(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20230621BHJP
F24C 15/16 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A47J37/06 361
F24C15/16 X
(21)【出願番号】P 2019087283
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】雉本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 英雄
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-007429(JP,A)
【文献】特開2005-080708(JP,A)
【文献】特開2019-060507(JP,A)
【文献】特開2016-133242(JP,A)
【文献】特開2006-346478(JP,A)
【文献】特開2017-099956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 15/16
F24C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱するためのグリル庫と、前記グリル庫内に設けられ、前記被調理物が載置される受け台を保持する枠部を備え、当該枠部を前記グリル庫の前後方向にスライド移動させるスライド機構と、前記グリル庫の前面の開口を開閉する扉とを備え、前記枠部を前記グリル庫内に向けてスライド移動させ、前記受け台が前記グリル庫内に収納されたときに、前記グリル庫の前記開口が前記扉で閉じられるグリルであって、
前記グリル庫の後部に設けられ、前記グリル庫内の燃焼排気を外部に排出する為
のダクト部と、
前記枠部の後部に設けられた係止部と、
前記グリル庫内で、且つ前記ダクト部の下方に設けられ、前記受け台が前記グリル庫内に収納されたときに、前記係止部を内側に収納する収納部と、
前記収納部に設けられ、前記係止部に対して上方から係止可能な被係止部と
を備え、
前記係止部と前記被係止部のうち一方は、他方に向かって突出する突出部であって、前記他方は、上下方向に弾性変形可能であって、前記突出部に対して係止可能な弾性係止部であって、
前記枠部を前記グリル庫内に向かってスライド移動させた場合、前記弾性係止部が前記突出部に当接して弾性変形しながら前記突出部を乗り越え、前記受け台が前記グリル庫内に収納されるときに、前記弾性係止部が元の形状に復帰する途中の状態で、前記スライド機構による前記枠部のスライド移動が停止され、前記開口が前記扉で閉じられること
を特徴とするグリル。
【請求項2】
前記弾性係止部は、前記一方に向かって側面視略V字状に折り曲げられた折り曲げ部を備え、前記折り曲げ部を介して、前記グリル庫の前後方向の前側にある前方接触面と、後側にある後方接触面とが互いに連接された板バネであって、
前記枠部を前記グリル庫内に向かってスライド移動させた場合、前記突出部が前記板バネの前記前方接触面を摺動し、これに伴って前記板バネが弾性変形し、さらに前記突出部が前記折り曲げ部を乗り越えて前記後方接触面を摺動し、且つ前記板バネが元の形状に復帰する途中の状態で、前記スライド機構による前記枠部のスライド移動が停止され、前記受け台が前記グリル庫内に収納されると同時に、前記開口が前記扉で閉じられること
を特徴とする請求項1に記載のグリル。
【請求項3】
前記突出部は、前記枠部の前記後部から後方に延びる平板部の上面に設けられ、前記他方に向かって略半球状に突出すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のグリル。
【請求項4】
前記平板部の後端部には、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部が設けられたこと
を特徴とする請求項3に記載のグリル。
【請求項5】
前記平板部の後端部の左右の両角部には、円弧状のテーパ部が設けられたこと
を特徴とする請求項3又は4に記載のグリル。
【請求項6】
前記突出部は、前記枠部の前記後部に設けられた前記係止部であって、
前記弾性係止部は、前記収納部の上面に設けられた前記被係止部であること
を特徴とする請求項1から5の何れかに記載のグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被調理物を加熱するためのグリル庫と、当該グリル庫内に収納され、前記被調理物を載置する焼き網を備えた受け皿と、当該受け皿を支持する保持枠と、当該保持枠を前記グリル庫の前後方向にスライド移動させるスライド機構と、前記グリル庫の前面の開口を開閉する扉とを備え、前記保持枠を前記グリル庫内に向けてスライド移動させ、前記受け皿が前記グリル庫内に収納された際に、前記グリル庫の前記開口が前記扉で閉じられるグリルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
グリル庫内の底面には、上方に向けて突出する第1突起部が設けられ、保持枠には、第1突起部に対して係止する弾性係止部が設けられる。弾性係止部が第1突起部に当接して弾性変形しながら第1突起部を乗り越え、受け皿がグリル庫内に収納される際に、弾性係止部が元の形状に復帰する途中の状態で、スライド機構による保持枠のスライド移動が停止され、開口が扉で閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のグリルでは、グリル庫内の底面に、第1突起部が設けられるので、グリル庫内を清掃する際、第一突起部に手が触れてしまい、拭き掃除や、掃き掃除等、清掃し難いという問題点があった。また、第一突起部に手が触れたことによって、第一突起部が変形してしまうと、弾性係止部が第一突起部に対して良好に係止できず、扉が開いて受け台が勝手に飛び出してしまう可能性もあった。
【0006】
本発明の目的は、グリル庫内の清掃が容易で、且つ受け台がグリル庫内から勝手に飛び出すのを防止できるグリルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のグリルは、被調理物を加熱するためのグリル庫と、前記グリル庫内に設けられ、前記被調理物が載置される受け台を保持する枠部を備え、当該枠部を前記グリル庫の前後方向にスライド移動させるスライド機構と、前記グリル庫の前面の開口を開閉する扉とを備え、前記枠部を前記グリル庫内に向けてスライド移動させ、前記受け台が前記グリル庫内に収納されたときに、前記グリル庫の前記開口が前記扉で閉じられるグリルであって、前記グリル庫の後部に設けられ、前記グリル庫内の燃焼排気を外部に排出する為のダクト部と、前記枠部の後部に設けられた係止部と、前記グリル庫内で、且つ前記ダクト部の下方に設けられ、前記受け台が前記グリル庫内に収納されたときに、前記係止部を内側に収納する収納部と、前記収納部に設けられ、前記係止部に対して上方から係止可能な被係止部とを備え、前記係止部と前記被係止部のうち一方は、他方に向かって突出する突出部であって、前記他方は、上下方向に弾性変形可能であって、前記突出部に対して係止可能な弾性係止部であって、前記枠部を前記グリル庫内に向かってスライド移動させた場合、前記弾性係止部が前記突出部に当接して弾性変形しながら前記突出部を乗り越え、前記受け台が前記グリル庫内に収納されるときに、前記弾性係止部が元の形状に復帰する途中の状態で、前記スライド機構による前記枠部のスライド移動が停止され、前記開口が前記扉で閉じられることを特徴とする。
【0008】
請求項2のグリルの前記弾性係止部は、前記一方に向かって側面視略V字状に折り曲げられた折り曲げ部を備え、前記折り曲げ部を介して、前記グリル庫の前後方向の前側にある前方接触面と、後側にある後方接触面とが互いに連接された板バネであって、前記枠部を前記グリル庫内に向かってスライド移動させた場合、前記突出部が前記板バネの前記前方接触面を摺動し、これに伴って前記板バネが弾性変形し、さらに前記突出部が前記折り曲げ部を乗り越えて前記後方接触面を摺動し、且つ前記板バネが元の形状に復帰する途中の状態で、前記スライド機構による前記枠部のスライド移動が停止され、前記受け台が前記グリル庫内に収納されると同時に、前記開口が前記扉で閉じられるとよい。
【0009】
請求項3のグリルの前記突出部は、前記枠部の前記後部から後方に延びる平板部の上面に設けられ、前記他方に向かって略半球状に突出するとよい。
【0010】
請求項4のグリルの前記平板部の後端部には、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部が設けられるとよい。
【0011】
請求項5のグリルの前記平板部の後端部の左右の両角部には、円弧状のテーパ部が設けられるとよい。
【0012】
請求項6のグリルの前記突出部は、前記枠部の前記後部に設けられた前記係止部であって、前記弾性係止部は、前記収納部の上面に設けられた前記被係止部であるとよい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のグリルによれば、受け台を支持する枠部を、スライド機構によってグリル庫の前後方向にスライド移動させることによって、受け台をグリル庫内に収納する。受け台がグリル庫内に収納されると、グリル庫の開口が扉で閉じられる。ここで、枠部をグリル庫内に向かってスライド移動させた場合、弾性係止部は突出部に当接して弾性変形しながら突出部を乗り越える。そして、受け台が前記グリル庫内に収納されるときに、弾性係止部が元の形状に復帰する途中の状態で、スライド機構による枠部のスライド移動が停止され、開口が前記扉で閉じられる。つまり、突出部を乗り越えた後においても、突出部と当接する弾性係止部の復元力が突出部の反対方向、すなわち、枠部がグリル庫内に向かって押し込む方向に作用するので、開口を扉で確実に閉じることができ、枠部に保持された受け台がスライド機構によって前方に勝手に飛び出すのを防止できる。また、係止部又は被係止部がグリル庫の底面に設けられないので、グリル庫内の清掃が容易になる。また、被係止部は、グリル庫の奥側に配置されるので、使用者が被係止部に手で触れるのを防止できる。また、被係止部は、ダクト部の下方に位置する収納部の上面に設けられる。グリル庫内からの油煙は、ダクト部に引き寄せられるので、収納部への回り込みを防止できる。これにより、収納部の上面に設けられた被係止部が油煙で汚れるのを防止できるので、係止部との係止を良好に維持できる。
【0014】
請求項2のグリルによれば、枠部をグリル庫内に向けてスライド移動させた場合、突出部が板バネの前方接触面を摺動し、これに伴って板バネが弾性変形する。次いで、突出部が折り曲げ部を乗り越えて後方接触面を摺動する。そして、板バネが元の形状に復帰する前の状態で、枠部が位置決めされ、受け台がグリル庫内に収納されるようになっている。ここで、弾性係止部の後方接触面に突出部が接触し、且つ板バネが元の形状に復帰する前の状態では、板バネの弾性復帰力によって突出部がグリル庫の後方に付勢される。つまり、突出部を介して枠部がグリル庫内の奥側に向けて付勢される。よって、枠部がグリル庫内に向かって押し込まれた状態となり、扉も開口を閉じる方向に押し込まれるので、開口を扉で確実に閉じることができる。さらに、枠部に保持された受け台がレール機構によって勝手に飛び出すのを防止できる。
【0015】
請求項3のグリルによれば、突出部は略半球状に突出する形状を備えるので、弾性係止部に対して点接触できる。これにより、突出部が弾性係止部に対して摺動する際の摩擦抵抗を軽減できるので、受け台のスライド移動を良好にできる。また、枠部をグリル庫内に向けてスライド移動させた場合、弾性係止部は、平板部の上面を摺動してから突出部を摺動する。即ち、弾性係止部は、平板部の上面から突出部に向けて良好にガイドされるので、弾性係止部を徐々に変形させることができる。これにより、受け台をグリル庫内に向けてスライド移動する際に、扉が急激に重くなるのを防止できる。
【0016】
請求項4のグリルによれば、枠部をグリル庫内に向けてスライド移動させた場合、突出部のうち平板部の後端部が弾性係止部と接触するが、平板部の後端部には屈曲部が設けられ、その屈曲部が弾性係止部と接触するので、弾性係止部が傷付くのを防止できる。
【0017】
請求項5のグリルによれば、平板部の後端部の両角部は円弧状であるので、突出部の軽量化を図ることができる。これにより、受け台のスライド移動を良好にできる。
【0018】
請求項6のグリルによれば、弾性係止部が油煙で汚れるのを防止できるので、突出部との係止を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】レール機構40を取り外した下ケース11の斜視図である。
【
図5】下ケース11内におけるレール機構40の後端側周囲の断面斜視図である。
【
図6】枠部のスライド移動で、被係止バネ29が位置決め板70の球状突起部73に接触して弾性変形する状態を示した図である。
【
図7】位置決め板170(変形例)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載される装置の構造などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0021】
図1を参照し、コンロ1の構造を説明する。コンロ1は、ビルトインコンロである。コンロ1は上部が開口する筐体2を備える。筐体2内の中央部には、グリル庫10(
図2参照)が設けられる。筐体2の上部には、天板3が固定される。天板3の右手前には右バーナ4、左手前には左バーナ5、中央奥側には奥バーナ6が設けられる。奥バーナ6の後方には、排気口7が設けられる。排気口7は、グリル庫10内と連通する。筐体2の前面の中央部には、グリル扉8が設けられる。グリル扉8は、後述するレール機構40(
図3参照)により、前後方向にスライド可能に設けられ、グリル庫10の前側のグリル開口(図示略)を開閉する。
【0022】
図2、
図3に示すように、レール機構40はグリル庫10内に取り付けられる。レール機構40は、平面視略矩形状の枠部48を備え、前後方向に移動可能に支持する。枠部48の前部には、グリル扉8の背面側下部が着脱自在に取り付けられる。枠部48には、図示しない受け台(焼き網等)を取り付け可能である。使用者は、取手9でグリル扉8を手前側に引き出すと、レール機構40の伸長動作によって、受け台に載置された被調理物をグリル庫10内から外部に取り出すことができる。
【0023】
図2を参照し、グリル庫10の構造を説明する。グリル庫10は、下ケース11と上ケース12を備える。下ケース11は、上面と前面が夫々開放された略直方体状の筐体である。上ケース12は、下面と前面が夫々開放された略直方体状の筐体である。上ケース12には、遮熱板13が上方から取り付けられる。上ケース12の天壁下面には、上火バーナ(図示略)が設けられる。上ケース12の後部には、筒状のダクト部121が設けられる。ダクト部121は、上ケース12内と連通する。ダクト部121は、上ケース12の後部から後方に対して斜め上方に延設され、その上端部には、グリル排気口122が設けられる。上ケース12を下ケース11の上部に螺子(図示略)で固定することにより、略直方体状のグリル庫10が構成される。グリル庫10の前面には、グリル開口(図示略)が設けられる。グリル排気口122は、天板3の排気口7(
図1参照)の直下に配置される。よって、グリル庫10内の燃焼排気は、ダクト部121を流れ、グリル排気口122及び排気口7を介して外部に排出される。
【0024】
図3、
図5を参照し、下ケース11の構造を説明する。
図3に示すように、下ケース11は、底壁15、左側壁16、右側壁17、背壁18を備える。底壁15の上面左側には左側取付部24が設けられ、上面右側には右側取付部25が設けられる。左側取付部24には、レール機構40の後述する左側レール構造体41の取付部材51がネジ止めされる。右側取付部25には、レール機構40の後述する右側レール構造体42の取付部材61がネジ止めされる。下ケース11には、平面視略U字状の下火バーナ20が設けられる。下火バーナ20は、左側炎孔部21と右側炎孔部(図示略)を備える。左側炎孔部21と右側炎孔部は前後方向に延設され、互いに平行である。左側炎孔部21は、左側壁16の内面に設けられ、その直上には、バーナカバー21Aが取り付けられる。右側炎孔部は、右側壁17の内面に設けられ、その直上には、バーナカバー22Aが取り付けられる。
【0025】
背壁18は、下ケース11の後部に立設され、上面部181と前面部182を備える。上面部181と前面部182が互いに直交する角部において、長手方向の略中央部には、平面視略矩形状の傾斜部19が設けられる。傾斜部19は、後方から前方に向かって下り傾斜する。傾斜部19は、上ケース12のダクト部121(
図2参照)の直下に配置される。傾斜部19は、グリル庫10内から流れる燃焼排気をダクト部121に向けてガイドする。前面部182の下側には、収納部23が設けられる。
図5に示すように、収納部23は断面視略逆L字状に形成され、後方延設部183と垂直延設部184を備える。後方延設部183は、前面部182の下端部から後方に向けて略水平に延設される。垂直延設部184は、後方延設部183の後端部から下方に延設される。これにより、収納部23には、後方に凹んだ収納空間が形成される。
【0026】
図5に示すように、後方延設部183の下面の後端側であって、左右方向の略中央部には、被係止バネ29がネジ91で固定される。被係止バネ29は、金属製の板バネであって、平面視前後方向に長い略矩形状に形成される。被係止バネ29は、折曲部291、前方接触部292、後方接触部293、固定部294等を備える。折曲部291は、被係止バネ29の前後方向中央部よりもやや前側に設けられ、下方に向かって側面視略V字状に折り曲げられた部位である。前方接触部292は、折曲部291の前側に設けられ、前端部から後端部にかけて下り傾斜する部位である。なお、前方接触部292の前端は、内側に折り畳んで丸めるのがよい(
図6参照)。これにより、前方接触部292の前端部が、後述する位置決め板70の表面に接触しても、位置決め板70の表面が傷付くのを防止できる。後方接触部293は折曲部291の後側に設けられ、前端部から後端部にかけて上り傾斜する。よって、前方接触部292と後方接触部293は、折曲部291を介して互いに接続し、側面視略V字状に形成される。
【0027】
固定部294は、後方接触部293の後端部から後方且つ略水平に延設され、その略中央部には、上下方向に貫通する固定穴(図示略)が設けられる。固定部294の上面は、収納部23の後方延設部183の下面に接触し、固定穴を介してネジ91で固定される。これにより、被係止バネ29は、前方接触部292と折曲部291を前側に向けた状態で、後方延設部183の下面に固定される。被係止バネ29の折曲部291は下方に向かって突出し、前方接触部292の前端部は、後方延設部183の下面から下方に離間して配置される。
【0028】
図3~
図5を参照し、レール機構40の構造を説明する。レール機構40は、下ケース11の底壁15の上面にネジ止めされる。
図3に示すように、レール機構40は、左側レール構造体41、右側レール構造体42、前側連結材43、後側連結材44を備え、平面視略矩形枠状に形成される。左側レール構造体41と右側レール構造体42は、左右方向に互いに離間して対向配置され、夫々前後方向に伸縮自在である(
図4参照)。
【0029】
前側連結材43は、左右方向に長い断面L字状の板金である。前側連結材43は、右側レール構造体42の上面前部と、左側レール構造体41の上面前部との間に水平に渡され、その長手方向の両端部がネジで夫々固定される。前側連結材43の垂直に立つ部位には、グリル扉8(
図1参照)の背面下部が着脱可能に取り付けられる。
【0030】
後側連結材44は、左右方向に長い板金であって、右側レール構造体42の上面後部と、左側レール構造体41の上面後部との間に水平に渡され、その長手方向の両端部がネジで夫々固定される。前側連結材43と後側連結材44は互いに平行である。後側連結材44の背面における左右方向中央部には、位置決め板70が後方に突出して設けられる。
【0031】
図5に示すように、位置決め板70は、固定部71、平板部72、球状突起部73を備え、側面視略逆L字状に形成される。固定部71は正面視略矩形状に形成され、後側連結材44の背面にネジ93で固定される。平板部72は、固定部71の上端部から後方に屈曲して延設され、平面視略矩形状に形成される。平板部72の高さは、枠部48の後側連結材44の高さと略同一である。平板部72の後端部には、屈曲部721が設けられる。屈曲部721は、斜め下方に向かって屈曲する。球状突起部73は、平板部72の上面の略中央部に設けられ、上方に向かって略半球状に突出する。後述するように、位置決め板70は、下ケース11の被係止バネ29に係止することにより、枠部48の位置決めを行う。
【0032】
また、後側連結材44の背面下部における左右方向略中央部であって、位置決め板70の直下には、後方に向かって突出する当接板75が設けられる。受け台がグリル庫10内に収納されたとき、当接板75の後端部は、底壁15の後端部から上方に延びる上方延設部151の前面に当接する。なお、上方延設部151の前面上側部は、背壁18の収納部23の垂直延設部184の背面下部に接触して固定される。
【0033】
図4に示すように、左側レール構造体41は、取付部材51、伸縮部材52、カバー部材53を備える。取付部材51は、前後方向に延びる断面略L字状の板金である。取付部材51は、平板部51Aと支持部(図示略)を備える。平板部51Aは平面視長方形状であり、下ケース11の左側取付部24に位置決めしてネジ止めされる。支持部は、平板部51Aの左端部に沿って垂直に立設された左側面視略略長形状であって、伸縮部材52を支持する。
【0034】
伸縮部材52の構造を説明する。伸縮部材52は、レール機構40の外方から内方に向かって順に、固定レール52A、第1可動レール52B、第2可動レール52C、第3可動レール52Dを備える。固定レール52Aは、取付部材51の支持部の右側面に固定される。第1可動レール52Bは、固定レール52Aの長手方向に沿ってスライド可能に支持される。第2可動レール52Cは、第1可動レール52Bの長手方向に沿ってスライド可能に支持される。第3可動レール52Dは、第2可動レール52Cの長手方向に沿ってスライド可能に支持される。上記構造により、固定レール52Aの位置を基準として、第1可動レール52B、第2可動レール52C、及び第3可動レール52Dは夫々前後方向にスライド移動するので、伸縮部材52は、自身の長手方向に沿って伸縮できる。カバー部材53は、第3可動レール52Dに固定され、伸縮部材52を内側に収容可能な内部空間を備える。カバー部材53は、伸縮部材52が最も縮んだとき(固定レール52Aに対して、第1可動レール52B、第2可動レール52C、第3可動レール52Dが左右方向に全て重なったとき)、伸縮部材52を内側に収容する(
図3参照)。
【0035】
なお、詳述しないが、右側レール構造体42の構造は、左側レール構造体41の構造と左右対称である。右側レール構造体42は、左側レール構造体41と同様に、取付部材61、伸縮部材62、カバー部材63を備える。取付部材61は、前後方向に延びる断面略L字状の板金であり、平板部61Aと支持部61Bを備える。平板部61Aは、下ケース11の右側取付部25に位置決めしてネジ止めされる。支持部61Bは、平板部61Aの右端部に沿って垂直に立設された左側面視略略長形状であって、伸縮部材62を支持する。伸縮部材62は、伸縮部材52と同様に、レール機構40の外方から内方に向かって順に、固定レール62A、第1可動レール62B、第2可動レール62C、第3可動レール(図示略)を備える。
【0036】
レール機構40は、上記の左側レール構造体41のカバー部材53、右側レール構造体42のカバー部材63、前側連結材43、後側連結材44によって、平面視略矩形状の枠部48を構成する。枠部48には、上方から受け台が着脱可能に装着される。よって、受け台は、左側レール構造体41と右側レール構造体42の伸縮動作によって、レール機構40の前後方向に移動可能となる。
【0037】
図5、
図6を参照し、受け台をグリル庫10内に収納するときの被係止バネ29と位置決め板70による受け台の位置決め動作を説明する。例えば、受け台がグリル庫10のグリル開口から前方に引き出された状態で、使用者は、グリル扉8をグリル開口に向けて押し込む。受け台を支持する枠部48は、グリル扉8と共にレール機構40によって、後方にスライド移動する。枠部48の後側連結材44に設けられた位置決め板70は、グリル庫10の奥側に向けてスライド移動する。
【0038】
被係止バネ29の前方接触部292に対して、位置決め板70の平板部72の後端部が接触する。ここで、平板部72の後端部には屈曲部721が設けられているので、前方接触部292に対して、屈曲部721の上面が接触する。これにより、平板部72の後端部が被係止バネ29の前方接触部292に勢いよく当たった場合でも、そのときの衝撃を緩和でき、前方接触部292が傷付くのを防止できる。位置決め板70が後方にさらに移動すると、前方接触部292は屈曲部721の上面を摺動する。これに伴い、被係止バネ29は上方に押し上げられ、弾性変形する。これにより、屈曲部721の上面に対して、被係止バネ29の折曲部291が接触する。
【0039】
被係止バネ29の折曲部291が、位置決め板70の屈曲部721の上面を乗り越えると、平板部72の上面を摺動し、その後、球状突起部73と接触する(
図6(A)参照)。即ち、折曲部291は、平板部72の上面から球状突起部73に向けて良好にガイドされるので、被係止バネ29を徐々に変形させることができる。これにより、受け台をグリル庫10内に向けてスライド移動する際に、グリル扉8が急激に重くなるのを防止できる。また、球状突起部73は球面であるので、折曲部291に対して点接触できる。これにより、折曲部291が球状突起部73に対して摺動する際の摩擦抵抗を軽減できるので、受け台のスライド移動を良好にできる。さらに、球状突起部73は球面であるので、折曲部291が球状突起部73に傾斜して当接しても、その傾斜のずれを吸収できる。これにより、折曲部291が球状突起部73を摺動する際の摩擦が緩和される。そして、位置決め板70が後方にさらに移動すると、
図6(B)に示すように、被係止バネ29は、球状突起部73によってさらに上方に押し上げられる。
【0040】
位置決め板70が後方にさらに移動し、折曲部291が球状突起部73の頂上部を越えると、球状突起部73の前側の球面に対して、後方接触部293が接触して摺動する。これに伴い、被係止バネ29は元の形状に徐々に復帰する。そして、後方接触部293が球状突起部73の球面を下り終える前に、後側連結材44の背面下部に設けられた当接板75の後端部が、底壁15の後端部から上方に延びる上方延設部151の前面に当接する(
図5参照)。このとき、受け台が位置決めされ、グリル開口はグリル扉8によって閉じられるが、
図6(3)に示すように、被係止バネ29は元の形状に復帰していない。この状態では、被係止バネ29には球状突起部73を遠ざけようとする力Fが依然働いている。つまり、球状突起部73と当接する被係止バネ29の復元力が、枠部48がグリル庫10内に向かって押し込む方向に作用する。これにより、枠部48はグリル庫10の奥側に押しつけられた状態となっている。
【0041】
さらに、後方接触部293が球状突起部73の球面に接触した状態で止まるため、被係止バネ29は球状突起部73に係止した状態となる。これにより、グリル扉8の位置が確実に保持されるので、グリル開口はグリル扉8によって密着して確実に閉じられる。さらに、受け台がグリル庫10外に勝手に移動してしまうのを防止できるので、密閉性の高い安全なグリル庫10を提供できる。
【0042】
また、グリル庫10のグリル開口がグリル扉8によって閉じられたとき、被係止バネ29は、グリル庫10の奥側の収納部23に収納される。この状態では、グリル庫10からの燃焼排気は、グリル庫10内を後方に流れ、傾斜部19に沿って斜め上方に流れることによってダクト部121に向けて案内される、これにより、燃焼排気に含まれる油煙等は、収納部23に入り込まないので、被係止バネ29が油煙で汚れるのを防止できる。よって、位置決め板70との係止を良好に維持できる。
【0043】
なお、受け台をグリル庫10外に引き出す場合、上記の動作の流れとは反対の動作が行われる。取手9を手前に引くことによって、被係止バネ29が球状突起部73を手前側に乗り越える。このとき、枠部48の位置決めのロックが解除されるので、受け台がレール機構40によってグリル庫10外に引き出される。
【0044】
上記実施形態において、枠部48の位置決めを行う被係止バネ29は、下ケース11の底壁15の上面ではなく、下ケース11の背壁18の下部に設けられた収納部23に固定されているので、グリル庫10内の清掃を容易に行うことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のコンロ1のグリルは、グリル庫10を備える。グリル庫10内には、レール機構40が設けられる。レール機構40は、受け台を保持する枠部48を前後方向にスライド移動させる。枠部48をグリル庫10内に向けてスライド移動させ、受け台がグリル庫10内に収納されたときに、グリル庫10のグリル開口がグリル扉8で閉じられる。このようなグリルにおいて、グリル庫10の後部には、筒状のダクト部121が設けられる。枠部48の後部には、位置決め板70が設けられる。グリル庫10内で、ダクト部121の下方には、収納部23が設けられる。受け台がグリル庫10内に収納されたときに、位置決め板70は収納部23に収納される。収納部23には、被係止バネ29が設けられる。被係止バネ29は、位置決め板70に対して上方から係止可能である。位置決め板70は、球状突起部73を備える。被係止バネ29は、上下方向に弾性変形可能であって、球状突起部73に対して上方から係止可能である。
【0046】
枠部48をグリル庫10内に向かってスライド移動させた場合、被係止バネ29は、球状突起部73に当接して弾性変形しながら乗り越える。受け台がグリル庫10内に収納されるときに、被係止バネ29が元の形状に復帰する途中の状態で、レール機構40による枠部48のスライド移動が停止され、グリル開口がグリル扉8で閉じられる。
【0047】
つまり、球状突起部73を乗り越えた後においても、球状突起部73と当接する被係止バネ29の復元力が球状突起部73側とは反対方向、すなわち、枠部48がグリル庫10内に向かって押し込む方向に作用するので、グリル開口をグリル扉8で確実に閉じることができ、枠部48に保持された受け台がレール機構40によって前方に勝手に飛び出すのを防止できる。また、被係止バネ29又は位置決め板70がグリル庫10の底面に設けられないので、グリル庫10内の清掃が容易になる。また、被係止バネ29は、グリル庫10の奥側に配置されるので、使用者が被係止バネ29に手で触れるのを防止できる。また、被係止バネ29は、ダクト部121の下方に位置する収納部23の上面に設けられる。グリル庫10内からの油煙は、ダクト部121に引き寄せられるので、収納部23への回り込みを防止できる。これにより、収納部23の上面に設けられた被係止バネ29が油煙で汚れるのを防止できるので、位置決め板70の球状突起部73との係止を良好に維持できる。
【0048】
上記説明において、グリル扉8は本発明の「扉」の一例である。レール機構40は本発明の「スライド機構」の一例である。被係止バネ29は本発明の「被係止部」、「弾性係止部」の一例である。位置決め板70の球状突起部73は本発明の「係止部」、「突出部」の一例である。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態のコンロ1はビルトインコンロであるが、テーブルコンロでもよい。上記実施形態は、グリル庫10を備えたコンロ1を本発明の一例として説明したが、例えば、グリル庫のみを備えた加熱調理器にも適用可能である。
【0050】
上記実施形態の位置決め板70(
図4、
図5参照)は、平面視略矩形状に形成され、平板部72の後端部には、屈曲部721が設けられるが、例えば、
図7に示す位置決め板170のように、屈曲部721の左右の両角部を円弧状に切断してテーパ部74を形成してもよい。これにより、位置決め板70の軽量化を図ることができるので、受け台のスライド移動を良好にできる。
【0051】
上記実施形態のレール機構40において、左側レール構造体41の伸縮部材52は、3本の第1可動レール52B、第2可動レール52C、第3可動レール52Dを備えるが、可動レールの本数は1本、2本、又は3本以上であってもよい。右側レール構造体42の伸縮部材62も同様である。
【0052】
上記実施形態の被係止バネ29(例えば、後方接触部293)に貫通孔を設け、当該貫通孔の大きさ、形状等を変えることで、被係止バネ29の弾性力を調節してもよい。
【0053】
上記実施形態の位置決め板70は、平板部72の上面に球状突起部73を備えるが、平板部72の上面に山なり形状の突起部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 コンロ
8 グリル扉
10 グリル庫
23 収納部
29 被係止バネ
40 レール機構
48 枠部
70、170 位置決め板
72 平板部
73 球状突起部
74 テーパ部
121 ダクト部
291 折曲部
292 前方接触部
293 後方接触部
721 屈曲部