(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】データベースのための通信の方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20230620BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
(21)【出願番号】P 2021507566
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073888
(87)【国際公開番号】W WO2020069819
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】セルヴォ,エム・オーギュスタン
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0106847(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0262142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0282699(US,A1)
【文献】特開平05-061984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザと特許のデータベースとの間の通信の方法、および同じく、特許/特許出願に関連する関心のある情報に関するデータの表示および対話式探究の方法であって、
- アクセス・インタフェースによって、前記アクセス・インタフェースに前記ユーザによって入力される少なくとも1つの選択基準に基づいて、特許の前記データベースに問い合わせることができるリクエストを生成するステップと、
- 前記リクエストによって前記データベースに問い合わせるステップ、および前記データベースによって見出された前記特許/特許出願のための文献データをダウンロードするステップであって、前記ダウンロードされる文献データは、技術的カテゴリに関するデータを含む、ステップと、
- 前記文献データを処理するステップであって、前記処理するステップは共起の分析を含み、共起の前記分析は、見出されたすべての前記特許/特許出願に対する前記技術的カテゴリに関するデータの共起の数の決定を含む、ステップと、
- ノードおよびそれぞれ3つのノード間の複合リンクを有する対話式ネットワーク・グラフの形態
での表示であって、共起の前記分析の結果および/または解釈を対話式の図形および/または文字形態で表示するステップと
を含む、コンピュータの動作方法。
【請求項2】
共起の前記分析は前記技術的カテゴリに関するデータの対に関する、請求項1に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項3】
共起の前記分析は、前記技術的カテゴリに関するデータのトリプレットに関する、請求項1または2に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項4】
前記表示は、制御対象を前記ユーザが利用することができるようにするステップを含み、前記制御対象の起動または操作は、修正されたパラメータを使用した共起の前記分析の新しい実行をもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項5】
前記表示は、制御対象を前記ユーザが利用することができるようにするステップを含み、前記制御対象の起動または操作は、前記データベースによって見出された前記特許/特許出願のフィルタリング、および特許/特許出願の対応するサブ-セットの生成をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項6】
前記制御対象の前記起動または前記操作は、前記特許/特許出願の前記サブ-セットに限定された前記技術的カテゴリに関するデータの共起の分析の実行を同じくもたらす、請求項5に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項7】
前記表示は、二次元または三次元のネットワーク・グラフの形態における、共起の前記分析の結果の表示を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項8】
技術的カテゴリに関する前記データは、階層的分類のシステムによる技術的分類記号、例えばIPC、CPCまたはUSPC分類記号を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項9】
前記表示は、ノードおよびそれぞれ2つのノード間のリンクを有する対話式ネットワーク・グラフの形態における、共起の前記分析の結果の表示を含み、前記ノードは技術的分類記号を表し、また、2つのノード間の前記リンクは、接続されている前記2つのノードに対応する前記技術的分類記号の共起を表す、請求項8に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項10】
個々のノードの視覚属性は、前記対応する技術的分類記号の出現の数を反映し、また、
個々のリンクの視覚属性は、接続されている前記2つのノードに対応する前記技術的分類記号の共起の数を反映する、請求項9に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項11】
前記ノードおよび/または前記リンクは、前記ユーザによるアクションに引き続いて、対話式ネットワーク・グラフの形態における、共起の新しい分析の結果の新しい表示と共に、修正されたパラメータを使用した共起の前記分析の新しい実行をトリガするように構成された対話式要素を構成する、請求項9または10に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項12】
前記ノードおよび/または前記リンクは、前記ユーザによるアクションに引き続いて、前記データベースによって見出された前記特許/特許出願のフィルタリング、特許/特許出願の対応するサブ-セットの生成、前記特許/特許出願の前記サブ-セットに限定された前記技術的カテゴリに関する前記データの共起の分析の実行、および対話式ネットワーク・グラフの形態における、前記サブ-セットに限定された共起の前記分析の結果の表示をトリガするように構成された対話式要素を構成する、請求項9~11のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項13】
共起の前記分析は技術的分類記号のトリプレットに関しており
、前記ノードは技術的分類記号を表し、また、3つのノード間の前記複合リンクは、接続されている前記3つのノードに対応する前記技術的分類記号の共起を表す、請求項8~12のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項14】
表示されることが意図され
た対話式グラフの表現は、前記
対話式グラフの複雑性を考慮して人工知能アルゴリズムによって生成される、請求項8~13のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項15】
対話式グラフ
の表現は、前記ノードおよび/またはリンク関連するラベルを含み、前記ラベルは階層的分類記号の定義に基づいて生成される、請求項8~14のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【請求項16】
共起の前記分析は、前記ユーザ
のアクションに従って選択されるノード間の距離の計算などの図形理論の単純な要素を適用する、請求項8~15のいずれか一項に記載の
コンピュータの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、データベースとユーザとの間の通信に関する。より詳細には、本発明は、特許/特許出願に関連する関心のある情報に関するデータの表示および対話式探究のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許情報は、一人または複数の出願当事者、一人または複数の発明者、技術的分類情報、優先日、出願日、等々に関するデータなどの文献データと共に、特許文書(特許出願または特許の公告)の技術的内容(説明、特許請求の範囲および図面)を含む。特許情報は、新規で、かつ、革新的な技術に関する最良の直接情報源となっている。
【0003】
特許情報の2つの主要な用途が存在している。定性分析は個々の文書の内容に関する。定量分析は特許文書のセットに関しており、本質的には、それらの統計的処理に関する。
【0004】
多くの特許庁は、一般の人が特許データベースにオン・ラインで自由にアクセスできるようにしている。この文脈で言及されるべき主要なデータベースの1つは、欧州特許庁が提供する「Espacenet」である。他のデータベースは、民間団体によって市販されている。これらのデータベース、例えばDerwent Innovation、Questel Orbit、PatBase、等々は、公衆データベースから供給されているが、アクセス・インタフェースの相補情報、および/または性能がより高いデータ処理ツールの形態で付加価値を提供している。
【0005】
この業界は、IPC(国際特許分類)分類データに少なくとも部分的に基づく多くのタイプのデータ表示形式を開発している。インタフェースでは、共通の表示形式が、特許のプール内におけるクラスの絶対分布を表すことになる。このような表現の一例はパイチャートである。このタイプの表示形式では、特許のプール内の個々のクラスの出現数、すなわちIPCクラスがそのプールの特許に記載されている回数しか表現されない。このタイプのグラフの有用性は、情報を引き出すためには幾分か限られている。さらに、表示ツールは、典型的にはクラスの英数字記号またはクラスの名称全体(言い回し)のいずれかを表示するため、線図の読解が困難である。読解を容易にする「パイチャート」主題の変形態様が存在している。しかしながらIPCクラスにおける特許の数がより多い場合により多くの空間(表面積)がこのクラスに割り当てられるという基本着想は維持されている。
【0006】
特許データベースのいくつかの商用表示ツールは「技術的クラスタ化」を含んでいる。特許のプールは、この場合、技術分野と、未知の基準に従う副分野に分割される。これらの表現はしばしば視覚的に成功しているが、セグメント化分析アルゴリズム(「クラスタ化アルゴリズム」として知られている)は「ブラック・ボックスとして動作」するため、それらは解釈が困難である。
【0007】
とりわけIPCデータに基づく表示形式の別の例は、「特許ランドスケープ」モードまたは「技術ランドスケープ」モードにおける表現である。特許のプールは、この場合、2D空間または3D空間における相互近接インジケータに従って配置される一連のキー・ワードによって表現される。キー・ワードは、特許のプールからの異種データ、すなわちIPC分類、要約書、特許請求の範囲、等々によって生成することができる。キー・ワード間の距離の計算とともにキー・ワードを獲得するモードは不透明である。
【0008】
したがって「技術的クラスタ化」の表現または「特許ランドスケープ」の表現から引き出される結論は、主観または推測の示唆的な(significant)な要素を含んでいる。さらに、対応するセグメントが特定の大きさに到達するか、または対応するキー・ワードがアルゴリズムによって表示する「価値あり」として認識されるときにしかニッチな適用技術は出現しないというリスクが存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ユーザと特許のデータベースとの間の通信の方法が提供され、また、特許/特許出願に関連する関心のある情報に関するデータ、例えば文献データ、とりわけIPCデータの表示および対話式探究のための方法が同じく提供される。方法は、
・アクセス・インタフェースによって、該アクセス・インタフェースにユーザによって入力される少なくとも1つの選択基準を使用して、特許のデータベース(商用または自由アクセス)に問い合わせることができるリクエストを生成するステップと、
・上記リクエストによってデータベースに問い合わせるステップ、およびデータベースによって見出された特許/特許出願のための文献データをダウンロードするステップ(典型的にはローカル・ネットワークおよび/またはインターネットを介して)であって、ダウンロードされる文献データは、技術的カテゴリに関するデータを含む、ステップと、
・文献データを処理するステップであって、処理するステップは共起分析を含み、共起分析は、見出されたすべての特許/特許出願に対する技術的カテゴリに関するデータの共起の数の決定を含む、ステップと、
・共起の分析の結果および/または解釈を対話式の図形および/または文字形態で表示するステップと
を含む。
【0010】
好ましいことには、技術的カテゴリに関するデータは、階層的分類のシステムによる技術的分類記号、例えばIPC、CPC(共同特許分類)USPC(米国特許分類)または他の分類記号を含むことになる。
【0011】
上で示したように、共起の分析は、見出されたすべての特許/特許出願に対する技術的カテゴリに関するデータの共起数の決定を含む。言い換えると、共起の分析は、技術的カテゴリに関するデータの同じグループが、調査されたセットの特許/特許出願の中に何回出現するかを知るための質問を問う。方法の好ましい実施形態によれば、共起の分析は、技術的カテゴリに関するデータのダブレット(対)に関しており、技術的カテゴリに関するデータの順序は、考慮されるか、あるいは無視されるかのいずれかであってもよい(第2の代替が好ましい)。
【0012】
代替または追加として、共起の分析は、技術的カテゴリに関するデータのトリプレット(3つの要素を有するセット)に関連していてもよい。
【0013】
共起の分析は、技術的カテゴリに関するデータの可能なすべての組合せのセットを表す表または行列の生成を含むことができる。引き続いて、組合せ毎に、技術的カテゴリ(そういうものとして、あるいは副組合せとして)に関するデータのこの組合せを有する特許の数が決定される。方法のこの部分を実行するコンピュータは、特許のリストを通して実行し、かつ、特許毎に見出された技術的カテゴリに関するデータの様々な組合せに関連するカウンタを増分することによってこの決定を実施することができる。
【0014】
好ましいことには、表示は、ユーザが利用することができる制御対象(例えばボタン、アイコン、サムホイール、ハイパーリンク、等々)を含み、その起動または操作(マウス、タッチ・スクリーンまたは任意の他のポインティング・デバイスによる)は、修正されたパラメータを使用した共起の分析の新しい実行をもたらす。例えば、共起の分析は、サブ-クラス・レベルに落とされたIPC分類に基づくことができ、その記号は、2桁の数字および別の文字が後続する文字から構成される。制御対象は、IPC分類のより高いレベル(セクションまたはクラス)またはより低いレベル(メイン・グループまたはサブ・グループ)に基づくことができる共起の分析の新しい実行をトリガするように構成することができる。
【0015】
追加または別法として、表示は、ユーザが利用することができる制御対象を含むことができ、その起動または操作は、データベースによって見出された特許/特許出願のフィルタリング、および特許/特許出願の対応するサブ-セットの生成をもたらす。制御対象の起動または操作は、特許/特許出願のサブ-セットに限定された技術的カテゴリに関するデータの共起の分析の実行を同じくもたらすことができる。
【0016】
本発明のとりわけ好ましい実施形態によれば、共起の分析の結果の表示は、三次元のネットワーク・グラフの形態を取ることになる。当然、二次元のネットワーク・グラフの形態の表示も同じく可能である。
【0017】
表示は、対話式ネットワーク・グラフの形態における、共起の分析の結果の表示を含むことができる。このようなネットワーク・グラフは、ノードおよびそれぞれ2つのノード間のリンクを含むことができ、ノードは技術的分類記号を表し、また、2つのノード間のリンクは、接続されている2つのノードに対応する技術的分類記号の共起を表す。
【0018】
個々のノードの視覚属性(例えばその大きさ、その直径、その輪郭の厚さ、その色の強度、その透明性、等々)は、対応する技術的分類記号の出現の数を反映することができ、また、個々のリンクの視覚属性(例えばその厚さ、その色の強度、その透明性、等々)は、接続されている2つのノードに対応する技術的分類記号の共起の数を反映することができる。
【0019】
好ましいことには、ノードおよび/またはリンクは、ユーザによるアクション(例えばシングル・クリック、右クリック、ダブル・クリック、等々)に引き続いて、対話式ネットワーク・グラフの形態における、共起の新しい分析の結果の新しい表示と共に、修正されたパラメータを使用した共起の分析の新しい実行をトリガするように構成された対話式要素を形成する。
【0020】
追加または別法として、ノードおよび/またはリンクは、ユーザによるアクションに引き続いて、データベースによって見出された特許/特許出願のフィルタリング、特許/特許出願の対応するサブ-セットの生成、特許/特許出願のサブ-セットに限定された技術的カテゴリに関するデータの共起の分析の実行、および対話式ネットワーク・グラフの形態における、サブ-セットに限定された共起の分析の結果の表示をトリガするように構成された対話式要素を構成することも可能である。共起の分析は、例えばユーザのアクションに従って2つのノードの間の距離を指示するために、図形理論の単純な適用を含むことができる。
【0021】
共起の分析は、技術的分類記号のトリプレットに関連していてもよい。この場合、表示は、ノードおよびそれぞれ3つのノード間の複合リンクを有する対話式ネットワーク・グラフの形態における、共起の分析の結果の表示を含むことができ、ノードは技術的分類記号を表し、また、3つのノード間の複合リンクは、接続されている3つのノードに対応する技術的分類記号の共起を表す。複合リンクは、3つのそれぞれのノードを接続している、着色された三角形、3つの頂点を有する星または同様の形によって表すことができる。
【0022】
好ましいことには、表示されることが意図された対話式グラフの表現は、グラフの複雑性を考慮して人工知能アルゴリズムによって生成される。アルゴリズムは、そのままでは表現が過度にクラッタされることになることをアルゴリズムが検出すると、例えばパラメータを調整して表現の複雑性を軽減することができる。表示は、デフォルトおよび/またはアルゴリズムによって選択されたパラメータのユーザによる変更を許容する図形制御要素(スライダ、回転セレクタ・スイッチ、等々)を含むことができる。
【0023】
対話式グラフの表現は、好ましいことにはノードおよび/またはリンクに関連するラベルを含む。ラベルは、階層的分類記号の定義に基づいて生成することができる。好ましいことには、表示されるラベルは、公式識別子の概要である。人工知能アルゴリズムを使用して公式識別子を要約し、かつ、グラフの表示に適合されたラベルを生成することができる。
【0024】
本発明の他の利点および特徴は、例証として、添付の図面を参照して以下で提供される有利な一実施形態についての詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一組の一般的な特許の技術的クラスの出現および共起を例証するネットワーク・グラフの一例を示す図である。
【
図2】クラス1の内部詳細に「的を絞った」、
図1のネットワーク・グラフの変形態様を示す図である。
【
図3】クラス2、詳細にはその最も大きいサブ-クラス、すなわち最も多くのリンクを有するサブ-クラスの内部詳細を部分的に示す、
図2のネットワーク・グラフの変形態様を示す図である。
【
図4】特許の実際のセットの技術的クラスの出現および共起を例証するネットワーク・グラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、特許情報の分野に関連する本発明の好ましい一例について考察する。提供される実施態様は、特許のプールの分析を、このプールの対話式図形表現(表示)によって容易にする。特許情報の分野では、当業者は、しばしば、特定の基準(キー・ワード、譲受人、発明者、技術的クラス、等々、またはそれらの組合せ)に従って既に識別されている極めて多くの特許に関連するデータを分析する必要がある。得られる特許のプールは、技術、機能、譲受人のグループ、等々に関する、明確に定義された関心のある題目に対応し(潜在的には手動整頓後)、特許分析者は、それらに対する情報の引出し、および解釈の提供を希望する。このプールに関連するデータを表示することにより、関連する情報を速やかに引き出すことができる。例えば譲受人毎の特許の数を表示することができ、それによりプールに関連する発明の分野における主役を直ちにこの表示から推論することができる。
【0027】
一例として考察されている実施形態は、IPC技術分類データを利用している。特許庁は、技術分野の極めて構造化され、かつ、階層化された分類に従って個々の特許を分類する。したがって特許のプールは一組のIPCクラスを含む。プール内で最も表現されるクラスは、特許のプールが関連している主技術分野を示す。プール内のクラスの表現に関するデータを分析することにより、プールの構造化、したがって特定の関心のある題目、特許分析の対象の構造化に関する関連情報を引き出すことができる。
【0028】
特許分析者によるプールの解釈、およびその解釈に関連するデータの探究を補助するために、ネットワーク・グラフ(
図1を参照されたい)の形態の表現によってプールのIPCクラスの表示が提供される。個々の特許または特許出願は、IPC分類の1つまたは複数の技術的クラスに分類される。ネットワーク・グラフは、ノード1、2、3、4、5およびそれぞれ2つのノード間にリンクL12、L24、L45を含み、ノードは技術的分類記号を表し、また、2つのノード間のリンクは、接続されている2つのノードに対応する技術的分類記号の共起を表している。ノードによって表される技術的分類記号は、IPCの様々な階層レベルに属することができる。完全なIPC記号は、「メイン・グループ」レベルまたは「サブ・グループ」レベルに対応する。そのすべてのノードが完全なIPC記号を表すネットワーク・グラフは、プール内の特許の数が増えると極めて複雑になり、また、クラッタされることになり得る。提供されている実施態様では、ネットワーク・グラフは対話式であり、したがってユーザは、ネットワーク全体またはネットワークの一部のうちの1つにわたってグラフの複雑性を軽減し、あるいは複雑性を増すことができる。
【0029】
個々のノードの大きさは、プール内の対応するクラスの相対重みにリンクされ、同様に、個々のリンクの厚さは、2つのクラスを接続している特許の数、すなわち接続されている2つのクラスの両方に属する特許の数で決まる。
【0030】
分析を容易にするために、表示は、関連するクラスの識別子(または関連するクラスの概要)および/またはクラスの英数字記号を使用して、個々のノード1、2、3、4、5の隣りにラベルT1、T2、T3、T4、T5を含む。
【0031】
クラスの識別子は、とりわけ分類の最も高い階層レベルでは、時によっては長い(数十ワード)。クラスの識別子がノード毎のラベルとして完全に表示された場合、グラフには、読取り不能になり、したがって使用不能になるリスクがある。この問題を克服するために、識別子を少数のキー・ワードに低減するべく、自然言語の意味解析技法および自動処理が適用される。識別子の長さおよびフォントの大きさは、表示に利用することができる空間に応じて事例毎に適合される。
【0032】
この方法によれば、特許分析者は、IPC分類におけるIPC記号の意味を捜す必要がなく、また、当該特許プールに関する関連情報、したがって特定の関心のある題目に関する関連情報を速やかに引き出すことができる。
【0033】
上で説明したように、特許分析者は、その好みに応じて、表示されるクラスの詳細のレベルをIPC分類の最も高い階層レベルから最も低いレベルまで選択することができる。クラスの識別子の表示は、この場合、選択された階層レベルに従って適合される。
【0034】
以下、例証としてより詳細な例について、図を参照して考察する。特許のデータベースにおける探索は、クラス間の特定の接続を使用して、5つのクラス(1~5の番号が振られている)が表されている特許のプール(セット)を戻していることが仮定されている。以下の表1は、
・対角線で、それぞれのクラスに属する特許の数
・右上部分で、クラスのすべての対の共起、すなわち列によって示されるクラスおよび行によって示されるクラスの両方に属する特許の数
に関する情報を伝えている。
【0035】
例えばこのプールでは7つの特許がクラス1に属しており、また、クラス1および2の両方に類別された6つの特許が存在している。
【0036】
【0037】
表の左下部分は、冗長指示の挿入を回避するために空白になっていることに留意されたい。図形理論の通常の行列(とりわけ重み付けされた類似性行列)は、この表から推論することができ、また、共起の分析に有効に活用される。
【0038】
この例のプールに関連するネットワーク・グラフは
図1に示されている。クラス1はクラス2(6つの特許上、リンクL12)とのみ共起を有していることが分かる。一方、クラス2はクラス4(3つの特許上、リンクL24)とのさらなる共起を有している。後者は、単一の特許(リンクL45)上のクラス5と共に出現している。クラス3は孤立したクラスである。
【0039】
得られた表示は、特許分析者によるプールのデータの解釈を補助することができる。いくつかの個別のクラスの下で出願された特許は、これらのクラスの間の重畳に対応することが仮定されている。詳細には、クラスがIPC構造化において極めて離れている場合(IPCにおける距離は、1つのクラスから他のクラスへ行くためにツリー構造内を縦走させる必要がある分岐の数の関数として定義することが可能である)、異質のクラスに属する一組の特許は、関連する技術分野間における学際的努力あるいは調停努力が必要である。
【0040】
データの表示から得られる情報により、特許分析者は、いくつかの関連する解釈を実施することができる。例えば特許分析を使用して潜在的パートナーを探索することができる。特許のプールに関連する、明確に定義された関心のある題目にわたって特定のニッチな適用技術が探し求められる事例を取る。このニッチな適用技術はいくつかの特許に存在するが、(
図1、クラス5)のニッチな適用技術に対応する技術を市場に出しそうな産業セクターに対応していない。得られた表示により、ニッチな適用技術(すなわちクラス4)を開発するための解決法を提供しそうな技術分野および/または産業セクターを識別することができる。クラス5はクラス2と直接のリンクを有していないことが分かるが、それは、クラス2と4の間に正しく強力なリンク(リンクL24)が存在しているが、定義された関心のある題目の主要な技術分野を表している。したがって特許分析者は、クラス4に対する相補として、あるいはクラス4をバイパスすることによって、クラス2と5の間の直接リンクを確立することが不可能であるかどうかの質問を持ち出すことができる。
【0041】
別の例示的適用技術は、産業セクター間の技術移動の識別によるイノベーション・ダイナミックの分析である。定義された関心のある題目が定着した技術分野(ここではクラス2によって表されている)によって支配され、産業セクターおよび一組の明確に識別された技術分野によって支持される事例が考慮される。この関心のある題目に対して、新しい適用技術が出現し始め、いくつかのセクターによって支持され、かつ、全く異なる技術分野(ここではクラス4によって表されている)と結合される。得られた表示により、関連するクラスである2に属する特許の重要なファイリングを識別することができ、したがって潜在的に、成熟した技術分野と出現する分野の間の、進行中または実際の技術の移動を識別することができる。
【0042】
分析の結果として表示されるネットワーク・グラフは対話式である。様々なタイプの制御要素を生成し、かつ、ユーザが利用できるようにすることができる。
図1のネットワーク・グラフでは、ノード1、2、3、4および5は対話式要素として構成されている。ユーザがノードのうちの1つの上で右クリックすると、利用することができる様々なコマンドを有するスクローリング・メニューが表示される。コマンドのうちの1つは、技術分類の階層におけるより低いレベルへの降下をトリガすることができる。このコマンドは、選択されたクラス内のより多くの詳細の表示をもたらす。ユーザが、クラス1の詳細の表示を選択すると、プログラムは、階層的により低いクラスが個々に処理される拘束の下で、出現および共起の分析をやり直す。このステップの1つの結果は、以下の表2に見出される。
【0043】
【0044】
対応するネットワーク・グラフは
図2に例証されている。
【0045】
同様の方法で、対話式グラフを介してアクセスすることができる別のコマンドも、技術分類の階層を高くすることになり得る。この場合、いくつかのクラスを結合して階層的により高いクラスにされることになる。
【0046】
図3は、分析ツールの別の機能性、すなわちユーザがノード(ここではクラス2のノード)の内側に表示する可能性を例証したものであり、ノードは、最も大きいサブ-クラス、または最も多くのリンク(ici:2.x)を有するサブ-クラスに対応している。
【0047】
対話式グラフを介してアクセスすることができる別のコマンドは、ユーザによって既に選択されている別のノードに対して選択されたノードの距離の計算をもたらし得る。
【0048】
例示的適用技術
特許分析者に対して課される問題は、小型時計の夜間視覚のフレームワーク、および針および文字盤の照明のフレームワークにおいて、生物発光顔料を使用してsuperluminova(商標)の代替を見出すことである、と仮定する。したがって特許分析者の特定の関心のある題目は生物発光である。着想は、小型時計および非携帯用時計のためのカバー部品を照明するように適合された生物発光技術を最も提供しそうな技術分野を見出すことである。
【0049】
キー・ワード(「生物発光
*」を含む名称/要約書/特許請求の範囲)による探索に従って約1000の特許のプールを引き出すことができる。プールの速やかな調査は、生物発光は、生物学的マーカーとして生物医学研究に主として使用されていることを示す。プールの中で最も表現されている2つのクラスは、クラス(またはクラスのセット)C12(生化学)およびG01(物理測定)である。照明適用技術(F21)に関連するクラスは、プール内には全く表されていない。このことから、生物医学の適用技術に関して、生物発光の照明適用技術があまり十分に開発されていないことを推論することができる。したがって特許分析者によって探し求められたこの適用技術はニッチな適用技術である。表3は、すべての特許にわたって観察された出現および共起の一部に関する情報を伝えている。関連するネットワーク・グラフによる表示は
図4に示されている。
【0050】
【0051】
グラフは、とりわけクラスF21(照明)の共起を示しており、したがって導かれるパートナーを探索することができる。グラフは、単一の英数字記号ではなく、クラスを説明しているラベルへのアクセスを直ちに与え、それによりこれらのクラスがカバーしている内容を速やかに理解することができることに留意されたい。
【0052】
生物発光は、小型時計および非携帯用時計産業(G04)に関連するクラスとのリンクを未だ全く有していないことが直ちに分かる。したがって所望の適用技術に達するために、技術の適合および移動を介して進行することが恐らく必要になる。プールの2つの主要なクラス(C12およびG01)に対して、F21は、G01との直接リンクを全く有していない。このことから、クラスC12にリンクされた技術分野に向かって探索の優先順位を付けることがより良好であることを推論することができる。さらに、有機化学クラス(C07)へのリンクは他のクラスへのリンクより弱い。このことから、例えば農業食品産業(A23)における生物発光適用技術を研究することにより、他のクラスに向かって探索の優先順位を付けることがより良好であることを推論することができる。重み付けされた類似性行列を使用した距離の重み付けされた計算により、F21に隣接するクラスの大きさを確認し、かつ、定量化することができる。
【0053】
以上、特定の実施形態について詳細に説明したが、当業者は、本発明の本開示によって提供される全教示に鑑みて、様々な変更態様およびそれに対する代替を開発することができることを認識するであろう。したがって本明細書において説明されている特定の構造および/または方法には、単に例証として与えられたものにすぎないことが意図されており、本発明の範囲を制限することは意図されていない。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3、4、5 ノード
L12、L24、L45 リンク
T1、T2、T3、T4、T5 ラベル
C12 クラス(生化学)
G01 クラス(物理測定)
A23 農業食品産業
F21 照明適用技術
C07 有機化学クラス