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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】沸騰式冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20230620BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023517404
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2022034557
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021152161
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】田辺 章裕
(72)【発明者】
【氏名】山中 清晶
(72)【発明者】
【氏名】安東 賢二
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268658(JP,A)
【文献】特開2019-046965(JP,A)
【文献】特開2001-068611(JP,A)
【文献】米国特許第04705102(US,A)
【文献】特開2004-241580(JP,A)
【文献】特開2002-164486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D15/00-15/06
H01L23/29
H01L23/34-23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を収容する収容空間と、前記収容空間に繋がる冷媒ガス出口と、前記収容空間に繋がる冷媒液入口とを含み、発熱体との熱交換により、前記冷媒を沸騰させる沸騰部と、
前記冷媒ガス出口および前記冷媒液入口に連通する冷媒通路と、前記冷媒通路と前記沸騰部との間に設けられ外部流体を流通させる外部通路とを有し、前記冷媒ガス出口から受け入れた冷媒ガスを前記外部流体との熱交換により凝縮させ、凝縮した冷媒液が前記冷媒液入口へ送られる凝縮部と、を備え、
前記沸騰部は、前記発熱体が取り付けられる第1壁部と、前記収容空間を介して前記第1壁部と対向し、前記外部通路と隣接する第2壁部と、前記収容空間を通って前記第1壁部と前記第2壁部とを接続する熱伝導部とを有し、
前記冷媒ガス出口が前記収容空間の上部に配置され、前記冷媒液入口が前記収容空間の下部に配置され、
前記収容空間には、前記発熱体からの入熱がない室温下の非稼働状態において、前記冷媒ガス出口と前記冷媒液入口との間の高さ位置に前記冷媒液の上端が位置するように前記冷媒が収容されており、
前記第1壁部の外面には、前記非稼働状態における前記冷媒液の前記上端よりも下方に位置し第1発熱体が取り付けられる第1取付部と、前記非稼働状態における前記冷媒液の前記上端よりも上方に位置し第2発熱体が取り付けられる第2取付部と、が設けられており、
前記熱伝導部は、前記冷媒液入口から前記冷媒ガス出口に向かう方向において、前記冷媒液の前記上端よりも下方の第1熱伝導部分と、前記冷媒液の前記上端よりも上方の第2熱伝導部分とを有し、
前記第1熱伝導部分は、前記第1壁部を介して前記第1取付部と対向しており、
前記第2熱伝導部分は、前記第1壁部を介して前記第2取付部と対向している、沸騰式冷却器。
【請求項2】
前記第2取付部において、前記冷媒ガスによって前記冷媒液の前記上端よりも上方へ持上げられた前記冷媒液によって、前記第2発熱体との熱交換が行われる、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項3】
前記熱伝導部は、前記収容空間内で前記冷媒液入口から前記冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、前記収容空間に複数設けられている、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項4】
前記熱伝導部は、前記収容空間内に設けられた仕切壁により構成されている、請求項3に記載の沸騰式冷却器。
【請求項5】
前記熱伝導部は、前記収容空間内に設けられたコルゲートフィンにより構成されている、請求項3に記載の沸騰式冷却器。
【請求項6】
前記熱伝導部は、前記収容空間内の前記冷媒ガス出口から前記冷媒液入口までに亘って設けられている、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項7】
前記冷媒通路は、前記冷媒通路と前記外部通路とを仕切る仕切板と、前記冷媒通路の外周部を区画する周壁とを含み、かつ、前記冷媒通路の内部に前記仕切板および前記周壁と一体化されたコルゲートフィンを含む、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項8】
前記凝縮部は、前記冷媒通路を構成する平板状の第1層と、前記冷媒通路と前記沸騰部とを連通させる接続通路と前記外部通路とを含む平板状の第2層と、が積層された構造を有し、
前記凝縮部が前記沸騰部の前記第2壁部に積層されるとともに前記沸騰部と一体化されている、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項9】
前記熱伝導部は、前記収容空間内で前記冷媒液入口から前記冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、前記収容空間を複数の通路部に区画するように構成され、
前記複数の通路部は、
前記発熱体の配置領域と前記第1壁部を介して重なる位置に配置され、前記冷媒ガス出口と連通する第1通路部と、
前記第1通路部と隣接し、前記冷媒液入口と連通する第2通路部と、を含み、
前記第1通路部の下部と前記第2通路部の下部とは互いに連通している、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項10】
前記冷媒液入口は、前記第1通路部には開口せずに前記第2通路部に開口する位置に設けられている、請求項9に記載の沸騰式冷却器。
【請求項11】
前記凝縮部は、複数の前記冷媒通路を含み、
前記熱伝導部は、前記収容空間内で前記冷媒液入口から前記冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、前記収容空間を複数の通路部に区画するように構成され、
前記沸騰部の前記収容空間の一部、または、前記沸騰部の前記第2壁部に設けられ、複数の前記冷媒通路の各々と前記複数の通路部の各々とを相互に連通させる分配部をさらに備える、請求項1に記載の沸騰式冷却器。
【請求項12】
冷媒を収容する収容空間と、前記収容空間に繋がる冷媒ガス出口と、前記収容空間に繋がる冷媒液入口とを含み、発熱体との熱交換により、前記冷媒を沸騰させる沸騰部と、
前記冷媒ガス出口および前記冷媒液入口に連通する冷媒通路と、前記冷媒通路と前記沸騰部との間に設けられ外部流体を流通させる外部通路とを有し、前記冷媒ガス出口から受け入れた冷媒ガスを前記外部流体との熱交換により凝縮させ、凝縮した冷媒液が前記冷媒液入口へ送られる凝縮部と、を備え、
前記沸騰部は、前記発熱体が取り付けられる第1壁部と、前記収容空間を介して前記第1壁部と対向し、前記外部通路と隣接する第2壁部と、前記収容空間を通って前記第1壁部と前記第2壁部とを接続する熱伝導部とを有し、
前記熱伝導部は、前記収容空間内の前記冷媒液入口の下端から前記冷媒ガス出口の上端で、前記収容空間内で前記冷媒液入口から前記冷媒ガス出口に向かう方向に板状に延びるように設けられている、沸騰式冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、沸騰式冷却器に関し、特に、冷媒を沸騰させる沸騰部と気化した冷媒を凝縮させる凝縮部との間で冷媒を循環させる沸騰式冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沸騰部と凝縮部との間で冷媒を循環させる沸騰式冷却器が知られている。このような沸騰式冷却器は、例えば、特開平8-204075号公報および特開2005-101190号公報に開示されている。
【0003】
上記特開平8-204075号公報では、素子(発熱体)が装着される中空面板からなる蒸発部(沸騰部)と、蒸発部の上端開口と連通する冷媒通路を有する凝縮部とを備える素子冷却器が開示されている。凝縮部は、冷媒通路内の冷媒ガスを冷却するための空気通路を有する。素子冷却器では、蒸発部に取り付けられた素子が冷媒の蒸発による気化潜熱により冷却され、気化した冷媒ガスが上部の凝縮部で空気により冷却され、凝縮潜熱を放出し液化されて蒸発部に戻るサイクルを繰り返す。
【0004】
上記特開2005-101190号公報では、上下方向に延びる第1冷媒通路が形成されたプレートチューブと、第1冷媒通路と平行に上下方向に延びるチューブと、プレートチューブの上端とチューブの上端とを連通させる第1ヘッダタンクと、プレートチューブの下端とチューブの下端とを連通させる第2ヘッダタンクと、を備えた沸騰式冷却装置が開示されている。第1冷媒通路に存在する液相冷媒が、プレートチューブに取り付けられた中央演算装置に加熱されて沸騰し、気相冷媒となって第1ヘッダタンク内に充満してチューブ内を上方側から下方側に流れる。気相冷媒は、チューブにて冷却風に冷却されて凝縮し、自重により第2ヘッダタンクへ流れる。冷媒は、第1冷媒通路、第1ヘッダタンク、チューブ、第2ヘッダタンク、第1冷媒通路の順に循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-204075号公報
【文献】特開2005-101190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、沸騰式冷却器では、沸騰部の内表面(特に発熱体の設置箇所の内表面)の冷媒液が乾くと気化潜熱による冷却が行えずに発熱体の冷却性能が急激に低下してしまうため、沸騰部の内表面が乾くのを抑制することが重要となる。
【0007】
上記特開平8-204075号公報では、冷媒ガスの凝縮部への上方移動と、凝縮した冷媒液の蒸発部への下方移動とが、同じ経路(蒸発部の上端開口)で行われるため、冷媒の気化量が増大すると、上昇する冷媒ガスによって冷媒液の下方移動が阻害されることにより、蒸発部が乾き冷却性能が低下しやすくなる。
【0008】
一方、上記特開2005-101190号公報では、冷媒ガスの移動経路と冷媒液の移動経路とが異なるため、冷媒ガスによって冷媒液の移動が阻害される現象は生じにくい。しかし、特に外部流体が低温の場合、凝縮部内の冷媒圧力が下がって入熱量に対する冷媒の気化量が増大しやすい。上記特開2005-101190号公報においても、冷媒の気化量が増大しやすくなる外部流体の低温時に、発熱体からの入熱量が多くなると、冷媒の気化量に比べて凝縮して戻る冷媒液量が不足することにより沸騰部の内表面が乾いて、冷却性能が急激に低下してしまうという課題がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、外部流体の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することが可能な沸騰式冷却器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明による沸騰式冷却器は、冷媒を収容する収容空間と、収容空間に繋がる冷媒ガス出口と、収容空間に繋がる冷媒液入口とを含み、発熱体との熱交換により、冷媒を沸騰させる沸騰部と、冷媒ガス出口および冷媒液入口に連通する冷媒通路と、冷媒通路と沸騰部との間に設けられ外部流体を流通させる外部通路とを有し、冷媒ガス出口から受け入れた冷媒ガスを外部流体との熱交換により凝縮させ、凝縮した冷媒液が冷媒液入口へ送られる凝縮部と、を備え、沸騰部は、発熱体が取り付けられる第1壁部と、収容空間を介して第1壁部と対向し、外部通路と隣接する第2壁部と、収容空間を通って第1壁部と第2壁部とを接続する熱伝導部とを有し、冷媒ガス出口が収容空間の上部に配置され、冷媒液入口が収容空間の下部に配置され、収容空間には、発熱体からの入熱がない室温下の非稼働状態において、冷媒ガス出口と冷媒液入口との間の高さ位置に冷媒液の上端が位置するように冷媒が収容されており、第1壁部の外面には、非稼働状態における冷媒液の上端よりも下方に位置し第1発熱体が取り付けられる第1取付部と、非稼働状態における冷媒液の上端よりも上方に位置し第2発熱体が取り付けられる第2取付部と、が設けられており、熱伝導部は、冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向において、冷媒液の上端よりも下方の第1熱伝導部分と、冷媒液の上端よりも上方の第2熱伝導部分とを有し、第1熱伝導部分は、第1壁部を介して第1取付部と対向しており、第2熱伝導部分は、第1壁部を介して第2取付部と対向している。
【0011】
第1の発明による沸騰式冷却器では、上記のように、沸騰部が冷媒を収容する収容空間と、収容空間に繋がる冷媒ガス出口と、収容空間に繋がる冷媒液入口とを含む。これにより、沸騰部から凝縮部へ向かう冷媒ガスの移動経路と、凝縮部から沸騰部へ戻る冷媒液の移動経路とを異ならせることができるので、冷媒ガスによって冷媒液の移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部は、発熱体が取り付けられる第1壁部と、収容空間を介して第1壁部と対向し、外部通路と隣接する第2壁部と、収容空間を通って第1壁部と第2壁部とを接続する熱伝導部とを有し、冷媒ガス出口が収容空間の上部に配置され、冷媒液入口が収容空間の下部に配置され、収容空間には、発熱体からの入熱がない室温下の非稼働状態において、冷媒ガス出口と冷媒液入口との間の高さ位置に冷媒液の上端が位置するように冷媒が収容されており、第1壁部の外面には、非稼働状態における冷媒液の上端よりも下方に位置し第1発熱体が取り付けられる第1取付部と、非稼働状態における冷媒液の上端よりも上方に位置し第2発熱体が取り付けられる第2取付部と、が設けられており、熱伝導部は、冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向において、冷媒液の上端よりも下方の第1熱伝導部分と、冷媒液の上端よりも上方の第2熱伝導部分とを有し、第1熱伝導部分は、第1壁部を介して第1取付部と対向しており、第2熱伝導部分は、第1壁部を介して第2取付部と対向している。これにより、発熱体から第1壁部に加えられる熱を、熱伝導部を通じた熱伝導により第2壁部まで移動させて、第2壁部と隣接する外部通路を流れる外部流体へ直接(冷媒を介さずに)放出することができる。このため、仮に入熱量が増大して沸騰部の内表面で冷媒が乾く状況が生じても、熱伝導部を介して発熱体からの熱を外部流体へ直接放出できるので、冷却性能の急激な低下を抑制できる。外部流体へ直接放出される熱量は、外部流体が低温であるほど増大するので、外部流体の低温時に特に効果的である。さらに、外部流体との熱交換によって第2壁部、熱伝導部および第1壁部が冷却されるので、収容空間内の冷媒ガスが第2壁部や熱伝導部と接触することで部分的に凝縮し、沸騰部の内表面で冷媒が乾くこと自体を抑制する効果が得られる。これらの結果、外部流体の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
上記第1の発明において、好ましくは、第2取付部において、冷媒ガスによって冷媒液の上端よりも上方へ持上げられた冷媒液によって、第2発熱体との熱交換が行われる。
【0012】
上記第1の発明において、好ましくは、熱伝導部は、収容空間内で冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、収容空間に複数設けられている。このように構成すれば、冷媒ガス出口に向かう冷媒ガスの移動が熱伝導部により妨げられることなく、熱伝導部による熱の移動量を効果的に増大させることができる。また、収容空間内における熱伝導部の表面積を大きくできるので、熱伝導部と冷媒ガスとの接触により冷媒ガスの一部を凝縮させる効果を向上させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、熱伝導部は、収容空間内に設けられた仕切壁により構成されている。このように構成すれば、単純な構造で熱伝導部を収容空間に設けることができ、さらに熱伝導部を、沸騰部の機械的強度を確保するための補強構造として機能させることもできる。
【0014】
上記熱伝導部が収容空間内で冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向に延びる構成において、好ましくは、熱伝導部は、収容空間内に設けられたコルゲートフィンにより構成されている。このように構成すれば、コルゲートフィンにより、熱伝導部による熱の移動量をより一層増大させることができる。
【0015】
上記第1の発明において、好ましくは、熱伝導部は、収容空間内の冷媒ガス出口から冷媒液入口までに亘って設けられている。このように構成すれば、熱伝導部が収容空間の広い範囲に亘って設けられるので、熱伝導部による熱の移動量を効果的に増大することができる。また、熱伝導部のうち冷媒液に漬かる部分は、冷媒液を冷却してサブクール状態にすることができ、冷媒ガスの発生量を低減する効果が得られる。熱伝導部のうち冷媒ガスと接触する部分は、上記の通り冷媒ガスの一部を凝縮させて冷媒が乾くことを抑制する効果が得られる。なお、サブクール状態とは、冷媒温度が沸騰部内の圧力に応じた飽和温度よりも低い温度にある状態であり、サブクール状態では冷媒液の気化が冷媒液全体ではなく加熱壁面付近で局所的に生じるようになる。
【0017】
上記第1の発明において、好ましくは、冷媒通路は、冷媒通路と外部通路とを仕切る仕切板と、冷媒通路の外周部を区画する周壁とを含み、かつ、冷媒通路の内部に仕切板および周壁と一体化されたコルゲートフィンを含む。このように構成すれば、冷媒通路内にコルゲートフィンを設けることによって、冷媒通路を通過する冷媒ガスと外部通路を通過する外部流体との熱交換効率を向上させることができる。
【0018】
上記第1の発明において、好ましくは、凝縮部は、冷媒通路を構成する平板状の第1層と、冷媒通路と沸騰部とを連通させる接続通路と外部通路とを含む平板状の第2層と、が積層された構造を有し、凝縮部が沸騰部の第2壁部に積層されるとともに沸騰部と一体化されている。このように構成すれば、沸騰部に第2層、第1層を順に積層して、積層体をろう付けなどの接合手法により一体化することで、沸騰式冷却器を構成できる。沸騰式冷却器が単純な積層構造によって構成されるので、沸騰式冷却器を容易に得ることができる。
【0019】
上記第1の発明において、好ましくは、熱伝導部は、収容空間内で冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、収容空間を複数の通路部に区画するように構成され、複数の通路部は、発熱体の配置領域と第1壁部を介して重なる位置に配置され、冷媒ガス出口と連通する第1通路部と、第1通路部と隣接し、冷媒液入口と連通する第2通路部と、を含み、第1通路部の下部と第2通路部の下部とは互いに連通している。このように構成すれば、熱伝導部で収容空間内を区画することにより、凝縮部へ向かう冷媒ガスを流通させる第1通路部と、凝縮部から沸騰部に戻る冷媒液を流通させる第2通路部とを、収容空間内に別個に設けることができる。ここで、冷媒ガスの移動経路の途中に冷媒液が戻される場合、冷媒ガスの流れと冷媒液の流れとが衝突することに起因して、冷媒の循環が妨げられることがある。上記構成によれば、冷媒ガスの移動経路(第1通路部)と冷媒液の移動経路(第2通路部)とを別々にすることができるので、冷媒の循環を円滑に行える。その結果、熱交換効率を向上させることができる。
【0020】
この場合、好ましくは、冷媒液入口は、第1通路部には開口せずに第2通路部に開口する位置に設けられている。このように構成すれば、第2通路部を凝縮部から戻る冷媒液専用の通路として構成することができる。沸騰部内の冷媒ガスの移動経路(第1通路部)と冷媒液の移動経路(第2通路部)とを分離できるので、冷媒ガスの流れと冷媒液の流れとが衝突することを防止できる。
【0021】
上記第1の発明において、好ましくは、凝縮部は、複数の冷媒通路を含み、熱伝導部は、収容空間内で冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向に延びるとともに、収容空間を複数の通路部に区画するように構成され、沸騰部の収容空間の一部、または、沸騰部の第2壁部に設けられ、複数の冷媒通路の各々と複数の通路部の各々とを相互に連通させる分配部をさらに備える。このように構成すれば、収容空間内が複数の通路部に区画される場合でも、分配部を設けることによって、複数の通路部の各々と、凝縮部内の複数の冷媒通路の各々との間で冷媒ガスの流通を行える。これにより、たとえば複数の通路部の間で冷媒ガスの流通量に差が生じた場合でも、分配部を介在させることにより、複数の冷媒通路の各々への冷媒ガスの流通量がばらつくことを抑制できる。その結果、沸騰式冷却器の動作中の熱交換性能のばらつきを効果的に抑制できる。
また、上記目的を達成するために、第2の発明による沸騰式冷却器は、冷媒を収容する収容空間と、収容空間に繋がる冷媒ガス出口と、収容空間に繋がる冷媒液入口とを含み、発熱体との熱交換により、冷媒を沸騰させる沸騰部と、冷媒ガス出口および冷媒液入口に連通する冷媒通路と、冷媒通路と沸騰部との間に設けられ外部流体を流通させる外部通路とを有し、冷媒ガス出口から受け入れた冷媒ガスを外部流体との熱交換により凝縮させ、凝縮した冷媒液が冷媒液入口へ送られる凝縮部と、を備え、沸騰部は、発熱体が取り付けられる第1壁部と、収容空間を介して第1壁部と対向し、外部通路と隣接する第2壁部と、収容空間を通って第1壁部と第2壁部とを接続する熱伝導部とを有し、熱伝導部は、収容空間内の冷媒液入口の下端から冷媒ガス出口の上端で、収容空間内で冷媒液入口から冷媒ガス出口に向かう方向に板状に延びるように設けられている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、外部流体の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図2図1の冷却器の模式的な分解斜視図である。
図3図1の冷却器のYZ方向に沿った模式的な縦断面図である。
図4図1の冷却器のXY方向に沿った模式的な水平断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】沸騰部の内部をY方向に見た平面図である。
図7】凝縮部のYZ方向に沿った模式的な拡大断面図である。
図8】第2実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図9図8の沸騰部の模式的な分解斜視図である。
図10図8の冷却器のXY方向に沿った模式的な水平断面図である。
図11図10の部分拡大図である。
図12】第3実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図13図12の冷却器のYZ方向に沿った模式的な縦断面図である。
図14】第1実施形態の冷却器の冷却性能測定結果を示したグラフである。
図15】第2実施形態の冷却器の冷却性能測定結果を示したグラフである。
図16】第3実施形態の冷却器の冷却性能測定結果を示したグラフである。
図17】第4実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図18図17の冷却器の模式的な分解斜視図である。
図19図17の沸騰部の内部をY方向に見た模式的な断面図である。
図20図17の沸騰部を外部からY方向に見た模式的な平面図である。
図21】第5実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図22図21の冷却器の模式的な分解斜視図である。
図23図21の冷却器のYZ方向に沿った模式的な縦断面図である。
図24図21の沸騰部の内部をY方向に見た模式的な断面図である。
図25図21の沸騰部を外部からY方向に見た模式的な平面図である。
図26】第6実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図27図26の冷却器の模式的な分解斜視図である。
図28図26の沸騰部の内部をY方向に見た模式的な断面図である。
図29図26の沸騰部を外部からY方向に見た模式的な平面図である。
図30】第7実施形態による冷却器の全体構成を示した模式的な斜視図である。
図31図30の冷却器の模式的な分解斜視図である。
図32図30の沸騰部の内部をY方向に見た模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、第1実施形態による沸騰式冷却器100(以下、冷却器100という)の構成について説明する。冷却器100は、冷媒の気化と凝縮との相変化(潜熱)を利用して、発熱体HSからの熱を吸収して、外部に放熱する沸騰冷却方式による冷却器である。冷却器100は、冷媒の吸熱により発熱体HSを冷却する。吸熱により気化した冷媒ガスが、外部流体により冷却されることにより、凝縮して液相に戻る。本実施形態の冷却器100は、発熱体HSからの熱を後述する外部通路22まで熱伝導で移動させることにより、外部通路22を流通する外部流体2との熱交換によって発熱体HSからの熱を外部に放熱する機能をさらに備えている。
【0026】
発熱体HSは、特に限定されない。発熱体HSは、たとえば電子回路を備えた機器である。具体的には、インバータ装置などの電力変換回路を構成するパワーモジュールである。パワーモジュールは、1つまたは複数の電力変換用スイッチング素子を備えた回路部品である。電力変換用スイッチング素子は、たとえばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子である。
【0027】
(冷却器の全体構成)
図1に示すように、冷却器100は、沸騰部10と、凝縮部20とを備えている。沸騰部10および凝縮部20の各々の内部には、冷媒1(図3参照)を収容するための空間(図3参照)が形成されている。冷却器100は、沸騰部10と、凝縮部20とによって、密閉された内部空間を有している。この密閉空間内に、冷媒1が収容されている。沸騰部10および凝縮部20は、たとえばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)、銅(銅合金を含む)などの熱伝導性の高い金属材料により形成されている。
【0028】
冷媒1は、気相と液相とに相変化するものであれば、特に限定されない。冷媒1には、たとえば、フルオロカーボン、ハイドロカーボン、水などが用いられる。冷却器100の内部空間は、単一の冷媒1で満たされており、気相の冷媒1によって飽和蒸気状態となっている。冷媒1の状態を区別する場合、便宜的に、気相の冷媒1を冷媒ガス1a(図3参照)といい、液相の冷媒1を冷媒液1b(図3参照)という。なお、外部流体2は、空気である。
【0029】
以下では、水平面内において、互いに直交する2つの方向を、それぞれX方向およびY方向とする。水平面(X-Y平面)と直交する上下方向を、Z方向とする。なお、Z方向は重力方向と平行で、下方向に重力が作用するものとする。
【0030】
沸騰部10、および凝縮部20は、上下方向(Z方向)に沿って延びる。沸騰部10の厚み方向(Y方向)における一方側(Y1方向側)が発熱体HSの取付面となっており、沸騰部10の厚み方向における他方側(Y2方向側)に凝縮部20が設けられている。
【0031】
(沸騰部)
図2および図3に示すように、沸騰部10は、冷媒1(図3参照)を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含む。冷媒ガス出口12が収容空間11の上部に配置され、冷媒液入口13が収容空間11の下部に配置されている。沸騰部10は、発熱体HSとの熱交換により冷媒1を沸騰させるように構成されている。
【0032】
図2に示すように、沸騰部10はZ方向に延びる長方形の平板状構造を有している。沸騰部10は、Y方向の一方側(Y1方向側)の第1壁部14(図3参照)と、Y方向の他方側(Y2方向側)の第2壁部15と、X方向の両端の一対の側壁部16と、Z方向の上端の上壁部17とZ方向の下端の下壁部18と、を有する板状の中空構造体である。収容空間11は、これらの第1壁部14、第2壁部15、一対の側壁部16、上壁部17および下壁部18によって囲まれた空間である。
【0033】
図3に示すように、第1壁部14は、Z方向に延びる平板形状を有する。第1壁部14は、Y1方向側表面である外表面14aと、Y2方向側表面である内表面14bとを有する。
【0034】
第2壁部15は、収容空間11を介して第1壁部14とY方向に対向している。第2壁部15は、Y2方向側表面である外表面15aと、Y1方向側表面である内表面15bとを有する。第2壁部15の外表面15aに、凝縮部20が設けられている。第2壁部15は、凝縮部20の外部通路22と隣接している。図3の例では、第2壁部15の外表面15aが外部通路22内に露出し(外部通路22を区画し)ている。また、第2壁部15の内表面15bが収容空間11内に露出し(収容空間11を区画し)ている。
【0035】
第2壁部15の上端部近傍には、冷媒ガス出口12が形成されている。冷媒ガス出口12は、第2壁部15を貫通する貫通孔(図2参照)である。冷媒ガス出口12は、凝縮部20の冷媒通路21の上端と連通している。
【0036】
第2壁部15の下端部近傍には、冷媒液入口13が形成されている。冷媒液入口13は、第2壁部15を貫通する貫通孔(図2参照)である。冷媒液入口13は、凝縮部20の冷媒通路21の下端と連通している。
【0037】
重力の作用により、収容空間11の下側に液相の冷媒液1bが貯留され、収容空間11の上側に気相の冷媒ガス1aが収容されている。冷媒1は、上壁部17に設けられた管部35から収容空間11内に導入され、管部35は冷媒1が収容空間11に注入された後で封止されている。収容空間11には、発熱体HSからの入熱がない室温下の非稼働状態において、冷媒ガス出口12と冷媒液入口13との間の高さ位置に冷媒液1bの液面1cが位置するように、冷媒1が収容されている。図3の例では、液面1cは、冷媒ガス出口12と冷媒液入口13との間の略中間位置に設定されている。
【0038】
第1壁部14の外表面14aが、発熱体HSの取付面であり、Z方向に沿って6つの取付部が設けられている。具体的には、第1壁部14の外面(外表面14a)には、非稼働状態における液面1cよりも下方に位置し発熱体HSが取り付けられる第1取付部31と、非稼働状態における液面1cよりも上方に位置し発熱体HSが取り付けられる第2取付部32と、が設けられている、第1実施形態では、3つの第1取付部31と3つの第2取付部32とが、第1壁部14に設けられている。
【0039】
ここで、図2および図4に示すように、沸騰部10は、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19を有する。図5に示すように、熱伝導部19は、Y1方向の一端部19aが第1壁部14の内表面14bと接触し、Y2方向の他端部19bが第2壁部15の内表面15bと接触している。熱伝導部19は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、銅(銅合金を含む)などの熱伝導性の高い金属材料により形成されている。本実施形態では、熱伝導部19は、沸騰部10の一部として沸騰部10を構成する第1壁部14と同じ材料により構成されている。このため、熱伝導部19は、発熱体HSから第1壁部14に加えられた熱を、熱伝導により第2壁部15まで移動させる。
【0040】
図6に示すように、熱伝導部19は、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向(Z方向)に延びるとともに、収容空間11に複数設けられている。第1実施形態では、熱伝導部19は、収容空間11内に設けられた仕切壁により構成されている。具体的には、収容空間11において、3つの熱伝導部19が、X方向に間隔を隔てて配置されていて、収容空間11が4つの領域11a~11dに仕切られている。3つの熱伝導部19はX方向に等間隔で配置されており、4つの領域11a~11dは略同一形状の空間である。
【0041】
熱伝導部19は、収容空間11内の冷媒ガス出口12から冷媒液入口13までに亘って設けられている。具体的には、Z方向において、熱伝導部19の上端部19cが冷媒ガス出口12の形成位置まで延び、熱伝導部19の下端部19dが冷媒液入口13の形成位置まで延びている。図6の例では、熱伝導部19の上端部19cが冷媒ガス出口12の形成位置よりも上方の上壁部17と接し、熱伝導部19の下端部19dが冷媒液入口13の形成位置よりも下方の下壁部18の近傍まで延びている。つまり、熱伝導部19は、Z方向において収容空間11の略全長に亘って形成されている。
【0042】
したがって、熱伝導部19は、冷媒1の液面1cよりも下側の領域と、液面1cよりも上側の領域との両方に跨がって設けられている。熱伝導部19は、Z方向において、6つの取付部(3つの第1取付部31および3つの第2取付部32)の各形成位置に跨がるように設けられている。熱伝導部19により、液面1cよりも下側の部分では、第2壁部15を介した外部流体2との熱交換によって冷媒液1bを冷却し、液面1cよりも上側の部分では、第2壁部15を介した外部流体2との熱交換によって冷媒ガス1aを冷却することができる。
【0043】
なお、沸騰部10の一対の側壁部16には、発熱体HSを取り付けるための取付穴33が形成されている。取付穴33は、1つの発熱体HSに対して四隅に相当する各位置に設けられている。取付穴33は、たとえばねじ孔であり、ボルトなどの締結部材が取り付けられる。
【0044】
第1実施形態では、沸騰部10のうち、第1壁部14、一対の側壁部16および3つの仕切壁(熱伝導部19)が、押出成形または切削加工により単一部材として一体形成されている。図2に示したように、この単一部材に、第2壁部15と、上壁部17および下壁部18とがそれぞれ接合されている。
【0045】
(凝縮部)
図3に示すように、凝縮部20は、冷媒1を流通させる冷媒通路21と、外部流体2を流通させる外部通路22とを有する。冷媒通路21は、沸騰部10の冷媒ガス出口12および冷媒液入口13に連通している。凝縮部20は、冷媒ガス出口12から受け入れた冷媒ガス1aを外部流体2との熱交換により凝縮させるように構成されている。冷媒通路21において、凝縮した冷媒液1bが冷媒液入口13へ送られる。
【0046】
凝縮部20は、複数の冷媒通路21を有している。そして、凝縮部20は、沸騰部10の冷媒ガス出口12と各冷媒通路21とを接続する冷媒ガス分配路23と、各冷媒通路21と沸騰部10の冷媒液入口13とを接続する冷媒液集合路24とを含む。
【0047】
また、凝縮部20は、冷媒通路21を構成する平板状の第1層40と、冷媒通路21と沸騰部10とを連通させる接続通路51と外部通路22とを含む平板状の第2層50と、が積層された構造を有している。
【0048】
図3の例では、凝縮部20は、第1層40を6つ、第2層50を7つ、備えている。これらの第1層40および第2層50は、沸騰部10側(Y1方向側)から、第2層50、第1層40、第2層50、第1層40、・・・、第1層40、第2層50、の順で交互に積層されている。
【0049】
〈第1層〉
図7に示すように、第1層40は、冷媒通路21と、冷媒通路21と連通する冷媒ガス入口部41と、冷媒通路21と連通する冷媒液出口部42と、を含む。第1層40(冷媒通路21)は、冷媒通路21と外部通路22とを仕切る仕切板43と、冷媒通路21の外周部を区画する周壁44(図2参照)とにより区画されている。図2に示すように、仕切板43の上端近傍には、冷媒ガス入口部41と接続通路51とを連通させる貫通孔43aが形成されている。仕切板43の下端近傍には、冷媒液出口部42と接続通路52とを連通させる貫通孔43bが形成されている。
【0050】
仕切板43は、Z方向に延びる長方形状の平板であり、第1層40と、第1層40に隣接する第2層50との間を仕切る。仕切板43は、冷媒通路21に対して、Y1方向側とY2方向側とに一対設けられる。周壁44は、一対の仕切板43の間で、仕切板43の周縁に沿って環状に設けられている。周壁44は、仕切板43の2つの辺に対応するL字状の部材を2つ組み合わせることにより、仕切板43の周縁に沿った矩形環状に形成されている。これにより、第1層40は、一対の仕切板43と環状の周壁44とによって区画された平板状の内部空間を有する。
【0051】
冷媒通路21は、一対の仕切板43と環状の周壁44とによって区画されたZ方向に沿って延びる平板状の通路である。冷媒通路21は、仕切板43を介して第2層50の外部通路22と隣接し、仕切板43を介して冷媒通路21の内部の冷媒ガス1aと外部通路22の外部流体2との熱交換を行うように構成されている。冷媒通路21は、Z方向の上端部が冷媒ガス入口部41(図7参照)に開口し、Z方向の下端部が冷媒液出口部42(図7参照)に開口している。
【0052】
冷媒通路21は、冷媒通路21の内部に仕切板43および周壁44と一体化されたコルゲートフィン45(図2参照)を含む。コルゲートフィン45は、波状に成形された板部材である。コルゲートフィン45は、図4に示したように、X方向の両端がそれぞれ周壁44と接するとともに、Y方向の両端が一対の仕切板43とそれぞれ接している。そして、コルゲートフィン45と、周壁44と、一対の仕切板43とは、接触箇所で相互に接合されて一体化している。
【0053】
図7に示すように、冷媒ガス入口部41は、冷媒通路21の上端に配置されている。冷媒ガス入口部41は、仕切板43の貫通孔43aを介して、隣り合う第2層50の接続通路51と接続している。冷媒ガス入口部41は、冷媒ガス分配路23の一部を構成している。
【0054】
冷媒液出口部42は、冷媒通路21の下端に配置されている。冷媒液出口部42は、仕切板43の貫通孔43bを介して、隣り合う第2層50の接続通路52と接続している。冷媒液出口部42は、冷媒液集合路24の一部を構成している。
【0055】
〈第2層〉
図7に示すように、第2層50は、外部通路22と、冷媒ガス分配路23を構成する上側の接続通路51と、冷媒液集合路24を構成する下側の接続通路52と、を含む。
【0056】
外部通路22は、凝縮部20の外部に開放された通路である。外部通路22は、Y方向の両面が第2層50と第1層40との間を仕切る仕切板43によって区画されている。外部通路22は、Z方向の上面が接続通路51を構成する環状壁53(図2参照)により区画され、Z方向の下面が接続通路52を構成する環状壁54(図2参照)により区画されている。外部通路22は、X方向の両端がそれぞれ凝縮部20の外部に開口(図1参照)していて、外部通路22は凝縮部20をX方向に貫通している。
【0057】
外部通路22の内部には、コルゲートフィン55が設けられている。コルゲートフィン55は、Z方向に沿って波状に形成され、X方向に沿って延びている。コルゲートフィン55は、Y方向の両端がそれぞれ一対の仕切板43と接しており、Z方向の上端が環状壁53の外周面と接し、Z方向の下端が環状壁54の外周面と接している。そして、コルゲートフィン55と、一対の仕切板43と、環状壁53および54とが、接触箇所で相互に接合されて一体化している。
【0058】
接続通路51は、上側の環状壁53の内部空間である。環状壁53は、仕切板43に形成された貫通孔43a(冷媒ガス入口部41)を取り囲むように設けられている。この環状壁53のY方向の両端が、それぞれ仕切板43の表面と接合されることにより、環状壁53の内部空間である接続通路51と、冷媒通路21の冷媒ガス入口部41とが連通している。同様に、接続通路52は、下側の環状壁54の内部空間である。環状壁54は、仕切板43に形成された貫通孔43b(冷媒液出口部42)を取り囲むように設けられている。この環状壁54のY方向の両端が、それぞれ仕切板43の表面と接合されることにより、環状壁54の内部空間である接続通路52と、冷媒通路21の冷媒液出口部42とが連通している。
【0059】
このような構成により、図3に示したように、沸騰部10の冷媒ガス出口12に対して、7つ(7層)の接続通路51と、6つ(6層)の冷媒ガス出口12とが、交互に接続しあって、Y方向に延びる1つの冷媒ガス分配路23を構成している。沸騰部10の冷媒ガス出口12から流出した冷媒ガス1aは、冷媒ガス分配路23を介して、6つの第1層40のそれぞれの冷媒通路21に流入する。
【0060】
また、沸騰部10の冷媒液入口13に対して、7つ(7層)の接続通路52と、6つ(6層)の冷媒液出口部42とが、交互に接続しあって、Y方向に延びる1つの冷媒液集合路24を構成している。6つの第1層40のそれぞれの冷媒通路21で凝縮した冷媒液1bは、重力の作用によりそれぞれの冷媒液出口部42まで下方移動し、冷媒液集合路24を介して、沸騰部10の冷媒液入口13に流入する。
【0061】
なお、図7に示したように、凝縮部20のうち、沸騰部10側(Y1方向側)の端部には、第2層50が配置されている。最もY1方向側の第2層50は、第2壁部15に接している。最もY1方向側の第2層50の外部通路22は、第2壁部15を介して、沸騰部10の収容空間11と隣接し、接続通路51は冷媒ガス出口12と接続し、接続通路52は冷媒液入口13と接続している。
【0062】
以上のように、本実施形態の冷却器100は、平板状の沸騰部10と、凝縮部20の平板状の第1層40と、平板状の第2層50と、がY方向に積層された構造を有している。そして、沸騰部10と凝縮部20とが積層された積層体が真空ろう付けにより一体化されることによって、冷却器100が構成されている。真空ろう付けにより、第1層40の内部では、仕切板43および周壁44とコルゲートフィン45とが相互に一体化される。第2層50では環状壁53、環状壁54およびコルゲートフィン55と仕切板43(または第2壁部15)とが相互に一体化される。
【0063】
(冷却器の動作)
次に、冷却器100の動作を説明する。パワーモジュールである発熱体HSの動作に伴い、発熱体HSが発熱する。発熱体HSの冷却時には、冷却器100の外部に設置される送風機(図示せず)によって外部通路22に外部流体2としての空気が送り込まれる。
【0064】
図3において、発熱体HSで発生した熱は、各取付部において第1壁部14に伝わる。液面1cよりも下方の第1取付部31から伝わる熱は、第1壁部14の内表面14bと接する冷媒液1bにより吸収され、内表面14b付近の冷媒液1bが沸騰して冷媒ガス1aとなる。冷媒ガス1aは、上方の冷媒ガス出口12へ向けて移動する。また、冷媒ガス1aの上方移動に伴って冷媒液1bの一部が冷媒ガス1aに持ち上げられる結果、液面1cよりも上方の領域では、第1壁部14の内表面14b、熱伝導部19の表面および第2壁部15の内表面15bに冷媒液1bが付着する。
【0065】
冷媒1による吸熱と並行して、図5に示したように、第1壁部14に伝わる熱が熱伝導部19を介して第2壁部15へ伝わり、第2壁部15に隣接する外部通路22を流れる外部流体2に吸収される。また、冷媒ガス1aの一部は、冷媒ガス出口12へ向けて移動する過程で熱伝導部19や第2壁部15と接触して熱伝導部19や第2壁部15に熱を放出して凝縮する。その結果、収容空間11内の液面1cよりも上方の領域でも、凝縮した冷媒液1bが、第1壁部14の内表面14b、熱伝導部19の表面および第2壁部15の内表面15bに付着する。このようにして、収容空間11のうち液面1cよりも上方の領域における各表面には、冷媒ガス1aに持ち上げられた冷媒液1bや、外部流体2への放熱によって凝縮された冷媒液1bが付着する。
【0066】
図3に戻り、液面1cよりも上方の第2取付部32から伝わる熱は、第1壁部14、熱伝導部19を介して第2壁部15へ伝わる。この過程で、第2取付部32から伝わる熱は、第1壁部14、熱伝導部19および第2壁部15の各表面に付着した冷媒液1bと、第2壁部15に隣接する外部通路22を流れる外部流体2とに吸収される。熱を吸収した冷媒液1bは沸騰して冷媒ガス1aとなる。
【0067】
冷媒ガス出口12へ到達した冷媒ガス1aは、冷媒ガス出口12を通過して凝縮部20の冷媒ガス分配路23へ流入する。そして、冷媒ガス1aが第1層40の冷媒ガス入口部41を介してそれぞれの冷媒通路21に流入する(分配される)。
【0068】
各冷媒通路21に流入した冷媒ガス1aは、冷媒通路21と隣接する外部通路22を流れる外部流体2との間で、仕切板43を介して熱交換し、冷却される。その結果、冷媒通路21内の冷媒ガス1aは、凝縮して冷媒液1bとなり、重力の作用によって下方の冷媒液出口部42へ向けて移動する。
【0069】
なお、冷媒1の液面1cは、沸騰部10の冷媒ガス出口12と冷媒液入口13との間の中間位置付近に設定されているため、冷媒通路21内においても、冷媒ガス入口部41と冷媒液出口部42との間の中間位置付近に液面1cが位置する。凝縮した冷媒液1bは、冷媒通路21内の液面1cに到達すると、貯留されている冷媒液1bに合流する。冷媒通路21のうち、液面1cから冷媒液出口部42までの下部では、冷媒液1bが外部通路22を流れる外部流体2との熱交換により冷却されて、サブクール状態となる。
【0070】
沸騰部10での冷媒液1bの気化に伴い、収容空間11内の冷媒液1bの液面1cは低下しようとするが、凝縮部20の各冷媒通路21内では凝縮した冷媒液1bが追加されて液面1cが上昇しようとするため、両者の水位差を一致させるように、冷媒液1bが冷媒液集合路24を介して凝縮部20から沸騰部10の冷媒液入口13へ流入する。そのため、冷媒1は、相変化を伴いながら、沸騰部10(収容空間11)、冷媒ガス分配路23、各冷媒通路21、冷媒液集合路24、沸騰部10(収容空間11)の順で循環する。
【0071】
以上の動作の結果、発熱体HSは、収容空間11内での冷媒液1bの気化潜熱により冷却されるとともに、第1壁部14、熱伝導部19および第2壁部15を経由した熱伝導による外部流体2との直接的な(冷媒1を介さない)熱交換により冷却される。
【0072】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、沸騰部10が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、沸騰部10から凝縮部20へ向かう冷媒ガス1aの移動経路と、凝縮部20から沸騰部10へ戻る冷媒液1bの移動経路とを異ならせることができる。そのため、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部10は、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路22と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、発熱体HSから第1壁部14に加えられる熱を、熱伝導部19を通じた熱伝導により第2壁部15まで移動させて、第2壁部15と隣接する外部通路22を流れる外部流体2へ直接(冷媒1を介さずに)放出することができる。このため、仮に入熱量が増大して沸騰部10の内表面で冷媒1が乾く状況が生じても、熱伝導部19を介して発熱体HSからの熱を外部流体2へ直接放出できるので、冷却性能の急激な低下を抑制できる。外部流体2へ直接放出される熱量は、外部流体2が低温であるほど増大するので、外部流体2の低温時に特に効果的である。さらに、外部流体2との熱交換によって第2壁部15、熱伝導部19および第1壁部14が冷却されるので、収容空間11内の冷媒ガス1aが第2壁部15や熱伝導部19と接触することで部分的に凝縮し、沸騰部10の内表面で冷媒1が乾くこと自体を抑制する効果が得られる。これらの結果、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、上記のように、熱伝導部19が、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向に延びるとともに、収容空間11に複数設けられているので、冷媒ガス出口12に向かう冷媒ガス1aの移動が熱伝導部19により妨げられることなく、熱伝導部19による熱の移動量を効果的に増大させることができる。また、収容空間11内における熱伝導部19の表面積を大きくできるので、熱伝導部19と冷媒ガス1aとの接触により冷媒ガス1aの一部を凝縮させる効果を向上させることができる。
【0075】
また、第1実施形態では、上記のように、熱伝導部19が、収容空間11内に設けられた仕切壁により構成されているので、単純な構造で熱伝導部19を収容空間11に設けることができ、さらに熱伝導部19を、沸騰部10の機械的強度を確保するための補強構造として機能させることもできる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、熱伝導部19は、収容空間11内の冷媒ガス出口12から冷媒液入口13までに亘って設けられているので、熱伝導部19を収容空間11の広い範囲に亘って設けることができ、その結果、熱伝導部19による熱の移動量を効果的に増大することができる。また、熱伝導部19のうち冷媒液1bに漬かる部分は、冷媒液1bを冷却してサブクール状態にすることができ、冷媒ガス1aの発生量を低減する効果が得られる。熱伝導部19のうち冷媒ガス1aと接触する部分は、上記の通り冷媒ガス1aの一部を凝縮させて冷媒1が乾くことを抑制する効果が得られる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、第1壁部14の外面には、非稼働状態における液面1cよりも下方に位置し発熱体HSが取り付けられる第1取付部31と、非稼働状態における液面1cよりも上方に位置し発熱体HSが取り付けられる第2取付部32と、が設けられているので、冷媒液1bに漬かった位置の外面に配置される第1取付部31だけでなく、冷媒液1bから離れた位置の外面に配置される第2取付部32でも、発熱体HSを冷却することができる。通常、液面1cよりも上方位置では、第1壁部14の内表面14bが乾いた状態となるため冷却性能が低下するが、第1実施形態では、上記した熱伝導部19の作用が得られるとともに、沸騰した冷媒ガス1aの上昇に伴って冷媒液1bの一部が液面1cから上方へ持ち上げられることで液面1cよりも上方位置における収容空間11の内表面に付着する作用が得られる。これらの結果、液面1cよりも上方の第2取付部32でも十分な冷却性能を得ることができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、冷媒通路21が、冷媒通路21と外部通路22とを仕切る仕切板43と、冷媒通路21の外周部を区画する周壁44とを含み、かつ、冷媒通路21の内部に仕切板43および周壁44と一体化されたコルゲートフィン45を含むので、冷媒通路21を通過する冷媒ガス1aと外部通路22を通過する外部流体2との熱交換効率を向上させることができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、凝縮部20は、冷媒通路21を構成する平板状の第1層40と、冷媒通路21と沸騰部10とを連通させる接続通路51と外部通路22とを含む平板状の第2層50と、が積層された構造を有し、凝縮部20が沸騰部10の第2壁部15に積層されるとともに沸騰部10と一体化されているので、沸騰部10に第2層50、第1層40を順に積層して、積層体をろう付けなどの接合手法により一体化することで、沸騰式冷却器100を構成できる。沸騰式冷却器100が単純な積層構造によって構成されるので、沸騰式冷却器100を容易に得ることができる。
【0080】
[第2実施形態]
次に、図8図11を参照して、本発明の第2実施形態による沸騰式冷却器200(以下、冷却器200という)の構成について説明する。第2実施形態では、沸騰部10の熱伝導部19が収容空間11を仕切る仕切壁により構成された上記第1実施形態とは異なり、熱伝導部19がコルゲートフィン160(図9参照)により構成された例について説明する。
【0081】
なお、第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。特に、第2実施形態において、沸騰部110以外の構成は、上記第1実施形態と同様である。以下では、沸騰部110の構造のみについて説明する。
【0082】
図8に示すように、第2実施形態の冷却器200は、沸騰部110を備える。図9に示すように、沸騰部110の熱伝導部19は、収容空間11内に設けられたコルゲートフィン160により構成されている。
【0083】
図10および図11に示すように、コルゲートフィン160は、第1壁部14に接する第1部分161と、第2壁部15に接する第2部分162と、Y方向に延びて第1部分161および第2部分162を接続する第3部分163と、を含む。第1部分161および第2部分162の各々は、波状のコルゲートフィン160の屈曲部分であり、X方向に一定間隔で周期的に設けられている。第3部分163は屈曲部分同士を接続する平板状部分である。
【0084】
このように、コルゲートフィン160からなる熱伝導部19は、第1部分161において第1壁部14の内表面と接続し、第2部分162において第2壁部15の内表面と接続している。図11に示すように、第1壁部14に加えられる熱は、熱伝導により第1部分161、第3部分163、第2部分162を通って第2壁部15に伝わる。コルゲートフィン160は所定の間隔Dで複数(図10では21個)の第3部分163を有しており、1つ1つの第3部分163が第1壁部14と第2壁部15との間の熱伝導経路となる。このため、第2実施形態では、3つの熱伝導部19(仕切壁)を設けた上記第1実施形態と比較して、より多くの熱伝導経路(第3部分163)が、収容空間11のX方向の全幅に亘って分散して設けられている。
【0085】
また、第1壁部14との接触点および第2壁部15との接触点を除いたコルゲートフィン160の外表面全体が、収容空間11内で冷媒1との熱交換を行う伝熱面となる。そのため、第2実施形態では、3つの熱伝導部19(仕切壁)を設けた上記第1実施形態と比較して、収容空間11内の熱伝導部19の伝熱面積を大きくすることができ、冷媒液1bを冷却し、冷媒ガス1aを凝縮させる効果が向上する。
【0086】
図9に示すように、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様に、熱伝導部19(コルゲートフィン160)は、収容空間11内の冷媒ガス出口12から冷媒液入口13までに亘って設けられている。Z方向において、コルゲートフィン160の上端部160aは、冷媒ガス出口12の形成範囲と重複する位置に配置され、コルゲートフィン160の下端部160bは、冷媒液入口13の形成範囲と重複する位置に配置されている。熱伝導部19(コルゲートフィン160)は、冷媒ガス出口12から冷媒液入口13まで途切れることなく連続して設けられている。
【0087】
なお、第2実施形態の沸騰部110は、平板部材の切削加工で形成されている。すなわち、平板部材の第2壁部15側に形成された凹部によって収容空間11が形成されている。このため、沸騰部110は、上壁部17、下壁部18、一対の側壁部16および第1壁部14が一体形成されている。平板部材の収容空間11内にコルゲートフィン160が収納された後、第2壁部15で収容空間11を塞いで、凝縮部20とともに真空ろう付けにより、平板部材、コルゲートフィン160および第2壁部15が一体化されることにより、沸騰部110が構成される。
【0088】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0089】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部10が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部10が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路22と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、発熱体HSから第1壁部14に加えられる熱を、熱伝導部19を通じた熱伝導により第2壁部15まで移動させて、第2壁部15と隣接する外部通路22を流れる外部流体2へ直接(冷媒1を介さずに)放出することができるとともに、収容空間11内の冷媒ガス1aの一部を凝縮させて、沸騰部10の内表面で冷媒1が乾くことを抑制する効果が得られる。これらの結果、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0090】
また、第2実施形態では、上記のように、熱伝導部19が、収容空間11内に設けられたコルゲートフィン160により構成されているので、コルゲートフィン160により、熱伝導部19による熱の移動量をより一層増大させることができる。
【0091】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
[第3実施形態]
次に、図12図13を参照して、本発明の第3実施形態による沸騰式冷却器300(以下、冷却器300という)の構成について説明する。第3実施形態では、Z方向において凝縮部20が沸騰部10の全体に亘って設けられる上記第1実施形態とは異なり、Z方向において凝縮部220が沸騰部10の上側の一部に設けられる例について説明する。
【0093】
なお、第3実施形態では、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。特に、第3実施形態において、凝縮部220の形成範囲以外の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0094】
図12に示すように、第3実施形態の冷却器300では、凝縮部220が、沸騰部10のうち上側の第1領域301に設けられており、沸騰部10のうち残りの(下側の)第2領域302には凝縮部220が設けられていない。
【0095】
図13に示すように、凝縮部220が設けられる第1領域301(図12参照)は、Z方向における長さL1の領域であり、長さL1は、沸騰部10の全長の略半分である。したがって、第3実施形態では、凝縮部220は、沸騰部10の略上半分に設けられている。第2領域302(図12参照)は、Z方向における長さL2の領域であり、長さL2は、沸騰部10の全長の略半分である。なお、凝縮部220の幅寸法(X方向寸法)と沸騰部10の幅寸法(X方向寸法)とは略等しく、凝縮部220は沸騰部10の全幅に亘って設けられている。
【0096】
また、凝縮部220の冷媒通路21は、発熱体HSからの入熱がない室温下の非稼働状態における冷媒液1bの液面1cよりも上方に設けられている。つまり、冷媒通路21の下端部が液面1c以上の高さに配置されている。図13の例では、液面1cは、Z方向における冷媒液集合路24の中間位置に設定されている。第3実施形態では、冷媒液1bが凝縮部220の冷媒通路21内に留まることがないので、冷媒通路21に留まった冷媒液1bが冷媒通路21での伝熱を大きく阻害することなく通過し、沸騰部10の収容空間11内に貯留される。
【0097】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部10が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部10が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路22と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、発熱体HSから第1壁部14に加えられる熱を、熱伝導部19を通じた熱伝導により第2壁部15まで移動させて、第2壁部15と隣接する外部通路22を流れる外部流体2へ直接(冷媒1を介さずに)放出することができるとともに、収容空間11内の冷媒ガス1aの一部を凝縮させて、沸騰部10の内表面で冷媒1が乾くことを抑制する効果が得られる。これらの結果、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0099】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0100】
[実施例]
次に、第1~第3実施形態の冷却器の効果を確認するための実験結果について説明する。
【0101】
(実験内容)
実施例では、第1実施形態の冷却器100、第2実施形態の冷却器200、第3実施形態の冷却器300のそれぞれについて、試験用の発熱体HSを取り付けて加熱した状況での冷却性能の測定を行った。その際、凝縮部20の外部通路22に対して所定風量で送風した。発熱体HSの取付面(第1壁部14の外表面14a)の表面温度と、沸騰部10の収容空間11内の冷媒温度とを測定し、冷却性能の指標として、測定された表面温度と冷媒温度との温度差ΔTを求めた。温度差ΔTが小さいほど沸騰部10の冷却性能が高いことを示す。
【0102】
実施例では、各実施形態に示した6つの取付部を、Z方向の下方から上方に向けてP1~P6(図3図8図13参照)として区別する。P1~P3が液面1cよりも下側の第1取付部31であり、P4~P6が液面1cよりも上側の第2取付部32である(第3実施形態のみ、P4の取付部は液面1cを跨ぐ)。
【0103】
実施例では、下記の2種類の加熱条件を設定した。
(条件1)取付部P1~P6の6つの発熱体HSにより加熱する。
(条件2)上側の取付部P4~P6の3つの発熱体HSだけで加熱し、下側の取付部P1~P3は加熱しない。
そして、条件1について、冷媒1の液面1cから最も離れた最上部の取付部P6における温度差ΔTと、下側の3つの取付部P1~P3における温度差ΔTの最高値と、を取得した。条件2について、冷媒1の液面1cから最も離れた最上部の取付部P6における温度差ΔTを取得した。温度測定の際、各発熱体HSの発熱量(発熱密度[W/cm2])を段階的に変化させ、それぞれの発熱量における温度差ΔTを取得した。
【0104】
(実験結果)
図14図16は、それぞれ第1実施形態の冷却器100、第2実施形態の冷却器200、第3実施形態の冷却器300の冷却性能の測定結果を示すグラフである。
【0105】
図14図16の各グラフの横軸は、発熱体HSの発熱密度[W/cm2]を示す。各グラフの縦軸は、温度差ΔT[K]を示す。図14図16の各グラフでは、各発熱密度で測定された温度差ΔTのプロットからの近似曲線を図示している。条件1の取付部P6の測定結果(近似曲線)を実線で示し、条件2の取付部P6の測定結果(近似曲線)を破線で示し、条件1の取付部P1~P3における温度差ΔTの最高値の測定結果(近似曲線)を一点鎖線で示している。
【0106】
図14図16の各グラフから、冷却器100~冷却器300について同様の傾向が確認された。具体的には、上側の取付部P4~P6(第2取付部32)の3つの発熱体HSだけで加熱した「条件2」の場合、取付部P6における温度差ΔT(点線)が、比較的低い発熱量でも急上昇した。その一方で、熱伝導部19の効果により、温度暴走することなく、ある程度の高温に収まった。条件2の測定結果と比較して、取付部P1~P6の6つの発熱体HSで加熱した「条件1」では、同じ取付部P6における温度差ΔT(実線)が、顕著に低くなることが確認された。
【0107】
また、「条件1」の2つの測定結果について、液面1cより上側の取付部P6の測定結果(実線)と、液面1cより下側の取付部P1~P3の測定結果(一点鎖線)との相違は、点線で示した条件2の測定結果との相違と比較して十分に小さいことが確認された。
【0108】
これらの結果から、第1~第3実施形態の冷却器100~冷却器300では、冷媒1の液面1cよりも下側の第1取付部31と液面1cよりも上側の第2取付部32の両方に発熱体HSを取り付けて各発熱体HSを冷却する場合に、第1取付部31の発熱体HSだけでなく、液面1cよりも上側の第2取付部32に取り付けた発熱体HSについても第1取付部31に近い冷却性能を得られることが確認された。
【0109】
このことから、第1~第3実施形態の冷却器100~冷却器300では、液面1cよりも下側の第1取付部31に入熱があり、十分な気化量が確保される状況(条件1)では、液面1cから上昇する冷媒ガス1aの一部が、外部流体2との熱交換により冷却された第2壁部15や熱伝導部19に接触して凝縮することで、液面1cよりも上方位置における収容空間11の内表面に付着するとともに、沸騰した冷媒ガス1aの上昇に伴って冷媒液1bの一部が液面1cから上方へ持ち上げられることで液面1cよりも上方位置における収容空間11の内表面に付着する。これらにより、液面1cよりも上側位置でも収容空間11の内表面が乾くことが抑制され、それによって第2取付部32の冷却性能が維持されるという作用が示唆された。
【0110】
[第4実施形態]
次に、図17図20を参照して、本発明の第4実施形態による沸騰式冷却器400(以下、冷却器400という)の構成について説明する。第4実施形態では、上記第3実施形態の構成に加えて、沸騰部410の収容空間11内に、冷媒ガス出口12と連通する第1通路部411a(図19参照)と冷媒液入口13と連通する第2通路部411b(図19参照)とを設けた例について説明する。
【0111】
なお、第4実施形態では、上記第3実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。特に、第4実施形態において、沸騰部410以外の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0112】
図17および図18に示すように、第4実施形態の冷却器400は、沸騰部410と、凝縮部220とを備えている。第4実施形態の冷却器400では、図19に示すように、熱伝導部19は、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向(Z方向)に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部411に区画するように構成されている。熱伝導部19は、収容空間11内に設けられた仕切壁により構成されている。具体的には、収容空間11において、4つの熱伝導部19が、X方向に間隔を隔てて配置されていて、収容空間11が5つの通路部411に仕切られている。
【0113】
各熱伝導部19は、Z方向において、上端部19cが発熱体HSの配置領域440の上端部の近傍まで延び、下端部19dが配置領域440の下端部の近傍まで延びている。各熱伝導部19の上端部19cと上壁部17との間に隙間があり、5つの通路部411の上部が互いに連通している。また、各熱伝導部19の下端部19dと下壁部18との間は、5つの通路部411の下部を互いに連通させる接続路412となっている。なお、各熱伝導部19の上端部19cが上壁部17と接触し、5つの通路部411の上部同士が非連通となっていてもよい。
【0114】
複数の通路部411は、第1通路部411aと、第2通路部411bと、を含む。図19では、5つの通路部411が、2つの第1通路部411aと、3つの第2通路部411bとで構成されている。2つの第1通路部411aは、X方向に間隔を隔てて配置され、2つの第1通路部411aの間と、2つの第1通路部411aの両外側とに、それぞれ第2通路部411bが配置されている。つまり、第1通路部411aと第2通路部411bとが熱伝導部19を介して隣接するようにX方向に交互に並んでいる。第1通路部411aの下部と第2通路部411bの下部とは、上記のように互いに連通している。
【0115】
2つの第1通路部411aは、互いに同一形状に形成されている。第1通路部411aは、発熱体HSの配置領域440と第1壁部14を介して重なる位置に配置されている。図19の例では、第1通路部411aの両側の一対の熱伝導部19の各々に、発熱体HSを取り付けるための取付穴33が設けられている。発熱体HSの配置領域440(破線部)は、第1通路部411aと、第1通路部411aの両側の一対の熱伝導部19の各々とに跨がる領域である。第1通路部411aと、第1通路部411aの両側の一対の熱伝導部19との合計幅が、発熱体HSの配置領域440の幅と対応している。図19の例では、1つの第1通路部411aに対して、Z方向に3つの配置領域440が設けられている。このため、発熱体HSからの熱は、第1壁部14を介して、第1通路部411aとその両側の熱伝導部19に対して直接入力される。後述するが、第1通路部411aは、上端部近傍において冷媒ガス出口12(図20参照)と連通している。なお、第1通路部411aにおける第1壁部14の内面には、Z方向に延びる線状の複数の凹凸部413が設けられている。凹凸部413により、第1通路部411aにおける伝熱面積が大きくなっている。
【0116】
3つの第2通路部411bは、発熱体HSの配置領域440と第1壁部14を介して重ならない位置(配置領域440からずれた位置)に配置されている。このため、発熱体HSから第2通路部411bに至る伝熱経路には、第1通路部411aおよび熱伝導部19が介在している。第1通路部411aとは異なり、第2通路部411bには、凹凸部413が設けられていない。第2通路部411bは、いずれかの第1通路部411aと隣接し、冷媒液入口13(図20参照)と連通している。
【0117】
図20に示すように、第1通路部411aは、幅W41を有する。第1通路部411aの幅W41は、第2通路部411bの幅W42a、W42bよりも大きい。幅W41は、幅W42a、W42bと等しくてもよいし、幅W42a、W42bよりも小さくてもよい。
【0118】
X方向中央の1つの第2通路部411bは、幅W42aを有する。X方向両側の2つの第2通路部411bは、幅W42bを有する。幅W42aは、幅W42bよりも大きいが、幅W42aと幅W42bとは同一でもよいし、幅W42aの方が小さくてもよい。
【0119】
図18に示したように、冷媒ガス出口12および冷媒液入口13は、第2壁部15に形成された開口である。冷媒ガス出口12は、第1通路部411aと接続するとともに、凝縮部220の冷媒ガス分配路23(接続通路51および貫通孔43a)と接続している。冷媒液入口13は、第2通路部411bと接続するとともに、凝縮部220の冷媒液集合路24(接続通路52および貫通孔43b)と接続している。
【0120】
図20に示すように、冷媒ガス出口12は、第2通路部411bには開口せずに第1通路部411aに開口する位置に設けられている。冷媒ガス出口12は、2つの第1通路部411aに対して1つずつ、合計2つ設けられている。各冷媒ガス出口12は、対応する第1通路部411aとY方向に重なる位置に設けられている。図20では、各冷媒ガス出口12の幅は、第1通路部411aの幅W41と略等しい。冷媒ガス出口12は、3つの第2通路部411bの形成箇所には設けられていない。なお、冷媒ガス出口12は、第1通路部411aに加えて第2通路部411bにも開口していてもよい。
【0121】
また、冷媒液入口13は、第1通路部411aには開口せずに第2通路部411bに開口する位置に設けられている。冷媒液入口13は、3つの第2通路部411bに対して1つずつ、合計3つ設けられている。各冷媒液入口13は、対応する第2通路部411bとY方向に重なる位置に設けられている。図20では、各冷媒液入口13の幅は、それぞれ対応する第2通路部411bの幅(W42aまたはW42b)と略等しい。冷媒液入口13は、2つの第1通路部411aの形成箇所には設けられていない。
【0122】
このような構成により、第4実施形態では、第1通路部411aは、沸騰部410から凝縮部220へ向かう冷媒ガス1a専用の通路として構成され、第2通路部411bは、凝縮部220から沸騰部410へ戻る冷媒液1b専用の通路として構成されている。
【0123】
配置領域440の直下に設けられた第1通路部411a内では、発熱体HSからの入熱により冷媒液1bが沸騰して冷媒ガス1aとなる。第1通路部411a内の冷媒ガス1aは、Z方向上方に移動して冷媒ガス出口12から凝縮部220へ流入し、凝縮部220において冷却されて凝縮する。発熱体HSからの熱の一部は、第2通路部411b側へも伝わるが、その大部分は、第1通路部411aと第2通路部411bとの間の熱伝導部19において第1壁部14から第2壁部15へ移動し、第2壁部15に隣接する外部通路22(図18参照)を流れる外部流体2(図17参照)に吸収される。なお、発熱体HSの熱のうち残りの部分は、第2通路部411b内の冷媒液1bに伝達され、第2通路部411b内の冷媒液1bを沸騰させる可能性がある。
【0124】
凝縮部220において凝縮した冷媒液1bは、重力の作用によって、各冷媒液入口13に流入する。そのため、冷媒液1bは、第1通路部411aに直接流入せずに、各冷媒液入口13から沸騰部410の第2通路部411bへ流れる。第2通路部411bに流入した冷媒液1bは、第2通路部411bの下部に貯留されている冷媒液1bと合流する。なお、図20の例では、冷媒1の液面1cは、冷媒液入口13の中間位置付近の高さに設定されているが、冷媒1の液面1cは冷媒液入口13よりも上側でも下側でもよい。第1通路部411aで気化して減少した冷媒液1bは、沸騰部410の下端部の接続路412を介して、第2通路部411bから補充される。このようにして、冷却器400内での冷媒1の循環が行われる。
【0125】
このように、第4実施形態では、沸騰部410から凝縮部220へ向かう冷媒ガス1aの移動経路と、凝縮部220から沸騰部410へ戻る冷媒液1bの移動経路とが、重複せずに接続されている。そのため、特に冷媒液入口13において、Z方向上方へ流動する冷媒ガス1aの流れとZ方向下方へ流動する冷媒液1bの流れとが衝突することがない。
【0126】
第4実施形態のその他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0127】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部410が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部410が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路22と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0128】
また、第4実施形態では、上記のように、熱伝導部19は、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かうZ方向に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部411に区画するように構成され、複数の通路部411は、発熱体HSの配置領域440と第1壁部14を介して重なる位置に配置され、冷媒ガス出口12と連通する第1通路部411aと、第1通路部411aと隣接し、冷媒液入口13と連通する第2通路部411bと、を含み、第1通路部411aの下部と第2通路部411bの下部とは互いに連通しているので、凝縮部220へ向かう冷媒ガス1aを流通させる第1通路部411aと、凝縮部220から沸騰部410に戻る冷媒液1bを流通させる第2通路部411bとを、収容空間11内に別個に設けることができる。ここで、冷媒ガス1aの移動経路の途中に冷媒液1bが戻される場合、冷媒ガス1aの流れと冷媒液1bの流れとが衝突することに起因して、冷媒1の循環が妨げられることがある。これに対して、上記構成によれば、冷媒ガス1aの移動経路(第1通路部411a)と冷媒液1bの移動経路(第2通路部411b)とを別々にすることができるので、冷媒1の循環を円滑に行える。その結果、熱交換効率を向上させることができる。
【0129】
また、第4実施形態では、上記のように、冷媒液入口13は、第1通路部411aには開口せずに第2通路部411bに開口する位置に設けられているので、第2通路部411bを凝縮部220から戻る冷媒液1b専用の通路として構成することができる。沸騰部410内の冷媒ガス1aの移動経路(第1通路部411a)と冷媒液1bの移動経路(第2通路部411b)とを分離できるので、冷媒ガス1aの流れと冷媒液1bの流れとが衝突することを防止できる。
【0130】
第4実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0131】
[第5実施形態]
次に、図21図25を参照して、本発明の第5実施形態による沸騰式冷却器500(以下、冷却器500という)の構成について説明する。第5実施形態では、上記第1~第4実施形態とは、凝縮部520における冷媒通路521および外部通路522の向きが異なる例について説明する。なお、第5実施形態では、上記した各実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0132】
図21に示すように、第5実施形態の冷却器500は、沸騰部510および凝縮部520を備える。冷却器500では、凝縮部520が、Z方向に沿って延びる外部通路522を有する。すなわち、上記第1~第4実施形態では、外部通路がXZ平面に沿って設けられ、凝縮部をX方向に貫通している。これに対して、第5実施形態では、各外部通路522が、YZ平面に沿って設けられ、凝縮部520をZ方向に貫通している。外部通路522は、外部流体2をZ方向に流通させる。図22に示すように、外部通路522のコルゲートフィン555のY方向の両端は、サイドバー556によって区画されている。
【0133】
これに伴って、凝縮部520の各冷媒通路521は、YZ平面に沿って設けられ、Y1方向側端面の上部から冷媒ガス1aを受け入れるとともに、冷媒ガス1aを凝縮させた冷媒液1bを、Y1方向側端面の下部から沸騰部510へ送り出す。各外部通路522(第2層50)と、各冷媒通路521(第1層40)とは、X方向に積層されている。上記第1~第4実施形態では、各冷媒通路は、凝縮部に設けられた冷媒ガス分配路23(図18参照)および冷媒液集合路24(図18参照)を介して沸騰部と連通していたが、第5実施形態では、これらの冷媒ガス分配路23および冷媒液集合路24が凝縮部520に設けられていない。
【0134】
図23に示すように、各冷媒通路521は、Y2側と上下両側(Z方向両側)とが周壁544に囲まれ、Y1側の端面が第2壁部15によって覆われた空間となっている。冷媒通路521の内部には、セレート(オフセット)型のコルゲートフィン545が設けられている。セレート型のコルゲートフィン545は、Y方向に沿ったフィン部546がZ方向に等ピッチで配列されるとともに、Z方向に沿った列毎に、フィン部546のZ方向位置が半ピッチずつずれた配置となっている。冷媒1(冷媒ガス1aおよび冷媒液1b)は、これらのフィン部546の隙間部分を通過できる。各冷媒通路521は、Y1側端部の上部で沸騰部510(第2壁部15)の冷媒ガス出口12と連通し、Y1側端部の下部で沸騰部510の冷媒液入口13と連通している。
【0135】
第5実施形態では、凝縮部520に冷媒ガス分配路23(図18参照)および冷媒液集合路24(図18参照)が設けられていないので、その分、冷媒通路521および外部通路522を大型化でき、凝縮部520の冷媒凝縮能力(放熱能力)を高くすることができる。
【0136】
図22に示すように、沸騰部510の第2壁部15には、複数の冷媒通路521とそれぞれ接続する冷媒ガス出口12が設けられている。図22の例では、凝縮部520に5つの冷媒通路521が設けられており、各冷媒通路521と連通するように、4つの冷媒ガス出口12がX方向に並んで設けられている。
【0137】
同様に、沸騰部510の第2壁部15には、複数の冷媒通路521とそれぞれ接続する冷媒液入口13が設けられている。図22の例では、各冷媒通路521と連通するように、4つの冷媒液入口13がX方向に並んで設けられている。なお、4つの冷媒ガス出口12、4つの冷媒液入口13をそれぞれ繋げて、各冷媒通路521に接続するようにX方向に延びる冷媒ガス出口12と冷媒液入口13とを1つずつ設けてもよい。
【0138】
図24に示すように、熱伝導部19は、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向(Z方向)に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部511に区画するように構成されている。熱伝導部19は、収容空間11内に設けられた仕切壁により構成されている。具体的には、収容空間11において、3つの熱伝導部19が、X方向に間隔を隔てて配置されていて、収容空間11が4つの通路部511に仕切られている。
【0139】
各熱伝導部19は、Z方向において、上端部19cが上壁部17と接し、下端部19dが下壁部18の近傍まで延びている。各熱伝導部19の下端部19dと下壁部18との間は、4つの通路部511の下部を互いに連通させる接続路512となっている。なお、各通路部511における第1壁部14の内面には、Z方向に延びる線状の複数の凹凸部513が設けられている。なお、図25に示すように、取付穴33に取り付けられる発熱体HSの配置領域540は、X方向に延びて各通路部511に跨がるように設けられている。
【0140】
第5実施形態の冷却器500は、図24に示すように、沸騰部510の収容空間11の一部に設けられ、複数の冷媒通路521の各々と複数の通路部511の各々とを相互に連通させる分配部560a、560bをさらに備える。具体的には、冷媒ガス出口12に接続する分配部560aと、冷媒液入口13に接続する分配部560bとが、収容空間11に設けられている。
【0141】
分配部560aは、冷媒ガス出口12(図22参照)とY方向に隣接する位置に設けられている。分配部560aは、仕切壁として形成された熱伝導部19の一部をX方向に貫通するように形成された空間である。すなわち、分配部560aは、熱伝導部19の一部に形成された切り欠き561を含む、3つの熱伝導部19にそれぞれ設けられた切り欠き561が、X方向に並んでいる。この結果、4つの通路部511に跨がるように収容空間11内をX方向に延びる連通空間である分配部560aが形成されている。4つの冷媒ガス出口12(図25参照)は、4つの通路部511に対応して設けられているが、4つの通路部511が分配部560で相互に連通している。そのため、凝縮部520の各冷媒通路521が、いずれかの冷媒ガス出口12と分配部560aとを介して、全て(4つ)の通路部511に連通した状態となっている。
【0142】
分配部560bは、冷媒液入口13(図22参照)とY方向に隣接する位置に設けられている。分配部560bは、分配部560aと同様の構造を有し、熱伝導部19の一部に形成された切り欠き561を含む。これにより、4つの通路部511に跨がるように収容空間11内をX方向に延びる分配部560bが形成されている。4つの冷媒液入口13(図25参照)は、4つの通路部511に対応して設けられているが、4つの通路部511が分配部560bで相互に連通している。そのため、凝縮部520の各冷媒通路521が、いずれかの冷媒液入口13および分配部560bを介して、全て(4つ)の通路部511に連通した状態となっている。なお、冷媒1の液面1cは、分配部560b(冷媒液入口13)の中間位置付近に設定されている。
【0143】
このような構成により、第5実施形態では、各冷媒通路521が、沸騰部510の冷媒ガス出口12および冷媒液入口13に直接接続されているとともに、沸騰部510の収容空間11内に、各冷媒通路521と各通路部511とを相互に連通させる分配部560a、560bが設けられている。
【0144】
各通路部511内では、発熱体HSからの入熱により冷媒液1bが沸騰して冷媒ガス1aとなる。各通路部511内の冷媒ガス1aは、Z方向上方に移動して分配部560aにおいて合流する。分配部560aで合流した冷媒ガス1aは、各冷媒ガス出口12(図25参照)を通って、凝縮部520のそれぞれの冷媒通路521に流入する。冷媒ガス1aが分配部560aで合流するため、個々の通路部511における冷媒ガス1aの流通量(発生量)がばらついた場合でも、各冷媒通路521への冷媒ガス1aの流入量を均一化できる。
【0145】
冷媒ガス1aは、各冷媒通路521で冷却されて凝縮する。凝縮した冷媒液1bは、重力の作用によって、いずれかの冷媒液入口13(図25参照)から分配部560bへ流れて合流する。冷媒液1bは、各通路部511を上方へ移動する冷媒ガス1aの流れの途中位置に流れ込むことになるが、分配部560bは、各通路部511が相互に連通する広い空間となっているため、冷媒液1bの流れが冷媒ガス1aの流れを妨げることが抑制される。
【0146】
なお、各通路部511で気化して減少した冷媒液1bは、分配部560bまたは下部の接続路512を介して他の通路部511から補充できるので、各通路部511で貯留される冷媒液1bの量は均一化される。このようにして、冷却器500内での冷媒1の循環が行われる。
【0147】
第5実施形態のその他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0148】
(第5実施形態の効果)
第5実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部510が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部510が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路522と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0149】
また、第5実施形態では、上記のように、凝縮部520は、複数の冷媒通路521を含み、熱伝導部19は、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かうZ方向に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部511に区画するように構成され、沸騰部510の収容空間11の一部に設けられ、複数の冷媒通路521の各々と複数の通路部511の各々とを相互に連通させる分配部560aをさらに備えるので、収容空間11内が複数の通路部511に区画される場合でも、分配部560aを設けることによって、複数の通路部511の各々と、凝縮部520内の複数の冷媒通路521の各々との間で冷媒ガス1aの流通を行える。この結果、たとえば複数の通路部511の間で冷媒ガス1aの流通量に差が生じた場合でも、分配部560を介在させることにより、複数の冷媒通路521の各々への冷媒ガス1aの流通量がばらつくことを抑制できる。その結果、沸騰式冷却器500の動作中の熱交換性能のばらつきを効果的に抑制できる。
【0150】
また、第5実施形態では、分配部560bを設けることによって、冷媒ガス1aの流れと冷媒液1bの流れとが衝突する箇所に、複数の通路部511を連通させた広い空間(分配部560b)を形成できる。このため、冷媒液1bが冷媒液入口13から各通路部511に流れ込んでも、十分な容積が確保されるため、冷媒液1bの流れが冷媒ガス1aの流れを妨げることが抑制できる。その結果、冷媒1の循環を円滑に行えるので、熱交換効率を向上させることができる。
【0151】
また、第5実施形態では、分配部560aおよび分配部560bが設けられることにより、凝縮部520に冷媒ガス分配路23(図18参照)および冷媒液集合路24(図18参照)が設けられていないので、その分、冷媒通路521および外部通路522を大型化でき、凝縮部520の冷媒凝縮能力(放熱能力)を高くすることができる。
【0152】
第5実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0153】
[第6実施形態]
次に、図26図29を参照して、本発明の第6実施形態による沸騰式冷却器600(以下、冷却器600という)の構成について説明する。第6実施形態では、上記第4実施形態に示した沸騰部410の構成と、上記第5実施形態に示した凝縮部520の構成とを、組み合わせた例について説明する。なお、第6実施形態では、上記した各実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0154】
図26に示すように、第6実施形態の冷却器600は、沸騰部610と、凝縮部620とを備える。
【0155】
凝縮部620は、上記第5実施形態と同様の構成を有する。各外部通路622が、凝縮部620をZ方向に貫通し、外部流体2をZ方向に流通させる。凝縮部620の各冷媒通路621は、YZ平面に沿って設けられ、Y1方向側端面の上部から冷媒ガス1aを受け入れるとともに、冷媒ガス1aを凝縮させた冷媒液1bを、Y1方向側端面の下部から沸騰部610へ送り出す。
【0156】
沸騰部610は、上記第4実施形態と同様の構成を有する。すなわち、図27および図28に示すように、熱伝導部19が、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部611に区画するように構成されている。具体的には、4つの熱伝導部19が、収容空間11を5つの通路部611に区画している。複数の通路部611は、第1通路部611aと、第2通路部611bと、を含む。図28の例では、5つの通路部611が、2つの第1通路部611aと、3つの第2通路部611bとで構成されている。
【0157】
第1通路部611aは、発熱体HSの配置領域640と第1壁部14を介して重なる位置に配置され、上端部近傍において冷媒ガス出口12(図27参照)と連通している。第2通路部611bは、発熱体HSの配置領域640と第1壁部14を介して重ならない位置(配置領域640からずれた位置)に配置され、冷媒液入口13(図27参照)と連通している。第1通路部611aの下部と第2通路部611bの下部とは、接続路612によって、互いに連通している。
【0158】
図27に示すように、沸騰部610の第2壁部15には、2つの冷媒ガス出口12および3つの冷媒液入口13が設けられている。2つの冷媒ガス出口12は、2つの第1通路部611aと一対一で設けられ、対応する第1通路部611aに開口する一方、2つの冷媒ガス出口12は、いずれの第2通路部611bにも開口していない。2つの冷媒ガス出口12は、Z方向の同じ位置で、X方向に並んで配置されている。3つの冷媒液入口13は、3つの第2通路部611bと一対一で設けられ、対応する第2通路部611bに開口する一方、3つの冷媒ガス出口12は、いずれの第1通路部611aにも開口していない。3つの冷媒液入口13は、Z方向の同じ位置で、X方向に並んで配置されている。
【0159】
ここで、第6実施形態の冷却器600は、沸騰部610の第2壁部15に設けられ、複数の冷媒通路621の各々と複数の通路部611の各々とを相互に連通させる分配部660a、660bをさらに備える。すなわち、上記第5実施形態では、沸騰部510の収容空間11に分配部560a、560bを設けた例を示したが、この第6実施形態では、分配部660a、660bが、第2壁部15に設けられている。
【0160】
具体的には、第2壁部15は、各冷媒ガス出口12および各冷媒液入口13が形成された第1板616と、分配部660aおよび660bが形成された第2板617との積層体からなる。
【0161】
分配部660aは、2つの冷媒ガス出口12を包含するようにX方向に延びる長方形状に形成され、第2板617を厚み方向に貫通している。このため、図29に示すように、1つの分配部660aが、2つの冷媒ガス出口12の両方と連通している。分配部660aのY2側の開口が、凝縮部620においてX方向に並んだ各冷媒通路621の上部とそれぞれ連通している。
【0162】
そのため、図27において、凝縮部620の各冷媒通路621が、分配部660aおよび各冷媒ガス出口12を介して、2つの第1通路部611aにそれぞれ連通した状態となっている。
【0163】
分配部660bは、3つの冷媒液入口13を包含するようにX方向に延びる長方形状に形成され、第2板617を厚み方向に貫通している。このため、図29に示すように、1つの分配部660bが、3つの冷媒液入口13の各々と連通している。分配部660bのY2側の開口が、凝縮部620においてX方向に並んだ各冷媒通路621の下部とそれぞれ連通している。
【0164】
そのため、図27において、凝縮部620の各冷媒通路621が、分配部660bおよび冷媒液入口13を介して、3つの第2通路部611bにそれぞれ連通した状態となっている。
【0165】
ここで、分配部660a、660bが設けられた第2板617の厚みは、第1板616の厚みよりも大きい。そのため、分配部660a、660bは、第2板617の厚みに相当する容積を有する空間となっている。分配部660aの容積を大きくすることによって、2つの第1通路部611aの各々における冷媒ガス1aの流通量(生成量)がばらついた場合でも、2つの第1通路部611aからの冷媒ガス1aを分配部660aで合流し、容積分だけ一時貯留することによって、各冷媒通路621へ流通させる冷媒ガス1aの流通量のばらつきを抑制できる。
【0166】
図29において、第1通路部611a内では、発熱体HSからの入熱により冷媒液1bが沸騰して冷媒ガス1aとなる。第1通路部611a内の冷媒ガス1aは、Z方向上方に移動して冷媒ガス出口12から分配部660aへ流入する。冷媒ガス1aは、分配部660aで合流した後、凝縮部620の各冷媒通路621へ流入し、各冷媒通路621において冷却されて凝縮する。
【0167】
各冷媒通路621において凝縮した冷媒液1bは、重力の作用によって、各冷媒通路621から分配部660bへ流入する。冷媒液1bは、分配部660bで合流した後、各冷媒液入口13から沸騰部610の第2通路部611bへ流れる。その結果、第2通路部611bに流入した冷媒液1bは、第2通路部611bの下部に貯留されている冷媒液1bと合流する。なお、冷媒1の液面1cは、冷媒液入口13の中間位置付近の高さに設定されている。第1通路部611aで気化して減少した冷媒液1bは、下部の接続路612(図28参照)を介して、第2通路部611bから補充される。このようにして、冷却器600内での冷媒1の循環が行われる。
【0168】
第6実施形態のその他の構成は、上記第5実施形態と同様である。
【0169】
(第6実施形態の効果)
第6実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部610が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部610が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路622と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0170】
また、第6実施形態では、上記第4実施形態と同様に、熱伝導部19によって、収容空間11内を冷媒ガス出口12と連通する第1通路部611aと冷媒液入口13と連通する第2通路部611bとに区画するので、冷媒ガス1aの流れと冷媒液1bの流れとの衝突により冷媒1の循環が妨げられることなく、冷媒1の循環を円滑に行える。その結果、熱交換効率を向上させることができる。
【0171】
また、第6実施形態では、上記のように、沸騰部610の第2壁部15に設けられ、複数の冷媒通路621の各々と複数の通路部611の各々とを相互に連通させる分配部660aを備えるので、各第1通路部611aの間で冷媒ガス1aの流通量に差が生じた場合でも、分配部660aを介在させることにより、複数の冷媒通路621の各々への冷媒ガス1aの流通量がばらつくことを抑制できる。その結果、沸騰式冷却器600の動作中の熱交換性能のばらつきを効果的に抑制できる。
【0172】
第6実施形態のその他の効果は、上記第5実施形態と同様である。
【0173】
[第7実施形態]
次に、図30図32を参照して、本発明の第7実施形態による沸騰式冷却器700(以下、冷却器700という)の構成について説明する。上記第6実施形態では、Z方向に延びる外部通路622が凝縮部620に設けられた構造であって、沸騰部610と凝縮部620とがY方向に積層される一方で、凝縮部620内の第1層40(冷媒通路621)と第2層50(外部通路622)とがX方向の積層構造を有する冷却器600の例を示したが、この第7実施形態では、Z方向に延びる外部通路722が設けられた構造であって、沸騰部710と凝縮部720との積層方向と、凝縮部720内の第1層40(冷媒通路721)と第2層50(外部通路722)との積層方向と、を一致させた例について説明する。なお、第7実施形態では、上記した各実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0174】
図30に示すように、第7実施形態の冷却器700は、上記第6実施形態の冷却器600と同様に、凝縮部720は、凝縮部720をZ方向に貫通し、外部流体2をZ方向に流通させる外部通路722を有する。第7実施形態の冷却器700では、沸騰部710と、凝縮部720内の各第1層40(冷媒通路721)と各第2層50(外部通路722)とが、いずれもY方向に積層されている。すなわち、図31に示すように、沸騰部710と、凝縮部720の各構成要素(各第1層40および各第2層50)とが、単一方向(Y方向)に積層されている。そのため、第7実施形態の冷却器700は、冷却器700の製造時に、沸騰部710および凝縮部720の各構成要素を積み重ねた組立体をろう付けすることにより、各構成要素を一括で接合できる。つまり、第7実施形態は、1回のろう付け工程で製作可能な構造の冷却器700を示す。
【0175】
なお、第7実施形態の冷却器700は、全体としてX方向に延びる横長形状を有するが、上記第1~第6実施形態と同様に、全体としてZ方向に延びる縦長形状を有していてもよい。
【0176】
凝縮部720の各冷媒通路721は、XZ平面に沿って設けられ、図31に示すように、X1方向の一端側から冷媒ガス1aを受け入れるとともに、他端側に向けてX2方向に流通させ、冷媒ガス1aを凝縮させた冷媒液1bを、X2方向の他端側から沸騰部710へ送り出す。図31では、冷媒通路721を破線で示している。
【0177】
沸騰部710は、X方向に延びる収容空間11を有する。図32に示すように、収容空間11には、X1方向の一端側かつZ方向上部に、冷媒ガス出口12と連通する出口側収容部771が設けられている。収容空間11には、X2方向の他端側かつZ方向下部に、冷媒液入口13と連通する入口側収容部772が設けられている。
【0178】
熱伝導部19が、収容空間11内でZ方向に延びるとともに、収容空間11を複数の通路部711に区画するように構成されている。具体的には、収容空間11において、5つの熱伝導部19が出口側収容部771と入口側収容部772との間にX方向に並んで配置され、収容空間11を6つの通路部711に区画している。
【0179】
各熱伝導部19は、Z方向において、上端部19cが上壁部17の近傍まで延び、下端部19dが下壁部18の近傍まで延びている。各熱伝導部19の上端部19cと上壁部17との間に、X方向に延びて6つの通路部711と出口側収容部771とを連通させる上側接続路712が形成されている。各熱伝導部19の下端部19dと下壁部18との間に、X方向に延びて6つの通路部711と入口側収容部772とを連通させる下側接続路713が形成されている。なお、冷媒1の液面1cは、たとえば各通路部711の中間位置付近に設定されている。
【0180】
出口側収容部771のZ方向寸法H71は、上側接続路712のZ方向の幅W71よりも大きい。入口側収容部772のZ方向寸法H72は、下側接続路713の幅W72よりも大きい。なお、Z方向寸法H71が幅W71以下でもよいし、Z方向寸法H72が幅W72以下でもよい。
【0181】
各通路部711における第1壁部14の内面には、Z方向に延びる線状の複数の凹凸部714が設けられている。凹凸部714により、各通路部711における伝熱面積が大きくなっている。
【0182】
図31に示すように、沸騰部710の第2壁部15には、冷媒ガス出口12および冷媒液入口13が1つずつ設けられている。冷媒ガス出口12は、第2壁部15のX1方向端部かつZ方向上部の、出口側収容部771とY方向に重なる位置に配置されている。冷媒ガス出口12は、凝縮部720のX1方向の一端部に配置された冷媒ガス分配路23を介して、各冷媒通路721と連通している。
【0183】
冷媒液入口13は、第2壁部15のX2方向端部かつZ方向下部の、入口側収容部772とY方向に重なる位置に配置されている。冷媒液入口13は、凝縮部720のX2方向の他端部に配置された冷媒液集合路24を介して、各冷媒通路721と連通している。
【0184】
図32に示した各通路部711内では、発熱体HSからの入熱により冷媒液1bが沸騰して冷媒ガス1aとなる。各通路部711内の冷媒ガス1aは、Z方向上方に移動して上側接続路712に流入し、X1方向へ流れて出口側収容部771に到達する。冷媒ガス1aは、出口側収容部771から冷媒ガス出口12を介して凝縮部720の冷媒ガス分配路23へ流入する。出口側収容部771が上側接続路712よりもZ方向に大きい空間となっているため、上側接続路712から流出した冷媒ガス1aの流れが妨げられることが抑制され、冷媒ガス1aが凝縮部720へ向けて円滑に流通する。冷媒ガス1aは、図31に示したように、冷媒ガス分配路23から各冷媒通路721へ流入する。冷媒ガス1aは、X2方向へ流れる過程で冷却されて凝縮する。各冷媒通路721において凝縮した冷媒液1bは、重力の作用によって、各冷媒通路721から冷媒液集合路24で合流する。
【0185】
各通路部711で気化して減少した冷媒液1bは、冷媒液集合路24、入口側収容部772および下側接続路713を介して、各通路部711の下端側から補充される。このようにして、冷却器700内での冷媒1の循環が行われる。
【0186】
第7実施形態のその他の構成は、上記第5実施形態と同様である。
【0187】
(第7実施形態の効果)
第7実施形態では、上記第1実施形態と同様に、沸騰部710が冷媒1を収容する収容空間11と、収容空間11に繋がる冷媒ガス出口12と、収容空間11に繋がる冷媒液入口13とを含むので、冷媒ガス1aによって冷媒液1bの移動が阻害されることを抑制できる。さらに、沸騰部710が、発熱体HSが取り付けられる第1壁部14と、収容空間11を介して第1壁部14と対向し、外部通路722と隣接する第2壁部15と、収容空間11を通って第1壁部14と第2壁部15とを接続する熱伝導部19とを有するので、外部流体2の低温時であっても、入熱量の増大による冷却性能の急激な低下を抑制することができる。
【0188】
また、第7実施形態の冷却器700では、冷媒通路721を構成する平板状の第1層40と、外部通路722を含む平板状の第2層50と、が積層された構造の凝縮部720を備え、外部通路722が凝縮部720をZ方向に貫通しており、かつ、沸騰部710と、凝縮部720を構成する第1層40(冷媒通路721)および第2層50(外部通路722)との各々が単一方向(Y方向)に積層されているので、冷却器700の製造時に、沸騰部710および凝縮部720の各構成要素を積み重ねた組立体をろう付けすることにより、各構成要素を一括で接合できる。そのため、1回のろう付け工程で、冷却器700を製作することができる。
【0189】
第7実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0190】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0191】
たとえば、上記第1~第7実施形態では、発熱体HSが電力変換装置に用いられるパワーモジュールである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体はどのような物であってもよい。発熱体は、サーバ等の電子機器に搭載されるCPUなどの半導体チップや電子回路であってもよい。
【0192】
また、上記第1~第6実施形態では、熱伝導部19が、収容空間11内で冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向(Z方向)に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱伝導部19が冷媒液入口13から冷媒ガス出口12に向かう方向(Z方向)に延びていなくてもよく、熱伝導部19がたとえばY方向に延びる柱状形状(円柱、角柱など)を有していてもよいし、Z方向かつX方向へ斜めに延びる形状を有していてもよい。このような熱伝導部19は、収容空間11内の仕切壁およびコルゲートフィンのいずれにも該当しないものであってもよい。
【0193】
また、上記第1~第6実施形態では、熱伝導部19は、収容空間11内の冷媒ガス出口12から冷媒液入口13までに亘って設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。熱伝導部19の上端が冷媒ガス出口12よりも下方位置に配置されていてもよいし、熱伝導部19の下端は、冷媒液入口13よりも上方位置に配置されていてもよい。また、熱伝導部19は、下端から上端まで連続的に形成されている必要はなく、複数個に分割されていてもよい。
【0194】
また、上記第1~第6実施形態では、第1壁部14の外面に、液面1cよりも下方に位置する第1取付部31と、液面1cよりも上方に位置する第2取付部32とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1壁部14の外面に第1取付部31のみが設けられてもよい。
【0195】
また、上記第1~第7実施形態では、冷媒通路21の内部に仕切板43および周壁44と一体化されたコルゲートフィン45を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒通路21にコルゲートフィン45を設けなくてもよい。冷媒通路21は、単純な中空の通路であってもよいし、独立した複数の管路を有する多穴管であってもよい。
【0196】
また、上記第1~第7実施形態では、一対(2枚)の仕切板43と、環状の周壁44とを別個に設け、ろう付けにより一体化することによって冷媒通路21を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、環状の周壁44が、一対の仕切板43の一方または両方に一体的に設けられていてもよい。たとえば、一方の仕切板と環状の周壁とを一体形成することで凹状部材とし、他方の仕切板を平板形状とし、凹状部材と他方の仕切板とをろう付けにより一体化することで冷媒通路21を構成してもよい。同様に、一方の仕切板と他方の仕切板とにそれぞれ環状の周壁の半分を一体形成することで凹状形状に形成し、両方の仕切板の周壁の部分同士をろう付けにより一体化することで冷媒通路21を構成してもよい。
【0197】
また、上記第1~第3実施形態では、凝縮部20に6つの第1層40と7つの第2層50とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。凝縮部20に設ける第1層40および第2層50の数は、特に限定されない。凝縮部20は、少なくとも1つの冷媒通路21と、少なくとも1つの外部通路22とを有していればよい。
【0198】
また、上記第1~第7実施形態では、第1層40と第2層50とを含む積層構造の凝縮部20を、沸騰部10に積層して真空ろう付けによって一体化する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえばいわゆる3Dプリンタによる積層造形法を利用して沸騰部10および凝縮部20を一体形成してもよいし、沸騰部10および凝縮部20を構成する各部を溶接などのろう付け以外の手法により接合してもよい。
【0199】
また、上記第1~第7実施形態では、冷却器がY方向から見て長方形状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却器の外形形状は特に限定されない。たとえばモーターなどの円筒形状の発熱体を冷却する場合、冷却器の外形形状を発熱体(モーター)に合わせて円形状とし、モーターの円形状の軸方向端面を、円形状(または円環形状)の第1壁部に取り付けるようにしてもよい。
【0200】
また、上記第4および第6実施形態では、冷媒ガス出口12が第2通路部411b(611b)には開口せずに第1通路部411a(611a)に開口する例を示したが、本発明はこれに限られない。冷媒ガス出口12が第1通路部411a(611a)および第2通路部411b(611b)の両方に開口してもよい。
【0201】
また、上記第4および第6実施形態では、2つの第1通路部411a(611a)と、3つの第2通路部411b(611b)とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば図19において、2つの第1通路部411aと、X方向中央の第2通路部411bとを区画する2つの熱伝導部19を除去して、X方向中央に幅広の1つの第1通路部411aを形成してもよい。つまり、1つの第1通路部411aと、その第1通路部411aの両外側に配置された2つの第2通路部411bとを設けてもよい。
【0202】
また、上記第1~第4実施形態では凝縮部をX方向に貫通する外部通路を設けた例を示し、上記第5~第7実施形態では凝縮部をZ方向に貫通する外部通路を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。上記第1~第4実施形態において、凝縮部をZ方向に貫通する外部通路を設けてもよいし、上記第5~第7実施形態において、凝縮部をX方向に貫通する外部通路を設けてもよい。
【0203】
また、上記第4~第7実施形態では、収容空間11内で複数の通路部(411、511、611、711)を区画する熱伝導部19が、収容空間11内に設けられた仕切壁により構成された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第4~第7実施形態の熱伝導部19が、上記第2実施形態(図11)で示したコルゲートフィン160によって構成されてもよい。この場合でも、コルゲートフィン160が第1壁部14に接する第1部分161と、第2壁部15に接する第2部分162とを含むことによって、収容空間11内が、複数の領域に区画される。これらの複数の領域により複数の通路部を形成することができる。
【符号の説明】
【0204】
1 冷媒
1a 冷媒ガス
1b 冷媒液
1c 液面
2 外部流体
10、110、410、510、610、710 沸騰部
11 収容空間
12 冷媒ガス出口
13 冷媒液入口
14 第1壁部
15 第2壁部
19 熱伝導部
20、220、520、620、720 凝縮部
21、521、621、721 冷媒通路
22、522、622、722 外部通路
31 第1取付部
32 第2取付部
40 第1層
43 仕切板
44 周壁
45、545 コルゲートフィン
50 第2層
55、555 コルゲートフィン
100、200、300、400、500、600、700 冷却器(沸騰式冷却器)
160 コルゲートフィン
HS 発熱体
【要約】
この沸騰式冷却器(100)は、冷媒(1)を収容する収容空間(11)と、冷媒ガス出口(12)と、冷媒液入口(13)とを含む沸騰部(10)と、冷媒通路(21)と外部通路(22)とを有する凝縮部(20)と、を備える。沸騰部は、発熱体(HS)が取り付けられる第1壁部(14)と、収容空間を介して第1壁部と対向し、外部通路と隣接する第2壁部(15)と、収容空間を通って第1壁部と第2壁部とを接続する熱伝導部(19)とを有する。
図1
図2
図3
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