IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドンバオ パープル スター (ハンチョウ) バイオファーマシューティカル シーオー.,エルティーディー.の特許一覧

特許7299408SGLTs/DPP4阻害剤およびその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】SGLTs/DPP4阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/14 20060101AFI20230620BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C07H15/14 CSP
A61K31/7052
A61K31/7056
A61K31/706
A61P3/10
A61P43/00 111
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022505233
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020104534
(87)【国際公開番号】W WO2021018046
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】201910683107.3
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010105252.6
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522032442
【氏名又は名称】ドンバオ パープル スター (ハンチョウ) バイオファーマシューティカル シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マオ,クィンファ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】リ,イー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チェンデ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュフイ
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-522143(JP,A)
【文献】特表2009-531291(JP,A)
【文献】特表2008-524162(JP,A)
【文献】特表2010-500394(JP,A)
【文献】特表2010-504998(JP,A)
【文献】特表2010-509283(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105294694(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/00
A61K 31/00
A61P 3/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【化1】

(式中、R1は、1、2または3個のRaで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
2は、Cl、Br、I、OH、NH2、および1、2または3個のRbで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、および1、2または3個のRcで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、および1、2または3個のRdで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
1は、-(CH2m-であり、
2は、-(CH2n-であり、
mは、0、1または2であり、
nは、0、1または2であり、
a、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OHおよびNH2から選択される。)
【請求項2】
1は、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは、1、2または3個のRaで任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
1は、CH3から選択される、請求項2に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
2は、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3、Etおよび
【化2】
から選択され、該CH3、Etおよび
【化3】
は、1、2または3個のRbで任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
2は、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3、Etおよび
【化4】
から選択される、請求項4に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは、1、2または3個のRcで任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OHおよびNH2から選択される、請求項6に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは、1、2または3個のRdで任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択される、請求項8に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
1は、-CH2-または-CH2-CH2-である、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
2は、単結合または-CH2-である、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
化合物が
【化5】
(式中、R1は、請求項1~3のいずれか一項に定義される通りで、R2は、請求項1、4または5のいずれか一項に定義される通りで、R3、R4、R5、R6およびR7は、請求項1、6または7のいずれか一項に定義される通りで、R8、R9、R10およびR11は、請求項1、8または9のいずれか一項に定義される通りである。)から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記化合物が
【化6】
(式中、R1は、請求項12に定義される通りで、R2は、請求項12に定義される通りで、R3、R4、R5、R6およびR7は、請求項12に定義される通りで、R8、R9、R10およびR11は、請求項12に定義される通りである。)から選択される、請求項12に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
下記の化合物、
【化7】
その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記化合物が
【化8】
から選択される、請求項14に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
前記化合物が
【化9】
から選択される、請求項15に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
SGLT1/SGLT2/DPP4三重阻害剤に関する医薬品の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本出願は、次の出願に基づいた優先権を主張する。
CN201910683107.3、出願日:2019.07.26
CN202010105252.6、出願日:2020.02.20
【技術分野】
【0002】
本発明は、SGLT1/SGLT2/DPP4三重阻害剤としての一種類の化合物、およびSGLT1/SGLT2/DPP4三重阻害剤としての医薬品の製造におけるそれらの化合物の使用に関する。具体的には、式(I)で表される化合物、その異性体、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、高血糖を特徴とする代謝性疾患である。高血糖は、インスリン分泌の欠陥やその生物作用の損傷、或いはそれら両者の作用により引き起こされる。糖尿病の場合、長期間血糖レベルの異常は、心血管疾患、慢性腎不全、網膜損傷、神経損傷、微小血管損傷および肥満などを含む深刻な合併症を引き起こす可能性がある。糖尿病の治療では、早期段階に、食事のコントロールと運動療法が血糖コントロール案の第一選択である。これらの方法でも血糖のコントロールが困難である場合、インスリンまたは経口糖質低下類薬剤を用いて治療する必要となる。現在、多くの糖質低下薬剤は、臨床治療に用いられており、主にビスグアニジン類、スルホニルウレア類、インスリン耐性改善剤、グレネ類、α-グルコシダーゼ阻害剤およびジぺプチジルぺプチダーゼ-IV阻害剤などである。これらの薬剤は、良好な治療効果を有するが、長期間治療では、例えば、ビスグアニジン類は乳酸性酸中毒を引き起こしやすく、スルホニルウレア類は低血糖症状をもたらし、インスリン耐性改善剤は水腫、心不全および体重増加をもたらし、α-グルコシダーゼ阻害剤は、腹痛、腹膨れ、下痢などの症状を引き起こす可能性があるといった安全性の問題がある。そのため、糖尿病の治療ニーズを満たすのには、より安全で効果的な新規糖質低下薬剤の開発が要望される。
【0004】
ナトリウム-グルコース共輸送体タンパク(sodium-glucose cotransporters、SGLTs)は、小腸粘膜と近位尿細管で発見されたグルコース輸送タンパク質のファミリーであり、ファミリーのメンバーとしてSGLT1タンパク質とSGLT2タンパク質の二種類が含まれ、腸管と腎臓中のグルコースの膜貫通輸送を媒介する機能として働き、ヒトの血糖の安定を維持する上で重要な役割を果たしている。具体的には、SGLT1は、主に小腸の腸管粘膜細胞に分布し、心筋と腎臓においても少量発現し、主にグルコースの腸管吸收過程を調整する。一方、SGLT2は腎臓で高いレベルで発現し、主にグルコース腎臓の再吸収過程の調整を担当し、即ち、尿中のグルコースは糸球体のろ過を受ける際に尿細管上皮細胞に積極的に付着し、SGLT2タンパク質を通じて胞内に輸送され再利用される。この過程で、SGLT2は90%の再吸收過程を担当し、残りの10%はSGLT1により完成する。この過程では、グルコースの代謝が介入しないため、低血糖という有害反応の発生が回避または軽減され、心血管類疾患を引き起こすリスクが低下する。したがって、SGLTsは、糖尿病治療の理想的な潜在ターゲットの1つになっている。
【0005】
そこで、幾つかのSGLTs阻害剤、特に高選択性のSGLT2阻害剤が相次いで開発された。これらはSGLT2活性を阻害することにより、腎臓によるグルコースの再吸收を特異的に阻害し、これにより尿でのグルコースの排泄を増加させ、糖尿病患者の血漿グルコースを正常化させる。2012年から今まで、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、カナグリフロジン(Canagliflozin)、ルセオグリフロジン(Luseogliflozin)、イプラグリフロジン(Ipragliflozin)、トホグリフロジン(Tofogliflozin)およびエンパグリフロジン(Empagliflozin)などの6つの薬剤が相次いで許可されて発売され、有効な糖尿病治療薬となっている。
【0006】
選択性SGLT2阻害剤に加えて、近年の研究では、SGLT2を阻害する同時に、SGLT1を部分的に阻害することで、腎臓によるグルコースの再吸収を阻害するとともに、下痢や他の胃腸管反応が現れないように腸管によるグルコースの吸收を制御することができることが見出された。また、腸管のSGLT1を阻害して胃腸管を経由して血中に入るグルコースを減少させることによって、食後のGLP-1とPYYレベルを増加させることが可能となり、それによって選択性SGLT2阻害剤よりも良好な血糖降下作用が発揮されるとともに、尿路感染と腎機能障害などが発生するリスクが低下された。従って、近年、SGLT1/SGLT2二重阻害剤の開発は、糖尿病治療の新しいターゲット方向となっている。現在、Lexicon社とセノフィ社により共同開発されたSGLT1/SGLT2二重阻害剤Sotagliflozinは、ヨーロッパにおいて上市されている(WO2008042688/WO2012094293)。
【0007】
ジぺプチジルぺプチダーゼ-IV(Dipeptidyl peptidase-4)は細胞表面のセリンプロテアーゼであり、多種類のグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1、GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide、GIP)を消滅させることができる。DPP-4阻害剤は、DPP-4を失活させることができ、GLP-1を分解せず、GLP-1のレベルを高めることで、血糖コントロール作用を発揮する。これまで、世界中でシタグリプチン(sitagliptin)、ビルダグリプチン(vildagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、アログリプチン(alogliptin)、リナグリプチン(linagliptin)、ゲミグリプチン(gemigliptin)およびテネリグリプチン(teneligliptin)といった多くのDPP-4阻害剤が発売されてきた。発売されているDPP-4阻害薬は、糖質低下効果が弱く、心血管イベントリスクの利益が得られないが、長期的なデータにより、安全で信頼性があり、明らかな副作用がないと示されている。
【0008】
SGLT1とDPP4ターゲットへの阻害の相乗作用は、内因性GLP-1の分泌と濃度を促進して延長し、内因性インスリンの分泌を刺激して体内全体の糖エネルギーの使用を高めることができ、さらに、SGLT2ターゲットへの阻害を加え、高血糖レベル条件でグルコースの排泄を加速させることで、体内でのグルコースの吸收、代謝、および排泄の全体ルートを貫いて、全面的に血糖レベルを低下させ、低血糖リスクを引き起こしにくい。
【0009】
以上より、SGLT1/SGLT2/DPP4三重阻害剤は、良好な開発の見通しがある。
【発明の概要】
【0010】
本発明では、下記の式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1は、1、2または3個のRaで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
2は、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRbで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
3、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRcで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRdで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
1は-(CH2m-であり、
2は-(CH2n-であり、
mは0、1または2であり、
nは0、1または2であり、
a、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OHおよびNH2から選択される。)
【0013】
本発明では、下記の式(I)の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩がさらに提供される。
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R1は、1、2または3個のRaで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
2は、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRbで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
3、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRcで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2および1、2または3個のRdで任意選択的に置換されるC13アルキル基から選択され、
1は-(CH2m-であり、
2は-(CH2n-であり、
mは0、1または2であり、
nは1または2であり、
a、RbおよびRcはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OHおよびNH2から選択される。)
【0016】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R1はCH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは1、2または3個のRaで任意選択的に置換され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R1はCH3から選択され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R2はCl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは1、2または3個のRbで任意選択的に置換され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R2は、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3、Etおよび
【0020】
【化3】
【0021】
から選択され、該CH3、Etおよび
【0022】
【化4】
【0023】
は1、2または3個のRbで任意選択的に置換され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R2は、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R2は、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3、Etおよび
【0026】
【化5】
【0027】
から選択され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R3、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは1、2または3個のRcで任意選択的に置換され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R3、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OHおよびNH2から選択され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、該CH3およびEtは1、2または3個のRdで任意選択的に置換され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH2、CH3およびEtから選択され、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記E1は-CH2-、または、-CH2-CH2-であり、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記E1は-CH2-であり、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記E2は単結合または-CH2-であり、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記E2は-CH2-であり、他の変数は本発明に定義される通りである。
【0036】
本発明のさらなる幾つかの実施形態は、上記各変数の任意の組み合わせによるものである。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、上記化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩において、該化合物は、
【0038】
【化6】
【0039】
から選択される。ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、本発明に定義される通りである。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態では、上記化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩において、該化合物は、
【0041】
【化7】
【0042】
から選択される。ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、本発明に定義される通りである。
【0043】
本発明では、下記の化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩がさらに提供される。
【0044】
【化8】
【0045】
本発明の幾つかの実施形態では、上記化合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩において、該化合物は、
【0046】
【化9】
【0047】
から選択される。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態では、上記合物、その異性体またはその薬学的に許容される塩において、該化合物は、
【0049】
【化10】
【0050】
から選択される。
【0051】
さらに、本発明は、SGLT1/SGLT2/DPP4三重阻害剤に関する医薬品の製造における上記化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る化合物は、Human-SGLT1、Human-SGLT2およびrhDPP4に対するより良いインビトロでの阻害活性を示し、また、一定の経口吸収量と生体利用率を備えていることを示した。本発明に係る化合物は、溶媒対照群に比べて、動物における2時間以内の血糖AUCレベルを著しく低下させることができ、また、動物における24時間尿糖排泄レベルが陽性化合物より低かった。
定義および説明
【0053】
特に断りがない限り、本明細書で使用される以下の用語および文節は、以下の意味を有することを意図している。特定の用語または文節は、特に定義されない場合には、不確実或いは不明確とみなされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合は、対応する商品または有効成分を指すことを意図している。
【0054】
ここで採用される用語「薬学的に許容される」は、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形にとって、それらは、信頼できる医学的判断の範囲内でヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、過剰な毒性、刺激性、アレルギー性反応または他の問題或いは合併症がなく、合理的な利益/リスク比に相当する。
【0055】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明に係る化合物の塩を意味し、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的無毒の酸またはアルカリとにより製造される。本発明に係る化合物に比較的酸性の官能基が含まれている場合には、アルカリ付加塩は、純粋な溶液または適当な不活性溶剤中でこれらの化合物を十分な量のアルカリと接触させることにより得ることができる。薬学的に許容されるアルカリ付加塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミンまたはマグネシウム塩或いは類似の塩が含まれる。本発明に係る化合物に比較的塩基性の官能基が含まれている場合には、酸付加塩は、純粋な溶液または適当な不活性溶剤中でこれらの化合物十分な量の酸と接触させることにより得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の実例には、例えば、塩酸、臭素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ素酸、および亜リン酸などの無機酸塩、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸およびメタンスルホン酸などの類似の酸のような有機酸塩、アミノ酸(例えば、アルギニンなど)の塩、並びにグルクロン酸などの有機酸の塩が含まれる。本発明のある特定の化合物は、塩基性および酸性の官能基を含むので、任意のアルカリまたは酸付加塩に変換することができる。
【0056】
本発明の薬学的に許容される塩は、酸基または塩基を含む母体化合物から従来の化学的方法により合成されることができる。一般的に、このような塩は、水若しくは有機溶剤または両者の混合物で、遊離酸またはアルカリ形態のこれらの化合物を化学量論の適当なアルカリまたは酸と反応させる製造方法によって製造される。
【0057】
本発明に係る化合物は、特定の幾何または立体異性体の形態が存在し得る。本発明では、すべてのこのような化合物にはシスおよびトランス異性体、(-)-および(+)-鏡像体、(R)-および(S)-鏡像体、非鏡像異性体、(D)-異性体、(L)-異性体、その非旋光性混合物、並びに鏡像異性体や非鏡像体に富む混合物のような他の混合物が含まれることが想定される。これらの混合物はすべて本発明の範囲内に属する。アルキル基などの置換基には、別の不斉炭素原子が存在し得る。これらの異性体およびそれらの混合物は、すべて本発明の範囲内に含まれる。
【0058】
特に断りがない限り、用語「鏡像異性体」または「光学異性体」とは、互いに鏡像関係を持つ立体異性体を意味する。
【0059】
特に断りがない限り、用語「シス-トランス異性体」または「幾何異性体」は、二重結合または環状炭素原子の単結合が自由に回転できないことに起因するものである。
【0060】
特に断りがない限り、用語「非鏡像異性体」とは、分子が2つ以上のキラル中心を有し、かつ分子間が非鏡像関係である立体異性体を意味する。
【0061】
特に断りがない限り、「(+)」は右旋、「(-)」は左旋、「(±)」は非旋光性を表す。
【0062】
【化11】
【0063】
特に断りがない限り、化合物に炭素炭素二重結合、炭素窒素二重結合および窒素窒素二重結合のような二重結合構造が存在し、二重結合での各原子がいずれも2つの異なる置換基に結合されている場合(ただし、窒素原子を含む二重結合では、窒素原子での一対の不対電子がそれに結合される置換基とみなされる。)は、この化合物における二重結合での原子とその置換基とを波線
【0064】
【化12】
【0065】
で結合すると、この化合物の(Z)型異性体、(E)型異性体または2つの異性体の混合物を表す。例えば、下記式(A)は、この化合物が式(A-1)または式(A-2)の単一異性体の形態で存在するか、或いは式(A-1)および式(A-2)の2つの異性体の混合物の形態で存在することを表す。下記式(B)は、この化合物が式(B-1)または式(B-2)の単一異性体の形態で存在するか、或いは式(B-1)および式(B-2)の2つの異性体の混合物の形態で存在することを表す。下記式(C)は、この化合物が式(C-1)または式(C-2)の単一異性体の形態で存在するか、或いは式(C-1)および式(C-2)の2つの異性体の混合物の形態で存在することを表す。
【0066】
【化13】
【0067】
特に断りがない限り、用語「互変異性体」または「互変異性体形態」とは、室温で異なる官能基異性体が動的バランスにあり、急速に相互変換できることを意味する。互変異性体が可能であれば(例えば、溶液中にある場合)、互変異性体の化学平衡に到達することができる。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピック互変異性体(prototropic tautomer)ともいう)には、ケトン-アルケノール異性化およびイミン-アルケニルアミン異性化のようなプロトン移動による相互変換が含まれる。原子価互変異性体(valence tautomer)は、幾つかの結合形成の電子の再編成による相互変換を含む。ここで、ケトン-アルケノール互変異性化の具体的な実例としては、ペンタン-2,4-ジケトンと4-ヒドロキシペン-3-エン-2-オンという2つの互変異性体の間の相互変換である。
【0068】
特に断りがない限り、用語「1つの異性体に富む」、「異性体豊富」、「1つの鏡像体に富む」または「鏡像体豊富」とは、1つの異性体または鏡像体の含有量が100%未満であり、かつ、この異性体または鏡像体の含有量が60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上、または96%以上、または97%以上、または98%以上、または99%以上、または99.5%以上、または99.6%以上、または99.7%以上、または99.8%以上、または99.9%以上であることを意味する。
【0069】
特に断りがない限り、用語「異性体過剰率」または「鏡像体過剰率」とは、2つの異性体または2つの鏡像体の相対パーセンテージの差を意味する。例えば、1つの異性体または鏡像体の含有量が90%であり、もう1つの異性体または鏡像体の含有量が10%であると、異性体または鏡像体過剰率(ee値)が80%となる。
【0070】
光学活性の(R)-と(S)-異性体およびDとL異性体は、キラル合成またはキラル試薬或いは他の従来技術により製造することができる。本発明のある化合物の1つの鏡像体は、不斉合成またはキラル助剤を有する誘導体化作用により製造することができ、ここで、純粋な所望の鏡像異性体を提供するように、得られた非鏡像体混合物が分離され、補助基が脱離させられる。分子は、塩基性官能基(例えばアミノ基)または酸性官能基(例えば、カルボキシ基)を含有する場合、適当な光学活性の酸またはアルカリと反応させて非鏡像異性体の塩を形成し、その後、当分野で公知の常法により非鏡像異性体が分離され、次いで得られた純粋な鏡像体が回收される。さらに、鏡像異性体および非鏡像異性体の分離は、通常、キラル固定相を用い、任意選択的に化学的誘導体化法(例えば、アミンからカーバメートを生成する。)と組み合わせるクロマトグラフィーを用いて行われる。
【0071】
本発明に係る化合物は、この化合物を構成する1つまたは複数の原子に原子同位体を非天然比で含むことができ、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)またはC-14(14C)のような放射性同位体で化合物を標識することができるし、重水素で水素を置き換えて重水素化薬剤を形成することもできる。重水素と炭素とからなる結合が一般の水素と炭素とからなる結合よりも強固であるから、重水素化薬剤は、未重水素化薬剤に比べて、有害な副作用が軽減し、薬剤の安定性が増加し、治療効果が向上し、薬剤の生物半減期が延長するといった利点を有する。なお、その同位体成分を変換したすべての本発明に係る化合物は、放射性の有無にかかわらず、本発明の範囲内に含まれている。
【0072】
用語「任意選択的」または「任意選択的に」とは、後述の事件または状况が発生する可能性があるが、必ずしも発生するというわけではないことを意味し、この説明は上記事件または状况が発生する場合と上記事件または状况が発生しない場合を包含する。
【0073】
用語「置換される/置換された」は、特定の原子での任意の1つまたは複数の水素原子が置換基で置換されることを意味し、特定の原子価状態が正常であり、かつ、置換された後の化合物が安定である限り、重水素および水素の変異体を含むことができる。置換基が酸素(即ち、=O)である場合、2つの水素原子が置換されたことを意味する。酸素置換は芳香族基で起こることがない。用語「任意選択的に置換される/置換された」は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよいことを意味し、特に規定がない限り、置換基の種類および数は、化学的に実現可能であれば任意であってもよい。
【0074】
任意の変数(例えば、R)が化合物の構成または構造において一回以上現れる場合、各回の定義はそれぞれ独立している。したがって、例えば、1つの原子団が0~2個のRで置換された場合、上記原子団は任意選択的に最大2個のRで置換されてもよく、それぞれの場合のRには独立した選択肢がある。さらに、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、このような組み合わせが安定の化合物を生成できる場合にのみ許容される。
【0075】
一つの連結基の数が0である場合は、例えば、-(CRR)0-では、この連結基が単結合であることを示す。
【0076】
変数の1つが単結合から選択される場合は、それに結合される2つの基が直接に結合されていることを示し、例えば、A-L-ZでLが単結合を表す場合には、この構造が実際にA-Zであることを示す。
【0077】
1つの置換基が空席である場合は、この置換基が存在しないことを示し、例えば、A-XでXが空席である場合には、この構造が実際にAであることを示す。挙げられる置換基においては、どの原子を介して被置換基に結合されるかが示されていない場合、それらの置換基は、その任意の原子を介して結合することができ、例えば、ピリジル基が置換基とされる場合、ピリジン環での任意の炭素原子を介して被置換基に結合することができる。
【0078】
挙げられる連結基はその結合方向を示さない場合、その結合方向が任意であり、例えば、
【0079】
【化14】
【0080】
では、連結基Lが-M-W-とされる場合、-M-W-は、左から右までの読み取り順と同じ方向で環Aと環Bとを結合して
【0081】
【化15】
【0082】
を構成してもよく、左から右までの読み取り順と逆方向で環Aと環Bとを結合して
【0083】
【化16】
【0084】
を構成してもよい。なお、上記の連結基、置換基および/またはその変異体の組み合わせは、このような組み合わせが安定な化合物を生成できる場合にのみ許容される。
【0085】
特に規定がない限り、ある原子団が1つまたは複数の結合可能なサイトを持つ場合、この原子団の任意の1つまたは複数のサイトは、化学結合により他の原子団に結合することができる。上記サイトと他の原子団とを結合する化学結合は、
【0086】
【化17】
【0087】
で表すことができる。例えば、-OCH3における実線の直形結合は、この原子団における酸素原子を介して他の原子団に結合されていることを示す。
【0088】
【化18】
【0089】
における破線の直形結合は、この原子団における窒素原子の両端を介して他の原子団に結合されていることを示す。
【0090】
【化19】
【0091】
における波線は、このフェニル基における1および2番目の炭素原子を介して他の原子団に結合されていることを示す。
【0092】
特に規定がない限り、用語「C13アルキル基」は、1~3個の炭素原子からなる直鎖または分岐鎖の飽和炭素水素基を表すのに用いられる。上記C13アルキル基には、C12およびC23アルキル基などが含まれ、一価(例えば、メチル基)、二価(例えば、メチレン基)または多価(例えば、メチン基)であってもよい。C13アルキル基の実例には、メチル基(Me)、エチル基(Et)、プロピル基(n-プロピル基およびイソプロピル基を含む)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
特に規定がない限り、Cnn+mまたはCn~Cn+mには、n~n+m個の炭素のいずれの具体的例が含まれ、例えば、C112にはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11およびC12が含まれ、さらにn~n+mのいずれの範囲も含み、例えば、C112にはC13、C16、C19、C36、C39、C312、C69、C612およびC912などが含まれる。同様に、n員~n+m員は、環における原子数がn~n+m個であることを表し、例えば、3~12員環には、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環、11員環および12員環が含まれ、さらにn~n+mのいずれの範囲も含み、例えば、3~12員環には3~6員環、3~9員環、5~6員環、5~7員環、6~7員環、6~8員環および6~10員環などが含まれる。
【0094】
用語「脱離基」とは、別の官能基または原子で置換反応(例えば、親核置換反応)により置換され得る官能基または原子を意味する。例えば、代表的な脱離基には、トリフルオロメタンスルホネート;クロロ、ブロモ、ヨード;メタンスルホネート、トルエンスルホネート、パラブロモベンゼンスルホネート、パラトルエンスルホネートなどのスルホネート基;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基などのアシロキシ基などが含まれる。
【0095】
用語「保護基」には、「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」または「メルカプト保護基」が含まれるが、これらに限定されない。用語「アミノ保護基」とは、アミノ基の窒素部位での副反応を阻止するのに好適な保護基を意味する。代表的なアミノ保護基には、ホルミル基;アルカノイル基(例えば、アセチル基、トリクロロアセチル基またはトリフルオロアセチル基)のようなアシル基;tert-ブトキシカルボニル基(Boc)のようなアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)およびフルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)のようなアリールメトキシカルボニル基;ベンジル基(Bn)、トリフェニルメチル基(Tr)、1,1-ジ-(4’-メトキシフェニル)メチル基のようなアリールメチル基;トリメチルシリル基(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル基(TBS)などのシリル基などが含まれるが、これらに限定されない。用語「ヒドロキシ保護基」とは、ヒドロキシ副反応を阻止するのに好適な保護基を意味する。代表的なヒドロキシ保護基には、メチル基、エチル基およびtert-ブチル基のようなアルキル基;アルカノイル基(例えば、アセチル基)のようなアシル基;ベンジル基(Bn)、パラメトキシ基ベンジル基(PMB)、9-フルオレニルメチル基(Fm)およびジフェニルメチル基(ジフェニルメチル基、DPM)のようなアリール基メチル基;トリメチルシリル基(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル基(TBS)などのシリル基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明に係る化合物は、以下に挙げられる具体的な実施形態、それと他の化学合成方法との組み合わせによる実施形態、および当業者に周知の同等の代替形態を含む、当業者に周知の様々な合成方法により製造することができる。好適な実施形態には、本発明の実施例が含まれるが、これに限定されない。
【0097】
本発明に用いられる全ての溶剤は市販されている。本発明では、下記の略称が使用される。aqは水、HATUはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、EDCはN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、m-CPBAは3-クロロペルオキシ安息香酸、eqは当量や等量、CDIはカルボニルジイミダゾール、DCMはジクロロメタン、PEは石油エーテル、DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピル、DMFはN,N-ジメチルホルムアミド、DMSOはジメチルスルホキシド、EtOAcは酢酸エチル、EtOHはエタノール、MeOHはメタノールを表す。CBzはアミン保護基で、ベンジルオキシカルボニル基を表す。BOCはアミン保護基で、tert-ブトキシカルボニル基を表す。HOAcは酢酸、NaCNBH3はシアノホウ素水素化ナトリウム、r.t.は室温、O/Nは一晩中、THFはテトラヒドロフラン、Boc2Oは二炭酸ジ-tert-ブチル、TFAはトリフルオロ酢酸、DIPEAはジイソプロピルエチルアミン、SOCl2は塩化チオニル、CS2は二硫化炭素、TsOHはパラトルエンスルホン酸、NFSIはN-フルオロビス(フェニルスルホニル)アミン、n-Bu4NFはフッ化テトラブチルアンモニウム、iPrOHは2-プロパノール、mpは融点、LDAはジイソプロピルアミドリチウム、Etはエチル基を表す。
【0098】
化合物は、当分野の従来の命名規則に基づくか、またはChemDrawTMソフトウェアを使用することにより命名される。市販の化合物は、サプライヤーのカタログ名を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明に何らかの不利な制限を意味しない。本明細書では、本発明を詳細に説明し、具体的な実施形態も開示したが、当業者にとって、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の具体的な実施形態について種々の変更および改善できることが明らかである。
【0100】
【化20】
【0101】
合成経路:
【0102】
【化21】
【0103】
ステップ1:化合物A-1-2の合成
化合物A-1-1(25g、133.52mmol、1eq)をジクロロメタン(110mL)に溶解し、トリエチルアミン(27.02g、267.04mmol、37.17mL、2eq)を加え、反応を0℃まで冷却した。0℃で、塩化メタンスルホニル(15.30g、133.52mmol、10.33mL、1eq)を反応系に滴下した。滴下終了後、反応を0℃から15℃まで昇温させ、15℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応終了後0℃まで冷却し、0℃でゆっくりと水(100mL)を加えて反応をクエンチした。混合物をジクロロメタン(100mL×2)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した後に化合物A-1-2を得た。
【0104】
ステップ2:化合物A-1-4の合成
化合物A-1-2(6.00g、22.61mmol、1.00eq)、化合物A-1-3(3.91g、22.61mmol、1.00eq)、炭酸セシウム(14.73g、45.22mmol、2.00eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(10.00mL)に加え、反応系を80℃まで加熱し、80℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液に水(50mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3)で抽出し、有機相を合わせて水(30mL×3)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物A-1-4を得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ 7.41-7.34(m,2H),6.78-6.74(m,2H),4.15-4.12(m,1H),3.64-3.52(m,4H),2.18-2.07(m,2H),1.157(s,9H)。
【0105】
ステップ3:化合物A-1-5の合成
化合物A-1-4(3.00g、8.77mmol、1.00eq)を塩化水素の酢酸エチル溶液(10mL、4M)に溶解し、反応を20℃で1時間行った。反応終了後、反応液に水(30mL)を加えて希釈し、混合物を酢酸エチル(20mL)で洗浄した。水相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpH=7に調整した。水相を酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機相を飽和食塩水(20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮し、化合物A-1-5の粗生成物を得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ 7.39-7.35(m,2H),6.76-6.74(m,2H),5.30(m,1H),3.31-3.13(m,4H),2.15-2.05(m,2H)。
【0106】
ステップ4:化合物A-1-7およびA-1-8の合成
化合物A-1-5(2g、7.18mmol、1eq)、化合物A-1-6(2.58g、7.90mmol、1.1eq)をジクロロメタン(20mL)およびメタノール(4mL)に溶解し、反応液に酢酸(43.11mg、717.95μmol、41.06μL,0.1eq)を加え、トリアセトキシホウ素水素化ナトリウム(3.04g、14.36mmol、2eq)を加え、15℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物を水(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=3/1)で分離精製し、それぞれ化合物A-1-7(Rf=0.5)および化合物A-1-8(Rf=0.4)を得た。化合物A-1-7(Rf=0.5):1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.38(d,J=9.2Hz,2H),7.34-7.28(m,1H),7.03-6.87(m,2H),6.76(d,J=8.8Hz,2H),4.93-4.77(m,1H),4.49-4.28(m,2H),4.15(br d,J=12.4Hz,1H),4.10-3.97(m,1H),3.59(d,J=12.0Hz,1H),3.50-3.35(m,1H),3.08-2.89(m,1H),2.76-2.56(m,2H),2.50(br s,1H),2.45-2.37(m,1H),2.36-2.26(m,1H),2.12-1.94(m,1H),1.28(br s,9H)。化合物A-1-8(Rf=0.4):1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.37(d,J=8.8Hz,2H),7.24-7.17(m,1H),7.02-6.89(m,2H),6.74(d,J=8.8Hz,2H),4.85-4.74(m,1H),4.51-4.40(m,1H),4.31-4.25(m,1H),4.24-4.18(m,1H),3.82-3.65(m,1H),3.45-3.33(m,1H),3.04-2.83(m,3H),2.65-2.50(m,2H),2.50~2.41(m,1H),2.38-2.23(m,1H),2.06-1.93(m,1H),1.26(br s,9H)。
【0107】
ステップ5:化合物A-1の合成
化合物A-1-8(15g、27.10mmol、1eq)、化合物A-1-9(13.77g、54.21mmol、2eq)、酢酸カリウム(7.98g、81.31mmol、3eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(1.98g、2.71mmol、0.1eq)を順に無水ジオキサン(20mL)に加え、窒素の保護下で、90℃で2時間反応させた。反応終了後、減圧下で反応液を濃縮し、残留物を水(200mL)で希釈し、混合物をジクロロメタン(200mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、化合物A-1を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.74(d,J=8.8Hz,2H),7.24-7.15(m,1H),7.01-6.90(m,2H),6.85(d,J=8.8Hz,2H),4.93-4.83(m,1H),4.46(br d,J=9.6Hz,1H),4.27(br d,J=9.6Hz,1H),4.24-4.18(m,1H),3.81-3.68(m,1H),3.38(br t,J=10.8Hz,1H),3.05-2.96(m,1H),2.93(br d,J=3.2Hz,2H),2.63-2.49(m,2H),2.46(br d,J=11.6Hz,1H),2.39-2.27(m,1H),2.05-1.95(m,1H),1.51(q,J=12.0Hz,1H),1.34(s,12H),1.26(s,9H)。
【0108】
ステップ6:化合物A-2の合成
化合物A-1-7(3.20g、5.78mmol、1eq)、化合物A-1-9(2.20g、8.67mmol、1.5eq)、酢酸カリウム(1.70g、17.35mmol、3eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(472.19mg、578.21μmol、0.1eq)を無水ジオキサン(30mL)に加え、窒素の保護下で、90℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液に水(50mL)を加えて希釈し、混合物をジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、化合物A-2を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.74(d,J=8.4Hz,2H),7.34-7.25(m,1H),7.00-6.90(m,2H),6.86(d,J=8.4Hz,2H),5.00-4.86(m,1H),4.50-4.35(m,2H),4.18-4.07(m,2H),4.06-9.95(m,1H),3.57(br d,J=12.0Hz,1H),3.54-3.44(m,1H),3.08-2.93(m,1H),2.72-2.63(m,1H),2.62-2.54(m,1H),2.43-2.36(m,1H),2.35-2.26(m,1H),2.04-1.96(m,1H),1.33(s,12H),1.23(s,9H)。
【0109】
【化22】
【0110】
合成経路:
【0111】
【化23】
【0112】
ステップ1:化合物A-3-2の合成
A-3-1(8g、46.19mmol、1eq)、トリエチルアミン(9.35g、92.37mmol、12.86mL、2eq)、塩化メタンスルホニル(6.61g、57.73mmol、4.47mL、1.25eq)をジクロロメタン(120mL)に加え、20℃で16時間反応させた。反応終了後、反応物を200mL氷水にゆっくりと入れてクエンチし、クエンチした後に10分間攪拌し続け、静置して分層し、有機相を回収し、水(50mL)、水酸化ナトリウム水溶液(1M、50mL)、飽和食塩水(50mL)この順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮し、生成物A-3-2を得た、1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 5.18(tt,J=6.7,4.1Hz,1H),4.30-4.22(m,2H),4.09(dd,J=4.1,0.9Hz,1H),4.07(dd,J=4.1,0.9Hz,1H),3.05(s,3H),1.38-1.47(s,9H)。
【0113】
ステップ2:化合物A-3-3の合成
パラブロモフェノール(5.78g、33.43mmol、1.2eq)、A-3-2(7g、27.86mmol、1eq)、炭酸セシウム(18.15g、55.71mmol、2eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)に加え、80℃で16時間反応させ、反応終了後、水(200mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水(60mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物に石油エーテル(60mL)を加え、常温で1時間攪拌した後にろ過し、フィルターケーキをジクロロメタンで溶解した後に減圧濃縮に移動して化合物A-3-3を得た、1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.39(d,J=8.5Hz,2H),6.63(d,J=8.8Hz,2H),4.89-4.79(m,1H),4.29(dd,J=9.8,6.3Hz,2H),4.00(d,J=4.0Hz,1H),3.98(d,J=4.0Hz,1H),1.40-1.52(s,9H)。
【0114】
ステップ3:化合物A-3-4の合成
A-3-3(11g、33.52mmol、1eq)を塩化水素の酢酸エチル溶液(4M、30mL、3.58eq)に投入し、20℃で16時間攪拌した。反応終了後にろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル(30mL)で洗浄した後にジクロロメタン(40mL)で溶解し、さらに減圧下で濃縮して化合物A-3-4の塩酸塩を得た。
【0115】
ステップ4:化合物A-3-5およびA-3-6の合成
A-3-4の塩酸塩(4.2g、15.88mmol、1eq)、A-1-5(7.79g、23.81mmol、1.5eq)、硫酸マグネシウム(19.11g、158.76mmol、10eq)およびトリエチルアミン(1.61g、15.88mmol、2.21mL、1eq)をN,N-ジメチルアセチルアミド(90mL)に加え、20℃で1時間反応させた後、シアノホウ素水素化ナトリウム(3.99g、63.50mmol、4eq)を加えて15時間反応させて続けた。反応終了後、反応液に水(100mL)を加えて希釈し、ろ過して固体を回収し、フィルターケーキを水(20mL)で洗浄し、フィルターケーキをジクロロメタン(20mL)で溶解し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、それぞれ化合物A-3-5(石油エーテル:酢酸エチル=3:1、Rf=0.31)および化合物A-3-6(石油エーテル:酢酸エチル=3:1、Rf=0.46)を得た。化合物A-3-5:1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.44-7.33(m,2H),7.19(m,1H),6.95(m,2H),6.74-6.60(m,2H),4.77(br t,J=5.6Hz,1H),4.45(m,1H),4.25(br d,J=10.0Hz,1H),4.07-3.97(m,1H),3.79(m,3H),3.33-3.15(m,3H),2.63(m,J=10.8Hz,1H),2.30(br d,J=13.3Hz,1H),1.34-1.21(s,9H)。化合物A-3-6:1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.38(br d,J=9.0Hz,3H),6.94(m,2H),6.78-6.61(m,2H),4.78(m,1H),4.37(m,2H),4.07-3.88(m,4H),3.55(br d,J=12.8Hz,1H),3.07(br s,2H),2.53(br s,1H),2.17(br d,J=11.5Hz,1H),1.28(s,9H)
【0116】
ステップ5:化合物A-3の合成
窒素の保護下で、化合物A-3-5(200mg、370.78μmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(235.39mg、926.94μmol、2.5eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(60.56mg、74.16μmol、0.2eq)および酢酸カリウム(109.17mg、1.11mmol、3eq)を無水ジオキサン(5mL)に投入し、80℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液に水(10mL)を加えてクエンチして希釈し、ジクロロメタン(5mL×2)で抽出した。有機相を合わせて水(5mL)で洗浄した後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製して化合物A-3を得た。MS:587.2[M+1]+
【0117】
ステップ6:化合物A-4の合成
窒素の保護下で、化合物A-3-6(200mg、370.78μmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(112.99mg、444.93μmol、1.2eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(60.56mg、74.16μmol、0.2eq)、酢酸カリウム(72.78mg、741.55μmol、2eq)を無水ジオキサン(4mL)に投入し、80℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液に水(10mL)を加えて希釈し、ジクロロメタン(10mL×2)を加えて抽出した。有機相を合わせて水(5mL)で洗浄した後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製して化合物A-4を得た。 MS:587.1[M+1]+
【0118】
【化24】
【0119】
合成経路:
【0120】
【化25】
【0121】
ステップ1:化合物A-5-2の合成
A-5-1(4g、13.67mmol、1eq)、A-1-6(6.71g、20.51mmol、1.5eq)、トリエチルアミン(1.38g、13.67mmol、1.90mL、1eq)、硫酸マグネシウム(16.46g、136.71mmol、10eq)をN,N-ジメチルアセチルアミド(40mL)に加え、20℃で1時間反応させた後、シアノホウ素水素化ナトリウム(3.44g、54.68mmol、4eq)を加え、15時間反応させて続けた。反応終了後、反応液に水(50mL)を加えてクエンチして希釈し、ジクロロメタン(20mL×2)を加えて抽出し、有機相を合わせて、飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、その後、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、生成物A-5-2を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.40-7.22(m,2H),7.21(m,1H),7.02-6.89(m,2H),6.83-6.76(m,2H),4.48(br d,J=8.8Hz,1H),4.27(br dd,J=7.3,3.0Hz,2H),4.24-4.18(m,1H),3.70(br d,J=8.0Hz,1H),3.42(t,J=10.9Hz,1H),2.93-2.71(m,3H),2.56-2.38(m,3H),2.04-1.93(m,2H),1.80(m,4.3Hz,2H),1.70(m,1H),1.50(q,J=11.9Hz,1H),1.32-1.18(s,9H)。
【0122】
ステップ2:化合物A-5の合成
A-5-2(7g、12.34mmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(7.83g、30.84mmol、2.5eq)、酢酸カリウム(2.42g、24.67mmol、2eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(2.01g、2.47mmol、0.2eq)を無水ジオキサン(40mL)に投入し、窒素の保護下で、80℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物をジクロロメタン(20mL)で溶解し、水(20mL×3)で三回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した後に粗生成物を得、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、生成物A-5を得た。MS:615.3[M+1]+。
【0123】
【化26】
【0124】
合成経路:
【0125】
【化27】
【0126】
ステップ1:化合物A-6-2の合成
化合物A-6-1(10g、53.41mmol、1eq)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、次いでトリエチルアミン(10.81g、106.82mmol、14.87mL、2eq)を反応液に加え、0℃で反応に塩化メタンスルホニル(6.12g、53.41mmol、4.13mL、1eq)を滴下し、15℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、0℃で、反応に水(20mL)を加えて反応をクエンチし、さらにジクロロメタン(30mL×2)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した後にA-6-2を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 5.22-5.17(m,1H),3.66-3.39(m,4H),2.99(s,3H),2.27-2.04(m,2H),1.40(s,9H)
【0127】
ステップ2:化合物A-6-3の合成
化合物A-6-2(6.5g、24.50mmol、1eq)、パラブロモフェノール(5.09g、29.40mmol、1.2eq)、炭酸セシウム(15.96g、49.00mmol、2eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(70mL)に加え、80℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、水(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL×2)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)で分離精製してA-6-3を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.37(br t,J=8.2Hz,1H),7.31-7.26(m,2H),4.82(br s,1H),3.63-3.43(m,4H),2.21-2.05(m,2H),1.47(br d,J=3.3Hz,9H)。
【0128】
ステップ3:化合物A-6-4の合成
化合物A-6-3(15.00g、43.83mmol、1eq)を酢酸エチル(100mL)に溶解し、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M,21.92mL、2eq)を加え、15℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物に混合溶液(石油エーテル:酢酸エチル=5:1,100mL)を加え、2時間攪拌した後にろ過し、フィルターケーキを回収し、化合物A-6-4を得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ=7.48-7.44(m,2H),6.98-6.93(m,2H),5.21(td,J=2.7,5.8Hz,1H),3.57-3.45(m,4H),2.37-2.29(m,2H)
【0129】
ステップ4:化合物A-6-5およびA-6-6の合成
化合物A-6-4(4g、14.36mmol、1eq)、化合物A-1-6(5.17g、15.79mmol、1.1eq)をジクロロメタン(50mL)およびメタノール(20mL)に溶解し、反応液に酢酸(86.23mg、1.44mmol、82.12μL,0.1eq)を加え、トリアセトキシホウ素水素化ナトリウム(6.09g、28.72mmol、2eq)を加え、15℃下で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物に水(50mL)を加え、ジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=3/1-2/1,千分の一のトリエチルアミンを含む。)で分離精製し、それぞれ化合物A-6-5(Rf=0.47)。1H NMR(400MHz,DMSO)δ=7.44(d,J=8.9Hz,2H),7.21-7.07(m,3H),6.91(d,J=8.9Hz,2H),6.83(d,J=9.8Hz,1H),4.94(br s,1H),4.03(q,J=7.1Hz,2H),3.95-3.82(m,1H),3.46(br d,J=12.0Hz,1H),3.00(br dd,J=6.1,10.0Hz,1H),2.86-2.72(m,2H),2.39-2.28(m,2H),2.07(br d,J=13.0Hz,1H),1.91-1.82(m,1H),1.77(br t,J=11.7Hz,1H),1.21-1.17(m,9H)
および化合物A-6-6(Rf=0.40)を得た。1H NMR(400MHz,DMSO)δ=7.43(d,J=8.9Hz,2H),7.20-7.12(m,3H),6.95-6.85(m,3H),4.84(br s,1H),4.13-4.04(m,1H),3.67-3.56(m,1H),3.33(d,J=9.5Hz,1H),3.17(br t,J=10.6Hz,1H),2.88-2.81(m,1H),2.81-2.72(m,1H),2.81-2.71(m,1H),2.48-2.36(m,2H),2.30-2.20(m,1H),2.13(br d,J=11.9Hz,1H),1.78-1.69(m,1H),1.53(q,J=11.9Hz,1H),1.30-1.11(m,9H)
【0130】
ステップ5:化合物A-6の合成
化合物A-6-5(4.50g、8.13mmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.10g、12.20mmol、1.5eq)、酢酸カリウム(1.60g、16.26mmol、2eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(594.96mg、813.10μmol、0.1eq)を無水ジオキサン(50mL)に加え、窒素の保護下で、90℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した後に水(50mL)を加えて希釈し、混合物をジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=20:1)で分離精製し、化合物A-6を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.71-7.54(m,2H),7.24(br s,1H),6.86(br s,2H),6.79(br d,J=8.4Hz,2H),5.23(s,1H),4.86(br s,1H),4.34(br s,2H),4.09(br d,J=12.1Hz,1H),3.50(br d,J=12.3Hz,1H),2.84(br s,1H),2.75-2.59(m,2H),2.41(br s,1H),2.36-2.11(m,3H),1.98(br d,J=7.3Hz,1H),1.26(s,9H),1.23-1.17(m,12H)
【0131】
ステップ6:化合物A-7の合成
化合物A-6-6(3.40g、6.14mmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.34g、9.22mmol、1.5eq)、酢酸カリウム(1.21g、12.29mmol、2eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(501.70mg、614.35μmol、0.1eq)を無水ジオキサン(50mL)に加え、窒素の保護下で、90℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物に水(50mL)を加えて希釈し、混合物をジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=20:1)で分離精製し、化合物A-7を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.70-7.59(m,2H),7.13(br s,1H),6.87(br s,2H),6.82-6.70(m,2H),5.25-5.20(m,1H),4.79(br s,1H),4.39(br d,J=8.9Hz,1H),4.17(br d,J=13.5Hz,1H),3.66(br d,J=8.3Hz,1H),3.43-3.30(m,1H),2.86(br d,J=19.4Hz,3H),2.51(br s,2H),2.38(br d,J=10.9Hz,1H),2.24(br d,J=6.6Hz,1H),1.95(br d,J=6.4Hz,1H),1.26(s,9H),1.18(br s,12H)
【0132】
【化28】
【0133】
合成経路:
【0134】
【化29】
【0135】
ステップ1:化合物A-8-1の合成
化合物A-1-2(11.5g、43.34mmol、1.00eq)、オルトメチルパラブロモフェノール(8.11g、43.34mmol、1.00eq)、炭酸カリウム(11.98g、86.69mmol、2.00eq)をN,N-ジメチルホルムアミド(100.00mL)に加え、80℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液に水(500mL)を加え、酢酸エチル(250mL×2)で抽出し、有機相を順に1Mの水酸化ナトリウム水溶液(200mL×2)、飽和食塩水(200mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物A-8-1を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.22-7.01(m,2H),6.67-6.52(m,1H),4.10-3.97(m,1H),3.57-3.35(m,3H),2.97(s,1H),2.16-2.02(m,3H),2.01-1.82(m,1H),2.02-1.76(m,1H),1.40(s,9H)。
【0136】
ステップ2:化合物A-8-2の合成
化合物A-8-1(14.8g、33.57mmol、1.00eq)を塩化水素の酢酸エチル溶液(50mL、4M)に溶解し、15℃で3時間反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮し、残留物に石油エーテル10mLおよび酢酸エチル1mLを加え、1時間攪拌した後に、ろ過し、フィルターケーキを回収して化合物A-8-2を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 7.38-7.29(m,2H),6.96(d,J=8.8Hz,1H),5.15(s,1H),3.90(br t,J=5.2Hz,1H),3.44(br s,2H),3.24(br d,J=10.8Hz,1H),2.24-2.17(m,1H),2.15(s,3H),2.14-2.08(m,1H)。
【0137】
ステップ3:化合物A-8-3およびA-8-4の合成
化合物A-8-2(1g、3.42mmol、1eq)、化合物A-1-6(1.23g、3.76mmol、1.1eq)をジクロロメタン(20mL)およびメタノール(4mL)に溶解し、順に酢酸(20.5mg、341.76μmol、20μL,0.1eq)およびトリアセトキシホウ素水素化ナトリウム(1.45g、6.84mmol、2eq)を加え、15℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧下で反応液を濃縮し、残留物に水(20mL)を加えて希釈し、ジクロロメタン(15mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1)で分離精製し、それぞれ化合物A-8-3(Rf=0.1)および化合物A-8-4(Rf=0.4)を得た。化合物A-8-3:1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.19-7.18(m,1H),7.15(br dd,J=2.4,8.4Hz,2H),6.87(br s,2H),6.50(d,J=8.4Hz,1H),4.70(br t,J=6.8Hz,1H),4.43-4.33(m,1H),4.22-4.12(m,2H),4.08-4.02(m,1H),3.74-3.65(m,1H),3.06-2.99(m,1H),2.84-2.71(m,2H),2.62-2.50(m,2H),2.38(br d,J=12.8Hz,1H),2.25-2.17(m,1H),2.11(s,3H),1.67-1.53(m,1H),1.45-1.37(m,1H),1.19(s,9H)。化合物A-8-4:1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.19(br d,J=2.4Hz,1H),7.17-7.13(m,1H),7.19-7.12(m,1H),6.89-6.85(m,2H),6.51(d,J=8.8Hz,1H),4.70(br t,J=6.8Hz,1H),4.44-4.33(m,1H),4.24-4.18(m,1H),4.14(td,J=2.4,8.8Hz,1H),3.70-3.63(m,1H),3.30(br t,J=10.8Hz,1H),3.07-3.00(m,1H),2.85-2.71(m,2H),2.55(br d,J=11.6Hz,2H),2.39(br d,J=13.8Hz,1H),2.25-2.16(m,1H),2.11(s,3H),1.60(br s,1H),1.43(br d,J=11.2Hz,1H),1.19(s,9H)。
【0138】
ステップ4:化合物A-8の合成
化合物A-8-4(600mg、1.06mmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(403mg、1.59mmol、1.5eq)、酢酸カリウム(156mg、1.59mmol、1.5eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(173mg、0.211mmol、0.2eq)を無水ジオキサン(10mL)に加え、窒素の保護下で、80℃で18時間反応させた。反応終了後、ろ過し、ろ液に水(15mL)を加えて希釈した後にさらにジクロロメタン(20mL×2)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、化合物A-8を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.56-7.52(m,2H),7.13(br s,1H),6.87(br s,2H),6.63(d,J=8.4Hz,1H),4.79(br t,J=6.8Hz,1H),4.40(br d,J=9.2Hz,1H),4.25-4.09(m,1H),4.05(q,J=7.2Hz,2H),4.08-4.02(m,1H),3.29(br t,J=10.8Hz,1H),3.06-3.00(m,1H),2.83-2.74(m,2H),2.60-2.51(m,2H),2.38(br d,J=13.3Hz,1H),2.42-2.34(m,1H),2.27-2.20(m,1H),2.13(s,3H),1.26(s,12H),1.19(s,9H)。
【0139】
ステップ5:化合物A-9の合成
化合物A-8-3(300mg、528.67μmol、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(201.4mg、793.01μmol、1.5eq)を無水DMF(5mL)に溶解し、窒素の保護下で、さらに順に酢酸カリウム(77.8mg、793.01μmol、1.5eq)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムジクロロメタン錯体(86.4mg、105.73umol、0.2eq)を加えた。90℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液に水(15mL)を加えて希釈し、混合物を酢酸エチル(20mL×2)で抽出した。有機相を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、化合物A-9を得た。(MS:615.5[M+1]+
【0140】
【化30】
【0141】
合成経路:
【0142】
【化31】
【0143】
ステップ1:化合物B-1-2の合成
順にトルエン(1200mL)、化合物B-1-1(200g、929.86mmol、1eq)およびテトラブチルブロモ化アンモニウム(20.00g、62.04mmol、6.67%eq)を水酸化ナトリウム(200.00g、5.00mol、5.38eq)の水(400mL)溶液に加え、0.5時間攪拌した。アリルブロミド(157.49g、1.30mol、112.49mL、1.4eq)をゆっくりと加えた。反応を45~50℃に昇温させて15時間攪拌した。反応終了後、冷却し、静置し、分層した。水相をトルエン(300mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水(300mL×3)で洗浄した後に減圧下で濃縮し、残留物にトルエン(200mL)を加えた後に減圧下で濃縮したことを2回繰り返した後に化合物B-1-2を得た。1HNMR(CDCl3)δ 7.52(d,J=2.0Hz,1H),7.37(dd,J=2.4,8.4Hz,1H),7.08(d,J=8.4Hz,1H),6.05-5.87(m,1H),5.42-5.17(m,2H),4.57-4.43(m,2H),4.06(d,J=5.6Hz,2H),2.72-2.57(m,2H),1.21(t,J=7.6Hz,3H)。
【0144】
ステップ2:化合物B-1-4の合成
化合物B-1-2(2.5g、9.80mmol、1eq)を無水テトラヒドロフラン(40mL)に溶解し、窒素の保護下で、-78℃まで冷却し、n-ブチルリチウム(2.5M、4.31mL、1.1eq)を加え、0.5時間攪拌し、溶液Aを得た。B-1-3(3.21g、11.76mmol、1.2eq)を無水テトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、窒素の保護下で、0℃まで冷却し、tert-ブチル塩化マグネシウム(1M、12.74mL、1.3eq)を加え、0.5時間攪拌して溶液Bを得た。-78℃で溶液Bを溶液Aに加え、-78℃で0.5時間攪拌しながら反応させた後、25℃まで昇温させて2時間攪拌した。反応終了後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)にゆっくりと加えて反応をクエンチし、飽和食塩水(5mL)を加え、静置して分層した後、有機相を回収した。水相を酢酸エチル(10mL×3)で三回抽出した。各有機相が合わせた後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得、粗生成物にn-ヘプタン(10mL)を加え、1時間攪拌した後にろ過し、フィルターケーキを回収して化合物B-1-4を得た。MS:363.2[M+1]+
【0145】
ステップ3:化合物B-1-5の合成
B-1-4(3.3g、9.11mmol、1eq)をメタノール(50mL)に溶解し、トリ塩化セリウム七水和物(3.39g、9.11mmol、865.45μL,1eq)を加え、0℃でホウ素水素化ナトリウム(1.38g、36.42mmol、4eq)を加えて0.5時間攪拌し、次いで25℃まで昇温させて1.5時間攪拌した。反応終了後、反応系に0℃で飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、1時間攪拌した後に減圧下で濃縮した。残留物に酢酸エチル(30mL)、水(3mL)、無水硫酸マグネシウム(3g)を加え、0.5時間攪拌した後にろ過し、ろ液を回収し、フィルターケーキで酢酸エチル(15mL×3)を洗浄した。有機相を合わせ、順にそれぞれ水(10mL×2)と飽和食塩水(10mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。2.8g粗生成物を取って酢酸(14mL)と水(14mL)に溶解し、反応を95~100℃まで加熱して16時間攪拌した。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、残留物にトルエン(10mL)を加えて減圧下で濃縮したことを2回繰り返した後に粗生成物を得た。粗生成物2.5gを取ってピリジン(12mL)に溶解し、0℃で無水酢酸(6.29g、61.66mmol、5.77mL、8eq)を加え、10~20℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、氷浴で、反応液に水(5mL)を加えて反応をクエンチした。混合物を減圧下で濃縮し、残留物に1Mの塩酸水溶液(5mL)を加えて残留のピリジンを中和し、さらに酢酸エチル(30mL×2)を加えて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物B-1-5を得た。1HNMR(CDCl3)δ 7.33(s,1H),7.30-7.20(m,1H),7.20-7.15(m,1H),6.05-5.90(m,1H),5.40-5.05(m,5H),4.65-4.55(m,1H),4.52(s,2H),4.13(q,J=7.2Hz,1H),4.05-4.00(m,2H),2.66(q,J=7.6Hz,2H),2.15-1.95(m,9H),1.83(d,J=12.4Hz,3H),1.19(t,J=7.2Hz,3H)。
【0146】
ステップ4:化合物B-1-6の合成
B-1-5(1.4g、2.84mmol、1eq)、チオウレア(757.32mg、9.95mmol、3.5eq)をジオキサン(14mL)に溶解し、25℃でトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(2.53g、11.37mmol、2.05mL、4eq)をゆっくりと加え、60℃まで上昇さでて1.5時間攪拌した。0℃まで冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(2.94g、22.74mmol、3.96mL、8eq)、ヨードメタン(2.02g、14.21mmol、884.80μL,5eq)を加え、反応を25℃まで昇温させて17時間攪拌した。反応終了後、水(10mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(15mL×2)を加えて抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した後に粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物B-1-6を得た。MS:503.1[M+23]+
【0147】
ステップ5:化合物B-1-7の合成
フラスコに順に化合物B-1-6(9.48g、19.73mmol、1eq)、バルビツール酸(5.05g、39.45mmol、2eq)、エタノール(95mL)およびテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.28g、1.97mmol、0.1eq)を加えた。窒素の保護下で、反応を65℃まで加熱して16時間攪拌した。反応終了後、水(100mL)を加えて反応をクエンチし、混合物を減圧下で濃縮し、残留物を酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した後に粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離精製して化合物B-1-7を得た。MS:463.2[M+23]+
【0148】
ステップ6:化合物B-1の合成
B-1-7(14.33g、32.53mmol、1eq)を無水テトラヒドロフラン(145mL)に溶解した。窒素の保護下で、0℃条件でトリ臭化リン(4.40g、16.27mmol、1.54mL、0.5eq)ゆっくりと滴下した。反応系を20℃で16時間攪拌した。反応終了後、0℃で、2Mの炭酸カリウム水溶液(75mL)を滴下して反応をクエンチし、10分間攪拌した後に静置分層した。有機相を回収し、水相を酢酸エチル(200mL)で抽出した。有機相を合わせた後、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物にメチルtert-ブチルエーテル(40mL)およびn-ヘキサン(60mL)を加え、25℃で16時間攪拌した後にろ過し、フィルターケーキを混合溶剤(メチルtert-ブチルエーテル:n-ヘキサン=2:3、50mL)で洗浄した後、乾燥させた後に化合物B-1を得た。(15g、27.10mmol、1eq)。1H NMR(CDCl3-d)δ 7.32-7.28(m,1H),7.28-7.23(m,1H),7.23-7.18(m,1H),5.41-5.29(m,1H),5.22(t,J=10.0Hz,1H),5.11(t,J=10.0Hz,1H),4.59-4.47(m,3H),4.43(br d,J=9.6Hz,1H),2.75(q,J=7.2Hz,2H),2.20(s,3H),2.10(s,3H),2.02(s,3H),1.84(s,3H),1.27(t,J=7.6Hz,3H)。
【0149】
参考例6におけるステップ1~6の合成方法を参照し、表1における各セグメントB-2、B-3、B-4を合成した。
【0150】
【表1】
【0151】
【化32】
【0152】
合成経路:
【0153】
【化33】
【0154】
ステップ1:化合物WXD001-1の合成
A-1(3g、5.96mmol、1eq)、B-1(4.29g、7.15mmol、1.2eq)、炭酸ナトリウム(1.26g、11.92mmol、2eq)、およびテトラ(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(1.38g、1.19mmol、0.2eq)をトルエン(86mL)とエタノール(21.5mL)と水(21.5mL)との混合溶剤に懸濁した。窒素の保護下で、50℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧下で反応液を濃縮し、残留物をジクロロメタン(200mL)で希釈した後に水(100mL×3)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物にエタノール(80mL)を加えて30分間攪拌した後にろ過し、フィルターケーキをエタノール(10mL×3)で洗浄した後に乾燥させ、化合物WXD001-1を得た。
【0155】
ステップ2:化合物WXD001-2の合成
化合物WXD001-1(3.3g、3.68mmol、1eq)を酢酸エチル(66mL)に溶解し、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M,66.00mL、71.76eq)を加えた。15℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮して化合物WXD001-2を得た。
【0156】
ステップ3:化合物WXD001の合成
フラスコに化合物WXD001-2(760mg、0.91mmol、1eq)、メタノール(6mL)およびテトラヒドロフラン(3mL)を加え、次いで一水和水酸化リチウム(1.02g、24.39mmol、27eq)および水(6mL)を加え、25℃で16時間攪拌した。反応終了後、反応を水(10mL)で希釈し、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。有機相を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取高速液相クロマトグラフィーで精製して目的化合物WXD001を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.21(s,2H),7.17-7.11(m,1H),7.08-6.94(m,5H),6.77(d,J=8.8Hz,2H),4.87-4.79(m,1H),4.37(d,J=9.6Hz,1H),4.25-4.09(m,3H),3.95(s,2H),3.68-3.61(m,1H),3.55-3.46(m,2H),3.37(br t,J=10.0Hz,1H),3.10(br dd,J=10.0Hz,J=6.0Hz,1H),2.88(q,J=7.6Hz,1H),2.75(br d,J=7.6Hz,2H),2.69-2.51(m,4H),2.40(br d,J=11.6Hz,1H),2.27(br dd,J=14.0Hz,J=7.2Hz,1H),2.18(s,3H),2.07-1.95(m,1H),1.42(q,J=12.0Hz,1H),1.15(t,J=7.6Hz,3H)。
【0157】
実施例1におけるステップ1~3の合成方法を参照し、以下の表2における各実施例2~12を合成した。表2における構造は、その可能な異性体を同時に表す。
【0158】
【表2】
【0159】
各実施例のプロトン核磁気共鳴スベクトルおよび質量スベクトルのデータを表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
実験例1.インビトロでの細胞活性の試験:
実験手順および方法:
【0162】
生物学的活性実験1:SGLT1グルコース輸送の試験
1.実験目的:
Human-SGLT1高発現の細胞内に入った[14C]標識付きグルコースの量を測定することにより、SGLT1輸送体のグルコース輸送活性への化合物の影響を測定した。
【0163】
2.実験方法
2.1.細胞準備
実験に用いられたHuman-SGLT1を安定に発現する細胞は、WuXi AppTec(Shanghai)により構築した。SGLT1細胞をCytostar-T(PerkinElmer)96穴細胞培養プレートに入れて5%CO2、37℃の環境で一晩培養した。
【0164】
2.2.SGLT1のグルコース輸送の試験
1)実験用緩衝液:10mMの4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、1.2mMの塩化マグネシウム(MgCl2)、4.7mMの塩化カリウム(KCl)、2.2mMの塩化カルシウム(CaCl2)および120mMの塩化ナトリウム(NaCl)。
2)化合物を100%のジメチルスルホキシド(DMSO)で1mMを開始濃度とし、0.5倍段階希釈を行い、連続した8つの溶液を調製した。
3)実験用緩衝液で3μM[14C]標識付きメチルα-D-グルコピラノシド(Methyl a-D-glucopyranosid)を調製した。
4)49μLの実験用緩衝液、1μLの段階希釈された化合物および50μLの3μM[14C]同位体標識付き糖溶液を使用し、37℃で細胞に2時間作用させた。
5)同位体検出器(Micro beta Reader)でデータを読み取った。
6)データから、GraphPad Prism 5.0ソフトウェアの計算式:log(inhibitor)vs.response--Variable slopeにより試験化合物のIC50値が得られ、実験結果を表3に示す。
【0165】
生物学的活性実験2:SGLT2のグルコース輸送の試験
1.実験目的:
Human-SGLT2高発現細胞内に入った[14C]標識付きグルコースの量を測定することにより、SGLT2輸送体のグルコース輸送活性への化合物の影響を検出した。
【0166】
2.実験方法
2.1.細胞準備
実験に用いられたHuman-SGLT2を安定に発現する細胞は、WuXi AppTec(Shanghai)により構築した。SGLT2細胞を96穴細胞培養プレート(Greiner)に入れて5%CO2、37℃の環境で一晩培養した。
【0167】
2.2.SGLT2グルコース輸送試験
1) 実験用緩衝液:10mMの4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、1.2mMの塩化マグネシウム(MgCl2)、4.7mMの塩化カリウム(KCl)、2.2mMの塩化カルシウム(CaCl2)および120mMの塩化ナトリウム(NaCl)。
2)終止用緩衝液:10mMの4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、1.2mMの塩化マグネシウム(MgCl2)、4.7mMの塩化カリウム(KCl)、2.2mMの塩化カルシウム(CaCl2)、120mMの塩化ナトリウム(NaCl)および1μMのLX4211。
3)化合物を100%のジメチルスルホキシド(DMSO)で10μMを開始濃度とし、0.5倍段階希釈を行い、連続した8つの溶液を調製した。
4)実験用緩衝液で6μMの[14C]標記付きメチルα-D-グルコピラノシド(Methyl a-D-glucopyranosid)を調製した。
5)49μLの実験用緩衝液、1μLの段階希釈された化合物および50μLの6μM[14C]同位体標識付き糖溶液を使用し、37℃で細胞に2時間作用させた。
6)穴内の液体を吸い出し、終止用緩衝液で細胞を3回洗浄した。
7)50μLの10%の水酸化ナトリウム溶液で細胞を分解し、細胞分解液をシンチレーション用バイアルに吸い込み、さらに2mLの液体シンチレーション用カクテルを加えた。
8)同位体検出器(Tricarb)でデータを読み取った。
9)データから、GraphPad Prism 5.0ソフトウェアの計算式:log(inhibitor)vs.response--Variable slopeにより試験化合物のIC50値が得られ、実験結果を表3に示す。
【0168】
生物学的活性実験3:rhDPP4阻害剤クリーニングの実験
1.実験目的:
化合物の50%阻害濃度(IC50)値を測定することにより組み換えヒトジぺプチジルぺプチダーゼ4(rhDPP4)に対する化合物の阻害活性を評価した。本実験ではrhDPP4で基質に触媒作用を及ぼして蛍光素を生成した。この基質は、発光前駆体であるグリシン-プロリン-アミノ蛍光素(Gly-Pro-アミノ蛍光素)であり、蛍光素酵素と反応を起こして光信号を生成した。この光信号の強さは、酵素活性に比例する。
【0169】
2.実験方法
1)ナノリミットレベルの非接触型ソニックピペッティングシステム(ECHO)で段階希釈された化合物(4倍の倍加希釈、10個の検出濃度)250nLを384穴プレート(PerkingElmer-6007299)へ移し、最終反応系のジメチル基スルホキシド(DMSO)の濃度は0.5%となった。ブランク対照穴(DMSO、基質および10mMのトリメチロールアミノメタン-塩酸塩緩衝液(Tris-HCl)を含む。)および陽性対照穴(DMSO、基質およびrhDPP4を含む。)を設置した。
2)分割して凍結保存された蛍光素酵素含有緩衝液を取り出して室温へ戻し、次いで基質を加えて基質濃度が20μMである作動液になるように調製した。rhDPP4を10mMのTris-HCl(pH8.0)水溶液で0.2ng/mLの作動液となるように調製した。
3)そこに化合物を添加した384穴プレートにそれぞれ25μLの20μM基質を含む作動液および25μLの0.2ng/mL rhDPP4を含む作動液を加え、1000rpmで30s遠心分離し、アルミボイル封止膜でプレートを封止した後に室温において1時間インキュベートした。
4)多機能式マルチモードプレートリーダーEnVisionで光信号強度を検出した。オリジナルデータは、化合物がrhDPP4を阻害する活性の計算に用いられた。
【0170】
阻害活性%=100-(化合物穴の信号値-ブランク対照穴の信号値)/(陽性対照穴の信号値-ブランク対照穴の信号値)×100
阻害パーセンテージをGraphPad Prismソフトウェアに導入し、データ処理を行い、対応する投与量-効果曲線を得、試験化合物のIC50値を得た。実験結果を表4に示す。
【0171】
【表4】
【0172】
結論:本発明に係る化合物は、Human-SGLT1、Human-SGLT2およびrhDPP4に対する良好なインビトロでの阻害活性を示した。
【0173】
実験例2.インビボでのDMPK研究
実験目的:雄性C57マウスを試験動物とし、単回投与後に化合物の血中濃度を測定し、薬物動態挙動を評価した。
【0174】
実験操作:6匹の健康的な成体雄性C57マウスを使用し、そのうちの3匹を静注群、ほかの3匹を経口群とした。測定化合物を適量の静注群溶媒#と混合し、ボルテックス及び超音波処理に付し、1mg/mLの清澄溶液を調製し、精密ろ過膜でろ過しておいた。経口群では、測定化合物を溶媒と混合した後、ボルテックス及び超音波処理に付し、1mg/mLの清澄溶液を調製した。1mg/kgでマウスに静脈投与または10mg/kgで経口投与した後、一定の時点での全血を採取し、血漿を調製した。LC-MS/MS方法で薬剤濃度を分析し、Phoenix WinNonlin ソフトウェア(米国Pharsight社)を用いて薬物動態パラメーターを算出した。
【0175】
実験結果を表5に示す。
【0176】
【表5】
【0177】
結論:本発明に係る化合物は、マウスにおいて一定の経口暴露量および生体利用率を有することを示した。
【0178】
実験例3.ラット経口糖負荷量(OGTT)インビボでの薬効研究
実験の概要
1.動物
【0179】
【表5-1】
【0180】
2.実験群
【0181】
【表5-2】
【0182】
実験の流れ:
1.動物の適応と準備
実験動物は施設に到着した後、動物室で1週間環境に適応させる必要がある。
2.絶食と投与
動物を代謝ケージで18時間絶食させ、上表のように薬剤または溶剤(2mL/kg)を投与した後、直ちに50%のグルコース溶液(2g/kg、4mL/kg)を投与した。
3.尿糖と血糖試験
動物に糖を与えた後2時間、食事を回復させ、0min、15min、30min、45min、60min、120minの時点で採取したサンプルを血糖測定に使用した。また、0~24時間帯の尿を回収し、それぞれ尿糖(mg/200g)と尿体積の試験に用いた。
4.データ分析:
すべての値が平均値として表される。統計学的解析はGraphpad Prism6一元配置分散分析のTukey’s多重比較検定を用いて評価した。0.05未満のp値が統計学的に有意であると考えられる。
【0183】
実験結果を表6に示す。
【0184】
【表6】
【0185】
結論:本発明に係る化合物は、溶媒対照群に比べて、動物の2時間以内の血糖AUCレベルを有意に低下させることができ、動物の24時間尿糖排泄レベルが陽性化合物より低かった。