(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】イオンビームスパッタリング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/46 20060101AFI20230620BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20230620BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230620BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C23C14/46 C
C23C14/46 B
C23C14/04 A
H01J37/317 E
H01J37/09 A
(21)【出願番号】P 2020555007
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 NZ2018050183
(87)【国際公開番号】W WO2019125186
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】514256254
【氏名又は名称】インスティテュート オブ ジオロジカル アンド ニュークリア サイエンシズ リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】520226528
【氏名又は名称】フッター、 リチャード ジョン
(73)【特許権者】
【識別番号】520226539
【氏名又は名称】ダビッドソン、 ライアン ジェームズ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】フッター、 リチャード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ダビッドソン、 ライアン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】レヴェヌール、 ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、 ジョン ヴェダムトゥ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06130507(US,A)
【文献】特開平07-188920(JP,A)
【文献】国際公開第2008/101494(WO,A1)
【文献】特開平03-274257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/46
C23C 14/04
H01J 37/317
H01J 37/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームスパッタリング装置であって、
中空イオンビームの中空部分に位置するビーム軸に沿って中空イオンビームを生成するように構成されているイオン源と、
少なくとも1つのターゲット表面を画定するターゲット本体を有するスパッタリングターゲットであって、前記ターゲット本体はスパッタ可能な粒子を含み、前記ターゲット本体は前記イオンビームが前記少なくとも1つのターゲット表面に衝突して前記ターゲット本体から対象物の被改質表面に向かって粒子をスパッタするように前記イオン源に対して配置されているスパッタリングターゲットと
を含み、
前記ターゲット本体は、前記被改質表面に向かってスパッタされた粒子が全体として前記スパッタリングターゲットから前記ビーム軸
に向かって延びるスパッタ方向にスパッタされるように形作ら
れ、
前記ターゲット本体は、前記ターゲット本体を通って延びるターゲット通路を有し、前記ターゲット通路は、前記イオンビームのためのイオンビーム入口と、スパッタされた粒子が被改質表面に向かって前記ターゲット通路を出るための粒子出口とを有し、
前記ビーム軸に垂直な平面における前記粒子出口の断面積は、前記イオンビームの中空部分の断面積よりも実質的に小さい、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのターゲット表面は、前記通路を少なくとも部分的に画定する前記ターゲット本体の少なくとも表面の形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビーム軸に垂直な平面における前記イオンビーム入口の断面積は、前記ビームが前記入口を通過できるように、前記イオンビームの外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記イオンビーム入口と前記粒子出口の中間にある前記ターゲット通路の少なくとも一部が、前記粒子出口に向かって先細りになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ターゲット通路は、前記イオンビーム入口又はその近傍から前記粒子出口又はその近傍まで先細りになっている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記通路は、実質的に一定の割合で先細りになっている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ターゲット通路は、前記イオンビームが前記ターゲット表面に衝突することなく前記通路の外側の被改質表面に向かって前記粒子出口を通って前記ターゲット通路を出るのを阻止するように形作られている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ビーム軸は、前記イオンビーム入口、前記ターゲット通路及び前記粒子出口と重なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ビーム軸は中心ビーム軸であり、前記ターゲット通路は、前記ビーム軸と実質的に同軸である中心通路軸を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ターゲット通路は、前記中心通路軸及び/又は前記ビーム軸に関して概ね対称である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ターゲット本体も、前記中心通路軸及び/又は前記ビーム軸に関して概ね対称である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記イオンビーム入口及び前記粒子出口は、実質的に前記通路軸及び/又は前記ビーム軸を中心とする、請求項
9から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ビーム軸に垂直な平面における前記イオンビーム入口の断面形状が、実質的に円形、長円形、及び丸みを帯びた角を有する長方形からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ビーム軸に垂直な平面における前記粒子出口の断面形状が、実質的に円形、長円形、及び丸みを帯びた角を有する長方形からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
パターンを画定して前記パターンに従って被改質表面にスパッタされた粒子を堆積させるためのステンシルを前記粒子出口又はその近傍にさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記ステンシルは、前記粒子出口に隣接して配置され、少なくとも部分的に前記粒子出口を横切って延びる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記スパッタリングターゲットは、それぞれ前記ターゲット本体を通って延びる1つ以上の真空ベント又は開口部を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記又は各ベントは、前記イオンビーム入口又はその近傍にある前記ターゲット本体の第1の端部又は部分から前記粒子出口の近傍にある前記ターゲット本体の第2の端部又は部分まで前記ターゲット本体を通って延びる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記通路の外側で前記スパッタリングターゲットの粒子出口に隣接して被改質表面を有する対象物を少なくとも部分的に支持するための支持体を含むか又は前記支持体と関係している、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記イオン源及び前記スパッタリングターゲットは、前記通路の外側で前記粒子出口に隣接して配置されている被改質表面を有する対象物に対して実質的に前記ビーム軸に垂直な方向に移動可能である、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
被改質表面を有する前記対象物は、前記イオン源及び前記スパッタリングターゲットに対して移動可能である、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
被改質表面を有する前記対象物は、大気圧から、少なくとも部分真空が存在する真空チャンバ内に移動可能であり、前記真空チャンバは、少なくとも部分的にハウジングによって画定される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記中空イオンビームは、前記イオン源における幅W及び内径Rを有し、前記中空イオンビームがスパッタリングターゲットに向かって進むにつれてビーム幅の増大を示し、前記ビーム幅の増大は、
前記ビーム軸から離れる側のAのビーム幅の増大と、
前記ビーム軸に向かう側のBのビーム幅の増大と
を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記スパッタリングターゲットは、d=(A+W+B)tanδによって定義される高さdを有し、δは、前記中空イオンビームに対する前記スパッタリングターゲットの傾斜を表す、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記スパッタリングターゲットは、
前記中空イオンビームが前記スパッタリングターゲットに衝突するときの
前記中空イオンビームの内径R-Bに等しい最大内径rを有し、前記最大内径は、a≦r≦R-Bによって定義される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記スパッタリングターゲットは、h≧dによって定義される最小高さhを有する、請求項24又は25に記載の装置。
【請求項27】
前記スパッタリングターゲットは、w≧A+W+Bによって定義される最小幅wを有する、請求項23から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記スパッタリングターゲットは、前記少なくとも1つのターゲット表面が前記スパッタ可能な粒子を提供するように単一の材料から成る、請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記スパッタリングターゲットは少なくとも第1の材料と第2の材料とを含み、前記第1の材料は前記第2の材料とは異なる、請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、前記中空イオンビームに対して実質的に同じ入射角に配置される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記第1の材料は前記中空イオンビームに対して第1の入射角に配置され、前記第2の材料は前記中空イオンビームに対して第2の入射角に配置され、前記第1の入射角は前記第2の入射角とは異なる、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
被改質表面に粒子をスパッタする方法であって、
請求項1又は2に記載のスパッタリング装置の粒子出口に隣接して前記ターゲット通路の外側に前記
被改質表面を配置することと、
前記スパッタリング装置と関係しかつ/又は前記スパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、
前記スパッタリング装置のイオン源を用いて中空イオンビームを生成することと、
前記
被改質表面に粒子をスパッタするために前記イオンビーム入口を通して前記中空イオンビームを前記ターゲット通路内に向けることと
を含む方法。
【請求項33】
前記
被改質表面を前記スパッタリング装置の下又は前にスライドさせることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記
被改質表面を大気圧から前記真空チャンバ内にスライドさせることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
円弧状表面の外側表面に粒子をスパッタする方法であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載のスパッタリング装置のスパッタリングチャンバの内部に前記
被改質表面を配置して前記
被改質表面が少なくとも部分的に前記スパッタリングチャンバを横切って延在するようにすることと、
前記スパッタリング装置と関係しかつ/又は前記スパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、
前記イオン源を用いて中空イオンビームを生成することと、
前記
被改質表面に粒子をスパッタするために前記イオンビーム入口を通して前記中空イオンビームを前記スパッタリングチャンバ内に向けることと
を含む方法。
【請求項36】
被改質表面に粒子をスパッタする方法であって、
少なくとも1つのターゲット表面を画定するターゲット本体を有するスパッタリングターゲットをスパッタリング装置の粒子出口に隣接して配置することと、
前記スパッタリング装置と関係しかつ/又は前記スパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、
前記スパッタリング装置のイオン源を用いて
ビーム軸に沿って中空イオンビームを生成することと、
前記中空イオンビームが前記少なくとも1つのターゲット表面に衝突して前記被改質表面に粒子をスパッタするように、イオンビーム入口を通して前記中空イオンビームをターゲット通路内に向けることと
を含み、
前記ターゲット本体は、前記被改質表面に向かってスパッタされた粒子が全体として前記スパッタリングターゲットから前記ビーム軸
に向かって延びるスパッタ方向にスパッタされるように形作ら
れ、
前記ビーム軸に垂直な平面における前記粒子出口の断面積は、前記イオンビームの中空部分の断面積よりも実質的に小さい、方法。
【請求項37】
前記イオンビームは、前記粒子出口を通って前記被改質表面に向かって前記ターゲット通路から出ることを阻止される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記被改質表面を前記イオン源及び前記スパッタリングターゲットの下又は前にスライドさせることをさらに含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記被改質表面を大気圧から真空チャンバ内にスライドさせることをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記スパッタリングターゲットは、前記少なくとも1つのターゲット表面
がスパッタ可能な粒子を提供するように単一の材料から成る、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記スパッタリングターゲットは少なくとも第1の材料と第2の材料とを含み、前記第1の材料は前記第2の材料とは異なる、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
パターンを画定して前記パターンに従って被改質表面にスパッタされた粒子を堆積させるためのステンシルを前記粒子出口又はその近傍に配置することをさらに含む、請求項32から41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面上に粒子をスパッタするためのイオンビームスパッタリング装置及び方法に関する。
【0002】
より詳細には、限定されるものではないが、本開示は、平面的な表面に粒子をスパッタするためのイオンビームスパッタリング装置及び方法に関する。
【0003】
本開示はまた、内側及び/又は外側導管表面上に粒子をスパッタするためのイオンビームスパッタリング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
イオンビームスパッタリングのようなイオンビーム表面改質(IBSM)技術は、表面上に材料の薄膜を堆積するのに用いられる。IBSM技術は、他の既存の表面改質技術に勝るいくつかの実用面での利点を有する。
【0005】
例えば、とりわけIBSM金属被覆は、堆積した原子のエネルギーが表面の化学結合を破壊するのに十分なほど高いため、事前の表面処理を必要としない。他の物理的堆積技術と同様に、それはパターニングを容易にするが、現在はレーザ技術及び複雑な多段階フォトリソグラフィ技術を用いた後処理によってしか、その解像度が改善されない。しかし、コーティングされた基板の温度上昇を最小限に抑えるプロセスであり、可視技術であるため、薄い有機材料のステンシルの使用が可能である。
【0006】
典型的な従来のスパッタリングシステムは、イオン源又は堆積源と、スパッタリングターゲット(又はスパッタリング源)と、イオン源及びスパッタリングターゲットに対して改質又は被覆される表面を有する基板又は他の対象物を支持するように配置されている支持体とを含む。イオン源、スパッタリングターゲット及び支持体は、アルゴンなどの不活性ガスを含む真空チャンバ内に配置される。イオン源は、プラズマを生成し、プラズマから高エネルギーの正荷電イオンを取り出すように構成されている。イオンはスパッタリングターゲットに衝撃を与え、スパッタリングターゲットから原子サイズの粒子を「スパッタ」又は放出する。スパッタされた粒子は、被改質表面に向けられ、その表面に堆積される。
【0007】
従来のシステムでは、イオン源は通常、スパッタリングターゲットの概ね平面的な表面に向けられる点イオンビームを提供する。イオンビームの入射角(イオンビームとスパッタリングターゲットの表面との間の入射点におけるイオンビームとスパッタリングターゲットの表面に垂直な線との間の角度である)は、典型的には45度以上である。すなわち、イオンビーム(入射点におけるイオンビームとスパッタリングターゲットの表面との間の角度である)の視射角は、典型的には45度以下である。スパッタされた粒子(又は原子や分子)は、様々な角度にわたって表面から放出される。しかしながら、スパッタされた粒子の大部分は通常、スパッタリングターゲットの表面からイオンビームに対して垂直に近い方向に放出される。さらに、真空チャンバ内の圧力が低いため、スパッタされた粒子の大部分は実質的に直線の軌道をたどる。従って、従来のシステムでは、イオン源、スパッタリングターゲット及び被改質表面は通常、チャンバ内で直線でない配置で整列される必要があり、イオン源、スパッタリングターゲット及びソースは、互いに概ね垂直に整列される。実際には、イオン源、スパッタリングターゲット及び被改質表面を収容するために、比較的大きな真空チャンバがしばしば必要とされる。
【0008】
これまで、IBSMは、比較的大きな面積の平面的な表面などの比較的大きな面積の表面を処理するのには適していなかった。IBSMは通常、真空環境の内部でスパッタ源の前で被改質表面を移動、例えば回転させるために円形コンベヤを使用することができる高真空環境におけるバッチ処理に制限されている。さらに、マイクロエレクトロニクス産業は別として、IBSMは現在、比較的大きく、複雑な真空装置を必要とし、産業上の要求(低コスト及び高スループット)に適合しないので、実験室用途に限定されている。例えば、工業用ポリマーの表面プロセスは通常、比較的大きな面積で大きなスループットで動作することが要求される。
【0009】
多くの既存のIBSM技術は、パイプ、管又はバレルなどの導管の内側又は外側を被覆するのに不適当でありかつ/又は実用的でない。このような円筒形状を被覆するには、物理的堆積技術、及び特にIBSMは、スパッタ源又はサンプルのいずれかを回転させるか、又はサンプルを取り巻く又はサンプルの周囲の複数のソースを有することを必要とする。
【0010】
例えば、イオンビームスパッタリングのいくつかの構成は、リング状対象物の第1の側面を同時にコーティングすることを可能にし得るが、第2の側面をコーティングするためにサンプルを裏返す必要がある。さらに、これらの構成はフルビームを使用するので、非常に電力効率が悪い可能性があり、イオンビームのリング上の保護キャップに衝突する部分はスパッタリング収率に寄与しない。
【0011】
既存のIBSM技術の問題の1つは、スパッタリングの幾何学的形状に起因する。通常、かなりの量のスパッタされた材料が、サンプルではなく、真空チャンバの壁及び他の部分に堆積する。これは、スパッタリング材料の浪費及び低収率につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の少なくとも好ましい実施形態の目的は、上述の欠点の少なくともいくつかに対処することである。追加の又は代替的な目的は、少なくとも公衆に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、イオンビームスパッタリング装置は、中空イオンビームの中空部分に位置するビーム軸に沿って中空イオンビームを生成するように構成されているイオン源と、少なくとも1つのターゲット表面を画定するターゲット本体を有するスパッタリングターゲットであって、ターゲット本体はスパッタ可能な粒子を含み、ターゲット本体はイオンビームが少なくとも1つのターゲット表面に衝突してターゲット本体から対象物の被改質表面に向かって粒子をスパッタするようにイオン源に対して配置されているスパッタリングターゲットとを含む。ターゲット本体は、被改質表面に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタターゲットからビーム軸に対して半径方向に延びるスパッタ方向にスパッタされるように形作られ、スパッタ方向は、(i)ビーム軸に向かって延びる方向と(ii)ビーム軸から離れるように延びる方向の一方である。
【0014】
本明細書において使用される「含む」(現在進行形)という用語は、「少なくとも一部を構成する」ことを意味する。「含む」という用語を含む本明細書の各記述を解釈する場合、それ以外の特徴、又はその用語によって前置される特徴も存在する場合がある。「含む」(原形)や「含む」(単数形)などの関連用語も同様に解釈される。
【0015】
一実施形態において、ターゲット本体は、ターゲット本体を通って延びるターゲット通路を有し、ターゲット通路は、イオンビームのためのイオンビーム入口と、スパッタされた粒子が被改質表面に向かってターゲット通路を出るための粒子出口とを有し、少なくとも1つのターゲット表面は、通路を少なくとも部分的に画定するターゲット本体の少なくとも表面の形態である。
【0016】
一実施形態において、ビーム軸に垂直な平面におけるイオンビーム入口の断面積は、ビームが入口を通過できるように、イオンビームの外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい。
【0017】
一実施形態において、スパッタ方向は、ビーム軸に向かって延びる方向である。
【0018】
一実施形態において、ターゲット通路は、イオンビームがターゲット表面に衝突することなく粒子出口を通ってターゲット通路を出て通路の外側の被改質表面に向かう(又は到達する)のを阻止するように形作られる。
【0019】
一実施形態において、ビーム軸に垂直な平面における粒子出口の断面積は、イオンビームの中空部分の断面積よりも実質的に小さい。
【0020】
一実施形態において、ビーム軸は、イオンビーム入口、ターゲット通路及び粒子出口と重なる。一実施形態において、ビーム軸は中心ビーム軸であり、ターゲット通路は、ビーム軸と実質的に同軸である中心通路軸を有する。一実施形態において、ターゲット通路は、中心通路軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。一実施形態において、ターゲット本体も、中心通路軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。
【0021】
一実施形態において、イオンビーム入口と粒子出口の中間にあるターゲット通路の少なくとも一部が、粒子出口に向かって先細りになっている。
【0022】
一実施形態において、ターゲット通路は、イオンビーム入口又はその近傍から粒子出口又はその近傍まで先細りになっている。一実施形態において、通路は、実質的に一定の割合で先細りになっている。一実施形態において、ターゲット通路は、実質的に切頭円錐形(又は円錐台)の形状を有する。
【0023】
一実施形態において、(ビーム軸に垂直な平面における)イオンビーム入口の断面形状は、実質的に円形である。代替的に、イオンビーム入口の断面形状は、他の形状であることができ、例えば、実質的に長円形又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。一実施形態において、(ビーム軸に垂直な平面における)粒子出口の断面形状は、実質的に円形である。代替的に、粒子出口の断面形状は、他の形状であることができ、例えば、実質的に長円形又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。
【0024】
一実施形態において、イオンビーム入口は、実質的に通路軸及び/又はビーム軸を中心とする円である。一実施形態において、粒子出口は、実質的に通路軸及び/又はビーム軸を中心とする円である。一実施形態において、イオンビーム入口及び粒子出口は、実質的に通路軸及び/又はビーム軸を中心とする。
【0025】
一実施形態において、イオンビームスパッタリング装置は、パターンを画定してパターンに従って被改質表面にスパッタされた粒子を堆積させるためのステンシルを粒子出口又はその近傍に含む。一実施形態において、ステンシルは、粒子出口に隣接して配置され、少なくとも部分的に粒子出口を横切って延びる。
【0026】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、それぞれがターゲット本体を通って延びる1つ以上の真空ベント又は開口部を含む。一実施形態において、その又は各ベントは、イオンビーム入口又はその近傍にあるターゲット本体の第1の端部又は部分から粒子出口の近傍にあるターゲット本体の第2の端部又は部分までターゲット本体を通って延びる。
【0027】
一実施形態において、スパッタリング装置は、通路の外側でスパッタリングターゲットの粒子出口に隣接して被改質表面を有する対象物を少なくとも部分的に支持するための支持体を含むか又は支持体と関係している。
【0028】
一実施形態において、イオン源及びスパッタリングターゲットは、通路の外側で粒子出口に隣接して配置されている被改質表面を有する対象物に対して実質的にビーム軸に垂直な方向に移動可能である。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、表面に粒子をスパッタする方法は、スパッタリング装置の粒子出口に隣接してターゲット通路の外側に表面を配置することと、スパッタリング装置と関係しかつ/又はスパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、イオン源を用いて中空イオンビームを生成(又は提供)することと、表面に粒子をスパッタするためにイオンビーム入口を通してイオンビームをターゲット通路内に向けることとを含む。
【0030】
一実施形態において、表面は平面的な表面、例えば基板の平面的な表面である。
【0031】
一実施形態において、方法は、粒子出口に対して被改質表面を移動(又は前進)させることを含む。
【0032】
一実施形態において、方法は、粒子出口に対して実質的にビーム軸に垂直な方向に被改質表面を移動させることを含む。
【0033】
本明細書に開示されているのは、スパッタリングチャンバを画定してスパッタリングチャンバの内部に配置されている対象物の被改質表面をスパッタされた粒子で改質するためのターゲット本体であり、ターゲット本体はイオンビームのためのイオンビーム入口(又は開口部又は口)を有し、イオンビーム入口はスパッタリングチャンバに開口し、少なくとも1つのターゲット表面は、チャンバを少なくとも部分的に画定するターゲット本体の少なくとも1つのチャンバ(又は内側)表面の形態である(又はそれによって提供される)。
【0034】
一実施形態において、(ビーム軸に垂直な平面における)イオンビーム入口の断面積は、イオンビームが入口を通過できるように、イオンビームの外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい。
【0035】
一実施形態において、スパッタリングチャンバは、被改質表面を有する対象物に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタリングチャンバ内の中央領域に向かってスパッタされるように形作られている。
【0036】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは1つ以上のシールド(又はガード)を含み、その又は各シールドは、イオンビームがスパッタリングチャンバ内で被改質表面を有する対象物に衝突する(又は到達する)のを阻止するように配置される。一実施形態において、1つ以上のシールドは、(ビーム軸を基準にして)半径方向及び円周方向に延びる1つ以上のシールドを含む。その又は各シールドは、使用時に、スパッタリングチャンバの内部に少なくとも部分的に配置されている対象物の上流(イオンビームに関して)に配置される。
【0037】
一実施形態において、ビーム軸は、イオンビーム入口及びスパッタリングチャンバと重なる。一実施形態において、ビーム軸は中心ビーム軸であり、スパッタリングチャンバは、ビーム軸と実質的に同軸である中心チャンバ軸を有する。一実施形態において、スパッタリングチャンバは、中心チャンバ軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。一実施形態において、ターゲット本体は、中心チャンバ軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。
【0038】
一実施形態において、イオンビーム入口とイオンビーム入口の下流(イオンビームに関して)にあるスパッタリングチャンバの端部(又は底部)との中間にあるスパッタリングチャンバの少なくとも一部は、端部に向かう方向に先細りになっている。一実施形態において、スパッタリングチャンバは、イオンビーム入口又はその近傍から端部又はその近傍まで先細りになっている。一実施形態において、通路は、実質的に一定の割合で先細りになっている。一実施形態において、スパッタリングチャンバは、イオンビーム入口と端部との中間に、実質的に円錐形の形状及び/又は実質的に切頭円錐形の形状を有する。
【0039】
一実施形態において、(ビーム軸に垂直な平面における)イオンビーム入口の断面形状は、実質的に円形(又はリング)である。代替的に、イオンビーム入口の断面形状は、他の形状であることができ、例えば、実質的に長円形又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。
【0040】
一実施形態において、スパッタリング装置は、スパッタリングチャンバの内部で被改質表面を有する対象物を少なくとも部分的に支持(又は保持又は保留する)するための支持機構を含むか又は支持機構と関係している。例えば、対象物が少なくとも部分的にスパッタリングチャンバを横切ってスパッタリングチャンバの内部に延びるように、対象物はターゲット本体の開口(又は開口部)を通って延びることができる。
【0041】
一実施形態において、イオン源及びスパッタリングチャンバは、被改質表面を有する対象物に対して実質的にビーム軸に垂直な方向に移動可能である。例えば、対象物は、ビーム軸に垂直な方向にスパッタリングチャンバを通して供給され得る。
【0042】
一実施形態において、イオン源及びスパッタリングターゲットは、ビーム軸に垂直な軸を中心にスパッタリングチャンバの内部で被改質表面に対して回転可能である。例えば、表面を含む対象物を回転させることができる。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、表面に粒子をスパッタする方法は、スパッタリング装置のスパッタリングチャンバの内部に表面を配置して表面が少なくとも部分的にスパッタリングチャンバを横切って延びるようにすることと、スパッタリング装置と関係しかつ/又はスパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、イオン源を用いて中空イオンビームを生成(又は提供)することと、表面に粒子をスパッタするためにイオンビーム入口を通して中空イオンビームをスパッタリングチャンバ内に向けることとを含む。
【0044】
一実施形態において、表面は円弧状の表面である。一実施形態において、表面は導管、例えばパイプ又は管の外側表面である。代替的に、表面は平面的な表面であることができる。
【0045】
一実施形態において、方法は、イオンビーム及び/又はスパッタリングチャンバに対して被改質表面を移動(又は前進)させることを含む。
【0046】
一実施形態において、方法は、イオンビーム及び/又はスパッタリングチャンバに対して実質的にビーム軸に垂直な方向に被改質表面を移動させることを含む。
【0047】
一実施形態において、方法は、スパッタリングチャンバに対して被改質表面を回転させることを含む。
【0048】
一実施形態において、スパッタ方向は、ビーム軸から離れるように延びる方向である。
【0049】
一実施形態において、ターゲット本体は、少なくとも1つのターゲット表面を画定する少なくとも1つの外周面を有する。
【0050】
一実施形態において、中空イオンビームが少なくとも1つのターゲット表面に衝突するように、ターゲット本体の少なくとも一部の断面積がイオン源から離れる方向に増大する。
【0051】
一実施形態において、(ビーム軸に垂直な平面における)ターゲット本体の少なくとも一部の外周に囲まれる断面積は、ビーム軸の方向においてイオン源から離れる方向に増大する。
【0052】
一実施形態において、ターゲット本体の少なくとも一部の断面積は、中空イオンビームの中空部分の断面積よりも実質的に小さい第1の断面積から中空イオンビームの外周の断面積よりも実質的に大きい第2の断面積まで、イオン源から離れる方向に増大する。
【0053】
一実施形態において、ターゲット本体の外周に囲まれる断面積は、イオン源の近位にあるターゲット本体の第1の端部又はその近傍からイオン源の遠位にありかつイオンビームに関して第1の端部の下流にあるターゲット本体の第2の端部又はその近傍まで増大する。
【0054】
一実施形態において、ターゲット本体の外周の断面積は、中空イオンビームの方向に実質的に一定の割合で増大する。
【0055】
一実施形態において、第1の端部と第2の端部の中間のターゲット本体の周囲の少なくとも一部は、実質的に円錐形の形状又は実質的に切頭円錐形の形状を有する。
【0056】
一実施形態において、スパッタリング装置は、中空の対象物(導管、管、パイプなど)の内部に少なくとも部分的に延びるように構成され、ビーム軸が導管の中心軸(又は縦軸)と概ね一直線である(平行であるか又は同軸である)ようになっている。
【0057】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、被改質表面を有する対象物に対して実質的にビーム軸に平行な方向に移動可能である。
【0058】
一実施形態において、少なくともスパッタリングターゲットは、改質される内側表面を有する中空の対象物の内部で実質的にビーム軸に平行な方向に移動可能である。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、導管の内側表面に粒子をスパッタする方法は、スパッタリングターゲットが少なくとも部分的に導管の内部に配置されるようにスパッタリング装置を配置することと、スパッタリング装置と関係しかつ/又はスパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、イオン源を用いて中空イオンビームを生成(又は提供)することと、内側表面に粒子をスパッタするために中空イオンビームをスパッタリングターゲットのターゲット表面に向けることとを含む。
【0060】
一実施形態において、表面は円弧状の表面である。一実施形態において、導管はパイプ又は管である。
【0061】
一実施形態において、方法は、スパッタリングターゲットに対して被改質表面を移動(又は前進)させることを含む。一実施形態において、方法は、スパッタリングターゲットに対して実質的にビーム軸に平行な方向に被改質表面を移動させることを含む。
【0062】
一実施形態において、ビーム軸に垂直な平面におけるイオンビームの断面形状は、実質的に中空の円又はリングである。イオンビームの外周に囲まれる断面は円である。代替的に、イオンビームの断面形状は、他の形状であることができ、例えば、実質的に中空の長円形又は丸みを帯びた角を有する中空の長方形であることができる。
【0063】
一実施形態において、イオンビームは、500V以上のポテンシャル又は加速エネルギーを有する。一実施形態において、イオンビームは、約1kVから約30kVの範囲のポテンシャルエネルギー又は加速エネルギーを有する。一実施形態において、イオンビームは、約15kVから約25kVの範囲のポテンシャルエネルギー又は加速エネルギーを有する。
【0064】
一実施形態において、イオンビームの入射角(又は複数の入射角)は、約45度以上である。すなわち、イオンビームの視射角(入射点におけるイオンビームとスパッタリングターゲットの表面との間の角度)は約45度以下である。一実施形態において、入射角は約50度から約80度の範囲である(イオンビームの視射角は約10度から約40度の範囲である)。一実施形態において、入射角は約60度から約75度の範囲である。一実施形態において、入射角は約65度から約75度の範囲である。一実施形態において、入射角は約70度である。
【0065】
一実施形態において、スパッタリング装置は、イオン源及びスパッタリングターゲットのための真空チャンバを少なくとも部分的に画定するハウジングを含むか又はハウジングと関係している。
【0066】
一体一実施形態において、スパッタリングターゲットは一体部品である。代替的に、スパッタリングターゲットは、連結されかつ/又は一緒に配置されている2つ以上の部品によって形成され得る。
【0067】
一実施形態において、イオン源はイオン源を冷却するヒートシンクに連結されている。一実施形態において、ヒートシンクは、1つ以上の銅の部品又は本体を含むか又は1つ以上の銅の部品又は本体である。
【0068】
一実施形態において、ターゲット通路は、イオンビームがターゲット表面に衝突することなく通路の外側の被改質表面に向かって粒子出口を通ってターゲット通路を出るのを阻止するように形作られる。
【0069】
一実施形態において、ビーム軸は、イオンビーム入口、ターゲット通路及び粒子出口と重なる。
【0070】
一実施形態において、ビーム軸は中心ビーム軸であり、ターゲット通路は、ビーム軸と実質的に同軸である中心通路軸を有する。
【0071】
一実施形態において、ターゲット通路は、中心通路軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。
【0072】
一実施形態において、ターゲット本体も、中心通路軸及び/又はビーム軸に関して概ね対称である。
【0073】
一実施形態において、イオンビーム入口及び粒子出口は、実質的に通路軸及び/又はビーム軸を中心とする。
【0074】
一実施形態において、ビーム軸に垂直な平面におけるイオンビーム入口の断面形状は、実質的に円形、長円形、及び丸みを帯びた角を有する長方形からなる群から選択される。
【0075】
一実施形態において、ビーム軸に垂直な平面における粒子出口の断面形状は、実質的に円形、長円形、及び丸みを帯びた角を有する長方形からなる群から選択される。
【0076】
一実施形態において、装置は、パターンを画定してパターンに従って被改質表面にスパッタされた粒子を堆積するためのステンシルを粒子出口又はその近傍にさらに含む。
【0077】
一実施形態において、ステンシルは、粒子出口に隣接して配置され、少なくとも部分的に粒子出口を横切って延びる。
【0078】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、それぞれがターゲット本体を通って延びる1つ以上の真空ベント又は開口部を含む。
【0079】
一実施形態において、その又は各ベントは、イオンビーム入口又はその近傍にあるターゲット本体の第1の端部又は部分から粒子出口の近傍にあるターゲット本体の第2の端部又は部分までターゲット本体を通って延びる。
【0080】
一実施形態において、装置は、通路の外側でスパッタリングターゲットの粒子出口に隣接して被改質表面を有する対象物を少なくとも部分的に支持するための支持体を含むか又は支持体と関係している。
【0081】
一実施形態において、イオン源及びスパッタリングターゲットは、通路の外側で粒子出口に隣接して配置されている被改質表面を有する対象物に対して実質的にビーム軸に垂直な方向に移動可能である。
【0082】
一実施形態において、中空イオンビームは、イオン源における幅W及び内径Rを有し、中空イオンビームがスパッタリングターゲットに向かって進むにつれてビーム幅の増大を示し、ビーム幅の増大は、
ビーム軸から離れる側のAのビーム幅の増大と、
ビーム軸に向かう側のBのビーム幅の増大と
を含む。
【0083】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、d=(A+W+B)tanδによって定義される高さdを有し、δは、中空イオンビームに対するスパッタリングターゲットの傾斜を表す。
【0084】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットに衝突するときの中空イオンビームの内径R-Bに等しい最大内径rを有し、最大内径は、a≦r≦R-Bによって定義される。
【0085】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、h≧dによって定義される最小高さhを有する。
【0086】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、w≧A+W+Bによって定義される最小幅wを有する。
【0087】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、少なくとも1つのターゲット表面がスパッタ可能な粒子を提供するように単一の材料から成る。
【0088】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは少なくとも第1の材料と第2の材料とを含み、第1の材料は第2の材料とは異なる。
【0089】
一実施形態において、第1の材料及び第2の材料は、中空イオンビームに対して実質的に同じ入射角に配置される。
【0090】
一実施形態において、第1の材料は中空イオンビームに対して第1の入射角に配置され、第2の材料は中空イオンビームに対して第2の入射角に配置され、第1の入射角は第2の入射角とは異なる。
【0091】
本発明のさらなる態様によれば、被改質表面に粒子をスパッタする方法は、少なくとも1つのターゲット表面を画定するターゲット本体を有するスパッタリングターゲットをスパッタリング装置の粒子出口に隣接して配置することと、スパッタリング装置と関係しかつ/又はスパッタリング装置の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバの内部に少なくとも部分真空を生成することと、スパッタリング装置のイオン源を用いて中空イオンビームを生成することと、中空イオンビームが少なくとも1つのターゲット表面に衝突して被改質表面に粒子をスパッタするように、イオンビーム入口を通して中空イオンビームをターゲット通路内に向けることとを含む。ターゲット本体は、被改質表面に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタターゲットからビーム軸に対して半径方向に延びるスパッタ方向にスパッタされるように形作られ、スパッタ方向は、(i)ビーム軸に向かって延びる方向と(ii)ビーム軸から離れるように延びる方向の一方である。
【0092】
一実施形態において、イオンビームは、粒子出口を通って被改質表面に向かってターゲット通路から出ることを阻止される。
【0093】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、少なくとも1つのターゲット表面がスパッタ可能な粒子を提供するように単一の材料から成る。
【0094】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは少なくとも第1の材料と第2の材料とを含み、第1の材料は第2の材料とは異なる。
【0095】
一実施形態において、方法は、パターンを画定してパターンに従って被改質表面にスパッタされた粒子を堆積させるためのステンシルを粒子出口又はその近傍に配置することをさらに含む。
【0096】
本発明は、一態様においていくつかのステップを含む。このようなステップの1つ以上と他のステップのそれぞれとの関係、構造の特徴を具現化する装置、及びこのようなステップに影響を与えるように適合された要素の組み合わせ及び部品の配置は、すべて以下の詳細な開示において例示される。
【0097】
本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造における多くの変更及び広く異なる実施形態及び用途が示唆されるであろう。本明細書の開示及び説明は、純粋に例示的なものであり、いかなる意味でも限定することを意図するものではない。本発明が関係する技術分野において既知の等価物を有する特定の完全体が本明細書に記載されている場合、そのような既知の等価物は、個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれているとみなされる。
【0098】
さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して記載される場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても記載されていることを理解するであろう。
【0099】
本明細書で使用される場合、名詞に続く用語「(s)」は、その名詞の複数形及び/又は単数形を意味する。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、「及び」もしくは「又は」、又は状況が両方を可能にする場合を意味する。
【0101】
本明細書に開示されている数字の範囲(例えば、1から10)への言及は、その範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)及びその範囲内のあらゆる有理数の範囲(例えば、2から8、1.5から5.5、及び3.1から4.7)への言及も含むことが意図されており、したがって、本明細書に明示的に開示されているすべての範囲のすべての部分的な範囲がこれにより明示的に開示されている。これらは、具体的に意図されているものの単なる例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせは、本出願において同様に明示的に記載されているとみなされるべきである。
【0102】
「上」、「下」、「上部」、「下部」、「下側」、「上側」、「上方」及び「下方」ならびに「水平」及び「垂直」などなどの修飾語句は、本明細書において添付の図面に示される特徴に関して使用される場合、説明の便宜及び明確化のためのものであり、記載されるスパッタリング装置、又はスパッタリング装置及び/又はそのコンポーネントの動作又は使用を、本明細書に記載されかつ/又は添付の図面に示される向きを含むがこれらに限定されない、特定の向きに限定するものと解釈されるべきではない。
【0103】
本明細書において、特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源が参照されている場合、これは一般に、本発明の特徴を説明するための背景を提供する目的で行われる。特に明記しない限り、そのような外部文書又はそのような情報源への言及は、いかなる法域においても、そのような文書又はそのような情報源が先行技術であるか又は当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものと解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書の記載において、添付の特許請求の範囲内にない主題を参照することができる。その主題は、当業者によって容易に識別可能でなければならず、現在添付されている特許請求の範囲に定義されているように本発明を実施するのを助けることができる。
【0105】
本発明は大まかに言って上記の通りであるが、本発明がこれらに限定されないこと、以下の説明が例を与える実施形態も本発明に含まれることを当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
次に、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、本開示の実施形態を説明する。
【
図1】本開示の第1の実施形態によるイオンビームスパッタリング装置を有するイオンビーム堆積システムの概略断面図を示す。
【
図2A】
図1のスパッタリング装置のイオン源ハウジングの一部の概略側面図を示す。
【
図2B】
図2Aの平面A-Aで切断されたイオン源ハウジングの断面図を示す。
【
図3A】
図1のスパッタリング装置のイオン源の概略斜視図を示す。
【
図4】直線状の角張った端部を有する概ね長方形の開口部を有するイオン源の底面図を示す。
【
図5】丸みを帯びた角を有する概ね長方形の開口部を有するイオン源の底面図を示す。
【
図6】概ね長円形又は楕円形の開口部を有するイオン源の底面図である。
【
図7】
図1のスパッタリング装置のイオン源及びスパッタリングターゲットの概略断面側面図を示す。
【
図8】平面的な表面に粒子をスパッタするために使用される
図1のスパッタリング装置のスパッタリングターゲットの概略断面側面図を示す。
【
図9】
図1のスパッタリング装置のイオンビーム及びスパッタリングターゲットの一部の部分概略断面側面図を示す。
【
図10A】スパッタリングターゲット内のスパッタリングチャンバ内に少なくとも部分的に吊り下げられた対象物の表面に粒子をスパッタするために使用される、本開示の第2の実施形態によるスパッタリング装置のスパッタリングターゲットの概略上面図である。
【
図11】導管の内側表面に粒子をスパッタするのに使用される、本開示の第2の実施形態によるスパッタリング装置のスパッタリングターゲットの概略断面側面図である。
【
図12】イオンビーム堆積システムの中空ビームの例を示す。
【
図13】ガラス上のスパッタリングシステムの異なる変位速度に対する平均堆積銅厚の変化のグラフを示す。
【
図14】ガラス上のスパッタリングシステムの異なる加速電圧に対する平均堆積銅厚の変化のグラフを示す。
【
図15】ガラス上のスパッタリングシステムの異なる加速電圧に対する平均堆積チタン厚の変化のグラフを示す。
【
図16】ガラス上のスパッタリングシステムの異なる変位速度に対する平均堆積銅厚の変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
スパッタリング装置(
図1-9)
実質的に平面的な表面(又は領域)12aに少なくとも1つの材料を堆積するのに適したイオンビーム堆積システム10が、
図1~
図9に概略的に示されている。堆積システム10は、本開示の第1の実施形態によるイオンビームスパッタリング装置(又はスパッタリングデバイス)14を含む。
【0108】
スパッタリング装置14は、ハウジング16と、高エネルギーイオンビーム20をビーム軸22に沿って生成又は提供するための高エネルギーイオン源又は堆積源18と、スパッタ可能な粒子を含むスパッタリングターゲット24とを含むか又はこれらと関係している。ハウジング16は、少なくとも部分的に、イオン源18及びスパッタリングターゲット24のための真空チャンバ26を画定し、イオン源18及びスパッタリングターゲット24は両方ともハウジング16内に配置され、保持される。イオン源18は真空下で動作する。後述するように、イオン源18は、イオンビーム20がスパッタリングターゲット24に衝突して又はぶつかってもしくは衝撃を与えて原子サイズの粒子又は原子もしくは分子をスパッタリングターゲット24から被改質表面12aに向かってスパッタ又は放出するように、スパッタリングターゲット24に対して相対的に配置される。
【0109】
例示的なイオン源18を
図3a~3fに示す。イオン源18の主要なコンポーネントはそれぞれ、ビーム軸22の周りで概ね円形又は環状であり、ビーム軸22と同軸である共通の軸中心線を共有する。イオン源18の主要なコンポーネントは、カソード28、アノード30及び磁石32である。カソード28は、前部片28a、本体片28b及び後部片28cによって提供又は形成される。イオン源18はまた、概ね円形のカソード後部片28cを通ってアノード30まで延びるアノード電圧のための絶縁体34と、ガス供給のための絶縁体36と、カソード後部片28cとアノード30との間の絶縁体又はバリア38とを含む。概ね円形のカソード前部片28aは、磁石32の端部に取り付けられる。磁石32は、1つ以上の永久磁石などの1つ以上の磁石を含み又は1つ以上の磁石で構成され得る。別の実施形態において、磁石は、1つ以上の電磁石を含む。
【0110】
一実施形態において、イオン源18は、薄い中空のイオンビームを生成するためのリング状の開口部40を有する。中空イオンビームの例は、
図8、9、10B、10C、及び11において20で示される。
【0111】
一実施形態において、イオンビームは、電場勾配に沿って伝播する同様の電荷のイオンの流れである。中空イオンビームは、形状が概ね円筒形のイオンビームである。それは円形の断面を示し、円筒の中心を通って流れるイオンが少ないか全くなく、円筒の壁を通って流れるイオンの数が最大である。
図12を参照して中空イオンビームを以下でさらに説明する。
【0112】
開口部40は、結果として生じるイオンビーム20の断面が中空円になるように、実質的に中空円(又はリング)形状である(ビーム軸22に垂直な平面における)断面形状を有する。カソード本体片28bの外径は約23mmであることができ、カソード前部片28aの内径は約17mmであることができ、その結果、開口部40の幅(及び対応するイオンビーム20の厚さ又は幅220)は約3mmである。ビーム軸22は、イオンビームの中空部分に位置する。ビーム軸は、イオンビームの中空部分の中心と重なる中心ビーム軸である。カソード前部片28a及びカソード本体片28bの円周方向に延びる端部42、44は、少なくとも部分的に開口部40を画定し、それぞれ、例えば、開口部40においてビーム軸22と約45度の角度46を画定するように面取りされている。
【0113】
代替的に、イオン源18は、他の形状のイオンビームを生成又は提供するための他の形状の開口部を有することができる。
【0114】
図4は、例えば、結果として生じるビームの断面が直線状の角張った端部を有する中空の長方形の形状になるように直線状の角張った端部を有する概ね長方形の開口部40Aを示す。
図5は、結果として生じるビームの断面が丸みを帯びた角を有する中空の長方形の形状になるように丸みを帯びた角を有する概ね長方形の開口部40Bを示す。
【0115】
有利なことに、長方形の構成は、細長い表面領域への堆積を容易にする。例えば、米国特許第8134287号明細書(Price)は、丸みを帯びた角又は端部を有する細長い長方形の開口部を有するイオン源を記載し、示している。
【0116】
図6は、結果として生じるイオンビームの断面が中空の長円形又は楕円形になるように長円形又は楕円形の開口部40Cを示す。
【0117】
スパッタリングターゲット24は、イオンビーム20の少なくとも1つのターゲット表面48を画定するターゲット本体46を有する。スパッタリングターゲット本体46は、スパッタ可能な粒子を含む。一実施形態において、スパッタ可能な粒子は、金属、金属酸化物及び/又は半導体を含むが、これらに限定されない。対象となる金属の例は、銅、金、白金、チタン、タングステン、スズ、インジウム、ロジウム、サマリウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、亜鉛、及びこれらの金属の合金を含む。対象となる金属酸化物の例は、酸化亜鉛、マグネタイト、酸化チタン、及び酸化タングステンを含む。半導体の例は、酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化インジウムスズなどの酸化物を含む。非酸化物半導体の例は、シリコン及びゲルマニウムならびにガリウムヒ素などの化合物を含む。
【0118】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、ビームにさらされた面がスパッタ可能な粒子を提供するように単一の材料で作られている。
【0119】
例えば、スパッタリングターゲット本体46は、(放熱のための)銅及び他の銅以外のスパッタ可能な粒子を含む本体であることができる。一実施形態において、スパッタリングターゲット24の放熱は、外部環境への熱の直接伝導によって確保される。
【0120】
スパッタリングターゲットは、複数の材料で作ることもできる。例えば、スパッタリングターゲットの本体は、アルミニウム又は銅のような熱伝導性材料を含む第1の材料で作ることができる。
【0121】
丸みを帯びた端部を有する長方形などの細長い形状の場合、ビームがスパッタリングターゲットに衝突すると予想される第2の材料又はさらなる材料のプレート又はインサートを挿入することができるように、スロットをスパッタリングターゲットの本体から製造することができる。
【0122】
一実施形態において、インサートは、スパッタリングターゲットの両側が同じ材料又は異なる材料で作られている。例えば、一方の面は鉄で作られ、他方の面はニッケルで作られている。ビームが両方のインサートに同時に衝突すると、処理中のサンプルに異なるスパッタされた粒子が堆積する。一例は、鉄ニッケルなどの合金層を表面に形成することを含む。
【0123】
一実施形態において、インサートはスパッタリングターゲット本体に機械的に押し付けられて、スパッタリングターゲット本体への熱交換を最大化し、放熱を可能にする。
【0124】
インサートを使用する実施形態において、スパッタリングターゲットは、汚染を回避するためにスパッタリング収率の低い材料を含む。このようなスパッタリング収率の低い材料の例は、アルミニウム及びグラファイトを含むが、これらに限定されない。
【0125】
一実施形態において、第1の材料及び第2の材料は、中空イオンビームに対して実質的に同じ入射角に配置される。
【0126】
別の実施形態において、スパッタリング本体は、インサートがイオンビームに対して異なる入射角で存在することができるように、対称的な部分を示さない。第1の材料は、中空イオンビームに対して第1の入射角に配置され、第2の材料は、中空イオンビームに対して第2の入射角に配置される。第1の入射角は第2の入射角とは異なる。
【0127】
これにより、インサートを構成する異なる材料のスパッタリング収率を制御することができる。例えば、AxB1-xの組成を有する堆積層を生成するために、組成物Aの一方の面は組成物Bの他方の面よりも小さい角度を有することができ、ここでxは、入射エネルギー、各インサートAの角度、ビームがインサートに衝突する高さ、及びインサートA及びBの組成の関数である。
【0128】
材料A及びBのそれぞれの収率YA及びYBのスパッタリングを計算し、x=YB/YAのようなスパッタリング収率の比を計算することによって、xの第1の推定値を得ることができる。
【0129】
一実施形態において、異なる角度を使用する場合、スパッタリングターゲットは、イオン源とインサートのビームが衝突する部分との間の距離が、インサートA及びBの両方で同じになるように形作られている。これは、ビームの中心軸とインサートAとの間の距離rAが、ビームの中心軸とインサートBとの間の距離rBと異なることを必要とする。
【0130】
一実施形態において、ターゲット本体46は、ターゲット本体46を通って延びるターゲット通路又は開口部50を有するか又は画定する。ターゲット通路50は、イオン源からのイオンビーム20が通路50に入るためのイオンビーム入口52と、スパッタされた粒子が被改質表面12aに向かってターゲット通路50を出るための粒子出口又は出口54とを有する。
【0131】
ターゲット通路50は、入口52及び出口54と重なる中心通路軸56を有する。ターゲット通路50は、中心通路軸56に関して実質的に対称である。ターゲット本体46も、中心通路軸56に関して実質的に対称であることができる。
【0132】
イオン源18及びスパッタリングターゲット24は、入口52が粒子出口54の上流(イオンビーム20に関して)に位置するように、ハウジング16の内部に又はハウジング16によって保持される。入口52は、イオン源18から遠位又は少なくともより遠くに位置する粒子出口54よりもイオン源18の近位又は少なくともより近くに位置する。ビーム軸22は、入口52、通路50及び出口54と重なる。スパッタリングターゲット24及びイオン源18は、通路50の軸56がビーム軸22と実質的に平行であり、好ましくは平行であり、より好ましくは実質的に同軸であり、より好ましくは同軸であるように直線状に配置されている。
【0133】
イオンビーム入口52の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面形状は、実質的に円形である。粒子出口54の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面形状は、実質的に円形である。イオン入口52は、実質的にビーム軸22を中心とする。出口54は、実質的にビーム軸22を中心とする。代替的に、イオンビーム入口52及び粒子出口54のそれぞれの断面形状は、別の形状、例えば、実質的に長円形、又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。入口52の断面形状は、出口54の断面形状と異なることができる。
【0134】
イオンビーム入口52の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面積は、イオンビームが通路50に入射するように、イオンビーム20の外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい。一実施形態において、イオンビーム入口52の(ビーム軸22に垂直な平面における)直径は、イオンビーム20の外周の直径よりも実質的に大きい。
【0135】
ターゲット通路50は、以下で説明するように、イオンビーム20がターゲット表面48に衝突することなく、通路50の外側の被改質表面12aに向かって粒子出口54を通ってターゲット通路50を出るか又は被改質表面12aに到達することを阻止するように形成される。粒子出口54の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面積は、イオンビーム20の中空部分の断面積よりも実質的に小さい。一実施形態において、出口54の(ビーム軸22に垂直な平面における)直径は、イオンビーム20の円形の中空部分の直径よりも実質的に小さい。
【0136】
ターゲット表面48は、少なくとも部分的に通路50を画成するターゲット本体46の少なくとも1つの通路又は内側表面の形態であるか又は少なくとも1つの通路又は内側表面によって提供される。ターゲット表面48は、実質的に連続する通路表面である。代替的に、ターゲット表面48は、隣接して配置されている2つ以上の表面を含むことができる。入口52と出口54の中間にあるターゲット通路50の少なくとも一部は、ターゲット表面48がビーム軸22に対して傾斜するように粒子出口54に向かって先細りになっている(サイズが縮小している)。ターゲット通路50は、入口52又はその近傍から出口54又はその近傍まで先細りになっている。通路50は、実質的に一定の割合で先細りになっている。代替的に、通路50は、一定でない割合で先細りになっていることができ、例えば、通路50は、通路50が出口54に近づくにつれてより大きな割合又はより小さな割合で先細りになっていることができる。
【0137】
一実施形態において、ターゲット通路50は、実質的に切頭円錐形(又は円錐台形)の形状などの概ねじょうご状の形状を有する。傾斜したターゲット表面48と通路軸56及び/又はビーム軸22との間に画定される角度58は、0度から90度の間である。角度58は、好ましくは30度以上、より好ましくは35度以上である。代替的に、ターゲット通路50は別の形状を有することができる。
【0138】
スパッタリングターゲット24は、1つ以上の真空ベント60を含む。その又は各ベント60は、ターゲット本体46を通って延びる。その又は各ベント60は、入口52又はその近傍にあるターゲット本体46の第1の端部又は部分62から出口54の近傍にあるターゲット本体46の第2の端部又は部分64までターゲット本体46を通って延びる。スパッタリングターゲット24は、3つのベント60を有する。ベント60は、通路軸58/ビーム軸22の周りで円周方向に間隔を置いて配置され、好ましくは実質的に等しい距離だけ離れている。ベント60は、ターゲット本体46を通って押し出し成形され得る。
【0139】
スパッタリング装置14は、イオン源18に連結されてイオン源18からの熱を放散するヒートシンク66を含む。ヒートシンク66は、イオン源18を冷却して、動作温度を磁石32の強度が低下しかつ/又は不可逆的に損なわれるキュリー温度よりも低く維持する。一実施形態において、ヒートシンク66は、カソード後部片28cに連結される円形プレート66aの形態の第1のコンポーネントと、第1のプレート66aから離間してハウジング16に連結される第2の円形プレート66bの形態の第2のコンポーネントと、第1のプレート66aと第2のプレート66bとの間に延びる細長い部材又はロッド66cの形態の第3のコンポーネントとを含む。第1のプレート66aの表面は、カソード後部片28cの表面に隣接している。ロッド66cは、カソード後部片28cの開口部68を通ってカソード後部片28c内に延びている。ロッド66cは、第1のプレート66a及び/又はカソード後部片28cから第2のプレート66b及びハウジング16に熱を取り出すように配置されている。ヒートシンク66は、例えば、銅を含むか又は銅であることができる。イオン源18と真空チャンバ26の外側の環境との間の直接的な熱的接続を実施することによって、イオン源18の内部の温度が低下する。代替的又は追加的に、ヒートシンク66は、比較的高い熱伝導率の1つ以上の他の材料を含むことができる。必要に応じて、1つ以上の空気熱交換器又は液熱交換器を用いて、スパッタリング装置14の外側から追加の冷却を行うことができる。
【0140】
ハウジング16の使用時に表面12aの上に(図に示すように)位置する部分16aが、
図2a~2cに示されている。一実施形態のハウジング16は、真空ポンプ72を収容する第1の概ね円筒形又は環状の部分70と、ガス入口又はフィードスルー76とアノード電圧用のコネクタ78とを含む第2の概ね円筒形又は環状の部分74と、ハウジング16と被改質表面12aとの界面におけるシールを容易にするように構成されている第3の少なくとも部分的に概ね円筒形又は環状の部分80とを含む。一実施形態において、真空ポンプ72は、例えば、ハウジング16の内部に真空を確立して維持し、好ましくはハウジングと表面との界面でハウジング16を表面12aに実質的にシールするように配置されているターボ分子ポンプである。ポンプ72は、ベント60を通して吸引して、良好な真空度を維持することができる。アノード電圧用のコネクタ78は、例えば、バヨネットニールコンセルマン(BNC)コネクタであることができる。第3の部分80は、少なくとも真空チャンバ26のハウジング16によって画定されている部分の内部の圧力を測定するために使用される真空計のためのフランジ82を有する。第1及び第2の部分ならびに第2及び第3の部分は、それぞれ、絶縁体84、86によって分離されている。
【0141】
一実施形態において、イオン源18及びスパッタリングターゲット24は、被改質表面12aに対して移動可能である。一実施形態において、イオン源18及びスパッタリングターゲット24は、処理される動かない表面12a上で、例えばビーム軸22に対して実質的に垂直な1つ又は複数の方向88に、作動可能かつ摺動可能である。別の実施形態において、被改質表面12aは、静止したイオン源18及び静止したスパッタリングターゲット24の下又は前にスライドされる。
【0142】
ハウジングと表面との界面でハウジング16と接触する領域を制限し、被改質表面の両側12a、12bに更なるポンプ機構を配置することによって、木材や革のような粗い基板のような密閉が困難な基板に小さな真空を確立することが可能である。軟らかい基板の表面も、漏れを低減するために真空チャンバ26の内部で1つ以上のクランプ90を用いて基板をクランプすることによって処理することができる。ハウジング16と表面12a、12bを有する基板12との間の界面の周囲の領域を局所的に加熱することも、真空をより速く達成するのに役立つことが分かっている。
【0143】
スパッタリング方法(
図8及び9)
図8及び9を参照してスパッタリング装置14を用いて対象物の被改質表面12aに粒子をスパッタする方法を説明する。
図1~9に示す実施形態において、対象物は基板12であり、表面12aは基板の実質的に平面的な表面である。代替的な実施形態において、表面12aは、実質的に非平面的であることができる。代替的な実施形態において、対象物は、導管、例えば、出口54の下で回転され得る円弧状の外側表面を有する管又はパイプであることができる。
【0144】
表面12aは、スパッタリング装置14の粒子出口54に隣接して、ターゲット通路50の外側に配置される。スパッタリング装置14の一部でありかつ/又はスパッタリング装置14と関係しているハウジング16は、イオン源18及びスパッタリングターゲット24のための真空チャンバ26を少なくとも部分的に画定する。真空チャンバ26内に、典型的には10-4mbar未満の部分真空が生成される。一実施形態において、真空チャンバ26内に生成される部分真空は、約5×10-6mbarから約3×10-5mbarの範囲、好ましくは約5×10-5mbar未満である。ハウジング16は、基板の反対の表面12a、12bに対して実質的にシールするように配置される。カソード28及びアノード30には、所定の分圧でプラズマ形成を誘発するのに十分なアノード30とカソード片28a、28b、28cとの間の電圧差で電圧が印加される。電圧差は、典型的には約500Vから約3kVの範囲、典型的には約1kVから約2kVの範囲である。電圧は、ハウジング16の外部にある電源から得られる。電圧は、好ましくは接地電位又はグラウンド電位である、スパッタリングターゲット24を基準にして正の極性を有する。少量のガス、例えばアルゴンのような不活性ガスを含むガスが、入口76を通して導入される。これらの圧力で、電圧が印加され、カソード28とアノード30との間にガスが導入されると、イオン源18はプラズマを生成する。イオン源18は、プラズマから正電荷イオンを取り出すことによって、高エネルギーイオンビーム20を生成又は提供し、正電荷イオンは、ビーム軸22に沿って、スパッタリングターゲット24に向かって、高電位差によって開口部40を通って外側に向けられ又は加速される。一実施形態において、イオンビーム20は、約500V以上、好ましくは約1kVから約30kVの範囲、より好ましくは約15kVから約25kVの範囲のポテンシャルエネルギー又は加速エネルギーを有する。
【0145】
薄い中空ビーム20は、イオンビーム入口52を通り、イオン源18の真下に位置するスパッタリングターゲット24の通路50に入る。イオンビーム20は、ターゲット表面48に衝突して、又はぶつかってもしくは衝撃を与えて、粒子(赤の陰影で概略的に示される)をスパッタリングターゲット24の本体46から表面12aに向かってスパッタ又は放出する。スパッタリングターゲット24の本体46は、徐々に侵食される。表面12aに向かってスパッタされた粒子は、スパッタリングターゲット24の出口54を通過し、真下に配置されている基板に堆積される。
【0146】
一実施形態において、高エネルギー源の円形開口部40及び円形出口54は、表面12a上に円盤状の堆積物をもたらす。別の実施形態において、イオン源18、開口部40及び結果として生じるビーム20は、角が丸い長方形の形状を有することができる。この構成により、細長い領域にわたって均一な堆積が可能になる。有利なことに、スパッタリング装置14は、大きな直線状の形状のためにスケーリングされ、同時に堆積される面積を増大させることができる。
【0147】
一部の粒子(全体として符号92で示される)は、スパッタリングターゲットからイオン源に向かって逆向きにスパッタされるが、表面に向かってスパッタされた粒子(全体として符号94で示される)は全体として、スパッタリングターゲットから、(i)ビーム軸22に向かって延びる方向と(ii)ビーム軸22から離れるように延びる方向の一方である、ビーム軸22に対して全体として矢印96で示される半径方向に延びるスパッタ方向にスパッタされる。
図1~9に示す実施形態において、半径方向に延びるスパッタ方向は、ビーム軸22に向かって半径方向に延びる方向であり、スパッタリング装置14は、イオンビーム20の全周にわたってスパッタリングターゲット24から粒子をスパッタするように配置されている。
【0148】
スパッタリングターゲットからイオン源に向かってバックスパッタされたイオンは、イオン源18の内部で絶縁体34、36を被覆することができる。この再堆積による短絡を回避するために、一実施形態において、絶縁体34、36は、あらゆる再堆積の厚さ増加率を制限するべく露出表面積を増大させるように形作られる。絶縁体34、36のいくつかの領域は、厚さ増加率を制限するために、再堆積したイオンへの直接の露出からマスクされ得る。
【0149】
ターゲット通路50の形状及び/又は出口54のサイズは、イオンビーム20が被改質表面に到達するのを阻止及び/又は防止する。通路50、入口52の下流及び出口54のより小さな直径は、イオンビーム20が表面12aに到達するのを防止する。代わりに、イオンビーム20は、スパッタリングターゲット24の傾斜した表面48に衝突し、傾斜した表面48は徐々に侵食される。一実施形態において、(イオンビーム20とターゲット表面48との間の入射点におけるイオンビーム20とターゲット表面48に垂直な線との間の角度である)イオンビームの入射角(又は複数の入射角)は、約45度以上である。すなわち、(入射点におけるイオンビーム20とスパッタリングターゲット24の表面48との間の角度である)イオンビームの視射角98は、約45度以下である。一実施形態において、入射角は約60度から約80度の範囲である(イオンビームの視射角は約10度から約30度の範囲である)。
【0150】
(イオンビーム20及びスパッタターゲット24の一部を示す)
図9を参照すると、スパッタされた粒子の過半数又はより大きい部分は、スパッタリングターゲット24の表面48に垂直な法線軸206に対して角度204をなす(概ねスパッタされた粒子のビーム202の方向に対応する)主方向に投射される。この角度204は、一般にイオンビーム20の入射角208に近いか又は入射角208とほぼ同じである。
【0151】
一実施形態において、粒子出口54は、スパッタ本体46の一方の側46aにおける入射点210(イオンビーム20の幅220の中央に示される)からのスパッタリングの主方向がスパッタ本体46の他方の側46bによって妨げられないように、十分に大きい必要がある。一実施形態において、例えば、通路軸58/ビーム軸22に垂直な方向における粒子出口54の中心点212(又は通路軸58/ビーム軸22)の距離212は、(i)通路軸58/ビーム軸22に垂直な方向における入射点210と粒子出口の縁48との間の距離214と、(ii)通路軸58/ビーム軸22に垂直な方向における粒子出口の縁48と中心点212との間の距離216との和以上である。
【0152】
スパッタ収率は変化し、衝撃を与えるイオンのエネルギーと入射角によって制御することができる。一実施形態において、イオンビーム20のポテンシャルエネルギー又は加速エネルギー及び/又は入射角(又は代替的に入射点におけるイオンビーム20とスパッタリングターゲット24の表面48との角度98)は、イオンビームスパッタリング条件から取得されるスパッタリング収率を最適化するように選択される。
【0153】
入射イオン種、スパッタリングターゲット材料、及び入射角又は複数の入射角の組み合わせごとに、最大のスパッタリング収率をもたらすエネルギーが存在する。一実施形態において、例えば、約55度から約75度の入射角を有する大部分の正荷電アルゴン(Ar+)イオンビームによる最適なスパッタリング収率は、15keVから20keVの間のイオンエネルギーで達成される。
【0154】
同様に、入射イオン種、スパッタリングターゲット材料及びビームエネルギーの組み合わせごとに、最大のスパッタリング収率をもたらす入射角が存在する。一実施形態において、例えば、約15keVから約20keVのエネルギーを有する大部分のAr+イオンビームによる最適なスパッタリング収率は、約55度から約75度の入射角で達成される。
【0155】
イオン化された任意のスパッタ原子に加速電圧を提供するために、スパッタリングターゲット24と接地との間に更なる高電圧バイアスを印加することができる。電圧バイアスは、スパッタリング装置14を使用してスパッタリングターゲット24から表面12a上及び/又は表面12a内に原子及び分子を注入する場合に有利である。一実施形態において、スパッタリングターゲット24と接地との間に印加される電圧バイアスは、例えば、約1kVから約50kVの範囲である。この範囲(約1kVから約50kV)の電圧バイアスは、大きな追加の電気的絶縁及び放射線遮蔽を必要とせずに加速電圧を提供するのに有利であると理解されている。別の実施形態において、スパッタリングターゲット24と接地との間に印加される電圧バイアスは、例えば、約15kVから約20kVの範囲である。この範囲(約15kVから約20kV)の電圧バイアスは、有機及び無機基板上及び内部にほとんどの金属元素の表面及び表面近くのナノ粒子を生成するのに有利であると理解されている。
【0156】
一実施形態において、スパッタリング装置14は任意選択で、出口54又はその近傍に、パターンを画定してパターンに従って表面12aにスパッタされた粒子を堆積させるためのステンシル100を含む。一実施形態において、方法は、ステンシル100が少なくとも部分的に粒子出口54を横切って延びるようにステンシル100を粒子出口54に隣接して配置することを含む。
【0157】
一実施形態において、スパッタされた原子の正イオン化を促進するために、スパッタされた原子の出口又はその近傍に電子銃(図示せず)が向けられる。
【0158】
一実施形態において、スパッタリング装置14は、平面的な表面12a、特に大面積の平面的な表面への材料の堆積を容易にする動的真空システムであるか又は動的真空システムの一部を形成している。
【0159】
ハウジング16、イオンビーム源18及びスパッタリングターゲット24は、被改質表面12aに対して移動可能である。一実施形態において、方法は、例えば(ハウジング16の外側の)大気圧からハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバ26内に、スパッタリングターゲット24からのスパッタされた粒子を伴う堆積ビームの前で表面12aを移動させ又は供給することを含む。真空チャンバ26の動的シールが、イオン源18と処理される表面12aとの間に能動的な圧力勾配を設定することを可能にする。
【0160】
一実施形態において、スパッタリング装置14は、ハウジングと基板の表面12a、12bとの間の界面にシールを形成するための1つ以上の動的シール102a、102b、102cを有する。一実施形態において、スパッタリング装置は、(図に見られるように)上側表面12a及び下側表面12bのそれぞれに対して同心円状に配置されている3つのシール102a、102b、102cを有する。
【0161】
一実施形態において、各シール102a、102b、102cは、それぞれが低いガス透過性を有する2つの異なるコンポーネントから形成されている。1つのコンポーネントは、テフロン(登録商標)などの剛性材料から形成された低摩擦非圧縮性部材104である。第2のコンポーネントは、Oリング上などの圧縮性弾性部材106から形成される。各シール102a、102b、102cは、圧力勾配を受ける2つの表面110、12aの間の領域を囲む。第1の剛性コンポーネント104は、ハウジング16の第1の表面110に形成された凹部108内に位置する。第2の弾性コンポーネント106は、第1の剛性コンポーネント104と基板12の上側表面12a(又は下側表面12b)の両方と接触している。シール102a、102b、102cは、表面12a及び/又は12bが不連続性及び不完全性を含む状況において特によく機能する。
【0162】
隣接する同心円リング間の領域を部分的に真空にすることができるため、圧力勾配が形成される。例えば、矢印112で示すように、真空ポンプ72を使用して最も内側のシールの内部に第1の圧力又は一次圧力を生じることができる。矢印114で示すように、外側の同心円リングの間にある1つ以上の更なるポンプによって第1の圧力よりも高い第2の圧力を生じることができる。同心リングの外側の過圧(高圧)領域を使用して、真空チャンバ26を外部環境からさらに隔離することができる。
【0163】
有利なことに、一実施形態のスパッタリング装置14は、被改質表面12aを有する対象物12を、イオンビーム20に垂直に配置することを必要としない。代わりに、対象物12は、例えばイオン源18及びビーム20の真下に一直線に(直線的に)位置合わせされ得る。その結果、有利なことに、イオン源18及びスパッタリングターゲット24のための真空チャンバ26をより小さくすることができる。その結果、有利なことに、一実施形態のスパッタリング装置14は、製造がより簡単かつ安価であり得る。
【0164】
一実施形態のスパッタリング装置14は、実質的に下の表面12a全体にわたってパターン化され又は均一なパターン化及び/又は均一薄膜を堆積することを可能にする。この場合も例としてのみ、用途は、電極、異なる濡れ性を有する材料の配列、低放射率層、美的コーティング、反射面、電磁遮蔽層又はフィルム、耐摩耗層又はフィルム、抗菌性表面及び防汚性表面の堆積を含むことができるが、限定されるものではない。
【0165】
スパッタリング装置(
図10A~10C)
図10A~10Cを参照して本開示の第2の実施形態による代替的なスパッタリング装置120を説明する。スパッタリング装置120は、上記のように高エネルギーイオンビーム20を提供するためのイオン源18と、
図10A~10Cに概略的に示すスパッタリングターゲット122とを含む。イオン源18(
図10A~10Cには図示せず)は、この場合も真空下で動作し、この場合も、スパッタリングターゲット122のターゲット表面124に衝突してスパッタリングターゲット122から被改質表面126に向かって粒子をスパッタするイオンビーム20を提供するように、スパッタリングターゲット122に対してハウジング(図示せず)内に配置される。
【0166】
しかしながら、イオンビーム20のための通路50を有するスパッタリングターゲット24とは異なり、スパッタリングターゲット122は、スパッタリングチャンバ130を画定してスパッタリングチャンバ130の内部に配置されている表面126をスパッタされた粒子(概略的に赤い陰影で示される)で改質又は被覆するためのターゲット本体128を含む。
【0167】
ターゲット本体128は、イオンビーム入口132、又はイオンビーム20のための開口部又は口を有する。入口132はスパッタリングチャンバ130内に開口している。イオンビーム入口132の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面形状は、この場合も実質的に円形(又はリング)である。イオンビーム入口132は、実質的にビーム軸22を中心とする。代替的に、イオンビーム入口132の断面形状は、この場合も他の形状、例えば、実質的に長円形又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。イオンビーム入口132の(ビーム軸22に垂直な平面における)断面積は、イオンビーム20がチャンバ130に入るように、イオンビーム20の外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい。一実施形態において、イオンビーム入口132の(ビーム軸22に垂直な平面における)直径は、イオンビーム20の外周の直径よりも実質的に大きい。
【0168】
ビーム軸22は、イオンビーム入口132及びスパッタリングチャンバ130と重なる。スパッタリングチャンバ130は、ビーム軸22と実質的に同軸である中心チャンバ軸134を有する。スパッタリングチャンバ130は、中心チャンバ軸134及び/又はビーム軸22に関して概ね対称である。ターゲット本体128も、中心チャンバ軸134及び/又はビーム軸22に関して概ね対称であることができる。
【0169】
スパッタリングチャンバ130は、被改質表面126を有する対象物136に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタリングチャンバ130内の中央領域(被改質表面を配置することができる)に向かってスパッタされるように形成されている。ターゲット表面124は、少なくとも部分的にチャンバ130を画定するターゲット本体128の少なくとも1つのチャンバ又は内側表面の形態であるか又は少なくとも1つのチャンバ又は内側表面によって提供される。一実施形態において、イオンビーム入口132と入口132の下流(イオンビーム20に関して)にあるスパッタリングチャンバ130の端部又は底部136(
図10B及び10Cに見られるように)との中間にあるスパッタリングチャンバ130の少なくとも一部は、ターゲット表面124がビーム軸22に対して傾斜するように、底部136に向かう方向に先細りになっている(サイズが縮小している)。スパッタリングチャンバ130は、イオンビーム入口132又はその近傍から入口132の反対側の底部126又はその近傍まで先細りになっている。チャンバ130は、実質的に一定の割合で先細りになっている。代替的に、通路50と同様に、チャンバ130は、一定でない割合で先細りになっていることができ、例えば、チャンバ130は、チャンバ130が底部136に近づくにつれてより大きな割合又はより小さな割合で先細りになっていることができる。
【0170】
一実施形態において、チャンバ130は、実質的に切頭円錐形の形状を有する。傾斜したターゲット表面124とチャンバ軸134及び/又はビーム軸22との間に画定される角度138は、約45度以下である。角度138は、好ましくは約10度から約30度の範囲である。代替的に、チャンバ130は別の形状を有することができる。
【0171】
スパッタリングターゲット122は、1つ以上のシールド、又はガード又は形成物140を含む。一実施形態において、スパッタリングターゲット122は、2つのシールド140を含む。その又は各シールドは、イオンビーム20がスパッタリングチャンバ130の内部で被改質表面126に衝突する(又は到達する)のを阻止又は防止するように構成されている。シールド140は、使用時に、改質中の表面126の上流(イオンビーム20に関して)に少なくとも部分的に配置される。各シールド140は、入口132を部分的に横切って延び、(ビーム軸22に関して)半径方向と円周方向の両方に延びて、イオンビーム20からシールド140の下に及び/又はシールド140を通って(
図10B及び10Cに示すように)延びる改質中の表面126を遮断又は遮蔽する。ターゲット本体128とシールド140は一体部品として形成され得る。
【0172】
スパッタリングターゲット24のイオンビーム入口52と同様に、シールド140を含まないイオンビーム入口132の(ビーム軸に垂直な平面における)断面形状は、実質的に円形(又はリング)である。代替的に、イオンビーム入口132の断面形状は、他の形状であることができ、例えば、実質的に長円形又は丸みを帯びた角を有する長方形であることができる。
【0173】
スパッタリング装置120は、スパッタリングチャンバ130の内部で被改質表面126を有する対象物136を少なくとも部分的に支持(又は保持又は保留する)するための支持機構を含むか又は支持機構と関係している。一実施形態において、ターゲット本体128は、対向する開口又は開口部142、144を有し、対象物136は、対象物136が少なくとも部分的にスパッタリングチャンバ130を横切ってスパッタリングチャンバの内部に延びるように開口142、144を通って延びる。開口142、144は、それぞれのシールド140を通って形成され得る。
【0174】
一実施形態において、イオン源18及びスパッタリングチャンバ130は、例えば、ビーム軸22に対して実質的に垂直な方向146に被改質表面126に対して移動可能である。対象物136は、ビーム軸に垂直な方向にスパッタリングチャンバ130を通って供給され得る。一実施形態において、イオン源18及びスパッタリングターゲット122は、例えば、ビーム軸に垂直な軸を中心に表面126に対して回転可能である。例えば、表面126を含む対象物136は、矢印148で示すように、動かないスパッタリングターゲットに対して回転され得る。
【0175】
スパッタリングターゲット122を含むスパッタリング装置120を用いて対象物136の被改質表面126に粒子をスパッタする方法を説明する。
【0176】
対象物136は、表面126が少なくとも部分的にスパッタリングチャンバ130を横切って延びるようにスパッタリングチャンバ130の内部に配置される。一実施形態において、対象物136は、ターゲット本体128及び又はシールド140の開口142、144を通って延び、スパッタリングチャンバ130を横切って延びている。一実施形態において、対象物136は、スパッタリングチャンバ130の幅を横切って、実質的にビーム軸に垂直な方向に延びている。
【0177】
スパッタリング装置14を参照して上述したように、スパッタリング装置120と関係しかつ/又はスパッタリング装置120の一部であるハウジング(図示せず)によって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバ内に部分真空が生成される。イオン源18は、高エネルギーイオンビーム20を生成又は供給するために部分真空内で動作する。
【0178】
中空ビーム20は、入口132を通って、イオン源18の真下に位置するスパッタリングチャンバ130内に向けられる。イオンビーム20は、チャンバ表面に衝突し、粒子(概略的に赤の陰影で示される)をスパッタリングターゲット122の本体128から表面126に向かってスパッタする。
【0179】
一実施形態において、スパッタリングチャンバ130は、被改質表面126に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタリングチャンバ130内の中央領域に向かってスパッタされるように形作られている。一部の粒子はスパッタリングターゲットからイオン源18に向かってバックスパッタされるが、表面126に向かってスパッタされた粒子は全体として、スパッタリングターゲット122から、ビーム軸22に対して半径方向に延びるスパッタ方向において、ビーム軸22に向かって延びる方向にスパッタされる。一実施形態において、スパッタリング装置120は、イオンビーム20の全周にわたってスパッタリングターゲット122から粒子をスパッタするように配置されている。
【0180】
図10A~10Cに示す実施形態において、対象物136は、円筒形のパイプ又は管の形態の細長い導管である。表面126は、円弧状又は円筒形の外側表面である。代替的に、対象物136は、例えば、平面的な表面を有する基板であることができる。
【0181】
一実施形態において、方法は、被改質表面126をイオンビーム20及び/又はスパッタリングチャンバ130に対して移動又は前進させることを含む。表面126は、スパッタリングチャンバ130に対して、実質的にビーム軸22に垂直な方向146に移動される。一実施形態において、対象物136はパイプであり、動かないターゲット本体の開口を通して供給される。別の実施形態において、スパッタリングターゲット122(及びイオン源18)は、動かないパイプに沿って移動される。
【0182】
一実施形態において、方法は、対象物の全周にわたって材料をスパッタするためにスパッタリングチャンバ130に対して対象物を回転させることを含む。一実施形態において、対象物は、動かないターゲット本体128に対して(全体として矢印148で示すように)回転される。別の実施形態において、ターゲット本体128(及びイオン源18)は、動かない対象物に対して回転させることができる。
【0183】
スパッタリング装置(
図11)
図11を参照して本開示の第3の実施形態による代替的なスパッタリング装置150を説明する。スパッタリング装置150は、上記のように高エネルギーイオンビーム20を提供するイオン源18と、
図11に概略的に示すスパッタリングターゲット152とを含む。イオン源18(
図11には図示せず)は、この場合も真空下で動作し、この場合も、スパッタリングターゲット152のターゲット表面154に衝突してスパッタリングターゲット152から被改質表面に向かって粒子をスパッタするイオンビーム20を提供するように、スパッタリングターゲット152に対してハウジング(図示せず)内に配置可能である。
【0184】
スパッタリングターゲット152は、導管の内側表面156、例えば、パイプ158、管、又はバレルの内側表面に粒子をスパッタし又は堆積させるのに特に有用である。
【0185】
表面に向かってスパッタされた粒子が全体としてスパッタリングターゲットからビーム軸に向かって(ビーム軸に対して)半径方向に延びるスパッタ方向にスパッタされるスパッタリング装置14、120とは異なり、スパッタリングターゲット152を有するスパッタリング装置150は全体として、ビーム軸22から離れる、ビーム軸22に対して半径方向に延びるスパッタ方向に表面156に向かって粒子をスパッタする。
【0186】
スパッタリングターゲット152は、ターゲット本体160からパイプ158の内側表面156に向かって粒子をスパッタするように構成され又は形作られたターゲット本体160を含む。
【0187】
ターゲット本体160は、少なくとも1つのターゲット表面154を画定する少なくとも1つの外周面を有する。
【0188】
一実施形態において、第1の端部162と第2の端部164の中間にある環状のターゲット本体160の周囲の少なくとも一部は、ターゲット表面154がビーム軸22に対して傾斜するように、実質的に切頭円錐形の形状を有する。
図11を参照すると、ターゲット本体160は、実質的に中空の切頭円錐形の形状を有する。スパッタリングターゲット152及びイオン源18は、ターゲット本体の軸166がビーム軸22と実質的に平行であり、好ましくは平行であり、より好ましくは実質的に同軸であり、より好ましくは同軸であるように直線状に配置されている。傾斜したターゲット表面154とターゲット本体の軸166及び/又はビーム軸22との間に画定される角度168は、約45度以下である。角度168は、好ましくは約10度から約30度の範囲である。代替的に、ターゲット本体160は、他の形状、例えば、実質的に円錐形の形状を有することができる。又は、ターゲット本体160は、円形断面を有していなくてもよい。代わりに、ターゲット本体160は、例えば、実質的に長円形の断面又は丸みを帯びた角を有する長方形の断面を有することができる。
【0189】
ターゲット本体160は、
図11に概略的に中空体として示されているが、代替的に、ターゲット本体160は、実質的に中実体であることができる。
【0190】
一実施形態において、(ビーム軸22に垂直な平面における)ターゲット本体160の少なくとも一部の外周に囲まれる断面積は、イオンビーム20がターゲット表面154に衝突するように、ビーム軸22の方向においてイオン源18から離れる方向に増大する。外周に囲まれる断面積は、イオンビーム20の中空部分の断面積よりも実質的に小さい第1の断面積からイオンビーム20の外周に囲まれる断面積よりも実質的に大きい第2の断面積まで、ビーム軸の方向においてイオン源18から離れる方向に増大する。一実施形態において、ターゲット本体160の外周に囲まれる断面積は、イオン源18の近位又は少なくともより近くにあるターゲット本体160の第1の端部162又はその近傍からイオン源18から遠位又は少なくともより遠くにある(イオンビーム20を基準として第1の端部162の下流の)ターゲット本体160の第2の端164部又はその近傍まで増大する。一実施形態において、ターゲット本体160の外周の直径は、第1の端部162又はその近傍から第2の端部164又はその近傍まで増大する。
【0191】
ターゲット本体160の外周に囲まれる断面積は、ビーム20の方向に実質的に一定の割合で増大する。代替的に、ターゲット本体160の周囲によって画定される断面積は、一定でない割合で先細りになっていることができ、例えば、ターゲット本体160は、ターゲット本体160が第2の端部164に近づくにつれてより大きな割合又はより小さな割合で先細りになっていることができる。
【0192】
一実施形態において、スパッタリング装置150は、パイプ158などの中空の対象物の内部に少なくとも部分的に延びるように構成されているので、ビーム軸22は、パイプの中心軸又は縦軸と概ね一直線である(実質的に平行であるか又は同軸である)。イオン源18及び/又はスパッタリングターゲット152のサイズは、パイプの寸法に基づいて作る(拡大又は縮小する)ことができる。
【0193】
一実施形態において、スパッタリングターゲット152は、パイプ158に対して実質的にビーム軸22に平行な方向に移動可能である。スパッタリング装置150は、少なくともスパッタリングターゲット152が、パイプに対して及びパイプの内部で実質的にビーム軸22に平行な方向に移動可能であるように構成されている。一実施形態において、スパッタリング装置150は、イオン源18とスパッタリングターゲット152の両方がパイプに対して及びパイプの内部で実質的にビーム軸22に平行な方向に移動可能であるように構成されている。代替的に、スパッタリングターゲット152は、不動であり得るイオン源18に対してパイプの内部で移動することができる。
【0194】
スパッタ本体152を含むスパッタリング装置150を用いてパイプ158の内側表面156に粒子をスパッタする方法について説明する。
【0195】
スパッタリングターゲット152を有するスパッタリング装置150は、スパッタリングターゲット152が少なくとも部分的にパイプ158の内部に配置されかつ/又はパイプの開口端を通ってパイプ内に延びるように配置される。一実施形態において、スパッタリング装置150は、ビーム軸22がパイプ158の中心軸又は縦軸と概ね一直線である(実質的に平行であるか又は同軸である)ように配置される。
【0196】
スパッタリング装置14、120を参照して上述したように、スパッタリング装置150に関係しかつ/又はスパッタリング装置150の一部であるハウジングによって少なくとも部分的に画定されている真空チャンバ内に部分真空が生成される。パイプ158の少なくとも一部の内部の圧力が低下する。イオン源18は、高エネルギーイオンビーム20を生成又は提供するように動作する。
【0197】
中空ビーム20は、
図11に示すように、イオン源18に隣接して又はその真下に配置されているスパッタリングターゲット152上に向けられる。イオンビームは、ターゲット表面154に衝突し、粒子(概略的に赤の陰影で示される)をスパッタリングターゲット152の本体からパイプ158の内側表面156に向かってスパッタする。
【0198】
この場合も、一部の粒子はスパッタリングターゲット152からイオン源20に向かって逆向きにスパッタされるが、表面に向かってスパッタされた粒子は全体として、スパッタリングターゲット152から、ビーム軸22に対して半径方向に延びるスパッタ方向において、ビーム軸22から離れるように延びる方向にスパッタされる。一実施形態において、スパッタリング装置150は、イオンビーム20の全周にわたってスパッタリングターゲット152から粒子をスパッタするように構成されている。
【0199】
パイプ158の内側表面156は、円弧状、より具体的には円筒形の表面である。代替的に、スパッタリングターゲット152を有するスパッタリング装置150を使用して、非円弧状の表面、例えば、概ね平面的な表面に粒子をスパッタし又は堆積させることができる。代替的に、スパッタリングターゲット152を有するスパッタリング装置150を使用して、パイプ又は他の対象物の外側表面を改質することができる。
【0200】
一実施形態において、方法は、スパッタリングターゲット152に対して被改質表面156を移動又は前進させることを含む。表面は、スパッタリングターゲット152に対して、実質的にビーム軸22に平行な方向に移動される。一実施形態において、スパッタリングターゲット152は、パイプ158の内部で実質的に同軸に支持され、パイプの全長を処理するためにパイプ158の全長にわたって横断することができる。一実施形態において、イオン源20はスパッタリングターゲット152と共に移動することができる。別の実施形態において、スパッタリングターゲットは、パイプ158の内部で、イオン源から離れて、又はイオン源18に向かって移動することができる。
【0201】
図12は、中空ビーム20の一例を示す。上記のように、中空ビームは、円形の断面を有する円筒形のイオンビームであり、円筒の中心を通って流れるイオンが少ないか又は全くなく、円筒の壁を通って流れるイオンの数が最大である。
【0202】
中空ビームの軸は、22で示され、内径Rを有する。幅Wのイオンの流れが、ターゲット表面48に向けられる。イオンの流れは、ターゲット表面48に向かって進むにつれて、ビーム軸22から離れる側のビーム幅Aの増大を示す。イオンの流れはまた、ビーム軸22に向かう側のビーム幅Bの増大を示す。
【0203】
一実施形態において、中空イオンビーム20の電流密度の横方向のプロファイルは、中空ビーム20の直径2Rに対応する距離だけ離れている2つのミラーリング非対称ガウスに従う。中空イオンビームが空間を伝播すると、イオンビーム内のクーロン相互作用がビームの広がり及び壁の広がりをもたらす。これは空間電荷効果としても知られている。
【0204】
ビームは、イオン源から離れるときに幅Wを有する。ビームは、スパッタターゲット48に向かって距離Hだけ進む。スパッタターゲット48は、角度δ、幅w、高さhによって定義される形状を有する。一実施形態において、イオンビームの大部分は、基板を直接損傷又は改質しないように、スパッタターゲット48によって停止される。
【0205】
一実施形態において、電流とイオンビーム20の広がりとの関係は、チャンバの圧力、イオンのエネルギー、イオンの質量、イオンビーム電流密度、及び移動距離Hの非線形関数である。
【0206】
広がりは、ビーム軸から離れる側のAのビーム幅の増大と、ビーム軸に向かう側のBのビーム幅の増大をもたらす。Aの広がり角はαと示される。Bの広がり角をβと示される。
【0207】
一実施形態において、対応する広がり角α及びβの推定値は、解析近似又は有限要素モデリングソフトウェアの使用によって得られ、A及びBを計算するために使用される。
A=(H-((W+Htanβ)tanδ))/(tanδ+cotα)
B=Htanβ
【0208】
スパッタターゲット48の傾斜δは、以下のように、これらの値及びスパッタターゲットの高さに関係している。
d=(A+W+B)tanδ
【0209】
スパッタターゲットの最大内径は、ターゲットに衝突するときの中空イオンビームの内径rである。
a≦r≦R-B
【0210】
ここで、aは堆積領域の最小半径(常に正数)である。スパッタリングターゲットの粒子出口は、サイズaの幅又は半径を有する。一実施形態において、この半径はユーザが定義する。
【0211】
スパッタターゲットの最小高さhは、
h≧d
である。
【0212】
スパッタターゲット部分の最小幅wは、
w≧A+W+B
である。
【0213】
上記の式は、スパッタ方向がビーム軸に向かって延びる
図10A~10Cに示すスパッタリング装置の実施形態に適している。当然のことながら、同じ式は、スパッタ方向がビーム軸から離れるように延びている
図11に示すスパッタリング装置の実施形態に適している。
【0214】
結果として生じる堆積層の組成を制御するために異なる材料を使用する場合など、中心軸の両側でスパッタリングターゲット本体の角度が異なる場合、寸法は全て同じではない。材料A及びBのスパッタリングターゲットの両側の形状を計算するために、距離rは両側で異なる(A側のrA及びB側のrB)。rA及びrBは、A側及びB側それぞれのパラメータd及びδに相当する高さdA及びdBと勾配δA及びδBとの関数である。
【0215】
これらの条件において、中空ビームを使用すると、(W+r)^2/((W+r)^2-r^2)の比率で電力を節約できる可能性がある。例えば、W=1cm、r=1cmの場合、中空ビームを使用すると、同じスパッタリング率でフルビームよりも使用する電力が約33%少なくなる。さらに、表面は直接ビーム露光の影響を受けない。
【0216】
以下に実験結果を示す。すべての実験の運転圧は2~7×10-4mbar、ベース圧は約5×10-6mbarであった。
【0217】
図13及び14は、ガラスへの銅の堆積の例を示す。
図8に示したもののような細長いイオン源を、
図1及び2Bに示したものと同じプロファイルを有する銅ターゲットと共に使用した。
【0218】
イオン源の長さは15.7cm、中空ビームの幅は2.4cmであった。真空チャンバの全体の設計は、
図2Bに示したものと同じであった。ターゲットとイオン源との間の距離は1.35cmであった。スパッタターゲットの底面と改質中のソーダ石灰ガラス基板との間の距離は0.5mmであった。
【0219】
イオン源のアノードとカソードに1kVのDC電圧を印加することによりイオン源にプラズマを生成した。スパッタターゲットに向かって正イオンを加速するために7.5、10、12、12.5及び15kVの電圧を用いた。(±0.1mm/分の分解能を可能にするギヤードステッピングモータを用いて)1.25、2.5、5及び7.5mm/分の走査速度を使用した。様々な組み合わせを試し、オリンパスのポータブル蛍光X線システムを用いて堆積厚さを測定した。
【0220】
原子間力顕微鏡を用いて厚さ測定を較正した。AFM測定のために、厚さ測定用の鋭い縁を提供するべく、堆積前にガラス上に除去可能なマスクを置いた。
【0221】
図13は、10kVの一定加速電圧における異なる走査速度(速度)に対する均一に堆積された基板の12cmにわたる堆積厚さの変化を示す。
図14は、異なる走査速度(速度)及び5mm/分の速度における異なる加速電圧に対する均一に堆積された基板の12cmにわたる堆積厚さの変化を示す。垂直エラーバーは、表面全体の厚さの標準偏差に対応している。
【0222】
【0223】
図8に示したもののような細長いイオン源を、
図1及び2Bに示したものと同じプロファイルを有するスパッタリングターゲットと共に使用した。
【0224】
イオン源の長さは15.7cm、中空ビームの幅は2.4cmであった。スパッタターゲットは、この実験用にチタンで作られた、イオンビームにさらされる取り外し可能な面を有していた。真空チャンバの全体の設計は、
図2Bに示したものと同じであった。ターゲットとイオン源との間の距離は1.35cmであった。スパッタターゲットの底面と改質中のソーダ石灰ガラス基板との間の距離は0.5mmであった。
【0225】
イオン源のアノードとカソードに1kVのDC電圧を印加することによりイオン源にプラズマを生成した。スパッタターゲットに向かって正イオンを加速するために5kVの電圧を用いた。(分解能±0.1mm/分のギヤードステッピングモータを用いて)2、3、5及び7.5mm/分の走査速度を使用した。様々な組み合わせを試し、オリンパスのポータブル蛍光X線システムを用いて堆積厚さを測定した。
【0226】
原子間力顕微鏡を用いて測定を較正した。AFM測定のために、厚さ測定用の鋭い縁を提供するべく、堆積前にガラス上に除去可能なマスクを置いた。
【0227】
図15は、10kVの一定加速電圧における異なる走査速度(速度)に対する均一に堆積させた基板の12cmにわたる堆積厚さの変化を示す。垂直エラーバーは、表面全体の厚さの標準偏差に対応している。
【0228】
図16は、プラスチック管の外側への銅の堆積の例を示す。
【0229】
図3Aに示したもののような円形のイオン源を、
図10A、10B、及び10Cに対応する設計の銅ターゲットと共に使用した。
【0230】
イオン源のアノードとカソードに1kVのDC電圧を印加することによりイオン源にプラズマを生成した。スパッタターゲットに向かって正イオンを加速するために10kVの電圧を用いた。ポータブルの蛍光X線を用いて、パイプの全長にわたって堆積厚さを確認した。2.5mm/分及び5mm/分の引き上げ速度と5kVの加速電圧とで、39±25nm及び4±3nmの厚さが堆積された。
【0231】
これらは上記と同じ方法で測定した。プロセスの更なる最適化がより良好な堆積速度及び堆積膜の均一性をもたらすことが予想される。
【0232】
本発明の前述の説明は、本発明の好ましい形態を含む。添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、それらを変更することができる。