IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社北九州メディアシステムの特許一覧

<>
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図1
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図2
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図3
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図4
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図5
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図6
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図7
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図8
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図9
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図10
  • 特許-分離可能な冷却器具ならびに冷却方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】分離可能な冷却器具ならびに冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 9/00 20060101AFI20230621BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230621BHJP
   F25D 17/02 20060101ALI20230621BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F25D9/00 B
F25D11/00 101G
F25D17/02 301
F25D19/00 510D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019072331
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020169775
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519123847
【氏名又は名称】有限会社北九州メディアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】中山 康廣
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217577(JP,A)
【文献】特開昭57-174670(JP,A)
【文献】特開2016-080234(JP,A)
【文献】実開平03-034581(JP,U)
【文献】特開2016-217578(JP,A)
【文献】特開2008-025858(JP,A)
【文献】特開2000-205612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0319386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒循環機構を備え,上端に蓋を有する箱状の保冷用器具と,
前記冷媒循環機構に分離可能に接続される冷却装置と,
からなる冷却システムであって,
前記保冷用器具が,
対象物を保存するための保存用空間と,
前記保存用空間と隔離されており,底面ならびに横四方側面に配置される冷却用空間と,
からなり,
前記冷却用空間は,
液体又は流動体の冷媒で充填されるとともに,
前記冷却装置から供給されるフロンガスが通過するための金属製の器具用冷媒循環路を備え,
前記冷却装置が,
フロンガスを圧縮するためのコンプレッサと,
フロンガスを凝縮・液化するためのコンデンサと,
金属製の装置用冷媒循環路と,
を少なくとも備え,
さらに,装置用冷媒循環路と,器具用冷媒循環路が,断熱性フレキシブルホースにより分離可能に接続されており,
フロンガスが,装置用冷媒循環路を通じ器具用冷媒循環路内で気化することにより,前記保冷用器具の冷却が可能となることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
液体又は流動体の冷媒が,水である請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
金属製の器具用冷媒循環路が,少なくとも銅を成分として含む金属製材料からなる請求項1又は2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,分離可能な冷却器具ならびに冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち運び可能な冷却器具として,クーラーボックスが汎用されている。
すなわち,クーラーボックスは,厚みを持った断熱性の高い素材からなる箱型の容器であり,通常は,内部に保冷剤や氷などを入れることにより,冷却器具として用いられるものである。
【0003】
クーラーボックスは,持ち運びが可能であり,一定時間,保冷が可能である点において有用である。
しかるに,クーラーボックスそのものは,基本的には断熱機能を有するのみであり,冷却機能を有するものではない。加えて,クーラーボックスの内部は,一定程度の保冷剤や氷などを加える必要があるため,容量そのものが限定的である。
これらの点から,保冷機能を長持ちさせるための技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-137136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術をはじめとして,クーラーボックスについては,保冷機能や冷却機能をクーラーボックスに持たせたり,保冷機能を長持ちさせたりすることが技術の潮流であった。
しかるに,かかる技術では,限界があると発明者は感じていた。
すなわち,クーラーボックスそのものに保冷機能等を持たせるとすると,クーラーボックスに機械的な機構が必要となり,構成が複雑かつ高価になってしまうとともに,機能を発揮させるための動力が必要となるため,携帯性を損なってしまいかねない。
加えて,保冷機能を長持ちさせる場合も,そのための機械的な機構が必要となるため,構成が複雑かつ高価となりがちである。
【0006】
上記事情を背景として,本発明では,新たなクーラーボックスの開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は,鋭意研究の結果,クーラーボックス内部に動力を必要としない冷却機構を設け,これに分離可能な形の冷却装置を接続することにより,携帯性と保冷機能を高めたクーラーボックスに想到し,発明を完成させたものである。
【0008】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,冷媒循環機構を備えた保冷用器具と,前記冷媒循環機構に分離可能に接続される冷却装置とからなることを特徴とする冷却システムである。
【0009】
本発明の第二の構成は,前記保冷用器具が,対象物を保存するための保存用空間と,前記保存用空間と隔離された冷却用空間とを少なくとも含む第一の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第三の構成は,前記保存用空間の外周に前記冷却用空間が配置されている第二の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第四の構成は,前記保冷用器具が,箱状に形成されている第一から第三の構成に記載の冷却システムである。
【0010】
本発明の第五の構成は,前記冷媒循環機構が,前記冷却用空間に配置されており,前記冷却装置に分離可能に接続され,前記冷却装置から供給される第一冷媒が通過するための器具用冷媒循環路と,前記器具用冷媒循環路の近傍の前記冷却用空間内に充填される第二冷媒とからなる第二から第四の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第六の構成は,前記第一冷媒が,冷媒ガスである第五の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第七の構成は,前記冷媒ガスが,フロンガスである第六の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第八の構成は,前記第二冷媒が,水である第五の構成に記載の冷却システムである。
【0011】
本発明の第九の構成は,前記冷却装置が,前記第一冷媒を圧縮するためのコンプレッサと,前記第一冷媒を凝縮・液化するためのコンデンサと,前記器具用冷媒循環路に接続され,前記第一冷媒を循環させるための装置用冷媒循環路とを少なくとも備え,前記第一冷媒が,前記保冷用器具における前記器具用冷媒循環路内で気化することにより,前記保冷用器具の冷却が可能となる第五から第八の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第十の構成は,前記器具用冷媒循環路又は/および前記装置用冷媒循環路が,金属製の管から構成される第九の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第十一の構成は,前記金属製の管が,少なくとも銅を成分として含む材料からなる第十の構成に記載の冷却システムである。
【0012】
本発明の第十二の構成は,前記器具用冷媒循環路と前記装置用冷媒循環路が,さらに中間冷媒循環路部材によって接続されている第九から第十一の構成に記載の冷却システムである。
本発明の第十三の構成は,前記中間冷媒循環路部材が,断熱性を有するフレキシブルホースである第十二の構成に記載の冷却システムである。
【0013】
本発明の第十四の構成は,第一から第十三の構成に記載の冷却システムの使用方法であって,一の前記冷却装置に対し,二以上の前記保冷用器具を入れ替え冷却し使用してなることを特徴とする冷却システムの使用方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により,新たなクーラーボックスの提供が可能となった。
すなわち,本発明の冷却システムにより,冷却のための動力を独立した外部装置に備えることで,動力が不要であり,かつ,保冷機能を備えた保冷用器具を提供しうる。かかる保冷用器具は,クーラーボックスとしての使用が可能であり,これにとどまらず,保冷用器具における保冷能力を調整することにより,様々な用途で用いることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における冷却システムの構成を示す概念図である。
図2】本発明の一実施形態における冷却システムの構成を一部破断して示した側面図である。
図3】本発明の一実施形態における冷却システムを構成する保冷用器具を一部破断して示した側面図である。
図4】本発明の一実施形態における冷却システムを構成する冷却装置を示す図((a)は側面図,(b)は平面図)である。
図5】本発明の一実施形態における実際の形状により近い冷却システムの外観構成を示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態における実際の形状により近い冷却システムを構成する保冷用器具の蓋および外装を示す図((a)は蓋の平面図,(b)は外装の平面図)である。
図7】本発明の一実施形態における実際の形状により近い冷却システムを構成する保冷用器具の保冷庫を示す図((a)は平面図,(b)は側面図)である。
図8】本発明の冷却システムの試作例を示す図である。
図9】本発明の冷却システムの試作例における冷却管(器具用冷媒循環路)の様子を示す図である。
図10】本発明の冷却システムの試作例の冷却機能評価を行った結果を示す図である(試作例評価結果A~C)。
図11】本発明の冷却システムの試作例の冷却機能評価を行った結果を示す図である(試作例評価結果D)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<I.発明の要旨>>
本発明の冷却システム等について説明する。
【0017】
本発明の冷却システムは,冷媒循環機構を備えた保冷用器具と,前記冷媒循環機構に分離可能に接続される冷却装置とからなることを特徴とする。
すなわち,本発明の冷却システムにおいては,冷却装置からの冷媒循環により,保冷用器具の内部が冷却される。また,冷却後の保冷用器具を,冷却装置から分離して使用することができる。そして,これにより,動力を必要としない保冷用器具として使用することが可能となる。加えて,冷却装置は,冷却が完了した保冷用器具とは異なる保冷用器具を冷却することが可能となり,一つの冷却装置に対して,複数の保冷用器具を用いることができる。
【0018】
保冷用器具は,冷媒循環機構を備える限り,特に限定されるものではなく,種々の形状ないし構成のものとすることができる。
保冷用器具は,典型的には,図8aからcに示すような箱状(ボックス状)のものとすることができるが,これに限定されるものではなく,使用目的や使用態様により,種々の形状のものとすることができる。そして,冷媒循環機構は,かかる形状に対応した冷媒循環機構とすることができる。
また,保冷用器具の構成の一例として,真空となった内部に超高密度ウレタンが充填された外装の内側に,熱伝導度の高いアルミニウム製の保冷庫が備えられた構成とすることができる。
【0019】
保冷用器具は,使用目的や使用態様により,その保冷能力を調整することができる。
すなわち,保冷用器具としての大きさ,素材,密閉性,冷媒循環路,用いる冷媒など,これら種々の要素を調整・変更することにより,保冷用器具としての最低冷却温度や保冷期間を調整することができる。
例えば,日帰り釣りの魚冷却のための使用を目的とした場合,最低保冷温度を-20℃,保冷期間を12時間程度とすることができる。また,長距離輸送トラックによる輸送コンテナとしての使用を目的とした場合,冷蔵品であれば最低保冷温度を-4℃,冷凍品であれば最低保冷温度を-20℃,いずれも保冷期間を3日程度とすることができる。
このように,使用目的に応じて,保冷用器具としての最低冷却温度や保冷期間を調整することにより,経済性を考慮した合理的な調整を行うことができる。
【0020】
保冷用器具は,対象物を保存するための保存用空間と,前記保存用空間と隔離された冷却用空間とを少なくとも含むことが好ましい。かかる好ましい構成によれば,保存用空間と冷却用空間が独立して存在することとなり,冷却能力の向上ならびに維持が容易になるという効果が得られる。
かかる場合は,典型的には図2図3に示すように,直方体状に構成された保存用空間と,保存用空間の底面ならびに横四面を囲み隔離されて構成された冷却用空間とを少なくとも含む構成とすればよい。なお,かかる構成は一例に過ぎず,例えば,保冷能力を若干落とし,経済性を向上させるなどの目的で,直方体状の保存用空間の底面のみに冷却用空間を設けたりなどすることもできる。
【0021】
保冷用器具は,当然のことではあるが,保存用空間にモノを入れるための入り口を有する。かかる場合,典型的には,図2図3図8bに示すように,蓋を設ければよいが,蓋を二重にするなどすることもできる。例えば,保冷用器具を箱状のものとしたうえで,一番外側に断熱性の蓋を設け,輸送時に用いる。また,使用時に断熱性の蓋を取り外し,内部が視認できるような蓋としてガラス蓋を用い,これにより,保冷用器具そのものの内部のモノを商品として取り扱うなどである。かかるガラス蓋は,取り外しが可能な構成であってもよいし,固定され,スライドして内部のモノを取り出すことが可能となる構成であってもよい。また,単純に保冷能力を高めるために,二重・三重の蓋を備えるようにしてもよい。
【0022】
前記冷却用空間は,前記保存用空間の外周に配置されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,保存用空間の効率良い冷却が可能となり,本発明の冷却システムの性能を向上させることができるという効果が得られる。
本発明において,外周とは,保存用空間に対して冷却が可能な程度に十分に広い周辺領域を意味する。これより,保冷用器具の大きさ,保存用空間の容量,冷却装置の冷却能など,種々の要素に応じて,冷却用空間の容積と保存用空間に対する接触面積を,種々変更して設定することができる。
【0023】
冷媒循環機構は,冷却装置と保冷用器具との分離可能な接続と,保冷用器具の冷却とが可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の手法ないし構成のものとすることができる。
冷媒循環機構は,典型的には図2図3に示すように,前記冷媒循環機構として,前記冷却用空間に配置されており,前記冷却装置に分離可能に接続され,前記冷却装置から供給される第一冷媒が通過するための器具用冷媒循環路と,前記器具用冷媒循環路の近傍の前記冷却用空間内に充填される第二冷媒とからなる構成とすることができる。
かかる構成により,冷却装置から供給される冷媒(第一冷媒)が装置用冷媒循環路を通じて,器具用冷媒循環路に供給される。器具用冷媒循環路を通過した第一冷媒により冷却用空間内における冷媒(第二冷媒)が冷却され,これにより保存用空間内が冷却される。
【0024】
第一冷媒は,冷媒循環路を循環することにより,保冷用器具を冷却する役割を果たす。第一冷媒は,かかる役割を果たす限り,特に限定されるものではなく,液体ないし気体など,種々の状態のものを用いることができる。
第一冷媒としては,冷媒ガスであることが好ましく,最も好ましくはフロンガスを用いることができる。かかる好ましい構成によれば,冷却装置を,汎用エアコンに類似した構成とすることができ,本発明の冷却システムの汎用性や取扱性を向上させることが可能になるという効果が得られる。
【0025】
第二冷媒は,冷却用空間内を満たすとともに,器具用冷媒循環路を通じた熱伝導によって冷却され,保存用空間内を冷却する役割を果たす。第二冷媒は,かかる役割を果たす限り,特に限定されるものではなく,液体や流動体など,種々の状態のものを用いることができ,冷却後においては固体となってもよい。
第二冷媒としては,典型的には,水を用いることができる。また,このような水としては,一定量の塩を含んだ水,水道水,保冷剤に用いられるような高吸水性樹脂を含んだ水(流動体)などを用いることができる。
【0026】
冷却装置は,第一冷媒の循環を通じて保冷用器具を冷却する役割を果たす。また,冷却装置は,かかる第一冷媒の循環・冷却を行うための動力源を有するものである。冷却装置は,これらの役割ないし動力源を備える限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
冷却装置は,典型的には,前記第一冷媒を圧縮するためのコンプレッサと,前記第一冷媒を凝縮・液化するためのコンデンサと,前記器具用冷媒循環路に接続され,前記第一冷媒を循環させるための装置用冷媒循環路とを少なくとも備えた構成とすることができる。かかる構成によれば,冷却装置が保冷用器具に第一冷媒を供給するとともに,保冷用器具における器具用冷媒循環路内での熱伝導を通じて保冷用器具内部の効率的な冷却が可能になるという効果が得られる。
【0027】
器具用冷媒循環路ならびに装置用冷媒循環路(以下,これらをまとめて「冷媒循環路」)は,可逆的に分離可能であるとともに,基本的な機能として,第一冷媒の循環路としての役割を果たす。
すなわち,器具用冷媒循環路は,第一冷媒の循環を通じ,保冷用器具において,熱伝導による第二冷媒の冷却を通じて保冷用器具の内部を冷やす役割を果たす。また,装置用冷媒循環路は,第一冷媒循環路を通じて排出される第一冷媒を,冷却装置内において熱伝導により排熱し,第一冷媒を冷やす役割を果たす。
冷媒循環路は,これらの機能ないし役割を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
冷媒循環路としては,典型的には,熱伝導度の高い素材のものを用いることが好ましく,少なくとも銅を成分として含む材料からなるものを用いることが好ましい。
【0028】
器具用冷媒循環路と装置用冷媒循環路は,可逆的に分離可能であるが,直接的に連結されていてもよいし,間接的に連結される構成であってもよい。
本発明において,器具用冷媒循環路と装置用冷媒循環路は,さらに中間冷媒循環路部材によって接続されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,保冷用器具と冷却装置との間を,断熱性の高い部材とすることが容易となり,本発明の冷却システムの冷却効率を向上させることが可能になるという効果が得られる。また,中間冷媒循環路部材を柔軟性のある部材とすることにより,保冷用器具と冷却装置を柔軟に配置することができ,取扱性を向上させることができるという効果が得られる。
中間冷媒循環路部材としては,それぞれの冷媒循環路に連結可能であり,かつ,断熱性を有する限り,特に限定されるものではなく,種々のものを用いることができる。典型的には,図8bに示すように,断熱性を有するフレキシブルホースを用いることができる。
【0029】
本発明の冷却システムは,上記構成のとおりであるが,これを,一の冷却装置に対し,二以上の保冷用器具を入れ替え冷却し使用することが好ましい。かかる好ましい構成によれば,多数の保冷用器具を効果的に冷却することが可能となり,本発明の冷却システムの利便性を向上させることが可能になるという効果が得られる。
また,かかる入れ替え冷却により,例えば,冷却が完了した保冷用器具のレンタルを行ったり,保冷用器具を異なる冷却装置間で冷却するなどを行うことができる。
【0030】
本発明の冷却システムは,かかる入れ替え冷却により,様々な使用用途が想定される。このような用途としては,下記のものが例示される。
(1) 鮮度や状態を保つための使用(釣魚,捕獲漁,収穫した野菜や果実。もしくは,乳製品や飲料など)
(2) 冷蔵品もしくは冷凍品としての輸送のための使用
(3) 冷却のための使用(保冷剤,クールスーツなど)
(4) 緊急時の使用(遺体の一時保管など)
【0031】
<<II.実施形態>>
以下,好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し,下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず,本発明はこれに限定されるものではない。
<冷却システムの構成>
まず,本発明の一実施形態における冷却システムの構成について,図1から図4を参照しながら説明する。
【0032】
図1は,本発明の一実施形態における冷却システムの構成を示す概念図,図2は,当該冷却システムの構成を一部破断して示した側面図,図3は,当該冷却システムを構成する保冷用器具を一部破断して示した側面図,図4は,当該冷却システムを構成する冷却装置を示す図((a)は側面図,(b)は平面図)である。
【0033】
図1図2に示すように,本実施形態の冷却システム1は,冷媒循環機構を備えた箱状(ボックス状)の保冷用器具2と,前記冷媒循環機構に分離可能に接続される冷却装置3とからなっている。
本実施形態の冷却システム1の構成によれば,冷却装置3からの冷媒循環により,保冷用器具2の内部が冷却される。また,冷却後の保冷用器具2を,冷却装置3から分離して使用することができる。そして,これにより,動力が不要であり,かつ,保冷機能を備えた,クーラーボックスとしての使用が可能な保冷用器具2を提供することが可能となる。
【0034】
図1から図3に示すように,保冷用器具2は,釣魚等の対象物を保存するための保存用空間4と,保存用空間4と隔離された冷却用空間5とを少なくとも含んでいる。ここで,冷却用空間5は,保存用空間4の外周に配置されている。より具体的には,冷却用空間5は,保存用空間4の底面ならびに横四面を囲み隔離されて構成されている。かかる構成によれば,保存用空間4の効率良い冷却が可能となり,本実施形態の冷却システム1の性能を向上させることができる。
さらに詳細には,図2図3に示すように,保冷用器具2は,ポリエチレン製の箱状の外装(フリーザーボックス)12を備えており,当該外装12の内側に熱伝導度の高いアルミニウム製の保冷庫13を配置することにより,外装12と保冷庫13との間に冷却用空間5が形成されている。そして,保冷庫13内が保存用空間4となっている。なお,図2図3中,参照符号12aは,外装12の上端開口に被せられるポリエチレン製の蓋(フリーザーボックス上蓋)を示している。図2図3には現していないが,外装12および蓋12aは,その内部が真空となっており,超高密度ウレタンを充填することにより,断熱性が高められている。
【0035】
図2図3に示すように,前記冷媒循環機構は,冷却用空間5に配置されており,冷却装置3に分離可能に接続され,当該冷却装置3から供給される第一冷媒が通過するための銅管からなる器具用冷媒循環路6と,当該器具用冷媒循環路6の近傍の冷却用空間5内に充填される第二冷媒7とからなっている。
器具用冷媒循環路6は,外装12の内壁面(底面ならびに横四面)に配置されており,冷却用空間5は,第二冷媒7としての水道水で満たされている。なお,前記第一冷媒としては,冷媒ガスであるフロンガスが用いられている。
【0036】
図1図2図4に示すように,冷却装置3は,前記第一冷媒を圧縮するためのコンプレッサ8と,前記第一冷媒を凝縮・液化するためのコンデンサ(コンデンサファン)9と,器具用冷媒循環路6に接続され,前記第一冷媒を循環させるための銅管からなる装置用冷媒循環路10とを少なくとも備えている。そして,前記第一冷媒が,保冷用器具2の器具用冷媒循環路6内で気化することにより,保冷用器具2の冷却が可能となる。
図2図3中,参照符号14は液体タンクを,参照符号15は乾燥フィルタを,参照符号16はサーモスタット拡張バルブを,参照符号17はスターターキットを,参照符号20はコントロールボックスをそれぞれ示している。
【0037】
図1図2に示すように,器具用冷媒循環路6と装置用冷媒循環路10は,さらに中間冷媒循環路部材11によって接続されている。
ここで,中間冷媒循環路部材11としては,断熱性を有するフレキシブルホースである油圧ホースが用いられている。なお,器具用冷媒循環路6と中間冷媒循環路部材11との接続は,器具用冷媒循環路6に設けられたメス型アダプタ6aに中間冷媒循環路部材11に設けられたオス型アダプタ11aを差し込むことによってなされる。そして,オス型アダプタ11aをメス型アダプタ6aから抜き取ることにより,保冷用器具2を冷却装置3から分離することが可能となる。
【0038】
図2に示すように,冷却装置3は,その底面にキャスタ3aが取り付けられて,自在に移動させうるようにされている。なお,図2中,参照符号18は冷却装置3を移動させる際にユーザが把持するハンドル部を示している。
【0039】
図5から図7に,実際の形状により近い冷却システムおよびその構成部材を示す。図5は,冷却システムの外観構成を示す側面図,図6は,冷却システムを構成する保冷用器具の蓋および外装を示す図((a)は蓋の平面図,(b)は外装の平面図),図7は,保冷用器具の保冷庫を示す図((a)は平面図,(b)は側面図)である。
冷却システムおよびその構成部材のサイズは,図5から図7に示すとおりであり,各図中の数値の単位は[mm]である。
【0040】
<冷却システムの使用方法>
次に,本発明の一実施形態における冷却システムの使用方法について説明する。
【0041】
まず,図2に示すように,冷却装置3の上に保冷用器具2を載せ,器具用冷媒循環路6に設けられたメス型アダプタ6aに中間冷媒循環路部材11に設けられたオス型アダプタ11aを差し込む。これで準備が完了する。
次いで,スターターキット17のコントロールボックス20に設けられたON/OFFスイッチを押して,冷却装置3を作動させる。これにより,第一冷媒としてのフロンガスがコンプレッサ8によって圧縮された後,コンデンサ9によって凝縮・液化され(液化フロンガス),中間冷媒循環路部材11を通して保冷用器具2に送られる。
【0042】
保冷用器具2に送られた液化フロンガスは,冷媒循環路内で気化する。気化したフロンガスは,器具用冷媒循環路6を循環した後,再度コンプレッサ8に戻り,コンデンサ9によって再び液化フロンガスとなる。当該液化フロンガスは,中間冷媒循環路部材11を通して再び保冷用器具2に送られ,冷媒循環路内で気化する。
【0043】
以上の循環工程が繰り返され,気化したフロンガスによって,器具用冷媒循環路6周りの熱が奪われる。そして,これにより,冷却用空間5内に満たされた第二冷媒7としての水道水が冷やされて氷となり,保冷庫13内が冷やされる。
【0044】
第二冷媒7としての水道水が冷やされて氷となったら,オス型アダプタ11aをメス型アダプタ6aから抜き取ることにより,保冷用器具2を冷却装置3から分離する(図3の状態)。保冷用器具2は,クーラーボックスとして使用され,冷やされた保冷庫13内には,釣魚,捕獲漁,収穫した野菜や果実などが収容される。
【実施例
【0045】
本発明の冷却システムについて,試作例を用いてさらに詳述する。
【0046】
<<試作例>>
1.図8に,本発明の冷却システムの試作例を示す。
(1) 図8aは,試作例を正面から撮影した写真である。図中,下段に冷却装置が,上段に保冷用器具が備えられている。なお,本試作例は,冷却システムとしての性能を評価することを目的として,各種センサーやデジタル表示計を備えるものである。かかる構成については,任意の構成として備えられるものであり,かつ,写真に示されるような態様に限定されない構成とすることができる。
(2) 図8bは,試作例を背面から撮影した写真である。下段の冷却装置と,上段の保冷用器具が,フレキシブルホース(中間冷媒循環路部材に相当)によって接続されている。
(3) 図8cは,保冷用器具の蓋を,一部,開けた状態を撮影した写真である。外装および蓋の内部は真空であり,超高密度ウレタンを充填することにより,断熱性が高められている。また,外装の内側は,熱伝導度の高いアルミニウム製の保冷庫が備えられた構成となっている(236W/m)。
(4) 図8dは,冷却装置の内部を撮影した写真である。冷却装置は,側壁が開閉可能であり,内部を簡単にメインテナンスできる構成となっている。冷却装置の内部には,コンデンサ(コンデンサファン),液体タンク,コンプレッサなど,冷却に必要な各種機器が備えられている。
(5) このように,試作例は、エアコンの室外機に相当する冷却装置と,これに分離可能であって冷却機能と温度維持機能を高めた保冷用器具とによって構成されている。
【0047】
2.図9に,本発明の冷却システムの試作例における冷却管(器具用冷媒循環路)の様子を示す。
(1) 中央が保冷用器具の底面,それ以外が保冷用器具の各側面における冷却管の配置を示している。
(2) 図において,それぞれ対応した英字(AとA,BとBなど)が,連続して連結されていることを示している。
(3) このように試作例では,保冷用器具の底面ならびに側面に冷却管が張り巡らされていることにより,冷却機能が高められている。
【0048】
3.2018年12月に,温度調整が行われていない倉庫内にて,試作例の冷却機能評価を行った結果を,図10図11に示す。なお,図のグラフ中,右側が外気温の温度軸を,左側がそれ以外の温度軸をそれぞれ示している。
(1) 9時30分に冷却を開始し,同日の17時30分に冷却を終了した。この間,保冷用器具の冷却用空間内の水(第二冷媒に相当)は,徐々に温度が低下し,2.0℃まで低下した(図10b)。これとともに,庫内温度は徐々に低下していき,庫内上部で約-15℃,庫内下部で約-23℃であった。
(2) 冷却終了後,庫内内部の温度は徐々に上昇していったが,冷却停止から24時間後からは,計測を行った2日間において,庫内温度ならびに水温ともに,およそ0℃ほどと安定していた。
4.これらの結果から,試作例において,-20℃を越えて冷却が可能であること,ならびに,冷却を停止した後であっても,温度を0℃以下に保てることが分かった。
5.これらの結果は,あくまで試作例における結果に過ぎず,今後,保冷用器具の構造や使用素材,または大きさなどを調整したり,第二冷媒の変更などにより,冷却システムそのものの性能調整や改良が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 冷却システム
2 保冷用器具
3 冷却装置
4 保存用空間
5 冷却用空間
6 器具用冷媒循環路
7 第二冷媒
8 コンプレッサ
9 コンデンサ
10 装置用冷媒循環路
11 中間冷媒循環路部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11