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特許7299307チミン核酸塩基をベースとするトリアゾロピリミジン類及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】チミン核酸塩基をベースとするトリアゾロピリミジン類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230620BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C07D487/04 146
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021512147
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014810
(87)【国際公開番号】W WO2020204024
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019071525
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517038084
【氏名又は名称】テラ・ストーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】永松 朝文
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-167592(JP,A)
【文献】国際公開第2006/132275(WO,A1)
【文献】特開2002-037787(JP,A)
【文献】特開昭62-135475(JP,A)
【文献】特表平01-500996(JP,A)
【文献】特開昭56-032479(JP,A)
【文献】NAGAMATSU T. et al.,The First Reliable, General Synthesis of the 5-Oxo Derivatives of 5,6-Dihydro-1,2,4-triazolo[4,3-c]p,Heterocycles,2002年,Vol 57, No. 4,pages 631 to 636,doi:10.3987/COM-02-9450
【文献】REGISTRY, RN 1934600-89-1,2016年06月19日
【文献】REGISTRY, RN 1367943-51-8,2012年04月15日
【文献】File:POCl3 246trichloropyridine.png,Last edited on 9 November 2015, [online],Internet,2020年06月12日,https://commons.wikimedia.org/wiki/File:POCl3_246trichloropyridine.png
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(III)
【化1】
(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を示す。)で表される5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン化合物。
【請求項2】
Rが下記一般式(IX)
【化2】
(式中、X ~X はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はニトリル基からなる群から選択される基を示す。)で表される置換基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次の一般式(IV)
【化3】
(式中、Rは炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、フェニル基又は置換基を有するフェニル基を示す。)で表される8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-5(6H)-オン化合物。
【請求項4】
Rにおけるフェニル基又は置換基を有するフェニル基が下記一般式(IX)
【化4】
(式中、X ~X はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はニトリル基からなる群から選択される基を示す。)で表される置換基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
次の一般式(VI)
【化5】
(式中、Rはェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-5(6H)-チオン化合物。
【請求項6】
次の一般式(VIII)
【化6】
(式中、Rはェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-5-アミン化合物。
【請求項7】
次の一般式(II)、(III)、(IV)、(VI)及び(VIII)
【化7】
(式中、Rはフェニル基、置換基を有するフェニル基又はピリジル基を示す。)
【化8】
(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を示す。)
【化9】
(式中、Rは炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、フェニル基又は置換基を有するフェニル基を示す。)
【化10】
(式中、Rはフェニル基を示す。)
【化11】
(式中、Rはフェニル基を示す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する抗腫瘍組成物。
【請求項8】
前記一般式(II)、(III)及び(IV)のRにおけるフェニル基又は置換基を有するフェニル基が下記一般式(IX)
【化12】
(式中、X ~X はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はニトリル基からなる群から選択される基を示す。)で表される置換基である、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸塩基のチミンやウラシルから誘導できる新規トリアゾロピリミジン類化合物及びその製造方法、及び該方法よって得られる種々の生理活性物質、特に抗腫瘍剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Heidelbergerらにより基礎及び臨床にわたる広範な研究で抗悪性腫瘍剤としての評価が確立されたフルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU)は、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤で、抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)であり、ウラシルの5位水素原子がフッ素原子に置き換わった構造をしている。1990年代よりフルオロウラシルのプロドラッグ化などの改良を施し、より強い効果が期待される薬剤(内用薬)が開発され、市販されている。胃癌、肝癌、結腸・直腸癌、乳癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮体癌及び卵巣癌などの疾患の自覚的並びに他覚的症状の緩解として用いられている。更に、食道癌、肺癌及び頭頸部腫瘍などには他の抗がん剤又は放射線療法と併用して使用されている。前記既存の薬剤及びその代謝物は、核酸の合成を阻害(代謝拮抗)し、抗腫瘍効果を表すが、強い副作用等が予測されるため、前記薬剤を用いた治療には熟知した医師の判断の下で治療が行われている。副作用として、脱水症状、重篤な腸炎、骨髄機能抑制、ショック、アナフィラキシー様症状、白質脳症、うっ血性心不全、心筋梗塞、安静狭心症、急性腎不全、間質性肺炎、肝機能障害、黄疸、消化管潰瘍、重症な口内炎、急性膵炎、意識障害を伴う高アンモニア血症、肝・胆道障害(胆嚢炎、胆管壊死、肝実質障害等)及び手足症候群、嗅覚障害などの重大な副作用が知られている。
【0003】
一方、各種トリアゾロピリミジンの中で、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン骨格を有する化合物は、酸やアルカリ存在下又は熱的に容易にジムロート型転位を起こし、より安定な[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン骨格の化合物を生成することが知られており(下記非特許文献1を参照、該文献の全記載はここに開示として援用される。)、これまでに種々の誘導体が合成され、フレオマイシンの増強作用などが報告されている(下記非特許文献2及び3を参照、該文献の全記載はここに開示として援用される。)。また、核酸塩基のチミンから誘導できるトリアゾロピリミジンの8-メチル誘導体の構造異性体類については、3位に置換基を有する8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン類及び2位に置換基を有する8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン類の誘導体で、該置換基が水素原子、メチル及びフェニルである化合物のみが速報誌に報告されている(下記非特許文献4を参照、該文献の全記載はここに開示として援用される。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】D.J.Brown and T.Nagamatsu著 Aust.J.Chem.,31,2505-15(1978)
【文献】D.J.Brown and T.Nagamatsuら著 Aust.J.Chem.,31,397-404(1978) and 32, 2713-26 (1979)
【文献】D.J.Brown and T.Nagamatsuら著 Aust.J.Chem.,32,2713-26(1979)
【文献】T.Nagamatsuら著 Heterocycles,57,No. 4,631-636(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗腫瘍活性などの種々の生理活性が期待されているにも関わらず、核酸塩基のチミンから誘導できるトリアゾロピリミジンの8-メチル誘導体の構造異性体類はこれまで前記化合物以外の8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン類(I)及び8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン類(II)化合物は未だ報告されていない。また、5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物(III)、抗がん剤として知られている5-フルオロウラシルから誘導できる8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物(IV)、8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物(V)、8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物(VI)、8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物(VII)、及び8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物(VIII)については未だ報告されていない。
【0006】
そこで本発明者らは強力な抗癌剤である5-FU類縁化合物より、副作用の少ない、更には幹癌細胞に有効に作用する抗悪性腫瘍薬の探索を目的として、チミンや5-FUより誘導できる二環性のトリアゾロピリミジン骨格に着目し、合成研究を行っている。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、抗腫瘍作用を有する、新規な種々のトリアゾロピリミジン誘導体の提供を主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するトリアゾロピリミジン誘導体が抗腫瘍作用を有し、医薬として有用であることを見いだし、本発明を遂行した。本明細書において、新規な[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン骨格を有する化合物と転位異性体の[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン骨格の化合物及び類縁化合物類の製造及びそれらの抗腫瘍活性について述べる。
【0009】
したがって、本発明の態様によれば、以下の[1]~[16]の態様のものが提供される。
[1]次の一般式(I)
【化1】
(式中、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物。
[2]次の一般式(II)
【化2】
(式中、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物。
[3]次の一般式(III)
【化3】
(式中、Rはアリール基を示す。)で表される5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物。
[4]次の一般式(IV)
【化4】
(式中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)で表される8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物。
[5]次の一般式(V)
【化5】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物。
[6]次の一般式(VI)
【化6】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物。
[7]次の一般式(VII)
【化7】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物。
[8]次の一般式(VIII)
【化8】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物。
[9][1]~[8]に記載の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、医薬用組成物。
[10][1]~[8]に記載の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、抗腫瘍組成物。
[11]医薬用組成物を製造するための、[1]~[8]に記載の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
[12][1]~[8]に記載の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の有効量を投与することを含む腫瘍の治療方法。
[13]アルデヒドヒドラゾン化合物と酸化剤とを反応し、トリアゾロピリミジン化合物を得る工程を含む、[1]、[2]、[4]、[5]又は[7]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
[14][1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン化合物を溶媒中で加熱し、[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物を得る工程を含む、[2]又は[8]に記載の化合物の製造方法。
[15]トリアゾロピリミジン化合物の5位がオキソである化合物をオキシ塩化リン中で加熱還流し、トリアゾロピリミジン化合物の5位がクロル基である化合物を得る工程を含む、[3]に記載の化合物の製造方法。
[16]ヒドラジノ化合物とオルトエステルとを反応し、トリアゾロピリミジン化合物を得る工程を含む、[4]~[8]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様であるトリアゾロピリミジン化合物は、癌細胞の増殖阻害活性を有し、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤で、既に抗悪性腫瘍剤として臨床で使用されている5-FU(5-フルオロウラシル、ウラシルの5位水素原子がフッ素原子に置き換わった構造)や核酸塩のチミン構造を内蔵した縮合化合物であることから、本発明の一態様であるトリアゾロピリミジン化合物を含む組成物は、種々の腫瘍を治療するための抗腫瘍薬(抗がん剤)として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一態様であるトリアゾロピリミジン化合物、製造方法及び該化合物を含む医薬用組成物の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様を取り得る。
【0012】
本明細書において、「腫瘍」とは、当該技術分野において知られる意味の腫瘍であれば特に限定されず、例えば細胞が生体内の制御に反して自律的に過剰に増殖することによってできる組織塊のことを指す。
【0013】
本明細書において、抗腫瘍とは、腫瘍を構成する細胞の増殖の阻害、腫瘍を構成する細胞の浸潤の抑制、又は腫瘍を構成する細胞の減弱もしくは死滅のことを指す。すなわち、抗腫瘍作用とは、上記の細胞増殖阻害等の作用を指す。
【0014】
本発明の一態様のトリアゾロピリミジン化合物は前記一般式(I)~(VIII)で表されるものであり、式中のRは前記定義のとおりである。Rで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有する低級アルキル基が例示される。また、アリール基としてはフェニル基及び置換基を有するフェニル基が例示される。フェニル基を修飾する置換基(以下、フェニル置換基とよぶ。)としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基又はカルボキシル基を示し、置換基の数は1~5個である。
【0015】
このようなアリール基を具体的に例示すれば、フェニル基;メチルフェニル、エチルフェニルなどの炭素数1~5のアルキル基を有するアルキルフェニル基;メトキシフェニル、エトキシフェニルなどの炭素数1~5のアルコキシを有するアルコキシフェニル基;ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルなどの炭素数1~5のアルキルアミノを有するアルキルアミノフェニル基;フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニルなどのハロゲノフェニル基;メチレンジオキシフェニル基;ヒドロキシフェニル基;ニトロフェニル基;シアノフェニル基;カルボキシフェニル基などが挙げられる。
【0016】
アリール基は下記一般式(IX)
【化9】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基又はカルボキシル基からなる群から選択される基を示す。)
で表される置換基である。
【0017】
本発明の一態様のトリアゾロピリミジン化合物によれば、細胞増殖阻害作用の点で、Rはアリール基が好ましく、フェニル置換基がハロゲン原子、ニトロ基又はニトリル基であるアリール基がより好ましい。
【0018】
本発明の一態様の8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-オン化合物(I)及び8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-オン化合物(II)として、Scheme 1に記載の官能基を有する化合物が挙げられる。Scheme 1に記載のMeはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示す。例えば、4-MeO-Cは4位にメトキシ基を示す。以下、本明細書中及び文脈中においても同様である。
【0019】
本発明の一態様の化合物の合成法について以下に説明する。
一般式(I)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物の置換基Rが、Scheme 1に記載のa-f、s及びtで示される置換基である化合物4a-f,s,t及び一般式(II)で表される8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物の置換基RがScheme 1に記載のa-tで示される置換基である化合物5a-tにおいて、Rがアルキル及びアリール基の双方のトリアゾロピリミジン化合物の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 1)。
【化10】

Scheme 1中、Rはエチル基又はアリール基を示す。
本明細書中において、MeOHはメタノールを示し、EtOHはエタノールを示し、Acはアセチル基を示し、Pb(OAc)は四酢酸鉛を示し、TFAはトリフルオロ酢酸を示し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを示し、そしてDMSOはジメチルスルホキシドを示す。
【0020】
すなわち、化合物1にヒドラジン水和物を加熱反応させることにより、Scheme 1で表されるヒドラジノ化合物2が得られる(第1工程)。次に、該化合物2に各種アルデヒドを反応させることにより、アルデヒドヒドラゾン化合物3a-rを得ることができる(第2工程)。ついで、該化合物3a-fにトリフルオロ酢酸中で70%硝酸を加え、室温(20℃)~40℃の範囲で酸化反応(route i)を施すことで、対応する閉環化合物である3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物4a-c,f、並びに化合物3d又は3eが閉環と同時にニトロ化も生じた化合物4s及び4tをそれぞれ得ることができる。更に、化合物3b,d,eを室温で四酢酸鉛による酸化反応(route ii)することで、対応する閉環化合物である化合物4b,d,eを得ることができる(第3工程)。一方、該化合物3a-rをDMF中で100℃又は加熱還流(reflux)することで、化合物4の転位化合物である2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5a-rを得ることができる(第4工程)。更に、転位前の化合物4s,tをエタノール又はDMSO中で加熱することにより、その対応する転位化合物である化合物5s,tを得ることもできる(第5工程)。各スキーム及び各工程で用いる酸化剤及び溶媒は目的の化合物を得ることができれば特に限定されず、各スキーム及び各工程の反応に従って適宜選択することができる。以下、工程毎に説明する。
【0021】
(第1工程)
この工程は速報誌(T.Nagamatsu.,et al.,Heterocycles,57,No.4,631-636(2002)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に報告済みであるが、詳細な合成法は未だ報告されていない。化合物1は公知合成法(R.N.Castle,et al.,J.Heterocycl.Chem.,3,79(1966)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に従い合成し、得られたこの化合物1にヒドラジン水和物を加熱反応させることにより、ヒドラジノ化合物2が得られる。
【0022】
(第2工程)
化合物3a-rは公知合成法(T.Nagamatsu.,et al.,Heterocycles,57,No.4,631-636(2002)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に従い、新規な種々のアルデヒドヒドラゾン化合物3a-rを調製することができる。
【0023】
化合物2(4mmol)に対してR-CHO(式中、Rはエチル又はアリール基を示す)で表されるアルデヒド(4.8mmol)を用い、メタノールの有機溶媒中、室温撹拌下で30分~2時間反応させて化合物3a-rを得る。
【0024】
(第3工程)
この工程においてroute iは、化合物3a-fを適切な酸化剤として70%硝酸を用いて硝酸酸化し、その対応する閉環化合物である化合物4a-c,fを調製することができる。また化合物3dと3eの酸化閉環化合物は硝酸によるニトロ化を伴った化合物4s,tが得られる。
【0025】
硝酸酸化で用いる酸化剤は硝酸酸化可能な酸化剤であれば特に限定されず、例えば50%~70%の硝酸を用いることができ、好ましくは70%硝酸である。酸化反応は、氷酢酸、TFAなどの酸溶媒又はそれらを含む混合溶媒などの溶媒中で反応を行ってもよく、好ましくはTFA中で行う。反応温度は、酸化による閉環化合物を得ることができる温度であれば特に限定されないが、好ましくは20℃~40℃である。
【0026】
また、第3工程においてroute iiは、化合物3b,d,eを室温で四酢酸鉛(酸化剤)を用いて酸化し、その対応する閉環化合物である化合物4b,d,eを調製することができる。route i及びroute iiの反応は、例えば、下記のような条件で行うことができる。
【0027】
(route i):TFAに4-アルキリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン又は4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン3a-f(0.60mmol)と70%硝酸(0.66mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)~40℃で30分~3時間撹拌することにより無色粉末状の目的の化合物4a-c,f,s,tを得ることができる。
(route ii):TFAに4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3b,d,e(0.60mmol)と四酢酸鉛(0.72mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)で30分~1時間撹拌することにより無色粉末状の目的の化合物4b,d,eを得ることができる。
【0028】
(第4工程)
化合物4の転位化合物である2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5a-rは、アルデヒドヒドラゾン化合物3a-rの加熱条件での酸化剤を用いた硝酸酸化により調製できる。
【0029】
酸化剤は硝酸酸化可能な酸化剤であれば特に限定されず、例えば50%~70%の硝酸を用いることができ、好ましくは70%硝酸である。溶媒は硝酸酸化可能な沸点を有する溶媒であれば特に限定されないが、好ましくはDMFである。例えば下記のような条件で行うことができる。
(route iii):DMFに4-アルキリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン又は4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3a-r(1mmol)と70%硝酸(1mmol)を加え、それぞれ100℃又は加熱還流下で1時間加熱撹拌すると、対応する目的の化合物5a-rを得ることができる。
【0030】
(第5工程)
更に、化合物4s,tをEtOH又はDMSO中で加熱すると、熱的に転位化合物である化合物5s,tを得る。第5工程のroute ivの反応は、例えば下記のような条件で行うことができる。
(route iv):EtOH又はDMSOに3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物4s,t(0.60mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)~100℃で2時間撹拌して転位化合物である化合物5s,tを得ることもできる。
【0031】
一般式(III)で表される化合物は、一般式(II)で表されるトリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物の5位のオキソがクロル基に置換した化合物である。一般式(III)で表される2-置換5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物6の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 2)。
【化11】

Scheme 2中、Rはアリール基を示す。
本明細書中において、POClはオキシ塩化リンを、またNEtはトリエチルアミンを示す。
【0032】
すなわち、前述Scheme 1で合成した化合物5b,f,j,l,mをそれぞれオキシ塩化リンに溶解し、トリエチルアミンの存在下加熱還流することによってクロロ化合物6b,f,j,l,mを得ることができる。以下、この工程を説明する。
【0033】
(第6工程)
POCl(10mL)に2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5b,f,j,l,m(1.3mmol)とトリエチルアミン(4mL)を加え、一晩加熱還流し、氷冷下で少しずつ水を加え未反応のPOClを分解後、CHCl(ジクロロメタン)で抽出すると、対応する無色の粉末状又は針状結晶のクロロ化合物6b,f,j,l,mを得ることができる。
【0034】
一方、一般式(IV)で表される化合物は、一般式(II)で表されるトリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物の8位のメチル基がフッ素基に置換した化合物である。一般式(IV)で表される2-置換8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 3)。
【化12】

Scheme 3中、Rは水素元素、アルキル基又はアリール基を示す。
本明細書中において、RC(OEt)はオルトエステルを示す。
【0035】
すなわち、化合物7は既知合成方法(V.Uchytilova,et al.,Collection of Czechoslovak Chem.Communications,40(8),2347(1975)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に従って合成し、これに各種アリールアルデヒドを反応させることにより、4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-フルオロピリミジン-2(1)-オン化合物8d-gを得ることができる(第7工程)。該ヒドラジノ化合物7にDMF中で各種オルトエステルを加え、加熱撹拌すると8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9a及びその2-アルキル誘導体である化合物9b,cを得ることができる(第8工程)。一方、該アルデヒドヒドラゾン化合物8d-gにDMF中で70%硝酸(酸化剤)を加え加熱すると、その対応した酸化閉環転位化合物である2-アリール-8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9d-gを得ることができる(第9工程)。以下、工程毎に説明する。
【0036】
(第7工程)
MeOH(12mL)に5-フルオロ-4-ヒドラジノピリミジン-2(1)-オン化合物7(2.08mmol)と適当なアリールアルデヒド(2.70mmol)を加え、室温で2時間撹拌して対応する無色の粉末状又は針状結晶のアルデヒドヒドラゾン化合物8d-gを得ることができる。
【0037】
(第8工程)
各工程で用いるオルトエステルは目的の化合物を得ることができれば特に限定されないが、例えばアルコキシ基がメチルやエチルであるものを用いることができる。例えば第8工程は以下のような条件で行うことができる。DMF(10mL)に5-フルオロ-4-ヒドラジノピリミジン-2(1)-オン化合物7(1.39mmol)と適当なトリエチルオルトエステル(1.81mmol)を加え、1時間加熱還流し、反応後、減圧下溶媒を留去すると対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物9a-cを得ることができる。
【0038】
(第9工程)
DMF(6mL)に4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-フルオロピリミジン-2(1)-オン化合物8d-g(0.80mmol)と70%硝酸(1.10mmol)を加え、2時間加熱還流し、反応後、減圧下溶媒を留去すると対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物9d-gを得ることができる。
【0039】
更に、一般式(V)で表される化合物は、一般式(I)で表されるトリアゾロ[4,3-]ピリミジン化合物の5位のオキソがチオキソに置換した3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物である。また、一般式(VI)で表される化合物は、一般式(II)で表されるトリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物の5位のオキソがチオキソに置換した2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物である。一般式(V)の置換基Rが、Scheme 4に記載のa,bで示される置換基である化合物13a,b及び一般式(VI)の置換基Rが、Scheme 4に記載のa-cで示される置換基である化合物14a-cの製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 4)。
【化13】

Scheme 4中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。
【0040】
先ず、出発物質の5-メチルピリミジン-2,4(1,3)-ジチオン化合物10は既知合成方法(R.N.Castle,et al.,J.Heterocycl.Chem.,3,79(1966)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に従って合成し、エタノールに加えた該化合物10に、抱水ヒドラジンを加え加熱還流すると、4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11が得られる(第10工程)。ついで、メタノール中でこれに各種アルデヒドを反応させることにより、5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物の4-アルデヒドヒドラゾン化合物12b,cを得ることができる(第11工程)。そこで、ヒドラジノ化合物11をTFAに溶解し、オルトギ酸トリエチルを加え室温で酸化反応すると[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13aが得られる(第12工程)。更に、アルデヒドヒドラゾン化合物12bをTFAに溶解し、四酢酸鉛を加えて室温で酸化すると3,8-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13bが得られる(第13工程)。一方、ヒドラジノ化合物11をDMFに溶解し、各種トリエチルオルトエステルを加え加熱還流すると、転位化合物の8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物14a及びその2位置換誘導体である化合物14b,cが得られる(第14工程)。以下、工程毎に説明する。
【0041】
(第10工程)
EtOH(16mL)に5-メチルピリミジン-2,4(1,3)-ジチオン10(12.64mmol)とヒドラジン水和物(31.96mmol)を加え、10分間加熱還流する。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水から再結晶して無色の粉末結晶である化合物11を得ることができる。
【0042】
(第11工程)
MeOH(15mL)に、4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11(3mmol)と各種アルデヒド(3.6mmol)を加え、それぞれ室温で1~12時間撹拌し、析出した結晶を濾取し、これをEtOHから再結晶して対応するアルデヒドヒドラゾン化合物12b,cを得ることができる。
【0043】
(第12工程)
TFA(6mL)に4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11(1mmol)とオルトギ酸トリエチル(5mmol)を加え、それぞれ室温で30分間撹拌し、減圧下溶媒を留去し、これをエタノールから再結晶して対応する8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13aを得ることができる。
【0044】
(第13工程)
TFA(3mL)に4-エチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物12b(0.6mmol)と四酢酸鉛(0.60mmol)を加え、それぞれ室温で10分間撹拌し、減圧下溶媒を留去し、これをエタノールから再結晶して無色の対応する粉末結晶の3,8-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13bを得ることができる。
【0045】
(第14工程)
DMF(15mL)に4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11(2mmol)と各種トリエチルオルトエステル(2.4mmol)を加え、それぞれ0.5~2時間加熱還流し、減圧下溶媒を留去し、これをEtOHから再結晶して対応する8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物14a及びその2位置換化合物である化合物14b,cを得ることができる。
【0046】
更に、一般式(VII)で表される化合物は、一般式(I)で表されるトリアゾロ[4,3-]ピリミジン化合物の5位のオキソがアミノに置換した3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物である。また、一般式(VIII)で表される化合物は、一般式(II)で表されるトリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物の5位のオキソがアミノに置換した2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物である。一般式(VII)の置換基RがScheme 5に記載のa-cで示される置換基である化合物19a-c及び一般式(VIII)の置換基RがScheme 5に記載のa-cで示される置換基である化合物20a-cの製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 5)。
【化14】

Scheme 5中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。
【0047】
先ず、出発物質の2,4-ジクロロ-5-メチルピリミジン化合物15は既知合成方法(H.C.Koppel,et al.,J.Org.Chem.,27,181(1962)、該文献の全記載はここに開示として援用される。)に従って合成し、エタノールに溶解した該化合物15に抱水ヒドラジンを加え室温で撹拌反応すると、化合物15の4位のみがヒドラジノ化された2-クロロ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物16を得ることができる(第15工程)。ついで、該化合物16にアンモニア水を加え封管中で加熱反応すると、化合物16の2位がアミノ化された2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物17が得られる(第16工程)。ここで得られた化合物17に室温でベンズアルデヒドを加え、メタノール中で反応させると対応する2-アミノ-4-ベンジリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物18cを得ることができる(第17工程)。また、エチルセルソルブ中で該化合物17にトリエチルオルトエステル類を100~120℃で反応させると対応する8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物19a及びその3位置換誘導体である化合物19b,cを得ることができる(第18工程)。更に、アルデヒドヒドラゾン化合物18cにTFA中で四酢酸鉛を加え室温で反応すると、その酸化閉環化合物である化合物19cを得ることができる(第19工程)。一方、第18工程と同様の反応で、エチルセルソルブ中でヒドラジノ化合物17にトリエチルオルトエステルを加え、加熱還流すると化合物19a-cの転位化合物である8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物20a及びその2位置換誘導体である化合物20b,cを得ることができる(第20工程)。更に、該化合物20a-cは、化合物19a-cをエチルセルソルブ中で加熱還流することによっても、熱的転位反応によって得ることもできる(第21工程)。以下、工程毎に説明する。
【0048】
(第15工程)
EtOH(4mL)と2,4-ジクロロ-5-メチルピリミジン化合物15(6.13mmol)の混合物に氷冷下でヒドラジン水和物(20.6mmol)を滴下し、室温で10分間撹拌し、EtOHから再結晶して無色の針状結晶の化合物16を得ることができる。
【0049】
(第16工程)
28%アンモニア水溶液(50mL)に2-クロロ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物16(6.92mmol)を加え、封管中アルゴン雰囲気下140℃で84時間加熱し、少量のEtOHで処理すると固体が析出する。これを水に溶かしてイオン交換樹脂(Dowex SAR,20-50mesh,Cl form)で処理し、EtOHから再結晶すると無色の針状結晶の化合物17を得ることができる。
【0050】
(第17工程)
MeOH(10mL)に2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物17(2mmol)とベンズアルデヒド(2.4mmol)を加え、室温で12時間撹拌し、析出した結晶をEtOHから再結晶すると無色粉末結晶の対応するアルデヒドヒドラゾン化合物18cを得ることができる。
【0051】
(第18工程)
エチルセロソルブ(10mL)に2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物17(2mmol)と対応する各種トリエチルオルトエステル(4mmol)を加え、それぞれ100~120℃で30分~2.5時間加熱撹拌し、減圧下溶媒を留去し、AcOEt(酢酸エチル)で処理すると結晶が析出する。これをEtOH中活性炭処理及び再結晶して対応する閉環化合物である化合物19a-cを得ることができる。
【0052】
(第19工程)
TFA(4mL)に2-アミノ-4-ベンジリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物18c(1mmol)と四酢酸鉛(1mmol)を加え、それぞれ室温で15~30分間撹拌し、減圧下溶媒を留去し、残った残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 70-230mesh)で精製し、AcOEt溶出分画より得た固体をAcOEtから再結晶すると対応する8-メチル-3-フェニル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物19cを得ることができる。
【0053】
(第20工程)
エチルセロソルブ(20mL)に2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物17(2mmol)と各種トリエチルオルトエステル類(3mmol)を加え、それぞれ0.5~32時間加熱還流し、溶媒を留去後、AcOEtで処理すると結晶が析出する。これをEtOHから再結晶するとそれぞれ化合物19a-cの転位化合物である8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物20a及びその2位置換化合物である化合物20b,cを得ることができる。
【0054】
(第21工程)
エチルセロソルブ(10mL)に8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン化合物19a-c(2mmol)を加え、12時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、AcOEtで処理すると結晶が析出し、これをEtOHから再結晶して対応する転位化合物である化合物20a-cを得ることができる。
【0055】
なお、本発明のトリアゾロピリミジン化合物(I)~(VIII)並びに合成中間体の単離精製は、通常の核酸塩基の単離精製手段を採用すればよく、例えば、再結晶、各種クロマトグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0056】
本発明のトリアゾロピリミジン化合物(I)~(VIII)は、遊離型、塩型又は水和物型(含水塩も含む)のいずれの形態であってもよい。例えば、塩型としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などの有機酸塩又はアンモニウム塩などを例示することができ、特に薬学的に許容される塩が好ましい。
【0057】
本発明のトリアゾロピリミジン化合物及び該化合物を含む組成物は、悪性腫瘍の治療剤として有用である。腫瘍は、癌、肉腫、血液腫瘍などであり、例えば、胃癌、肝癌、結腸・直腸癌、乳癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮体癌及び卵巣癌、食道癌、肺癌、白血病、骨髄腫、悪性リンパ腫及び頭頸部腫瘍などが挙げられる。本発明のトリアゾロピリミジン化合物及び該化合物を含む組成物は、上記の各種癌疾患の治療剤として有用である。そして、該疾患の治療のために、ヒトに経口、経腸、非経口(静注、点滴静注)、外用(軟膏)などのいずれの経路によっても投与することができる。投与量は、患者の年齢、病態、体重などによって適宜決定されるが、通常は1日当たり1~100mg/kg体重の範囲から選ばれ、一回又は複数回に分けて投与される。
【0058】
本発明化合物を医薬として使用するに際しては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、その他の添加剤を含む組成物として使用するのが好適である。担体としては、乳頭、カオリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、塩化ナトリウムなどの固体状担体:グリセリン、落花生油、ポリビニルピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、水などの液状担体を例示することができる。
【0059】
医薬組成物の形態、すなわち財形としては任意の形態を採ることができ、例えば固体状担体を使用する場合には錠剤、散財、顆粒剤、カプセル化剤などを、液状担体を使用する場合にはシロップ、乳液、クリーム、ゲル、ペースト、注射などを例示することができる。
【実施例
【0060】
以下実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、これにより本発明は何等限定されるものではない。
【0061】
[例1.3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物4a-f,s,t(一般式I)及び2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5a-t(一般式II)の合成例]
前述Scheme 1に記載の反応式に従い、化合物4a-f,s,t及び5a-tで表されるトリアゾロピリミジン化合物を合成した。
【0062】
合成例1:
4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物2の合成
EtOH(8mL)に4-チオチミン化合物1(1g,7.0mmol)とヒドラジン水和物(2g,40mmol)を加え、10分間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取した。これを水から再結晶して無色の針状結晶(0.80g,81%,mp>300℃)を得た。
【化15】
【0063】
合成例2:
4-アルキリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン及び4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3a-rの一般合成
MeOH(25mL)に4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物2(4mmol)と各種アルデヒド類(4.8mmol)を加え、室温で30分~2時間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取し、これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物3a-rを得た(表1~4)。
【0064】
合成例3:
3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物4a-f,s,tの一般合成
(route i):TFA(3mL)に4-アルキリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン又は4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3a-f(0.60mmol)と70%硝酸(0.06mL,0.66mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)又は40℃で30分~3時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去した後、ジエチルエーテルで処理して析出した固体を濾取した。これを0.5%aq.KHCO中洗浄して対応する無色粉末状の目的の化合物4a-c,f,s,tを得た(表5及び6)。
(route ii):TFA(3mL)に4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3b,d,e(0.60mmol)と四酢酸鉛(0.72mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)で30分~1時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去しAcOEtで処理し析出した固体を濾取した。これを0.5%炭酸水素カリウム水溶液で洗浄して無色粉末状の目的の化合物4b,d,eを得た(表5及び6)。
【0065】
合成例4:
2-置換基8-メチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5a-tの合成
(route iii):DMF(10mL)に4-アルキリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン又は4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-オン化合物3a-r(1mmol)と70%硝酸(0.1mL,1.1mmol)を加え、それぞれ100℃又は加熱還流下で1時間加熱撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去してAcOEtで処理し、析出した固体を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物5a-rを得た(表7~10)。
(route iv):EtOH(20mL)又はDMSO(10mL)に3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-オン化合物4s,t(0.60mmol)を加え、それぞれ室温(20℃)~100℃で2時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去しAcOEtで処理し析出した固体を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する転位化合物5s,tを得た(表8及び10)。
【0066】
[例2.2-置換5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物(6b,f,j,l,m)(一般式III)の合成例]
前述Scheme 2に記載の反応式に従い、化合物6b,f,j,l,mで表されるトリアゾロピリミジン化合物を合成した。
【0067】
合成例5:
2-置換5-クロロ-8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン化合物6b,f,j,l,mの一般合成
POCl(10mL)に2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物5b,f,j,l,m(1.3mmol)とトリエチルアミン(4mL)を加え、一晩加熱還流した。反応後、氷冷下で少しずつ水を加え未反応のPOClを分解した。そして、CHClで抽出し、減圧下溶媒を留去した後、析出した結晶に少量のEtOHを加えて結晶を濾取すると、対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物6b,f,j,l,mを得た(表11及び12)。
【0068】
[例3.2-置換8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9a-g(一般式IV)の合成例]
前述Scheme 3に記載の反応式に従い、化合物9a-gで表されるトリアゾロピリミジン化合物を合成した。
【0069】
合成例6:
4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-フルオロピリミジン-2(1)-オン化合物8d-gの一般合成
MeOH(12mL)に5-フルオロ-4-ヒドラジノピリミジン-2(1)-オン化合物7(0.30g,2.08mmol)と適当なアリールアルデヒド(2.70mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取し、ジエチルエーテルで洗った。これをEtOHから再結晶して対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物8d-gを得た(表13及び14)。
【0070】
合成例7:
8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9a及びその2位アルキル置換誘導体である化合物9b,cの一般合成
DMF(10mL)に5-フルオロ-4-ヒドラジノピリミジン-2(1)-オン化合物7(0.20g,1.39mmol)と適当なトリエチルオルトエステル(1.81mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去した後、AcOEtで処理して析出した固体を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物9a-cを得た(表15及び16)。
【0071】
合成例8:
2-アリール-8-フルオロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-オン化合物9d-gの一般合成
DMF(6mL)に4-アリールメチリデンヒドラジノ-5-フルオロピリミジン-2(1)-オン化合物8d-g(0.80mmol)と70%硝酸(0.1ml,1.10mmol)を加え、2時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去した後、AcOEtで処理して析出した固体を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する無色の粉末状又は針状結晶の目的の化合物9d-gを得た(表15及び16)。
【0072】
[例4.3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13a,b(一般式V)及び2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物14a-c(一般式VI)の合成例]
前述Scheme 4に記載の反応式に従い、化合物13a,b及び14a-cで表されるトリアゾロピリミジン化合物を合成した。
【0073】
合成例9:
4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11の合成
EtOH(16mL)に5-メチルピリミジン-2,4(1,3)-ジチオン10(2.0g,12.64mmol)とヒドラジン水和物(1.6g,31.96mmol)を加え、10分間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取した。これを水から再結晶して無色の粉末結晶(1.5g,76%,mp>257℃)を得た。
【化16】
【0074】
合成例10:
4-エチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン及び4-ベンジリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物12b,cの一般合成
MeOH(15mL)に、4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物11(0.57g,3mmol)と各種アルデヒド(3.6mmol)を加え、それぞれ室温で1~12時間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物12b,cを得た(表17及び18)。
【0075】
合成例11:
8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13aの合成
TFA(6mL)に4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン11(0.156g,1mmol)とオルトギ酸トリエチル(5mmol)を加え、それぞれ室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取し、1%aq.KHCOで洗浄し、エタノールから再結晶して対応する目的の化合物13aを得た(表17及び18)。
【0076】
合成例12:
3,8-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物13bの合成
TFA(3mL)に4-エチリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン化合物12b(0.11g,0.6mmol)と四酢酸鉛(0.27g,0.60mmol)を加え、それぞれ室温で10分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで洗浄した後EtOHで処理し、析出した固体を濾取した。これを0.5%aq.KHCOで洗浄し、エタノールから再結晶して無色の対応する粉末結晶の化合物13bを得た(表17及び18)。
【0077】
合成例13:
8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5(6)-チオン化合物14a及びその2位置換誘導体である化合物14b,cの一般合成
DMF(15mL)に4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン-2(1)-チオン11(0.31g,2mmol)と各種トリエチルオルトエステル(2.4mmol)を加え、それぞれ30分~2時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、EtOHで処理し、析出した結晶を濾取した。これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物14a-cを得た(表17及び18)。
【0078】
[例5.3-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物(19a-c)(一般式VII)及び2-置換8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物(20a-c)(一般式VIII)の合成例]
前述Scheme 5に記載の反応式に従い、化合物13a,b及び14a-cで表されるトリアゾロピリミジン化合物を合成した。
【0079】
合成例14:
2-クロロ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物16の合成
EtOH(4mL)と2,4-ジクロロ-5-メチルピリミジン15(1.0g,6.13mmol)の混合物に氷冷下ヒドラジン水和物(1mL,20.6mmol)を滴下し、室温で10分間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取し、EtOHから再結晶して無色の針状結晶(0.70g,72%,mp>340℃)を得た。
【化17】
【0080】
合成例15:
2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物17の合成
28%aq.NH(50mL)に2-クロロ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン16(1.0g,6.92mmol)を加え、封管中アルゴン雰囲気下140℃で84時間加熱した。反応後、減圧下溶媒を留去し、少量のEtOHで処理すると固体が析出した。これを濾取して水に溶かしてイオン交換樹脂(Dowex SAR,20-50mesh,Cl form,10g)で処理した。得られた固体をEtOHから再結晶して無色の針状結晶(0.30g,31%,mp239-240℃)を得た。
【化18】
【0081】
合成例16:
2-アミノ-4-ベンジリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物18cの合成
MeOH(10mL)に2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン17(0.28g,2mmol)とベンズアルデヒド(0.26g,2.4mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取してこれをEtOHから再結晶して無色粉末結晶の対応する目的の化合物18c(0.36g,79%,mp204℃)を得た。
【化19】
【0082】
合成例17:
8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物19a及びその3位置換誘導体である化合物19b,cの一般合成
(route i):エチルセロソルブ(10mL)に対応する2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン17(0.28g,2mmol)と対応する各種トリエチルオルトエステル(4mmol)を加え、それぞれ100~120℃で30分~2.5時間加熱撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、AcOEtで処理すると結晶が析出した。これを濾取し、EtOH中活性炭処理及び再結晶して対応する目的の化合物19a-cを得た(表19及び20)。
(route ii)TFA(4mL)に2-アミノ-4-ベンジリデンヒドラジノ-5-メチルピリミジン化合物18c(0.228g,1mmol)と四酢酸鉛(1mmol)を加え、それぞれ室温で15~30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、残った残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 70-230mesh)で精製し、AcOEt溶出分画より得た固体をAcOEtから再結晶して対応する目的の化合物19cを得た(表19及び20)。
【0083】
合成例18:
8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-]ピリミジン-5-アミン化合物20a及びその2位置換誘導体である化合物20b,cの一般合成
(route iii):エチルセロソルブ(20mL)に2-アミノ-4-ヒドラジノ-5-メチルピリミジン17(0.28g,2mmol)と各種トリエチルオルトエステル類(3mmol)を加え、それぞれ0.5~32時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、AcOEtで処理すると結晶が析出した。これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物20a-cを得た。但し化合物20cについてはシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 70-230mesh)で分離精製し、それぞれAcOEt/-hexane(-ヘキサン)=4/1画分、2/3画分、1/3画分より得た固体をEtOHから再結晶して対応する目的の化合物を得た(表19及び20)。
(route iv)エチルセロソルブ(10mL)に8-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-]ピリミジン-5-アミン化合物19a-c(2mmol)を加え、12時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、AcOEtで処理すると結晶が析出した。これをEtOHから再結晶して対応する目的の化合物20a-cを得た(表19及び20)。
【0084】
[例6.化合物の物理データ及びNMRデータ]
例1~5で合成した化合物の物理データ及びNMRデータを以下表1~20に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
【表10】
【0095】
【表11】
【0096】
【表12】
【0097】
【表13】
【0098】
【表14】
【0099】
【表15】
【0100】
【表16】
【0101】
【表17】
【0102】
【表18】
【0103】
【表19】
【0104】
【表20】
【0105】
[例7.化合物の評価]
試験例:
合成したトリアゾロピリミジン化合物に関して、抗腫瘍作用の指標となる細胞増殖阻害活性を検討した。試験はMTT法(T.Mosmann,J.Immunol.Methods,65,55(1983);M.B.Hansen,S.E.Nielsen and K.Berg,J.Immunol.Methods,119,203(1989)、これらの文献の全記載はここに開示として援用される。)で行い、試験した癌細胞はCCRF-HSB-2細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病)及びKB細胞(ヒト鼻腔頸癌)である。対照薬として、急性白血病や消化器癌などに用いられる代謝拮抗型の抗癌剤であるシタラビン(Ara-C、cytarabine:4-amino-1-β-D-arabinofuranosyl-2(1)-one)及び5-フルオロウラシル(5-FU,5-fluorouracil)を用いた。
【0106】
In Vitro抗腫瘍効果検定法
(材料)
ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞(T-細胞)CCRF-HSB-2及びヒト鼻咽腔癌由来KB細胞の培養は10%牛胎児血清添加RPMI1640培地で行った。
試験薬剤は10mg/mlとなるようにジメチルスルホキシドに溶解し、4℃で保存した。これをMEM-ハンクス培地で希釈し、試験に用いた。
(方法)
1.96穴プレートに薬剤溶液あるいはMEM-ハンクス培地50μlをあらかじめ入れておいた。
2.対数増殖期の細胞をハーベストし、細胞密度が1×10 cells/ml(5,000 cells/50μl/ウェル)、血清濃度が20%となるように細胞懸濁液を調製し、50μlを各ウェルに播種する。37℃,3日間、炭酸ガスインキュベーター中で培養した。
3.培養終了後、各ウェルに10μlのMTT溶液(5mg/ml in PBS-)を加え、更に37℃,4時間、炭酸ガスインキュベーター中で培養した。
4.培養終了後、各ウェルに100μlの0.02N HCl/50%N,N-ジメチルホルムアミド/20%SDSを加え、撹拌して生成したホルマザンを溶解し、マイクロプレートリーダー(東ソー MPR4Ai)により、570nm(試験波長)、690nm(参照波長)における吸光度を測定し、次式により増殖阻止率を求めた。

阻止率(%)=(1-Tx/Cx)×100

Tx:サンプル含有ウェルの吸光度
Cx:サンプル非含有(対照)ウェルの吸光度

5.50%阻止率を示すサンプル濃度(IC50)をプロビット法によりコンピューターソフトを用いて算出した。

*MTT溶液:MTT(Sigma M-2128)1gを200mlのPBS-に遮光下で溶解し、0.45μmのフィルターで濾過後、4℃で保存した。保存中に不溶物が析出してきたら再度濾過を行った。
【0107】
[評価]
算出したIC50の結果を表21に示す。
【0108】
【表21】
【0109】
対照薬として用いたシタラビン(AraC)は、非常に毒性が強く、多くの副作用が知られている抗癌剤であり、主に他の抗腫瘍剤と併用する場合に限り用いられている。一方、5-FUは副作用を有するものの各種癌治療薬として汎用されている。測定したシタラビン(AraC)のCCRF-HSB-2細胞又はKB細胞に対するIC50はそれぞれ0.021μMと0.12μMであり、5-FUのCCRF-HSB-2細胞又はKB細胞に対するIC50はそれぞれ2.74μMと2.24μMであった。したがって、腫瘍細胞増殖阻害活性を有する化合物の中でも、細胞増殖阻害活性が5-FUよりも高く、シタラビン程には至らない活性を有する化合物が、高い抗腫瘍作用を有し、かつ高い汎用性を有する抗腫瘍剤として使用できることが期待される。
【0110】
表21に記載のとおり、CCRF-HSB-2細胞に対して、化合物3a、4a、5b-c、5f-l、5o-r、6b、f、j、l、m、9c-g、14c及び20cは、IC50が100μM以下の値で細胞増殖阻害活性を有していた。特に化合物6b、f、j、及びmは、5-FUよりも強い細胞増殖阻害活性を有していた。
【0111】
また、KB細胞に対して、化合物3a、4a、5b-c、5f-m、5o-q、6b、f、j、l、m、9c-g、14c及び20cは、IC50が100μM以下の値で細胞増殖阻害活性を有していた。特に、化合物6fは、5-FUよりも強い細胞増殖阻害活性を有していた。
【0112】
なお、化合物3b、4b、5a、5d、5e、5nはいずれの細胞に対しても細胞増殖阻害活性は有するものの、IC50は100μMより大きい値を示した。
【0113】
したがって、化合物3a、4a、5b-c、5f-m、5o-r、6b、f、j、l、m、9c-g、14c及び20c、並びに該化合物を含む組成物は細胞増殖阻害活性を有し、抗腫瘍剤として有用である。特に化合物6b、f、j、及びm並びに該化合物を含む組成物は、高い抗腫瘍作用を有し、かつ高い汎用性を有する抗腫瘍剤として使用できることが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のトリアゾロピリミジン化合物は、市販の抗癌剤5-FUと同様又はそれ以上の抗腫瘍活性を有し、本発明のトリアゾロピリミジン化合物を含有する組成物は、各種悪性腫瘍の治療のための抗腫瘍剤として有用である。
【関連出願の相互参照】
【0115】
本出願は、2019年4月3日出願の日本特願2019-071525号の優先権を主張し、その全記載は、ここに開示として援用される。