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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】骨固定アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021557546
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2020052859
(87)【国際公開番号】W WO2020194229
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102019000004651
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ベルベリッヒ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ポンツォーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ルッキーニ,リッカルド
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06517542(US,B1)
【文献】登録実用新案第3171890(JP,U)
【文献】米国特許第07144413(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0156176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨アンカー(22)およびインサート(24)を備える骨固定アセンブリ(20)であって、前記骨アンカー(22)は、
近位端(26)と、
遠位端(28)と、
骨組織(30)との堅固で安定した結合を規定するのに適した外形と、
前記近位端(26)で開いているシート(32)であって、軸Xsを規定するシート(32)と、を備え、
前記インサート(24)は、軸Xiを規定し、前記骨アンカー(22)の前記シート(32)に受容されるのに適しており、
近位端(34)と、
遠位端(36)と、
前記近位端(34)に設けられた1つまたは複数のアイレット(38)と、を備え、
前記シート(32)および前記インサート(24)は、前記シート(32)内の前記インサート(24)を軸方向に保持するのに適しており且つ前記シート(32)内の前記インサート(24)を軸Xiの周りに自由に回転させるのに適したスナップ結合手段(40)を備え、
前記シート(32)および前記インサート(24)がそれぞれねじ部分(52、54)を含み、
前記シート(32)の前記ねじ部分(52)は、前記骨アンカー(22)の前記近位端(26)の近くに設けられており、
前記インサート(24)の前記ねじ部分(54)は、前記シート(32)の前記ねじ部分(52)との結合に適しており、
前記インサート(24)の前記ねじ部分(54)および前記シート(32)の前記ねじ部分(52)は各々、近位端と遠位端を有し、
前記骨固定アセンブリ(20)が組み立てられた形態にあるとき、すなわち、前記シート(32)および前記インサート(24)との間にスナップ結合が生じているとき、前記インサート(24)の前記ねじ部分(54)の前記近位端は、前記シート(32)の前記ねじ部分(52)の前記遠位端に対してすぐ遠位の位置にある、骨固定アセンブリ(20)。
【請求項2】
前記スナップ結合手段(40)が、前記シート(32)内の円周方向の溝(42)と、前記インサート(24)に弾性的に設けられた1つまたは複数の半径方向の突起(44)とを備える、請求項1に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【請求項3】
前記インサート(24)の前記1つまたは複数の半径方向の突起(44)が、動作形態および組立形態をとることができ、
前記動作形態では、前記1つまたは複数の半径方向の突起(44)は、近位方向においてすぐ隣の前記インサート(24)の部分よりも大きな半径方向の突出を持ち、前記骨アンカー(22)の前記シート(32)の前記円周方向の溝(42)に係合するように適合されており、
前記組立形態では、前記1つまたは複数の半径方向の突起(44)は、前記動作形態に対して減少した半径方向の突出を有し、その結果、前記骨アンカー(22)の前記シート(32)に沿ってスライドして、前記円周方向の溝(42)にアクセスできる、請求項2に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【請求項4】
前記1つまたは複数の半径方向の突起(44)が、それらの緩んだ状態で、それらが自然に前記動作形態をとるように提供されている、請求項3に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【請求項5】
前記インサート(24)およびその半径方向の突起(44)が一体成形で作られている、請求項2から4のいずれか一項に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【請求項6】
前記インサート(24)の前記ねじ部分(54)が、前記1つまたは複数のアイレット(38)に対してすぐ遠位の位置に提供されている、請求項1に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【請求項7】
前記骨固定アセンブリ(20)が前記組み立てられた形態にあるとき、すなわち、前記シート(32)および前記インサート(24)との間にスナップ結合が生じているとき、前記1つまたは複数のアイレット(38)は、軸方向において前記骨アンカー(22)の前記近位端(26)の前記外形内に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の骨固定アセンブリ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能なインサート、特に、アンカーからの分解のリスクを冒すことなくアンカー内で自由に回転することができるインサートを備える骨固定アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
骨の手術では、軟組織は骨アンカーと1つまたは複数の縫合糸によって骨に取り付けられることが知られている。骨アンカーは、骨に挿入でき且つ骨との堅固な安定した結合を規定できるように形作られている。骨アンカーはさらに、骨に取り付けられる軟組織に結合することを目的とした縫合糸を収容するための1つまたは複数のアイレットを含む。アンカーが取り付けられると、アイレットは骨の表面に対して突出せず、逆に、骨の元の表面内に留まることが好ましい。このため、アンカーを取り付ける前に縫合糸がアイレットを通過している方がはるかに有利である。そうしないと、この単純な作業が複雑になり、時間がかかり、不必要に手術が長くなる可能性がある。
【0003】
この解決策は、広く普及しており且つ高く評価されているが、完全に欠点がないわけではない。
【0004】
骨アンカーは様々な形状をとり得る。例えば、特別なツールを使用してねじ込む必要のあるアンカーや、代わりに、ねじ山の特定の形状のおかげで、ハンマーを使用するだけで骨に挿入できる他のアンカー(インパクションアンカー(impaction anchors)と呼ばれる)がある。いずれにせよ、アンカーを骨に取り付けることは、アンカーがそれ自体の長手方向軸を中心に回転することを意味する。アンカーのこの回転はまた、それに取り付けられた縫合糸の回転を伴い、これは、介入の目的にしては非常に迷惑である縫合糸のねじれに容易につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術に関して先に強調された欠点を克服することである。
【0006】
より具体的には、本発明のタスクは、縫合糸が骨アンカーに対して自由に回転することができる骨固定アセンブリを提供することである。
【0007】
さらに、本発明の目的は、新しい利点を導入することに加えて、既知のタイプのアンカーから既に得られた実質的にすべての利点を維持する骨固定アセンブリを提供することである。
【0008】
この目的およびタスクは、請求項1に記載の骨固定アセンブリによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明をより良く理解し、その利点を評価するために、その例示的かつ非限定的な実施形態のいくつかが、添付の図面を参照して以下に説明される。
図1】分解形態での、本発明による固定アセンブリの斜視図を示す。
図2】組立形態での、図1の固定アセンブリを示す。
図3図4の線III-IIIに沿って形成された断面図を示す。
図4】本発明による骨アンカーの近位端の軸方向の図を示す。
図5図6の線V-Vに沿って形成された断面図を示す。
図6図3および4のアンカーインサートの近位端の軸方向の図を示す。
図7図8の線VII-VIIに沿って形成された断面図を示す。
図8】組立形態での、図5と6のインサートの、および図3と4の骨アンカーの近位端の軸方向の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
目下の考察に関して、読むことをより簡単かつスムーズにするために、いくつかの用語の慣習が採用されている。これらの用語の慣習は、添付の図を参照して以下に明確にされている。
【0011】
本発明は、各々がそれ自体の軸を一意に規定する要素を含む。それ自体の軸に関して、軸方向、半径方向、および円周方向が各要素に対して規定される。さらに、本発明のいくつかの形態では、種々の要素が、軸が互いに一致する相互位置をとることができる。
【0012】
本発明は、弾性要素を含む。これらの弾性要素に関連して、弾性要素に大幅な外力が作用しない状態は、緩んだ(unstrained)状態として規定される。
【0013】
手術では常のごとく、近位と遠位という用語が以下で使用される。近位とは、それが参照する要素を正しく使用している間、ユーザに相対的に近い位置を指す。典型的には、骨固定に関して、近位部分は、移植中に外科医に最も近い部分である。逆に、遠位とは、それが参照する要素を正しく使用している間、ユーザから相対的に遠い位置を指す。典型的には、骨固定に関して、遠位部分は、移植中に外科医から最も遠い部分である。
【0014】
本発明は、一般に20で言及される骨固定アセンブリに関する。骨固定アセンブリ20は、骨アンカー22およびインサート24を含む。骨アンカー22は、
近位端26と、
遠位端28と、
骨組織30との堅固で安定した結合を規定するのに適した外形と、
近位端26で開いているシート32であって、軸Xsを規定しているシート32と、を備える。
【0015】
インサート24は、軸Xiを規定し、骨アンカー22のシート32に受容されるのに適しており、
近位端34と、
遠位端36と、
近位端34に設けられた1つまたは複数のアイレット38と、を備える。
【0016】
さらに、シート32およびインサート24は、シート32内のインサート24を軸方向に保持するのに適しており且つシート32内のインサート24を軸Xiの周りに自由に回転させるのに適したスナップ結合手段40を備える。
【0017】
本発明で実施するのに適したスナップ結合手段40は、当業者に広く知られている。添付の図を参照して、特定の実施形態を以下に説明する。
【0018】
好ましくは、本発明による骨固定アセンブリ20において、スナップ結合手段40は、シート32内の円周方向の溝42と、インサート24上に弾性的に提供される1つまたは複数の半径方向の突起44とを備える。例えば、インサート24の1つまたは複数の半径方向の突起44は、少なくとも1つの動作形態および1つの組立形態をとることができ、
動作形態では、1つまたは複数の半径方向の突起44は、近位方向においてすぐ隣のインサート24の部分よりも大きい半径方向の突出を有し、骨アンカー22のシート32の円周方向の溝42と係合するように適合されており、さらに、
組立形態では、1つまたは複数の半径方向の突起44は、動作形態に対して減少した半径方向の突出を有し、その結果、骨アンカー22のシート32に沿ってスライドして、円周方向の溝42にアクセスすることができる。
【0019】
骨アンカー22の外形は、それ自体が知られている態様で、骨組織30との堅固で安定した結合を規定するのに適したねじ山46を含み得る。例えば、ねじ山46は、骨アンカー22全体に回転を課すツールによって骨組織30にねじ込まれることを意図したタイプのものであり得る。あるいは、ねじ山46は、ハンマーマス(hammering mass)による打撃によって骨組織30に導入されることを意図したタイプのものであり得る。
【0020】
好ましくは、骨アンカー22全体も、全体として軸Xaを規定し、さらにより好ましくは、骨アンカー22の軸Xaは、シート32の軸Xsと一致する。添付の図に示されている実施形態は、この特定の形態を採用している。
【0021】
すでに述べたように、インサート24はまた、それ自体の軸Xiを規定する。インサート24を骨アンカー22のシート32に導入するために、インサート24の軸Xiは、シート32の軸Xsと一致するようにされなければならない。そのような場合、骨固定アセンブリ20がその組立形態にあるとき、明確さを欠くことなく、単一の軸Xを参照することが可能である。添付の図の特定の実施形態(例えば、図1、2、7、および8を参照)では、ただ一つの軸Xが、骨アンカー22、シート32、およびインサート24によって共有されている。
【0022】
それ自体が知られている態様で、アイレット38は、縫合糸48のための堅固な固定を規定するように適合されている。
【0023】
好ましくは、例えば、添付の図に示される実施形態において、半径方向の突起44は、緩んだ状態でそれらが自然に動作形態をとるように提供されている。逆に、そのような実施形態では、軸Xに向けられた半径方向の力が、半径方向の突起44を組立形態にするために必要とされる。
【0024】
添付の図の特定の実施形態(特に図1、5および7を参照)では、インサート24およびその半径方向の突起44は一体成形で作られている。特に、インサート24は、片持ち梁のように一端が軸方向に飛び出し且つ半径方向の突起44を支持する複数の指部50を備える。緩んだ状態では、指部50は、スペースによって互いに分離されている。したがって、軸Xに向けられる適切な半径方向の力が互いの指部50に近づき、それによって、半径方向の突起44の半径方向の突出を低減し、インサート24を組立形態にすることができる。骨固定アセンブリ20の組み立て中に、インサート24は、軸方向に沿って骨アンカー22のシート32に導入される。このステップの間、少なくとも円周方向の溝42のすぐ近位の部分において、半径方向の突起44は、シート32の壁に接触して強制的に組立形態にされる。半径方向の突起44が円周方向の溝42に到達すると、それらは動作形態を再びとり、その結果、インサート24と骨アンカー22との間にスナップ結合が生じる。特に、このようにして得られた結合は、シート32からのインサート24の引き抜きに対抗する軸方向の拘束を決定する一方で、円周方向の溝42内の半径方向の突起44の自由回転、したがってシート32内のインサート24の自由回転を可能にする。このようにして、骨固定アセンブリ20の組立形態が得られる。
【0025】
例えば、添付の図に示されているものなどのいくつかの実施形態によれば、シート32およびインサート24はそれぞれ、ねじ部分52および54を備える。シート32のねじ部分52は、骨アンカー22の近位端26の近くに設けられている。シート32のねじ部分52と結合するのに適したインサート24のねじ部分54は、好ましくは、アイレット38のすぐ遠位に配置される。
【0026】
ねじ部分52および54が提供される場合、骨固定アセンブリ20の組み立ては、以下のように行われる。インサート24は、その軸Xiがシート32の軸Xsと一致するように配置される。次に、インサート24のねじ部分54がシート32のねじ部分52と係合するまで、インサート24がシート32に導入される。骨アンカー22とインサート24との間に相対回転を加えることにより、2つのねじ部分52および54が互いにスライドして、インサート24がさらに末端にシート32に遠位に入る。
【0027】
好ましくは、骨固定アセンブリ20が組立形態にあるとき、インサート24のねじ部分54の近位端は、シート32のねじ部分52の遠位端のすぐ遠位にある。このタイプの解決策は、図7に明確に見られ、ねじ部分52および54が依然として互いに係合している最後のターン中に、半径方向の突起44がすでに円周方向の溝42の近位にあることを可能にする。好ましくは、半径方向の突起44および円周方向の溝42がスナップ結合を引き起こすと同時に、2つのねじ部分52および54は互いに分離する。このようにして、インサート24は、骨アンカー22のシート32の内側に拘束されたままである。実際、円周方向の溝42と係合する半径方向の突起44によって規定される軸方向の拘束は、2つのねじ部分52および54が再び結合するのを防ぎ、したがって、インサート24がシート32から引き抜かれるのを防ぐ。
【0028】
骨固定アセンブリ20が組立形態にあるとき、インサート24は、引き抜かれる可能性なしに、骨アンカー22に対してシート32内で自由に回転することができる。
【0029】
好ましくは、骨固定アセンブリ20が組立形態にあるとき、アイレット38は、軸方向において骨アンカー22の近位端26の外形内に含まれる。すなわち、骨固定アセンブリ20が組立形態にあるとき、インサート24の近位端34は、骨アンカー22の近位端26と一致する、またはそのすぐ遠位の位置にある。図7の例に明確に見られるように、この特徴は、縫合糸48を除いて、骨組織30の外形を超えて突出するものなしに、骨固定アセンブリ20が適切に埋め込まれる結果をもたらす。
【0030】
当業者が容易に理解できるように、本発明は、従来技術に関して先に強調された欠点を克服することを可能にする。
【0031】
特に、本発明は、縫合糸48が骨アンカー22に対して自由に回転することができる骨固定アセンブリ20を提供する。
【0032】
さらに、本発明は、新しい利点を導入することに加えて、既知のタイプのアンカーから既に得られた実質的にすべての利点を維持する骨固定アセンブリ20を提供する。
【0033】
特定の特徴は、非限定的な例として、本発明の種々の実施形態に関連して説明されていることが理解される。明らかに、当業者は、偶発的かつ特定のニーズを満たすために、本発明にさらなる修正および変形を加えることができるであろう。例えば、本発明の一の実施形態に関連して記載された技術的特徴は、それから推定され、本発明の他の実施形態に適用され得る。そのような修正および変形はまた、以下の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8