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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】微粒子用の湿式コーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/08 20060101AFI20230621BHJP
   C09D 133/10 20060101ALI20230621BHJP
   C09D 113/02 20060101ALI20230621BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230621BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C09D133/08
C09D133/10
C09D113/02
C09D201/00
C09D133/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021524857
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021762
(87)【国際公開番号】W WO2020246463
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019106702
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】市川 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴登
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517020(JP,A)
【文献】特表2013-537896(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104650283(CN,A)
【文献】FUKUMORI, Yoshinobu et al,Coating Pharmaceutical Powders by Fluidized Bed Process. IV. Softening Temperature of Acrylic Copoly,Chem. Pharm. Bull.,1988年,36(12),4927-4932
【文献】ICHIKAWA, Hideki et al.,Coating of Pharmaceutical Powders by Fluidized Bed Process. VI. Microencapsulation Using Blend and C,Chem. Pharm. Bull,1994年,42(6),1308-1314
【文献】ICHIKAWA, Hideki et al,Coating of Pharmaceutical Powders by Fluidized Bed Process. V. Agglomeration and Efficiency in the C,Chem. Pharm. Bull.,1993年,41(6),1132-1136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
A61K 9/00-9/72,
47/00-47/69
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系共重合体からなり、且つ体積基準粒子径分布における50%径が10nm以上40nm未満である粒子を含むラテックスからなる、
微粒子用の湿式コーティング剤において、
(メタ)アクリレート系共重合体が、アクリル酸エチルに由来する単量体単位、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位、およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する単量体単位からなるものである、微粒子用の湿式コーティング剤
【請求項2】
微粒子が核粒子である、請求項1に記載の微粒子用の湿式コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子用の湿式コーティング剤に関する。
本願は、2019年6月7日に、日本に出願された特願2019-106702号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
医薬、農薬などの製剤化のためにコーティングプロセスがしばしば用いられる。コーティング剤には、ナノ粒子やその水系分散剤が用いられており、特に乳化重合法や乳化プロセスなどで調製した高分子ナノ粒子の水系分散剤が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、被膜形成材料として、アクリル酸エチルとメタクリル酸、またはアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの共重合体からなる水性ラテックス分散液を使用して行う、薬剤のフィルムコーティング方法を開示している。
非特許文献1および非特許文献2は、高分子のナノ粒子水系分散剤でコーティングすることを開示している。ナノ粒子として、12:6:4 Poly(アクリル酸エチル(EA)/メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸2- ヒドロキシエチル(HEMA))からなるコアと、6:12:8 Poly(EA/MMA/HEMA)からなるシェルとを有するコアシェル型ナノ粒子を含むラテックスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-48521号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】福森義信「ナノ構造制御による医薬用ミクロ粒子製造プロセスの実用化」粉砕 No.50(2006/2007)
【文献】Ichikawa et al. "Coating of Pharmaceutical Powders by Fluidized Bed Process. VI.Microencapsulation Using Blend and Composite Latices of Copoly (Ethyl Acrylate-Methyl Methacrylate-2-Hydroxyethyl Methacrylate)" Chem. Pharm. Bull., 42, 1308 (1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コーティング時の粒子凝集を防止しつつ,平滑な薄膜で所望の機能(例えば,薬物放出制御)を発揮できる、微粒子用の湿式コーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕 (メタ)アクリレート系共重合体からなり、且つ体積基準粒子径分布における50%径が10nm以上150nm以下である粒子を含むラテックスからなる、微粒子用の湿式コーティング剤。
〔2〕 (メタ)アクリレート系共重合体が、アクリル酸エチルに由来する単量体単位、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位、およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する単量体単位を含有してなるものである、〔1〕に記載の微粒子用の湿式コーティング剤。
〔3〕 体積基準粒子径分布における50%径が10nm以上40nm未満である、〔1〕または〔2〕に記載の微粒子用の湿式コーティング剤。
〔4〕 微粒子が核粒子である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の微粒子用の湿式コーティング剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微粒子用のコーティング剤は、平滑な膜表面を形成し、優れた徐放性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1および比較例1で得られたコーティング粒子の時間経過に伴う薬物放出率を示す図である。
図2】実施例1で得られたコーティング粒子のSEM像を示す図である。
図3】比較例1で得られたコーティング粒子のSEM像を示す図である。
図4】実施例2および比較例2で得られたコーティング粒子の時間経過に伴う薬物放出率を示す図である。
図5】実施例2で得られたコーティング粒子のSEM像を示す図である。
図6】比較例2で得られたコーティング粒子のSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の微粒子用の湿式コーティング剤は、(メタ)アクリレート系共重合体からなる粒子を含むラテックスからなる。
【0011】
(メタ)アクリレート系共重合体からなる粒子を含むラテックスは、例えば、(メタ)アクリレート系単量体を乳化重合法にて重合反応させることによって、もしくは(メタ)アクリレート系単量体を溶液重合法で重合反応させて得られた共重合体を水分散させることによって得られる。これらの中で、乳化重合法が好ましい。
ラテックスを製造するに際し、乳化重合反応の系内に、追加の単量体を更に添加してもよい。例えば、単量体の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体を連続的又は間欠的に添加して重合する方法等が挙げられる。最初に仕込む単量体の組成と、追加で添加する単量体の組成を異なるものとすることによって、コアシェル構造の共重合体粒子を得ることもできる。また、単量体を最初から連続的又は間欠的に添加する方法であってもよい。単量体を添加する工程において、単量体の組成が連続的に変化するような、いわゆるパワーフィード法を用いることも可能である。
【0012】
(メタ)アクリレート系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状のアルキル基を含有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリレート系共重合体の総質量に対する、(メタ)アクリレート系単量体に由来する単量体単位は、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0013】
本発明の効果を阻害しない範囲の量で、(メタ)アクリレート系単量体以外の単量体を用いることができる。例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン;スチレン;1,3-ブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1,3-ブタジエン等の共役ジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリレート系共重合体の総質量に対する、(メタ)アクリレート系単量体以外の単量体に由来する単量体単位は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0質量%である。
【0014】
本発明においては、(メタ)アクリレート系共重合体が、アクリル酸エチルに由来する単量体単位、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位、およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する単量体単位を含有してなるものが好ましい。
(メタ)アクリレート系共重合体の総質量に対する、アクリル酸エチルに由来する単量体単位の量は、好ましくは26~39質量%、より好ましくは30~35質量%であり、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の量は、好ましくは39~52質量%、より好ましくは43~48質量%であり、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する単量体単位の量は、好ましくは9~35質量%、より好ましくは17~27質量%である。アクリル酸エチルに由来する単量体単位、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位、およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する単量体単位の合計が、(メタ)アクリレート系共重合体の総質量に対して、99%質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0015】
(メタ)アクリレート系共重合体からなる粒子を含むラテックスは、体積基準粒子径分布における50%径が10nm以上150nm以下、好ましくは10nm以上40nm未満である。50%径を上記範囲とすることで、耐凝集性、表面平滑性、徐放性などに優れるコーティング層を得ることができる。
【0016】
50%径は、乳化重合法により製造する場合、乳化剤の使用量を調節することや、公知のシード重合法を用いることで調整できる。シード重合法としては、シードを作製後同一反応系内で共重合体を含むラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法等の方法を、適宜選択して用いることができる。
【0017】
ここで、使用する乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、ノニオン性乳化剤等の非反応性乳化剤や、親水基と親油基を有する乳化剤の化学構造の中にエチレン性二重結合を導入したアニオン性反応性乳化剤、ノニオン性反応性乳化剤等の反応性乳化剤が挙げられる。これらは従来公知のものを用いることもできる。
【0018】
非反応性乳化剤であるアニオン性乳化剤としては、例えば、非反応性のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの中でも、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩が好ましい。
【0019】
非反応性乳化剤であるカチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩;等が挙げられる。非反応性乳化剤である両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤;等が挙げられる。
【0020】
非反応性乳化剤であるノニオン性乳化剤としては、例えば、非反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
反応性乳化剤であるアニオン性反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体であり、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。具体例としては、例えば、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば、三洋化成社製の「エレミノール(商標)JS-2」、「エレミノール(商標)JS-5」;花王社製の「ラテムル(商標)S-120」、「ラテムル(商標)S-180A」、「ラテムル(商標)S-180」等が挙げられる);ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロン(商標)HS-10」、「アクアロン(商標)HS-1025」等が挙げられる。);α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、旭電化工業社製の「アデカリアソープ(商標)SE-1025N」等が挙げられる。);アンモニウム=α-スルホナト-ω-1-(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロンKH-10」等が挙げられる。)等が挙げられる。
【0022】
反応性乳化剤であるノニオン性反応性乳化剤としては、例えば、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、旭電化工業社製の「アデカリアソープNE-20」、「アデカリアソープNE-30」、「アデカリアソープ(商標)NE-40」等が挙げられる。);ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製の「アクアロン(商標)RN-10」、「アクアロン(商標)RN-20」、「アクアロン(商標)RN-30」、「アクアロン(商標)RN-50」等が挙げられる。)等が挙げられる。
【0023】
乳化剤は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
乳化剤の使用量は、反応系に最初に仕込まれる単量体100質量部に対して、好ましくは0.06~13.3質量部、より好ましくは1.3~10質量部、更に好ましくは2.7~6.6質量部、より更に好ましくは4.0~5.3質量部である。
【0025】
重合反応を開始させるために、重合開始剤、好ましくはラジカル重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することができる。本発明において用いられる重合開始剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられる。このような開始剤の具体例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2-アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩が好ましく用いられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
重合開始剤の使用量は、反応系に最初に仕込まれる単量体100質量部に対して、好ましくは0.05~0.35質量部、より好ましくは0.05~1.5質量部である。
【0027】
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリット等の還元剤を、上述のラジカル開始剤と組み合わせて用いてもよい。すなわち、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0028】
ラテックスを製造する際の、重合温度は、好ましくは40~95℃、より好ましくは45~90℃、さらに好ましくは55~85℃である。
また、重合開始剤は、好ましくは、単量体と乳化剤を含む混合液に、攪拌下、1~5時間程度かけて添加することが好ましい。
また、重合反応終了後、透析等の精製処理を実施することができる。
【0029】
ラテックスを製造する際の反応系における重合固形分濃度は、生産効率と乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~40質量%である。重合固形分濃度とは、重合完了時の固形分濃度であり、具体的には、乾燥前のラテックス(水等の非固形分成分も含む。)の質量に対する、乾燥後の固形分(水溶性物質を含む。)の質量の割合をいう。
【0030】
本実施形態のラテックスの製造に際しては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を、乳化重合時又は乳化重合終了時に用いることができる。このような重合調整剤としては、例えば、pH調整剤、キレート化剤等が挙げられる。
【0031】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミンやジメチルエタノールアミンやトリエタノールアミンやトリエチルアミン等のアミン類等が挙げられる。これらの中でも、水酸化アンモニウムや、モノエタノールアミンやジメチルエタノールアミンやトリエタノールアミンやトリエチルアミン等のアミン類が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリレート系共重合体の数平均分子量は、好ましくは5000~5000000、より好ましくは50000~4000000、さらに好ましくは80000~3000000、よりさらに好ましくは100000~1000000である。数平均分子量を制御する方法としては、例えば、開始剤の使用量、重合温度、モノマーのフィード量、連鎖移動剤の量等を調整する方法等が挙げられるが、これらの中でも、より好適な手法としては連鎖移動剤の量により調整することができる。
【0033】
(メタ)アクリレート系共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)は、特に限定されないが、好ましくは1.5~10.0、より好ましくは1.7~9.0であり、更に好ましくは1.8~8.0である。分子量分布は公知の方法で制御できるが、好適な手法としては連鎖移動剤を複数回に分けて添加することで、重合反応を制御することが挙げられる。
連載移動剤として、例えば、n-ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、α-メチルスチレンダイマー等の核置換α-メチルスチレンの二量体;テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィド等のジスルフィド類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化誘導体;2-エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられる。これらの中でもメルカプタン類が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
連鎖移動剤の使用量は、全単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~2.50質量部、より好ましくは0.15~2.50質量部である。
【0035】
連鎖移動剤の添加方法としては、特に限定されず公知の方法を採用できる。例えば、一括添加、回分添加、連続添加等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリレート系共重合体のガラス転移温度は、好ましくは20~90℃、より好ましくは25~80℃、更に好ましくは30~70℃である。共重合体のガラス転移温度は、ASTM D3418-97に準拠して測定することができる。
【0037】
本発明の湿式コーティング剤を適用し得る微粒子(核粒子)は、特に限定されない。本発明に用いられる核粒子は、有効成分(例えば医薬や農薬であれば薬物)そのものからなる粒子であってもよいし、担体と薬物の混合物からなる粒子であってもよいし、担体(コア粒子)表面を薬物で覆った粒子であってもよいし、薬物を一切含まない担体からなる粒子であってもよい。核粒子は操作中に型崩れを起こすものでなければ特に制限なく使用できる。核粒子は、その体積平均粒子径によって特に限定されないが、30~1000μmのものが好ましく、50~500μmのものがより好ましい。
【0038】
核粒子としては、例えば、丸剤、顆粒剤、散剤、薬物の単結晶、薬物粉末の凝集物、乳糖粒子、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム粒子; 製剤領域でコーティング核粒子として市販されている結晶セルロース顆粒、シュクロース球形顆粒、マンニトール球形顆粒などが使用できる。
該核粒子は、速放性製剤および放出持続型製剤(徐放性製剤)などの放出制御型製剤であってもよい。核粒子は、慣用の添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、徐放化剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤、清涼化剤、甘味料、旨み成分、甘味増強剤などが挙げられる。これら添加剤は、製剤分野において慣用の量が用いられる。
【0039】
医薬の有効成分である薬物としては、例えば、鎮痛剤、解熱鎮痛剤、頭痛治療剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮静剤、鎮けい剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗プラスミン剤、気管支拡張剤、喘息治療剤、糖尿病治療剤、肝疾患治療剤、潰瘍治療剤、胃炎治療剤、健胃消化剤、消化管運動賦活剤、高血圧治療剤、狭心症治療剤、血圧降下剤、低血圧治療剤、高脂血症治療剤、ホルモン剤、抗生物質、抗ウイルス剤、サルファ剤、抗炎症剤、精神神経用剤、眼圧降下剤、制吐剤、止瀉薬、痛風治療剤、不整脈治療剤、血管収縮剤、消化剤、睡眠又は催眠導入(誘導)剤、交感神経遮断剤、貧血治療剤、抗てんかん剤、抗めまい剤、平行傷害治療剤、結核治療剤、ビタミン欠乏症治療剤、痴呆治療剤、尿失禁治療剤、鎮うん剤、口内殺菌剤、寄生虫駆除剤、ビタミン剤、アミノ酸類、ミネラル類などが挙げられる。より具体的に、例えば、中枢神経系用薬(アセトアミノフェン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、塩酸メクロフェノキサート、クロルプロマジン、トルメチンナトリウム、塩酸ミルナシプラン、フェノバルビタールなど)、末梢神経系用薬(エトミドリン、塩酸トルペリゾン、臭化エチルピペタナート、臭化メチルベナクチジウム、フロプロピオンなど)、止血薬(カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、硫酸プロタミンなど)、循環器官用薬(アミノフィリン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、ジギトキシン、カプトプリルなど)、呼吸器官用薬(塩酸エフェドリン、塩酸クロルプレナリン、クエン酸オキセラジン、クロペラスチン、クロモグリク酸ナトリウムなど、消化器官用薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジンなど)、冠血管拡張薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミルなど)、ビタミン剤(アスコルビン酸、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、酪酸リボフラビンなど)、代謝性製剤(メシル酸カモスタット、ミゾリビン、塩化リゾチームなど)、アレルギー用薬(塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、トシル酸スプラタスト、マレイン酸ジフェンヒドラミンなど)、化学療法剤(アシクロビル、エノキサシン、オフロキサシン、ピペミド酸三水和物、レボフロキサシンなど)、抗生物質(エリスロマイシン、塩酸セフカペンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、セファレキシン、クラリスロマイシン、ロキタマイシン)などが挙げられる。
【0040】
農薬の有効成分である薬物としては、例えば、抗菌剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺鼠剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料、薬害軽減剤などが挙げられる。
医薬や農薬の有効成分である上記化合物のうち、塩形成部位を有する化合物では、その生理的又は薬学的に許容可能な塩(特に、医薬的または農薬的に許容可能な塩など)なども含まれる。
【0041】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖、果糖、ブドウ糖、D-マンニトール、ソルビトール、トレハロースなどの糖・糖アルコール類;無水リン酸カルシウム、結晶セルロース、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0042】
崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられる。
【0043】
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末などが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
【0044】
着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。
pH緩衝剤としては、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝剤などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えば、トコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
【0045】
酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
香料としては、例えば、メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などが挙げられる。
清涼化剤としては、カンフル及びボルネオールなどのテルペン系化合物(モノテルペンアルコールなど)などの他、この前記テルペン系化合物を含む精油、エッセンス又はパウダー;ペパーミント、スペアミント、クールミントなどの精油、エッセンス又は粉末(パウダー);前記の精油又はエッセンスを粉末状担体(例えば、デキストリンなど)に吸着させたもの、精油又はエッセンスを賦形材(アラビアガムなど)及び液体基剤(水、アルコールなど)と混合し、粉粒化したものなどが挙げられる。
【0046】
甘味料としては、非糖質系甘味料、糖アルコール及び糖類などが挙げられる。非糖質系甘味料としては、合成甘味料及び天然甘味料のいずれも使用できる。
旨み成分としては、アミノ酸系旨み成分(アミノ酸又はその塩、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸塩酸塩、グアニル酸ナトリウム、イノシン酸、イノシン酸ナトリウム、アルギニン-グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなど)、ペプチド系旨み成分(L-グルタミル-L-グルタミン酸、L-グルタミル-L-セリンなどのジペプチド;トリ-L-グルタミン酸、L-グルタミル-L-グリシル-L-セリンなどのトリペプチドなど)、カルボン酸系旨み成分(コハク酸ナトリウムなどのカルボン酸塩など)などが挙げられる。
さらに鹹味(塩味)を有する甘味増強剤(又は鹹味剤)を含有してもよい。このような甘味増強剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩(リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなど)などが例示できる。甘味増強剤(又は鹹味剤)は中性塩、例えば、ナトリウムイオン及び/又は塩素イオン(塩化物イオン)として解離する塩である場合が多い。
【0047】
核粒子に含有させることができる成分としては、その他に、抗酸化剤又は酸化防止剤、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤、矯臭剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。核粒子の製法は特に制限されず、一般的な造粒方法を採用することができる。
【0048】
本発明の湿式コーティング剤を核粒子表面にスプレー法を用いて付着させることによって、核粒子と、核粒子を被覆するメタクリル共重合体の薄膜とからなる、コーティング粒子を得ることができる。
【0049】
以下に、実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
実施例1
蒸留水300gにドデシルスルホン酸ナトリウム1.38gを溶解させた。これにアクリル酸エチル27.3モル%、メタクリル酸メチル54.5モル%およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチル18.2モル%からなる単量体34.6gを加え、ホモミキサー(4C,特殊機化工業(株))を使用して5分間攪拌して、乳化させた。これを500mL容量のガラス製四頸フラスコに移した。
窒素ガス流通下、80℃にて攪拌しながら、4w/v%の過硫酸アンモニウム0.5mLを上記フラスコに15分間おきに合計4mlを滴下して、最初の過硫酸アンモニウムの滴下から2時間重合反応をさせた。
得られたラテックスをセルロースチューブ(UC17/8,三光純薬(株))を用いて精製水中で透析した。半日毎に新鮮な精製水に入れ替えて,合計5日間の洗浄操作を行った。その後、ラテックスの粒子径分布を動的光散乱式粒子径分布測定装置(LB500,HORIBA)にて測定した。体積基準粒子径分布における50%径は28.6nm、共重合体のガラス転移温度Tgは61.8℃であった。なお、ガラス転移温度は、示差操作熱量計(DSC50,島津製作所)により測定した。測定条件は,サンプル皿:アルミニウムパン;試料仕込み量:5mg,昇温速度:20℃/minとした。TgはDSCサーモグラムにおけるガラス転移前の基線の直線部分と転移領域の変曲点の接線とを外挿して得られる交点の温度として定義した。
【0051】
薬物の被覆された球形の核粒子(90-125μm)を準備した。ドラフトチューブ付噴流層コーティング装置に核粒子を入れ流動床を形成させた。これに、得られたラテックスを、固形分質量で、40%、60%、又は、80%スプレーし、40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、及び80%コーティング粒子を各々得た。
得られた80%コーティング粒子をふるい分けし、核粒子同士が結合し凝集した割合い(凝集率)を算出した。算出された凝集率は最大で0.62%であった。
【0052】
40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、及び80%コーティング粒子に、それぞれ軽質無水ケイ酸(Aerosil #200)2質量%を添加して混ぜ合わせた。次いで90℃で12時間加熱した。その後、第17改正日本薬局方溶出試験法(第2法パドル法)に準拠して、コーティング粒子を、37℃の精製水に入れ、回転数200rpmのパドルで攪拌した。薬物の溶出結果を図1中の黒丸で示す。結果、実施例1で得られた各コーティング粒子は徐放性に優れたものであることが確認された。
【0053】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて80%コーティング粒子の表面を観察した結果を図2に示す。実施例1で得られた80%コーティング粒子の表面は、平滑であり、緻密な被膜が形成されていることが確認された。
【0054】
比較例1
ドデシルスルホン酸ナトリウムの量を0.02gに変えた以外は、実施例1と同じ方法で、ラテックスを得た。体積基準粒子径分布における50%径は221.1nm、共重合体のガラス転移温度Tgは63.2℃であった。
【0055】
比較例1で得られたラテックスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、及び80%コーティング粒子を得た。
得られた80%コーティング粒子の凝集率を算出した。算出された凝集率は、最大で2.37%であった。
【0056】
比較例1で得られた40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、及び80%コーティング粒子を用いた以外は、実施例1と同様の方法で測定した薬物の溶出結果を図1中の白丸で示した。結果、比較例1で調製された各コーティング粒子は、実施例1で調製された各コーティング粒子に比べて、徐放性に劣るものであることが確認された。
【0057】
実施例1と同様の方法で、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて80%コーティング粒子の表面を観察した結果を図3に示す。比較例1で得られた80%コーティング粒子は、実施例1で得られた80%コーティング粒子に比べて、表面平滑性に劣ることが確認された。
【0058】
実施例2
アクリル酸エチル27.3モル%、メタクリル酸メチル54.5モル%およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチル18.2モル%からなる単量体を、アクリル酸エチル40.9モル%、メタクリル酸メチル40.9モル%およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチル18.2モル%からなる単量体に変えた以外は、実施例1と同じ方法で、ラテックスを得た。体積基準粒子径分布における50%径は34.6nm、共重合体のガラス転移温度Tgは44.3℃であった。
【0059】
薬物の被覆された球形の核粒子(90-125μm)を準備した。ドラフトチューブ付噴流層コーティング装置に核粒子を入れ流動床を形成させた。これに、得られたラテックスを固形分質量で20%、40%、60%、又は、80%スプレーし、20%コーティング粒子、40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、及び80%コーティング粒子を各々得た。
【0060】
20%コーティング粒子、40%コーティング粒子、60%コーティング粒子、および80%コーティング粒子にそれぞれ軽質無水ケイ酸(Aerosil #200)2質量%を添加して混ぜ合わせた。次いで80℃で12時間加熱した。その後、第17改正日本薬局方溶出試験法(第2法パドル法)に準拠して、コーティング粒子を、37℃の精製水に入れ、回転数200rpmのパドルで攪拌した。薬物の溶出結果を図4中、黒丸で示した。
結果、各コーティング粒子は徐放性に優れたものであることが確認された。
【0061】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて80%コーティング粒子の表面を観察した結果を図5に示す。実施例2で得られた80%コーティング粒子の表面は、平滑であり、緻密な被膜が形成されていることが確認された。
【0062】
比較例2
ドデシルスルホン酸ナトリウムの量を0.02gに変えた以外は、実施例2と同じ方法で、ラテックスを得た。体積基準粒子径分布における50%径は220.1nm、共重合体のガラス転移温度Tgは45.8℃であった。
【0063】
比較例2で得られたラテックスを用いた以外は、実施例2と同様の方法で、20%、40%、60%および80%コーティング粒子を得た。
【0064】
比較例2で得られた20%、40%、60%、及び80%コーティング粒子を用いた以外は、実施例2と同様の方法で測定された薬物の溶出結果を図4中の白丸で示した。
結果、比較例2で調製された各コーティング粒子は、実施例2で調製された各コーティング粒子に比べて、徐放性に劣るものであることが確認された。
【0065】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、比較例2で得られた80%コーティング粒子の表面を観察した結果を図6に示す。比較例2で得られた80%コーティング粒子は、実施例2で得られた80%コーティング粒子に比べて表面平滑性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の微粒子用のコーティング剤は、コーティング時の粒子凝集を防止しつつ、平滑な膜表面を形成し、優れた徐放性を発揮できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6