃で、個々の粒子の密度は1.34グラム/立方センチメートルであるべきである。粒子の加熱による線膨張係数は50である。
【0103】
ポリアミド粒子とポリイミド粒子との間の重量比は、3.5:1.0~1.0:1.0の範囲であり得る。好ましくは、ポリアミド粒子とポリイミド粒子との重量比は、3.2:1.0~2.8:1.0である。
【0104】
未硬化樹脂への熱可塑性粒子構成成分の含有に関する実施の例は以下のとおりである。
【0105】
例5
表5Aに示す配合を有する好ましい例示的な未硬化樹脂は、熱可塑性粒子構成成分(20ミクロン未満の粒径を有し、平均粒径が5ミクロンであるCX9705の粒子)が硬化剤と同時に未硬化樹脂と混合されたことを除いて、例1と同じ方法で調製された。
【表6】
【0106】
例示的なプリプレグは、表5Aの樹脂配合物を炭素繊維布地の1つ以上の層に含浸させることによって調製された。炭素繊維布地(Hexcel Corporation,Dublin,CAから入手可能なAS4D炭素繊維布地)を使用してプリプレグを製造したが、ここでマトリックス樹脂は未硬化プリプレグの総重量の35重量パーセントになり、炭素繊維面積重量は、平方メートルあたり193グラム(gsm)であった。標準のプリプレグ製造手順を使用して、20プライのラミネートを調製した。ラミネートをオートクレーブ内にて177℃で約2時間硬化させた。厚み0.16±0.01インチの硬化したラミネートを試験して、BSS7273の現行バージョンに従ってG1cを測定した。
【0107】
G1cは4.0in-lb/in2であることがわかった。未硬化樹脂のサブTgは-5.8℃であった。熱可塑性粒子を含まない例4に記載の樹脂を使用して、例5と同等のプリプレグを製造し、同じG1c試験手順に供した。例4のプリプレグのG1cは2.8in-lb/in2であった。
【0108】
例6
表6に記載の配合を有する例示的な未硬化樹脂を、例5と同じ方法で調製した。
【表7】
【0109】
プリプレグ及びラミネートを例5と同じ方法で調製及び硬化し、G1cについて試験した。G1cは3.2in-lb/in2であることがわかった。未硬化樹脂のサブTgは2.0℃であった。
【0110】
例7
表7に記載の配合を有する例示的な未硬化樹脂を、例5と同じ方法で調製した。
【表8】
【0111】
プリプレグ及びラミネートを例5と同じ方法で調製及び硬化し、G1cについて試験した。G1cは3.5in-lb/in2であることがわかった。サブTgは-5.3℃であった。
【0112】
例8
CX9705粒子の代わりにRislan PA11粒子を使用したことを除いて、例5と同じ方法で、表8に記載の配合を有する例示的な未硬化樹脂を調製した。
【表9】
【0113】
プリプレグ及びラミネートを例5と同じ方法で調製及び硬化し、G1cについて試験した。G1cは3.02in-lb/in2であることがわかった。未硬化樹脂のサブTgは-3.2℃であった。
【0114】
例9
表9に記載の配合を有する例示的な未硬化樹脂を、例8と同じ方法で調製した。
【表10】
【0115】
プリプレグ及びラミネートを例5と同じ方法で調製及び硬化し、G1cについて試験した。G1cは3.03in-lb/in2であることがわかった。未硬化樹脂のサブTgは-3.4℃であった。
【0116】
このように本発明の例示的な実施形態を説明したが、当業者は、開示の範囲は例示に過ぎず、本発明の範囲内で他の様々な代替、適応、及び変更が行われてもよいことに留意すべきである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
湿潤条件下、132℃の温度で少なくとも37の有孔圧縮強度を有する複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグであって、前記プリプレグが、
A)繊維、並びに
B)0℃~5℃のサブガラス転移温度を有する未硬化樹脂であって、前記未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて15~19重量パーセントのポリエーテルスルホン、及び
c)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成するのに十分な量の硬化剤を含む未硬化樹脂
を含む、プリプレグ。
[2].
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
[化1]
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
[化2]
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、上記項目1に記載のプリプレグ。
[3].
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、上記項目1に記載のプリプレグ。
[4].
上記項目1に記載のプリプレグを硬化させることによって形成された複合部品又は構造物。
[5].
前記複合部品又は構造物は、航空機のエンジンナセルの少なくとも一部を形成する、上記項目4に記載の複合部品又は構造物。
[6].
湿潤条件下、132℃の温度で少なくとも37の有孔圧縮強度を有する複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグを製造する方法であって、前記方法が、
A)繊維を提供する工程、並びに
B)前記繊維に、0℃~5℃のサブガラス転移温度を有する未硬化樹脂を含浸させる工程であって、前記未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、22~26重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて15~19重量パーセントのポリエーテルスルホン、及び
c)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成するのに十分な量の硬化剤を含む、工程
を含む、方法。
[7].
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
[化3]
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
[化4]
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、上記項目6に記載のプリプレグを製造する方法。
[8].
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、上記項目6に記載のプリプレグを製造する方法。
[9].
上記項目1に記載のプリプレグを提供する工程及び前記プリプレグを硬化して、前記複合部品又は構造物を形成する工程を含む、複合部品又は構造物を製造する方法。
[10].
複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグであって、前記プリプレグが、
A)繊維、並びに
B)未硬化樹脂であって、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて12~16重量パーセントのポリエーテルスルホン、
c)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて1~5重量パーセントの熱可塑性粒子構成成分、並びに
d)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成するのに十分な量の硬化剤
を含む未硬化樹脂
を含む、プリプレグ。
[11].
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂がトリグリシジルパラアミノフェノールエポキシ樹脂である、上記項目10に記載のプリプレグ。
[12].
前記四官能性エポキシ樹脂がN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンである、上記項目10に記載のプリプレグ。
[13].
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂がトリグリシジルパラアミノフェノールエポキシ樹脂である、上記項目12に記載のプリプレグ。
[14].
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
[化5]
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
[化6]
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、上記項目10に記載のプリプレグ。
[15].
前記トリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂と前記四官能性エポキシ樹脂との重量比が1:1である、上記項目10に記載のプリプレグ。
[16].
上記項目10に記載のプリプレグを硬化させることによって形成されている複合部品又は構造物。
[17].
前記複合部品又は構造物が、航空機のエンジンナセルの少なくとも一部を形成する、上記項目16に記載の複合部品又は構造物。
[18].
複合材料を形成するように硬化可能なプリプレグを製造する方法であって、前記方法が、
B)繊維を提供する工程、並びに
B)前記繊維に未硬化樹脂を含浸させる工程であって、未硬化樹脂が、
a)エポキシ樹脂構成成分であって、
1)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントのトリグリシジルアミノフェノールエポキシ樹脂、
2)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、23~27重量パーセントの四官能性エポキシ樹脂、
3)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて、4~8重量パーセントの固体エポキシ樹脂
を含むエポキシ樹脂構成成分、
b)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて12~16重量パーセントのポリエーテルスルホン、
c)前記未硬化樹脂の総重量に基づいて1~5重量パーセントの熱可塑性粒子構成成分、並びに
d)前記未硬化樹脂を硬化させて前記複合材料を形成するのに十分な量の硬化剤を含む、工程
を含む、方法。
[19].
前記固体エポキシ樹脂が、以下の式
[化7]
(式中、Gはグリシジル又はエポキシド基であり、n=1.5~2である)及び
[化8]
を有する固体エポキシ樹脂の群から選択される、上記項目18に記載のプリプレグを製造する方法。
[20].
複合部品又は構造物を製造する方法であって、上記項目10に記載のプリプレグを提供する工程及び前記プリプレグを硬化して、前記複合部品又は構造物を形成する工程を含む、方法。