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特許7299469エアゾール再充填装置、流路アセンブリ、再充填方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】エアゾール再充填装置、流路アセンブリ、再充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 3/12 20060101AFI20230621BHJP
   B65B 31/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B65B3/12
B65B31/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018237596
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020100406
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛明
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-160783(JP,A)
【文献】特開2004-182255(JP,A)
【文献】特開2002-362503(JP,A)
【文献】特開2013-224377(JP,A)
【文献】特開平05-171185(JP,A)
【文献】特開2010-248443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 3/12
B65B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃液体を含む脱脂洗浄剤を収容可能な第1空間を含む内袋と、前記内袋よりも外方において前記不燃液体と隔離して配置され、かつ前記不燃液体を前記内袋から排出させる圧縮ガスを収容する第2空間を含む缶体と、を備えるエアゾールにおいて前記内袋の前記第1空間に前記不燃液体を再充填するエアゾール再充填装置であって、
前記エアゾールを設置可能な設置部と、
前記不燃液体を前記設置部に流通可能な流路を形成する長尺部材と、
前記長尺部材と接続され、前記不燃液体の流通が可能な内部空間を形成する内壁面を備えた外側部材と、
前記外側部材の前記内部空間において移動可能に構成され、前記内部空間における位置の変化によって前記不燃液体の前記流路への流通が可能な移動部材と、
前記移動部材の外壁面に取り付けられ、前記内部空間において前記不燃液体のシール部位を形成するシール部材と、
前記不燃液体を貯留する貯留空間を備え、前記長尺部材が前記貯留空間に挿入されて接続されるタンクと、を有し、
前記シール部材は、JIS K6258に準拠する重量変化率が1~18%以下のエラストマーであり、
前記外側部材は、前記貯留空間に位置する前記長尺部材の端部に配置され、前記移動部材が前記シール部材とともに前記内部空間における下流側に移動した際に前記不燃液体が流通する第1流通空間を形成し、かつ前記移動部材が前記シール部材とともに上流側に位置した際に前記シール部材を載置して前記シール部位を形成する載置部を備えるエアゾール再充填装置。
【請求項2】
前記シール部材は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、カルボキシル化されたブタジエンゴム、カルボキシル化されたクロロプレンゴム、カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体およびカルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体からなる群から1以上選択される請求項1に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項3】
前記シール部材は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンからなる群から1以上選択される請求項1又は2に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項4】
前記不燃液体は、フッ素系溶剤である請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項5】
前記不燃液体は、ハイドロフルオロオレフィン、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテルからなる群から1以上選択される請求項1~4のいずれか1項に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項6】
前記不燃液体は、トランスまたはシス体の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,2,2,3,3,4ペンタフルオロシクロペンタン, 1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン, 3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン,メチルノナフルオロブチルエーテル,メチルノナフルオロイソブチルエーテルおよびトランス-1,2ジクロロエチレンからなる群から1以上選択される請求項1~5のいずれか1項に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項7】
前記移動部材は、前記内部空間において移動可能に配置され、側面に溝部を設けたピストンを備え、
前記外側部材は、前記タンクと前記設置部との間に設けられ、前記内部空間において前記タンクから前記流路を通じて流通する前記不燃液体を一時的に収容するとともに前記ピストンの移動によって前記内部空間に一時的に収容された前記不燃液体を前記流路に流通可能な第2流通空間を形成する前記内壁面を備え、
前記シール部材は、前記第2流通空間に前記不燃液体を一時的に収容した状態で前記溝部において前記不燃液体と接触可能に配置される請求項1~6のいずれか1項に記載のエアゾール再充填装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の前記エアゾール再充填装置の前記移動部材の前記外壁面に前記シール部材が取り付けられ、かつ前記移動部材及び前記シール部材を前記内部空間において移動可能に配置した前記外側部材を有する流路アセンブリ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のエアゾール再充填装置において前記設置部に前記エアゾールを設置し、
前記移動部材を前記シール部材とともに前記内部空間において移動させることによって、前記内部空間に流通する前記不燃液体を前記エアゾールの前記第1空間に再充填する前記不燃液体の再充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール再充填装置、流路アセンブリ、再充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等は、何万点にも及ぶ部品の組立作業が必要になる。組立作業の際には組み付けた部品を清掃するために各構成部品に付着した油やごみ等を除去する必要がある。そのような場合にはエアゾールを用いて強い圧力で洗浄液を部品に吹き付け、上記ごみ等を吹き飛ばすことがある。エアゾールは、廃棄物の処理を減らすためにエアゾールの缶に内容物を再充填することがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4133038号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明者は、エアゾールの効率的な使用のために鋭意検討し、エアゾールにおいて噴射剤と液体とが混合された状態で噴射される点に着目した。そして、エアゾールにおいて液体を収容する空間と噴射剤としての圧縮ガスを収容する空間とを分け、一度使い終わったエアゾールに液体を再充填することを考えた。さらに、本発明者は一度使い終わったエアゾールに充填装置を用いて不燃液体を再充填する際に異音が発生し得ることを見出し、当該異音を防止又は低減することを検討している。
【0005】
そこで本発明は、不燃液体と圧縮ガスとが隔離して収容されたエアゾールに不燃液体を再充填する際に異音が発生することを防止又は低減できるエアゾール再充填装置及び不燃液体の再充填方法を提供することを目的とする。
【0006】
エアゾールは、内袋と、缶体と、を備える。内袋は、不燃液体を含む脱脂洗浄剤を収容可能な第1空間を含む。缶体は、内袋よりも外方において不燃液体と隔離して配置され、かつ不燃液体を内袋から排出させる圧縮ガスを収容する第2空間を含む。本発明の一態様に係るエアゾール再充填装置は、上記エアゾールにおいて内袋の第1空間に不燃液体を再充填する。エアゾール再充填装置は、設置部と、長尺部材と、外側部材と、移動部材と、シール部材と、タンクと、を有する。設置部は、エアゾールを設置可能に構成している。長尺部材は、不燃液体を設置部に流通可能な流路を形成している。外側部材は、長尺部材と接続され、不燃液体の流通が可能な内部空間を形成する内壁面を備えている。移動部材は、外側部材の内部空間において移動可能に構成され、内部空間における位置の変化によって不燃液体の流路への流通を可能に構成している。シール部材は、移動部材の外壁面に取り付けられ、内部空間において不燃液体のシール部位を形成する。タンクは、不燃液体を貯留する貯留空間を備え、長尺部材が貯留空間に挿入されて接続される。シール部材は、JIS K6258に準拠する重量変化率が1~18%以下のエラストマーとなるように構成している。外側部材は、貯留空間に位置する長尺部材の端部に配置され、移動部材がシール部材とともに内部空間における下流側に移動した際に不燃液体が流通する第1流通空間を形成し、かつ移動部材がシール部材とともに上流側に位置した際にシール部材を載置してシール部位を形成する載置部を備える。
【0007】
また、本発明の一態様は、エアゾール再充填装置の移動部材の外壁面にシール部材が取り付けられ、かつ移動部材及びシール部材を内部空間において移動可能に配置した外側部材を有する流路アセンブリである。また、本発明の一態様は、エアゾール再充填装置において設置部にエアゾールを設置し、移動部材をシール部材とともに内部空間において移動させることによって内部空間に流通する不燃液体をエアゾールの第1空間に再充填する不燃液体の再充填方法である。
【発明の効果】
【0008】
上記エアゾール再充填装置、流路アセンブリ及び不燃液体の再充填方法によれば、不燃液体と圧縮ガスとが隔離して収容されたエアゾールに不燃液体を再充填する際に異音が発生することを防止又は低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エアゾール再充填装置によって不燃液体が再充填されるエアゾールを示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエアゾール再充填装置を示す斜視図である。
図3図2の正面図である。
図4図1に係るエアゾール再充填装置の装置構成について示す概略図である。
図5図1のエアゾール再充填装置を構成する第1流路アセンブリを示す分解斜視図である。
図6図5に係る第1流路アセンブリの軸中心を通る断面図であって、移動部材がシール部材とともに上流側に位置する際を示す図である。
図7図5に係る第1流路アセンブリの軸中心を通る断面図であって、移動部材がシール部材とともに下流側に移動した際を示す図である。
図8図1のエアゾール再充填装置を構成する第2流路アセンブリを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
(エアゾール)
図1はエアゾール再充填装置1によって不燃液体が再充填されるエアゾール300を示す断面図である。本実施形態に係るエアゾール300は、図1に示すように内袋310と、缶体320と、を備える。
【0012】
内袋310には不燃液体を含む脱脂洗浄剤Lを収容可能な第1空間311を形成するように構成している。缶体320は、内袋310を収容可能に構成している。缶体320は、内袋310よりも外方において不燃液体と隔離して配置され、不燃液体を内袋310から排出させる圧縮ガスを不燃液体と隔離して収容する第2空間321を備える。
【0013】
本実施形態においてエアゾール300は、内袋310と缶体320の二重構造によって構成している。ただし、不燃液体を噴射剤と隔離して収容できれば、エアゾールの具体的な構造は二重構造だけでなく、その他の多重構造であってもよい。
【0014】
エアゾール300は、缶体320に噴射用バルブ340を備えた金属製のマウンテンキャップ330が内袋310を間に介在させてクリンチした密封構造となるように構成している。内袋310は、一例として金属箔、プラスチックフィルム、ゴム等によって構成することができる。クリンチした部位によって内袋310と缶体320とが密封される。
【0015】
缶体320と内袋310との間の第2空間321には圧縮ガスを充填している。圧縮ガスとしては窒素ガス、炭酸ガス、空気等の圧縮ガスやLPG、ジメチルエーテル、フロン等の液化ガスを用いることができる。
【0016】
一方、内袋310の第1空間311には噴射される散布物である不燃液体が充填される。アクチュエーターであるボタン350を押し下げて噴射用バルブ340を開口すると、第2空間321の圧縮ガスの圧力によって内袋310は押され、内容物である不燃液体を外部に噴射することができる。不燃液体は、霧状又は霧状より噴射角度の狭い棒状に噴射することができる。
【0017】
クリンチした部分は、内側をシールしているため、第2空間321の圧縮ガスが経時的に漏洩することが防止される。そのため、内圧が下がらず、安定して内容物である不燃液体の噴射、取り出しを行うことができる。
【0018】
エアゾール300の内袋310の第1空間311への不燃液体の再充填はエアゾール300のアクチュエータであるボタン350を取り外し、エアゾールに設けたステムを押し、バルブを開口させた状態で後述するポンプ等により圧入する。このとき、圧入の圧力はエアゾール内の噴射圧より高くする必要がある。
【0019】
(エアゾール再充填装置)
次に、本実施形態に係るエアゾール再充填装置1について説明する。図2はエアゾール再充填装置1を示す斜視図、図3図2の正面図、図4はエアゾール再充填装置1の装置構成について示す概略図である。
【0020】
エアゾール再充填装置1は、エアゾール300の内袋310の第1空間311に不燃液体を再充填する。エアゾール再充填装置1は、図3等を参照して概説すればタンク10と、長尺部材20と、流通部30と、設置部220と、を有する。エアゾール再充填装置1は、図4に示すようにレギュレータ170と、マスターバルブ180と、トグルスイッチ190と、逆止弁211、212と、を有する。以下、詳述する。
【0021】
(タンク)
タンク10は、不燃液体を貯留する貯留空間12を備え、長尺部材20が貯留空間12に挿入されて接続される。タンク10は、図3に示すように接続部11と、貯留空間12と、を備える。
【0022】
タンク10は、いわゆるペール缶のような中空の円筒形状によって構成している。ただし、不燃液体を収容できれば、缶の具体的な形状は上記に限定されない。上記以外にも一斗缶又は六面体等のような多面体によって構成してもよい。
【0023】
接続部11は、長尺部材20を接続できるように、一例としてタンク10の上部に設けている。ただし、長尺部材20を接続できれば、接続部11の位置は上記に限定されず、タンク10の側面に設けてもよい。
【0024】
貯留空間12は、タンク10の内部に形成された空間として構成している。貯留空間12には不燃液体としてフッ素系溶剤を収容することができる。不燃液体は、ハイドロフルオロオレフィン、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテルからなる群から1以上選択される。より具体的に言えば、不燃液体は、トランスまたはシス体の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,2,2,3,3,4ペンタフルオロシクロペンタン, 1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン,3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン,メチルノナフルオロブチルエーテル,メチルノナフルオロイソブチルエーテルおよびトランス-1,2ジクロロエチレンからなる群から1以上選択される。
【0025】
また、上記フッ素系溶剤の市販品としては、特に制限されないが、例えば、アモレアAS-300(旭硝子株式会社製)、S11(ダイキン工業株式会社製)、SOLVIA(株式会社ソルベックス製)、ガルデンSV110(ソルベイジャパン株式会社製)、ガルデンSV135(ソルベイジャパン株式会社製)、バートレル スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
(長尺部材)
長尺部材20は、不燃液体又は圧縮空気を流通可能に構成している。長尺部材20は、図4に示すように長尺部材21、22、23、24を備える。長尺部材21、22は、不燃液体を設置部220に流通可能な流路Pを形成する長尺部材に相当する。
【0027】
長尺部材21は、タンク10の貯留空間12に配置した流通部30を構成する第1外側部材50及び第2外側部材60と、流通部30を構成する外側部材130と、を接続するように設けている。長尺部材22は、流通部30を構成する外側部材130と設置部220とを接続するように設けている。
【0028】
長尺部材23は、図4に示すように圧縮空気製造装置Cから圧縮空気を流通するように流通部30を構成する外側部材160の外側部材130から遠い側の内部空間162とマスターバルブ180とを接続するように設けている。長尺部材24は、圧縮空気製造装置Cから圧縮空気を流通するように流通部30を構成する外側部材160の外側部材130に近い側の内部空間162とマスターバルブ180とを接続するように設けている。長尺部材21~24は、具体例としてホース等を挙げることができる。
【0029】
(流通部)
流通部30は、長尺部材20と接続される。流通部30は、図3に示すように流路アセンブリ40と、流路アセンブリ110と、を備える。流路アセンブリ40は、本明細書において第1流路アセンブリに相当し、流路アセンブリ110は第2流路アセンブリに相当する。
【0030】
(流路アセンブリ)
流路アセンブリ40は、図5に示すように第1外側部材50と、第2外側部材60と、軸部材70と、中間部材80と、シール部材91、92と、を備える。第1外側部材50及び第2外側部材60は、長尺部材20と接続され、不燃液体の流通が可能な内部空間52、62を形成する内壁面51、61、63を備える外側部材に相当する。第1外側部材50及び第2外側部材60は、貯留空間12に位置する長尺部材20の端部に配置される。軸部材70は、本明細書において移動部材に相当する。
【0031】
(外側部材)
第1外側部材50は、図6、7に示すように内壁面51と、内部空間52と、載置部53、54と、挿通部55と、ねじ部56と、を備える。
【0032】
内壁面51は、タンク10の貯留空間12に貯留された不燃液体を設置部220に向けて流通させる流通空間となる内部空間52を形成する。内壁面51は、本実施形態において円筒形状の内壁面として構成しているが、不燃液体を流通する空間を形成できれば、具体的な形状はこれに限定されない。
【0033】
載置部53は、図7に示すように軸部材70がシール部材91とともに内部空間52における下流側に移動した際に不燃液体が流通する第1流通空間を内部空間52に形成する。載置部53は、図6に示すように軸部材70がシール部材91とともに上流側に移動した際にシール部材91を載置してシール部位を形成する。
【0034】
載置部53は、本実施形態において図6等に示すように内壁面51よりも内径の小さい側壁面と当該側壁面に続く底面によって構成している。ただし、図7に示すようにシール部材91を下流側に配置した状態で第1外側部材に不燃液体の流通空間を形成し、図6に示すようにシール部材91を上流側に配置した状態でシール部位を形成できれば、載置部の具体的な形状は上記に限定されない。
【0035】
載置部54は、第1外側部材50において中間部材80を載置する部位として構成している。載置部54は、載置部53と同様に内壁面51よりも径の大きい側壁面と当該側壁面に続く底面によって構成している。ただし、中間部材80を設置できれば、載置部54の具体的な形状は上記に限定されない。
【0036】
挿通部55は、軸部材70の第2端部74における矩形の長辺部と略同じ大きさとなるように構成している。ねじ部56は、第1外側部材50の下流側に設けており、第2外側部材60のねじ部64と螺合可能に構成している。
【0037】
第2外側部材60は、図6、7に示すように内壁面61、63と、内部空間62と、ねじ部64と、を備える。
【0038】
内壁面61、63は、第1外側部材50と同様に内部空間62が流通部30において不燃液体が流通する第1流通空間となるように構成している。内壁面61は、内壁面63と異なる内径を備える。内壁面61は内壁面63よりも内径が大きくなるように構成している。ただし、流通部の内部空間に不燃液体の流通空間を形成できれば、内壁面61、63の具体的な寸法関係は上記に限定されない。
【0039】
内部空間62は、第1外側部材50と第2外側部材60とを接続した際に内部空間52と連通するように構成している。ねじ部64は、上述のように第1外側部材50のねじ部56と螺合可能に構成している。
【0040】
(移動部材)
移動部材に相当する軸部材70は、流通部30を構成する第1外側部材50の内部空間52及び第2外側部材60の内部空間62において移動可能に構成している。軸部材70は、内部空間52、62における位置の変化によって不燃液体の長尺部材20の流路Pへの流通を可能にする。軸部材70は、図6、7に示すように第1端部71と、当接部72と、円筒部73と、第2端部74と、を備える。
【0041】
第1端部71は、軸部材70の下流側において後述する中間部材80の挿通部81に挿通可能に構成している。第1端部71は本実施形態において円筒形状に構成している。ただし、内部空間52、62において移動可能にできれば、第1端部の具体的な形状は円筒形状に限定されない。上記以外にも例えば、断面が四角形の長尺の四角柱等の多角柱によって構成してもよい。
【0042】
当接部72は、中間部材80の当接部83と当接可能に構成し、これにより軸部材70の下流側における移動範囲を規定する。当接部72は断面が円形の円筒形状となるように構成し、円筒部73の先端側において円筒部73とは別に設けている。ただし、当接部83と当接して軸部材70の移動範囲を規定できれば、当接部72は円筒部73と別形状ではなく、一の形状として構成してもよい。
【0043】
円筒部73は、第1外側部材50の軸方向、言い換えれば長手方向(図6、7の縦方向)に移動できるように同方向に軸を有する円筒形状に構成している。円筒部73は、第1外側部材50の内壁面51と隙間を有するように構成している。これにより、シール部材91を載置部53に載置させず、図7に示すように軸部材70がシール部材91とともに下流側に位置した際に円筒部73と内壁面51との隙間から不燃液体を長尺部材20の流路Pに流通させることができる。
【0044】
第2端部74は、軸部材70の上流側において挿通部55に配置可能に構成している。第2端部74は、本実施形態において図5等に示すように断面が円形ではなく矩形によって構成している。ただし、挿通部55に配置できれば、具体的な形状はこれに限定されない。
【0045】
中間部材80は、第1外側部材50によって形成された載置部54に載置される。中間部材80は、第1外側部材50と第2外側部材60とが螺合した状態で第1外側部材50の載置部54と第2外側部材60によって挟持され、固定して設置される。
【0046】
中間部材80は、本実施形態において第1外側部材50と同様に略円筒形状に構成している。ただし、不燃液体が流通可能にできれば、具体的な形状は円筒形状に限定されない。中間部材80は、図6に示すように挿通部81と、流通孔82と、当接部83と、を備える。
【0047】
挿通部81は、円筒形状の略中央に設けられ、軸部材70の第1端部71を挿通可能に構成している。挿通部81は、本実施形態において第1端部71の形状に合わせて円筒形状に構成しているが、これに限定されない。上記以外にも第1端部の形状に合わせて長尺状の多面体等、図6,7以外の形状を採用することができる。
【0048】
流通孔82は、本実施形態において中間部材80の円筒形状の内部であって挿通部81よりも周辺側に設けた複数の孔によって構成している。流通孔82は、挿通部55から流入した不燃液体を設置部220に向けて流通できるように中間部材80の円筒形状において周方向に略等間隔でほぼ同じ大きさに構成している。ただし、挿通部55から流入した不燃液体を設置部220に向けて流通できれば、流通孔の数、形状、配置は図5に限定されない。
【0049】
当接部83は、軸部材70の当接部72と当接して軸部材70における下流側の移動範囲を規定する。当接部83は、本実施形態において挿通部81を設けた円筒形状に隣接した円筒形状を別途設けるように構成している。ただし、流通孔82から不燃液体を流路Pに流通でき、軸部材70の移動範囲を規定できれば、具体的な形状は上記に限定されない。当接部は挿通部81の形状によって構成してもよい。
【0050】
(シール部材)
シール部材91、92、93は、エアゾール再充填装置1において設置された部位にシール部位を形成する。シール部材91は、軸部材70の第2端部74の外壁面に取り付けられ、図6に示すように第1外側部材50の内部空間52において不燃液体のシール部位を形成する。シール部材91は、第1外側部材50の内部空間52において軸部材70とともに移動可能に配置している。
【0051】
シール部材91は、JIS K6258に準拠する重量変化率が30%以下のエラストマーによって構成している。シール部材91は、重量変化率が上記を充たすとともにASTM D297に準拠する比重が1.5以下のエラストマーであることが好ましい。なお、シール部材91の重量変化率は、以下のように求める。
【0052】
(不燃液体の浸漬前後における重量変化率)
エラストマーを2mm×5mm×5mmのサイズに切り出して試験片を得て、質量を測定する。次に、上記試験片を不燃液体に相当するフッ素系洗浄液としてシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン100ml中に40℃で1週間浸漬する。その後、試験片を取り出して、ウェスで洗浄液を拭き取り、試験片の質量を測定する。そして、以下の数式1によって浸漬前後の質量から重量変化率を算出する。
【0053】
重量変化率(%)=(B-A)/A×100 ・・・数式1
【0054】
数式1においてAは浸漬前の試験片の質量を示す。Bは、浸漬後の試験片の質量を示す。
【0055】
これにより、移動部材に相当する軸部材70が内部空間52を移動し、ポンプ用ピストン120が内部空間132を移動する際に異音が発生することを防止又は抑制することができる。
【0056】
シール部材91は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、カルボキシル化されたブタジエンゴム、カルボキシル化されたクロロプレンゴム、カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体 およびカルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体からなる群から1以上選択される。
【0057】
シール部材91は、より好ましくはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンからなる群から1以上選択される。
【0058】
シール部材92は、図6、7に示すように第1外側部材50のねじ部56と第2外側部材60のねじ部64の螺合部の近傍に配置している。これにより、ねじ部56とねじ部64の螺合部位近傍にシール部位を形成する。
【0059】
シール部材93は、図8に示すように流路アセンブリ110におけるポンプ用ピストン120の溝部122の外壁面に取り付けられる。シール部材93は、後述する外側部材130の内部空間132において不燃液体のシール部位を形成し、ポンプ用ピストン120とともに移動可能に配置している。ポンプ用ピストン120のシール部材93には外方からリング状の部材である包囲部材124を配置している。シール部材93は、後述する内部空間132に不燃液体を一時的に収容した状態で溝部122において不燃液体と接触可能に配置している。
【0060】
包囲部材124は、シール部材93とともに流路アセンブリ110を構成する外側部材130の内部空間132に充填された不燃液体がポンプ用ピストン120によって仕切られた内部空間132における逆側の空間に流通しないように規制する。
【0061】
シール部材92、93は、シール部材91と同様の材料によって構成することができる。
【0062】
(流路アセンブリ)
流路アセンブリ110は、図4に示すようにポンプ用ピストン120と、外側部材130と、連動ロッド140と、エア用ピストン150と、外側部材160と、を備える。ポンプ用ピストン120は、本明細書において移動部材に相当し、外側部材130は長尺部材20と接続され、不燃液体の流通が可能な内部空間132を形成する内壁面131を備えた外側部材に相当する。流路アセンブリ110は、不燃液体を圧送するポンプユニットとも呼ばれる。
【0063】
(移動部材)
ポンプ用ピストン120は、外側部材130の内部空間132において移動可能に構成している。ポンプ用ピストン120は、内部空間132における位置の変化によって不燃液体の流路Pへの流通を可能にする。ポンプ用ピストン120は、本体部材121と、包囲部材124と、を備えている。
【0064】
本体部材121は、外側部材130の内部空間132において移動可能に構成している。本体部材121は、外側部材130の断面形状と同様に断面を円形の略円筒形状として構成している。本体部材121は、本実施形態において2つの部材を組み合わせて(図示省略)、図8に示す断面形状を構成することができる。
【0065】
本体部材121には、図8に示すように溝部122と、取り付け部123と、を設けている。溝部122は、本体部材121の側面に設けている。溝部122は上述のようにシール部材93を設置している。
【0066】
取り付け部123は、エア用ピストン150に連動ロッド140を取り付ける部位として構成している。取り付け部123は、本実施形態において挿通穴として構成しているが、連動ロッドを取りつけることができれば、これに限定されず、取り付け部位の穴は挿通していなくてもよい。
【0067】
包囲部材124は、シール部材93の径方向に配置している。包囲部材124は、本実施形態において中空の円筒形状に構成している。包囲部材124は、本体部材121に取り付けたシール部材93の外方に配置した状態において外側部材130の内壁面131と摺動可能に構成している。これにより、長尺部材20の流路Pを介してタンク10から流通した不燃液体を内部空間132におけるエア用ピストン150側に流通しないようにできる。
【0068】
エア用ピストン150に連動してポンプ用ピストン120が外側部材160側に移動した場合、外側部材130の内部空間132には負圧がかかり、吸引力が生じる。後述する逆止弁211、212の作用で不燃液体はタンク10から吸い上げられ、内部空間132に流入する。
【0069】
上記とは逆にポンプ用ピストン120が外側部材160から離間した場合、内部空間132には正圧がかかり、逆止弁211、212によって不燃液体は設置部220に流通する。
【0070】
(外側部材)
外側部材130は、長尺部材20と接続され、不燃液体の流通が可能な内部空間132を形成する内壁面131を備える。外側部材130は、タンク10と設置部220との間に設けられる。外側部材130は、内壁面131と、内部空間132と、を備える。
【0071】
内壁面131は、ポンプ用ピストン120の移動によって内部空間132に一時的に収容された不燃液体を流路Pに流通可能な第2流通空間を形成する。内壁面131は、上述のように本体部材121の溝部122に配置したシール部材93の外方に位置する包囲部材124と摺動可能に構成している。内壁面131には、連動ロッド140を挿通させる挿通穴133を設けている。
【0072】
内部空間132は、内壁面131によって形成され、タンク10から流路Pを通じて流通する不燃液体を一時的に収容できるように構成している。
【0073】
連動ロッド140は、ポンプ用ピストン120とエア用ピストン150とを連結するように構成している。これにより、ポンプ用ピストン120は、エア用ピストン150の動作に連動して進退移動する。
【0074】
エア用ピストン150は、外側部材160の内部空間162において進退移動可能に構成している。エア用ピストン150は、ポンプ用ピストン120と同様に構成しているため、詳細な説明を省略する。
【0075】
外側部材160は、外側部材130と同様に内壁面161と、内部空間162と、挿通穴163と、を備える。外側部材130と同様の構成についての説明は省略する。
【0076】
内壁面161には、図4に示すようにエア用ピストン150の移動範囲を考慮して長尺部材23と長尺部材24とが接続されている。マスターバルブ180の制御によって長尺部材23から流体(圧縮空気)が流通すれば、エア用ピストン150は、外側部材130に接近するように動作する。反対にマスターバルブ180の制御によって長尺部材24の流路Pに流体が流通すれば、エア用ピストン150は外側部材130から離間するように動作する。
【0077】
圧縮空気製造装置Cは、エア用ピストン150を動作させるために外側部材160の内部空間162に流通させる圧縮空気を製造する。
【0078】
レギュレータ170は、圧縮空気の圧力を調節する。これにより、エアゾール300の内袋310の第1空間311に充填される不燃液体の量を調節できる。エアゾール300の内袋310の第1空間311に不燃液体を充填するためにはエアゾール300の内袋310にかかる圧力以上の圧力で注入を行う必要がある。エアゾール300の内圧と注入圧力が平衡になったとき、それ以上の注入はなされなくなる。
【0079】
圧縮空気製造装置Cによって製造された圧縮空気は、レギュレータ170を通過してマスターバルブ180の入力口181に接続される。また、圧縮空気は、レギュレータ170を通過後、分岐路からトグルスイッチ190の方に流通し、制御用入力口182に接続される。
【0080】
マスターバルブ180は、制御用入力口182に所定の圧力以上の圧縮空気が入力された場合、入力口181と出力口183とを連通するように構成している。マスターバルブ180は、制御用入力口182に圧縮空気が入力されない場合、入力口181と出力口184とを連通するように構成している。
【0081】
マスターバルブ180の出力口183は、長尺部材23を通じて外側部材160の内部空間162における外側部材130と離れた側に接続される。出力口184は、長尺部材24を通じて外側部材160の内部空間162における外側部材130と近い側に接続される。
【0082】
圧縮空気製造装置Cから供給される圧縮空気は、トグルスイッチ190の切り替えによって外側部材160の内部空間162におけるポンプ用ピストン120に近い側又は遠い側に流通する。これにより、エア用ピストン150の進退移動が可能になる。
【0083】
逆止弁211は、長尺部材21の流路Pに設置される。逆止弁211によって不燃液体は、タンク10から流路アセンブリ110の外側部材130に流通するものの、その逆には流通しないように構成している。逆止弁212は、逆止弁211と同様に不燃液体が流路アセンブリ110の外側部材130から設置部220に流通し、その逆に流れないように構成している。
【0084】
(設置部)
設置部220は、エアゾール300を設置可能に構成している。設置部220は、図3に示すように接続部221と、設置台222、223と、押し付け端部224、225と、レバー226と、を備える。
【0085】
接続部221は、長尺部材22の流路Pと接続可能に構成している。これにより、流路アセンブリ110を構成する外側部材130の内部空間132から流通する不燃液体は接続部221に流通する。接続部221は、エアゾール300のステムと密着係合できる形状に構成している。
【0086】
エアゾール300の缶体320のステムを接続部221に押し付けることによって密着した状態でエアゾール300の噴射用バルブ340を開くことができる。この状態が維持されることによってエアゾール300の内袋310の第1空間311と長尺部材22の流路Pとが連通した状態となる。
【0087】
設置台222、223は、エアゾール300の缶体320を設置できるように設けている。設置台222、223は、本実施形態において缶体との接触面を缶体の側面と同様に曲面にて構成している。ただし、エアゾール300の缶体320を安定して設置できれば、設置台222、223の接触面の形状は上記に限定されない。また、設置台の個数も上記に限定されない。
【0088】
押し付け端部224、225は、接続部221とエアゾール300のステムとが密着できるように押し付け力を付与する。押し付け端部224、225はエアゾール300の缶体320を両側から挟持できるように配置している。押し付け端部224、225は、互いに可動に構成することによって缶体320に対する位置を調整可能に構成している。ただし、缶体320に押し付け力を付与できれば、必ずしも両方の位置が調整できなくてもよい。押し付け端部は、少なくとも一方の位置が調整可能であればよい。
【0089】
レバー226は、押し付け端部224を設置した缶体320に対して接近離間できるように構成している。レバー226を回転させることによって押し付け端部224は缶体320に接近し、これにより押し付け端部224、225が缶体320を挟持した状態となる。
【0090】
(使用例)
次に本実施形態に係る再充填装置の使用方法について説明する。まず、トグルスイッチ190によって長尺部材24の流路Pを通じて外側部材160の内部空間162における外側部材130に近い側の空間に圧縮空気である流体を供給する。
【0091】
これにより、吸引力が発生し、流路アセンブリ40の軸部材70は図7に示すようにシール部材91とともに内部空間52を上昇するように移動する。貯留空間12の不燃液体は内部空間52、62を流通し、長尺部材21を通じて外側部材130の内部空間132に流入する。本明細書ではこの状態をスタンバイ状態と称する。エアゾール再充填装置1は、このスタンバイ状態で放置しておくことができる。
【0092】
次に、エアゾール300のアクチュエータであるボタン350を外し、エアゾール300の缶体320を設置台222、223に設置する。そして、レバー226を回転して押し付け端部224、225によってエアゾール300のステムを設置部220の接続部221に押し付けて密着させる。この状態でトグルスイッチ190を切り替えると、長尺部材23の流路Pを通じて流体が外側部材160の内部空間162の外側部材130から遠い側に流入する。これにより、エア用ピストン150が外側部材130に接近するように進退移動する。
【0093】
ポンプ用ピストン120は、連動ロッド140によってエア用ピストン150に連動してシール部材93とともに進退移動する。ポンプ用ピストン120の進退移動と逆止弁211、212によって内部空間132の不燃液体は長尺部材22の流路Pに流通し、設置部220の接続部221まで流通する。そして、不燃液体は接続部221からエアゾール300の内袋310の第1空間311に流入する。これにより、エアゾール300の第1空間311に不燃液体が再充填される。
【0094】
レバー226によって押し付け端部224、225の押し付けを解放し、トグルスイッチ190を切り替えれば、不燃液体のエアゾール300の第1空間311への注入を止めることができる。ボタン350を缶体320のステムに取り付けると、エアゾール300は、再使用可能な状態となる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態ではエアゾール300が内袋310と、缶体320と、を備える。内袋310は、不燃液体を含む脱脂洗浄剤Lを収容可能な第1空間311を含む。缶体320は、内袋310よりも外方において不燃液体と隔離して配置され、かつ不燃液体を内袋310から排出させる噴射剤を収容する第2空間321を含む。エアゾール再充填装置1は、エアゾール300において内袋310の第1空間311に不燃液体を再充填する。エアゾール再充填装置1は、設置部220と、長尺部材20と、第1外側部材50及び第2外側部材60と、軸部材70と、ポンプ用ピストン120と、外側部材130と、シール部材91、93と、を有する。設置部220は、エアゾール300を設置可能に構成している。長尺部材20は、不燃液体を設置部220に流通可能な流路Pを形成している。第1外側部材50、第2外側部材60及び外側部材130は、長尺部材20と接続され、不燃液体の流通が可能な内部空間52、62、132を形成する内壁面51、61、63、131を備えている。軸部材70は、内部空間52において、ポンプ用ピストン120は内部空間132において移動可能に構成し、内部空間52、132における位置の変化によって不燃液体の流路Pへの流通を可能に構成している。シール部材91は、軸部材70の外壁面に取り付けられ、内部空間52において不燃液体のシール部位を形成する。シール部材93はポンプ用ピストン120の外壁面に取り付けられ、内部空間132において不燃液体のシール部位を形成する。シール部材91、93は、JIS K6258に準拠する重量変化率が30%以下のエラストマーとなるように構成している。
【0096】
このように構成することによって、軸部材70又はポンプ用ピストン120が内部空間52、132において移動した際に流通部30においてシール部材91、93による異音の発生を防止又は低減することができる。
【0097】
また、シール部材91、93は、ASTM D297に準拠する比重が1.5以下のエラストマーとなるように構成することによって、より一層、上述した異音の発生を防止又は低減することができる。
【0098】
シール部材91、93に用いられるエラストマーは特に限定されない。ただし、例示としてEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、カルボキシル化されたブタジエンゴム、カルボキシル化されたクロロプレンゴム、カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体 およびカルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体等が挙げられる。エラストマーを上記のように構成することによって、上述した異音の発生を防止又は低減することができる。
【0099】
また、シール部材91、93に用いられるエラストマーは、上述した材料の中でもEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合)、EPM(エチレン・プロピレン共重合)、ブチルゴムおよびポリイソブチレン、SBR、天然ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン等が好ましく用いられる。このように構成することによって、上述した異音の発生を防止又は低減することができる。
【0100】
また、不燃液体はフッ素系溶剤として構成することによって、シール部材91、93は上述した異音の発生を好適に防止又は低減することができる。
【0101】
また、上述したフッ素系溶剤は特に限定されない。ただし、例示として例えば、ハイドロフルオロオレフィン、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテルからなる群から1以上選択される化合物が挙げられる。より具体的には、トランスまたはシス体の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,2,2,3,3,4ペンタフルオロシクロペンタン,1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン,3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン,メチルノナフルオロブチルエーテル,メチルノナフルオロイソブチルエーテルおよびトランス-1,2ジクロロエチレンからなる群から1以上選択される。このように構成することによって、シール部材91、93は上述した異音の発生を好適に防止又は低減することができる。
【0102】
エアゾール再充填装置1は、不燃液体を貯留する貯留空間12を備え、長尺部材20が貯留空間12に挿入されて接続されるタンク10を有する。第1外側部材50及び第2外側部材60は、貯留空間12に位置する長尺部材21の端部に配置される。第1外側部材50は、載置部53を備える。載置部53は、軸部材70がシール部材91とともに内部空間52における下流側に移動した際に不燃液体が流通する第1流通空間を形成し、かつ軸部材70がシール部材91とともに上流側に移動した際にシール部材91を載置してシール部位を形成する。
【0103】
このように構成することによって、軸部材70が内部空間52において移動した際に流通部においてシール部材91による異音の発生を防止又は低減することができる。
【0104】
また、エアゾール再充填装置1は、上述したタンク10を有する。移動部材は、内部空間132において移動可能に配置され、側面に溝部122を設けたポンプ用ピストン120を備える。外側部材130は、タンク10と設置部220との間に設けられ、内部空間132においてタンク10から長尺部材20の流路Pを通じて流通する不燃液体を一時的に収容する。外側部材130は、ポンプ用ピストン120の移動によって内部空間132に一時的に収容された不燃液体を長尺部材20の流路Pに流通可能な第2流通空間を形成する内壁面131を備える。シール部材93は、第2流通空間に不燃液体を一時的に収容した状態で溝部122において不燃液体と接触可能に構成される。
【0105】
このように構成することによって、内部空間132に不燃液体が一時的に収容されている間にシール部材93が不燃液体と接触して異音を発生することを防止又は低減することができる。
【0106】
また、流路アセンブリ40は、エアゾール再充填装置1の軸部材70の第2端部74の外壁面にシール部材91が取り付けられ、流路アセンブリ110は、エアゾール再充填装置1のポンプ用ピストン120の溝部122の外壁面にシール部材93が取り付けられる。流路アセンブリ40の軸部材70及びシール部材91は、第1外側部材50の内部空間52において移動可能に配置している。流路アセンブリ110のポンプ用ピストン120及びシール部材93は、外側部材130の内部空間132において移動可能に配置している。流路アセンブリ40、110をこのように構成することによって、軸部材70及びポンプ用ピストン120が移動する際に異音の発生を防止又は低減することができる。
【0107】
また、エアゾール300の再充填方法では設置部220にエアゾール300を設置する。そして、軸部材70をシール部材91とともに内部空間52において移動させ、ポンプ用ピストン120をシール部材93とともに内部空間132において移動させる。これによって内部空間52、132に流通する不燃液体をエアゾール300の第1空間311に再充填するように構成している。このように構成することによって、上記と同様に軸部材70及びポンプ用ピストン120が移動する際の異音の発生を防止又は低減することができる。
【0108】
次に実施例について以下に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるわけではない。
【0109】
<Oリングの準備>
まず本試験に用いるOリングは、表1に示すOリングa~gである。不燃液体浸漬前後における重量変化率、比重については次の通り求めた値である。
【0110】
・不燃液体浸漬前後における重量変化率測定について
Oリングa~gを2mm×5mm×5mmのサイズに切り出して試験片を得て、質量を測定した。次に、上記試験片を脱脂洗浄剤Lに相当するフッ素系脱脂洗浄剤としてシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン100ml中に40℃で1週間浸漬した。その後、試験片を取り出してウェスで洗浄液を拭き取り、試験片の質量を測定した。そして、上述した数式1によって浸漬前後の試験片の質量から重量変化率を算出した。
【0111】
・比重測定について
ASTM D297に準拠してOリングa~gの比重を測定した。
【0112】
【表1】
【0113】
<異音発生確認試験>
以下ではエアゾール再充填装置1において不燃液体を吸い上げる吸い上げ口、すなわち流路アセンブリ40を構成するシール部材91として前記Oリングa~gを用いて試験を行った。試験は、タンク10に相当する一斗缶内に収容したシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに流路アセンブリ40を24時間浸漬させた。その後、エアゾール再充填装置1を動作させ、人の耳により異音の発生有無を確認した。異音が発生しなかったものを○で表示し、発生したものを×で表示する。結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例1~6は、表1、2に示すように不燃液体の浸漬前後における重量変化率が30%以下であり、比重が1.5以下のエラストマーから構成されるOリングa~fを用いており、比較例1に係るOリングgのみが上記条件を充たしていない。このように重量変化率と比重が上記条件を充たす実施例1~6では異音が発生せず、比較例1のみで異音が発生することが確認できた。
【0116】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。ポンプ用ピストン120は、圧縮空気製造装置Cから圧縮空気が供給され、エア用ピストン150及び連動ロッド140の動作に連動して動作すると説明したが、これに限定されない。ポンプ用ピストン120は、圧縮空気以外にも油圧や電動で動作するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 エアゾール再充填装置、
10 タンク、
12 貯留空間、
20 長尺部材、
40 流路アセンブリ(第1流路アセンブリ)、
50 第1外側部材(外側部材)、
51 内壁面、
52 内部空間、
53 載置部、
60 第2外側部材(外側部材)、
61、63 内壁面、
62 内部空間、
70 軸部材(移動部材)、
91、93 シール部材、
110 流路アセンブリ(第2流路アセンブリ)、
120 ポンプ用ピストン(移動部材)、
130 外側部材、
131 内壁面、
132 内部空間、
220 設置部、
300 エアゾール、
310 内袋、
311 第1空間、
320 缶体、
321 第2空間、
L 不燃液体を含む脱脂洗浄剤、
P 流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8