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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】マウスピース
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/00 20060101AFI20230621BHJP
   A61C 7/08 20060101ALI20230621BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61F 5/56 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61C7/00
A61C7/08
A61C19/00 M
A61F5/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547316
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016957
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507167000
【氏名又は名称】大橋 真龍
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 真龍
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/191826(WO,A1)
【文献】特開2014-23672(JP,A)
【文献】国際公開第2020/089796(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/037821(WO,A1)
【文献】米国特許第3878610(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0106529(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00
A61C 7/08
A61C 19/00
A61F 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎及び下顎の中切歯から第二大臼歯の少なくとも一部までに対応するU字形の基部と、
前記基部から前記上顎側に延設され、装着時に、前記上顎の中切歯と上唇の間に位置し、前記上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁と、
前記基部から前記下顎側に延設され、装着時に、前記下顎の中切歯と舌の間に位置し、前記下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成され、前記基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された下内壁と、
前記下内壁から前記基部のU字の内側、且つ、下顎方向に延出し、中央に溝を有することにより前記基部と同方向のU字形をなす舌置部を具え、
前記基部及び下内壁の、第二小臼歯と第一大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に、第一切断案内部が形成され、
前記基部及び下内壁の、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に、第二切断案内部が形成され、
前記第一切断案内部及び/又は第二切断案内部とそれぞれ対応する第一舌置部切断案内部及び/又は第二舌置部切断案内部が前記舌置部に形成され
前記舌置部が、前記基部に沿うU字状切断案内部をさらに具えることを特徴とする、
マウスピース。
【請求項2】
前記舌置部の厚みが前記基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置から前記中切歯側に向けて次第に厚くなっている、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記溝が前記基部の端部方向に拡開している、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記第一舌置部切断案内部及び/又は第二舌置部切断案内部が前記中切歯方向に傾斜している、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記上外壁が、前記基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成され、
前記第一切断案内部及び/又は第二切断案内部が前記上外壁にも形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記上外壁が、前記基部のU字に沿う上外壁上部切断案内部をさらに具える、請求項に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記基部から前記上顎側に延設され、装着時に、前記上顎の中切歯から第二大臼歯と硬口蓋の間に位置するように構成され、前記基部の中切歯から端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された上内壁を具え、
前記第一切断案内部及び/又は第二切断案内部が前記上内壁にも形成されている、請求項に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記基部から前記下顎側に延設され、装着時に、前記下顎の中切歯から第二大臼歯と下唇の間に位置するように構成され、前記基部の中切歯から端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された下外壁を具え、
前記第一切断案内部及び/又は第二切断案内部が前記下外壁にも形成されている、請求項に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、就寝時及び就寝中に装着するマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ時に歯や歯茎、顎関節を保護するためのマウスピースや、不正咬合を治療する歯科器具としてのマウスピースが開発されており、その例として、以下に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/001565号
【文献】特表2006-513738号公報
【文献】国際公開第2016/191826号
【文献】国際公開第2020/089796号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、歯列の前側を覆う前壁部と、歯列の後側を覆う後壁部と、これら前壁部及び後壁部間を接続し、上下顎歯列間の噛み合わせを行わせる噛合部とからなるマウスピースであって、前壁部、後壁部及び噛合部を可撓性且つ衝撃吸収性の多孔質材料で形成し、噛合部は、上下顎歯列間の噛み合わせ力に応じて変形し、前壁部及び後壁部に比較して噛み込み方向断面内の密度が高まり上下顎歯列に密着した噛合安定部を形成可能としたマウスピースが開示されている。
【0005】
特許文献1のマウスピースによれば、多孔質材料の応力により、噛合部が歯列の形状に合わせて変形して隙間なく密着し、噛合部に前壁部及び後壁部に対し噛み込み方向断面内の密度が相対的に高まった噛合安定部を形成することができるとされている。
【0006】
特許文献2には、上歯と下歯をそれぞれ収容する上顎シェルと下顎シェルとを有し、上顎シェルと下顎シェルは、接触を維持している間分離することができるような方法で連結され、上顎シェルと下顎シェルは、公知の歯科器具よりも大きいそれらの間の厚さを有し、上顎シェルと下顎シェルを連結する手段も、公知の歯科器具よりも大きい厚さであるマウスピースが開示されている。
【0007】
特許文献2のマウスピースによれば、ユーザの口腔の奥で大臼歯を治療することができ、上顎シェルと下顎シェルとの間の厚みにより、ユーザが口腔内に歯科器具を設置するとき、ユーザの口腔内の筋肉を刺激することができ、歯科器具の上顎シェルと下顎シェルとを連結するヒンジや他の手段は、
後方部分の増加した厚さのために歯科器具全体を弾力的にするのを可能にし、上顎シェルと下顎シェルとを連結する手段は、ユーザの顎の反対側面の移動を制限することができるとされている。
【0008】
特許文献3には、上顎及び下顎の中切歯から第二大臼歯の少なくとも一部までに対応するU字形の基部と、基部から上顎側に延設され、装着時に、上顎の中切歯と上唇の間に位置し、上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁と、基部から下顎側に延設され、装着時に、下顎の中切歯と舌の間に位置し、下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成された下内壁を具え、基部の、臼歯部位に対応する位置の少なくとも一部に、第一切断案内部が形成されているマウスピースが開示されている。また、特許文献4には、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置に切断案内部が形成されたマウスピースが開示されている。
【0009】
ところで、昨今の医療技術の進歩により、人間の寿命は延びてきており、何らの対策をしない場合、生涯にわたり自らの歯を維持することは難しい。そこで、マウスピースを用いることによって、歯を保護することが重要となるが、マウスピースは、個人の歯型を取って作成(オーダーメイド)されるか、標準的な歯列を基準に作成されたのが市販されているのが通常である。前者は高価になり易く、後者は、歯列に合うマウスピースを探し難いという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、歯型を取って作成しなくても、生涯継続して使用することができるマウスピースを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上顎及び下顎の中切歯から第二大臼歯の少なくとも一部までに対応するU字形の基部と、
前記基部から前記上顎側に延設され、装着時に、前記上顎の中切歯と上唇の間に位置し、前記上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁と、
前記基部から前記下顎側に延設され、装着時に、前記下顎の中切歯と舌の間に位置し、前記下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成され、前記基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された下内壁と、
前記下内壁から前記基部のU字の内側、且つ、下顎方向に延出し、中央に溝を有することにより前記基部と同方向のU字形をなす舌置部を具え、
前記基部及び下内壁の、第二小臼歯と第一大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に、第一切断案内部が形成され、
前記基部及び下内壁の、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に、第二切断案内部が形成され、
前記第一切断案内部及び/又は第二切断案内部とそれぞれ対応する第一舌置部切断案内部及び/又は第二舌置部切断案内部が前記舌置部に形成され
前記舌置部が、前記基部に沿うU字状切断案内部をさらに具えることを特徴とするマウスピースによって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマウスピースによれば、基部から上顎側に延設され、装着時に、上顎の中切歯と上唇の間に位置し、上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁と、基部から下顎側に延設され、装着時に、下顎の中切歯と舌の間に位置し、下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成された下内壁を具えているから、マウスピースを装着した状態で仰向けとなり、顎に重力による垂下方向の力がかかったとき、下顎の少なくとも中切歯がマウスピースを介して上顎の少なくとも中切歯に引っ掛かり、仰向け時の顎の垂下方向の移動を防止することができる。また、下内壁から基部の内側、且つ、下顎方向に延出し、中央に溝を有することによりU字形をなす舌置部を具えるので、舌置部に舌が載ることにより、舌尖が硬口蓋に当たり易くなり、低位舌や鼾の予防及び改善に繋がる。また、上顎及び下顎の中切歯から第二大臼歯の少なくとも一部までに対応するU字形の基部及び下内壁が、第二小臼歯と第一大臼歯の間と第一大臼歯と第二大臼歯の間のそれぞれに対応する位置の少なくとも一部に第一切断案内部及び第二切断案内部を具え、舌置部が第一切断案内部及び第二切断案内部とそれぞれ対応する第一舌置部切断案内部及び第二舌置部切断案内部を具えているので、マウスピースを第一・第二切断案内部と第一・第二舌置部切断案内部に沿って、第二小臼歯と第一大臼歯の間と第一大臼歯と第二大臼歯の間のそれぞれに対応する位置で切断し易い。これにより、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っているときから、第二大臼歯が生える前の状態と、中切歯から第二大臼歯の永久歯が生え揃うときまで、同型のマウスピースを生涯継続して使用することができる。
【0013】
これにより、本発明のマウスピースの使用者は、以下のような利益を得られる。まず、比較的低コストで製造可能な同型のマウスピースを生涯継続して使用することができるので、使用者の歯列に応じたマウスピースをオーダーメイドせずに済み、経済的である。次に、仰向け時の顎の垂下方向の移動を防止することができることにより、頭蓋骨、特に下顎窩に対する下顎頭の位置がずれることを防止することができる。これにより、顎関節症の発症や、下顎頭が耳孔方向に移動して耳孔や下顎枝部、これらの周辺の神経を押し潰すことによって発症する難聴その他の症状の発症を防止することができる。また、マウスピースを装着して就寝することにより、鼻呼吸優位となり、口内の乾燥を防ぎ、菌やウィルスの増殖を防ぐことができるとともに、いびき防止にも繋がる。特に、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っている幼児の段階においては、就寝時の鼻呼吸優位の状態が、上顎洞の成長を促進させ得る。ところで、上顎洞の未発達は、切端咬合や反対咬合(受け口)の一因と考えられるので、本発明のマウスピースを幼児の頃から使用し続けることにより、切端咬合や反対咬合の発症を抑制できる。また、歯の摩耗は、口が窄むことやほうれい線を含む口周りのしわ等の口元の老化の一因と考えられる。そこで、上顎と下顎の歯の間にマウスピースが介在することにより、歯同士の摩擦による歯の摩耗を防ぐことができるので、口元の老化を抑制することもできる。
【0014】
また、舌置部の厚みが基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置から中切歯側に向けて次第に厚くなっている構成とすれば、舌尖が硬口蓋にさらに当たり易いマウスピースとすることができる。
【0015】
また、舌置部の溝が基部の端部方向に拡開している構成、或いは、第一舌置部切断案内部及び/又は第二舌置部切断案内部が中切歯方向に傾斜している構成とし、第一舌置部切断案内部及び/又は第二舌置部切断案内部に沿って切断し易くすれば、オトガイ舌筋が干渉し難いマウスピースとすることができる。
【0016】
また、舌置部が基部に沿うU字状切断案内部をさらに具える構成とし、U字状切断案内部に沿って切断し易くすれば、骨隆起等に干渉し難いマウスピースとすることができる。
【0017】
また、上外壁、上内壁、及び下外壁が基部の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成されている構成とすれば、上外壁、上内壁、又は下外壁に使用者の各歯が沿うことになり、乱杭歯を防止することができ、口内でマウスピースの位置がずれることを防止することもでき、使用者が横向きに寝た場合にも、顎の垂下方向の移動を防止することができる。
【0018】
また、上外壁が、基部のU字に沿う上外壁上部切断案内部をさらに具える構成とすれば、上外壁の上部を上外壁上部切断案内部に沿って切断し易いので、子供や女性など、口内が比較的小さい使用者であっても装着し易いマウスピースとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の参考例のマウスピースの平面図。
図2図1の底面図。
図3図1の上方斜視図。
図4図1の下方斜視図。
図5】本発明の第一実施形態のマウスピースの平面図。
図6図5の中央縦断面図。
図7図5の正面図。
図8図5の側面図。
図9図5の背面図。
図10図5の底面図。
図11】本発明の第二実施形態のマウスピースの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1~11を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1~4は、本発明の参考例のマウスピース10を示している。本発明の舌置部40(後述する。)以外の構成は、マウスピース10と同様であるため、まず、マウスピース10について説明する。マウスピース10は、歯列、具体的には、人体の上顎及び下顎の中切歯から第二大臼歯の少なくとも一部までの歯列の湾曲形状に対応したU字形の基部12を具えている。マウスピース10は、平面視で左右対称の形状を具えている。
【0022】
基部12は、上顎側に延設され、装着時に、上顎の中切歯と上唇の間に位置し、上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁22と、装着時に、上顎の中切歯から第二大臼歯と硬口蓋の間に位置するように構成され、基部12の中切歯から第一大臼歯に対応する位置まで形成された上内壁24を具えている。上外壁22及び上内壁24は、基部12の端部に対応する位置までの任意の範囲で形成することができる(図3も参照。)。
【0023】
図2に示すように、基部12は、下顎側に延設され、装着時に、下顎の中切歯と舌の間に位置し、下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成された下内壁34と、装着時に、下顎の中切歯から第二大臼歯と下唇の間に位置するように構成され、基部12の中切歯から端部に対応する位置まで形成された下外壁32を具えている。下内壁34は、基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成され、下外壁32は、基部12の端部に対応する位置までの任意の範囲で形成することができる(図4も参照。)。
【0024】
基部12、上外壁22、上内壁24,下外壁32,及び下内壁34は、公知の樹脂材料で構成されている。基部12、上外壁22、上内壁24,下外壁32,及び下内壁34の大きさ、厚み、及び形状は、任意に設定することができ、例えば、性別ごとの歯列の標準モデルや口腔内の標準的な大きさを基準にして設定すればよい。
【0025】
このように、マウスピース10は、基部12から上顎側に延設され、装着時に、上顎の中切歯と上唇の間に位置し、上顎の少なくとも中切歯の唇側面が当接し得るように構成された上外壁22と、基部12から下顎側に延設され、装着時に、下顎の中切歯と舌の間に位置し、下顎の少なくとも中切歯の舌側面が当接し得るように構成された下内壁34を具えているから、使用者がマウスピース10を装着した状態で仰向けとなり、使用者の顎に重力による垂下方向の力がかかったとき、下顎の少なくとも中切歯がマウスピース10を介して上顎の少なくとも中切歯に引っ掛かり、仰向け時の顎の垂下方向の移動を防止することができる。
【0026】
また、上外壁22、上内壁24,下外壁32、及び下内壁34が基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成されている構成とすれば、上外壁22、上内壁24、下外壁32、又は下内壁34に使用者の各歯が沿うことになり、乱杭歯を防止することができ、口内におけるマウスピースの位置がずれることを防止することもできる。
【0027】
また、基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された上外壁22又は上内壁24と、基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成された下外壁32又は下内壁34を設けることにより、使用者が横向きに寝た場合にも、使用者の顎に重力による垂下方向の力がかかったとき、下顎のいずれかの歯がマウスピース10を介して上顎のいずれかの歯に引っ掛かり、顎の垂下方向の移動を防止することができる。
【0028】
図1に示すように、基部12の上顎面には、第一切断案内部26a,26bと第二切断案内部28a,28bが設けられている。第一切断案内部26a,26bは、基部12の第二小臼歯と第一大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に、そして、第二切断案内部28a,28bは、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0029】
図2に示すように、基部12は、その下顎面にも、第一切断案内部36a,36bと第二切断案内部38a,38bが設けられている。下顎面に設けられている第一切断案内部36a,36bと第二切断案内部38a,38bの構成は、上顎面に設けられている第一切断案内部26a,26bと第二切断案内部28a,28bの構成と同様である。なお、第一切断案内部と第二切断案内部は、基部12の上顎面又は下顎面のいずれかに設けた構成とすることもできる。
【0030】
マウスピース10の場合、第一切断案内部26a,26b,36a,36b及び第二切断案内部28a,28b,38a,38bは、凹溝である。第一切断案内部26a,26b,36a,36b及び第二切断案内部28a,28b,38a,38bは、凹溝の他、突条、突起又は孔や穴(連続して設けられているものを含む。)、或いは、印刷した線や破線であってもよい。また、第一切断案内部26a,26b,36a,36b及び第二切断案内部28a,28b,38a,38bは、直線状であっても曲線状であってもよい。
【0031】
このように、マウスピース10には、第一切断案内部26a,26b,36a,36bが設けられているから、マウスピース10を第一切断案内部26a,26b,36a,36bに沿って、第二小臼歯と第一大臼歯の間に対応する位置で切断し易い。マウスピース10を第一切断案内部26a,26b,36a,36bに沿って切断して使用するのに好適な時期は、使用者の第一大臼歯が生え始めた5才頃からである。これにより、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っているときから、中切歯から第二大臼歯の永久歯が生え揃うときまで、同型のマウスピースを生涯継続して使用することができる。
【0032】
また、マウスピース10に第二切断案内部28a,28b,38a,38bが設けられている構成とすれば、マウスピース10を第二切断案内部28a,28b,38a,38bに沿って、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置で切断し易い。これにより、第二大臼歯が生える前の状態であっても使用し易いマウスピース10とすることができる。マウスピース10を第二切断案内部28a,28b,38a,38bに沿って切断して使用するのに好適な時期は、使用者が7才~10才くらいのときである。
【0033】
ここで、上外壁22、上内壁24,下外壁32,又は下内壁34が基部12の中切歯から第一大臼歯に対応する位置まで形成されている場合、第一切断案内部26a,26b,36a,36bは、上外壁22、上内壁24,下外壁32,又は下内壁34の内側面又は外側面に設けられていてもよい。
【0034】
さらに、上外壁22、上内壁24,下外壁32,又は下内壁34が基部12の端部に対応する位置まで形成されている場合、第二切断案内部28a,28b,38a,38bは、上外壁22、上内壁24,下外壁32,又は下内壁34の内側面又は外側面に設けられていてもよい。
【0035】
上外壁22、上内壁24,下外壁32,又は下内壁34の内側面又は外側面に第一切断案内部26a,26b,36a,36b及び第二切断案内部28a,28b,38a,38bを設けた場合、第一切断案内部26a,26b,36a,36b又は第二切断案内部28a,28b,38a,38bは、それぞれ、基部12から離れるに従って、中切歯方向に傾斜するように形成してもよい。本構成により、第一切断案内部26a,26b,36a,36b又は第二切断案内部28a,28b,38a,38bに沿ってマウスピース10を切断したとき、上外壁22、上内壁24,下外壁32,及び下内壁34が頬の内側や硬口蓋、舌に干渉し難くなるので、装着時の違和感を生じ難いマウスピース10とすることができる。
【0036】
図5は、本発明の第一実施形態のマウスピース10aを示している。マウスピース10と同様の構成を具える部分は、マウスピース10と同じ符号を付している。マウスピース10aは、舌置部40を具える。舌置部40は、図6,7,9にも示されているように、基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置まで形成されている下内壁34から基部12のU字の内側、且つ、下顎方向に延出するように設けられている。ここで、舌置部40は、中央に溝42(図5,10も参照。)を有するように形成されており、基部12と同方向のU字形をなしている。
【0037】
また、図5に示されているように、舌置部40には、第一切断案内部26a,26b,36a,36bに対応する第一舌置部切断案内部46a,46bと、第二切断案内部28a,28b,38a,38bに対応する第二舌置部切断案内部48a,48bが形成されている。第一舌置部切断案内部46a,46bと第二舌置部切断案内部48a,48bは、第一切断案内部26a,26b,36a,36b及び第二切断案内部28a,28b,38a,38bとそれぞれ連続するように設けることができる(図6,8参照。)。また、第一舌置部切断案内部46a,46bと第二舌置部切断案内部48a,48bは、図10に示すように、底面側に設けることもできる。
【0038】
上述したように、マウスピース10aは、舌置部40を具えるので、舌置部40に使用者の舌が載ることにより、その舌尖が硬口蓋に当たり易くなり、低位舌や鼾の予防及び改善に繋げることができる。このとき、舌置部40は溝42を具えるので、オトガイ舌筋が干渉し難い。また、舌置部40は第一舌置部切断案内部46a,46bと第二舌置部切断案内部48a,48bを具えているので、マウスピース10aを第一・第二切断案内部26a,26b,36a,36b,28a,28b,38a,38bと第一・第二舌置部切断案内部46a,46b,48a,48bに沿って、第二小臼歯と第一大臼歯の間と第一大臼歯と第二大臼歯の間のそれぞれに対応する位置で切断し易い。これにより、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っているときから、第二大臼歯が生える前の状態と、中切歯から第二大臼歯の永久歯が生え揃うときまで、同型のマウスピース10aを生涯継続して使用することができる。
【0039】
ここで、舌置部40は、その厚みが基部12の端部又は第一大臼歯に対応する位置から中切歯側に向けて次第に厚くなっている構成とすることができる(図6,7,9参照。)。本構成とすることにより、舌尖が硬口蓋にさらに当たり易いマウスピース10aとすることができる。
【0040】
また、図5,10に示すように、溝42が基部12の端部方向に拡開している構成、或いは、第一舌置部切断案内部46a,46b及び/又は第二舌置部切断案内部48a,48bが中切歯方向に傾斜している構成とし、第一舌置部切断案内部46a,46b及び/又は第二舌置部切断案内部48a,48bに沿って切断し易くすれば、オトガイ舌筋がさらに干渉し難いマウスピースとすることができる。
【0041】
マウスピース10aは、図7,8に示すように、上外壁22に基部12のU字に沿う上外壁上部切断案内部22aが形成されている。上外壁上部切断案内部22aは、上外壁上部切断案内部22aより上部の範囲が中切歯方向に向かうにつれて大きくなるように形成することができる。上外壁上部切断案内部22aを具える構成とすれば、上外壁22の上部を上外壁上部切断案内部22aに沿って切断し易いので、子供や女性など、口内が比較的小さい使用者であっても装着し易いマウスピース10aとすることができる。
【0042】
図11は、本発明の第二実施形態のマウスピース10bを示している。マウスピース10bの基本的な構成は、マウスピース10aと同じであるため、異なる点について以下に説明する。マスピース10bは、舌置部40に基部12(図5,10参照。)に沿うU字状切断案内部44を具えている。図示しての説明は省略するが、U字状切断案内部44は、底面側に設けることもできる。U字状切断案内部44を具える構成とすれば、舌置部40をU字状切断案内部44に沿って切断し易いので、骨隆起等に干渉し難いマウスピース10bとすることができる。
【0043】
上記に説明したマウスピース10a,10bの場合、第一舌置部切断案内部46a,46b、第二舌置部切断案内部48a,48b、及びU字状切断案内部44は、凹溝である。これらは凹溝の他、突条、突起又は孔や穴(連続して設けられているものを含む。)、或いは、印刷した線や破線であってもよい。また、第一舌置部切断案内部46a,46b及び第二舌置部切断案内部48a,48bは、直線状であっても曲線状であってもよい。
【0044】
本発明のマウスピース10a,10bの使用者は、以下のような利益を得ることができる。まず、比較的低コストで製造可能な同型のマウスピース10a,10bを生涯継続して使用することができるので、使用者の歯列に応じたマウスピースをオーダーメイドせずに済み、経済的である。次に、仰向け時の顎の垂下方向の移動を防止することができることにより、頭蓋骨、特に下顎窩に対する下顎頭の位置がずれることを防止することができる。これにより、顎関節症の発症や、下顎頭が耳孔方向に移動して耳孔や下顎枝部、これらの周辺の神経を押し潰すことによって発症する難聴その他の症状の発症を防止することができる。また、マウスピース10a,10bを装着して就寝することにより、鼻呼吸優位となり、口内の乾燥を防ぎ、菌やウィルスの増殖を防ぐことができるとともに、いびき防止にも繋がる。特に、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っている幼児の段階においては、就寝時の鼻呼吸優位の状態が、上顎洞の成長を促進させ得る。上顎洞の未発達は、切端咬合や反対咬合(受け口)の一因と考えられるので、マウスピース10a,10bを幼児の頃から使用し続けることにより、切端咬合や反対咬合の発症を抑制できる。また、歯の摩耗は、口が窄むことやほうれい線を含む口周りのしわ等の口元の老化の一因と考えられる。そこで、上顎と下顎の歯の間にマウスピースが介在することにより、歯同士の摩擦による歯の摩耗を防ぐことができるので、口元の老化を抑制することもできる。
【0045】
以上に説明したとおり、本発明によれば、歯型を取って作成しなくても、生涯継続して使用することができるマウスピースを提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
10a,10b マウスピース
12 基部
22 上外壁
22a 上外壁上部切断案内部
24 上内壁
26a,26b,36a,36b 第一切断案内部
28a,28b,38a,38b 第二切断案内部
32 下外壁
34 下内壁
40 舌置部
42 溝
44 U字状切断案内部
46a,46b 第一舌置部切断案内部
48a,48b 第二舌置部切断案内部
【要約】
【課題】歯型を取って作成しなくても、生涯継続して使用することができるマウスピースを提供すること。
【解決手段】マウスピース10aは、基部12、上外壁22、下内壁34、及び舌置部40を具え、第二小臼歯と第一大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に形成された第一切断案内部26a,26b,36a,36bと、第一大臼歯と第二大臼歯の間に対応する位置の少なくとも一部に形成された第二切断案内部28a,28b,38a,38bと、これらのそれぞれに対応するようにして舌置部40に形成された第一舌置部切断案内部46a,46b及び/又は第二舌置部切断案内部48a,48bを具えるので、マウスピース10aをこれらの切断案内部に沿って切断し易く、使用者は、中切歯から第二小臼歯までの乳歯が生え揃っているときから、中切歯から第二大臼歯の永久歯が生え揃うときまで、同型のマウスピースを生涯継続して使用することができる。
【選択図】 図5

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11