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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】原子炉用核燃料の燃料混合物への添加
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/58 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
G21C3/58
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021504424
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 SK2018000010
(87)【国際公開番号】W WO2020022964
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】PP67-2018
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(73)【特許権者】
【識別番号】521031512
【氏名又は名称】ウエスト リアリティ、 エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファイ、ペーター
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521494(JP,A)
【文献】特開平08-054484(JP,A)
【文献】特開2005-030817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266112(US,A1)
【文献】特開平08-122487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/58
G21C 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉に使用されるウラン核燃料混合物であって、
カドミウム同位体である、



及び/又は、
水銀同位体である、

とからなる混合物を含み、
前記ウラン核燃料混合物に含まれるカドミウム同位体は、前記の



であり、
前記ウラン核燃料混合物に含まれる水銀同位体は、前記の

である、ウラン核燃料混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムの安定同位体と水銀の安定同位体を使用した、原子炉に割り当てられた核燃料の混合物のための添加物、続いて、原子炉で使用される核ウラン燃料の燃料混合物の元の成分の核分裂連鎖反応中に生成された中性子による、これらの安定な天然同位体の核変換に関する。
【背景技術】
【0002】
核ウラン型原子炉の場合、これまで使用されてきた核燃料の燃料混合物は、ウラン鉱床を含む現場で採掘されるウランの2種類の天然に存在する安定同位体からのウラン単体からなる。
【数1】
【0003】
同位体は、同じ陽子数=元素の原子核内の同じ陽子数(ウランの場合、この数は原子核内の92個の陽子)と原子核内の異なる中性子数を持つ元素である(
【数2】

同位体の場合、原子核内の中性子数は、143であり、
【数3】

同位体の場合、原子核内の中性子数は、146である)。原子核内の陽子と中性子の合計は、原子核内における核子数を示す(
【数4】

同位体の場合は235、
【数5】

同位体の場合は238である)。自然条件下では、ウラン同位体は次のように存在する:
【数6】

天然ウラン全体の0,72%および
【数7】

天然ウラン全体の99,274%。中性子照射後、これらの2種類の同位体は、原子炉内で2つのまったく異なるタイプの反応を起こす。
【0004】
1)いわゆる核分裂性ウラン同位体、具体的には、
【数8】

によって引き起こされる核分裂連鎖反応は、式[1]に従って、中性子照射後に核分裂連鎖反応を引き起こす。
式[1]:
【数9】
【0005】
これは、2.5~3%、場合によっては最大5%まで濃縮されたこの同位体混合物が、プロセスの開始時に中性子の影響にさらされ、これにより、核分裂連鎖反応が開始され、この同位体の原子核が2種類のほぼ同じサイズの核に分裂するとともに、2種類の元素が発生する(この場合、不安定なクリプトンとバリウムの2種類の同位体であり、これらは既知の式に従って、さらに崩壊し、放射性廃棄物と呼ばれる)ことを意味する。
【0006】
この崩壊では、平均して3つの中性子が生成され、160.5MeVの熱が放出される。この熱は、原子炉の一次回路の水を加熱するために使用され、熱交換器を介して、原子炉の二次回路の水をさらに加熱し、蒸気に変換して、蒸気発生器のタービンを回転させて発電する。生成された3つの中性子のうち、1つは核分裂連鎖反応を繰り返すために使用される。この1つの中性子が核分裂性同位体
【数10】

と反応してさらに分裂するため、反応を制御したままにするには、他の2つの中性子を封じ込める必要がある。これらの2つの中性子は、別のウラン同位体、(具体的には、核分裂性ではない
【数11】

同位体)によって捕捉され、減速反応を引き起こす(これは、さらなる同位体が増倍および増殖され、新しい核分裂性同位体が形成されるため、増倍または増殖反応とも呼ばれる)。
【0007】
2)減速(増倍または増殖)核反応は、核分裂反応から発生する残りの2つの中性子が、式[2]で説明されている反応に従って、これらの中性子を原子核に吸収するウラン同位体、具体的には
【数12】

によって捕捉される。そうすると、もはや核分裂連鎖反応は起こらなくなる。しかしながら、不安定で電子を放出(ベータマイナス放射線)する新しいウラン同位体
【数13】

に変化し、ネプツニウム同位体、具体的には
【数14】

に変換されるだろう。これもまた不安定であり、追加の電子を放出(ベータマイナス放射線)し、かなり安定なプルトニウム同位体、具体的には
【数15】

に変換されるだろう。これもまた、核分裂性であり、発電(中性子源でもあるため)や軍事用途、特に核プルトニウム爆弾の製造にも使用される。プルトニウムはまた、非常に有毒であり、販売されていない。
式[2]:
【数16】
【0008】
以前の技術の欠陥:
1)軍事目的でのプルトニウムの誤用の可能性
2)作り出されたプルトニウムの高い毒性
3)プルトニウムの商業利用の不可能性
4)ほとんどが廃棄物と考えられる生成した中性子の不十分な評価
5)発電の経済効率の低下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の欠点および不利な点は、本発明による核燃料の燃料混合物の原子炉への提案された添加によって本質的に排除される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その本質とは、添加物が、核燃料または核燃料に添加されること、および安定カドミウム同位体、具体的には、
【数17】

【数18】

同位体からなることである。これらのカドミウムの天然安定同位体、元のウラン同位体
【数19】

からなる核ウラン燃料成分の核分裂連鎖反応から生じる中性子によって、安定な銀同位体、具体的には、
【数20】

【数21】

に変換される。また、これらは軍事用プルトニウム、具体的には、
【数22】

同位体の生成を部分的に置き換えるものであり、生成された安定銀同位体は商業的に使用できる。
【0011】
および/または
原子炉用核燃料の燃料混合物への上記添加物は、水銀の安定同位体、具体的には、安定な天然の
【数23】

同位体からなる。ウラン同位体
【数24】

からの核ウラン燃料の元の成分の核分裂連鎖反応中に発生する中性子によって、安定金同位体、具体的には
【数25】

へ核変換される。また、それらは軍事用のプルトニウム、具体的には、
【数26】

同位体の形成を部分的に置き換え、それによって生成された安定な金同位体は、商業的に使用できる。
【0012】
現在、ほとんどの中性子は、原子炉制御棒に捕獲され、そこで吸収される。あるいは、中性子の一部を使用してプルトニウム同位体、
【数27】

同位体を生成する。これは、発電するため再度使用され得る。ウラン同位体
【数28】

も同様である。そして、原子爆弾の製造にも使用され、これは原子力の平和利用には望ましくないプロセスである。プルトニウム同位体の生成に加えて、ほとんどの中性子は使用されておらず、経済的効果はなく、軍事的使用の可能性があるため、プルトニウムの販売は不可能であると言える。
【0013】
本発明の利点は、核分裂核反応中にウラン同位体
【数29】

から生成された中性子が、技術的および経済的観点の両方から(式[1]によれば)、より効率的に利用されるという事実にある。
【0014】
核分裂炉で使用するための燃料混合物の提案:
本発明の技術的特徴によれば、現在使用されているウラン核燃料の燃料混合物に添加された添加物は、天然に収穫されたウラン鉱石に見られるウラン同位体、特に
【数30】

からなり、天然ウラン全体から、
【数31】

は0,72%および
【数32】

は99,274%同位体が自然に発生する。この鉱石は、ウラン
【数33】

の核分裂性同位体をより高い濃度へ、ウラン混合物全体の2.5%~3%、場合によっては5%ものパーセンテージ値へ濃縮される。
【0015】
本発明の利点は、核分裂核反応中にウラン同位体
【数34】

から(式[1]に従って)生成された中性子が、技術的および経済的によりよく利用されることである。
【0016】
こで、利用の可能性は、原子炉での発電中に生成された中性子源が十分に使用されていない(軍事用の核分裂性
【数35】

の製造を除く)という事実によって引き起こされる。
【0017】
本発明は、核燃料の混合物の新しい組成を提供する:
【0018】
核燃料の現在の混合物+以下からなる添加物:
- 2種類の天然カドミウム同位体、具体的には、
【数36】


【数37】

であり、中性子1つを添加後、不安定なカドミウム同位体:
【数38】


【数39】

に変換される。これらの2種類の不安定な同位体は、電子が放出された(ベータマイナス放射)後、核変換で次の式[3]に従って、2種類の銀の安定同位体、
【数40】


【数41】

に変化する。
式[3]:
【数42】

【数43】

【数44】

【数45】

-安定な天然水銀同位体、具体的には、
【数46】

は、中性子1つを添加後、不安定な水銀同位体
【数47】

に変換され、電子(ベータマイナス放射線)の照射後に核変換において、安定な金同位体
【数48】

に変換される。これらの反応は、式[4]に従って生じる。
式[4]:
【数49】

【数50】
【発明を実施するための形態】
【0019】
例1:
カドミウム同位体、具体的には
【数51】


【数52】

は、原子炉で使用されているウラン核燃料の現在使用されている混合物に、添加される。これらは、式[1]に従って、核分裂反応中に余剰として生成される中性子2つを添加後、2種類の不安定なカドミウム同位体
【数53】


【数54】

に変換される。これらの2種類の不安定なカドミウム同位体は、式[3]で説明されているように、電子線照射(ベータマイナス放射線)後、核変換中に2種類の安定な銀同位体
【数55】


【数56】

に変換される。
式[3]:
【数57】

【数58】

【数59】

【数60】

このように、元のカドミウム同位体よりも、経済的に価値のある銀の安定同位体が原子炉で生成される。
【0020】
例2:
現在使用されている原子炉用核ウラン燃料の混合物と同様に、水銀同位体が添加される。具体的には、
【数61】

が、中性子1つを添加後、不安定な水銀同位体
【数62】

に変換される。そして、その核変換中に、この不安定な水銀同位体は、電子が放出された(ベータマイナス放射)後、安定な金同位体
【数63】

に変換される。これらの反応は、式[4]に従って生じる。
式[4]:
【数64】

【数65】
【0021】
このようにして、原子炉内で安定な金同位体が生成される。また、これは、元の水銀同位体よりも経済的にもっと価値がある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
実際に、本発明はすべてのアクティブな原子炉で使用することができ、その設置性能は370基の1GW原子炉に相当する。本発明により、毎年さらなる1480トンの金を生産することが可能である。これは、3600トンの天然水銀の年間採掘によってのみ可能であり、そこから5トンの
【数66】

同位体を得ることができる。この同位体から、中性子の作用により、ほぼ同量の安定な金同位体
【数67】

を生成することができる