(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】複式逆止弁の片手操作式アプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230620BHJP
A61M 5/178 20060101ALI20230620BHJP
A61M 5/19 20060101ALI20230620BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61B17/00 400
A61M5/178 500
A61M5/19
A61M5/24 530
(21)【出願番号】P 2021520571
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 US2018059628
(87)【国際公開番号】W WO2020096587
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】サンダース, ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パーマー, クリシュナクマルシン ヒテンドラシン
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, ジェローム
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0025500(US,A1)
【文献】特開2011-104443(JP,A)
【文献】特開2012-161473(JP,A)
【文献】特開2017-177073(JP,A)
【文献】特表2018-507087(JP,A)
【文献】特表2002-537962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61M 5/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガ機構と、
前記トリガ機構と係合するように構成され、少なくとも第1のシリンジのプランジャと結合することによって、前記第1のシリンジを保持するようにさらに構成されたプッシャと、
前記第1のシリンジに流体結合された弁と、
前記弁から遠位方向に延び、前記弁に流体結合されたカニューレと
を備える
送達デバイスであって、
前記トリガ機構の作動により、前記第1のシリンジ内の組成物が前記第1のシリンジから前記弁を通って前記カニューレを通り前記カニューレの遠位端部から排出されるように、前記プッシャ及び前記第1のシリンジの前記プランジャが遠位方向に並進し、
前記弁は、第2のシリンジが前記弁及び前記第1のシリンジの両方と流体連通するように、前記第2のシリンジと係合するようにさらに構成されて
おり、
前記送達デバイスは、前記第1のシリンジに残っている前記組成物の量を示す窓インジケータをさらに備える、送達デバイス。
【請求項2】
前記弁と前記第2のシリンジとの間の係合は、ルアーロック係合である、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記弁は二方向逆止弁である、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記弁は使用者が切替可能な止め栓弁である、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記プッシャは複数の歯を備え、前記トリガ機構はラチェットを備え、前記ラチェットは前記プッシャの前記複数の歯と係合するように構成されている、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記カニューレは、前記組成物を送達するように構成された内側カニューレと、前記内側カニューレの周りに同心円状に配置された外側カニューレとを備える、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記外側カニューレはステンレス鋼である、請求項
6に記載の送達デバイス。
【請求項8】
トリガ機構、
前記トリガ機構と係合するように構成され、少なくとも第1のシリンジのプランジャと結合することによって、前記第1のシリンジを保持するようにさらに構成されたプッシャ、
前記第1のシリンジに流体結合された弁、及び
前記弁から遠位方向に延び、前記弁に流体結合されたカニューレ
を備える送達デバイスと、
前記弁に流体結合され、組成物を含む第2のシリンジと
を備え、
前記第2のシリンジのプランジャを押し込むことにより、前記組成物が前記第2のシリンジから前記弁を通って前記第1のシリンジ内に排出され、
前記トリガ機構の作動により、前記第1のシリンジ内の前記組成物が前記第1のシリンジから前記弁を通って前記カニューレを通り前記カニューレの遠位端部から排出されるように、前記プッシャ及び前記第1のシリンジの前記プランジャが遠位方向に並進
し、
前記送達デバイスは、前記第1のシリンジに残っている前記組成物の量を示す窓インジケータをさらに備える、送達システム。
【請求項9】
前記弁は、前記組成物が前記第2のシリンジから前記弁を通って前記第1のシリンジに入る第1の方向、及び前記第1のシリンジから前記弁を通って前記カニューレに入る第2の方向にしか流れることができないような、二方向逆止弁である、請求項
8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記弁と前記第2のシリンジとの間の係合は、ルアーロック係合である、請求項
8に記載の送達システム。
【請求項11】
前記組成物は粘性止血材である、請求項
8に記載の送達システム。
【請求項12】
前記カニューレは、前記組成物を送達するように構成された内側カニューレと、前記内側カニューレの周りに同心円状に配置された外側カニューレとを備える、請求項
8に記載の送達システム。
【請求項13】
プレフィルド塩化ナトリウム溶液シリンジと、
トロンビンバイアルと、
プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジと、
送達デバイスであって、
トリガ機構、
前記トリガ機構と係合されるように構成され、少なくとも送達シリンジのプランジャと結合することによって、前記送達シリンジを保持するようにさらに構成されたプッシャ、
前記送達シリンジに流体結合された弁、及び
前記弁から遠位方向に延び、前記弁に流体結合されたカニューレ
を備える送達デバイスと
を含み、
前記プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジは、前記弁に流体結合し、
前記プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジのプランジャを押し込むことにより、組成物が前記プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジから前記弁を通って前記送達シリンジ内に排出され、
前記トリガ機構の作動により、前記送達シリンジ内の前記組成物が前記送達シリンジから前記弁を通って前記カニューレを通り前記カニューレの遠位端部から排出されるように、前記プッシャ及び前記送達シリンジの前記プランジャが遠位方向に並進
し、
前記送達デバイスは、前記送達シリンジに残っている前記組成物の量を示す窓インジケータをさらに備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]医療用途では、過度の出血を防ぐことが重要である。現在、過度の出血を防ぎ、したがって手術中の輸血率及びその他の軽い合併症を減少させるための多数の手順及び関連材料が存在する。そのような例の1つには、バリア材料、例えば、金属、ポリマー及び天然材料を出血部位に導入することが含まれる。しかし、これらの製品は、下層の組織にうまく適合しないことがある。他の材料、例えば、ナイロン、セロファン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シロキサン、エラストマー及びポリ乳酸コポリマーフィルムは、より柔軟性であるが生分解性でないため、予測不能な潜在的に望ましくない結果を伴って体内に残存する。加えて、出血部位へのインプラントの配置及び固定は困難であることが多い。
【0002】
[0002]過度の出血を防ぐための代替材料としては、止血マトリックス材のような非固体癒着防止材が挙げられてもよい。これらの材料の使用には、治療する領域に入り込んで適合するために十分な流動性である一方で、同時に、組織が治癒するまで出血部位に留まるために十分な粘性であることが必要である。粘性材料は、送達により高い圧迫力を必要とすることが多い。例えば、シリンジを通して粘性材料を手動で押し出すのは困難であることが多い。さらに、非固体癒着防止材を体表又は体内の出血部位に送達するには、高度な使用者制御が必要である。材料は、出血部位のような治療効果のある部位を標的にするように制御された方法で送達されるべきである。少なくともこれらの理由から、任意の目的とする送達デバイスは、使用及び制御が容易でなければならない。
【0003】
[0003]止血材を送達する典型的な手順は、送達チューブに止血材を装填することを含んでもよい。具体的には、外科医は、シリンジによって送達チューブを充填することにより、送達チューブを装填することができる。これは、時間のかかるプロセスとなり得る。典型的には、このようなプロセスでは、送達チューブは外科医によって患者の身体のある位置に配置される。次に、外科医は、送達チューブと同心円状のスタイレットを送達チューブの後端部に挿入する。スタイレットを送達チューブの後端部に挿入することによって、止血材は患者の身体の当該位置にある送達チューブの前端部から排出される。この手順は、送達チューブを保持して配置する片方の手と、スタイレットを押す片方の手との両手での実施を必要とする。片手での手順を実施するのが好ましい。さらに、スタイレットは送達チューブを初めから終わりまで並進できないため、止血材の一部が送達チューブに残り、したがって止血材を無駄にし得る。止血材を不必要に無駄にしないことが好ましい。
【0004】
[0004]上記の理由により、止血材組成物を正確に投与するための改善された送達デバイス、送達システム及び関連する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
[0005]治療を改善する、特に過度の出血を防ぐために、新たな送達デバイス、送達システム及び送達方法が本明細書に記載される。本開示は、送達位置及び送達速度の両方に関して、高度な使用者制御で患者に組成物を送達する新たなデバイス、システム及び方法を実施しようとするものであり、これらはさらに、送達デバイスの目詰まりを低減し、送達デバイスを使用するための準備に伴う準備時間を改善し、不完全な送達に伴う無駄な材料を低減することができる。
【0006】
[0006]本明細書の開示に鑑み、本発明の範囲を何ら限定することなく、特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第1の態様では、送達デバイスは、トリガ機構と、プッシャと、弁と、カニューレとを備える。プッシャは、トリガ機構と係合し、少なくとも第1のシリンジのプランジャと結合して第1のシリンジを保持するように構成されている。弁は、第1のシリンジに流体結合されている。カニューレは、弁から遠位方向に延び、弁に流体結合されている。トリガ機構の作動により、第1のシリンジ内の組成物が第1のシリンジから弁を通ってカニューレを通りカニューレの遠位端部から排出されるように、プッシャ及び第1のシリンジのプランジャは遠位方向に並進する。弁は、第2のシリンジが弁及び第1のシリンジの両方と流体連通するように、第2のシリンジと係合するようにさらに構成される。
【0007】
[0007]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第2の態様では、トリガ機構の作動に先立って、第1のシリンジに第2のシリンジによって組成物が充填されるように、組成物は第2のシリンジから弁を通って第1のシリンジ内に排出される。
【0008】
[0008]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第3の態様では、弁と第2のシリンジとの間の係合はルアーロック係合である。
【0009】
[0009]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第4の態様では、弁は二方向逆止弁である。
【0010】
[0010]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第5の態様では、弁は使用者が切替可能な止め栓弁である。
【0011】
[0011]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第6の態様では、プッシャは複数の歯を備え、トリガ機構はラチェットを備え、ラチェットはプッシャの複数の歯と係合するように構成されている。
【0012】
[0012]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第7の態様では、組成物は粘性止血材である。
【0013】
[0013]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第8の態様では、デバイスは、第1のシリンジに残っている組成物の量を示す窓インジケータをさらに備える。
【0014】
[0014]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第9の態様では、カニューレは、組成物を送達するように構成された内側カニューレと、内側カニューレの周りに同心円状に配置された外側カニューレとを備える。
【0015】
[0015]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第10の態様では、外側カニューレはステンレス鋼である。
【0016】
[0016]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第11の態様では、送達システムは送達デバイスを備える。送達デバイスは、トリガ機構と、プッシャと、弁と、カニューレとを備える。プッシャは、トリガ機構と係合し、少なくとも、第1のシリンジのプランジャと結合することによって第1のシリンジを保持するように構成されている。弁は、第1のシリンジに流体結合されている。カニューレは、弁から遠位方向に延び、弁に流体結合されている。送達システムは、弁に流体結合された第2のシリンジをさらに備え、第2のシリンジは、組成物をさらに含む。第2のシリンジのプランジャを押し込むことによって、組成物が第2のシリンジから弁を通って第1のシリンジ内に排出される。トリガ機構の作動により、第1のシリンジ内の組成物が第1のシリンジから弁を通ってカニューレを通りカニューレの遠位端部から排出されるように、プッシャ及び第1のシリンジのプランジャが遠位方向に並進する。
【0017】
[0017]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第12の態様では、弁は、組成物が第2のシリンジから弁を通って第1のシリンジに入る第1の方向、および第1のシリンジから弁を通ってカニューレに入る第2の方向にしか流れることができないような、二方向逆止弁である。
【0018】
[0018]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第13の態様では、弁と第2のシリンジとの間の係合は、ルアーロック係合である。
【0019】
[0019]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第14の態様では、組成物は粘性止血材である。
【0020】
[0020]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第15の態様では、カニューレは、組成物を送達するように構成された内側カニューレと、内側カニューレの周りに同心円状に配置された外側カニューレとを備える。
【0021】
[0021]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第16の態様では、組成物を送達する方法は、送達デバイスの弁に、組成物を含む供給シリンジを取り付けるステップを含む。本方法は、プランジャの押し込みに応じて、組成物が供給シリンジから弁を通って送達シリンジ内に排出されるように、供給シリンジのプランジャを押し込むステップを含む。本方法は、トリガ機構の作動に応じて、送達シリンジのプランジャが押し込まれ、組成物が送達シリンジから弁を通ってカニューレ内に排出されるように、送達デバイスのトリガ機構を作動させるステップを含む。本方法は、プランジャの押し込みに応じて、追加の組成物が供給シリンジから弁を通って送達シリンジ内に排出されるように、供給シリンジのプランジャをさらに押し込むステップを含む。本方法は、トリガ機構の作動に応じて、送達シリンジのプランジャが押し込まれ、追加の組成物が送達シリンジから弁を通ってカニューレ内に排出されるように、送達デバイスのトリガ機構をさらに作動させるステップを含む。
【0022】
[0022]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第17の態様では、本方法は、供給シリンジを送達デバイスの弁から取り外すステップを含む。本方法は、送達デバイスの弁に、組成物とは異なる洗浄流体を含む洗浄シリンジを取り付けるステップを含む。本方法は、プランジャの押し込みに応じて、洗浄流体が洗浄シリンジから弁を通って送達シリンジ内に排出されるように、洗浄シリンジのプランジャを押し込むステップを含む。本方法は、トリガ機構の作動に応じて、送達シリンジのプランジャが押し込まれ、洗浄流体が送達シリンジから弁を通ってカニューレ内に排出され、その結果、洗浄流体がカニューレから組成物を押し出すように、送達デバイスのトリガ機構を作動させるステップを含む。
【0023】
[0023]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第18の態様では、洗浄流体は、生理食塩水、又は他の液状媒体、又は気体である。
【0024】
[0024]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第19の態様では、供給シリンジを送達デバイスの弁にまず取り付ける前に、組成物は供給シリンジ内で投与のために準備される。
【0025】
[0025]特に指定しない限り、本明細書に列挙される任意の他の態様と組み合わされてもよい本開示の第20の態様では、キットは、プレフィルド塩化ナトリウム溶液シリンジと、トロンビンバイアルと、プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジと、送達デバイスとを含む。送達デバイスは、トリガ機構と、プッシャと、弁と、カニューレとを備える。プッシャは、トリガ機構と係合するよう構成され、プッシャは、少なくとも送達シリンジのプランジャと結合することによって送達シリンジを保持するようにさらに構成されている。弁は、送達シリンジに流体結合されている。カニューレは、弁から遠位方向に延び、弁に流体結合されている。プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジは、弁に流体結合している。プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジのプランジャを押し込むことにより、組成物はプレフィルドゼラチンマトリックスシリンジから弁を通って、送達シリンジ内に排出される。トリガ機構の作動により、送達シリンジ内の組成物が送達シリンジから弁を通ってカニューレを通りカニューレの遠位端部から排出されるように、プッシャ及び送達シリンジのプランジャが遠位方向に並進する。
【0026】
[0026]開示されるデバイス、システム及び方法の追加の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び図面に記載され、以下の詳細な説明及び図面により明らかとなるであろう。本明細書に記載される特徴及び利点は、すべてを網羅するわけではなく、特に、図面及び記述を鑑みて、多くの追加の特徴及び利点が当業者に明らかとなる。さらに、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙される利点のすべてを有する必要はない。さらに、本明細書で使用されている用語は、主に読みやすさ及び説明の目的で選択されたものであり、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意すべきである。
【0027】
図面は本発明の典型的な実施形態のみを描いたものであり、本開示の範囲を限定するものとして考えてはならないと理解した上で、添付の図面を用いることにより、本開示はさらに具体的に詳細に記述され説明される。図面は以下に列挙される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による送達デバイスの分解斜視図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による第1のトリガ構成の送達デバイスの分解側立面図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による第2のトリガ構成の送達デバイスの分解側立面図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による第3のトリガ構成の送達デバイスの分解側立面図である。
【
図5A】本開示の例示的な実施形態による送達デバイスの斜視図である。
【
図5B】本開示の例示的な実施形態による送達デバイスの斜視図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態による送達システムの側立面図である。
【
図7A】本開示の例示的な実施形態による送達システムの側立面図である。
【
図7B】本開示の例示的な実施形態による送達システムの側立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0035]上で簡単に説明したように、本開示は、種々の実施形態において、材料を創傷部位に局所的に適用することによって出血を抑制するデバイス、システム及び方法を対象とする。材料は、典型的には、流動性止血材料などの止血マトリックス材料である。特定の実施形態では、送達デバイス、システム及び方法は、粘性止血マトリックス、例えばFLOSEAL(登録商標) VH S/D(FLOSEAL(登録商標) HEMOSTATIC MATRIX VH S/D、FLOSEAL(登録商標) HEMOSTATIC MATRIX、及びFLOSEAL(登録商標)としても知られる)(Baxter Healthcare Corporation)、ヒト由来のトロンビン溶液と組み合わせたウシ由来のゼラチンマトリックスを送達するように構成される。しかしながら、本明細書に開示される送達デバイス、システム及び方法は、任意の粘性材料、液体材料、固体材料又は気体材料のような他の材料を送達してもよいと理解すべきである。
【0030】
[0036]止血材を適用する前に、止血材を出血中の部位にすぐに直接適用できるように、出血している組織は、一般に拭き取るか、又は軽く吸引して余分な血液を取り除く。シリンジ又はアプリケータのチップが濡れた表面と接触するのを最小限にすることによって、シリンジ及び/又はアプリケータのチップの目詰まりを低減することができる。同様に、目詰まりは、本明細書で説明される送達デバイス又は送達システムの特定の構成によって防止することができる。止血材を適用した後、湿らせたガーゼなどの非癒着性基材を用いて治療部位に穏やかな癒合(approximation)を適用するのが一般的である。初回の適用後、出血が続いていれば、使用者は追加の止血材を適用してもよい。非癒着性基材が創傷部位に癒着した場合は、非ヘパリン化生理食塩水で穏やかに灌流することが血栓の破壊を最小限に抑えながら基材を除去するのに役立ち得る。出血が止まったら、血栓に取り込まれていない止血材を穏やかな灌流によって注意深く除去し、治療部位から吸引する。
【0031】
[0037]本開示の組成物の送達は、任意の臓器表面、例えば肝臓、脾臓、心臓、腎臓、腸、血管、他の血管器官などであってもよい、擦り剥いた又は損傷した組織表面における出血を抑制する(止血を行う)のに特に適している。例えば、本明細書に記載の送達デバイス又は送達システムを使用して、止血材料を出血中の領域に適用してもよい。材料を適用する例示的な方法としては、送達デバイスから直接材料を分配すること、又はアプリケータのチップを使用することが挙げられる。患者の体腔内の部位にアクセスすることは困難であることが多いため、止血材を出血部位に送達するために内視鏡アプリケータを使用してもよい。
【0032】
[0038]前述のように、典型的な内視鏡アプリケータは、片手で容易に使用することができない。例えば、典型的なアプリケータは、止血材を装填した中空チューブと、止血材を分配するために中空チューブに手動で挿入されるスタイレットとを備える。この構成には、いくつかの理由で改善の余地がある。第1に、内視鏡アプリケータを装填するには、使用者は(ソースシリンジによって)中空チューブを充填することによって手動で中空チューブを装填する必要があり、これは時間のかかるプロセスであることが多い。第2に、スタイレットが送達のために中空チューブ内に挿入できるように、ソースシリンジは中空チューブから分離される必要がある。第3に、内視鏡アプリケータの配置は、使用者に、一方では片手でスタイレットを保持すると同時に、もう片方の手でぎこちなく中空チューブを持ち、遠位端部を送達部位に配置することを要する。第4に、内視鏡アプリケータを介した材料の送達は、使用者に正確な送達を保証するために片方の手を動かさないようにしながら、同時に片手でスタイレットを中空チューブに押し込むことを要する。これは、押し出しに高い圧迫力を必要とする粘性材料の場合にはますます困難になる。第5に、使用者が止血材の送達量又は送達速度を測定することは困難である。最後に、完全にではないが、デバイスの最大能力まで排出したとしても、止血材のホールドアップ体積が中空チューブ及びスタイレットの表面に未使用のまま残り、事実上の廃棄材料となる。
【0033】
[0039]上述した典型的なアプリケータシステムと比較して、本明細書に開示される送達デバイス、送達システム及び関連する方法は、正確な投与、送達位置及び送達速度に関する高度な使用者制御、目詰まりの低減、準備時間の改善及び廃棄材料の低減をもたらすことが有利である。
【0034】
送達デバイス及び送達システム
[0040]ここで
図1を参照すると、送達デバイス5の分解斜視図が示されている。一実施形態では、送達デバイス5は、左ハウジング7及び右ハウジング8を含むツーピース成形ハウジングを備える。左ハウジング7及び右ハウジング8はそれぞれ、互いに結合するように構成される。種々の実施形態では、結合は、摩擦嵌め、機械的プレス嵌め、超音波溶接又は任意の他の機械的係合によって達成され得る。一実施形態では、左ハウジング7及び右ハウジング8は、射出成形ポリカーボネート、ガラス充填ポリアミドポリマー又は他の関連材料で構成される。或いは、本明細書で「ハウジング全体」とも呼ばれる左ハウジング7及び右ハウジング8のアセンブリは、ワンピースの材料、例えば、ポリプロピレン、PVC、非DEHP PVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン混合物若しくは他の同様の材料として射出成形されてもよく、及び/又は他の手段、例えば3D印刷若しくは他の同様のプラスチック製造方法によって形成されてもよい。一実施形態では、ハウジング全体は、使用者が送達デバイス5を片手で保持できるように、手持ち式に構成される。
【0035】
[0041]送達デバイス5は、射出成形ポリカーボネート、ガラス充填ポリアミドポリマー又は他の関連材料で構成され得るプッシャ9を備える。送達デバイス5は、プランジャを有するリザーバシリンジ10をさらに備え、プランジャは、リザーバシリンジ10のバレルの内側円筒形表面と係合して密封するように組み立てられ構成される。このようにして、プランジャは、リザーバシリンジ10のバレルの長さに沿って並進できる。リザーバシリンジ10のプランジャ及びバレルはそれぞれ、任意の好適なプラスチック材料、例えば、ポリプロピレン、PVC、非DEHP PVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン混合物又は他の同様の材料で構成され得る。リザーバシリンジ10のプランジャ及びバレルはそれぞれ、ポリプロピレンで構成されることが好ましいが、この機能のために任意の既知の材料又は材料の組み合わせが採用され得ると理解すべきである。一実施形態では、リザーバシリンジ10は、粘性止血材などの組成物を含む。
【0036】
[0042]プッシャ9は、リザーバシリンジ10のバレルを作動させるように構成される。具体的には、プッシャ9は、少なくともリザーバシリンジ10のプランジャと結合することによって、リザーバシリンジ10を保持するように構成される。一実施形態では、プッシャ9は、リザーバシリンジ10のプランジャのフランジ付き端部を受容するように構成されたスロットを備える。プッシャ9が並進すると、リザーバシリンジ10のバレルも同様に並進する。したがって、プッシャ9の並進によってリザーバシリンジ10を作動させる。
【0037】
[0043]送達デバイス5は、作動されるとプッシャ9を並進させるトリガ機構15を備える。一実施形態では、トリガ機構15は、係合爪16、係合ラック17、係合ばね18、係合ピン19、トリガ20、トリガばね21及びトリガピン22を備える。係合爪16、係合ラック17及びトリガ20はそれぞれ、射出成形ポリカーボネート、ガラス充填ポリアミドポリマー又は他の関連材料で構成されてもよいと理解すべきである。同様に、ばね及びピンはそれぞれ、302ステンレス鋼又は他の関連する金属などの金属で構成されてもよいと理解すべきである。
【0038】
[0044]ここで
図2~
図4を参照すると、種々のトリガ構成における送達デバイス5の分解側面図が示されている。より具体的には、
図2~
図4は、プッシャ9がトリガ機構15及びその副構成要素とどのように係合するかを示す。このようにして、例えば使用者によってトリガ機構15のトリガ20に付与されるような回転力は、シリンジ作動のためにプッシャ9を並進させる線形の力に変換される。
【0039】
[0045]より具体的には、プッシャ9の底部は、プッシャ歯28又は直線状のギアの歯のような他の種類の隆起部を備えてもよく、これらは係合爪16と接触する。係合爪16は、係合ばね18(図示せず)によって留められ、係合爪16がプッシャ9及びプッシャ歯28に向かって特定の方向に付勢されるように、係合ピン19を中心に枢動可能であってもよい。一般に、係合爪16、係合ラック17、係合ばね18及び係合ピン19は、互いに結合されており、一般に、プッシャ9のプッシャ歯28と係合する機械的ドッグと呼ばれることがある。係合爪16は、プッシャ9に向かって特定の方向、例えば傾斜した方向に付勢されているため、プッシャ9は、係合ラック17及び係合爪16と共に、特定の方向、例えばカニューレ23に向かう遠位方向に並進し、プッシャ9は、係合ラック17及び係合爪16と共に、これらの構成要素が反対方向に並進するときには並進しない。例えば、係合ラック17及び係合爪16がカニューレ23から離れる近位方向に並進するとき、プッシャ9は並進せず、むしろ、プッシャ9はその現在位置に留まる。このようにして、送達デバイス5は、以下でより詳細に説明するように、ラチェット効果を発揮する。
【0040】
[0046]係合ラック17は、トリガ20の上部とさらに係合する。例えば、係合ラック17及びトリガ20の上部はそれぞれ、トリガ20から係合ラック17に力が変換できるように、直線状又は曲線状のギアの歯などの歯又は隆起を備えてもよい。トリガ20は、トリガピン22を中心に枢動可能であり、トリガばね21(図示せず)によって開いた構成で付勢されている。
【0041】
[0047]さらに、送達デバイス5は、直線状の端部30及び曲線状端部31を有するスロット29を備える。一実施形態では、スロット29は、左ハウジング7又は右ハウジング8の一方に位置する。異なる実施形態では、スロット29は、左ハウジング7及び右ハウジング8の両方に位置する。係合ラック17及びその関連する構成要素は、スロット29が係合ラック17の動きを、直線方向及び曲線方向を含む、スロット29によって規定される方向に制限するように、スロット29と接する。スロット29は、直線状の端部30及び曲線状端部31の両方を備えるため、スロット29は、係合爪16のプッシャ歯28からの係合及び係合解除を提供する。
【0042】
[0048]例えば、
図2は、トリガ20は、送達デバイス5のハンドルから約50°で延びている第1のトリガ構成を示す。係合ラック17及びトリガ20の上部はそれぞれ、互いに係合する歯を備える。トリガ20は、ハンドルから50°などの開位置に位置しているため、トリガ20の歯は、スロット29に沿って近位方向に係合ラック17を押す。具体的には、係合ラック17は、スロット29の曲線状端部31に位置する。係合ラック17の一部は曲線状端部31にあるため、係合ラック17は、スロット29の直線状端部30によって規定される方向からわずかに枢動する。このようにして、係合ラック17を枢動させることによって、係合爪16はプッシャ歯28から係合解除される。係合解除は、例えば、使用者がプッシャ9を近位方向に手動で並進させてリザーバシリンジ10を送達デバイス5に装填することができるように、又は、以下でより詳細に説明するように、使用者がリザーバシリンジ10を充填又は再充填できるため有用である。
【0043】
[0049]トリガ20が送達デバイス5のハンドルから50°であるときに係合爪16が係合解除されるが、トリガ20の代替的な係合解除構成が考えられ、係合爪16はトリガ20の任意の他の回転の向きで係合解除してもよいと理解すべきである。さらに、係合爪16、係合ラック17並びに直線状端部30及び曲線状端部31を含むスロット29の特定の構成並びに幾何形状は、係合解除の範囲に影響を与えることがある。
【0044】
[0050]
図3は、トリガ20が送達デバイス5のハンドルから約40°で延びている第2の構成を示す。例えば、この第2の構成では、使用者は、部分的に絞ったトリガ20を持っている。念のために確認すると、係合ラック17及びトリガ20の上部はそれぞれ、互いに係合する歯を備える。トリガ20は部分的に絞られているため、トリガ20の歯が回転し、係合ラック17をスロット29に沿って遠位方向に押す。係合ラック17は、もはやスロット29の曲線状端部31に位置せず、したがって、スロット29の直線状端部30によって規定される方向から離れるように枢動しない。枢動しないことによって、係合ラック17は、係合爪16とプッシャ歯28とを直接係合させる。係合は、例えば、使用者がトリガ20を絞ることによってリザーバシリンジ10から材料を送達できるため有用である。
【0045】
[0051]より具体的には、使用者がトリガ20を絞ると、トリガ20はトリガピン22を中心に閉じた構成へと回転する。トリガ20が絞られると、トリガ20の回転運動は、これらの構成要素のギアの歯同士の係合によって、係合ラック17における直線運動に変換される。したがって、係合ラック17及びその関連する構成要素は、直線方向に並進する。例えば、これらの構成要素は、スロット29に沿って直線状端部30に向かって並進する。
【0046】
[0052]係合ラック17及び係合爪16の直線運動は、上述したように、係合爪16とプッシャ歯28との間の係合によって、プッシャ9の直線運動にさらに変換される。言い換えれば、係合ラック17及び係合爪16がスロット29の直線状端部30に向かって並進すると、プッシャ9が送達デバイス5の遠位端部に向かって並進する。このように、トリガ機構15は、トリガ20からの回転運動をプッシャ9での直線運動に効果的に変換する。また、上述したように、プッシャ9がリザーバシリンジ10を保持しているため、プッシャ9の並進はリザーバシリンジ10を作動させる。
【0047】
[0053]使用者がトリガ20を離すと、トリガばね21によりトリガピン22を中心に開位置に向けてトリガ20を付勢して回転させる。トリガ20が離されると、トリガ20の回転運動は、これらの構成要素のギアの歯同士の係合によって、係合ラック17において直線運動に変換される。係合ラック17及びその関連する構成要素はそれぞれ、スロットに沿って曲線状端部31に向かって直線状に並進する。
【0048】
[0054]しかし、係合ラック17及び係合爪16がスロット29に沿って曲線状端部31に向かって並進すると、プッシャ9は並進しない。例えば、先に述べたように、係合爪16とプッシャ歯28との間の係合は、一般に機械的ドッグと呼ばれてもよい。係合爪16は、プッシャ9に向かって特定の傾斜した方向に付勢されているため、プッシャ9は、係合ラック17及び係合爪16と共に、特定の方向、例えばカニューレ23に向かう遠位方向に並進するのみで、プッシャ9は、係合ラック17及び係合爪16と共に、これらの構成要素が反対方向に並進するときには並進しない。この構成により、使用者は、トリガ20を繰り返し絞ったり離したりすることができる。トリガ機構15全体は、プッシャ9を係合するためのラチェット効果を有し、プッシャ9を遠位方向に繰り返し並進させ、リザーバシリンジ10を繰り返し作動させる。
【0049】
[0055]送達デバイス5がリザーバシリンジ10内の材料を完全に送達すると、プッシャ9はその最も遠位の点まで並進することとなる。この構成では、新しいリザーバシリンジ10を装填するためなど、使用者が係合ラック17及び係合爪16を係合解除できることが有利である。
【0050】
[0056]
図4は、トリガ20が送達デバイス5のハンドルから約50°で延びている第3のトリガ構成を示す。
図2と同様に、トリガ20は50°などの開位置に位置しているため、係合ラック17はスロット29の曲線状端部31に位置しており、したがってスロット29の直線状端部30によって規定される方向からわずかに枢動する。このようにして、係合ラック17は、係合爪16をプッシャ歯28から係合解除する。以下でより詳細に説明するように、係合解除は、例えば、使用者がプッシャ9を近位方向に手動で摺動させて、新しいリザーバシリンジ10を送達デバイス5に装填することができるように、又は、使用者がリザーバシリンジ10を充填又は再充填することができるため有用である。トリガ20は、代替的な係合解除構成を備えてもよいと理解すべきである。
【0051】
[0057]加えて、係合ラック17及び係合爪16の係合解除は、リザーバシリンジ10の装填、交換並びに/又は充填及び再充填以外にも他の理由で有益である。具体的には、係合ラック17及び係合爪16の係合解除は、トリガ20を連続的な絞る合間に圧力解放を生じさせることが有利である。使用者がトリガ20を繰り返し絞っていると、プッシャ9は遠位方向に並進し、リザーバシリンジ10内の圧力が増加する。この圧力は、材料がカニューレ23を経て送達デバイス5から出るときに大部分が除去される。しかし、リザーバシリンジ10内の特定の材料の粘性故に、リザーバシリンジ10内に圧力差が残り、リザーバシリンジ10からの望ましくない漏れを引き起こすことがある。この圧力差を緩和するために、送達デバイスは圧力を解放するように構成される。例えば、使用者は、リザーバシリンジから材料を排出するために、50°から40°へといったように、トリガ20を絞ることができる。使用者がトリガ20を離すと、トリガ20は、50°の開いた構成に付勢されて戻る。この開いた構成において、係合ラック17及び係合爪16は、プッシャ歯28から係合解除されている。したがって、プッシャ9は、リザーバシリンジ10内に残っている任意の圧力差を緩和するために、自由に遠位方向にわずかに並進できる。
【0052】
[0058]さらに、プッシャ9は、追加のギア、爪及ばねなどの任意の他の関連する機械的手段及び構成要素によってトリガ機構15と係合してもよく、これらの他の機械的構成要素は、トリガ機構15からプッシャ9へと運動を並進するために使用されてもよいと理解すべきである。このように、特定の構成にかかわらず、トリガ機構15が作動されると、トリガ機構15はプッシャ9へと運動を並進する。
【0053】
[0059]再び
図1を参照すると、送達デバイスは、使用者がリザーバシリンジ10を見ることができるように、透明な窓14を備えた窓ハウジング13をさらに含む。透明な窓14は、使用者がリザーバシリンジ10内に残っている組成物の体積及び/又はリザーバシリンジ10から出された組成物の体積と関連できる階調度又は物理的マーキングをさらに備えてもよい。
【0054】
[0060]送達デバイス5は、リザーバシリンジ10に流体結合するように構成された弁11をさらに備える。一実施形態では、弁11は、本明細書でより詳細に説明するように、第2のシリンジに流体結合するようにさらに構成される。
【0055】
[0061]送達デバイス5は、組成物を送達部位に送達するように構成されたカニューレ23を備える。カニューレ23は、カニューレ23が弁11と流体連通するように、接続点24で弁11と係合するように構成される。一実施形態では、接続点24は、ルアーロック継手である。代替的実施形態では、弁11とカニューレ23の接続点24との間の係合は、カニューレ23を弁11に付着させるためのねじ係合、締まり嵌め係合、マジックテープ(登録商標)式係合、スナップ係合、磁気係合又は任意の他の種類の機械的係合であってもよい。好ましい実施形態では、カニューレ23は、単一ルーメンのカニューレである。カニューレ23は、小児手術及び脊髄手術を含む複数の異なる外科的用途をサポートするために、10~46cmの間などの任意のさまざまな長さで形成されてもよい。一実施形態では、カニューレ23は、使用者がカニューレ23の長さを特定の外科的用途に合わせてカスタマイズできるように切り取り可能である。カニューレ23は、遠位方向に延び、その遠位端部にチップ27を備える。種々の実施形態では、チップ27は、剛性延長チップ、切り取り可能延長チップ、可撓性チップ、又は使用者による操作のためのステンレス鋼ワイヤを有するポリウレタンチップのような可鍛性チップであってもよい。
【0056】
[0062]代替的実施形態では、カニューレ23は、内側カニューレ25、外側カニューレ26及びチップ27などの複数のルーメンを備えてもよい。内側カニューレ25は、組成物を送達部位に送達するように構成されてもよい。内側カニューレ25は、1~5mmの内径を有することができることが好ましく、これにより、送達後に内側カニューレ25の内部に残る組成物の残量を最適化することができる。また、内側カニューレ25の直径は、リザーバシリンジ10から送達される特定の材料に対して最適化されてもよく、例えば、内側カニューレ25の直径は、例えば内側カニューレ25の目詰まりを回避するように、材料の粘性に関して決定されてもよい。同様に、例えば、外側カニューレ26は、内側カニューレ25を保護するために、内側カニューレ25の周りに同心円状に配置されるように構成されてもよい。一例では、外側カニューレ26は、ステンレス鋼で構成される。外側カニューレ26は、内視鏡用途を含むすべての外科専門分野をサポートするために41cmの長さを有してもよいことが好ましい。外側カニューレ26は、カニューレ23全体に強化された剛性をさらに付与し、これは、外科的な操縦及び操作の間有益である。
【0057】
[0063]上述したように、リザーバシリンジ10は組成物を含んでもよい。トリガ機構15の係合に応じて、プッシャ9及びリザーバシリンジ10のプランジャは、カニューレ23のチップ27に向かって遠位方向に並進する。このようにして、リザーバシリンジ10内の組成物は、リザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23を通り(又は代替的にカニューレ23の内側カニューレ25を通り)、カニューレ23の遠位端部にあるチップ27から排出される。
【0058】
[0064]
図5A~
図5Bは、送達デバイス5の斜視図を示す。図示されるように、送達デバイス5は、弁11と、トリガ20と、カニューレ23とを備える。送達デバイス5は、自己完結型であるため、トリガ機構15の残りの構成要素及びリザーバシリンジ10など、上記でより詳細に記載された他のすべての態様を含んでもよいと理解すべきである。送達デバイス5は、使用者による片手での使用のために寸法決めされ、人間工学的に設計されていることが好ましい。
【0059】
[0065]弁11は、供給シリンジなどの第2のシリンジと係合するようにさらに構成される。例えば、
図6は、供給シリンジ110を備えた送達システム100の側立面図を示す。最初に、リザーバシリンジ10及びプッシャ9を見るために、左ハウジング7及び右ハウジング8の一部が例示を目的して取り除かれていると理解すべきである。
【0060】
[0066]
図6に示すように、弁11は、供給シリンジ110が弁11と流体結合するように供給シリンジ110と係合する。一実施形態では、供給シリンジ110と弁11との間の係合は、ルアーロック係合である。供給シリンジ110は、リザーバシリンジ10を組成物でまず充填し、及び/又はリザーバシリンジ10を追加の組成物で再充填してもよい。例えば、トリガ20の係合の前に、使用者は、供給シリンジ110のプランジャを押し込んで、組成物を供給シリンジ110から排出する。組成物は、弁11を通って、リザーバシリンジ10内に移動する。このように、リザーバシリンジ10には、供給シリンジ110によって組成物が供給される。その結果、上述したように、トリガ20及びトリガ機構15全体の係合により、リザーバシリンジ10内の組成物は、リザーバシリンジ10から、弁11を通り、カニューレ23を通り、カニューレ23の遠位端部から排出される。
【0061】
[0067]弁11は、二方向逆止弁として特徴付けられてもよい。言い換えれば、弁11は、第1の流路及び第2の流路という2つの別個の流体流路を許容する。
図7Aは、供給シリンジ110から弁11を通って、リザーバシリンジ10内へと規定される第1の流路を示す。組成物は、供給シリンジ110とリザーバシリンジ10との間で、第1の流路によって規定される方向にのみ流れることができる。一方向の流れは、組成物がリザーバシリンジ10から弁11を通って、供給シリンジ110内へと不用意に流れないことを保証する。
図7Bは、リザーバシリンジ10から弁11を通って、カニューレ23内へと規定される第2の流路を示す。二方向逆止弁は、スイッチ弁によるなど、使用者が流れの方向を手動で切り替える必要性をなくすことができることが有利である。しかし、代替的実施形態では、弁11は、使用者が切替可能な止め栓弁であってもよく、それによって、使用者は、組成物が流れることができる方向と、組成物が流れることができない方向とを手動で選択できる。一実施形態では、弁11は、リザーバシリンジ10及び供給シリンジ110が互いに垂直に配向されるように構成される。他の実施形態では、弁11は、リザーバシリンジ10及び供給シリンジ110が互いに平行に配向されるように構成されているか、又は互いに任意の他の角度の配向で構成される。
【0062】
[0068]要約すると、弁11は、リザーバシリンジ10が弁11と流体連通するように、リザーバシリンジ10と係合するように構成される。カニューレ23は、カニューレ23が弁11と流体連通し、遠位方向に延びるように、弁11と係合するように構成される。弁11は、供給シリンジ110が弁11と流体連通するように、供給シリンジ110と係合するように構成される。供給シリンジ110は、最初に組成物を含んでいる。供給シリンジ110のプランジャの押し込みに応じて、組成物は、供給シリンジ110から弁11を通って、リザーバシリンジ10内に排出される。トリガ20の係合に応じて、プッシャ9及びリザーバシリンジ10のプランジャは、リザーバシリンジ10内の組成物が、リザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23を通り、カニューレ23の遠位端部から排出されるように、遠位方向に並進する。
【0063】
[0069]一実施形態では、送達システム100のトリガ機構15は、トリガ20を引く度に特定の量の組成物を送達するように構成されてもよい。例えば、トリガ20を引く度にプッシャ9が移動する距離及びリザーバシリンジ10の断面積を知ることによって、トリガ20を引く度に送達システム100によって送達される体積を容易に計算できる。具体的な例では、トリガ20を半分絞ると0.5mLの組成物が送達され、トリガ20を完全に絞ると1.0mLの組成物が送達される。
【0064】
[0070]開示されるように、本明細書の送達システム100は、送達位置及び送達速度の両方に関して、高度な使用者制御を提供する。送達システム100は、止血材などの組成物の片手での送達を提供する。より具体的には、送達デバイス5の片手での配置、及びトリガ機構15を介した送達デバイス5の関連する作動により、止血材の送達の精度及び制御の両方が改善される。送達デバイス5を使用すると、使用者は送達デバイス5及びカニューレ23の両方を片手で配置でき、したがって、他の目的のためにもう片方の手を自由にすることができる。使用者は、一方で止血材を供給すると同時に、適切な配置を保証するようにより良く制御できる。配置以外にも、止血材の送達は、量及び速度の両方の観点から制御される。止血材は、トリガ20が引かれたときにのみ送達され、すなわち、トリガ20が引かれたときに、特定量の止血材のみが送達される。同様に、止血材は、スタイレットに不用意にぶつかるなどによって不用意に送達され得ず、むしろ、カニューレ23から止血材を送達するためには使用者はトリガ20を引かなければならない。一貫したトリガの作動は、止血材の一貫した送達をもたらすため、偶発的な送達、製品の損失及び破裂のような過剰送達の状況を防止することができる。これらの状況は、塞栓事象を引き起こすか、以前に送達された止血材を洗い流すか、又は他の望ましくない副作用を生じさせることにより患者にとって特に問題となり得る。同様に、係合ラック17及び係合爪16がプッシャ歯28から係合解除するようにトリガ20を開いた構成に付勢することにより、プッシャ9は自由に後方に並進して、リザーバシリンジ10内に残っている任意の圧力差を緩和し、望ましくない漏れを回避する。
【0065】
[0071]代替的実施形態では、送達システム100及び送達デバイス5は、追加の構成要素を実装して、上記で開示された手動で繰り返されるトリガ作動を代替してもよい。例えば、送達デバイス5は、トリガ20の物理的な係合を必要とせずに材料を送達するためにトリガ機構15に係合できるように、電気機械的モータ、関連する歯車装置及びバッテリ又は外部電源などの電気機械的構成要素を備えてもよい。
【0066】
[0072]また、送達デバイス5及び送達システム100を介した止血材の送達は、デバイス自体の機械的な最適化をもたらす。例えば、トリガ20及びトリガ機構15は、スタイレットを押して送達チューブに通すことによる手動送達などの従来の送達技術と比較して、より大きな力を発生させることができる。より大きな送達力が利用可能であれば、カニューレ23の直径及びリザーバシリンジ10のサイズなど、送達デバイス5の寸法を低減できる。具体的には、例えば、カニューレ23は、より細長くてもよい。カニューレ23の直径など、送達デバイス5の特定の寸法を低減することは、送達デバイス5が内視鏡のセッティングで使用される場合にはいつでも望ましい。例えば、カニューレ23のような送達デバイス5の一部は、患者の内視鏡ポートを通過できる。
【0067】
[0073]さらに、送達デバイス5及び送達システム100は、シリンジの直径の「逓減」による機械的最適化をもたらす。例えば、一実施形態では、供給シリンジ110は、25mLシリンジであってもよい。念のため確認すると、使用者は、リザーバシリンジ10に組成物を供給するために、供給シリンジ110を実装して弁11を経て組成物を送達してもよい。リザーバシリンジ10は、5mLシリンジであってもよい。シリンジの断面積を含むリザーバシリンジ10のサイズは、供給シリンジ110のサイズよりも小さいため、リザーバシリンジ10から組成物を排出するのに十分な圧力を発生させるために必要な力が少ない。同様に、供給シリンジ110のプランジャに同等の力をかけることにより、リザーバシリンジ10の断面積がより小さいこと故に供給シリンジ110内に高い圧力が発生する。より高い圧力は、粘性組成物を細長いカニューレへと分配するのに有利である。このように、シリンジの直径の逓減は、粘性組成物を分配するのに必要な力の最適化、よりコンパクトな送達デバイス5のために供給シリンジ110のサイズ全体を低減することによるサイズの最適化などをもたらすことができる。
【0068】
止血マトリックスの投与方法
[0074]前述したように、送達デバイス5及び送達システム100は、組成物を投与又は送達する際に実装されてもよい。具体的には、使用者は、供給シリンジ110を送達デバイス5の弁11に取り付けてもよい。供給シリンジ110は、粘性止血マトリックスなどの投与されるべき組成物を含む。弁11に取り付ける前に、使用者は、投与用組成物を供給シリンジ110内に準備してもよい。
【0069】
[0075]例えば、FLOSEAL(登録商標)のような止血マトリックスを投与する場合、まずFLOSEAL(登録商標)を投与するために準備しなければならない。FLOSEAL(登録商標) VH S/Dは、製造者の使用説明書(Baxter Healthcare Corporation,2014)に従って準備してもよい。特に、トロンビン溶液は、プレフィルド塩化ナトリウム溶液シリンジを、トロンビン溶液を含むバイアルアダプターのルアーコネクタに取り付けることによって準備してもよい。トロンビンバイアルのゴム栓を穿孔し、塩化ナトリウムシリンジの内容物をすべてトロンビンバイアルに移す。次いで、トロンビンバイアルを通気し、トロンビンが完全に溶解するまでかき混ぜる。次に、空の10mL供給シリンジ110にトロンビン溶液を8mLなど、指示したマークまで充填し、その後ゼラチンマトリックスシリンジをトロンビン溶液の入った供給シリンジ110に接続して、FLOSEAL(登録商標) VH S/Dを準備する。次いで、トロンビン溶液をゼラチンマトリックスシリンジに通し、混合物を2つのシリンジの間で少なくとも20回往復させる。供給シリンジ110内の得られた止血マトリックスは、典型的には準備後30秒~20分の間に投与の準備が整う。
【0070】
[0076]止血マトリックスが準備されると、使用者は、止血マトリックスの入った供給シリンジ110を送達デバイス5の弁11に取り付ける。好ましい実施形態では、リザーバシリンジ10は最初は空であり、リザーバシリンジ10のプランジャは最初に圧縮される。次に、使用者は、プランジャの押し込みに応じて、止血マトリックスが供給シリンジ110から弁11を通ってリザーバシリンジ10内に排出されるように、供給シリンジ110のプランジャを押し込む。一実施形態では、使用者は、供給シリンジ110の一部のみをリザーバシリンジ10内に排出する。例えば、供給シリンジ110は、リザーバシリンジ10よりもはるかに大きな容積容量を有していてもよい。
【0071】
[0077]次いで、使用者は、トリガ機構15の係合に応じて、リザーバシリンジ10のプランジャが押し込まれるように、送達デバイス5のトリガ機構15、具体的にはトリガ20に繰り返し係合する。例えば、プッシャ9は遠位方向に並進して、リザーバシリンジ10のプランジャを押し込む。止血マトリックスは、リザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23内に排出される。
【0072】
[0078]次に、使用者は、追加の止血マトリックスが供給シリンジ110から弁11を通ってリザーバシリンジ10内に排出されるように、供給シリンジ110のプランジャをさらに押し込む。例えば、使用者は、リザーバシリンジ10に追加の止血マトリックスを再装填することができる。再装填中、トリガ機構15の構成要素はリセットでき、リザーバシリンジ10が追加の止血マトリックスで充填されると、プッシャ9及びリザーバシリンジ10のプランジャなどの他の構成要素が近位方向に並進できる。
【0073】
[0079]次に、使用者は、トリガ機構15の係合に応じて、リザーバシリンジ10のプランジャが押し込まれ、追加の止血マトリックスがリザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23内に排出されるように、送達デバイス5のトリガ機構15、具体的にはトリガ20を繰り返し係合させる。このプロセスを繰り返すことによって、カニューレ23のチップ27から止血マトリックスが排出される。
【0074】
[0080]使用者が供給シリンジ110内の止血マトリックスを使い果たした場合、使用者は、空の供給シリンジ110を弁11から取り外し、新しい供給シリンジ110を弁11に取り付けてプロセスを継続することができる。これにより、送達デバイス5の準備に伴う準備時間及び送達デバイス5に追加の止血マトリックスを再装填することに伴う再装填時間の両方を改善できることが有利である。
【0075】
[0081]関連する実施形態では、送達デバイス5は、カニューレ23のチップ27から材料を排出するための液体推進剤を含んでもよい。例えば、本実施形態では、リザーバシリンジ10は、最初は空であり、リザーバシリンジ10のプランジャは、最初は圧縮される。上述したように、使用者は、プランジャの押し込みに応じて、止血マトリックスが供給シリンジ110から弁11を通ってリザーバシリンジ10内に排出されるように、供給シリンジ110のプランジャを押し込む。次いで、使用者は、トリガ機構15の係合に応じて、リザーバシリンジ10のプランジャが押し込まれるように、送達デバイス5のトリガ機構15、具体的にはトリガ20に繰り返し係合する。止血マトリックスは、リザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23内に排出される。
【0076】
[0082]この時点で、使用者は、液体充填シリンジなどの第2の供給シリンジを弁11に取り付けることができる。使用者は、プランジャの押し込みに応じて、液体が第2の供給シリンジから弁11を通ってリザーバシリンジ10内に排出されるように、第2の供給シリンジのプランジャを押し込む。例えば、使用者は、カニューレ23への止血材の送達後、リザーバシリンジ10に液体を装填することができる。液体の装填中、トリガ機構15の構成要素はリセットでき、リザーバシリンジ10が液体で充填されると、プッシャ9及びリザーバシリンジ10のプランジャなどの他の構成要素が近位方向に並進できる。次に、使用者は、トリガ機構15の係合に応じて、リザーバシリンジ10のプランジャが押し込まれ、液体がリザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23内に排出されるように、送達デバイス5のトリガ機構15、具体的にはトリガ20をさらに繰り返し係合させる。このようにして、液体は加圧された推進剤として作用し、止血材はカニューレ23のチップ27から排出される。
【0077】
[0083]異なる関連する実施形態では、送達デバイス5のすべての構成要素はステンレス鋼であり、繰り返し使用するために構成することができる。例えば、送達デバイス5は、上述のように使用されてもよく、その後、オートクレーブ又は他の市販の滅菌器によって滅菌されてもよい。滅菌されると、送達デバイス5は、後日、異なる患者に止血マトリックスを送達するために効果的に再利用され得る。
【0078】
洗浄方法
[0084]送達デバイス5及び送達システム100は、不完全な送達に伴う無駄な材料を低減できることがさらに有利である。例えば、上述の方法は、洗浄操作をさらに含んでもよい。具体的には、使用者がカニューレ23のチップ27から止血マトリックスを排出し終えると、カニューレ23内に止血マトリックスのホールドアップ体積が未使用のまま残る。この状況では、使用者は、供給シリンジ110を送達デバイス5の弁11から取り外すことができる。次に、使用者は、洗浄シリンジを送達デバイス5の弁11に取り付ける。
【0079】
[0085]洗浄シリンジは、止血マトリックスとは異なる洗浄流体を含む。例えば、洗浄流体は、液体生理食塩水、又はその他の液状媒体、又は気体であってもよい。洗浄シリンジが弁11に取り付けられると、使用者は、洗浄流体が洗浄シリンジから弁11を通ってリザーバシリンジ10内に排出されるように洗浄シリンジのプランジャを押し込む。次いで、使用者は、リザーバシリンジ10のプランジャが押し込まれて洗浄流体がリザーバシリンジ10から弁11を通ってカニューレ23内に排出されるように、トリガ機構15を係合させることができる。このようにして、洗浄流体及び洗浄流体によって発生する関連する圧力が、カニューレ23から任意の残っている止血マトリックスを排出する。
【0080】
[0086]洗浄操作は、止血マトリックスの最適な供給をもたらし、カニューレ23内に残る止血マトリックスの廃棄を最小限にする。洗浄操作は、カニューレ23に残る止血材の量を最小限にすることによって、目詰まりをさらになくす。
【0081】
送達デバイスキット
[0087]本開示によるキットは、止血材と、送達デバイス5とを含んでもよい。止血材は、無菌的処理によって滅菌して形成されるか、又は、好ましくは、γ線照射、酸化エチレン、電子ビーム照射などを用いた最終滅菌によって、滅菌される。止血材は、滅菌形態のまま、パウチ、チューブ、トレイ、箱などの滅菌パッケージに包装される。創傷又は手術部位に血液が存在する場合に材料を組織上に配置する方法を定めた使用説明書も、キットの一部として提供されてもよい。例示的なキットは、個々のシリンジにおける乾燥ウシ由来ゼラチンマトリックス(顆粒)及びヒト由来トロンビン溶液などの止血材と、アプリケータのチップと、シリンジと共に使用するように構成された本明細書に記載の送達デバイスと、本明細書に開示されているような送達デバイス又は送達システムを用いて、任意の創傷又は出血中の組織の他の部位であり得る組織の標的部位に滅菌材料を配置することによって出血を抑制する方法を定めた使用説明書とを含む。
【0082】
[0088]一実施形態では、キットは、プレフィルド塩化ナトリウム溶液シリンジと、トロンビンバイアルと、プレフィルドゼラチンマトリックスシリンジと、送達デバイスとを含む。プレフィルド塩化ナトリウム溶液シリンジ、トロンビンバイアル及びプレフィルドゼラチンマトリックスシリンジを使用して、上述した止血マトリックスを準備できる。送達デバイス5は、上記でより詳細に説明したように、プレフィルドゼラチンマトリックス供給シリンジ110と係合するように構成されてもよい。
【0083】
[0089]特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、包括的又は排他的な接続詞である。したがって、「及び/又は」という用語は、グループ内に2つ以上のものが存在することを意味するか、又は選択肢のグループから1つの選択がなされ得ることを意味する。
【0084】
[0090]本開示の多くの特徴及び利点は、記述された説明から明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示のすべてのそのような特徴及び利点をカバーすることが意図される。さらに、当業者は多数の修正及び変更を容易に思いつくため、本開示は、図示され説明された正確な構成及び操作に限定されない。したがって、記述された実施形態は、例示的なものであって限定的なものではないと理解されるべきであり、本開示は、本明細書で与えられた詳細に限定されるべきではなく、現在又は将来において予見可能であるか予見不能であるかにかかわらず、以下の特許請求の範囲及びそれらの完全な範囲の等価物によって規定されるべきである。