(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】金属用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230621BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230621BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/65
C09D133/00
(21)【出願番号】P 2019166512
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】四ツ▲柳▼ 雄太
(72)【発明者】
【氏名】千崎 卓美
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203298(JP,A)
【文献】特開2001-172576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
101/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)球状のポリエチレン樹脂粒子、及び(B)バインダー樹脂を含む金属用塗料組成物であって、
前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子は、平均粒子径が1.0μm以上20.0μm以下であり、
前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子の含有量は、前記金属用塗料組成物中の固形分100質量部に対し、0.01質量部以上2.5質量部未満であ
り、
金属ファスナー用又はアルミサッシ部材用である、金属用塗料組成物。
【請求項2】
前記(B)バインダー樹脂はアクリル樹脂である、請求項1に記載の金属用塗料組成物。
【請求項3】
前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子は真球微粒子である、請求項1又は2に記載の金属用塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料は、一般的に被塗布体表面に意匠性を付与し、又はその表面を保護する目的で使用される。意匠性の付与としては、色、艶、模様、光沢等の付与が挙げられる。表面を保護する目的としては、耐候性、耐水性、耐摩耗性等を向上させる目的が挙げられる。
【0003】
良好な塗膜外観が求められる金属製の部材には、耐摩耗性等の塗膜物性の向上に加えて、高い意匠性が求められる場合がある。特許文献1には、金属素材との密着性に優れ、高い表面硬度および良好な光沢を付与できる塗料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファスナーはアパレル分野を中心に多くの用途で使用されている。ファスナーは、布テープ、エレメント(務歯)、スライダー(開閉部分)の3つの部材から構成される。ファスナーを構成する金属部材には、スライダーによる開閉操作時に生じる摩擦に対する耐摩耗性に加え、高い意匠性が要求される。
【0006】
耐摩耗性を向上させる充填剤の含有量を多くすると、耐摩耗性は向上するものの、充填剤が塗膜表面に露出しやすくなり、光沢が失われやすくなるという課題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性が高く、かつ、意匠性(高光沢性)を有する塗膜を金属表面に形成できる金属用塗料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本明細書において、耐摩耗性とは、摩耗の生じにくさを示す特性である。耐摩耗性が高いほど、摩耗が生じにくいことを意味する。
本明細書において、光沢性が高いとは、JIS Z 8741に準拠して、鏡面光沢計を用いて測定したときの60°でのグロスが300以上である特性を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1](A)球状のポリエチレン樹脂粒子、及び(B)バインダー樹脂を含む金属用塗料組成物であって、前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子は、平均粒子径が1.0μm以上20.0μm以下であり、前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子の含有量は、前記金属用塗料組成物中の固形分100質量部に対し、0.01質量部以上2.5質量部未満である、金属用塗料組成物。
[2]前記(B)バインダー樹脂はアクリル樹脂である、[1]に記載の金属用塗料組成物。
[3]前記(A)球状のポリエチレン樹脂粒子は真球微粒子である、[1]又は[2]に記載の金属用塗料組成物。
[4]金属ファスナー用である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の金属用塗料組成物。
[5]アルミサッシ部材用である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の金属用塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い摩耗性と意匠性(高光沢性)とを有する塗膜を金属表面に形成できる金属用塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
【0012】
<金属用塗料組成物>
本実施形態の金属用塗料組成物は、(A)球状のポリエチレン樹脂粒子、及び(B)バインダー樹脂を含む。以下、各成分について説明する。
【0013】
≪(A)成分≫
(A)成分は、球状のポリエチレン樹脂粒子である。ポリエチレン樹脂粒子の平均粒子径は、1.0μm以上20.0μm以下である。平均粒子径の下限値は、1.1μmが好ましく、1.5がより好ましく、2.0が特に好ましい。平均粒子径の上限値は、19μmが好ましく、18μmがより好ましく、17μmが特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0014】
本実施形態で使用するポリエチレン樹脂粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により測定できる。例えば、マイクロトラックMT3000を使用し、水に分散させて測定した値を用いればよい。
【0015】
本実施形態において、(A)成分はポリエチレン真球微粒子であることが好ましい。
本実施形態において、真球微粒子とは、平均真球度が0.85以上の微粒子をいう。
【0016】
真球度は、光学顕微鏡でポリエチレン樹脂粒子を観察することにより測定する。
まず、ポリエチレン樹脂粒子の略中心を通る、最も長い径(長径)と最も短い径(短径)を求め、その比(短径/長径)を真球度とする。
【0017】
本実施形態においては、100個の粒子を観察して、その平均値を平均真球度とする。平均真球度は、0.9以上が好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0018】
本実施形態において、(A)成分として使用できる市販材料としては、森村ケミカル株式会社製の商品名;SB-25、SB-70、SB-150、三井化学株式会社製の商品名:ミペロンPM-200、商品名:ケミパールWシリーズなどが挙げられる。
【0019】
(A)成分の含有量は、金属用塗料組成物中の固形分100質量部に対し、0.01質量部以上2.5質量部未満である。含有量の下限値は、0.02質量部が好ましく、0.03質量部がより好ましく、0.04質量部が特に好ましい。含有量の上限値は、2.4質量部が好ましく、2.3質量部がより好ましく、2.2質量部が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0020】
(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、塗膜に高い耐摩耗性を付与できる。また、(A)成分の含有量が2.5質量部未満(又は上記上限値以下)であると、塗膜の過度な硬化を抑制できる。このため、塗膜が脆くなることに起因する耐摩耗性の低下を抑制できる。
【0021】
本実施形態においては、ポリエチレン樹脂粒子を使用しているため、公知のウレタン系樹脂粒子やアクリル系樹脂粒子を添加した場合よりも高い耐摩耗性を塗膜に付与できる。
【0022】
また、球状のポリエチレン樹脂粒子を使用すると、塗膜中への充填率を向上させることができるため、塗膜の耐摩耗性を向上させることができる。
さらに、球状のポリエチレン樹脂粒子は表面が平滑であるため、高い光沢度を塗膜に付与できる。真球状のポリエチレン樹脂微粒子を使用した場合には、これら効果がより顕著に発揮される。
【0023】
≪(B)成分:バインダー樹脂≫
バインダー樹脂としては、塗料に用いられるバインダー樹脂であれば特に制限されず、1液型であってもよいし、2液型であってもよい。
2液型のバインダー樹脂としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、アルキッド樹脂などの主剤と、イソシアネート化合物などの硬化剤とを含む2液型のウレタン樹脂などが挙げられる。
本実施形態において、(B)成分はアクリル樹脂であることが好ましい。
本実施形態に用いるアクリル樹脂としては、モノマー成分として、(a)カルボキシル基含有モノマーと、(b)アルキル(メタ)アクリレートと、(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、(d)不飽和2重結合含有モノマーを1種単独で使用できまたは2種以上を含む共重合体であることが好ましい。
【0024】
(a)カルボキシル基含有モノマー
カルボキシル基含有モノマーとしては公知のものを使用できる。
本実施形態においては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの、分子内にカルボキシル基および重合性2重結合を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸などが好ましい。
【0025】
(b)アルキル(メタ)アクリレート
アルキル(メタ)アクリレートとしては公知のものを使用できる。
本実施形態においては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの置換基を有することのある炭素数1~18の鎖状アルキルと(メタ)アクリル酸とのエステル類が挙げられる。
【0026】
また、ボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキルと(メタ)アクリル酸とのエステル類が挙げられる。
また、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキルと(メタ)アクリル酸とのエステル類などが挙げられる。
【0027】
(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては公知のものを使用できる。
本実施形態においては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルなどが挙げられる。
【0028】
カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルは市販されている。市販品としては、例えば、プラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(いずれも商品名、ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
(d)不飽和2重結合含有モノマー
不飽和2重結合含有モノマーとしては公知のものを使用できる。
本実施形態においては、例えば、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0030】
アクリル樹脂は、公知の方法に従って製造できる。
本実施形態においては、例えば、溶剤中において重合開始剤の存在下で加熱しながら、上記(a)~(d)のモノマー化合物を1種または2種以上を重合させることによってアクリル樹脂が得られる。
ここで溶剤としては、たとえば、ジオキサン、セロソルブアセテートなどの活性水素を含まない溶剤を好ましく使用できる。溶剤の使用量は特に制限されず、モノマー化合物の種類、使用量などに応じて、重合反応が円滑に進行しかつ生成するアクリル樹脂の反応系からの単離・精製操作が容易な量を適宜選択すればよい。
【0031】
重合開始剤としては公知のものを使用できる。
本実施形態においては、例えば、アゾ化合物、ジスルフィド化合物、スルフィド化合物、スルフィン化合物、ニトロソ化合物、パーオキサイド化合物などが挙げられる。これらの中でも、アゾ化合物が好ましい。アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。重合開始剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0032】
重合開始剤の使用量は特に制限されない。
本実施形態においては、モノマー化合物の種類、重合開始剤自体の種類、使用量などに応じて、重合反応が円滑に進行しかつ目的の重量平均分子量のアクリル樹脂を得ることが出来る量を適宜選択すればよい。本実施形態においては、モノマー化合物の合計量100重量部に対して0.01~3重量部とすることが好ましい。
【0033】
重合開始剤は、重合反応の進行状況に応じ、時間の間隔を空けて数回程度に分割して重合反応系に添加してもよい。重合反応は、好ましくは溶剤の還流温度下に行われ、3~20時間程度、好ましくは3~8時間程度で終了する。
【0034】
≪任意成分≫
本実施形態の金属用塗料組成物は、任意成分として硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤としては、イソシアネート硬化剤が好適に使用できる。
【0035】
(イソシアネート硬化剤)
イソシアネート硬化剤としては公知のものを使用できる。
たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
また、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1、4-シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
【0037】
また、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
また、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体などが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
また、ジシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートが好ましい。
また、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが好ましい。
さらに、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体などが好ましい。
【0040】
また、イソシアネート化合物のイソシアネート基の1部または全部をブロック化剤によってブロック化したブロックイソシアネート化合物を使用してもよい。
【0041】
その他の任意成分としては、レベリング性向上のための表面調整剤の他、酸化防止剤、ラジカル補足剤、可塑剤、顔料沈降防止剤など、通常の塗料に用いられる添加剤や、染料、顔料を適量含んでいてもよい。
【0042】
≪溶剤≫
金属用塗料組成物は、必要に応じて各種溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン系溶剤;エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。
溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<金属用塗料組成物の製造方法>
本実施形態の金属用塗料組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、任意成分、及び溶剤を、特定の割合で混合することにより製造できる。
本実施形態においては、(B)成分、任意成分及び溶剤を混合したベース塗料組成物をあらかじめ調整し、ベース塗料組成物に(A)成分を添加することが好ましい。
【0044】
<用途>
本実施形態の金属用塗料組成物は、金属ファスナー用であることが好ましい。
金属ファスナーを構成する、エレメント(務歯)とスライダー(開閉部分)を、本実施形態の金属用塗料組成物を用いて塗装すると、スライダーによる開閉操作時に生じる摩擦に対する耐摩耗性に加え、高い意匠性を備えたファスナーを製造できる。
【0045】
本実施形態の金属用塗料組成物は、アルミサッシ部材用であることが好ましい。
アルミサッシ部材は、主に、窓ガラス等の周囲に装着されるアルミニウムを含む軽金属製の窓枠材である。本実施形態の金属用塗料組成物を用いて塗装すると、窓の開閉操作時に生じる摩擦に対する耐摩耗性に加え、高い意匠性を備えたアルミサッシ部材を製造できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0047】
<金属用塗料組成物の製造>
まず、ベース塗料組成物を調整した。
バインダー樹脂として160質量部のアクリル樹脂(DIC社製、アクリディックA-860)と、25質量部の硬化剤(イソシアネート、DIC社製、バーノックDN-981)と、3質量部のレベリング剤(ビックケミー社製、BYK-330)と、80質量部の酢酸ブチルとを混合し、ベース塗料組成物を調製した。ベース塗料組成物の固形分濃度は、37質量%であった。
【0048】
得られたベース塗料組成物に、下記表1~2に示すポリエチレン樹脂粒子を、下記表1~2に示す配合量で添加し、金属用塗料組成物を製造した。下記表1~2に示すポリエチレン樹脂粒子の添加量は、前記金属用塗料組成物中の固形分100質量部に対する含有量である。
【0049】
<金属用塗料組成物の評価>
≪試験片の製造≫
得られた金属用塗料組成物を金属板(真鍮板)に塗装し、100℃で30分間乾燥させた。乾燥後の塗布膜厚は10μmとした。
【0050】
≪光沢試験≫
得られた試験片について、60°の光沢度をJIS Z 8741に準拠して、鏡面光沢計(BYK-Gardner社製、「マイクロ-トリ-グロスμ」)を用いて測定した。
光沢度は数値が大きいほど光沢が高いことを示す。得られた光沢度を、下記の評価基準によって判定し、評価した。その結果を下記表1~2に記載する。
(評価基準)
〇:60°でのグロスが400以上。
△:60°でのグロスが300以上400未満。
×:60°でのグロスが300未満。
【0051】
≪摩耗性試験≫
得られた試験片を平面摩擦試験機(株式会社大栄科学精器製作所製「PA-2A」)に設置し、摩耗材としてガラス棒を用いて、荷重500g、作動幅1.2cm、スピード1.2cm/秒の条件で試験片表面を10往復擦る摩耗試験を行った。摩擦試験後の試験片の塗膜の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。その結果を下記表1~2に記載する。
(評価基準)
〇:塗膜に欠けが無い。
△:塗膜に長さが2mm以下の欠けが1か所見られる。
×:塗膜に欠けが2か所以上みられる。
【0052】
【0053】
【0054】
上記表1~2中、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
上記表1~2中、(A)-1~(A)-4は、下記の材料を意味する。
(A)-1:平均粒子径2.5μmの球状のポリエチレン樹脂粒子。森村ケミカル社製、SB-25パウダー。
(A)-2:平均粒子径7.0μmの球状のポリエチレン樹脂粒子。森村ケミカル社製、SB-70パウダー。
(A)-3:平均粒子径15.0μmの球状のポリエチレン樹脂粒子。森村ケミカル社製、SB-150パウダー。
(A)-4:平均粒子径5.0μmの不定形のポリエチレン樹脂粒子。ビックケミー・ジャパン社製、CERAFLOUR991。
【0055】
上記表1~2に示した通り、実施例1~12は、高い光沢度と高い耐摩耗性を両立していた。一方、球状のポリエチレン樹脂粒子を含まない比較例1~4は、高い光沢度と摩耗性を両立できていなかった。また、球状のポリエチレン樹脂粒子の含有量が過剰な比較例5~7は、塗膜が硬くなりすぎたために脆くなり、摩耗性が低い結果となった。