(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】光開裂性プライマー組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 205/42 20060101AFI20230621BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230621BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230621BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20230621BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20230621BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20230621BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20230621BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C07C205/42 CSP
A61P1/02
A61P19/08
A61K6/30
A61K6/60
A61L27/28
A61L27/40
A61L24/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021097074
(22)【出願日】2021-06-10
(62)【分割の表示】P 2018559159の分割
【原出願日】2017-01-27
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518267964
【氏名又は名称】アカテコール・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACatechol, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョンジュン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・エイチ・リプシュッツ
(72)【発明者】
【氏名】サム・エル・グエン
(72)【発明者】
【氏名】ロスコー・リンスタット
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533754(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093461(WO,A1)
【文献】QIAN-BAO CHEN,MULTISTIMULI-RESPONSIVE HYDROGEL PARTICLES PREPARED VIA THE SELF-ASSEMBLY OF PEG-BASED HYPERBRANCHED POLYMERS,CHEMISTRY LETTERS,2015年03月07日,VOL:44, NR:5,,PAGE(S):677 - 679,http://dx.doi.org/10.1246/cl.150064
【文献】RADL SIMONE,PHOTOCLEAVABLE EPOXY BASED MATERIALS,POLYMER,2015年06月03日,VOL:69,,PAGE(S):159 - 168,http://dx.doi.org/10.1016/j.polymer.2015.05.055
【文献】Klinger, Daniel,Photo-sensitive PMMA microgels: light-triggered swelling and degradation,Soft Matter ,2011年,7(4),,1426-1440
【文献】Klinger, Daniel,Dual Stimuli-Responsive Poly(2-hydroxyethyl methacrylate-co-methacrylic acid) Microgels Based on Photo-Cleavable Cross-Linkers: pH-Dependent Swelling and Light-Induced Degradation,Macromolecules (Washington, DC, United States),2011年,44(24),,9758-9772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61P
A61K
A61L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】
(式中:mは1であり;nは1であり;iは1であり;
EGおよびEG1の各々は、CH
2=C(C
1-3アルキル)-、CH
2=CHC(O)-、およびCH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)-よりなる群から独立して選択される末端基であり;
SP1およびSP2の各々は、-O-および-(CH
2)
q-(ここに、qは1~6である)よりなる群から独立して選択されるスペーサーであり;
SP3は、スペーサーD:
(式中、ZはCであり;Eはハロであり;およびeは0または1である)である)
で表される表面結合化合物。
【請求項2】
1)基材表面を第1の溶媒で洗浄し;
2)式IIで表される表面結合化合物(所望により第2の溶媒中で)を前記表面に接触させる:
【化2】
(式中:mは1であり;nは1であり;iは1であり;
EGおよびEG1の各々は、CH
2=C(C
1-3アルキル)-、CH
2=CHC(O)-、およびCH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)-よりなる群から独立して選択される末端基であり;
SP1およびSP2の各々は、-O-および-(CH
2)
q-(ここに、qは1~6である)よりなる群から独立して選択されるスペーサーであり;
SP3は、スペーサーD:
【化3】
(式中、ZはCであり;Eはハロであり;およびeは0または1である)である)
ことを含むことを特徴とする基材表面上でコーティングを形成する方法。
【請求項3】
コーティングが、表面上に式IIで表される化合物の自己集合によって形成されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
自己集合した層が、0.1nm~20nm、0.1~15nm、0.1~10nmまたは0.1~5nmであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
コーティングが接着剤またはプライマ
ーとして用いられることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
基材が、金属、金属酸化物および無機物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
基材が、雲母、ケイ素、ガラス、カルシウム、エナメル、骨、鋼、歯牙エナメル質、歯牙象牙質、ヒドロキシルアパタイト、カオリンおよびジルコニアよりなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
金属または金属酸化物が、ケイ酸塩無機物、シリカ、カオリン、ジルコニア、アルミニウム、銅、クロム、クロム-コバルト、チタン、亜鉛、スズ、インジウム-スズおよび酸化カルシウムよりなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法
。
【請求項9】
接着剤が、歯科適用、医学的インプラントおよび整形外科的適用のための接着層を形成することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項10】
金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化銅、クロム、クロム-コバルト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズおよびインジウム-スズ-オキサイド(ITO)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
基材が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ケイ素、シリコンウェハー、ポリフッ化ビニル(PVF)、天然ゴム(CR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル、アクリル(PMMA)、エポキシ(EP)、ポリオキシメチレン、アセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(VC)、ポリエステル(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアリールスルホン(PAS)、フェノール樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド6(PA 6)、ポリカーボネート(PC)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびステンレス鋼(SS)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項12】
a)結合のための歯表面を調製し;
b)歯表面に光開裂性接着剤または接着剤の混合物を適用し;
c)光開裂性接着剤または接着剤の混合物と歯科用接着剤とを接触させて、結合用混合物を形成し;
d)歯科用対象物を組合せ接着剤混合物と接触させて、歯表面上に歯科用対象物を固定し;次いで
e)組合せ接着剤混合物を硬化させ、かつ歯表面上に歯科用対象物を固定するのに十分な期間、組合せ接着剤混合物に光源を適用し;
ここに、光開裂性接着剤または接着剤の混合物は、請求項1に記載の表面結合化合物もしくはその混合物を含むことを特徴とする、歯表面上に歯科用対象物を結合する方法。
【請求項13】
さらに、
f)歯表面に結合し、かつ所望の目的のために残存するのに十分な期間、歯科用対象物が歯表面上に残存することを可能にし;次いで
g)十分な期間、歯科用対象物および/または歯の物理的撹拌と共に、十分な期間にUV放射またはIR放射で組合せ接着剤混合物を曝露して、表面から歯科用対象物を剥離または除去する
ことを含むことを特徴とする請求項
12記載の方法。
【請求項14】
物理的撹拌が、超音波処理であることを特徴とする請求項
13記載の方法。
【請求項15】
i)10~99重量%の請求項1に記載の結合化合物;
ii)所望により、水、エタノール、イソプロパノール、アセトンおよびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒または溶媒混合物;ならびに
iii)1~90重量%の歯科用接着剤または歯科用接着剤の混合物
を含む接着剤混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2016年3月16日付けで出願された米国仮出願第62/309,162号、および2016年1月28日付けで出願された米国仮出願第62/288,281号に関連し、それらの開示をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。
【背景技術】
【0002】
カテコール基との水素結合、金属に対するキレート化、カテコールの金属-酸素配位のごとき強い二座結合(bidentate bonding)、ならびにカテコール官能基を含むプライマーとしてのそれらの適用が当該技術分野において知られている。これらのカテコール化合物は、種々の無機物および金属酸化物表面との強い水素結合およびキレート結合を形成する。
【0003】
特定の部位でのビルディングブロック(building block)の光開裂は、特許[例えば、オリゴヌクレオチド用光開裂性リンカー(EP0233053A2)、核酸配列決定(US5366860)用ヌクレオチド(US5241060)]および非特許報告[例えば、ヒドロゲルの光開裂性分解(解重合)(Z., Shafiqら, Bioinspired Underwater Bonding and Debonding on Demand. Angew. Chem., Int. Ed. 51, 4332-4335 (2012)を参照)、ブロック共重合体ミセルの光開裂性解離(B. Yanら, Near-Infrared Light-Triggered Dissociation of Block Copolymer Micelles Using Upconverting Nanoparticles, J. Am. Chem. Soc. 133, 19714-19717 (2011)を参照)、およびDNA標識(B. Nieら, Surface invasive cleavage assay on a maskless light-directed diamond DNA microarray for genome-wide human SNP mapping, Analyst 140, 4549-4557 (2015)を参照)]において報告されている。現在まで、接着剤の剥離または分解のための光開裂性プライマーの使用に関する報告はないようであるが;紫外線(UV)開始光開裂性共単量体は、歯科用コンポジット(PCT/US2007/014158)およびコポリエステルネットワーク(S. M. Juneら, Photoactive Polyesters Containing o-Nitro Benzyl Ester Functionality for Photodeactivatable Adhesion, The Journal of Adhesion 89, 548-558 (2013)を参照)における成分の一つとして特許請求されている。架橋/硬化した接着剤を用いる場合、接着剤の剥離は、接着/結合/付着した物体またはその物体の表面の破損または破断なくして非常に困難であるか、または不可能のようである。
【発明の概要】
【0004】
歯科用コンポジット(PCT/US2007/014158)または共重合体を解重合するためにUV照射を用いる先の刊行物とは対照的に、本願は、赤外線(IR)、紫外線(UV)ならびに/またはIRおよびUV照射の組合せを用いてプライマー化合物を特異的に分解することによる、無機物(mineral)/金属/酸化物含有表面と(共)重合体/接着/樹脂表面との間の分解または剥離を開示する。1つの具体例において、本願は、プライマー化合物の共有結合の開裂により接着剤を剥離するための光開裂性プライマーを開示する。1つの態様において、剥離は制御され、プライマー化合物上の特定の位置で選択的である結果、プライマーもしくは接着および/または基材(substrate)表面の破損または未制御の解重合を生じない。1つの特定の態様において、当該技術は歯科用接着剤に適用できる。
【0005】
1つの具体例において、本願は、式Iおよび式II:
【化1】
[式中、変数EG、EG1、SP1、SP2、SP3、ArおよびBGは、本願明細書の定義に同じである]の光開裂性表面結合化合物を開示する。もう一つの具体例において、本願は、式IまたはIIの表面結合化合物を用いる基材表面上でのコーティングの形成方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な記載)
1つの具体例において、本願は、医学、歯科および電子工学適用のためのプライマーおよび接着剤として、新規な構造的に規定された低分子化合物を開示する。1つの具体例において、本願は、トリ-、テトラ-およびペンタ-ヒドロキシベンゼン、インドールおよびイミダドール基のごときポリヒドロキシ芳香族化合物、ならびにそれらの誘導体を含むプライマーを開示し、これらは、材料の無機物、金属もしくは酸化物含有表面のごとき材料表面に対して、水素結合のごとき結合を形成でき、および/またはキレートまたは配位を介して付着し得る。1つの態様において、これらのヘッド基は、無機物および金属酸化物表面に接着/吸着し、第2の表面を生成して、バルク接着剤、樹脂または共重合体表面と相互作用(架橋)して、無機物、金属および金属酸化物含有表面間の結合の効率を高める。非排他的な材料表面は、接着剤、セメント剤、樹脂、塗料、インク、タンパク質等を含む。
【0007】
本発明のいくつかの具体例が、以下に詳述される。具体例の記載において、特定の用語は明瞭さのために使用される。しかしながら、本願は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図しない。関連技術分野における当業者ならば、本発明の広範囲の概念から逸脱することなく、他の等価な成分を使用し、他の方法を開発できることを認識するであろう。本明細書中のいずれの箇所にも引用されたすべての参考文献を出典明示して本開示に組み込む。
【0008】
1つの具体例において、本願は、芳香族基含有表面プライマーを含む化合物を開示する。1つの態様において、表面プライマーは芳香族基を含む。もう一つの態様において、化合物は、スペーサー基を介して官能末端基に結合した芳香族基を含む。もう一つの具体例において、化合物は、無機物基材または金属酸化物基材のごとき基材上での自己集合(self-assembly)を受ける。酸化物含有表面に適用される場合、化合物の芳香族基は、酸化物含有表面上に自己集合し、水素結合のごとき結合を形成し得る。
【0009】
もう一つの態様において、化合物は、基材の金属表面上でキレートまたは配位錯体を形成する。化合物の官能末端基は、二次表面層を形成して、架橋、水素結合、酸化物-金属配位、静電的または疎水的相互作用を介して化学的、物理化学的または物理的にバルク材料と相互作用/架橋できる。二次表面は、所望によりプライマー上に適用することができる。本プロセスによれば、二次層は、芳香族基の官能末端基を含む化合物の修飾により調整可能であり得る。
【0010】
1つの具体例において、本願は、式I:
【化2】
(式中、各aは独立して、1、2、3、4または5であり;
mは1、2または3であり;nは1、2または3であり;iは1、2または3であり
各EGは、C
1-12アルキル、CH
2=CH-、CH
2=C(C
1-3アルキル)-、CH
2=CHC(O)-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)-、CH
2=CHC(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)O-、CH
2=C(フェニル)C(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)S(O)
nO-、イソシアネート、エポキシ、オキセタニル、スチレニル、ビニルエーテル、(OH)SiR
2-、(OH)SiR
2(O)-、-Ar-(BG)
a、アリール、ヘテロアリール、-N
+R
1R
2R
3、-PO
4
-、-N
+R
1R
2R
3X
-、-PO
4
-Y
+、-SO
4
-Y
+(ここに、R、R
1、R
2およびR
3の各々は独立して、HまたはC
1-3アルキルであり、X
-はCl
-、Br
-またはI
-であり、Y
+はH
+またはN
+R
1R
2R
3である)よりなる群から独立して選択される末端基であり;
SP1、SP2およびSP3の各々は、-O-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N-、-NH-、-NCH
3-、-C-、-CH-、-(CH
2)
q-、-(CH(OH))
q-、-(CH
2CH(OH)CH
2)
q-、-(C(CH
3)
2)
q-、-(CH(CH
3))
q-、-NH(CH
2)
2NH-、-OC(O)-、-CO
2-、-NHCH
2CH
2C(O)-、-OCH
2CH
2C(O)-、-C(O)CH
2CH
2C(O)-、-C(O)NHCH
2CH
2NH-、-NHCH
2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)N-、-NC(O)-、-C(O)NH-、-NCH
3C(O)-、-C(O)NCH
3-、-(CH
2CH
2O)
p-、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2-、-CH
2CH
2-(CH
2CH
2O)
p-、-OCH(CH
2O-)
2-、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-、-(CH
2)
q-PO
4
--、-N
+R
1R
2-、-PO
4
--、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-X
--、-(CH
2)
q-PO
4
-Y
+-、-N
+R
1R
2-X
--、-PO
4
-Y
+-、-SO
4
-Y
+-、-O-PO
-(O)O-(CH
2)
2-4-N
+(R
1R
2)-、-(AA)
r-、アリール、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、非置換フェニレニル、ならびにハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH
2、-OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2およびC
1-3アルキルよりなる群から選択される1または2個の置換基によって置換されたフェニレニル(ここに、各AAは独立してアミノ酸であり、pは1~6であり、qは1~6であり、rは1~6である)よりなる群から独立して選択されるスペーサーであり;
Arはアリールまたはヘテロアリール基であり;
各BGは、-OH、-SiR
2OH、-COOH、-SO
3H、-P(O)
3OH、-CONH
2、-CSNH
2、-CF
3、-CF
2CF
3、-OCF
3および-OCF
2CF
3よりなる群から独立して選択される結合基であり;
但し:
a)SP1、SP2およびSP3の少なくとも1つは、
A、
A1、
A2、
B、
C、
D、
E、
F、
G、
H、
H-1、
I、
I-1、
J、
J-1、
K、
K-1、
L、
L-1、
M、
M-1、
N、
O、
P、
Qおよび
R;
【化3】
(式中、Zは、C、S、S(O)、P(OH)およびP(OR)よりなる群から選択され;
各Eは独立して、ハロ、CF
3-、CF
3O-、HO-およびCH
3O-よりなる群から選択され;および、eは0、1、2または3である)よりなる群から選択されるスペーサーであり;ならびに
b)SP1、SP2およびSP3の1つが、
A、
B、
C、
D、
E、
F、
G、
H、
H-1、
I、
I-1、
J、
J-1、
K、
K-1、
L、
L-1、
M、
M-1、
N、
O、
P、
Qおよび
Rよりなる群から選択されるスペーサーではない場合、各基
【化4】
は独立して、
【化5】
(式中、各Zは独立して、C、S、S(O)、P(OH)およびP(OR)よりなる群から選択される)よりなる群から選択される)で表される表面結合化合物を開示する。1つの変形の化合物において、ZはCまたはSである。
【0011】
もう一つの具体例において、式II:
【化6】
(式中:mは1、2または3であり;nは1、2または3であり;iは1、2または3であり;
EGおよびEG1の各々は独立して、C
1-12アルキル、CH
2=CH-、CH
2=C(C
1-3アルキル)-、CH
2=CHC(O)-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)-、CH
2=CHC(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)O-、CH
2=C(フェニル)C(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)S(O)
nO-、イソシアネート、エポキシ、オキセタニル、スチレニル、ビニルエーテル、(OH)SiR
2-、(OH)SiR
2(O)-、-Ar-(BG)
a、アリール、ヘテロアリール、-N
+R
1R
2R
3、-PO
4
-、-N
+R
1R
2R
3X
-、-PO
4
-Y
+、-SO
4
-Y
+(ここに、R、R
1、R
2およびR
3の各々は独立して、HまたはC
1-3アルキルであり、X
-はCl
-、Br
-またはI
-であり、Y
+はH
+またはN
+R
1R
2R
3である)よりなる群から選択される末端基であり;
SP1、SP2およびSP3の各々は、-O-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N-、-NH-、-NCH
3-、-C-、-CH-、-(CH
2)
q-、-(CH(OH))
q-、-(CH
2CH(OH)CH
2)
q-、-(C(CH
3)
2)
q-、-(CH(CH
3))
q-、-NH(CH
2)
2NH-、-OC(O)-、-CO
2-、-NHCH
2CH
2C(O)-、-OCH
2CH
2C(O)-、-C(O)CH
2CH
2C(O)-、-C(O)NHCH
2CH
2NH-、-NHCH
2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)N-、-NC(O)-、-C(O)NH-、-NCH
3C(O)-、-C(O)NCH
3-、-(CH
2CH
2O)
p-、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2-、-CH
2CH
2-(CH
2CH
2O)
p-、-OCH(CH
2O-)
2-、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-、-(CH
2)
q-PO
4
--、-N
+R
1R
2-、-PO
4
--、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-X
--、-(CH
2)
q-PO
4
-Y
+-、-N
+R
1R
2-X
--、-PO
4
-Y
+-、-SO
4
-Y
+-、-O-PO
-(O)O-(CH
2)
2-4-N
+(R
1R
2)-、-(AA)
r-、アリール、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、非置換フェニレニル、ならびにハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH
2、-OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2およびC
1-3アルキルよりなる群から選択される1または2個の置換基によって置換されたフェニレニル(ここに、各AAは独立して、アミノ酸であり、pは1~6であり、qは1~6であり、rは1~6である)よりなる群から独立して選択されるスペーサーであり;
但し、SP1、SP2およびSP3の少なくとも1つは、
A、
B、
C、
D、
E、
F、
G、
H、
H-1、
I、
I-1、
J、
J-1、
K、
K-1、
L、
L-1、
M、
M-1、
N、
O、
P、
Qおよび
R:
【化7】
(式中、Zは、C、S、S(O)、P(OH)およびP(OR)よりなる群から選択され
;各Eは独立して、ハロ、CF
3-、CF
3O-、HO-およびCH
3O-よりなる群から選択され;およびeは0、1、2または3であり;但し、EGおよびEG1の双方がCH
2=C(CH
3)C(O)O-(CH
2CH
2)OC(O)-またはCH
2=C(CH
3)C(O)NH-(CH
2CH
2)OC(O)-である場合、スペーサーは、
【0012】
【化8】
ではない)
よりなる群から選択されるスペーサーである)で表される表面結合化合物が提供される。
【0013】
式IまたはIIで表される化合物について、本明細書に提供され、当該技術分野において通常用いられる-Ar-BG基はヘッド基ということもでき、-EG基は自己集合した層または自己集合した単層(SAM)のテール基といい得る。本明細書に用いたSAMの形成は、相乗的な分子間および/または分子内相互作用のプロセスによって化合物を含む溶液からの化合物の吸着によって、表面上の式IまたはIIで表される化合物の有機的集合の自発的な形成をいう。もう一つの変形において、化合物は、式
IIa、
IIb、
IIc、
IId、
IIe、
IIf、
IIgおよび
IIh:
【化9】
(式中、i、R、SP1およびSP3は式IIの定義に同じである)を含む。
【0014】
1つの変形の式Iで表される化合物において、-Ar-BGは3,4-ジヒドロキシフェニル基ではない。本明細書に記載のごとく、SP1、SP2およびSP3の各々は独立して、-N-、-C-、-C(O)N-または-NC(O)-基である場合、これらの三価および四価の基は置換されていても、分岐鎖構造を形成していてもよく、例えば、樹状種により表される種々の配列に導き得る。例えば、SP1が-N-または-C-である場合、式I(または式II)で表される化合物は、以下に示すごとく、窒素原子または炭素原子にて分岐した構造を形成し得る:
【化10】
【0015】
同様に、分岐構造も、SP1およびSP2、SP2およびSP3、またはSP1、SP2およびSP3の組合せで形成し得る。
【化11】
【0016】
また、前記に開示された樹状様または分岐構造は、式IIで表される化合物に同様に適用できる。また、例えば、本明細書に提供された-C(O)NH-として指定または結合したスペーサーは、-NHC(O)-として結合する可逆的(逆)スペーサーを含む。
【0017】
もう一つの変形において、SP1、SP2およびSP3基は、
【化12】
から独立して選択し得る。
【0018】
1つの態様の式IIで表される表面結合化合物において、EGおよびEG1の各々は独立して、C1-12アルキル、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(C1-3アルキル)C(O)O-、CH2=C(フェニル)C(O)O-、イソシアネート、エポキシ、オキセタニル、スチレニル、ビニルエーテル、-Ar-(BG)a、フェニルおよびナフチルよりなる群から選択される。1つの変形において、EGおよびEG1の各々は独立して、CH2=CHC(O)O-およびCH2=C(C1-3アルキル)C(O)O-よりなる群から選択される。1つの変形において、EGおよびEG1の各々は独立して、-N+(CH3)(CH2OH)2、-N+(CH3)2(CH2OH)および-N+(CH2OH)3である。もう一つの変形において、EGおよびEG1は同じである。
【0019】
1つの変形において、EGおよびEG1の各々は独立して、C1アルキル、C3アルキル、C6アルキル、C12アルキル、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=C(CH2CH3)C(O)O-、CH2=C(C1-3アルキル)S(O)2O-およびCH2=C(CH2CH2CH3)C(O)O-よりなる群から選択される。もう一つの変形において、各EGは独立して、C6アルキル、C3アルキルまたはC1アルキルもしくは-CH3である。もう一つの変形において、EGおよびEG1の各々は独立して、所望により、ハロ(F、Cl、Br、I)、CF3-、CF3O-、CH3O-、-C(O)OH、-C(O)OC1-3アルキル、-C(O)CH3、-CN、-NH2、-OH、-NHCH3、-N(CH3)2およびC1-3アルキルよりなる群から選択される1または2個の官能基により置換されていてもよいフェニルまたはナフチルよりなる群から選択される。
【0020】
ある態様において、ヘッドまたはテールというEGおよびEG1は、官能基の性質、およびEGまたはEG1が各々第1または第2に結合するのを可能とする条件に依存するであろう。例えば、EGおよびEG1が異なり、EGが表面に最初に結合するアクリレート基であるならば、EGはヘッドと、EG1はテールといい得る。1つの態様において、GEおよびEG1は独立して、モノ-、ジ-またはポリ-アクリレート、ならびにメタクリレート(例えば、メチルアクリレート、メタクリル酸メチル、エチル(メチル)アクリレート、イソプロピル(メチル)アクリレート、n-ヘキシル(メチル)アクリレート、ステアリル(メチル)アクリレート、アリル(メチル)アクリレート、グリセロールジ(メチル)アクリレート、グリセロールトリ(メチル)アクリレート、エチレングリコールジ(メチル)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メチル)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メチル)アクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メチル)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メチル)アクリレートおよび1,4-シクロヘキサンジオールジ(メチル)アクリレートのごとき重合性基を含み得る。
【0021】
もう一つの態様の表面結合化合物において、EGおよびEG1の各々は独立して、イミダゾリル、インドリル、-N+R1R2R3、-PO4
-、-N+R1R2R3X-、-PO4
-Y+、-SO4
-Y+(式中、R1、R2およびR3の各々は独立して、HまたはC1-3アルキルであり、X-はCl-、Br-またはI-であり、Y+はH+または-N+R1R2R3である)よりなる群から選択される。1つの変形において、R、R1、R2およびR3の各々は独立して、-OH、-SHまたは-NH2で所望により置換されたHまたはC1-3アルキルである。
【0022】
もう一つの態様において、SP1、SP2およびSP3の各々は、-(CH2)q-、-NH(CH2)2NH-、-NHCH2CH2C(O)-、-C(O)NHCH2CH2NH-、-NHCH2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)N-、-NC(O)-、-C(O)NH-、-NCH3C(O)-、-C(O)NCH3-、-(CH2CH2O)p-、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-および-OCH(CH2O-)2-よりなる群から独立して選択されるスペーサーである。
【0023】
もう一つの態様において、SP1、SP2およびSP3の各々は、-N+R1R2-、-PO4
--、-N+R1R2X--、-PO4
-Y+-、-SO4
-Y+-、-(CH2)q-N+R1R2-、-(CH2)q-PO4
--、-(CH2)q-N+R1R2-X--、-(CH2)q-PO4
-Y+-および-O-PO-(O)O-(CH2)2-4-N+(R1R2)-よりなる群から独立して選択されるスペーサーである。
【0024】
さらにもう一つの態様の表面結合化合物において、SP1、SP2およびSP3の各々は独立して、-CH2CH2-C(O)NHCH2CH2NH-C(O)NCH3-、-NHC(O)-(CH2CH2O)p-(CH2)q-、-(CH2CH2O)pCH2CH2-C(O)NCH3-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-NHCH2CH2C(O)-(CH2)q-PO4
--、-PO4
--(CH2)q-N+R1R2X--、-(CH2CH2O)p-(CH2)q-PO4
-、-N+R1R2X--(CH2)q-PO4
-および-PO4
--(CH2CH2O)p-N+R1R2X--よりなる群から選択される。
【0025】
もう一つの態様の表面結合化合物において、各BGは、-OH、-SiR2OH、-COOH、-SO3H、-P(O)3OH、-CONH2および-CSNH2よりなる群から独立して選択される結合基である。さらにもう一つの態様の表面結合化合物において、-SP3-は-CH2-であって、Ar-(BG)aは、2,3-ジヒドロキシフェニル、3,4-ジヒドロキシフェニル、2,3,4-トリヒドロキシフェニル、3,4,5-トリヒドロキシフェニル、2,3,4,5-テトラヒドロキシフェニル、2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシフェニル、2,3-ジカルボキシフェニル、2,3,4-トリカルボキシフェニル、3,4,5-トリカルボキシルフェニル、2,3,4,5-テトラカルボキシフェニル、2,3,4,5,6-ペンタカルボキシフェニル、2,3-ジシロキシフェニル、2,3,4-トリシロキシフェニル、3,4,5-トリシロキシフェニル、2,3,4,5-テトラシロキシフェニルおよび2,3,4,5,6-ペンタシロキシフェニルよりなる群から選択される。
【0026】
もう一つの態様の表面結合化合物において、EGおよびEG1の各々は独立して:
【化13】
(式中、アリール基は、ハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH
2、-OH、-SiR
2OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2およびC
1-3アルキルから選択される1または2個の置換基によって所望により置換されていてもよい)
よりなる群から選択されるアリール基である。
【0027】
1つの変形において、EGおよびEG1の各々は独立して、カチオン、アニオン、両性イオン、極性または無極性の基である。もう一つの変形において、mは2または3であって、アクリレートはジアクリレートまたはトリアクリレートである。1つの変形において、mは1であであって、nは1である。1つの変形において、pは、1、2、3、4、5または6であり、qは、1、2、3、4、5または6であって、rは、1、2、3、4、5または6である。
【0028】
1つの特定の変形において、Ar上のすべてのBG基はすべて互いに隣接している。1つの具体例において、各BGは-OHである。1つの変形において、BGは-OH、-COOHまたは-OHである。もう一つの変形において、BGは、-OH、-SiR2OHもしくは-OHまたはそれらの組合せである。1つの変形において、RはHである。もう一つの変形の式Iおよび式IIで表される化合物において、分子量は、2kDa未満、1kDa未満または0.5kDa未満である。
【0029】
もう一つの具体例において、基材表面上でコーティングを形成する方法が提供され、前記方法は、
1)基材表面を第1の溶媒で洗浄し;
2)式Iで表される表面結合化合物(所望により第2の溶媒中で)を、
3)式Iで表される化合物が、基材表面上で層を形成するのための期間、前記表面に接触させ:
【化14】
(式中、各aは独立して、1、2、3、4または5であり;mは1、2または3であり;nは1、2または3であり;iは1、2または3であり;各EGは、C
1-12アルキル、CH
2=CH-、CH
2=C(C
1-3アルキル)-、CH
2=CHC(O)-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)-、CH
2=CHC(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)C(O)O-、CH
2=C(フェニル)C(O)O-、CH
2=C(C
1-3アルキル)S(O)
nO-、イソシアネート、エポキシ、オキセタニル、スチレニル、ビニルエーテル、(OH)SiR
2-、(OH)SiR
2(O)-、-Ar-(BG)
a、アリール、ヘテロアリール、-N
+R
1R
2R
3、-PO
4
-、-N
+R
1R
2R
3X
-、-PO
4
-Y
+、-SO
4
-Y
+(ここに、R、R
1、R
2およびR
3の各々は独立して、HまたはC
1-3アルキルであり、X
-はCl
-、Br
-またはI
-であり、Y
+はH
+またはN
+R
1R
2R
3である)よりなる群から独立して選択される末端基であり;
SP1、SP2およびSP3の各々は、-O-、-C(O)-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N-、-NH-、-NCH
3-、-C-、-CH-、-(CH
2)
q-、-(CH(OH))
q-、-(CH
2CH(OH)CH
2)
q-、-(C(CH
3)
2)
q-、-(CH(CH
3))
q-、-NH(CH
2)
2NH-、-OC(O)-、-CO
2-、-NHCH
2CH
2C(O)-、-OCH
2CH
2C(O)-、-C(O)CH
2CH
2C(O)-、-C(O)NHCH
2CH
2NH-、-NHCH
2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)N-、-NC(O)-、-C(O)NH-、-NCH
3C(O)-、-C(O)NCH
3-、-(CH
2CH
2O)
p-、-(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2-、-CH
2CH
2-(CH
2CH
2O)
p-、-OCH(CH
2O-)
2-、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-、-(CH
2)
q-PO
4
--、-N
+R
1R
2-、-PO
4
--、-(CH
2)
q-N
+R
1R
2-X
--、-(CH
2)
q-PO
4
-Y
+-、-N
+R
1R
2-X
--、-PO
4
-Y
+-、-SO
4
-Y
+-、-O-PO
-(O)O-(CH
2)
2-4-N
+(R
1R
2)-、-(AA)
r-、アリール、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、非置換フェニレニル、ならびにハロ、CF
3-、CF
3O-、CH
3O-、-C(O)OH、-C(O)OC
1-3アルキル、-C(O)CH
3、-CN、-NH
2、-OH、-NHCH
3、-N(CH
3)
2およびC
1-3アルキルよりなる群から選択される1または2個の置換基によって置換されたフェニレニル(ここに、各AAは独立してアミノ酸であり、pは1~6であり、qは1~6であり、rは1~6である)よりなる群から独立して選択されるスペーサーであり;
Arはアリールまたはヘテロアリール基であり;
各BGは、-OH、-SiR
2OH、-COOH、-SO
3H、-P(O)
3OH、-CONH
2、-CSNH
2、-CF
3、-CF
2CF
3、-OCF
3および-OCF
2CF
3よりなる群から独立して選択される結合基であり;
但し:
a)SP1、SP2およびSP3の少なくとも1つは、
A、
A1、
A2、
B、
C、
D、
E、
F、
G、
H、
H-1、
I、
I-1、
J、
J-1、
K、
K-1、
L、
L-1、
M、
M-1、
N、
O、
P、
Qおよび
R;
【化15】
(式中、Zは、C、S、S(O)、P(OH)およびP(OR)よりなる群から選択され;各Eは独立して、ハロ、CF
3-、CF
3O-、HO-およびCH
3O-よりなる群から選択され;および、eは0、1、2または3である)よりなる群から選択されるスペーサーであり;ならびに
b)SP1、SP2およびSP3の1つが、
A、
B、
C、
D、
E、
F、
G、
H、
H-1、
I、
I-1、
J、
J-1、
K、
K-1、
L、
L-1、
M、
M-1、
N、
O、
P、
Qおよび
Rよりなる群から選択されるスペーサーではない場合、各基
【化16】
は独立して、
【化17】
(式中、各Zは独立して、C、S、S(O)、P(OH)およびP(OR)よりなる群から選択される)よりなる群から選択される);および所望により、
4)表面から過剰な化合物を取り除くのに十分な量の第3の溶媒で、基材表面から式Iで表される過剰な化合物を洗浄する、ことを含む。
【0030】
1つの変形の方法において、式IまたはIIで表される化合物はSAMを形成する。1つの変形の方法において、用いられる化合物は、基材の改善された所望の機械的または電気的特性を提供する式Iで表される化合物、または式Iで表される化合物の混合物である。もう一つの変形において、第1の溶媒は、水、有機溶媒または水および有機溶媒の混合物である。特定の変形において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、THF、Me-THFおよびN-メチルピロリドン、ならびにそれらの混合物よりなる群から選択される。もう一つの変形において、第1、第2および第3の溶媒は同じか、または異なり、水、メタノール、エタノール、水およびメタノールの混合物、水およびエタノールの混合物またはそれらの組合せよりなる群から選択される。もう一つの変形において、第1の溶媒は、第2および第3の溶媒とは異なる。
【0031】
もう一つの態様の方法において、EGおよびEG1の各々は独立して、C1-12アルキル、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(C1-3アルキル)C(O)O-、CH2=C(フェニル)C(O)O-、イソシアネート、エポキシ、オキセタニル、スチレニル、ビニルエーテル、-Ar-(BG)a、フェニルおよびナフチルよりなる群から選択される。
【0032】
もう一つの態様の方法において、EGおよびEG1の各々は独立して、イミダゾリル、インドリル、-N+R1R2R3、-PO4
-、-N+R1R2R3X-、-PO4
-Y+、-SO4
-Y+(ここに、R1、R2およびR3の各々は独立してHまたはC1-3アルキルであり、X-はCl-、Br-またはI-であり、Y+はH+または-N+R1R2R3である)よりなる群から選択される。1つの変形において、イミダゾリルはイミダゾリウムであり、インドリルはインドリニウムであり、対イオンは、ハロゲン化物、スルホン酸またはリン酸である。
【0033】
さらにもう一つの態様の方法において、SP1、SP2およびSP3の各々は、-(CH2)q-、-NH(CH2)2NH-、-NHCH2CH2C(O)-、-C(O)NHCH2CH2NH-、-NHCH2C(O)-、-NHC(O)-、-C(O)N-、-NC(O)-、-C(O)NH-、-NCH3C(O)-、-C(O)NCH3-、-(CH2CH2O)p-、-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-CH2CH2-(CH2CH2O)p-および-OCH(CH2O)2-よりなる群から独立して選択されるスペーサーである。さらにもう一つの態様の方法において、SP1、SP2およびSP3の各々は、-N+R1R2-、-PO4
--、-N+R1R2X--、-PO4
-Y+-、-SO4
-Y+-、-(CH2)q-N+R1R2-、-(CH2)q-PO4
--、-(CH2)q-N+R1R2-X--、-(CH2)q-PO4
-Y+-および-O-PO-(O)O-(CH2)2-4-N+(R1R2)-よりなる群から独立して選択されるスペーサーである。
【0034】
もう一つの態様の方法において、SP1、SP2およびSP3の各々は、-CH2CH2-C(O)NHCH2CH2NH-C(O)NCH3-、-NHC(O)-(CH2CH2O)p-(CH2)q-、-(CH2CH2O)pCH2CH2-C(O)NCH3-(CH2CH2O)pCH2CH2-、-NHCH2CH2C(O)-(CH2)q-PO4
--、-PO4
--(CH2)q-N+R1R2X--、-(CH2CH2O)p-(CH2)q-PO4
-、-N+R1R2X--(CH2)q-PO4
-および-PO4
--(CH2CH2O)p-N+R1R2X--よりなる群から独立して選択されるスペーサーである。
【0035】
もう一つの態様の方法において、Arは、
【化18】
から選択されたアリール基である。
【0036】
もう一つの態様の方法において、各BGは、-OH、-SiR2OH、-COOH、-SO3H、-P(O)3OH、-CONH2および-CSNH2よりなる群から独立して選択される結合基である。
【0037】
もう一つの態様の方法において、-SP3-は-CH2-であり、Ar-(BG)aは、2,3-ジヒドロキシフェニル、3,4-ジヒドロキシフェニル、2,3,4-トリヒドロキシフェニル、3,4,5-トリヒドロキシフェニル、2,3,4,5-テトラヒドロキシフェニル、2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシフェニル、2,3-ジカルボキシフェニル、2,3,4-トリカルボキシフェニル、3,4,5-トリカルボキシルフェニル、2,3,4,5-テトラカルボキシフェニル、2,3,4,5,6-ペンタカルボキシフェニル、2,3-ジシロキシフェニル、2,3,4-トリシロキシフェニル、3,4,5-トリシロキシフェニル、2,3,4,5-テトラシロキシフェニルおよび2,3,4,5,6-ペンタシロキシフェニルよりなる群から選択される。
【0038】
もう一つの態様の方法において、コーティングは、表面上の式Iまたは式IIで表される化合物の自己集合によって形成される。さらにもう一つの態様の方法において、自己集合した層は約0.1nm~20nm、約0.1~15nm、0.1~10nmまたは約0.1~5nmである。
【0039】
もう一つの態様の方法において、コーティングは接着剤またはプライマーから選択される材料である。もう一つの態様の方法において、基材は、酸化物、金属、金属酸化物および無機物よりなる群から選択される。もう一つの態様の方法において、基材は、雲母、ケイ素、ガラス、カルシウム、エナメル、骨、鋼、歯牙エナメル質、歯牙象牙質、ヒドロキシルアパタイト、カオリンおよびジルコニアよりなる群から選択される。もう一つの態様において、金属、金属酸化物または酸化物は、ケイ酸塩無機物、シリカ、カオリン、ジルコニア、アルミニウム、銅、クロム、クロム-コバルト、チタン、亜鉛、スズ、インジウム-スズおよび酸化カルシウムよりなる群から選択される。
【0040】
さらにもう一つの態様の方法において、接着剤は、第1の基材である基材の-EG基を含む自己集合した層のテール末端と、式Iで表される表面結合化合物を含む第2の基材のテール末端とを接触させ、それにより、第1の基材の式Iで表されるテール末端が第2の基材の式Iで表される化合物のテール末端に結合することにより形成される。式IIで表される化合物について、例えば、接着剤は、第1の基材である基材のEGまたはEG1の基を含む自己集合した層の一方の末端(またはヘッド)と、式IIで表される表面結合化合物を含む第2の基材の他方の末端(EGまたはEG1基)とを接触させ、それにより、第1の基材の式IIで表される化合物のEG末端が、第2の基材の式IIで表される化合物のEG1末端と結合することにより形成される。さらにもう一つの態様の方法において、接着剤は、歯科適用、医学的インプラントおよび整形外科的適用のための接着層を形成する。もう一つの態様において、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化銅、クロム、クロム-コバルト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズおよびインジウム-スズ-オキサイド(ITO)よりなる群から選択される。
【0041】
もう一つの態様の前記方法において、基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ケイ素、シリコンウェハー、ポリフッ化ビニル(PVF)、天然ゴム(CR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル、アクリル(PMMA)、エポキシ(EP)、ポリオキシメチレン、アセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(VC)、ポリエステル(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアリールスルホン(PAS)、フェノール樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド6(PA 6)、ポリカーボネート(PC)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびステンレス鋼(SS)よりなる群から選択される。
【0042】
もう一つの態様において、以下を含む歯表面上の歯科用対象物を結合する方法が提供される:a)結合のための歯表面を調製し;b)前記歯表面に光開裂性接着剤または接着剤の混合物を適用し;c)光開裂性接着剤または接着剤の混合物と歯科用接着剤とを接触させて、結合用混合物を形成し;d)歯科用対象物と、組合せ接着剤混合物とを接触させて、歯表面上に歯科用対象物を固定し;次いで、e)組合せ接着剤混合物を硬化させ、かつ歯表面上に歯科用対象物を固定するのに十分な期間、組合せ接着剤混合物に光源を適用し;ここに、光開裂性接着剤または接着剤の混合物は、本明細書に記載された表面結合化合物もしくはその混合物、または式89~96で表される化合物もしくはその混合物を含む。もう一つの態様において、方法は、さらに、f)歯表面に結合し、かつ所望の目的のために残存するのに十分な期間、歯科用対象物が歯表面上に残存することを可能にし;次いで、g)十分な期間、所望により、表面からの歯科用対象物を剥離または除去するのに十分な期間、歯科用対象物および/または歯の物理的撹拌でUV放射またはIRの放射で組合せ接着剤混合物を曝露することを含む。
【0043】
もう一つの態様の方法において、コーティングは、表面上に式Iまたは式IIで表される化合物の自己集合によって形成される。1つの変形において、自己集合した層は、自己集合した単層(SAM)である。1つの変形において、自己集合した層は、40℃未満、30℃未満またはほぼ室温にて形成される。もう一つの変形において、自己集合した単層は、約60分未満、45分未満、30分未満または約15分未満で形成される。
【0044】
もう一つの態様の方法において、コーティングは接着剤またはプライマーから選択された材料である。さらにもう一つの態様の前記方法において、基材は、酸化物、金属、金属酸化物および無機物よりなる群から選択される。もう一つの態様の方法において、基材は、雲母、ケイ素、ガラス、カルシウム、エナメル、骨、鋼、歯牙エナメル質、歯牙象牙質、ヒドロキシルアパタイト、カオリンおよびジルコニアよりなる群から選択される。もう一つの態様の方法において、金属、金属酸化物または酸化物は、ケイ酸塩無機物、シリカ、カオリン、ジルコニア、アルミニウム、銅、クロム、クロム-コバルト、チタン、亜鉛、スズ、インジウム-スズおよび酸化カルシウムよりなる群から選択される。
【0045】
もう一つの具体例において、a)結合のための歯表面を調製し;b)前記歯表面に光開裂性接着剤または接着剤の混合物を適用し;c)光開裂性接着剤または接着剤の混合物と歯科用接着剤とを接触させて、結合用混合物を形成し;d)歯科用対象物と組合せ接着剤混合物とを接触させて、歯表面上に歯科用対象物を固定し;次いで、e)組合せ接着剤混合物を硬化させ、かつ歯表面上に歯科用対象物を固定するのに十分な期間、組合せ接着剤混合物に光源を適用し;ここに、光開裂性接着剤または接着剤の混合物は、本明細書に開示された表面結合化合物もしくはその混合物を含む、ことを含む歯表面上に歯科用対象物を結合する方法が提供される。
【0046】
1つの変形において、接着剤の混合物は、光開裂性接着剤、光開裂性接着剤の混合物ならびに光開裂性および非光開裂性接着剤の混合物を含む。1つの変形において、光開裂性接着剤は、式1~45で表される化合物またはその混合物から選択される。1つの変形において、光開裂性接着剤は、式89~96で表される化合物、またはその混合物から選択される。もう一つの変形において、、式63~89で表される化合物の非光開裂性接着剤またはその混合物を含む。1つの変形において、結合用混合物を硬化させるための光源は、青色LED光のごとき可視光である。もう一つの変形において、歯科用接着剤は、レジンセメントまたは市販の歯科用接着剤もしくは歯科用セメントである。もう一つの変形において、歯科用接着剤は、Bis-GMAおよびTEGDMA、およびDMAEMA、およびCQのごとき開始剤である。もう一つの態様において、方法は、さらに:f)歯表面へ結合しかつ所望の目的のために残存するのに十分な期間、歯科用対象物が歯表面に残存することを可能にすること;およびg)所望により歯科用対象物および/または歯の物理的撹拌で十分な期間、組合せ接着剤混合物をUV放射またはIR放射で曝露して、表面から歯科対象物を剥離または除去することを含む。
【0047】
もう一つの態様の方法において、接着剤は、第1の基材である基材の-EG基を含む自己集合した層のテール末端と、式Iで表される表面結合化合物を含む第2の基材のテール末端とを接触させ、それにより、第1の基材の式Iで表される化合物のテール末端が第2の基材の式Iで表される化合物のテール末端と結合することにより形成される。1つの変形において、第1の基材中の式Iで表される化合物は、第2の基材中の式Iで表される化合物と同じかまたは異なる。同様に、1つの変形において、第1の基材中の式IIで表される化合物は、第2の基材中の式IIで表される化合物と同じかまたは異なる。もう一つの変形において、式Iで表される化合物のヘッド末端または式IIで表される化合物のEGもしくはEG1基は、水素結合、キレート化、金属-酸素配位結合、または共有結合を介して基材表面と結合する。
【0048】
もう一つの態様の方法において、接着剤は、歯科適用、医学的インプラントおよび整形外科的適用のための接着層を形成する。1つの変形において、接着層は、エナメル接着剤もしくはセメント、または骨接着剤もしくはセメントとして用い得る。歯科適用について、接着層は、充填材、一般的な接着剤、キャビティーライナー(cavity liner)、歯科用セメント、フィラーの有無でのコーティング組成物、フィラーの有無での根管フィラーまたはそれらの組合せとして用い得る。1つの変形において、接着層は自己接着性組成物または光硬化性組成物であり得る。1つの変形において、式IおよびIIで表される化合物は架橋剤であり得る。
【0049】
基材表面上にSAMコーティングを形成する方法は、当該技術分野において知られている。EG基またはAr-BG基を形成するSAMまたはSAMコーティングは、オルガノシランまたは他のシラン分子を含み得る。1つの変形において、SAMコーティングは、トリクロロシランまたはメトキシシランのごときクロロシランである。本明細書に提供されたSAMのトリクロロシランは、n-デシル-トリクロロシラン(DTS)、n-ドデシル-トリクロロシラン、パーフルオロデシル-トリクロロシラン(FDTS)またはn-オクタデシルトリクロロシランから選択し得る。本明細書に提供されたSAMは、ジメチルアミノシランおよびアルキルシラン、アルキルトリクロロシランまたはアルキルトリメトキシシランを含み得る。1つの変形において、SAMは、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のごときシロキサンを含む。
【0050】
1つの変形において、コーティングは化合物の自己集合した層である。もう一つの変形において、表面は、有機電界効果トランジスターのごとき電子機器のためのゲート誘電性表面である。もう一つの変形において、自己集合した単層は整然とし、欠陥がない。本願のSAMの1つの態様において、表面に吸着する化合物の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を超えて、基材表面に結合する。もう一つの変形において、高結合層は、基材表面へ結合する単層のごとき、十分に規定され、均一でかつ再生可能な層を提供する。当該技術分野において知られているように、実質的に整然とし、欠陥がない層は、原子間力顕微鏡(AFM)、X線散乱またはその組合せを用いて、特徴付けし確認し得る。
【0051】
もう一つの変形の方法において、自己集合した層は、陽極結合剤、電気回路、電界効果トランジスター(FET;20~50cm2V-1s-1の範囲値)、半導体、ナノセンシングデバイス、有機太陽電池、光電子工学デバイス、ヘテロ結合および電子トンネル効果結合に用いられる表面改質剤である。前記のものの1つの変形において、自己集合した層は自己集合した単層(SAM)である。
【0052】
もう一つの変形において、化合物は、基材表面と接触後約60分未満、30分未満、10分未満、5分未満、約2分未満または約1分未満でSAMを形成する。1つの変形の方法において、化合物は実質的に滑らかで、均一でかつ欠陥がないSAMを形成する。
【0053】
1つの変形の方法において、SAMは、クロロベンゼン液滴について、20°未満、15°未満、13°未満または11°未満の低い接触角(θ)を生成する表面改質剤である。もう一つの変形において、SAM表面改質剤はオムニフィリックであり、水液滴につき<30°の接触角を持つ。1つの変形において、SAMは、約0.1nm~50nm、0.1nm~40nm、0.1nm~30nm、0.1nm~20nm、または約0.1nm~10nmの単層を形成する。もう一つの変形において、SAMは、約5nm未満、4nm未満、3nm未満または2nm未満の単層を形成する。
【0054】
もう一つの変形の方法において、方法は、さらに:自己集合した層またはSAMの層に対して有機半導体材料の層を提供することを含む。前記方法の1つの変形によれば、方法は、改善された有機薄膜トランジスターまたは他の同様の電子デバイスを提供する。1つの態様の方法において、自己集合した層は自己集合した単層を含み得る。自己集合した層は重合体層を含み得る。1つの変形の方法において、自己集合した層は、疎水性および/または親油性である表面領域を有し得る。
【0055】
1つの変形の上記の接着剤において、結合強度または剪断破壊強度は、少なくとも15kT、20kTを超える、25kTを超える、30kTを超える、35kTを超える、40kTを超える、45kTを超えるまたは50kTを超える。1つの変形の方法において、接着は、少なくとも30mJ m-2、少なくとも35mJ m-2、少なくとも40mJ m-2または少なくとも45mJ m-2である。
【0056】
いくつかの具体例において、式Iまたは式IIで表される化合物はプライマーまたはコーティングとして用い得る。本明細書に開示のごとく、式Iまたは式IIで表される化合物は強い接着/吸着を提供し、二次層と相互作用または結合する能力を保持する。化合物は様々な表面に接着でき、自己集合を受けて、薄いプライマー/コーティング/接着剤/接着層を形成し得る。いくつかの具体例において、プライマー/コーティング/接着剤/接着層は、0.5~50nmの厚みを有する。
【0057】
本明細書に開示されたいくつかの具体例において、式Iまたは式IIで表される化合物は、無機物または金属酸化物、例えば、雲母、シリコンウェハー、ガラス、骨、歯牙エナメル質、歯牙象牙質、医学/歯科用インプラント、シリカ、カオリン、ジルコニア、アルミニウム、銅、クロム、クロム-コバルト、カルシウム、酸化アルミニウム、酸化銅、シリカ酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、インジウムスズオキサイドまたはヒドロキシルアパタイトの表面上に適用することができる。
【0058】
いくつかの具体例において、式Iまたは式IIで表される化合物の沈着層は、過ヨウ素酸塩のごとき酸化剤で処理し得る。他の具体例において、層は塩基で処理し得る。低pHにて分子DOPA(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)に類似するヒドロキシ-フェニルまたはフェノール基に基づいて、フェノール基は、対応するケト-またはキノン-様構造(または、互変形性体)に構造上好ましく、したがって、フェノール形態は、基材とより高い結合力を提供する。したがって、化合物のケトまたはキノン-様形態およびそれらの関連する結合力は、より高いpHにて提供される。実質的に中性のpH条件下、基材への化合物の強い接着性相互作用は、表面と非酸化フェノール基との相互作用と関係でき、化合物と表面とのより弱い接着性相互作用は、オキソ-またはキノン-型の官能性に対応する酸化フェノール基に関係し得る。したがって、表面結合した材料を酸化剤で処理し得るか、または基材へのコーティングの結合強度を調節または改変するために塩基で処理し得る。いくつかの具体例において、基材上の化合物の沈着は酸化剤での処置に先立って行い得る。フェノール基を所有する化合物が酸化条件下で架橋して、高分子フェノールの混合物を与え得ることが知られている。中性pHまたは高pHの条件下、化合物の非酸化フェノール基と基材との間の接着性相互作用が生じる。したがって、フェノール化合物と基材との間の強い接着性相互作用は、基材の境界面に沿って化合物を構成するであろう。一旦、基材が沈着すれば、酸化は化合物と基材との間の境界面に沿って化合物のフェノール基を架橋し得る。基材上の沈着に先立つ溶液中での化合物の酸化は、フェノール基の周囲の異なる化学的環境の結果として、異なってフェノール基を架橋し得る。接着層の得られた特性は、基材上での沈着前後に化合物を酸化させることにより改変または調節し得る。
【0059】
いくつかの具体例において、式Iまたは式IIで表される化合物は、歯/骨接着剤、歯科/医学インプラント用の表面プライマー、歯および骨セメント/接着剤/コンポジットを含めた高分子コンポジットに用いられる無機物フィラー用の表面プライマー、または電子デバイスとして用い得る。
【0060】
いくつかの具体例において、本願の沈着層は、アニオンもしくはカチオン性末端基のごときアニオンおよびカチオン基の混合物を含み、タンパク質のごときある種の組成物への抗吸着特性を提供し、したがって、有効な防汚性表面を提供する。本明細書に開示のごとく、化合物は例えば、リン酸基およびアンモニウム塩を含み、それは防汚性組成物および表面として高度に有効である両性イオン基を形成する。加えて、コーティングは、細菌、フジツボキプリス幼生および藻類遊走子(algal zoospore)の吸着に抵抗し、したがって、表面の海洋生物付着を予防する能力を有している。加えて、表面材料は、種々の医学適用のための抗菌性表面として有効である。
【0061】
本明細書に開示のごとく、アニオンおよびカチオン性官能基は、内部位置および終端位置、ならびにその様々な組合せで組み込まれた、式Iまたは式IIで表される化合物中の内部位置で組み込み得る。1つの具体例によれば、表面コーティングは非常に有効な防汚性表面を提供するか、または生物付着物(biofoulant)が表面に付着するのを予防し、したがって、基材により良好な機械的および化学的頑強性ならびにかなり良好な長期安定性を提供する有効なグラフト方法を提供する。
【0062】
典型的な具体例に加えて、前記の態様および変形、さらなる具体例、態様および変形は、図面および図への参照により、および以下の記載の検討により明確になるであろう。
【0063】
発明の詳細な記載
定義:
本明細書に特記しない限りは、用いた用語の定義は、有機合成および薬学の技術分野で用いられる標準的な定義である。典型的な具体例、態様および変形は図に示され、本明細書に開示された具体例、態様および変形ならびに図が例示的であり、限定されないことが考慮されるべきであることが意図される。本願の全体にわたって引用されたすべての文書の全開示を、ここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0064】
「アルキル」基は、一連の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、飽和または不飽和の脂肪族基であり、それは所望により、酸素、窒素または硫黄原子が、その鎖中または示された炭素原子間に挿入される。(C1-20)アルキルは、例えば、1~20の炭素原子の鎖を有するアルキル基を含み、例えば、基メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1,3-ブタジエニル、ペンタ-1,3-ジエニル、ペンタ-1,4-ジエニル、ヘキサ-1,3-ジエニル、ヘキサ-1,3,5-トリエニル等を含むアルキル基を含む。また、アルキル基は、例えば、-(CR1R2)m-基(式中、R1およびR2が独立して水素であるか、または独立して不存在であり、例えば、mは1~8である)として表すことができ、かかる表現も、飽和および不飽和のアルキル基をカバーすることが意図される。
【0065】
例えば、「アリールアルキル」として表されたアリール基のごときもう一つの基と共に記載されたアルキルは、直鎖、分岐鎖、飽和または不飽和の脂肪族の二価基であることが意図され、炭素数は、アルキル基内に(例えば、(C1-20)アルキルとして)および/またはアリール基内に(例えば、(C5-14)アリールとして)示されるか、または原子が示されない場合には、そのアリールおよびアルキル基間の結合を意味する。かかる基の非排他的な例は、ベンジル、フェネチル等を含む。
【0066】
「アルキレン」基は、アルキル基中に示された原子数を持つ直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和の脂肪族二価基;例えば、-(C1-C3)アルキレン-または-(C1-C3)アルキレニル-である。
【0067】
「アミノ酸」(AA)は当該技術分野においてよく知られ、各アミノ酸の側鎖で通常官能化されたアミン基(-NH2)およびカルボン酸基(-COOH)を含む化合物である。アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンおよびグルタミンを含む。2以上のアミノ酸の結合は、ジペプチド、トリペプチド等のごとき、ペプチドを形成し得る。
【0068】
「アリール」は、各環が芳香族であるか、または1以上の環と縮合した場合には芳香族環集合を形成する単環または多環の集合を意味する。1以上の環原子が炭素でない(例えば、N、S)ならば、アリールはヘテロアリールである。アリール基は、本明細書に記載のごとく、所望により置換し得る。
【0069】
モノシクリルまたはポリシクリルのごとき「シクリル」は、単環式、もしくは直鎖縮合、角間縮合もしくは架橋のポリシクロアルキル、またはそれらの組合せを含む。かかるシクリル基は、ヘテロシクリルアナログを含むことが意図される。シクリル基は飽和、部分的飽和または芳香族であり得る。
【0070】
本明細書に用いた「歯科用接着剤」または「組合せ接着剤混合物」は、歯科用ユニットまたは構造(歯のごとき)上での処理または前処理として用いて、歯科要素もしくは材料(矯正具(例えば、ブランケット))を歯科表面に付着させ得る本明細書に開示された化合物または組成物を意味する。歯科用接着剤は、矯正具を歯表面のごとき歯科表面に付着させるために用いられる組成物を一般的にいい得る。ある態様において、歯科表面は、エッチングもしくはプライミングにより、または本明細書に開示された化合物および組成物での付着を増強するために接着剤を適用することにより前処理し得る。
【0071】
「フィラー」は、バインダーのごときより高価な材料の消費を低下させるかまたは混合材料の機械的特性を改善するために材料(プラスチック、接着剤、複合材料、コンクリート、セメント)に加えた粒子(群)および/またはファイバーである。フィラーは、無機物、例えば、ケイ酸塩無機物(雲母、シリカ、ガラス、カオリン、ジルコニア等を含む)、バイオミネラル(歯および骨中の炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロキシアパタイトを含む)、アルミニウム/アルミナ、チタン/チタニア等のごとき金属/金属酸化物を含めた当該技術分野において知られた様々な異なる材料で作製し得る。歯科適用については、フィラーまたはフィラーマトリックスは、1つのフィラーまたは異なるフィラーの混合物を含み得る。フィラーは一般的に非反応性であろう。代表的なフィラーは、ヒュームドシリカ、非酸反応性フルオロアルミノシリケートガラスフィラー、石英、すりガラス、非水溶性フッ化物、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライトおよび分子ふるいを含み得る。
【0072】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0073】
「ヘテロシクリル」または「複素環」は、環を形成する原子の1以上がN、OまたはSであるヘテロ原子であるシクロアルキルである。ヘテロシクリルの非排他的な例は、ピペリジル、4-モルホリニル、4-ピペラジニル、ピロリジニル、1,4-ジアザペルヒドロエピニル、1,3-ジオキサニル等を含む。
【0074】
「ヘテロアリール」は、5または6個の環原子を有する環状芳香族基であり、ここに、少なくとも1つの環原子は、ヘテロ原子、例えば、N、S、Oであり、残りの環原子は炭素である。存在する場合、窒素原子は所望により四級化でき、硫黄原子は所望により酸化できる。ヘテロアリール基は、限定されるものではないが、ピリダジン、ピリジンおよびピリミジンに由来したものを含む。また、ヘテロアリールは、限定されるものではないが、二環または三環を含み、ここに、ヘテロアリール環は、アリール環、シクロアルキル環、シクロアルケニル環、およびもう一つの単環ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル環よりなる群から独立して選択される1または2環に縮合される。これらの二環または三環のヘテロアリールは、限定されるものではないが、べンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾイミダゾール、インドリジン、イミダゾ[1,2a]ピリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、ナフチリジン、キノリジン、インドール、ベンゾキサゾール、ベンゾピラゾールおよびベンゾチアゾールに由来するものを含む。二環または三環のヘテロアリール環は、それ自体のヘテロアリール基または、それが縮合するアリール、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはヘテロシクロアルキル基のいずれを介しても結合できる。記載したごとく、本発明のヘテロアリール基は、置換または非置換であることができる。
【0075】
本明細書に用いた、材料の「機械的特性」は、本願に開示された材料の剛性、硬度、ヤング率(弾性率)、靭性、破砕(伸長性またはたわみ性)、降伏強度、極限強度等を含む。
【0076】
「自己集合した単層」またはSAMに用いた「自己集合した」または「自己集合」は、基材または固体の表面上に溶液(または気相)からの分子化合物の吸着によって形成される有機集合構造である。典型的には、吸着質は、結晶または半結晶様の構造に、自然に(時々、エピタキシャルに)組織される。SAMを形成する式Iで表される化合物のごとき分子(またはリガンド)は、基材表面に特定の親和性を持つ「ヘッド基」ということができる化学的官能性を有している。一旦、化合物のヘッド基が基材表面に結合すれば、末端基(EG)またはテール基は、第2または引き続いての自己集合した層またはSAMのごとき1以上の層とさらに結合し得るSAMの表面を形成する。
【0077】
「置換または非置換の」または「所望により置換されていてもよい」とは、特記しない限りは、例えば、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C1-8)シクロアルキル、ヘテロシクリル(C1-8)アルキル、アリール(C1-8)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1-8)アルキル等のごとき基が、非置換である得るか、またはハロ、ニトロ、F3C-、F3CO-、CH3O-、-C(O)OH、-NH2、-OH、-SH、-NHCH3、-N(CH3)2、-SMe、シアノ等のごとき基から選択される1、2または3個の置換基によって置換し得ることを意味する。
【0078】
「基材」とは、印刷およびエレクトロニクス製作およびデバイスのための表面を持つ材料、基礎材料または組成物を意味する。基材は当該技術分野においてよく知られ、「材料」と互換的に用い得る。
【0079】
「表面プライマー」または「プライマー」は、SAMのごとき自己集合した層を形成し得る式Iまたは式IIで表される化合物のごとき材料の薄層を意味し、それを用いて、第2の自己集合した層もしくはもう一つのSAMのごとき材料の第2の層との、金属、金属酸化物、酸化物および他の材料のごとき表面の接着を改善し得る。
【0080】
実験:
本発明の化合物の調製のために以下の手順を使用し得る。これらの化合物を調製するのに用いた出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Company (Milwaukee, Wis.)、Bachem (Torrance, Calif.)、Sigma (St. Louis, Mo.)のごとき商用供給者から入手できるか、または当業者に知られた方法、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, vols. 1-17, John Wiley and Sons, New York, N.Y., 1991; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, vols. 1-5 and supps., Elsevier Science Publishers, 1989; Organic Reactions, vols. 1-40, John Wiley and Sons, New York, N.Y., 1991; March J.: Advanced Organic Chemistry, 4th ed., John Wiley and Sons, New York, N.Y.;および Larock: Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, New York, 1989のごとき参考資料に記載された以下の手順により調製されるかのいずれでもである。
【0081】
いくつかのケースにおいて、保護基を導入し、最後に除去し得る。アミノ、ヒドロキシおよびカルボキシ基に適当な保護基は、Greeneら, Protective Groups in Organic Synthesis, Second Edition, John Wiley and Sons, New York, 1991に記載されている。標準的な有機化学反応は、例えば、Larock: Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, New York, 1989に記載のごとき多数の異なる試薬を用いて達成できる。
【0082】
プライマー/化合物の調製:
化合物は当該技術分野において知られた従来の有機合成法を用いて調製し得る。
【0083】
反応図式1:代表的なプライマーの調製:
【化19】
【0084】
反応図式2:代表的なプライマーの調製:
【化20】
【0085】
反応図式1および反応図式2の化合物は、示される出発物質を用いて、同様の反応条件下で調製する。反応図式2に示されるように、3,4,5-トリヒドロキシフェニルプロピオン酸を臭化ベンジル、およびK2CO3のごとき塩基を用いて、ベンジル化によって保護し得る。ジメチルアミンおよびグリニャール、例えば、イソプロピル塩化マグネシウムのごときアミンを用いるエステルのアミド化は、アミドを提供する。水素化アルミニウムリチウムを用いるアミドの還元はアミンを提供する。
【0086】
別法として、テトラベンジルで保護されたエステルをジイソブチルアルミニウム水素化物のごとき水素化物を用いて、対応するアルコールに還元し得る。アルコールは対応するホスホン酸塩に変換し得る。環状リン酸塩は、高温にてアミンで処理して、両性イオン化合物を提供する。トリベンジル化エーテルを炭素上パラジウムでの水素添加によって脱保護し得る。
【0087】
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン酸ベンジル:
【化21】
【0088】
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン酸ベンジルを対応する酸から調製する。乾燥した500ml三つ口丸底フラスコに、ゴム隔壁および撹拌子を取り付け、アルゴン流下で室温(RT)に冷却する。撹拌しつつ、1当量の酸に続いて、200mlの無水DMFを加える。一旦、溶解したならば、無水K
2CO
3-(6当量)を撹拌しつつ加える。新鮮な臭化ベンジル(4.5当量)をシリンジを介して加える。その溶液を80℃の油浴に置き、1日間撹拌する。その反応物をRTに冷却し、次いで、大きな焼結ガラス漏斗を介して2L丸底フラスコに注いで、固体を除去し、反応容器はフリットを介して3×300mlのEtOAcで濯ぐ。次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残余のDMFをトルエン(500ml)での4サイクルの蒸発によって除去する。次いで、粗製の残渣を1.5LのEt
2Oに再度溶解し、5×100mlの冷水、1×500mlのブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。次いで、粗製の残渣をシリカゲルに乾燥充填し、フラッシュクロマトグラフィー勾配溶離10~40%のEt
2O/ヘキサンによって精製する。材料を
1H-NMRによって純度につきチェックし、次に、直ちに次の工程に続ける。
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン酸:
【化22】
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパノ-1-オール:
【化23】
【0089】
アルコールはLiAlH4での還元によって酸から調製される。7.24gの酸を100mlの無水THFに溶解し、0℃に冷却した。次いで、4当量のLiAlH4を4回に分けて加える。その反応物をRTに暖めつつアルゴン下で一晩撹拌した。反応物をフィーザー・ワークアップによってクエンチし、100mlのEt2Oで希釈し、アルミニウム固体を濾去する。その溶液を分液漏斗に移し、飽和NaHCO3で1回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過し、次いで、減圧下で蒸発させて、粗製材料を得る。粗製材料をEt2Oで溶出するシリカのパッド上で精製する。化合物を透明の粘性油として単離する。
【0090】
ジメチルアミドの調製用手順:
ジメチルアミドは、ペプチドカップリング試薬として1-1’カルボニルジイミダゾールを用いて都合良く調製される。乾いたフラスコに、アルゴン下の撹拌子およびゴム隔壁を装備する。1当量の対応するカルボン酸、4当量の無水Et
3Nおよび無水CH
2Cl
2[0.5M]をフラスコに加える。フラスコは氷浴中で0℃に冷却し、撹拌し、次いで、1-1’カルボニルジイミダゾール(1.1当量)を何回かに分けて加える。冷却浴を取り去り、溶液をRTに暖めつつ、30分間撹拌する。塩酸塩としてのジメチルアミン(2当量)を1回で加え、TLCが完了を示すまで溶液を撹拌する。内容物を分液漏斗に移し、CH
2Cl
2で希釈し、有機層を2×1N HCl、2×飽和NaHCO
3で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥する。有機層をろ過し、減圧下で蒸発させ、粗製の残渣をEtOAcで溶出する塩基性Al
2O
3のパッドでろ過し、再度蒸発させ、50~100%のEtOAc/ヘキサンでのフラッシュクロマトグラフィー勾配溶離によって精製する。ジメチルアミドを高純度(TLCによる)で得る。
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)-N,N-ジメチルプロパンアミド:
【化24】
【0091】
3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン:
【化25】
【0092】
シャブリエ反応によるベンジル保護した化合物の調製:
【化26】
【0093】
1つの方法において、ベンジル保護した両性イオン化合物は、ある種の修飾を含むシャブリエ反応を介して調製される。受け取り、冷凍庫に貯蔵したクロロリン酸エチレン(Aesar)を用いる。典型的な手順において、炎乾燥したフラスコに、撹拌子およびゴム隔壁を取り付け、ポジティブなアルゴン流下で冷却する。アルコールに続いて、無水Et2O[0.4M]、1.15当量のEt3Nをフラスコに加え、氷浴中で撹拌する。次いで、1.15当量のクロロリン酸エチレンをシリンジを介して滴下し、そのアミン塩酸塩を沈殿させ、反応物を10分間撹拌する。フラスコを4時間撹拌しつつRTに暖める。フラスコ中のEt2Oの体積と等しいヘキサンをアミン塩酸塩の沈殿まで加える。フラスコの内容物をRBFへ塩基性セライトのパッド上でろ過する。容器の内容物を塩基性セライトのパッドを介してヘキサン、次いで、Et2Oで濯ぎ、溶媒を減圧下で除去する。内容物を真空下のRBFに貯蔵し、一方、第2の反応容器を調製する。
【0094】
シュレンク(Schlenk-bomb)型フラスコは、撹拌子を装備し、炎乾燥し、アルゴン下で2つのゴム隔壁を装備する。リン酸エステルを含むフラスコにアルゴンをバック充填し、真空マニホールドから取り除き、ゴム隔壁を取り付け、次いで、アルゴン針を隔壁に挿入する。無水MeCN(mmolアルコール当たり2~4ml)をシリンジを介してこのフラスコに加え、完全に溶解するまで渦巻かせた。
【0095】
リン酸エステルを含むMeCN溶液をシリンジを介してシュレンクフラスコに移し、RBFをシュレンクフラスコへMeCNで一度濯ぐ。次いで、2~4当量のアミンをシュレンクフラスコに加え、ゴム隔壁をシュレンクバルブと取り替える。シュレンクバルブを閉じ、アルゴン針を含む第2のゴム隔壁をガラスアダプターと取り替え、高真空下に置く。次いで、シュレンクバルブを開き、大気を10秒間フラスコから取り除いて、フラスコから大気を取り除き、次いで、シュレンクバルブを閉じ、フラスコを油浴中の80℃にて2~4日間撹拌しつつ、真空下で還流する。
【0096】
フラスコを油浴から取り去り、RTに冷却する。次いで、フラスコをアルゴンでバック充填し、真空マニホールドから取り除き、シュレンクバルブを除去する。反応混合物をRBFへシリンジを介して移し、反応容器をCH2Cl2で2回洗浄し、RBFに加える。揮発物を減圧下で除去し、残存溶媒をペンタンとの蒸発によって除去して、粗製の化合物を得る。残渣を最小量のCH2Cl2に溶解し、C2結合した逆相シリカで精製する。
【0097】
【0098】
環状リン酸塩中間体は、さらなる精製なくして調製直後に用いられる。
【0099】
対応する光開裂性o-ニトロベンジル誘導体の調製は、o-ニトロベンジル化合物の選択された機能的誘導体との環状リン酸塩の同様のシャブリエ反応によって行い得る。例えば、M.S. Kimら, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 16 (2006) 4007-4010を参照されたし。
【0100】
水素化分解により保護されたアルコールの脱-保護用の一般的手順:
非保護アルコール(ジ-オール、トリ-オール、テトラ-オールおよびペンタ-オール)を含む各両性イオン化合物の酸化安定性は、固相、D6-DMSO中溶液、または水中のコロイド分散体としてのいずれでもあり得る。保護されたアルコールを脱保護した後、全操作中に雰囲気酸素を排除するための努力を成す。非保護アルコールの精製が困難であり、不活性雰囲気下の精製技術の適用を必要とし得るとき、脱-保護工程を直ちに進める中間体の精製を増加させるために努力が成され、最終生成物はすべて、FTIR、1H-NMRおよび13C-NMR分光法により決定される満足な純度において得られた。
【0101】
シュレンク型フラスコに撹拌子を装備し、2つのゴム隔壁を装備する。基材質量に対して10~20重量%のPd/C(5%Pd、Aesar)をフラスコに加える。少量のCH2Cl2(4~8ml)をシリンジを介して加える。所望の量の基材を含む別のRBFは、空気を外部にパージするためのゴム隔壁およびアルゴン針を装備する。CH2Cl2/MeOHの1:1v/v混合物の適切な体積をシリンジを介して加える。次いで、ベンジル保護された化合物が溶解するまで、フラスコを撹拌し、基材を含む溶液をシリンジを介してシュレンクフラスコに移す。RBFをMeOH(4~8ml)で濯き、シリンジを介してシュレンクフラスコに移す。次いで、シュレンクバルブを開き、フラスコの内容物を真空下に置き、大気を真空下で除去する。シュレンクバルブを閉め、バルブ前の副室をアルゴンでバック充填し、ガラスアダプターをゴム隔壁と取り替える。針に接続された水素バルーン(倍は膨らんだ)を隔壁を介して置き、次いで、通気針を隔壁を介して配置し、30秒間副室からのアルゴンをパージし、次いで、それを除去する。シュレンクバルブをゆっくり開き、水素を反応容器に入れ、撹拌を2~4日間継続し、新鮮なバルーンでの水素バルーンの定期的な置換をすべての置換で用いる。
【0102】
一旦、反応が完了すれば、シュレンクバルブを閉じ、残りの隔壁を真空マニホールドおよび副室に接続された真空アダプターと取り替え、その後、シュレンクバルブが真空下に置かれる。次いで、シュレンクバルブを開き、フラスコの内容物を真空下に置き、水素ガスは5~10分間この方法で系から除去する。ゴム隔壁を装備した別の丸底フラスコの風袋を計り、ポジティブなアルゴン流下に置く。次いで、シュレンクフラスコをアルゴンでバック充填し、ポジティブなアルゴン流下の間、シュレンクバルブを除去し、ゴム隔壁と取り替える。30mlのルアーロックのPTFEコーティングしたシリンジに長い金属針を取り付け、シリンジをアルゴンで3回充填およびパージし、次いで、それに反応容器の隔壁を介して挿入する。次いで、溶液をアルゴンのブランケットと共に、シリンジに引き入れ、金属針を0.45um PTFEシリンジフィルターおよび使い捨ての針と取り替えられる。次いで、溶液はフィルターを介してRBFへ押し進め、Pd/Cを除去し、ろ過した溶液を減圧下で濃縮し、純粋な脱保護したコアセルベートを得、それを酸素から保護されたグローブボックスに貯蔵する。
【0103】
化合物はすべて、FTIR(cm-1)、13C NMR(125MHz、d6-DMSO)δ(ppm)、1H NMR(600MHz、d6-DMSO)δおよびHRMSにより特徴付けし、予期される生成物が満足な純度で生成されることを確認する。ベンジル保護されたコアセルベートは、ESI-HRMS(QTOF2タンデム質量分析計)に十分に安定し、水素化分解に先立って十分に特徴付ける。
【0104】
保護されたヒドロキシ化合物のいくつかの水素化分解または脱ベンジル化は、完全な脱保護のためわずかに高い触媒負荷(出発物質の質量に対し20重量%のPd/C)および反応時間延長(2日を超える)で達成し、50%を超える収率で化合物を与える。
(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(2-メチルアクリレート):
【化28】
【0105】
15gの微粉末化1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼンを大きな撹拌子を装備した100mlのRBFに加え、氷浴に置いた。10mlの70%のHNO3をゆっくり加え、得られたスラリーを10分間氷浴に平衡化させた。15mlの濃硫酸を15分間にわたってスラリーに滴下し、化合物を溶解した。その混合物を冷却浴から取り出し、15分間効率的な撹拌でRTにした。フラスコを60℃に予め加熱した油浴に入れ、60℃にて2時間撹拌した。フラスコを熱浴から取り出し、RTに冷却し、内容物を450gの砕いた氷/水1:1に注いだ。フラスコの残りの内容物を50mlの水で氷水へ濯いだ。混合物をゆっくり渦巻かせ、すべての氷を溶かした後、黄色沈殿物をろ過により集め、さらなる水で濯ぎ、スパチュラでケーキを優しく壊すことにより数時間真空乾燥させた。粗製材料を高真空下で一晩乾燥させ、次いで、EtOH/水から結晶化し、ろ過し、乾燥させて、淡黄色粉末として16.8gの1,4-ビス(クロロメチル)-2-ニトロベンゼンを得た。
【0106】
4.4gの1,4-ビス(クロロメチル)-2-ニトロベンゼン、4.76gのメタクリル酸ナトリウムおよび300mgのヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウムおよび、ラジカル抑制剤としての2~3mgのヒドロキノンモノメチルエーテルを、アルゴン雰囲気下の大きな撹拌子を装備し乾燥した250mlのRBFに加える。60mlの無水DMFを撹拌しつつシリンジを介して加え、その結果、明赤色スラリーを形成した。フラスコを60℃に予め加熱された油浴中に入れ、赤色スラリーを60℃にて4時間アルゴン下で撹拌した。フラスコをRTに冷却し、内容物を350mlの砕いた氷:水に注ぎ、その結果、細かいピンク色沈殿を形成した。得られたスラリーをゆっくり撹拌し、15分間氷浴中の0℃に静置し、真空でガラスフリットに急速にろ過し、水で洗浄し、3時間真空乾燥させた。得られたピンク色粉末は、0.5インチの塩基性アルミナの頂部で2.5インチのシリカを充填した短いカラムに入れ、300mlの25%のEtOAc/ヘキサンをそのカラムを介して500mlのRBFに移し、有機溶媒を真空下で除去し、白色残渣を100mlのペンタンで2回蒸発させて、白色粉末として、4.8g(75%)の(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(2-メチルアクリレート)を得、それをアルゴン下で貯蔵し、光から保護した。
【0107】
ビス(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)O,O’-((2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン))ジスクシナート:
【0108】
【0109】
10gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート、7.7gの無水コハク酸および50mgのヒドロキノンモノメチルエーテルを撹拌子を備えた50mlのフラスコに加えた。フラスコをアルゴンでパージし、密閉し、90℃に加熱し、18時間撹拌した。フラスコをRTに冷却して、定量的収率にて4-(2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)-4-オキソブタン酸を得た。
【0110】
2.5gの4-(2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)-4-オキソブタン酸をシリンジを介してゆっくり1.5gのK2CO3および160mgのヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを含有する25mlの無水DMFを含むフラスコに加えた。その溶液を15分間RTにて撹拌した。1.1gの1,4-ビス(クロロメチル)-2-ニトロベンゼンを1回で加え、フラスコを再密閉し、RTにて18時間アルゴン下で撹拌した。粗製混合物は250mlのEtOAcを含む分液漏斗に注ぎ、有機層を水で5回、飽和NaHCO3で1回、ブラインで1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空で濃縮して、粗製材料を得た。0~50%のEtOAc/ヘキサンで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより、淡黄色液体として、1.2gの純粋なビス(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)O,O’-((2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン))ジスクシナートを得た。
【0111】
以下の調製は、Soft Matter, 2011, 7, 1426-1440に記載されている。
【0112】
2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(オキシ)ビス(オキソメチレン)-ビス(オキシ)ビス-(エタン-2,1-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート):無水THF(5mL)中のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(1.9g、14mmol)の溶液を、無水THF(20mL)中のカルボニルジイミダゾール(CDI)(2.4g、14mmol)の溶液に滴下した。RTにて反応液を一晩撹拌した後、1.8mol/Lのナトリウムエタノレート懸濁液(0.2mL、0.35mmol)と一緒に無水THF(20mL)中の2NPDM(1.3g、7.2mmol)の溶液を加えた。室温での5日間のさらなる撹拌後、減圧下ろ過し、ろ液を乾燥まで減少させた。残渣を溶離剤としてCHCl3/MeOH(20:1)を用いるシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0113】
2,2’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス(メチレン)ビス(オキシ)ビス(オキソメチレン)ビス(アザン-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル)ビス(2-メチルアクリレート):2NPDM(1.0g、5.5mmol)を無水THF(10mL)に溶解し、窒素下で無水THF(15mL)中の2-イソシアナトエチルメタクリレート(1.7g、11mmol)の溶液に滴下した。反応混合物を65℃に加熱し、この温度にて24時間撹拌した。反応が完了した場合、溶媒を蒸発させ、残渣をCHCl3/MeOH(10:1)を用いるシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0114】
ビス(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)’-(2-ニトロ-1,4-フェニレン)ビス-(メチレン)ジスクシナート:モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルスクシナート(2.5g、11mmol)を無水ベンゼンに溶解し、塩化オキサリル(2.8g、2mmol)を室温にて窒素下で加えた。反応混合物を85℃に加熱し、3時間還流した。RTに冷却した後、ベンゼンおよび過剰な塩化オキサリルを減圧下で除去した。得られた塩化アシルを無水THF(35mL)に溶解し、THF(15mL)中の2NPDM(1.0g、5.5mmol)およびトリエチルアミン(1.2g、12mmol)の溶液を滴下した。RTにて混合物を一晩撹拌した後、沈殿した固体を濾過によって除去し、溶液を乾燥まで減少させた。残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解し、水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発させた。得られた油を溶離剤としてCHCl3/MeOH(40:1)を用いるシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0115】
2-((1-(4-(4-(2-(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ)ブトキシ)-5-メトキシ-2-ニトロ-フェニル)エトキシ)カルボニルアミノ)エチルメタクリレート:2-イソシアナトエチルメタクリレート(1.1g、7.4mmol)を無水THF(5mL)に溶解し、窒素下で無水THF(25mL)中のHEMNPBA(1.0g、3.5mmol)およびジブチルスズジラウレート(0.11g、0.18mmol)の溶液に加えた。混合物を65℃に加熱し、この温度にて48時間撹拌した後、反応が完了した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を溶離剤としてCHCl3/MeOH(10:1)を用いるシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0116】
プライマーのAFMイメージを種々の濃度:0.001mM(そのCAC未満)、0.05mM(CACを超える)および5mMで得る。プライマーの1つの例において、5mM濃度は、一貫した化学配置を示唆する分子的平滑表面を示す。
【0117】
原子間力顕微鏡(AFM)は、濃度(5mM)を変えるDI水中の溶液から本願の化合物で吸着された雲母表面につき走査する。化合物は、雲母上の欠陥がない原子的に滑らかな二層を形成する。表面または厚い多層上の小集合体の形成は観察されない。
【0118】
プライマー組成物での表面コーティング:
医薬適用のための基材上の沈着:
本願の化合物の表面コーティング、プライミングまたは沈着は、本明細書で開発および開示された特定の改善された手順および処方を除いて、当該技術分野において知られた標準的方法を用いて行い得る。歯科および医薬適用については、プライマーは、水、エタノールまたは水とエタノールとの溶液の混合物のごとき溶媒中で提供し得る。歯科適用について、同じ溶媒または異なる溶媒を用いて、歯牙またはエナメルの表面を洗浄し得る。ある種の適用において、溶媒は水であり、プロセスは環境にやさしく有効なプロセスを提供する。ジメタクリレートのごときある種のモノマーを用いるいくつかの方法において、溶媒は必要ではないかもしれない。化合物94についてのごとき式IIで表される化合物を用いる1つの代表的な方法において、プロセス中の溶媒の使用は、必要ではない。得られた接着剤は可視光下で結合または架橋され、次いで、物理的な刺激または撹拌でUV光下で剥離(または開裂)される。
【0119】
1つの適用において、使用した溶液を中性のpHにて用い得るか、またはフェノール基、ヒドロキシフェニルまたはポリヒドロキシフェニル基がモノマー中で存在して、対応するケト-化合物またはキノンへのフェノールの酸化を回避する場合のごとき酸性条件、pH<7、pH<6、pH<5にて維持し得る。pHは、リン酸、塩酸、酢酸またはスルホン酸のごとき酸を用いて調節し得る。適用のタイプまたは使用した化合物/プライマーのタイプに依存して、溶液のpHは、>pH5、>pH6、>pH6.5または>pH7であり得る。その溶液を不活性ガスを用いて、または真空もしくはその組合せを用いて脱気でき、溶液およびその溶液を含む容器を、所望の窒素またはアルゴンのごとき不活性ガスでフラッシュし得る。
【0120】
特定用途に依存して、溶液中のプライマー濃度は、異なる濃度および濃度範囲、例えば、溶媒もしくは溶媒混合物中で、0.0001重量%~20重量%、0.0001重量%~15重量%、0.0001重量%~10重量%、約0.001重量%~10重量%、約0.01重量%~10重量%、約0.1重量%~10重量%、または約0.1重量%~5重量%;0.0001重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、1.0重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%にてまたはそれを超えて調製し得る。エタノール、水、エタノール/水または他のFDAに承認された溶媒もしくは溶媒混合物を歯科および医薬適用に用い得る。しかしながら、使用したある種のモノマーまたはプライマーは、溶媒の使用を必要としない。
【0121】
基材上のアクリレートまたはメタクリレートおよび関連する基を含む式Iまたは式IIで表される化合物の接着剤の接着または結合は当該技術分野において知られた標準的方法を用いて行い得る。例えば、結合は、可視光開始フリーラジカル重合のごとき光化学薬品によって開始でき、例えば、約0.25重量%でのカンファーキノン(CQ)のごとき可視光光開始剤、および、例えば、約1重量%での2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)のごときもう一つの開始剤または共開始剤を含み得る。
【0122】
材料およびエレクトロニクス適用のための基材上の沈着:
1つの具体例において、組成物を含む組成物または溶液を、化合物/プライマーが始めるか、または表面に吸着もしくは付着するのを可能にする期間、無機物および/または金属酸化物表面のごとき表面に適用し得る。表面の性質および化合物の構造に依存して、表面への化合物の付着は約10分未満、5分未満、3分未満、2分未満または約1分未満かかり得る。一旦、プライマーが表面に吸着されれば、いずれの過剰なプライマーも、溶媒もしくは溶媒混合物で洗浄または濯ぐことにより、表面から除去し得る。ある種の適用について、溶媒もしくは溶媒混合物は、水、エタノールまたは水およびエタノール溶液の混合物であり得る。所望の適用に依存して、吸着されたプライマーを含む表面は、所望の乾燥が達成されるまで空気、熱またはその組合せを用いて乾燥し得る。特定の用途に依存して、表面に組成物を適用した後にさらなる処理は必要ではない。
【0123】
いくつかの具体例において、プライマー溶液において、および/または洗浄溶媒として使用する溶媒もしくは溶媒混合物は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、THF、Me-THFおよびN-メチルピロリドン;およびそれらの種々の混合物を含み得る。ある種の適用において、溶媒は水または、水と溶媒の混合物であり、プロセスは環境にやさしく有効なプロセスを提供する。ある種の適用について、溶媒は用いられない。
【0124】
付着または吸着した層の厚みは、約0.5~50nm、0.1~40nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、5~10nm、20nmを超える、100nmまたは約1~10μmであり得る。本願の化合物/プライマーを含む溶液の沈着について、厚みは、化合物の性質、層の所望の厚みおよび適用の性質に依存するであろう。SAMの調製について、付着もしくは吸着した層の厚みは、所望の厚みを持つ他の自己集合した層についてのものより小さい。所望により、第1の層を含む表面は、二次層または引き続いての層を適用する前に完全に乾燥し得る。
【0125】
他の材料または電子工学適用について、プライマーは、水、エタノールまたは水とエタノールの溶液の混合物のごとき溶媒中で提供でき;または、プライマー溶液において、および/または洗浄溶媒として使用される溶媒もしくは溶媒混合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、THF、Me-THFおよびN-メチルピロリドン;およびその種々の混合物を含み得る。1つの変形において、同じ溶媒もしくは異なる溶媒は基材表面を洗浄するために用い得る。ある種の適用において、溶媒はプライマーと共に用いられない。
【0126】
1つの適用において、使用したプライマー溶液を、中性のpHで用い得るか、または酸性条件、pH<7、pH<6、pH<5にて維持し得る。pHは、リン酸、塩酸、酢酸、スルホン酸または10-メタクリロイル-デシル-二水素-ホスフェート(MDP)のごとき酸性モノマーのごとき酸を用いて調節し得る。適用のタイプまたは使用する化合物/プライマーのタイプに依存して、溶液のpHは、pH>5、pH>6またはpH>7であり得る。その溶液は、乾燥剤を用いて脱水されるか、または不活性ガスまたは真空もしくはその組合せを用いて脱気でき、溶液および溶液を含む容器は、所望ならば、窒素またはアルゴンのごとき不活性ガスでフラッシュし得る。
【0127】
接着剤、コンポジットおよびセメントのための適用:
本願のプライマーまたは化合物での接着剤、コーティング組成物、コンポジット、塗料およびシーラントの処理は、前記に記載された方法に実質的に同様であり、当該技術分野において知られるかかる材料の処理についての標準的な手順変更を含み、本明細書に開示された方法および組成物の有利さを適用する。フィラーへの方法の適用について、例えば、無機物および/または金属酸化物フィラー(粉末、繊維等)は、プライマー溶液で処理する。
【0128】
異なる適用についての異なる組成物として必要とされる純粋なフィラーのごときフィラーは、プライマー溶液に加えられる。溶液は激しく撹拌する、および/またはほぼRTにて数分間超音波処理される。フィラーは溶媒から除去または単離され、溶媒もしくは溶媒混合物で濯がれ、次いで、遠心分離によってろ過または単離される。組成物の性質および所望の適用に依存して、フィラーは必要ならば2回以上洗浄および濯き得る。次いで、フィラーは、当該技術分野において知れられるごとく、所望のレベルの乾燥まで、(例えば、歯科適用のため)空気吹込によるごとき乾燥するが、凍結乾燥手順により乾燥でき、または熱風、RT空気もしくはガスにより乾燥でき、真空により乾燥できる。
【0129】
1つの特定の具体例において、乾燥したフィラーは、フィラーを用いて重合プロセスを行なうために、モノマー、共単量体混合物、プレポリマーおよびポリマーのごとき種々の異なる材料に加え得る。当該技術分野において知られているもう一つの具体例において、フィラーは接着剤を調製するためのプレ-セメントマトリックスおよび/または接着剤に加え得る。もう一つの具体例において、フィラーは、組成物が硬化および/または乾燥される前に、コーティング、塗料組成物、ゴムもしくはプラスチック、インクおよび/またはシーラントと組み合わせ得る。本明細書に記載されたプロセスを使用して、コンポシット材料(フィラーを含む)の機械的特性(硬さ、厚み等を含む)は、かなり増加または改善し得る。
【0130】
接着剤またはコーティングの光開裂または剥離:
当該技術分野において知られている様々な照射プロトコールおよび方法を用いるプライマー、コーティングまたは組合せ接着剤混合物の光開裂、光分解または剥離。照射は、赤外線(IR)、紫外線(UV)および/またはIRおよびUV照射の組合せを用いて、プライマー、コーティングまたは接着剤を開裂するのに十分な期間、特異的にプライマーを開裂することにより行い得る。組成物の性質に依存して、光照射は、プライマーを剥離するのに十分な期間、ほぼRTにて、265nm、300nm、340nm、365nm、380nmまたは400nmで行い得る。
【0131】
例えば、プライマーまたは組合せ接着剤混合物は、光照射により、例えば、10WのUV LED光、20WのUV LED光、130WのUV LEDランプ(NobleCure-Altair 75)、400Wの中圧水銀ランプまたはポータブルLX300UVキセノンランプで、または、例えば、十分な時間、340nm(光強度=20mW/cm2)のUVランプで光分解でき、所望により、所望の波長、例えば、260nm、340nm、365nm、380nmまたは400nmのモノクロメーターと共に、またはプライマーもしくは接着剤の性質に基づいて決定して、剥離が完了するまで、材料(プライマーもしくはコーティング)の剥離をモニターする。
【0132】
プライマー、組成物または組合せ接着剤混合物の性質に依存して、照射はIR、UVまたはその組合せによって行い得る。その照射は、材料を剥離するための十分な量の時間、ほぼRTまたはRTを超えて、例えば、約27℃、30℃または約35℃以上で行い得る。ある種の具体例において、剥離は、音波処理、またはその組合せによって剥離する基材を曲げるまたは移動させるような物理的な力と共に行い得る。
【0133】
歯科適用における接着剤および組合せ接着剤混合物の使用:
以下は、本願の歯科用接着剤の使用のための手順を示す代表的な記載である。
【0134】
一般的に、本願の光開裂性ジメタクリレートのごとき光開裂性アクリレートは、カンファーキノン(CQ、約0.25重量%)のごとき可視光光開始剤、および2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA、約1重量%)のごときアクリレートと混合し、歯科用接着剤(当該技術分野において、接着剤、レジンセメント、シーラントもしくはプライマー[または第2のプライマー]ともいう)のごとき接着剤を適用する前のプライマーとして表面(例えば、歯表面)に適用される。いくつかの組成物において、ジメタクリレート(99~50重量%)のごとき光開裂性アクリレートは、Bis-GMA、TEGMA、DMAEMA、CQの歯科用レジン混合物(1~50重量%)と混合して、可視光硬化およびUV光開裂性プライム層のその機械的強度を増強する。
【0135】
組成物は、光開裂性アクリレート、例えば、ジメタクリレートのごとき光開裂性プライマーまたは接着剤の混合物として用いられる場合、例えば、約90~1重量%で存在する歯科用接着剤と混合されるとき、光開裂性アクリレートを約10~99重量%で含み得る。いくつかの混合物において、光開裂性アクリレートは約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%またはそれを超えて含まれる。ある種の混合物において、接着剤は約40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、3重量%または約1重量%で存在し得る。
【0136】
本明細書に参照される組成物の明確性のために、一般的には、表面に適用される第1の組成物は、単一の光開裂性モノマー、光開裂性モノマーの混合物または光開裂性モノマーおよび非光開裂性モノマーの混合物(もしくはモノマーブレンド)であり得る光開裂性単量体組成物をいう。適用される第2の組成物は歯科用接着剤ということができ、それは当該技術分野において知られた接着剤または接着剤の混合物であり得る。そして、第1の組成物および歯科用接着剤の組合せは、組合せ接着剤混合物をいい得る。
【0137】
歯科用接着剤の代表的な例として、Bis-GMA(20g)およびTEGMA(20g、18.2mL)を100mLフラスコに加えた。Bis-GMAが非常に粘性であるので、ヒートガンを用いて、混合物を加熱し、Bis-GMAおよびTEGDMAの均一混合物を得た。混合物のアリコート(8.8mL)を20mLバイアルに取った。DMAEMA(71μL)およびCQ(33mg)をバイアルに加え、音波処理の助けを借りて混ぜ合わせた。光開裂性モノマーブレンド(光開裂性モノマーおよび歯科用モノマー接着剤混合物を含む)は、初期の接着層として、歯、金属または無機物表面のごとき表面に薄く広げた。
【0138】
次いで、歯科用接着剤をプライム(primed)表面、すなわち、開裂性モノマーまたはモノマーブレンドもしくは混合物で覆われた表面に適用して、第2の接着層を形成した。次いで、ブラケットまたは歯科用装具のごとき対象物は2以上の接着層の組合せを取り付けまたは固定される。可視光源は、接着層を硬化させかつ対象物を歯科表面に固定させるのに十分な期間、光開裂性接着剤(またはプライマー)、歯科用接着剤(または歯科用プライマー)および歯科用レジンコンポジット(または接着剤)、ならびに固定された対象物よりなる歯科用接着層を含む組合せ接着剤混合物に適用される。
【0139】
光開裂性接着層を用いる目的に依存して、組合せ接着剤混合物(コーティング、セメントまたはシーラントと共に)、およびその対象物(ブラケットのごとき)の除去または剥離は、所望の期間後に行い得る。適用に依存して、期間は、かかる組合せ接着剤混合物を用いるための目的および時間が完了するまで、数分、数日、数週間、数か月または数年であり得る。
【0140】
歯表面のごとき表面からの組合せ接着剤混合物(コーティング、セメントまたはシーラント)の剥離または除去は、UV放射、UV光またはIR光で組合せ接着剤混合物(または光開裂性接着剤もしくは接着剤の混合物)または面積を曝露することにより行い得る。所望により、UV光への曝露は、表面からの対象物を剥離または除去するのに十分な期間、物理的な撹拌と共に、例えば、揺さぶり、移動、振動、引張り、こじ開け、振動または超音波処理と共に行い得る。組合せ接着剤混合物の性質に依存して、曝露および所望により物理的撹拌は、約30秒、約1分、2分、3分、5分または約10分以下の期間行い得る。
【0141】
組合せ接着剤混合物の性質、UV光の強度および表面に固定した対象物の性質に依存して、組合せ接着剤混合物(または表面から対象物を取り除く労力の相対量)の結合強度は、(剥離させるためのUV光曝露が存在しないプロセスと比較した場合)約90%、95%または約99%までを低下し、かなり低下した力(例えば、揺さぶりまたは音波処理)で表面から対象物を除去するのを可能にする。
【0142】
本開示によって調製し得る式Iで表される代表的な化合物が、下表において提供される:
【化30】
【0143】
【0144】
また、共重合体として用い得る化合物は以下を含み得る:
【化31】
【0145】
共重合体として用い得るさらなるモノマーは以下を含む:
【化32】
【0146】
参考文献
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