(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】タバコ由来の熱分解油
(51)【国際特許分類】
A24B 15/18 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A24B15/18
(21)【出願番号】P 2021133868
(22)【出願日】2021-08-19
(62)【分割の表示】P 2019132506の分割
【原出願日】2014-08-06
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2013-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・フランシス・デュベ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・リチャード・ジェラルディ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジャンカー
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-259855(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102408410(CN,A)
【文献】国際公開第2012/158915(WO,A2)
【文献】特表2013-507976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0096568(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102559388(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102106603(CN,A)
【文献】特開平02-190171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
筐体内に位置し、およびエアロゾル前駆体組成物を含むように構成される貯蔵部であって、前記エアロゾル前駆体組成物はタバコ由来の熱分解油を含み、当該タバコ由来の熱分解油はフェノール化合物、シクロテン、バニリン、及びピラジンならびにこれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の化合物を含
み、前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールを、合わせて約20重量%未満含む、貯蔵部と、
筐体内に位置し、および貯蔵部と流体連通し、エアロゾルを形成するエアロゾル前駆体組成物を加熱するよう構成される加熱器と
を含む電子喫煙物品。
【請求項2】
筐体の口端にて設けられ、形成されたエアロゾルの放出を可能にする開口部をさらに含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項3】
貯蔵部および加熱器の間に位置し、エアロゾル前駆体組成物を貯蔵部から加熱器に輸送するのに適合された輸送要素をさらに含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項4】
加熱器に電気接続の状態にある、電池および制御構成要素をさらに含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項5】
前記タバコ由来の熱分解油が、甘味のあるまたは煙様の芳香を呈する、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項6】
前記タバコ由来の熱分解油が、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項7】
前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールの各々
を10重量%未満含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項8】
前記タバコ由来の熱分解油が
、100ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項9】
前記タバコ由来の熱分解油が
、10ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項10】
前記エアロゾル前駆体組成物は、ニコチン、タバコ材料、水、多価アルコール、香味剤およびこれらの組合せからなる群から選択される添加物をさらに含む、請求項1に記載の電子喫煙物品。
【請求項11】
タバコ由来の熱分解油を含み、当該タバコ由来の熱分解油がフェノール化合物、シクロテン、バニリン、及びピラジンならびにこれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の化合物を含
み、前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールを、合わせて約20重量%未満含む、エアロゾル形成材料、および
エアロゾル形成材料を加熱してエアロゾルを生成するよう構成された加熱源
を含む、エアロゾル生成デバイス。
【請求項12】
前記タバコ由来の熱分解油が、甘味のあるまたは煙様の芳香を呈する、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項13】
前記タバコ由来の熱分解油が、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項14】
前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールの各々
を10重量%未満含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項15】
前記タバコ由来の熱分解油が
、100ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項16】
前記タバコ由来の熱分解油が
、10ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項17】
前記加熱源が、電気駆動の加熱要素または燃焼可能な燃料源のいずれかを含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項18】
前記エアロゾル形成材料が、タバコ由来の熱分解油の担体としてのタバコ材料または非タバコ植物材料をさらに含む、請求項
11に記載のエアロゾル生成デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコから作製されるか、またはそれに由来する製品、あるいは別様にタバコもしくはタバコの成分を組み込み、ヒト消費を意図した製品に関する。ニコチアナ種由来の植物もしくは植物の一部から得られるか、またはそれらに由来する原料もしくは成分が特に興味深いものである。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻、及びパイプは、タバコを様々な形態で用いる人気のある喫煙物品である。そのような喫煙物品は、タバコを加熱するか、または燃やすことによって用いられ、喫煙者が吸い得るエアロゾル(例えば、煙)を生成する。紙巻タバコなどの人気のある喫煙物品は、実質的に円柱形のロッド状構造を有し、包装紙によって包囲された刻みタバコ(例えば、カットフィラー形態)などの喫煙可能な材料の装入物、ロール、またはカラムを含み、それによりいわゆる「タバコロッド」を形成する。通常、紙巻タバコは、タバコロッドと末端間関係で整列した円筒フィルター要素を有する。典型的に、フィルター要素は、「プラグラップ」として知られる紙材料によって外接される可塑化酢酸セルローストウを含む。ある特定の紙巻タバコは、複数のセグメントを有するフィルター要素を組み込み、それらのセグメントのうちの1つは、活性炭粒子を含むことができる。典型的に、フィルター要素は、「チッピング紙」として知られる外接包装材料を使用して、タバコロッドの一端に取り付けられる。吸い込まれた主流煙の周囲空気による希釈を提供するために、チッピング材料及びプラグラップを穿孔することも望ましくなっている。紙巻タバコは、喫煙者がその一端に点火し、タバコロッドを燃やすことによって用いられる。次に、喫煙者は、紙巻タバコの反対端(例えば、フィルター端)で吸い込むことによって、主流煙を自身の口に受ける。
【0003】
紙巻タバコ製造に使用されるタバコは、典型的に、ブレンド形態で使用される。例えば、一般に「アメリカンブレンド」と称されるある特定の人気のあるタバコブレンドは、鉄管乾燥タバコ、バーレータバコ、及びオリエンタルタバコの混合物を含み、多くの場合、再構成タバコ及び加工タバコ柄などのある特定の加工タバコを含む。特定の紙巻タバコブランドの製造に使用されるタバコブレンド内の各種タバコの正確な量は、ブランド毎に異なる。しかしながら、多くのタバコブレンドの場合、鉄管乾燥タバコがブレンドの比較的大部分を構成し、一方オリエンタルタバコは、ブレンドの比較的一部を構成する。例えば、Tobacco Encyclopedia,Voges(編集者)p.44~45(1984)、Browne,The Design of Cigarettes,3rd Ed.,p.43(1990)、及びTobacco Production,Chemistry and Technology,Davis et al.(編集者)p.346(1999)を参照されたい。
【0004】
タバコは、いわゆる「無煙」形態で嗜まれてもよい。特に人気のある無煙タバコ製品は、何らかの形態の加工タバコまたはタバコ含有配合物を、使用者の口に挿入することによって用いられる。例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Schwartzの米国特許第1,376,586号、Leviの同第3,696,917号、Pittmanらの同第4,513,756号、Sensabaugh,Jr.らの同第4,528,993号、Storyらの同第4,624,269号、Tibbettsの同第4,991,599号、Townsendの同第4,987,907号、Sprinkle,IIIらの同第5,092,352号、Whiteらの同第5,387,416号、Williamsの同第6,668,839号、Williamsの同第6,834,654号、Atchleyらの同第6,953,040号、Atchleyらの同第7,032,601号、及びAtchleyらの同第7,694,686号;Williamsの米国特許公開第2004/0020503号、Quinterらの同第2005/0115580号、Stricklandらの同第2005/0244521号、Stricklandらの同第2006/0191548号、Holton,Jr.らの同第2007/0062549号、Holton,Jr.らの同第2007/0186941号、Stricklandらの同第2007/0186942号、Dubeらの同第2008/0029110号、Robinsonらの同第2008/0029116号、Muaらの同第2008/0029117号、Robinsonらの同第2008/0173317号、Engstromらの同第2008/0196730号、Neilsenらの同第2008/0209586号、Crawfordらの同第2008/0305216号、Muaらの同第2009/0025738号、Brinkleyらの同第2009/0025739号、Essenらの同第2009/0065013号、Kumarらの同第2009/0293889号、Doolittleらの同第2010/0018540号、Gerardiらの同第2010/0018541号、Gaoらの同第2010/0291245号、Muaらの同第2011/0139164号、Coleman,IIIらの同第2011/0174323号、Beesonらの同第2011/0247640号、Coleman,IIIらの同第2011/0259353号、Cantrellらの同第2012/0037175号、Huntらの同第2012/0055494号、Sebastianらの同第2012/0103353号、Byrdらの同第2012/0125354号、Cantrellらの同第2012/0138073号、及びCantrellらの同第2012/0138074号;ArnarpらのPCT国際公開第04/095959、Atchleyらの同第05/063060号、Engstromの同第05/004480号、Bjorkholmの同第05/016036号、Quinterらの同第05/041699号、及びAtchleyの同第10/132444号に記載される無煙タバコ配合物、原料、及び加工法の種類を参照されたい。
【0005】
無煙タバコ製品の一種は、「嗅ぎタバコ」と称される。一般に「スヌース」と称される湿性嗅ぎタバコ製品の代表的な種類は、欧州、特にスウェーデンにおいて、Swedish Match AB、Fiedler&Lundgren AB、Gustavus AB、Skandinavisk Tobakskompagni A/S、及びRocker Production ABなどの企業によって、または企業を通じて製造されてきた。米国において入手可能であるスヌース製品は、Camel Snus Frost、Camel Snus Original、及びCamel Snus Spiceという商品名で、R.J.Reynolds Tobacco Companyによって市販されている。例えば、Bryzgalov et al.,1N1800 Life Cycle Assessment,Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus(2005)も参照されたい。加えて、スヌース製造に関連するある特定の品質基準は、いわゆるGothiaTek基準としてまとめられている。代表的な無煙タバコ製品も、House of Oliver Twist A/SによるOliver Twist;U.S.Smokeless Tobacco Co.によるコペンハーゲン湿性タバコ、コペンハーゲンパウチ、Skoal Bandits、Skoal Pouches、SkoalDry、Rooster、Red Sealロングカット、Husky、及びRevel Mint Tobacco Packs;Philip Morris USAによるMarlboro Snus及び「taboka」;American Snuff Company,LLCによるLevi Garrett、Peachy、Taylor′s Pride、Kodiak、Hawken Wintergreen、Grizzly、Dental、Kentucky King、及びMammoth Cave;R.J.Reynolds Tobacco CompanyによるCamel Snus、Camel Orbs、Camel Sticks、及びCamel Stripsという商品名で市販されている。市販されている他の例示的な無煙タバコ製品としては、Swisher International,Inc.によるKayak湿性スヌース及びChattanooga Chew噛みタバコ、ならびにPinkerton Tobacco Co.LPによるRedman噛みタバコと称されるものが挙げられる。
【0006】
長年にわたって、タバコ製品に利用されるタバコ材料の全体的な特色または性質を改変するための様々な処理方法及び添加剤が提案されている。例えば、添加剤または処理プロセスは、タバコ材料の化学もしくは官能特性を改変するために、または喫煙可能なタバコ材料の場合、そのタバコ材料を含む喫煙物品によって生成される主流煙の化学もしくは官能特性を改変するために利用されてきた。紙巻タバコの煙の官能属性は、香味材料を紙巻タバコの様々な成分に組み込むことによって強化され得る。例示的な香味添加剤としては、メタノール及びメイラード反応の生成物、例えば、ピラジン、アミノ糖、及びアマドリ化合物が挙げられる。アメリカン紙巻タバコブレンドは、典型的に、リコリスまたはココア粉末などの香味原料、及び高果糖コーンシロップなどの糖源を含むケーシング組成物を含有する。参照により本明細書に組み込まれる、Leffingwell et al.,Tobacco Flavoring for Smoking Products,R.J. Reynolds Tobacco Company(1972)も参照されたい。いくつかの場合には、熱の使用を伴う処理プロセスは、加工タバコに所望の色もしくは視覚的特色、所望の官能特性、または所望の物理的性質もしくは質感を付与することができる。タバコ組成物における使用のための香味及び芳香組成物を調製するための様々なプロセスは、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Rookerの米国特許第3,424,171号、Luttichの同第3,476,118号、Osborne,Jr.らの同第4,150,677号、Whiteらの同第4,596,259号、Robertsらの同第4,986,286号、Whiteらの同第5,074,319号、Whiteらの同第5,099,862号、Sensabaugh,Jrの同第5,235,992号、Raymondらの同第5,301,694号、Coleman,IIIらの同第6,298,858号、Coleman,IIIらの同第6,325,860号、Coleman,IIIらの同第6,428,624号、Dubeらの同第6,440,223号、Coleman,IIIらの同第6,499,489号、及びWhiteらの同第6,591,841号;Coleman,IIIの米国特許出願同第2004/0173228号及びColeman,IIIらの同第2010/0037903号に記載されている。
【0007】
無煙タバコの官能属性は、ある特定の香味材料の組み込みによって強化することもできる。例えば、各々が参照によって本明細書に組み込まれる、Williamsの米国特許出願同第2002/0162562号、Williamsの同第2002/0162563号、Atchleyらの同第2003/0070687号、Williamsの同第2004/0020503号、Breslinらの同第2005/0178398号、Stricklandらの同第2006/0191548号、Holton,Jr.らの同第2007/0062549号、Holton,Jr.らの同第2007/0186941号、Stricklandらの同第2007/0186942号、Dubeらの同第2008/0029110号、Robinsonらの同第2008/0029116号、Muaらの同第2008/0029117号、Robinsonらの同第2008/0173317号、及びNeilsenらの同第2008/0209586号を参照されたい。
【0008】
喫煙物品及び/または無煙タバコ製品の製造に有用なタバコ(ならびにタバコ組成物及び配合物)の特色及び性質を改変するための追加の組成物及び方法を提供することが望ましいであろう。具体的には、タバコ由来の香味材料を使用して、タバコ組成物及び配合物の特色及び性質を改変するための組成物及び方法を開発することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第1,376,586号明細書
【文献】米国特許第3,696,917号明細書
【文献】米国特許第4,513,756号明細書
【文献】米国特許第4,528,993号明細書
【文献】米国特許第4,624,269号明細書
【文献】米国特許第4,991,599号明細書
【文献】米国特許第4,987,907号明細書
【文献】米国特許第5,092,352号明細書
【文献】米国特許第5,387,416号明細書
【文献】米国特許第6,668,839号明細書
【文献】米国特許第6,834,654号明細書
【文献】米国特許第6,953,040号明細書
【文献】米国特許第7,032,601号明細書
【文献】米国特許第7,694,686号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0020503号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0115580号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0244521号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0191548号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0062549号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0186941号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0186942号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0029110号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0029116号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0029117号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0173317号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0196730号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0209586号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0305216号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0025738号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0025739号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0065013号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0293889号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0018540号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0018541号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0291245号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0139164号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0174323号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0247640号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0259353号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0037175号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0055494号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0103353号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0125354号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0138073号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0138074号明細書
【文献】国際公開第2004/095959号
【文献】国際公開第2005/063060号
【文献】国際公開第2005/004480号
【文献】国際公開第2005/016036号
【文献】国際公開第2005/041699号
【文献】国際公開第2010/132444号
【文献】米国特許第3,424,171号明細書
【文献】米国特許第3,476,118号明細書
【文献】米国特許第4,150,677号明細書
【文献】米国特許第4,596,259号明細書
【文献】米国特許第4,986,286号明細書
【文献】米国特許第5,074,319号明細書
【文献】米国特許第5,099,862号明細書
【文献】米国特許第5,235,992号明細書
【文献】米国特許第5,301,694号明細書
【文献】米国特許第6,298,858号明細書
【文献】米国特許第6,325,860号明細書
【文献】米国特許第6,428,624号明細書
【文献】米国特許第6,440,223号明細書
【文献】米国特許第6,499,489号明細書
【文献】米国特許第6,591,841号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0173228号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0037903号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0162562号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0162563号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0070687号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0178398号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Tobacco Encyclopedia,Voges(編集者)p.44~45(1984)、Browne,The Design of Cigarettes,3rd Ed.,p.43(1990)
【文献】Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davis et al.(編集者)p.346(1999)
【文献】Bryzgalov et al.,1N1800 Life Cycle Assessment,Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus(2005)
【文献】Leffingwell et al.,Tobacco Flavoring for Smoking Products,R.J. Reynolds Tobacco Company(1972)
【発明の概要】
【0011】
本発明は、喫煙物品及び無煙タバコ製品などの種々のタバコ製品において利用されるタバコ組成物への組み込みに有用なニコチアナ種の植物からの混合物及び/または単離成分を含む、ニコチアナ種からの材料(例えば、タバコ由来材料)を提供する。本発明は、ニコチアナ種から成分(例えば、タバコ材料)を単離するための方法、ならびにそれらの成分及びそれらの成分を組み込むタバコ材料を加工するための方法も提供する。
【0012】
具体的には、本発明は、いくつかの実施形態では1つ以上の香味成分を含むタバコ由来の組成物を提供する。いくつかの実施形態では、香味成分はフェノール化合物を含む。タバコ由来の組成物は故に、いくつかの実施形態においては、例えば、喫煙製品、無煙タバコ製品、及び電子タバコ(e-cigarette)に添加するための香味原料として使用され得る。かかるタバコ由来の組成物は、例えば、それらが添加される材料に、甘味のある及び/または煙様の官能特徴を提供することができる。
【0013】
本発明の一態様では、タバコ由来の熱分解油を提供する方法が提供され、本方法は、タバコ材料を得ること、タバコ材料を熱分解して、炭及び蒸気生成物を産生すること、ならびに蒸気生成物を凝縮及び収集してタバコ由来の熱分解油をもたらすことを含む。タバコ材料は、例えば、タバコ茎またはタバコ根を含むことができ、これらは任意選択で粉末形態であり得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、少なくとも約400℃、例えば、約400℃~約450℃の温度で実施される。熱分解は様々な条件下で実施され得る。一実施形態では、熱分解は、窒素雰囲気下で行われる。
【0014】
ある特定の実施形態に従い、本方法は、タバコ由来の熱分解油を、喫煙物品、無煙タバコ製品、及び電子喫煙物品からなる群から選択されるタバコ製品に組み込むことを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、タバコ由来の熱分解油(またはタバコ由来の熱分解油に由来する単一の成分もしくは成分の混合物)を、タバコ由来の熱分解油(またはその誘導体)の担体としてのタバコ材料または非タバコ植物材料に添加することを更に含み得る。タバコ材料または非タバコ植物材料は、いくつかの実施形態においては、次に、タバコ製品に組み込まれ得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、単一の成分または成分の混合物を、タバコ由来の熱分解油から単離することを更に含み得る。単一の成分または成分の混合物を単離するための1つの例示的な手段は、タバコ由来の熱分解油をフラッシュクロマトグラフィーの対象とすることを含む。得られる単一の成分またはそれらの組み合わせは、ある特定の実施形態では、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
本発明の別の態様では、タバコ由来の熱分解油が提供され、このタバコ由来の熱分解油は、約100ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む。例えば、ある特定の実施形態では、タバコ由来の熱分解油は、約10ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む。有利に、タバコ由来の熱分解油は、甘味のあるまたは煙様の芳香などの望ましい官能特徴を呈し得る。
【0017】
タバコ由来の熱分解油の構成は様々であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、タバコ由来の熱分解油は、フルフラール及び1つ以上のメトキシフェノールを含む。ある特定の実施形態では、ある特定の実施形態では、タバコ由来の熱分解油は、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、タバコ由来の熱分解油は、クレゾール、フェノール、キシレン、及びメチルフェノールの各々を約10重量%未満含む。いくつかの実施形態では、タバコ由来の熱分解油は、クレゾール、フェノール、キシレン、及びメチルフェノールを、合わせて約20重量%未満含む。
【0018】
本発明の更なる態様では、本明細書に記載のタバコ由来の熱分解油を組み込むタバコ製品が提供される。タバコ製品の形態は、例えば、湿性嗅ぎタバコ、乾性嗅ぎタバコ、噛みタバコ、タバコ含有ガム、及び溶解性または溶融性タバコ製品からなる群から選択される、例えば、喫煙物品、電子喫煙物品、または無煙タバコ製品の形態であり得る。
【0019】
本発明は、制限なく、以下の実施形態を含む。
【0020】
実施形態1:タバコ由来の熱分解油を提供する方法であって、タバコ材料を得ることと、前記タバコ材料を熱分解して、炭及び蒸気生成物を産生することと、前記蒸気生成物を凝縮及び収集して、タバコ由来の熱分解油をもたらすことと、を含む、前記方法。
【0021】
実施形態2:前記タバコ材料が、タバコ茎またはタバコ根を含む、実施形態1または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0022】
実施形態3:前記タバコ茎またはタバコ根が、粉末形態である、実施形態1もしくは2または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0023】
実施形態4:前記熱分解が、少なくとも約400℃の温度で実施される、実施形態1~3または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0024】
実施形態5:前記熱分解が、約400℃~約450℃の温度で実施される、実施形態1~4または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0025】
実施形態6:前記熱分解が、窒素雰囲気下で行われる、実施形態1~5または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0026】
実施形態7:前記タバコ由来の熱分解油が、甘味のあるまたは煙様の芳香を呈する、実施形態1~6または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0027】
実施形態8:前記タバコ由来の熱分解油が、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~7または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0028】
実施形態9:前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールの各々を約10重量%未満含む、実施形態1~8または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0029】
実施形態10:前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールを、合わせて約20重量%未満含む、実施形態1~9または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0030】
実施形態11:前記タバコ由来の熱分解油が、約100ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、実施形態1~10または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0031】
実施形態12:前記タバコ由来の熱分解油が、約10ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、実施形態1~11または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0032】
実施形態13:単一の成分または成分の混合物を前記タバコ由来の熱分解油から単離することを更に含む、実施形態1~12または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0033】
実施形態14:前記単離が、前記タバコ由来の熱分解油をフラッシュクロマトグラフィーの対象とすることを含む、実施形態1~13または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0034】
実施形態15:前記1つ以上の単離された成分が、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、2,6-ジメトキシフェノール、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態1~14または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0035】
実施形態16:前記タバコ由来の熱分解油を、前記タバコ由来の熱分解油の担体としてのタバコ材料または非タバコ植物材料に添加することを更に含む、実施形態1~15または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0036】
実施形態17:前記タバコ由来の熱分解油と関連したタバコ材料または非タバコ植物材料をタバコ製品に組み込むことを更に含む、実施形態1~16または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0037】
実施形態18:前記タバコ製品が無煙タバコ製品の形態である、実施形態1~17または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0038】
実施形態19:前記無煙タバコ製品の形態が、湿性嗅ぎタバコ、乾性嗅ぎタバコ、噛みタバコ、タバコ含有ガム、及び溶解性または溶融性タバコ製品からなる群から選択される、実施形態1~18または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0039】
実施形態20:前記タバコ製品が喫煙物品の形態である、実施形態1~19または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0040】
実施形態21:前記タバコ由来の熱分解油を、喫煙物品、無煙タバコ製品、及び電子喫煙物品からなる群から選択されるタバコ製品に組み込むことを更に含む、実施形態1~20または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記方法。
【0041】
実施形態22:約100ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、タバコ由来の熱分解油。
【0042】
実施形態23:前記タバコ由来の熱分解油が、約10ppm未満のベンゾ[a]ピレンを含む、実施形態22または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油。
【0043】
実施形態24:前記タバコ由来の熱分解油が、甘味のあるまたは煙様の芳香を呈する、実施形態22もしくは23または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油。
【0044】
実施形態25:前記タバコ由来の熱分解油が、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールのうちの少なくとも1つを含む、実施形態22~24または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油。
【0045】
実施形態26:前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールの各々を約10重量%未満含む、実施形態22~25または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油。
【0046】
実施形態27:前記タバコ由来の熱分解油が、クレゾール、フェノール、キシレン、フルフラール、及びメチルフェノールを、合わせて約20重量%未満含む、実施形態22~26または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油。
【0047】
実施形態28:実施形態22~26または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ由来の熱分解油を組み込む、タバコ製品。
【0048】
実施形態29:喫煙物品、無煙タバコ製品、及び電子喫煙物品からなる群から選択される、実施形態28または後続実施形態のいずれか一項に記載の前記タバコ。
【0049】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、下で簡潔に説明される添付の図面と一緒に、以下の詳細な説明を読むことから明らかとなるであろう。本発明は、かかる特徴または要素が、本明細書における特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされているかどうかにかかわらず、上記実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、ならびに本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴の組み合わせを含む。本開示は、開示される発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様及び実施形態のうちのいずれかにおいて、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、組み合わせ可能であることが意図されると見なされるべきであるように、総合的に読まれることが意図される。本発明の他の態様及び利点は、以下から明らかとなるであろう。
【0050】
本発明の実施形態の理解を提供するために添付の図面が参照され、これらは必ずしも原寸で描かれておらず、その中の参照番号は本発明の例示的な実施形態の成分を指す。図面は単なる例示であり、本発明を制限するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】紙巻タバコの形態を有する喫煙物品の展開斜視図であり、紙巻タバコの喫煙可能な材料、包装材料成分、及びフィルター要素を示す。
【
図2】無煙タバコ製品の幅に沿った、無煙タバコ製品実施形態の断面図であり、本発明の無煙タバコ組成物を充填した外部パウチを示す。
【
図3】電子喫煙物品の断面図であり、電子エアロゾル送達デバイスの形成に有用な構成部品の種々の組み合わせを包含し得る。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、これから以下でより完全に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が包括的かつ完全であり、かつ当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供される。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。「乾燥重量%」または「乾燥重量基準」への言及は、乾燥原料(すなわち、水を除く全ての原料)に基づく重量を指す。
【0053】
本発明は、タバコ材料由来の成分を提供する。具体的には、本発明は、タバコ材料由来の熱分解油を提供する。本明細書に記載のこの熱分解油は、ニコチアナ種の植物の任意の部分に由来し得、いくつかの実施形態では、具体的には、ニコチアナ種の植物の茎及び/または根に由来する。かかる油は、様々な組成物を有し得、いくつかの実施形態では、この油に望ましい官能特徴を提供する1つ以上の成分を含む。本明細書で使用される場合、「熱分解油」または「py油」は、バイオマスの熱分解によってもたらされるガス状生成物の凝縮可能な部分を指す。本明細書で「タバコ由来の」といわれる熱分解油は、ニコチアナ種の植物の熱分解によってもたらされるあらゆる熱分解油を包含する。本開示が「油」を指すが、油が様々な形態で提供され得、例えば、溶液形態に希釈され得るか、または固体もしくは半固体形態になるまで濃縮されるか、または乾燥させられることに留意する。本開示は、かかる油を提供する方法及びかかる油を含むタバコ製品も提供する。
【0054】
本開示の製品は、ある形態のニコチアナ種の植物を組み込んでおり、最も好ましくは、それらの組成物または製品は、ある形態のタバコを組み込んでいる。ニコチアナ種からの植物の選択は異なり得、具体的には、1つのタバコまたは複数のタバコの種類は異なり得る。用いられ得るタバコには、熱風乾燥またはバージニア(例えば、K326)、バーレー、天日乾燥(例えば、カテリニ(Katerini)、プレリップ(Prelip)、コモティニ(Komotini)、キサンチ(Xanthi)、及びヤンボル(Yambol)タバコを含む、インディアン・カルヌール及びオリエンタルタバコ)、メリーランド、暗色、暗色火力乾燥、暗色空気乾燥(例えば、パサンダ(Passanda)、クバノ(Cubano)、ジャティン(Jatin)、及びベズキ(Bezuki)タバコ)、明色空気乾燥(例えば、ノースウィスコンシン及びガルパオタバコ)、インディアン空気乾燥、赤色ロシア及びルスティカタバコ、ならびに様々な他の希有または特殊なタバコが挙げられる。様々な種類のタバコ、栽培法、及び収穫法の説明は、参照により本明細書に組み込まれる、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davisら(編集者)(1999)に記載されている。ニコチアナ種は、遺伝子組換えまたは異種交配技法を用いて得ることができる(例えば、タバコ植物は、遺伝子操作または異種交配されて、ある特定の成分、特徴、もしくは属性の産生を増減させるか、またはそれらをその他変化させることができる)。本発明における使用に好適なニコチアナ種の種類に関する追加情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの米国特許出願同第2012/0192880号で見つけることができる。タバコ植物は、温室、栽培箱、もしくは野外で栽培されるか、または水耕栽培され得る。
【0055】
ニコチアナ種は、そこに存在する様々な化合物の含有量に対して選択され得る。例えば、植物は、それらの植物がそれらからの単離が所望される化合物のうちの1つ以上を比較的多い量で産生することに基づいて選択され得る。本発明に従って使用されるニコチアナ種の植物の1つの部分または複数の部分は異なり得る。例えば、植物の実質的に全て(例えば、全植物)を収穫し、そのようなものとして用いることができる。あるいは、植物の様々な部分または小片を収穫または分離して、収穫後更に使用することができる。例えば、葉、柄、茎、根、葉身、花、種子、及び様々な部分、ならびにそれらの組み合わせを単離して、更に使用または処理することができる。したがって、本発明の植物材料は、ニコチアナ種の植物全体または植物の任意の部分を含み得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Coleman,IIIらの米国特許出願同第2011/0174323号及びDubeらの同第2012/0192880号に記載されるタバコ植物の部分を参照されたい。
【0056】
本発明に従って有利に、本明細書に記載の方法(すなわち、加工されて熱分解油を提供する)に従う使用のために選択されるニコチアナ植物の一部は、それが少なくともいくらかのセルロース、好ましくは、相当量のセルロースを含むと考えられるように選択される。セルロースは、式(C6H10O5)nの多糖であると理解されており、式中、nは、約10~10,000超の数であり得る。植物(例えば、ニコチアナ種の植物)において、セルロースは、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン、及び他の物質との混合物中によく見られる。例えば、未乾燥タバコ茎の分析は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン、及び糖の存在を明らかにしている。タバコ茎は、典型的には、かなりの量の水も含む。例えば、タバコ茎の含水量は、約25重量%~約90重量%、約50重量%~約80重量%、または約60重量%~約80重量%の範囲であり得る。
【0057】
本開示がタバコ茎に焦点を当てているが、本明細書に記載の方法及び材料は、タバコ茎の適用に限定されていない。ある特定の実施形態では、茎が一般に廃棄物であると見なされており、かつ多くの場合、タバコ植物の収穫時に廃棄されるため、好ましくは茎が用いられる。更に、茎が適度な量のセルロースを含有することで知られているが、タバコ茎中のセルロースの量は異なり得る。しかしながら、セルロースを含有するか、またはセルロースを含有すると予想されるタバコ植物の任意の部分を使用することができる。本明細書に記載の方法に従って特に有用なタバコ植物の他の例示的な部分には、ニコチアナ植物の根及び柄が含まれる。いくつかの実施形態では、葉/葉身がある程度のセルロースを含有することが示されているため、葉/ラミナも用いられ得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Hall and Wooten,Quantitative Analysis of Cellulose in Tobacco by 13C CPMAS NMR,J.Agric.Food.Chem.1998,46:1423-1427を参照されたい。
【0058】
この方法が茎を用いる場合、茎全体または茎の一部のみがこのプロセスで使用され得る。茎は、収穫された形態で直接加工され得るか、または熱分解前に切り刻みまたは細断によって物理的に改変され得る。代案として、タバコ茎は、髄を包囲する茎皮の線維構造が使用され、かつ髄自体が別の目的のために単離される方法を用いて調製され得る。例えば、分割デバイスを使用して、その皮を髄から分離することができる。例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Millerらの米国特許第3,424,611号、同第3,424,612号、及び同第3,464,877号、Vukelicの同第4,151,004号、ならびにTilbyらの同第3,567,510号、同第3,976,498号、及び同第4,312,677号を参照されたい。これらの参考文献は、サトウキビをその個々の部分に分離するための分割方法を記載しており、本発明に従うタバコ茎との使用に適応し得る。したがって、いくつかの実施形態では、分離された皮のみ(全タバコ茎自体ではなく)が本明細書に提供される熱分解によって加工される。「茎」の加工への言及は、茎の一部、例えば、分離された皮成分の加工も包含するよう意図されていることを理解されたい。
【0059】
この茎(またはその他の部分)が本明細書に記載の方法に従う使用のために得られるニコチアナ種の植物は、未熟形態または成熟形態のいずれかであり得、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの第2012/0192880号に記載されるように、未乾燥または乾燥形態のいずれかで使用され得る。収穫された植物材料は、冷蔵、冷凍、乾燥(例えば、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥)、照射、黄変、加熱、調理(例えば、焙煎、揚げ、もしくは煮沸)、発酵、漂白などの様々な処理プロセスに供され得るか、またはさもなければ後の使用のための貯蔵もしくは処理に供され得る。例示的な加工技法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Brinkleyらの米国特許出願同第2009/0025739号、及びColeman,IIIらの同第2011/0174323に記載されている。
【0060】
ニコチアナ種の植物の少なくとも一部は、参照により本明細書に組み込まれる、2012年4月11出願のMarshallらの米国特許出願第13/444,272号、及び2012年7月19出願のMoldoveanuの米国特許出願第13/553,222に論じられるように、収穫前または後に酵素及び/またはプロバイオティクスで処理され得る。
【0061】
ニコチアナ種の植物の収穫された1つの部分または複数の部分は、物理的に加工され得る。この植物の1つの部分または複数の部分を個々の部分または小片に分離することができる(例えば、根を茎から取り除くことができ、柄を茎から取り除くことができ、葉を柄及び/または茎から取り除くことができ、花弁を花の残りの部分から取り除くことができる)。いくつかの実施形態では、かかる部分は、分離されていない形態で一緒に使用され得るか、または分離されて、その後、組み合わせられ得る(例えば、茎及び根ならびに/または茎及び柄)。この植物の収穫された1つの部分または複数の部分は、部分または小片に更に細分され得る(例えば、フィラー型小片、顆粒、微粒子、または微粉と見なされ得る小片または部分に切り刻まれるか、切断されるか、細断されるか、粉砕されるか、微粉化されるか、製粉されるか、または挽かれる)。この植物の収穫された1つの部分または複数の部分は、(例えば、加圧されるか、または圧延処理に供されることによって)外力または外圧に供され得る。
【0062】
更に、いくつかの実施形態では、この植物の収穫された1つの部分または複数の部分は、(例えば、蒸留/分別によって)更に加工されて、熱分解に供される1つの成分または複数の成分の混合物を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、収穫されたタバコ植物材料は、加工されてリグニンを提供することができ、このリグニンは、熱分解に供される。リグニンをタバコ植物から得るための方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Ralph et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(22):12803-12808(1998)に記載されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、ニコチアナ植物の収穫された1つの部分または複数の部分の灰含有量は、本明細書に記載の方法に従う使用のために有利に低減される。タバコ材料の灰含有量を低減するために様々な手段を用いることができる。いくつかの実施形態では、栽培条件(例えば、タバコ植物が栽培される地域)が植物の灰含有量に影響を及ぼし得る。例えば、沿岸地域で栽培されたタバコは、高ナトリウム含有量を有する傾向があり、恐らく、空気、水、及び土壌中の塩に由来する。一実施形態では、ニコチアナ植物の収穫された複数の部分の原料熱水洗浄が使用前に実施され得る。いくつかの実施形態では、収穫方法は、ニコチアナ植物の収穫された複数の部分を灰が低減した形態で提供することができる。例えば、ある特定の実施形態では、灰が茎中よりも根中により多く含まれている場合があり、したがって、いくつかの実施形態では、より高い割合の茎を収穫及び使用して茎対根の比率を変化させ、ひいては総複合灰を低減することが好ましくあり得る。
【0064】
本開示に従って、収穫されたニコチアナ種の植物の1つの部分または複数の部分が熱分解されて、タバコ由来のpy油を提供する。熱分解は、典型的には酸素の不在下にて高温で材料を加熱して、その中の有機物質を分解するプロセスである。一般に熱分解を用いて、植物またはその部分は、無酸素環境下で、慎重に制御された所望の温度(典型的には、様々なガス状揮発性及び/または蒸気状熱分解生成物を放出及び/または形成するのに十分な温度)まで加熱される。このように放出及び/または形成された揮発性生成物は、ガス状形態から急速に冷却され(すなわち、液体形態に凝縮され)、収集される(py油を得る)。py油の形成に加えて、熱分解は、典型的には、いくらかの非凝縮性で可燃性の熱分解ガス及び炭成分を産生する。本明細書で使用される場合、熱分解は、従来の熱分解、真空熱分解、及び急速熱分解などの方法を包含し得る。
【0065】
熱分解は、様々な方法で実施され得る。熱分解が実施され得る例示的な手段及び例示的な熱分解条件については、例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、Hollenbeckらの米国特許第3,106,473号、Hollenbeckの同第3,330,669号、及びWhiteらの同第4,596,259号、ならびにLinらの米国特許出願公開第2011/034712号を参照されたい。
【0066】
いくつかの実施形態では、流動床反応器を使用して熱分解プロセスを実施することができ、タバコバイオマス粒子(例えば、挽かれたタバコ茎)がガスによって熱砂流動床に導入され、バイオマス粒子の急速な加熱をもたらす。いくつかの実施形態では、循環流動床反応器が使用され、そこで、バイオマス粒子が導入される熱砂流動床が循環している。他の実施形態では、回転窯システム、回転円錐、または回転炉ユニットを使用して、熱分解を実施することができ、そこで、固体が混合され、回転行為によって反応器に輸送される。いくつかの実施形態では、オージェを使用することができ、そこで、熱砂及び熱分解されるバイオマスがスクリューの一端に供給され、このスクリューが砂とバイオマスを混合し、それらを一緒に反応器に運搬する。所与の反応器または熱分解システム内で、熱がタバコ植物成分(複数可)に直接または間接的に適用され得る。
【0067】
ある特定の実施形態では、攪拌機及びオージェを備えた供給システムが、反応器ユニットへのタバコバイオマスの調節された流れを送達する。反応器ユニットにおいては、不活性輸送ガス(例えば、窒素)を使用して、熱砂の調節された流れをバイオマスと接触させる。バイオマスが熱砂と混合すると、それは熱分解蒸気に分解され、未転化バイオマスは粉末状の炭となる。熱分解蒸気は、サイクロン式分離器中で砂及び炭から分離され、その後、該システムを通ってpy油収集システムへと移動する。収集システムにおいて、蒸気は急速に鎮められ、凝縮生成物がシステムから連続的に引き出され得る。
【0068】
熱分解油を産生する様々な商業施設が操業しており、これらの施設としては、Ensyn Technologies,Inc.(Canada)及びDynamotive Inc.(Canada)が挙げられ、より小規模な施設としては、American Science及びTechnology Corporation(Illinois,USA)、Biomass Technology Group of the Netherlands(Malaysia)、VTT Technical Research Center(Finland)、Canada Center for Mineral and Energy Technology(Canada)、ならびにNational Renewable Energy Laboratory(United States)、ならびにPytec Technologies(Germany)が挙げられる。
【0069】
記載のように、熱分解により、典型的に、揮発性有機化合物(凝縮されてpy油を提供する)、非凝縮性熱分解ガス、及び炭が産生される。産生される各材料の割合は、例えば、熱分解方法、熱分解されたバイオマスの特徴、及び反応パラメータ(例えば、温度、加熱速度、加熱時間、混合の程度、バイオマスの供給速度、圧力、及びガスの流量など)にも依存し得る。ある特定の実施形態では、様々な反応パラメータは変化され、油の収率を最大にするように最適化することができる。例えば、熱分解を実施する温度を変化させることができる。温度は、典型的には、少なくとも約350℃、少なくとも約375℃、少なくとも約400℃、または少なくとも約425℃である。熱分解のための典型的な温度は、約400℃~約600℃の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、温度は、この範囲の低温域、例えば、いくつかの実施形態では約425℃など、約400℃~約450℃であり得る。反応器内のバイオマスの滞留時間も、反応器内で秒単位から時間単位まで(例えば、約10秒~約10時間、例えば、約1~約5時間)変化し得る。熱分解プロセスの生成物及び/またはその収率に影響し得る他のパラメータとしては、加熱速度、温度、及び混合の程度が挙げられる。加熱速度は、典型的に、比較的速い。「高速熱分解」のためには、タバコ材料は、例えば、(約5分未満、約1分未満、約30秒未満、約20秒未満、約10秒未満、及び約5秒未満を含む)秒単位で材料が極めて素早く加熱されるように、既に温度にある予熱した熱分解区域に導入する。有利に、混合の程度は比較的高く、それにより、熱分解区域に導入した材料の全てが、同じ時間、同じ量の熱に付されるようになる。典型的に、均一な及び一貫した材料の加熱が提供される。圧力は典型的には制御しないが、比較的低い値に保つ。
【0070】
望ましい揮発性有機成分は、典型的に、(単一の凝縮器または反応器と関連している一連の凝縮器中で)凝縮されて、熱分解油を提供する。揮発性有機蒸気を鎮めるために使用する媒質は多種多様であり得、例えば、水及び/またはまたは非極性の非混和性液を含む媒質(例えば、収集したpy油自体)であってもよい。ある特定の実施形態では、水は、それがかくして得られたpy油の香味及び/または官能特徴に影響する見込みがないため、望ましい鎮静用媒質であり得る。一般的に、凝縮されたpy油を濾過して、灰及び/またはそれからの他の可能性のある汚染物質及び固体を除去することで、好ましい実施形態では、本発明のpy油が、事実上、実質的に純粋な形態で(例えば、非凝縮性粒子状物質を含まずに)、熱分解プロセスからの凝縮性材料のみを含むようにする。
【0071】
本開示はpy油の産生及び収集に焦点を当てるが、熱分解の他の生成物が、いくつかの実施形態では有用であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、炭は、単離して使用することができる(例えば、炭をガス化して灰を産生することができ、これは、高濃度のカリウム及び/またはリンを含有し得るため、肥料などの用途に使用され得る)。ある特定の実施形態では、熱分解プロセスにおいて産生された炭及び/またはガスをプロセス中で再利用することで、熱分解システムの操作に経済的便益を提供することができる。
【0072】
このように産生されたpy油は、いくつかの実施形態では、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの熱分解から生成された様々な化学物質(フルフラール及びメトキシフェノールなどのフェノール物質、ならびに糖由来の化学物質が挙げられるが、これらに限定されない)を含有し得る。ある特定の実施形態では、py油は、窒素系化学物質を更に含み得る。ある特定の実施形態においてpy油中で見出され得るある特定の具体的な望ましい化合物としては、バニリン、アセトバニリン、グアイアコール、及び2,6-ジメトキシフェノールが挙げられる。タバコバイオマスからの熱分解の全収率は様々であり得、py油の個々の構成成分も様々であり得る。ある特定の実施形態では、py油の収率は、熱分解されたバイオマスの総量を基準として、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、または少なくとも約50重量%である。
【0073】
ある特定の好ましい実施形態では、py油のベンゾ[a]ピレン(B[a]p)含有量は最小化される。例えば、ある特定の実施形態では、py油は、約100ppm未満のB[a]p、約50ppm未満のB[a]p、または約10ppm未満のB[a]pを含有する。有利に、py油は、検出可能な量のB[a]pを含有しない。いくつかの実施形態では、リグニンから産生されたpy油中でB[a]pが観察されたが、本開示の方法は、いくつかの実施形態において、驚くべきことにB[a]pをほとんどまたは全く含有しない、(リグニンを含有する)セルロース系タバコ材料から産出されるpy油を提供することができる。更に、py油は、望ましいことに、いくつかの実施形態において、クレゾール、フェノール、フルフラール、キシレン、及びメチルフェノールをほとんどまたは全く含有しない(例えば、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.1重量%未満、約0.01重量%未満、または検出可能限界を下回る、単独でのこれらの化合物のうちの1つ以上、及び約5重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.1重量%の組み合わせでのこれらの化合物)。
【0074】
熱分解油の特性は様々であり得る。例えば、このように産生されたpy油のpHは、いくつかの実施形態において、約3~約5(例えば、約3.5~約4.5)の範囲であり得る。典型的に、py油は、ある特定の実施形態では、煙様の、甘味のある、及び/またはバニラに似ているとして説明され得る望ましい官能特徴を有する。
熱分解油の産生及び単離の後、それは、いくつかの実施形態において、多様な適用で(例えば、そのまま、または希釈もしくは濃縮形態で)直接用いることができる。希釈及び濃縮方法は当業者に既知である。例えば、液体は、それと関連する溶媒(例えば、水)の少なくとも一部分を除去することによって、液体の溶解または分散成分を濃縮するように適合された様式で、加工することができる。故に、溶媒またはその一部分を除去することで、濃度が上昇した様々な化合物を有するpy油を提供することができる。
【0075】
他の実施形態では、熱分解油は、その中に含有される1つ以上の成分をより使用に適した(例えば、より濃縮された)形態で提供するように処理することができる。ニコチアナ植物またはその部分からの様々な化合物または化合物の混合物は、本明細書で提供する方法によって単離することができる。本明細書で使用される場合、「単離された成分」または「単離物」は、ニコチアナ種の植物またはその部分に由来するpy油から分離された化合物または化合物の複合混合物である。単離された成分は、単一の化合物、同様の化合物の同種混合物(例えば、香味化合物の異性体)、または異なる化合物の異種混合物(例えば、好ましくは望ましい官能属性を有する、異なる種類の様々な化合物の複合混合物)であり得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Coleman,IIIらの米国特許出願同第2011/0174323号、Coleman,IIIらの同第2011/0259353号、Dubeらの同第2012/0192880号、Dubeらの同第2012/0192882号、及びByrd,Jr.らの同第2012/0211016号における、単離されたタバコ成分及び単離技法の記述を参照されたい。
【0076】
所望の成分または所望の成分の混合物は、様々な手段によってpy油生成物から単離することができる。典型的な分離プロセスは、溶媒抽出(例えば、極性溶媒、有機溶媒、または超臨界流体を使用する)、クロマトグラフィー(例えば、分取液体クロマトグラフィー)、清澄化、蒸留、濾過(例えば、超濾過)、再結晶化、及び/または溶媒-溶媒分配)などの1つ以上のプロセスステップを含み得る。いくつかの実施形態では、ニコチアナ種の植物または部分は、例えば、ある特定の化合物を、より効率的な分離に使用可能な所望の化合物にするように前処理される。いくつかの実施形態では、複数の方法を使用して、所望の化合物を単離及び/または精製する。
【0077】
いくつかの実施形態では、単離された化合物またはそれらの混合物を、それらの化合物が化学変換を受けるような条件に付すことができる。例えば、ニコチアナ種の植物またはその部分から得られるpy油は、その中の様々な成分の化学変換を引き起こすように処理することができ、あるいは他の原料と混合することができる。タバコ材料、抽出物、または単離された化合物の化学変換または修飾は、そのタバコ材料、抽出物、または単離された化合物(複数可)のある特定の化学的及び物理的特性(例えば、その官能属性)の変化をもたらすことができる。例示的な化学修飾プロセスは、酸/塩基反応、加水分解、酸化、加熱、及び/または酵素処理によって実行され得、したがって、化合物は、様々な分解反応を受け得る。例示的な化学変換技法は、参照により本明細書に組み込まれる、Coleman,IIIらの米国特許出願同第2011/0174323号、及びColeman,IIIらの同第2011/0259353号に記載されている。
【0078】
1つの特定の実施形態では、py油またはその部分は、水素処理/「アップグレード」して、液体炭化水素燃料を産生することができる。水素処理は、例えば、油精錬所に対応した原料もしくはバイオ燃料を産生するため、または後に輸送燃料に変換することができる合成ガスの産生のための油の水素化脱酸素(HDO)を含み得る。水素化脱酸素において、熱分解油は、触媒の存在下で高い圧力にて水素によって処理される。HDOプロセスのための触媒は、当該技術分野で既知であり、遷移金属硫化物、炭化物、窒化物、オキシ窒化物、リン化物、貴金属、卑金属、及び金属酸化物などの、石油水素処理プロセスに使用される触媒に類似した従来の触媒が挙げられる。ある特定の例示的な触媒としては、CoMo/Al2O6、CoMoS/Al2O6、ReS2/ZrO2、及びNiMo/Al2O6が挙げられるが、これらに限定されない。この目的に有用であり得る様々な触媒については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、HeらのCatalysis for Sustainable Energy,28-52(2013)を参照されたい。他の実施形態では、燃料は、例えば、ゼオライトアップグレード(これにおいては、酸素が大気圧及び300℃~600℃の高温でCO2及びH2Oとして放出される)によって、熱分解油から産生することができる。
【0079】
py油を、任意選択で、本明細書に記載の他の単離ステップの代わりにまたはそれに加えて使用され得る更なる処理ステップに付すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、py油を、例えば、全てが参照により本明細書に組み込まれる、Bhattacharyyaらの米国特許公開第2007/0186940号、Reesらの同第2011/0041859号、及びJonssonらの同第2011/0159160号、ならびに2011年5月19日に出願されたByrdらの米国特許出願第13/111,330号に記載されているようなインプリントポリマーまたは非インプリントポリマーと接触させることができる。分子インプリントポリマーまたは非インプリントポリマーを用いる処理を使用して、py油のある特定の成分を除去することができる。
【0080】
ある特定の実施形態では、溶媒抽出を使用して、所望の成分(単数または複数)をpy油中の成分の混合物から単離する。例示的な抽出及び分離溶媒または担体としては、水、アルコール(例えば、メタノールもしくはエタノール)、炭化水素(例えば、ヘプタン及びヘキサン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びメチル-t-ブチルエーテル)、塩化メチレン、超臨界二酸化炭素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ニコチアナ種からの成分の抽出に有用な例示的な技法は、参照により本明細書に組み込まれる、Coleman,IIIらの米国特許出願同第2011/0259353号、及びByrd,Jr.らの同第2012/0211016号において記載または参照されている。
【0081】
かかる抽出プロセスの条件は様々であり得る。いくつかの実施形態では、py油は、1つ以上の溶媒と組み合わせて、混合物または二相システム(例えば、水を添加して1つの油性相及び1つの水性層を付与する場合)を形成することができる。様々な試薬を任意選択で抽出溶媒に添加することができる。いくつかの実施形態では、加工助剤を添加して、抽出を促進する。加工助剤は、所望の成分(複数可)の抽出溶媒への抽出を促進する任意の薬剤である。例えば、好適な加工助剤としては、鉱酸及び酵素が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤及び共溶媒を含むがこれらに限定されない様々な他の添加剤を、抽出プロセスにおいて使用することができる。
【0082】
混合物または二相システムは、いくつかの実施形態では、様々な温度及び圧力にて加熱される。ある特定の実施形態では、混合物または二相システムを高温に(例えば、室温を超えて)加熱して、py油から添加した溶媒への化合物の抽出をもたらすが、いくつかの実施形態では、室温で充分であり得る。ある特定の実施形態では、圧力及び温度を調整して、温度が、大気圧にて水(または他の溶媒)の沸点と比較して上昇するようにする。当業者は、液体の沸点がその圧力に関係しているために、それに応じて圧力及び温度を調整して材料の沸騰を引き起こすことができることを心得るであろう。抽出を達成するために必要な時間の量は、抽出が実施される温度及び圧力に部分的に依存する。例えば、いくつかの実施形態では、材料を高温に加熱すること、及び/または材料に加圧することは、抽出の速度を増加させる。いくつかの実施形態では、複数の抽出を実施して、それから追加の化合物を抽出することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Havkin-Frenkelの米国特許出願公開第2008/0254149号を参照されたい。
【0083】
ある特定の実施形態では、蒸留を使用して、所望の成分または所望の成分の混合物をpy油から単離することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの米国特許出願公開第2012/0192882号に記載の蒸留プロセスを参照されたい。蒸留は、いくつかの実施形態では、(希釈または非希釈形態の)py油を、py油の1つ以上の成分の上蒸留を引き起こすのに十分な時間及び温度で、蒸留プロセスに付すことを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬をpy油に添加して、所望の成分の蒸留を促進してもよい。除去によって蒸留される成分もしくは蒸留物のいずれか、またはその両方を本発明に従って使用することができる。様々な種類の蒸留、例えば、単蒸留、短経路(short path)蒸留、分別蒸留、蒸気蒸留、共沸蒸留、及び/または真空蒸留を用いることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、複数の連続分離プロセスを用いて、所望の様式でpy油を精製及び精錬することができる。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒抽出物または蒸留物を追加の分離ステップに付し、相対量のある特定の望ましい化合物、例えば、ある特定の香味または芳香のある化合物を増加させることなどによって、抽出物または蒸留物の化学組成物を変化させることができる。いくつかの実施形態では、抽出物または蒸留物は、濾過によって処理することができる。別の例として、上記プロセスのうちの1つ(例えば、溶媒抽出または蒸留)は、1つ以上のクロマトグラフ法と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、試料は、フラッシュクロマトグラフィーによって単離される化合物(複数可)と同様の条件下で溶出することが知られている1つ以上の化合物を除去するように最初に処理する。他の実施形態では、試料を溶解させ、クロマトグラフ分離に直接付すことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、分取液体クロマトグラフィーを使用して、ある特定の目的とする化合物をpy油またはその誘導体から単離及び/または精製する。いくつかの実施形態では、目的とする化合物(単数または複数)は、標準の溶出時間に基づいて、分取液体クロマトグラフィーを使用して単離する。様々な自動商用分取LCシステムが、Waters、Agilent Technologies、及びBio-Radを含む製造者から入手可能である。使用される分取LCシステムの特定のパラメータは、所望のレベルの分解能を達成するために、当業者によって変更され得る。例えば、溶媒は、目的とする化合物(複数可)を溶解するのに十分な任意の溶媒または溶媒の混合物であってもよい。この溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、石油エーテル、及び/またはヘキサンであってもよい。このシステムは、無勾配または勾配溶媒システムを用いて操作し得る(すなわち、時間の関数として2つ以上の溶媒の比率を変更する)。いくつかの実施形態では、溶媒システムは、混合物中に存在する目的とする化合物と他の化合物との間に最良の分解能を提供するように選択し得る。このシステムの流量は、例えば、約10mL/分~約100mL/分(例えば、約36mL/分)で変更してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、フラッシュクロマトグラフィーを使用して、ある特定の目的とする化合物をpy油またはその誘導体から単離及び/または精製する。フラッシュクロマトグラフィーシステムは、当該技術分野で既知であり、例示的なシステムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Stillら、J.Org.Chem.42:2923-2925(1978)、及びAndrewsの米国特許第4,591,442号において考察されている。様々な自動商用フラッシュクロマトグラフィーシステムは、Biotage、Teledyne Isco、Grace Davison Discovery Sciences、及びBuchiを含む製造者から入手可能である。カラムが典型的に、比較的大きな粒径を有し(例えば、約30~40μm)、より多量の試料(及びより濃縮された試料)を収容することができることにより、1回の注入当たりより多くの目的とする化合物(複数可)を単離することができるため、かなり大量の化合物を提供するためにはフラッシュクロマトグラフィーが望ましい場合がある。
【0087】
使用するフラッシュクロマトグラフィーシステムの特定のパラメータは、所望のレベルの分解能を達成するために、当業者によって変更され得る。例えば、溶媒は、目的とする化合物(複数可)を溶解するのに十分な任意の溶媒または溶媒の混合物であってもよい。この溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、石油エーテル、及び/またはヘキサンであってもよい。このシステムは、無勾配または勾配溶媒システムを用いて操作し得る(すなわち、時間の関数として2つ以上の溶媒の比率を変更する)。いくつかの実施形態では、溶媒システムは、混合物中に存在する目的とする化合物と他の化合物との間に最良の分解能を提供するために選択してもよい。このシステムの流量は、例えば、約20mL/分~約200mL/分(例えば、約150mL/分)で変更してもよい。
【0088】
フラッシュクロマトグラフィーは、十分な純度レベルで目的とする化合物(複数可)を提供する場合としない場合がある。ある特定の実施形態では、目的とする化合物(複数可)に対応する分画は、目的とする化合物(複数可)を十分な純度レベルで含む(すなわち、目的とする化合物(複数可)が単離物の十分な重量パーセントで存在する)単離物を付与するように収集、複合、及び濃縮され得る。他の実施形態では、得られた異なる分画は、別個に単離し、別個に使用することができる。本発明の単離された分画は、目的とする化合物(複数可)を、例えば、約75重量%超、約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、約95重量%超、約98重量%超、または約99重量%超の量で含むことができる。いくつかの実施形態では、フラッシュクロマトグラフィーから得られた分画を、分取液体クロマトグラフィーを使用して更に分解することができる。
【0089】
本開示に従うある特定の実施形態では、メチルtert‐ブチルエーテルによる抽出、次いでフラッシュクロマトグラフィーを用いて、煙様の官能特徴を呈するフェノール(例えば、グアイアコール及びシリンゴール)、及び焦がしたようなナッツ様の甘味のある官能特徴を呈する化合物(例えば、シクロテン、バニリン、及びピラジン)に富む分画を提供する。
【0090】
溶媒を蒸発させる熱処理、逆浸透膜処理、噴霧乾燥、または凍結乾燥などの溶媒除去の様々な方法を用いることができる。一実施形態では、濃縮プロセスは、通気型容器中の抽出液体を加熱して、水の一部分を蒸発させることを伴い得る。液体を加熱する温度及び圧力は様々であり得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの米国特許公開第2012/0152265号に記載の溶媒除去技法を参照されたい。
【0091】
本発明に従って得られるタバコpy油またはその誘導体の形態は様々であり得る。典型的に、py油またはその誘導体は、固体、液体、または半固体もしくはゲル形態である。配合物は、型枠、絶対形、または純形で使用することができる。その固体形態としては、噴霧乾燥形態及び凍結乾燥形態が挙げられ得る。液体形態としては、水性担体または有機溶媒担体内に含有される配合物が挙げられ得る。
【0092】
本発明のプロセスに従って生成された、タバコ由来のpy油、そのpy油から単離された成分の混合物、及びそのpy油から単離された個々の成分は、様々な組成物のための材料として有用である。かかるpy油及びその成分の使用は、概してタバコ組成物の文脈で説明されるが、そのような材料は、多くの他の種類の組成物において適用可能であり得ることに留意されたい。
【0093】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、タバコ由来のpy油、py油から単離された成分の混合物、またはpy油から単離された個々の成分は、タバコ組成物、特に喫煙物品または無煙タバコ製品に組み込まれるタバコ組成物に組み込まれる。本発明に従って、タバコ製品は、本発明に従って、1つ以上のタバコ由来のpy油、py油から単離された成分の混合物、及び/またはpy油から単離された個々の成分と組み合わされるタバコを組み込む。つまり、タバコ製品の一部分は、本発明に従って調製された何らかの形態のpy油またはその誘導体からなり得る。
【0094】
本明細書に記載のタバコpy油またはその誘導体をタバコ組成物に添加することで、タバコpy油またはその誘導体の性質、及びタバコ組成物の種類に応じて、種々の方法でタバコ組成物を強化することができる。例示的なpy油またはその誘導体は、タバコ製品に香味及び/または芳香を提供するのに役立ち得る(例えば、組成物は、タバコ組成物またはそれに由来する煙の官能特徴を改変することができる)。有利に、タバコpy油またはその誘導体は、タバコ製品に、とりわけ、甘味、煙様、バニラ様などの香味及び/または芳香を授けることができる。ある特定のタバコpy油またはその誘導体は、タバコ製品の1つ以上の伝統的な成分(例えば、香味剤)の代わりとして役立ち得る。
【0095】
本明細書に記載のタバコpy油またはその誘導体が添加されるタバコ製品は様々であり得、タバコまたはその何らかの成分を製品の使用者に送達するように構成または適合された任意の製品を含んでもよい。例示的なタバコ製品としては、喫煙物品(例えば、紙巻タバコ)、無煙タバコ製品、ならびに、ニコチン及び/もしくはタバコ材料、または使用中に燃焼されない他の植物材料を含有するエアロゾル生成デバイスが挙げられる。本発明のタバコpy油またはその誘導体のタバコ製品への組み込みは、例えば、油及び/もしくは誘導体をタバコもしくは他の植物材料に吸収させること、またはそうでなければ油及び/もしくは誘導体を担体材料と関連付けることによって、油または誘導体の担体としてタバコ材料または非タバコ植物材料を使用することを含み得る。本発明の配合物のための担体として役立ち得るタバコの種類は様々であり得、様々な乾燥タバコ材料(例えば、熱風乾燥もしくは空気乾燥タバコ)またはその部分(例えば、タバコラミナもしくはタバコ茎)を含む、本明細書において考察するタバコの種類のうちのいずれかを含むことができる。配合物が添加されるタバコ材料の物理的構成も様々であり得、刻まれた形態もしくは粒子状形態、またはシート(例えば、再構成タバコシート)の形態、または全葉形態にあるタバコ材料を含むことができる。
【0096】
したがって、本明細書で提供されるタバコpy油またはその誘導体は、いくつかの実施形態において、喫煙物品の製造における組成物として使用することができる。例えば、本発明に従って調製されたタバコpy油またはその誘導体は、ケーシング材料と混合され、ケーシング原料として、またはトップドレッシングとしてタバコに適用することができる。また更に、本発明のタバコpy油またはその誘導体は、紙巻タバコの製造プロセス中、紙巻タバコのフィルターに(例えば、フィルタープラグ、プラグラップ、もしくはチッピング紙に)組み込むか、または紙巻タバコ包装紙の、好ましくは内面に組み込むことができる。例えば、喫煙物品において使用されるタバコ単離物に関する説明及び参照は、参照により本明細書に組み込まれるDubeらの米国特許公開第2012/0192880号に記載されている。代表的なタバコブレンド、非タバコ成分、及びそれから製造される代表的な紙巻タバコも、上記のDubeらの参照文献に記載されている。
【0097】
図1を参照すると、紙巻タバコの形態であり、本発明の配合物を含有することができる喫煙物品のある特定の代表的な成分を保有する喫煙物品10が示される。紙巻タバコ10は、外接する包装材料16に含有される喫煙可能なフィラー材料(例えば、約0.3~約1.0gのタバコ材料などの喫煙可能なフィラー材料)の装入物またはロールの略円筒状ロッド12を含む。ロッド12は、従来「タバコロッド」と称される。タバコロッド12の末端は、喫煙可能なフィラー材料を露出するように開いている。紙巻タバコ10は、包装材料16に適用される1つの任意選択の帯22(例えば、デンプン、エチルセルロース、またはアルギン酸ナトリウムなどのフィルム形成剤を含むプリントコーティング)を有するとして示され、その帯は、紙巻タバコの長手方向軸に対して垂直方向に紙巻タバコに外接している。この帯22は、包装材料の内面(例えば、喫煙可能なフィラー材料に面する)またはあまり好ましくないが、包装材料の外面に印刷することができる。
【0098】
タバコロッド12の一端には、点火端18があり、口端20には、フィルター要素26が位置付けられる。フィルター要素26は、フィルター要素及びタバコロッドが末端間関係で軸方向に整列し、好ましくは互いに当接するように、タバコロッド12の一端に隣接して位置付けられる。フィルター要素26は、略円筒形状を有してもよく、その直径は、タバコロッドの直径に本質的に等しくてもよい。フィルター要素26の末端は、そこを通した空気及び煙の通過を許す。
【0099】
通気または空気希釈された喫煙物品は、それぞれがチッピング材料及びプラグラップを通じて伸長する、一連の穿孔30などの任意選択の空気希釈手段とともに提供され得る。任意選択の穿孔30は、レーザー穿孔技法などの当業者に既知の様々な技法によって作製することができる。あるいは、いわゆるオフライン空気希釈技法を(例えば、多孔質紙プラグラップ及び事前に穿孔されたチッピング紙の使用を通じて)使用することができる。本発明の配合物は、限定されないが、タバコ装入物の成分として、包装紙の成分として(例えば、紙に含まれるか、または紙の内部もしくは外部にコーティングされる)、接着剤として、フィルター要素成分として、喫煙物品の成分のうちのいずれかに、及び/または喫煙物品の任意の領域に位置するカプセル内に組み込むことができる。
【0100】
本発明の配合物は、いわゆる「電子タバコ」を含む、使用中に燃焼されることを意図しないニコチン及び/またはタバコ材料(もしくはそのなんらかの部分または成分)を含有するエアロゾル生成デバイスに組み込むこともできる。これらの種類の喫煙物品には、燃えてエアロゾルを提供する、及び/またはエアロゾル形成材料を加熱する燃焼可能な燃料源を用いるものがある。エアロゾル形成組成物を加熱するために、バッテリー駆動の加熱要素を用いるものもある。香味のある蒸気、目に見えるエアロゾル、または香味のある蒸気と目に見えるエアロゾルとの混合物を生成する種類の喫煙物品について説明する例示的な参照文献としては、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの米国特許公開第2012/0192880号に記載されるものが挙げられる。
【0101】
本発明の配合物は、粉末湿性嗅ぎタバコ(例えば、スヌース)、粉末乾燥嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ペレットタバコ小片、押出もしくは形成されたタバコストリップ、小片、ロッド、円筒、もしくはスティック、微細化砕粉、粉末小片及び成分の細かく分割もしくは粉砕された凝集体、フレーク状小片、成形タバコ小片、ガム、テープ状フィルムのロール、易水溶性もしくは水分散性フィルムもしくはストリップ、溶融性組成物、糖衣錠、トローチ、または外殻及び内部領域を有するカプセル状材料などの無煙タバコ製品に組み込まれ得る。様々な種類の無煙タバコ製品は、参照により本明細書に組み込まれる、Dubeらの米国特許公開第2012/0152265号に記載または参照されている。
【0102】
図2を参照すると、本開示に従う配合物を含むタバコ製品の代表的なスヌースの種類が示される。特に、
図2は、無煙タバコ組成物44を含有する水透過性外部パウチ42を有する無煙タバコ製品40を例示する。このタバコ製品の成分のうちのいずれかは、本明細書に記載のタバコpy油及び/またはその誘導体を含み得る(例えば、パウチ裏地の内部もしくは外部、またはそこに含有される無煙タバコ組成物の一部分)。
【0103】
本発明の配合物の使用から利益を享受することができる多くの例示的な無煙タバコ組成物は、本発明のタバコpy油またはその誘導体の担体として役立ち得る、刻まれた、または粒子状のタバコ材料を含む。本発明の無煙タバコ組成物は、水溶性ポリマー結合剤材料及び任意選択で、使用中に口腔内でゆっくりと分解する溶解性組成物を提供する他の原料を含むこともできる。ある特定の実施形態では、無煙タバコ組成物は、口腔内で(単なる溶解とは対照的に)溶融する溶融性組成物を提供する脂質成分、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Cantrellらの米国特許公開第2012/0037175号に記載される組成物を含むことができる。
【0104】
1つの特定の無煙タバコ製品の実施形態では、本発明の組成物を、ジャガイモ、ビーツ(例えば、甜菜)、穀物、豆、リンゴなどから選択される植物材料などの非タバコ植物材料に添加する。非タバコ植物材料は、加工形態で使用することができる。ある特定の好ましい実施形態では、非タバコ植物材料は、抽出形態で使用されてもよく、したがって、ある特定の溶媒可溶性成分の少なくとも一部分は、その材料から除去される。非タバコ抽出植物材料は、典型的に高度に抽出されており、これは、相当量の植物材料の水溶性部分が除去されたことを意味する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Beesonらの米国特許公開第2011/0247640号を参照されたい。
【0105】
更なる原料は、本発明に従う無煙タバコ組成物と混合するか、またはそうでなければそこに組み込むことができる。原料は人工的なものであり得るか、あるいはハーブもしくは生物供給源から得られ得るか、またはそれらに由来し得る。例示的な種類の原料としては、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、天然甘味料(例えば、果糖、スクロース、グルコース、マルトース、バニリン、エチルバニリングルコシド、マンノース、ガラクトース、ラクトースなど)、人工甘味料(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセサルフェームK、ネオテームなど)、有機及び無機フィラー(例えば、穀物、加工穀物、膨化穀物、マルトデキストリン、デキストロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ラクトース、マニトール、キシリトール、ソルビトール、微細化セルロースなど)、結合剤(例えば、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の修飾されたセルロース型の結合剤、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、デンプンベースの結合剤、アラビアガム、レシチンなど)、pH調整剤もしくは緩衝剤(例えば、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、ならびに他のアルカリ金属緩衝剤、例えば、金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウム、または金属重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウムなど)、着色剤(例えば、カラメル着色料及び二酸化チタン等を含む染料及び色素)、保湿剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコールなど)、ある特定の酸/塩基複合物、口腔ケア添加剤等の泡立ち材料(例えば、タイム油、ユーカリ油、及び亜鉛)、保存剤(例えば、ソルビン酸カリウムなど)、シロップ(例えば、ハチミツ、高果糖コーンシロップなど)、分解助剤(例えば、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、前糊化コーンスターチなど)、香味剤及び香味混合物、抗酸化剤、ならびにそれらの混合物が挙げられる。例示的な封入添加剤は、例えば、参照により本明細書に既に組み込まれているAtchleyの国際公開第2010/132444号に記載されている。また、参照により本明細書に組み込まれる、Huntらの米国特許公開第2012/0055494号、及びByrdらの同第2012/0199145号に記載されている、無煙タバコ原料も参照されたい。
【0106】
本開示に従う電子喫煙物品200の例示的な実施形態を
図3に示す。ここで例解するように、制御体202は、制御構成要素206、フローセンサ208、電池210、及びLED212を含み得る筐体201から形成され得る。電子喫煙物品はまたカートリッジ204を含んでもよく、このカートリッジ204は、貯蔵部に保管されているエアロゾル前駆体組成物を加熱器234(例えば、輸送要素の少なくとも一部分の周りに巻き付けられ得る抵抗性電熱線)へと吸い込むまたは輸送するように適合された輸送要素236と流体連通している貯蔵部244を封入している筐体203で形成され得る。例示的な貯蔵部及び輸送要素は、2013年3月13日出願の米国特許出願整理番号第13/802,950号に開示されており、例示的な加熱器は、2012年12月7日出願の米国特許出願整理番号第13/708,381号に開示されており、これらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。開口部228は、その口端205にてカートリッジ筐体203中に存在して、カートリッジ204からのエアロゾルの放出を可能にし得る。かかる構成要素は、制御体及び/またはカートリッジに存在し得る構成要素の代表的なものであり、本開示が包含する構成要素の範囲を限定するようには意図されない。
【0107】
カートリッジ204は、制御体突出部224とカートリッジ雌端子240との間の圧入係合を通じて制御体202と係合するように適合されてもよい。かかる係合は、制御体202とカートリッジ204との間の安定した接続を促進し得るだけでなく、制御体中の電池210及び制御構成要素206とカートリッジ中の加熱器234との間の電気接続も確立し得る。他の種類の接続(例えば、ねじ山接続)も包含される。電子喫煙物品200は、例えば、2013年3月15日出願の米国特許出願整理番号第13/841,233号に記載されているように連結器において提供され得る吸気部のために適合されてもよく、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。カートリッジ204はまた、IC、メモリ構成要素、センサ、または同様のものを含み得る1つ以上の電子構成要素250を含んでもよい。電子構成要素250は、制御構成要素206と通信して入力を提供するように適合されてもよい。例えば、それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2012年10月8日出願の米国特許出願整理番号第13/647,000号、及び2013年3月14日出願の同第13/826,929号を参照されたい。
【0108】
電子喫煙物品は、電子エアロゾル送達デバイスの形成に有用な種々の組み合わせの構成要素を包含することができる。例えば、2012年6月28日出願の米国特許出願整理番号第13/536,438号に開示されている複数のエアロゾル化可能な材料の制御可能な送達のための貯蔵部及び加熱器システム、2012年9月4日出願の同第13/602,871号に開示されているマイクロヒータ、2012年3月28日出願の同第13/432,406号に開示されている炭素系カートリッジ及びその構成要素、2012年9月5日出願の同第13/603,612号に開示されている使い捨てカートリッジ、2013年1月30日出願の同第13/754,324号に開示されているものなどのエアロゾル前駆体輸送要素、2013年3月15日出願の同第13/840,264号に開示されているアダプタなどの充電構成要素、2013年7月19日出願の同第13/946,309号に開示されているものなどの振動構成要素、及び同第2010/0028766号に開示されているものなどの電池を参照する。エアロゾル前駆体組成物は、例えば、多価アルコール、水、ニコチン、及び香味剤(例えば、メンソール、及び本発明のpy油またはその誘導体)を含むことができる。代表的な種類のエアロゾル前駆体組成物は、Sensabaugh,Jr.らの米国特許第4,793,365号、Jakobらの同第5,101,839号、Zhengらの米国特許公開第2013/0008457号、及びChemical and Biological Studies on New Cigarette Prototypes that Heat Instead of Burn Tobacco,R.J.Reynolds Tobacco Company Monograph(1988)に記載されている。前述の文書の全ての開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
タバコ組成物またはタバコ製品に組み込まれるタバコpy油またはその誘導体の量は、油または誘導体の所望の機能、油または誘導体の化学的構成、及び油または誘導体が添加されるタバコ組成物の種類に応じて異なり得る。タバコ組成物に添加されるタバコ油または誘導体の量は異なり得るが、典型的に、組成物が添加されるタバコ組成物の総乾燥重量を基準として、約50重量パーセントを超過しない。例えば、タバコ組成物に添加される油または誘導体の量は、タバコ組成物の総乾燥重量を基準として、約0.25重量パーセント~約25重量パーセント、または約1重量パーセント~約10重量パーセントの範囲内であってもよい。
実験
【0110】
本発明の態様は、以下の実施例によってより完全に説明され、本発明のある特定の態様を例解するように記載されるが、それを限定すると見なされるものではない。
【実施例】
【0111】
実施例1:タバコのベンチスケール熱分解
タバコ原料(挽かれたタバコ茎または挽かれたタバコ根)を輸送床反応器に供給し、電気的熱追跡システムを使用して、砂及び窒素輸送ガスに熱が供給される。オージェを使用して予熱した砂を反応器に移し、担体ガスを使用して反応器まで輸送し、そこで流入する原料(タバコ材料)と接触し、原料を蒸発させる。砂、蒸気、炭、及びガスは、第1次分離ユニット(サイクロン)を通過し、ここで砂が回収される。炭、ガス、及び蒸気は、サイクロンを出て、2つの更なる固体分離ユニットを通過して、炭及びガスを回収し、蒸気は、液体回収システムにおいて分離される(外部の香味が製品に与えられていないことを確実にするために、凝縮媒質、例えば水と直接的に接触させることによって)。
【0112】
根は高い分子量の化合物を含有する可能性が高いという予測のため、反応器を、タバコ根試料の場合はタバコ茎試料の場合(503.5℃)よりも高い温度(551.5℃)で運転する。タバコ茎試料の場合、圧力は2.6psigであり、凝縮器温度は16.8℃であり、反応器滞留時間は221.4ミリ秒であり、砂の供給に対する比率は47:1であり、供給量は3.1kgであり、平均供給速度は2.1kg/時間であり、総運転時間は1.47時間である。タバコ根試料の場合、圧力は3.8psigであり、凝縮器温度は17.6℃であり、反応器滞留時間は221.7ミリ秒であり、砂の供給に対する比率は41:1であり、供給量は5.8kgであり、平均供給速度は2.4kg/時間であり、総運転時間は2.42時間である。
【0113】
これらの運転からの液体回収は、大量の橙色の水様の生成物(「液体水性分画」)及び濃厚な粘性の黒色の生成物(「液体非水性分画」)を含み、これらは互いに非混和性である。両方の分画が煙様の官能特徴を有する。これらの分画のB[a]p含有量は非常に低い。本明細書に記載の方法のうちの多くに従う使用に対しては液体水性分画が望ましいが、ある特定の用途には液体非水性分画が有用であり得る。タバコ原料についての秤量した湿気及び灰を含まない液体収率は、挽かれたタバコ茎の場合、54.3重量%、及び挽かれたタバコ根の場合、42.9重量%であった。
【0114】
実施例2:オージェ設備におけるタバコ茎粉塵の熱分解
タバコ茎粉塵を、オージェ熱分解設備中、N2雰囲気下で熱分解する。このプロセスにおいて産生された液体バイオ油を凝縮器中に収集し、低温で維持する。バイオ油のpHは、約3.7~4.2の範囲内である。タバコ茎粉塵からのバイオ油の全収率は、約16%~約39%の範囲内である。
【0115】
熱分解温度の影響を研究し、最高収率(39%)は低温(すなわち、約425℃)で達成されることを見出した。プロセスパラメータ(例えば、熱分解温度、流量、及び供給速度)の更なる最適化により、更にタバコ茎粉塵からのバイオ油の収率を強化することができると考えられる。
【0116】
このようにして得られたpy油は、甘味のある煙様の官能特性を有すると特徴付けられる。ガスクロマトグラフィー(GCMS)を使用して、このようにして得られたバイオ油の化学的構成を評価する。バイオ油は、タバコバイオマスの、セルロース(フラン及びシクロペンタン系化合物)、ヘミセルロース(フルフラール系化合物)、及びリグニン分画(フェノール化合物)の熱分解によって生成され数個の化合物を含有することを示した。様々な窒素系化学物質も特定した。特に、py油のB[a]p含有量は非常に低い。元素分析に基づき、タバコ油の化学式は、C2.87H6.32O3.8N0.146と表すことができる。熱分解条件は、組成物及び各構成要素の収率に影響することが指摘され、熱分解条件は、ある特定の構成要素の最大収率を獲得するように調整できるであろう。沸点分析は、py油構成要素の大部分が約400℃未満の沸点を有することを示す。
【0117】
バイオ油産生中に産生された炭は、それを空気下にある箱型炉において825℃でのガス化に数時間付すことによって別個に処理し、その間、炭の色は黒色から淡灰色に変化した。ガス化により22.5%の灰を得て、これを、走査電子顕微鏡法(SEM)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、及び誘導結合プラズマ(ICP)によって分析する。灰は炭よりも多孔性であることがSEMによって指摘され、灰の約50%は、EDXによって検出され、ICPによって確定された通り、カリウム(K)、リン(P)、塩素(Cl)、及び硫黄(S)で構成される。
【0118】
実施例3:タバコ由来のリグニンの熱分解
タバコ茎をパルプ化し、分別プロセスを使用して、リグニンをタバコバイオマスから正確に分離する。これにより2種類のリグニンが提供される。蒸留されたリグニンは、分別プロセスから得られる濃縮溶液の蒸留後に得られた純粋なリグニンである。沈殿したリグニンは、リグニン塩を産生するためにCaO及びNaOHを使用して沈殿させた分別濃縮溶液からのリグニンである。
【0119】
蒸留されたリグニンを挽いて小粒子にし、高速熱分解ユニットを使用して熱分解に付す。リグニンは、供給器ユニットの反応器への近接性のせいで溶融する場合が多いため、供給器ユニットを通して粉末化リグニンを挿入することは困難である。したがって、リグニンを冷たい反応器の内部で砂と混合し、その後、熱を所望の温度に上昇させて、リグニンを蒸発させ、熱分解プロセスを開始する。したがって、オージェ熱分解ではなく流動床熱分解のみを使用した(供給器温度はバブリング床反応器の供給器よりも高いため)。沈殿したリグニン塩を濾過し熱分解の前に乾燥させ、蒸留したリグニンとは異なり、リグニン塩は熱分解条件下で溶融しない。したがって、リグニン塩は、供給器を通して熱分解反応器へと連続的に注射する。
【0120】
熱分解を450℃~600℃の範囲の温度下のN2雰囲気下で実行し、比較のために、1つの実験を水素下で、550℃で実行する。液体バイオ油を凝縮器中に収集すると、バイオ油の収率は約8%~約24%である。Ca-リグニン塩は約24.5%のpy油の収率を産生した。
【0121】
リグニンpy油をGCMSによって分析する。リグニンpy油中で特定された主要な化合物は、グアイアコール、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールを含む。B[a]pの正確な量は測定されなかったが、リグニンpy油が並外れて高いレベルのB[a]pも含有することが指摘される。600℃で実行した試験は、全化合物をはるかに低いレベルで産生したが、それ以外、温度範囲(450℃~550℃)、水素または窒素雰囲気、及びリグニンの形態は、リグニン由来のpy油の構成に影響をほとんど及ぼさない。リグニンバイオ油は、比較的低いレベルのバニリンを含み、バニリンの最高収率は、550℃での窒素化で、蒸留したリグニンから得られた。リグニン塩は、いかなる感知できる収率のバニリンも産生しなかった。
【0122】
実施例4:バレー茎py油の抽出及び分離
実施例2に従って産生されたpy油を更に加工して、報告されている煙様の甘味のある官能特性を保有する分画を単離する。第1の試験的抽出ステップでは、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を用いてpy油を抽出し、有機層を単離し濃縮する。第2の(代替的な)試験的抽出ステップでは、硫酸を使用してpy油をpH3まで酸性化し、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を用いて抽出し、その後、有機層を単離し濃縮する。第3の(代替的な)試験的抽出ステップでは、重炭酸ナトリウムを使用してpy油をpH8まで塩基性化し、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を用いて抽出し、その後、有機層を単離し濃縮する。
【0123】
濃縮した各有機層をGC-MSによって分析し、その結果を粗py油について得たものと比較する。フェノール含有量の減少が酸性化及び塩基性化した材料について観察され、それに応じて第1の試験的単離プロセスを使用して更なる研究を実施した。第1の試験的抽出方法を使用したMTBE抽出後の収率は、小規模(25mL)で5%、及び大規模(1L)で収率12.3%であった。1Lの抽出から得られた抽出された材料をフラッシュクロマトグラフィーに付し、3つの異なる分画を単離し、これらの分画は、1)フェノール、グアイアコール、4-メチルグアイアコール、ジメチルフェノール、4-エチルフェノール、4-エチルグアイアコール、及びp-クレゾール、2)シリンゴール、1,2-ベンゼンジオール、4-メチル-1,2-ベンゼンジオール、2-フランメタノール、及び4-メチルシリンゴール、及び3)シクロテン、3-メトキシ-1,2-ベンゼンジオール、1,2-ベンゼンジオール、2,5-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-フラノン、バニリン、2,3-ジメチル-2-シクロペンタン-1-オン、3-エチル-2-シクロペンタン-1-オン、2-エチルピラジン、及び2-エチル-6-メチルピラジンに対応する。これらの分画は、単離され、別個に使用されるか、または共に使用するために組み合わせられ得る。この加工法により、煙様のフェノール(例えば、グアイアコール及びシリンゴール)ならびに甘味のある焦がしたようなナッツ様の化合物(例えば、シクロテン、バニリン、及びピラジン)に富んだ分画の単離が可能となる。
【0124】
本発明が属する分野の当業者であれば、前述の説明に提示される教示の利益を有する、本発明の多くの修正及び他の実施形態を思い付くであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないこと、ならびに修正及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書において特定の用語が採用されているが、これらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定することを目的としてはいない。