(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】液化消火剤用噴射ヘッド
(51)【国際特許分類】
A62C 31/02 20060101AFI20230621BHJP
B05B 1/26 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A62C31/02
B05B1/26 Z
(21)【出願番号】P 2020550429
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038588
(87)【国際公開番号】W WO2020071329
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018187665
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彗一郎
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-125673(JP,A)
【文献】特許第5276730(JP,B1)
【文献】特開2011-255152(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1151800(EP,A2)
【文献】実開昭52-163995(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
B05B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッドであって、液化消火剤を供給する配管が接続される噴射ヘッド本体と、噴射ヘッド本体に配設された、液化消火剤が通過するオリフィスを形成したオリフィス板と、該オリフィスの出口部に配設されたブロック形状の多孔質部材と、該多孔質部材のオリフィスの出口部の反対側の端面に当接して配設されたバッフルプレートとを備えてなり、該バッフルプレートが、少なくとも多孔質部材の端面のオリフィスの外接円の投影面積部分を覆うようにするとともに、噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間、及び/又は、バッフルプレート及び/又は噴射ヘッド本体のオリフィスの外接円の投影面積部分の外側に形成された透孔を通して液化消火剤を
オリフィスの軸方向と同方向の円柱状に放出するようにしてなることを特徴とする液化消火剤用噴射ヘッド。
【請求項2】
液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッドであって、液化消火剤を供給する配管が接続される噴射ヘッド本体と、噴射ヘッド本体に配設された、液化消火剤が通過するオリフィスを形成したオリフィス板と、該オリフィスの出口部に配設されたブロック形状の多孔質部材と、該多孔質部材のオリフィスの出口部の反対側の端面に当接して配設されたバッフルプレートとを備えてなり、該バッフルプレートが、少なくとも多孔質部材の端面のオリフィスの外接円の投影面積部分を覆うようにするとともに、噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間、及び/又は、バッフルプレート及び/又は噴射ヘッド本体のオリフィスの外接円の投影面積部分の外側に形成された透孔を通して液化消火剤を
オリフィスの軸方向と直交する方向の所定の角度を有する扇状に放出するようにしてな
り、かつ、前記液化消火剤の放出形態を扇状にするための噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間の両端を形成する区画壁面を、隙間の反対側に向かう傾斜面に形成し、傾斜面と多孔質部材との間に楔形の隙間が形成されるようにしてなることを特徴とする液化消火剤用噴射ヘッド。
【請求項3】
前記隙間及び/又は透孔の幅寸法が、30mm以下であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の液化消火剤用噴射ヘッド。
【請求項4】
前記隙間及び/又は透孔の幅寸法が、1mm~10mmであることを特徴とする請求項
3に記載の液化消火剤用噴射ヘッド。
【請求項5】
前記隙間の内径と外径の比及び/又は複数の透孔に共通に接する小径円の径と大径円の径の比が0.70以上であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の液化消火剤用噴射ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物等の沸点の高い液化消火剤用の噴射ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火設備において、消火剤として、ハロゲン化物等の沸点の高い液化消火剤、例えば、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(CF3CF2C(O)CF(CF3)2、沸点49.2℃、NFPA/ISO登録名「FK-5-1-12」)を使用する場合、消火対象区画に液化消火剤を放出するために、液化消火剤を霧状に噴霧する噴射ヘッドを用いるようにしている。
【0003】
しかしながら、液化消火剤を霧状に噴霧する噴射ヘッドは、液化消火剤の拡散特性や気化特性、特に、放射軸方向の拡散特性が悪く、1つの噴射ヘッドでカバーできる消火対象範囲が小さいという問題に加え、噴射ヘッドから液化消火剤が放出される際に、高レベルの騒音が発生するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッドが有する問題点に鑑み、液化消火剤の拡散特性や気化特性が良く、1つの噴射ヘッドでカバーできる消火対象範囲を大きくすることができるとともに、騒音の低減率を高めることができるようにした液化消火剤用噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の液化消火剤用噴射ヘッドは、液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッドであって、液化消火剤を供給する配管が接続される噴射ヘッド本体と、噴射ヘッド本体に配設された、液化消火剤が通過するオリフィスを形成したオリフィス板と、該オリフィスの出口部に配設されたブロック形状の多孔質部材と、該多孔質部材のオリフィスの出口部の反対側の端面に当接して配設されたバッフルプレートとを備えてなり、該バッフルプレートが、少なくとも多孔質部材の端面のオリフィスの外接円の投影面積部分を覆うようにするとともに、噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間、及び/又は、バッフルプレート及び/又は噴射ヘッド本体のオリフィスの外接円の投影面積部分の外側に形成された透孔を通して液化消火剤を放出するようにしてなることを特徴とする。
【0006】
この場合において、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と同方向の円柱状となるようにすることができる。
【0007】
前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と所定の角度を有する円錐状であるようにすることができる。
【0008】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と直交する方向の円盤状となるようにすることができる。
【0009】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と直交する方向の所定の角度を有する扇状となるようにすることができる。
この場合、前記液化消火剤の放出形態を扇状にするための噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間の両端を形成する区画壁面を、隙間の反対側に向かう傾斜面に形成し、傾斜面と多孔質部材との間に楔形の隙間が形成されるようにしてなるようにすることができる。
【0010】
また、前記隙間及び/又は透孔の幅寸法が、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mmとなるようにしたり、前記隙間の内径と外径の比及び/又は複数の透孔に共通に接する小径円の径と大径円の径の比が0.70以上となるようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液化消火剤用噴射ヘッドによれば、オリフィスを介して供給された液化消火剤が、ブロック形状の多孔質部材内をショートパスすることなく流動しながら拡散し、かつ、バッフルプレートによって液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することで、液化消火剤の拡散特性や気化特性を改善して、液化消火剤を広い範囲に拡散、気化させることができる。これにより、1つの噴射ヘッドでカバーできる消火対象範囲を大きくすることができる。
また、液化消火剤が、ブロック形状の多孔質部材内をショートパスすることなく流動しながら拡散して放出されるため、液化消火剤の放出時に発生する騒音を低減することができる。
【0012】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と同方向の円柱状となるようにすることにより、液化消火剤のオリフィスの軸方向と同方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0013】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と所定の角度を有する円錐状となるようにすることにより、液化消火剤のオリフィスの軸方向と同方向の拡散特性を改善するとともに、さらに、液化消火剤のオリフィスの軸方向と直交する方向成分の拡散特性を持たせることによって、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0014】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と直交する方向の円盤状となるようにすることにより、液化消火剤のオリフィスの軸方向と直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0015】
また、前記液化消火剤の放出形態がオリフィスの軸方向と直交する方向の所定の角度を有する扇状となるようにすることにより、液化消火剤のオリフィスの軸方向と直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤を特定の方向に拡散、気化させることができる。
この場合、前記液化消火剤の放出形態を扇状にするための噴射ヘッド本体とバッフルプレートとの間に形成された隙間の両端を形成する区画壁面を、隙間の反対側に向かう傾斜面に形成し、傾斜面と多孔質部材との間に楔形の隙間が形成されるようにすることにより、多孔質部材の大気開放面積を増加させることができる。
【0016】
また、前記隙間及び/又は透孔の幅寸法が、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mmとなるようにしたり、前記隙間の内径と外径の比及び/又は複数の透孔に共通に接する小径円の径と大径円の径の比が0.70以上となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【
図2】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例の変形実施例を示す正面断面図である。
【
図3】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【
図4】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例の変形実施例を示す正面断面図である。
【
図5】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図断面図である。
【
図6】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図断面図である。
【
図7】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第2実施例を示す断面図である。
【
図8】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例を示す断面図である。
【
図9】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示す正面断面図である。
【
図10】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【
図11】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示す正面図(一部断面図)である。
【
図12-1】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図12-2】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図13-1】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図13-2】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示し、(a)は
図13-1(b)のB-B断面図、(b)は形状の異なる閉鎖部材を用いた変形実施例の(a)に対応する断面図、(c)~(e)は形状の異なる閉鎖部材の説明図である。
【
図14】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示す正面図(一部断面図)である。
【
図15】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示す正面図(一部断面図)である。
【
図16】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例の変形実施例を示す正面図(一部断面図)である。
【
図17】本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第4実施例を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第1実施例を示す。
この液化消火剤用噴射ヘッド1は、液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッド1であって、液化消火剤を供給する配管(図示省略)が接続される噴射ヘッド本体2と、噴射ヘッド本体2に配設された、液化消火剤が通過するオリフィス31を形成したオリフィス板3と、オリフィス31の出口部に配設されたブロック形状の多孔質部材4と、多孔質部材4のオリフィス31の出口部の反対側の端面に当接して配設されたバッフルプレート5とを備えてなり、バッフルプレート5が、少なくとも多孔質部材4の端面のオリフィス31の外接円31cの投影面積部分を覆うようにするとともに、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成された隙間6を通して液化消火剤を放出するようにしている。
ここで、噴射ヘッド1は、中心軸を回転対称とした円形に形成されている(以下の実施例も同様。)。
また、液化消火剤を供給する配管が接続される噴射ヘッド本体2には、配管を接続するための雌ねじ(又は雄ねじ)を形成するようにしている。
【0020】
ここで、この液化消火剤用噴射ヘッド1が対象とする液化消火剤には、以下(1)~(3)の消火剤が含まれる。
(1)一般的な保存状態で貯蔵容器に液体で保持される消火剤、例えば、ハロン1301等のハロゲン化物消火剤。
(2)噴射ヘッドから噴射される際に、噴射ヘッド直前の配管内で液体の状態の消火剤、例えば、HFC-227ea等。
(3)沸点が0℃以上の消火剤、例えば、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(CF3CF2C(O)CF(CF3)2、沸点49.2℃、NFPA/ISO登録名「FK-5-1-12」)等。
【0021】
この場合において、オリフィス板3は、中心に1個又は複数個(本実施例においては、6個。)のオリフィス31を等角度間隔に形成した円盤形状のもので、噴射ヘッド本体2の内部空間に形成した段部21に、例えば、段部21及びオリフィス板3の周面に形成したねじを介して、着脱可能に配設するようにしている。これにより、複数種類のオリフィス31を形成したオリフィス板3を設置場所等の条件に応じて選択することができるようにしている。
【0022】
ブロック形状の多孔質部材4は、一体構造のもので構成するほか、本実施例に示すように、複数の多孔質部材41、42を積層した分割構造のもので構成することができる。
【0023】
ブロック形状の多孔質部材4は、形状保持性能の高い、すなわち、液化消火剤の放出圧力で変形等を起こさない無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物等)を好適に用いることができ、3次元の網目状組織体からなる多孔質金属材料(住友電気工業社製「セルメット」(登録商標名))をより好適に用いることができる。
【0024】
多孔質部材4の空隙の孔径は、全体を均質な材料で構成するほか、液化消火剤の流動方向に沿って変化させた材料、より具体的には、空隙の孔径が液化消火剤の流動方向に沿って順次小さくなる材料で構成することができ、例えば、本実施例においては、液化消火剤の流動方向上流側の多孔質部材41の空隙の孔径よりも、下流側の多孔質部材42の空隙の孔径が小さくなるような材料で構成することができる。
このように、多孔質部材4の空隙の孔径を、液化消火剤の流動方向に沿って小さくなるようにすることにより、ブロック形状の多孔質部材内を流動する液化消火剤を均一に拡散させることができる。
【0025】
そして、多孔質部材4は、一体構造、分割構造のいずれの場合も、多孔質部材4の一方側の端面が噴射ヘッド本体2(本実施例においては、オリフィス板3を含む。以下の他の実施例においても同様。)に接して配設することで、オリフィス31の出口部に配設されるようにしている。
また、多孔質部材4の他方側の端面、すなわち、多孔質部材4のオリフィス31の出口部の反対側の端面には、バッフルプレート5が当接するようにしている。
【0026】
ところで、本実施例においては、オリフィス板3及び多孔質部材4は、1段構造としたが、
図2に示す変形実施例のように、オリフィス板3及び多孔質部材4の上流側に、オリフィス31Aを形成したオリフィス板3A及び多孔質部材4Aを配設することによって、2段構造(又は3段以上の多段構造)とすることもできる。
これにより、噴射ヘッド本体2の内部での液化消火剤の均一な拡散特性を改善することができる。
また、
図2に示す変形実施例においては、オリフィス板3Aを、噴射ヘッド本体2の配管との接続部側の開口を通して、噴射ヘッド本体2に着脱可能に構成するようにしている(後述の
図6、
図9、
図11、
図14及び
図15に示す実施例のオリフィス板3も同様。)。
これにより、噴射ヘッド本体2に多孔質部材4を組み付けた状態で在庫として保管しておき、出荷時に、噴射ヘッドから放出される液化消火剤消火剤の流量に対応したオリフィス板3A(オリフィス板3)を、噴射ヘッド本体2の配管との接続部側の開口を介して、噴射ヘッド本体2に装着するようにすることができる。そして、これにより、一般的な噴射ヘッドと比べて大型化するこれら実施例の噴射ヘッドを在庫として保管しやすくすることによって、保管場所の制約やコスト上昇の問題を解消しながら、噴射ヘッドの出荷を迅速に行うことができるようにすることができる。
【0027】
バッフルプレート5は、多孔質部材4の中心部を貫通するねじ部51(ねじ部51は、バッフルプレート5に一体に形成するほか、
図3に示す変形実施例のように、別部材(ねじ部材8)で構成することができる。また、ねじ部51をねじ部材8で構成する場合は、1本又は複数本のねじ部材8を用いることができる。)によってオリフィス板3に螺着する(又はねじ部51をボルト及びナットで構成してオリフィス板3に締結する)ことにより、噴射ヘッド本体2に固定するようにしている。
そして、バッフルプレート5は、多孔質部材4の他方側の端面に当接することで、少なくとも多孔質部材4の端面のオリフィス31の外接円31c(本実施例においては、6個のオリフィス31の共通外接円31c)の投影面積部分を覆うようにし、当該部分から液化消火剤が放出されないようにするとともに、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成された隙間6を通して液化消火剤を放出するようにしている。
【0028】
噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成する隙間6は、本実施例においては、出口側が若干拡開した円環状のスリットで構成するようにし、これにより、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の円柱状となるようにしている。
ここで、円環状のスリットからなる隙間6の幅寸法Dは、液化消火剤用噴射ヘッド1の能力や対象とする液化消火剤によって適宜設定することができるが、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度で、隙間6の内径と外径の比が0.70以上になるように設定するようにする。
また、円環状のスリットからなる隙間6(バッフルプレート5)の厚さ方向の寸法Tは、液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することができるように、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の拡散特性を改善することができる。
【0029】
この液化消火剤用噴射ヘッド1によれば、オリフィス31を介して供給された液化消火剤が、ブロック形状の多孔質部材4内をショートパスすることなく流動しながら拡散し、かつ、バッフルプレート5によって液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することで、液化消火剤の拡散特性や気化特性を改善して、液化消火剤を広い範囲に拡散、気化させることができる。これにより、1つの噴射ヘッド1でカバーできる消火対象範囲を大きくすることができる。
また、液化消火剤が、ブロック形状の多孔質部材4内をショートパスすることなく流動しながら拡散して放出されるため、液化消火剤の放出時に発生する騒音を低減することができる。
【0030】
ところで、上記第1実施例においては、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成する隙間6を、出口側が若干拡開した円環状のスリットで構成するようにしたが、隙間6の形状は、これに限定されず、出口側が拡開しないストレート形状の円環状のスリットで構成するようにすることにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させるようにすることができる。
【0031】
また、
図4に示す変形実施例のように、噴射ヘッド本体2側をストレート形状とし、バッフルプレート5側を第1実施例より大きく拡開した円環状のスリットで構成することにより、円柱状に放出される液化消火剤の中心方向への拡散特性を改善することができる。
【0032】
また、上記第1実施例においては、バッフルプレート5を、多孔質部材4の中心部を貫通するねじ部51によってオリフィス板3に螺着することにより、噴射ヘッド本体2に固定するようにしたが、
図5及び
図6に示す変形実施例のように、バッフルプレート5を、立ち上がり部52を備えたキャップ構造とし、噴射ヘッド本体2に螺合して固定するようにすることができる。
そして、
図5及び
図6に示す変形実施例において、バッフルプレート5は、多孔質部材4の他方側の端面に当接することで、少なくとも多孔質部材4の端面のオリフィス31の外接円31c(本実施例においては、6個のオリフィス31の共通外接円31c)の投影面積部分を覆うようにし、当該部分から液化消火剤が放出されないようにするとともに、バッフルプレート5のオリフィス31の外接円31c(本実施例においては、6個のオリフィス31の共通外接円31c)の投影面積部分の外側に形成された透孔7を通して液化消火剤を放出するようにしている。
【0033】
透孔7は、円環状に配列した長孔(
図5に示す変形実施例)や円孔(
図6に示す変形実施例)で構成するようにし、これにより、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の円柱状となるようにしている。
ここで、透孔7の幅寸法Dや形成間隔は、液化消火剤用噴射ヘッド1の能力や対象とする液化消火剤によって適宜設定することができるが、透孔7の幅寸法Dは、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度で、複数の透孔7に共通に接する小径円71の径と大径円72の径の比が0.70以上になるように設定するようにする。
また、透孔7(バッフルプレート5)の厚さ方向の寸法Tは、液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することができるように、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の拡散特性を改善することができる。
【0034】
ところで、上記各実施例は、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の円柱状となるようにしているが、液化消火剤の放出形態は、これに限定されず、例えば、
図7に示す本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第2実施例のように、隙間6に位置する噴射ヘッド本体2及びバッフルプレート5を円錐状に切除した切欠部22、53を形成することによって、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向と所定の角度(本実施例においては、約65°に設定しているが、この角度は、0~90°の任意の角度に設定することができる。)を有する円錐状となるようにすることもできる。
ここで、円環状のスリットからなる隙間6の幅寸法Dは、液化消火剤用噴射ヘッド1の能力や対象とする液化消火剤によって適宜設定することができるが、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と同方向の拡散特性を改善するとともに、さらに、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と直交する方向成分の拡散特性を持たせることによって、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0035】
このほか、液化消火剤の放出形態としては、例えば、
図8に示す本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第3実施例のように、隙間6を噴射ヘッド本体2の下端側に形成することによって、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向と直交する方向の円盤状となるようにすることもできる。
ここで、円環状のスリットからなる隙間6の幅寸法Dは、液化消火剤用噴射ヘッド1の能力や対象とする液化消火剤によって適宜設定することができるが、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
また、円環状のスリットからなる隙間6の厚さ方向の寸法Tは、液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することができるように、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0036】
ところで、本実施例においては、オリフィス板3及び多孔質部材4は、1段構造としたが、
図9に示す変形実施例のように、オリフィス板3及び多孔質部材4の上流側に、オリフィス31Aを形成したオリフィス板3A及び多孔質部材4Aを配設することによって、2段構造(又は3段以上の多段構造)とすることもできる。
これにより、噴射ヘッド本体2の内部での液化消火剤の均一な拡散特性を改善することができる。
【0037】
また、バッフルプレート5は、多孔質部材4の中心部を貫通するねじ部51によってオリフィス板3に螺着するようにしているが、これに代えて、ねじ部材8を用いて噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5とを締結するようにすることもできる。
具体的には、
図10に示す変形実施例のように、噴射ヘッド本体2及びバッフルプレート5に外周側に部分的に突出する膨出部23、54を形成し、この膨出部23、54の位置でねじ部材8を用いて噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5とを締結するようにすることができる。
ここで、ねじ部材8の位置には、必要に応じて、スペーサ81を介在させることができる。
また、
図11に示す変形実施例のように、多孔質部材4を貫通するねじ部材8を用いて、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5とを締結するようにすることができる。
ここで、噴射ヘッド本体2の外周面には、液化消火剤を供給する配管(図示省略)に噴射ヘッド本体2を接続する際に、締付具(図示省略)を装着するための操作用穴24を形成するようにしている。
【0038】
ところで、液化消火剤の放出形態としては、
図12-1に示す変形実施例のように、液化消火剤の放出形態がオリフィス31の軸方向と直交する方向の所定の角度αを有する扇状となるようにすることもできる。
この液化消火剤の放出形態は、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成された液化消火剤を放出する円環状のスリットからなる隙間6の一部を閉鎖部材62によって閉鎖することによって容易に得ることができる。
角度αは、噴射ヘッド1の設置形態等に合わせて任意の角度(例えば、30°~330°の範囲)に設定することができる。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤を特定の方向に拡散、気化させることができるようになるため、例えば、消火区画を構成する部屋の入り隅部に設置される噴射ヘッド1に好適に使用することができる。
この場合、
図12-2に示す変形実施例のように、等角度間隔に形成(
図12-1に示す変形実施例においては、60°間隔で6個形成。)していたオリフィス31を、偏在するように形成(例えば、隙間6を形成した側のみ60°間隔で3個形成。)することができる。
これにより、簡単に液化消火剤の放出特性を種々に変化、調整することができる。
【0039】
さらに、
図13-1及び
図13-2(a)に示す変形実施例のように、液化消火剤の放出形態を扇状にするための噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成された隙間6の両端を形成する区画壁面(閉鎖部材62の端面62a)を、隙間6の反対側(奥側)に向かう傾斜面に形成し、この傾斜面(閉鎖部材62の端面62a)と多孔質部材4の外周面との間に楔形の隙間6aが形成されるようにすることができる。
この場合、傾斜面(閉鎖部材62の端面62a)は、多孔質部材4の外周面に外接する形状に形成することが望ましい。
これにより、楔形の隙間6aから傾斜面(閉鎖部材62の端面62a)に沿った液化消火剤(気化状態)の流れを発生させ、液化消火剤(気化状態)の半径方向の流れの方向を変更させることで、多孔質部材4の大気開放面積を増大させることができ(液化消火剤の放出角度を制限する角度βに対して、多孔質部材4の大気開放面積の基準は、角度βより大きな角度αを基準とすることができる。)、液化消火剤のオリフィスの軸方向と直交する方向の拡散特性を一層改善することができる。
この場合、傾斜面(閉鎖部材62の端面62a)の形状は、
図13-1及び
図13-2(a)に示す変形実施例の平面形状に限定されず、
図13-2(b)~(e)に示す変形実施例のような、曲面形状にすることもできる。
ここで、
図13-2(b)は、半円形状の開口が開くように、
図13-2(c)は、それより小さい半円形状の開口が開くように、
図13-2(d)は、1/4円形状の開口が開くように、
図13-2(e)は、円形状の開口が開くように、閉鎖部材62の端面62aを加工するようにしている。
このように、傾斜面(閉鎖部材62の端面62a)の形状を変えることにより、開口の形状や面積を変化させることができ、これにより、本体形状を大きく変更させることなく、液化消火剤の放出特性を種々に変化、調整することができる。
【0040】
また、液化消火剤を放出する円環状のスリットからなる隙間6に代えて、オリフィス31の外接円(本実施例においては、6個のオリフィス31の共通外接円)の投影面積部分の外側に形成された透孔7を通して液化消火剤を放出するようにすることもできる。
透孔7は、
図14に示す変形実施例のように、立ち上がり部52を備えたキャップ構造としたバッフルプレート5の立ち上がり部52に形成した円環状に配列した長孔や、
図15に示す変形実施例のように、立ち上がり部52を備えたキャップ構造としたバッフルプレート5の立ち上がり部52に形成した円環状に複数段(図示の例では、2段。このように多段とすることで、好適な隙間幅を保ちつつ、多孔質部材4の大気開放面積を増大させることができる。)に配列した長孔や、
図16に示す変形実施例のように、噴射ヘッド本体2の下部(下方に配設した多孔質部材42の外周面が面する部分。)に形成した円環状に配列した円孔で構成することができる。
ここで、透孔7の幅寸法Dや形成間隔は、液化消火剤用噴射ヘッド1の能力や対象とする液化消火剤によって適宜設定することができるが、透孔7の幅寸法Dは、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
また、透孔7(バッフルプレート5の立ち上がり部52や噴射ヘッド本体2)の厚さ方向の寸法Tは、液化消火剤の放出方向が特定方向に規制することができるように、好ましくは、30mm以下、より好ましくは、1mm~10mm程度に設定するようにする。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0041】
ところで、上記各実施例においては、液化消火剤を放出する方向を1方向に設定するようにしたが、上記各実施例を組み合わせることによって、液化消火剤を放出する方向を2方向にすることができる。
例えば、
図17に示す本発明の液化消火剤用噴射ヘッドの第4実施例のように、
図1に記載した第1実施例と、
図16に記載した第3実施例の変形実施例とを組み合わせることによって、液化消火剤を、噴射ヘッド本体2とバッフルプレート5との間に形成する隙間6から、オリフィス31の軸方向(噴射ヘッド本体2の中心軸の軸方向)と同方向の円柱状となるように放出するとともに、噴射ヘッド本体2の下部(下方に配設した多孔質部材42の外周面が面する部分。)に形成した円環状に配列した円孔で構成した透孔7から、オリフィス31の軸方向と直交する方向の円盤状となるように放出するようにしている。
これにより、液化消火剤のオリフィス31の軸方向と同方向及び直交する方向の拡散特性を改善して、液化消火剤をより広い範囲に拡散、気化させることができる。
【0042】
以上、本発明の液化消火剤用噴射ヘッドについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の液化消火剤用噴射ヘッドは、液化消火剤の拡散特性や気化特性が良く、1つの噴射ヘッドでカバーできる消火対象範囲を大きくすることができるとともに、騒音の低減率を高めることができることから、液化消火剤を使用する消火設備において消火対象区画に液化消火剤を放出するために設置される噴射ヘッドに広く用いることができ、適用対象も、新設の消火設備に限定されず、噴射ヘッドを交換するだけで、既設の消火設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 噴射ヘッド
2 噴射ヘッド本体
21 段部
22 切欠部
23 膨出部
24 操作用穴
3 オリフィス板
31 オリフィス
4 多孔質部材
41 多孔質部材
42 多孔質部材
5 バッフルプレート
51 ねじ部
52 立ち上がり部
53 切欠部
54 膨出部
6 隙間
7 透孔
8 ねじ部材
81 スペーサ