(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20210101AFI20230621BHJP
【FI】
G01N27/90
(21)【出願番号】P 2019188303
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 大介
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194815(JP,A)
【文献】特開2000-111529(JP,A)
【文献】特開2006-46909(JP,A)
【文献】米国特許第5278498(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、
筐体内の軸接触面に接触して位置する軸部材であって、基準表示が外周面に形成された軸部材、
筐体内のコイル接触面に接触して位置するコイル部材であって、中心に形成された中心空間に軸部材が位置するよう配置されたコイル部材、
コイル部材及び軸部材を覆う絶縁部材,
を備えた渦流探傷装置であって、
コイル部材の上部端面が、軸部材の外周面に施された基準表示が示すレベルに対応している、
ことを特徴とする渦流探傷装置。
【請求項2】
筐体内に、基準表示が外周面に形成された軸部材を、筐体の軸接触面に接触させて配置するとともに、中心に中心空間が形成されたコイル部材を、筐体のコイル接触面に接触させ、当該中心空間に軸部材が位置するよう配置するステップ、
筐体内に絶縁材料を充填し、コイル部材の上部端面を基準表示に対応する位置に配置して、コイル部材を絶縁材料に埋没させるステップ、
充填した絶縁材料を硬化させるステップ、
を備えたことを特徴とする渦流探傷装置の製造方法。
【請求項3】
筐体内に、基準表示及び上部基準表示が外周面に形成された軸部材を、筐体の軸接触面に接触させて配置するとともに、中心に中心空間が形成されたコイル部材を、筐体のコイル接触面に接触させ、当該中心空間に軸部材が位置するよう配置するステップ、
筐体内に絶縁材料を充填するステップであって、充填によって増加方向に変動する絶縁材料の上部端面が軸部材に施された上部基準表示に対応する位置に達したときに充填を停止するとともに、コイル部材の上部端面を基準表示に対応する位置に配置して、コイル部材を絶縁材料に埋没させるステップ、
充填した絶縁材料を硬化させるステップ、
中心に中心空間が形成された上部コイル部材を、硬化した絶縁材料の上部端面に接触させ、当該中心空間に軸部材が位置するよう配置するステップ、
を備えたことを特徴とする渦流探傷装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法は、コイルに電流を印加して磁界を発生させ、検査対象の傷等を検出するための装置及びその製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
渦流探傷は非破壊検査の一種であり、金属等の導電性材料に生じた腐食やひび割れ等の損傷を検出する技術である。渦流探傷においては、コイルに電流を印加して磁界を発生させ、これを検査対象の金属等に近づけて渦電流を生じさせる。この渦電流が検査対象の表面付近の材質の不均一性によって変化する性質を利用し、損傷の有無を判別する。
【0003】
渦流探傷に関する技術としては、後記特許文献1に開示された渦電流探傷センサ及び渦電流探傷方法がある。この渦電流探傷センサ11Aは、保持部材3内にコイル1a、1b、2を備えて構成されている(特許文献1、段落番号[0035]及び
図3)。そして、保持部材3に形成された凹部3a、3b、3cにコイル1a、1b、2を収納して取り付けるが、保持部材3内においてコイル1a、1b、2のコイル軸P1、P2を安定的に保持するために、ポッティング樹脂等を用いてコイル1a、1b、2を固定することが可能であることが示されている(特許文献1、段落番号[0039])。
【0004】
ポッティング樹脂による処理は、電子部品等が実装されたケースに二液性ウレタン樹脂を注入して硬化させ、電子部品等を汚れや水から保護するとともに、ケース内で電子部品等を固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術には、次のような問題がある。渦流探傷装置の保持部材3にポッティング樹脂を充填し、コイル1a、1b、2を埋没させて固定する場合、樹脂の充填の影響によってコイル1a、1b、2に傾きや浮き上がり等が生じることがある。このような、コイル1a、1b、2の固定位置のずれは、渦流探傷の精度を低下させるという問題を招く。
【0007】
そこで本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法は、これらの問題を解決するため、コイルを正確な位置に配置して固定することによって精度の高い渦流探傷を行うことができる渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る渦流探傷装置においては、
筐体、
筐体内の軸接触面に接触して位置する軸部材であって、基準表示が外周面に形成された軸部材、
筐体内のコイル接触面に接触して位置するコイル部材であって、中心に形成された中心空間に軸部材が位置するよう配置されたコイル部材、
コイル部材及び軸部材を覆う絶縁部材,
を備えた渦流探傷装置であって、
コイル部材の上部端面が、軸部材の外周面に施された基準表示が示すレベルに対応している、
ことを特徴とする。
【0009】
また、本願に係る渦流探傷装置の製造方法においては、
筐体内に、基準表示が外周面に形成された軸部材を、筐体の軸接触面に接触させて配置するとともに、中心に中心空間が形成されたコイル部材を、筐体のコイル接触面に接触させ、当該中心空間に軸部材が位置するよう配置するステップ、
筐体内に絶縁材料を充填し、コイル部材の上部端面を基準表示に対応する位置に配置して、コイル部材を絶縁材料に埋没させるステップ、
充填した絶縁材料を硬化させるステップ、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に係る渦流探傷装置においては、コイル部材の上部端面が、軸部材の外周面に施された基準表示が示すレベルに対応している。また、本願に係る渦流探傷装置の製造方法においては、筐体内に絶縁材料を充填する際、コイル部材の上部端面を基準表示に対応する位置に配置して、コイル部材を絶縁材料に埋没させる。
【0011】
このため、コイル部材を筐体内において正確に配置して固定することが可能であり、精度の高い渦流探傷を行うことができる渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法の第1の実施形態を示すプローブ1の平面図である。
【
図2】
図1に示すプローブ1のII-II方向の矢視断面図である。
【
図3】
図2に示すプローブ1の芯11、21に形成された表示溝111、121の詳細を示す断面図である。
【
図4】
図1に示すプローブ1の主な構成部品を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すプローブ1の製造工程を示すII-II方向の矢視断面図であり、ケース50内に芯11、12を配置した状態を示す断面図である。
【
図6】
図1に示すプローブ1の製造工程を示すII-II方向の矢視断面図であり、ケース50内にさらに受信用コイル13、23を配置した状態を示す断面図である。
【
図7】
図1に示すプローブ1の製造工程を示すII-II方向の矢視断面図であり、ケース50内にさらに下側樹脂42を充填した状態を示す断面図である。
【
図8】
図1に示すプローブ1の製造工程を示すII-II方向の矢視断面図であり、ケース50内にさらに送信用コイル15、25を配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法の下記の要素に対応している。
【0014】
芯11、21・・・軸部材
受信コイル13、23・・・コイル部材
受信コイル上面13a、23a・・・コイル部材の上部端面
受信コイル軸穴13s、23s、励磁コイル軸穴15s、25s・・・中心空間
励磁コイル15、25・・・上部コイル部材
下側樹脂42・・・絶縁部材、絶縁材料
充填端面49・・・絶縁材料の上部端面
ケース50・・・筐体
位置決め凹部51、52・・・軸接触面
取付面56、57・・・コイル接触面
下側段部111a、121a・・・基準表示
上側段部111b、121b・・・上部基準表示
【0015】
[第1の実施形態]
本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法の第1の実施形態を説明する。渦流探傷としては、パルス渦流探傷(Pulsed Eddy Current:PEC)がある。パルス渦流探傷は、コイルに直流電流をパルス状に流して検査対象金属の表面に渦電流を発生させ、金属板厚等を測定する検査手法である。板厚を測定することによって、検査対象金属の腐食、ひび割れ等による損傷を検査することができる。本実施形態においては、このパルス渦流探傷を行うためのプローブ1を例に掲げる。
【0016】
(プローブ1の構成及び検査動作の説明)
図1及び
図2に示すように、プローブ1のケース50の内側底面には二つの芯11、21が直立している。芯11、21は、ケース50の内側底面の二か所に形成された位置決め凹部51、52(
図2)にそれぞれ嵌合して固定されている。この芯11、21の各外周面には、中心軸に対して直行する周方向に表示溝111、121が形成されている。表示溝111、121は、一定の幅を有する環状の凹部である。
【0017】
図3は、ケース50の内側底面に取り付けられた芯11、21を示す断面図であり、芯11、21に形成された表示溝111、121の詳細を示している。
図3において、その他の部材は省略されている。表示溝111、121の凹部の下方の段の角部分は下側段部111a、121aとして構成され、上方の段の角部分は上側段部111b、121bとして構成される。
【0018】
また、
図2に示すように、ケース50には、ケース50の内側底面に接して受信コイル13、23が位置している。受信コイル13、23の受信コイル軸穴13s、23s(
図4)に、芯11、21が挿入、貫通した状態で配置されている。
【0019】
そして、受信コイル13、23の上部の平坦面である受信コイル上面13a、23aは、芯11、21の表示溝111、121によって形成された下側段部111a、121a(
図3)が示すレベルに対応している。本実施形態では、受信コイル上面13a、23aのレベルと下側段部111a、121aのレベルとが一致しており、受信コイル上面13a、23aと下側段部111a、121aとは同一平面上に位置している。
【0020】
受信コイル13、23及びケース50の内側底面から上側段部111b、121bまでの間の芯11、21は、ケース50内において下側樹脂42によって覆われている。この下側樹脂42はポッティング樹脂によって構成されている。下側樹脂42の上部の平坦面である充填端面49は、芯11、21の表示溝111、121によって形成された上側段部111b、121b(
図3)が示すレベルに対応している。本実施形態では、充填端面49のレベルと上側段部111b、121bのレベルとが一致しており、充填端面49と上側段部111b、121bとは同一平面上に位置している。
【0021】
さらに、ケース50内には下側樹脂42の充填端面49に接する状態で二つの励磁コイル15、25が配置されている。励磁コイル15、25の励磁コイル軸穴15s、25s(
図4)に、芯11、21が挿入、貫通した状態で配置されている。すなわち、芯11に対しては受信コイル13と励磁コイル15とが同軸上に配置され、互いに下側樹脂42によって絶縁されている。また、芯12に対しては受信コイル23と励磁コイル25とが同軸上に配置され、互いに下側樹脂42によって絶縁されている。
【0022】
そして、励磁コイル15、25及び上側段部111b、121bから上側の芯11、21は、ケース50において上側樹脂44によって覆われている。この上側樹脂44も下側樹脂42と同様、ポッティング樹脂によって構成されている。なお、図においてプローブ1の配線その他の電子部品等は省略されている。
【0023】
続いて、このプローブ1を用いた検査動作を説明する。本実施形態では、プローブ1を用いて、蒸気移送に用いられる配管の内部の損傷を検査する例を示す。
図2に示すように、配管62は本来、ほぼ均一な肉厚L1を有しているが、腐食、ひび割れ等による損傷個所70では肉厚が薄くなっており、プローブ1はこのような損傷個所70を検出する。
【0024】
なお、移送する蒸気の放熱損失を低減するために、配管62には保温材61が取り付けられていることがあるが、保温材61の外面にプローブ1を接触させることによって、配管62の肉厚L1を検出することができる。このため、配管62から保温材61を除去することなく損傷個所70を検出することが可能であり、容易かつ効率的に探傷を行うことができる。
【0025】
検査を行う場合、まずプローブ1の底面を
図2に示すように検出対象に接触させ、プローブ1のスイッチ(図示せず)をONにして検出開始の指令を与える。プローブ1は、この指令を受け、励磁コイル15、25に所定の励磁時間の間、直流電流をパルス状に印加して(励磁モード)、励磁コイル15、25に磁界を形成する。これによって、配管62の金属表面には渦電流が発生し、この渦電流によって逆向きの磁界が生じる。
【0026】
この後、プローブ1は、励磁コイル15、25への電流の印加を所定の受信時間の間、停止する(受信モード)。ここで、配管62の金属表面に発生した前述の渦電流による磁界は、受信コイル13、23を貫き、これに基づいて発生する誘導電流が受信モードの間、信号として検出され、プローブ1に設けられているメモリ(図示せず)に記録される。
【0027】
渦電流は、受信モードの初期には配管62の金属表面にあるが、減衰しながら金属内部に徐々に浸透する。このため、受信コイル13、23を通じて検出する信号も徐々に減衰することになる。そして、浸透した渦電流は金属の裏面に達するが、このとき渦電流は急速に減衰し、これに応じて、受信コイル13、23を通じて検出する信号も急速に低下する。
【0028】
すなわち、受信コイル13、23を通じて検出する信号の経時的な変化を把握し、検出信号の急速な減衰が始まる変曲点を求めることによって配管62の肉厚を検知することができる。
【0029】
以上のような検出動作を行いながら、
図2に示すようにプローブ1を矢印91方向に走査する。これによって、対象範囲における配管62の肉厚L1を検知し、肉厚L1が薄くなっている損傷個所70を探知することができる。
【0030】
(プローブ1の製造方法の説明)
次に、
図1及び
図2に示すプローブ1の製造方法を、
図5ないし
図8に基づいて説明する。プローブ1を製造する場合、まず
図5に示すように、ケース50の内側底面に形成された位置決め凹部51、52に接着剤を塗布し、それぞれ芯11、21を位置決め凹部51、52に嵌合して直立させた状態で固定する。
【0031】
その後、ケース50の内側底面の取付面56、57に接するように、受信コイル13、23を置き、受信コイル軸穴13s、23sに芯11、21を挿入、貫通させる(
図6)。受信コイル13、23の厚みと、芯11、21の底面から表示溝111、121によって形成された下側段部111a、121a(
図3)の長さは同一に形成されているため、このとき受信コイル上面13a、23aと下側段部111a、121aとは同一平面上に位置することになる。
【0032】
そして、
図6に示す状態から、ケース50内に下側樹脂42を形成するための樹脂を充填する(
図7)。充填によって増加方向に変動する充填端面49が、芯11、21の表示溝111、121によって形成された上側段部111b、121b(
図3)が示すレベルに達したとき時点で、充填動作が終了するように樹脂の充填量は予め設定されている。
【0033】
ケース50内に樹脂を充填し下側樹脂42を形成したとき、樹脂の充填の影響によって受信コイル13、23に傾きや浮き上がり等の位置ずれが生じることがある。このような場合、受信コイル13、23の受信コイル上面13a、23a(
図6)のレベルと、芯11、21の表示溝111、121によって形成された下側段部111a、121a(
図3)のレベルにずれが生じるため、作業者は容易に受信コイル13、23の位置ずれを視認することができる。
【0034】
受信コイル13、23の位置ずれを視認した場合、作業者は治具やピンセット等の器具を用いて受信コイル13、23を押さえ、受信コイル上面13a、23aのレベルが下側段部111a、121aのレベルに一致するよう位置調整を行う。これによって、受信コイル13、23を正確な位置に配置することができ、精度の高い渦流探傷を行うことができるプローブ1を得ることができる。この後、充填した樹脂を硬化させ、下側樹脂42によって受信コイル13、23の位置を固定する。
【0035】
次に、
図8に示すように、硬化した下側樹脂42の充填端面49に励磁コイル15、25を置き、励磁コイル軸穴15s、25sに芯11、21を挿入、貫通させて配置する。そして、
図8に示す状態から、ケース50内に上側樹脂44を形成するための樹脂を充填し、芯11、21及び励磁コイル15、25を樹脂で完全に覆う(
図2)。この後、充填した樹脂を硬化させ、上側樹脂44によって励磁コイル15、25の位置を固定する。
【0036】
以上のような工程を経てプローブ1が製造されるため、芯11、21に形成された表示溝111、121の凹部の幅が、受信コイル13、23と励磁コイル15、25との間に介在する絶縁樹脂の厚みに対応することになる。
【0037】
なお、前述のように、ケース50内に下側樹脂42を形成するための樹脂を充填する際、充填端面49が上側段部111b、121bが示すレベルに達したとき時点で、充填動作が終了するように樹脂の充填量は予め設定されているが、樹脂を充填した際、作業者は念のために充填端面49のレベルと上側段部111b、121bのレベルが一致することを目視して確認する。これによって、下側樹脂42上に置かれる励磁コイル15、25を、ケール50内において正確な位置に配置して固定することができ、精度の高い渦流探傷を行うことができるプローブ1を得ることができる。
【0038】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、芯11、21(軸部材)に表示溝111、121を形成し、この表示溝111、121によって下側段部111a、121a(基準表示)及び上側段部111b、121b(上部基準表示)を形成したが、芯11、21から外側に突出する凸部を形成し、この凸部によって下側段部(基準表示)及び上側段部(上部基準表示)を形成してもよい。
【0039】
また、凹部又は凸部ではなく、芯11、21(軸部材)の外周面に印刷やシールの貼り付け等によって表示線を施して基準表示及び上部基準表示を形成することもできる。この場合、芯11、21(軸部材)の外周面の色彩とは異なる色彩を用いて表示線を施し、視認が容易になるよう構成してもよい。
【0040】
なお、凹部又は凸部によって下側段部(基準表示)及び上側段部(上部基準表示)を形成した場合、作業者はより容易かつ確実に下側段部(基準表示)及び上側段部(上部基準表示)を視認することができる。特に、プローブ1(渦流探傷装置)の小型化に応じてケース50(筐体)の内部スペースが小さく構成されている場合、凹部又は凸部によって構成され下側段部(基準表示)及び上側段部(上部基準表示)であれば視認が容易である。
【0041】
さらに、前述の実施形態においては、芯11、21の外周面に環状に表示溝111、121を形成することによって、芯11、21の全周にわたって下側段部111a、121a(基準表示)及び上側段部111b、121b(上部基準表示)を表示したが、芯11、21(軸部材)の周方向において部分的に基準表示及び上部基準表示を形成してもよい。
【0042】
また、前述の実施形態においては、所定の幅を有する表示溝111、121によって同時に下側段部111a、121a(基準表示)及び上側段部111b、121b(上部基準表示)を形成したが、各々個別に下側段部(基準表示)及び上側段部(上部基準表示)を形成してもよい。
【0043】
また、前述の実施形態においては、単一のプローブ1(渦流探傷装置)を走査させて配管62を検査する例を示したが、検査対象となる配管の周方向に複数のプローブ1(渦流探傷装置)を固定的に設け、さらにこのような周方向の複数のプローブ1を配管の軸方向の随所に配置することもできる。
【0044】
そして、各プローブ1(渦流探傷装置)から検出データを無線又は有線で発信して定期的に配管の検査を行うシステムを採用することもできる。このようなシステムにおいては、使用する複数のプローブ1(渦流探傷装置)の間で検出精度にばらつきがある場合、適正な検査を行うことができない。このため、本願に係る渦流探傷装置及び渦流探傷装置の製造方法を適用したプローブ1(渦流探傷装置)をこのシステムに用い、精度の高い渦流探傷を行えばより有用である。
【符号の説明】
【0045】
11、21: 芯 13、23:受信コイル 13a、23a:受信コイル上面
13s、23s:受信コイル軸穴 15、25:励磁コイル 15s、25s:励磁コイル軸穴
42:下側樹脂 49:充填端面 50:ケース 51、52:位置決め凹部
56、57:取付面 111a、121a:下側段部 111b、121b:上側段部