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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】関節部補装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/62 20060101AFI20230621BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61F2/62
A61F5/01 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021127972
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2022031214
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020133322
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520295580
【氏名又は名称】株式会社東北補装具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真典
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義浩
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-137742(JP,A)
【文献】特表2016-514617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01 - 5/02
A61F 2/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部の両側にそれぞれ取り付けられる第1補装具部分と第2補装具部分との間に介在して該第1、第2補装具部分相互間の所定の角度範囲での回動を許容する関節部補装具であって、
第1回動端部を有し、前記第1補装具部分に固定される第1部分と、
前記第1回動端部に対して回動軸線の周りで所定の回動角度範囲θで回動可能に取り付けられる第2回動端部を有し、前記第2補装具部分に固定される第2部分とを備え、
前記第1、第2回動端部の間には、これら相互間の回動に伴って、その回動範囲の一方側及び他方側において交互に開閉する一方側開閉空間及び他方側開閉空間が形成され、
記第2回動端部には、前記一方側開閉空間又は前記他方側開閉空間内に位置して前記回動角度範囲θを制限する制限部材が着脱自在に取り付けられ、
前記第1回動端部は、
前記回動軸線を中心軸線として、その周りに第1角度範囲θ1にわたって延在する内面部分円筒面と、
前記内面部分円筒面の周方向両端縁から径方向外方に延びた2つの第1当接面とを備え、
前記第2回動端部は、
前記回動軸線を中心軸線として、その周りに前記第1角度範囲θ1に前記回動角度範囲θを加えた第2角度範囲θ2にわたって延在し、前記内面部分円筒面と摺動しながら、該内面部分円筒面に対して該回動軸線の周りで該回動角度範囲θにわたって回動し得るように設けられた外面部分円筒面と、
前記外面部分円筒面の周方向両端縁から径方向外方に延在し、前記2つの第1当接面にそれぞれ当接して前記内面部分円筒面及び該外面部分円筒面相互間の回動範囲を前記回動角度範囲θに限定する2つの第2当接面とを備え、
前記一方側開閉空間及び前記他方側開閉空間は、前記2つの第1当接面及び前記2つの第2当接面のそれぞれの間に形成され、
前記制限部材は、
前記第2回動端部に取り付けられた状態において該第2回動端部の一方の前記第2当接面に当接して固定される第3当接面と、
前記制限部材が位置する方の前記一方側開閉空間又は前記他方側開閉空間を形成する方の前記第1当接面と当接する第4当接面と、
前記第2回動端部の前記外面部分円筒面に当接して固定される内面部分円筒面とを備え、
前記2つの第1当接面、前記2つの第2当接面、前記第3当接面、及び第4当接面は、いずれも面全体が、前記回動軸線を含む平面上に存在し、
前記制限部材として、その前記第3当接面と前記第4当接面とが成す角度αにより制限される回動角度範囲(θ-α)が異なる複数種類のものが用意されることを特徴とする関節部補装具。
【請求項2】
前記第1回動端部は、前記回動軸線を中心軸線とする円筒状の大径部と、該大径部の一方の端面上に設けられ、該大径部よりも径が小さく、該回動軸線を中心軸線とする円筒状の小径部とを備え、
前記第2回動端部は、前記大径部、前記端面及び前記小径部に対して回動自在に嵌合する大径内円筒面及びこれより径が小さい小径内円筒面、及び該大径内円筒面と該小径内円筒面を段状に接続する円環面を備え、
前記第1、第2回動端部には、該第1、第2回動端部を前記回動軸線の周りで相互に回動自在に連結する連結手段が設けられることを特徴とする請求項に記載の関節部補装具。
【請求項3】
前記連結手段は、
前記小径部から前記大径部にかけて設けられた雌ねじ部と、
前記雌ねじ部に螺合するボルトと、
前記ボルトの頭部の座面と、前記小径部の端面及びこれと同一平面をなす第2回動端部の面との間に配置されたワッシャー状の環状部材とを備えることを特徴とする請求項に記載の関節部補装具。
【請求項4】
前記制限部材に設けられ、前記回動軸線に平行に配置された雌ねじ部と、
両端部に取付け用の穴が設けられたプレートと、
前記雌ねじ部に螺合することにより、前記プレートの一方の穴の部分を前記制限部材に対して固定する固定用ボルトとを備え、
前記プレートの他方の穴の部分が、前記連結手段の前記雌ねじ部及びボルトを利用して該連結手段に固定されることを特徴とする請求項に記載の関節部補装具。
【請求項5】
前記第1部分は、前記第1補装具部分に固定される第1固定部を有し、
前記第2部分は、前記第2補装具部分に固定される第2固定部を有し、
前記第1回動端部及び前記第2回動端部は、前記第1固定部及び前記第2固定部双方の裏面を含む平面からその表面の方向に離して配置され、
前記第1回動端部及び前記第2回動端部の回動軸が、前記裏面を含む平面に対して所定方向に所定角度だけ傾いていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の関節部補装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節部の両側に取り付けられる第1、第2補装具部分の間に介在して該第1、第2補装具部分相互間の回動を許容する関節部補装具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、関節部の両側に取り付けられる第1、第2補装具部分の間に介在して該第1、第2補装具部分相互間における所定角度範囲内での回動を許容する関節部補装具が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の装具では、人体の側腹部から股関節部までの長さの第1支柱と、股関節部から大腿外側までの長さの第2支柱が、ピンにより相互間の屈曲角度が変更し得るように結合される。一方の支柱には、外周にツメを有する円板状の角度調整用プレートがピンを中心として固定され、他方の支柱にある固定手段を解除すると、ツメが他方の支柱に当接するまでの範囲内で両支柱のなす角度が屈曲制限角度内において可変自在となる。
【0004】
この屈曲制限角度は、角度調整用プレートにピンの位置を中心とする円周上に固定用ビスを挿通するための穴を一定角度毎に複数個設け、固定用ビスを挿通するための穴を選択することによりツメの位置を任意に選択できる構造となっている。これにより、装具は、屈曲制限角度を患者に応じて適宜調整して使用される。
【0005】
一方、特許文献2の装具では、上部に位置する人体保護部材と下部に位置する人体保護部材とを継手を介して連結している。この装具では、双方の人体保護部材間の回動が許容される角度範囲を調節するために、継手部分に角度調節用のカムを設け、7種類のカムを入れ替えることによって、人体保護部材間の回動可能な角度範囲を5度~10度の単位で調節できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-189448号公報
【文献】特許第2940540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の装具によれば、許容される回動の角度範囲を設定するために、角度調整用プレートに設けられた固定用ビスを挿通するための穴を選択することによりツメの位置を選択できるようにしている。このため、場合によっては、固定用ビスを挿通する部分の強度が必ずしも十分でないことも予想される。
【0008】
一方、上記特許文献2の装具によれば、許容される回動の角度範囲を設定するために、継手部分に角度調節用のカムを設けるようにしている。このため、同様に強度が必ずしも十分でないことが予想されることに加え、装具の構造が複雑なものとなる。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、構造が簡単でかつ強度に優れた関節部補装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の関節部補装具は、
関節部の両側にそれぞれ取り付けられる第1補装具部分と第2補装具部分との間に介在して該第1、第2補装具部分相互間の所定の角度範囲での回動を許容する関節部補装具であって、
第1回動端部を有し、前記第1補装具部分に固定される第1部分と、
前記第1回動端部に対して回動軸線の周りで所定の回動角度範囲θで回動可能に取り付けられる第2回動端部を有し、前記第2補装具部分に固定される第2部分とを備え、
前記第1、第2回動端部の間には、これら相互間の回動に伴って、その回動範囲の一方側及び他方側において交互に開閉する一方側開閉空間及び他方側開閉空間が形成され、
前記第1回動端部又は前記第2回動端部には、前記一方側開閉空間又は前記他方側開閉空間内に位置して前記回動角度範囲θを制限する制限部材が着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1部材に対して第2部材を一方及び他方に交互に回動させると、回動範囲の一方側及び他方側において、一方側開閉空間及び他方側開閉空間が交互に開閉する。
【0012】
このとき、制限部材が取り付けられていない場合には、この交互の回動に際して、第2部材は回動角度範囲θの範囲内で、交互に回動する。
【0013】
一方、制限部材が取り付けられた場合には、第1部材に対して第2部材を一方及び他方に交互に回動させると、この回動に際して、第2部材は、制限部材により制限された回動角度範囲θの範囲より小さい範囲内で、交互に回動する。
【0014】
したがって、制限部材の取付けの有無及び制限部材を取り付けた場合の制限部材の回動方向の寸法に応じて、第1部材に対する第2部材の回動角度範囲を選択することができる。
【0015】
このように、交互に開閉する一方側開閉空間又は他方側開閉空間内に制限部材を配置することにより回動角度範囲θを制限するようにしたので、構造が簡単でかつ強度に優れた関節部補装具を提供することができる。
【0016】
本発明において、前記第1回動端部は、
前記回動軸線を中心軸線として、その周りに第1角度範囲θ1にわたって延在する内面部分円筒面と、
前記内面部分円筒面の周方向両端縁から径方向外方に延びた2つの第1当接面とを備え、
前記第2回動端部は、
前記回動軸線を中心軸線として、その周りに前記第1角度範囲θ1に前記回動角度範囲θを加えた第2角度範囲θ2にわたって延在し、前記内面部分円筒面と摺動しながら、該内面部分円筒面に対して該回動軸線の周りで該回動角度範囲θにわたって回動し得るように設けられた外面部分円筒面と、
前記外面部分円筒面の周方向両端縁から径方向外方に延在し、前記2つの第1当接面にそれぞれ当接して前記内面部分円筒面及び該外面部分円筒面相互間の回動範囲を前記回動角度範囲θに限定する2つの第2当接面とを備え
【0017】
これによれば、第1部材に対して第2部材を一方及び他方に交互に回動させると、制限部材が取り付けられていない場合には、回動範囲の一方側及び他方側において、各第1当接面と対応する第2手応接面とが交互に当接する。これにより、回動範囲の一方側及び他方側において、前記一方側開閉空間及び前記他方側開閉空間が交互に開閉する。
【0018】
一方、制限部材が取り付けられた場合には、回動範囲の一方側及び他方側において、一方の第1当接面と対応する第2当接面とが当接し、他方の第1当接面と制限部材とが当接する。これにより、回動範囲の一方側及び他方側において、前記一方側開閉空間及び前記他方側開閉空間よりも小さい開閉空間が交互に開閉する。
【0019】
したがって、この場合も、交互に開閉する一方側開閉空間又は他方側開閉空間内に制限部材が位置し、2つの第1当接面及び2つの第2当接面を介して回動角度範囲θが制限されるので、構造か簡単でかつ強度に優れた関節部補装具をより確実に提供することができる。
【0020】
また、本発明において、前記一方側開閉空間及び前記他方側開閉空間は、前記2つの第1当接面及び前記2つの第2当接面のそれぞれの間に形成され、
前記制限部材は、前記第2回動端部に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態において前記第2回動端部の一方の前記第2当接面に当接して固定される第3当接面と、
該制限部材が位置する方の前記一方側開閉空間又は前記他方側開閉空間を形成する方の前記第1当接面と当接する第4当接面と、
前記第2回動端部の前記外面部分円筒面に当接して固定される内面部分円筒面とを備える。
そして、前記2つの第1当接面、前記2つの第2当接面、前記第3当接面、及び前記第4当接面は、いずれも面全体が、前記回動軸線を含む平面上に存在し、
前記制限部材として、その前記第3当接面と前記第4当接面とが成す角度αにより制限される回動角度範囲(θ-α)が異なる複数種類のものが用意される
【0021】
これによれば、制限部材も十分な強度を有するものとして形成できるので、より確実に構造か簡単で強度に優れた関節部補装具を提供することができる。
【0022】
本発明において、前記第1回動端部は、前記回動軸線を中心軸線とする円筒状の大径部と、該大径部の一方の端面上に設けられ、該大径部よりも径が小さく、該回動軸線を中心軸線とする円筒状の小径部とを備え、
前記第2回動端部は、前記大径部、前記端面及び前記小径部に対して回動自在に嵌合する大径内縁筒面及びこれより径が小径内円筒面、及び該大径内縁筒面と該小径内円筒面を段状に接続する円環面を備え、
前記第1、第2回動端部には、該第1、第2回動端部を前記回動軸線の周りで相互に回動自在に連結する連結手段が設けられてもよい。
【0023】
これによれば、主要な部品として、第1部分、第2部分、連結手段を用いるだけで、より確実に構造が簡単で強度に優れた関節部補装具を提供することができる。
【0024】
この場合、前記連結手段は、
前記小径部から前記大径部にかけて設けられた雌ねじ部と、
前記雌ねじ部に螺合するボルトと、
前記ボルトの頭部の座面と、前記小径部の端面及びこれと同一平面をなす第2回動端部の面との間に配置されたワッシャー状の環状部材とを備えてもよい。
【0025】
これによれば、連結手段を簡単に構成することができる。
【0026】
この場合、
前記制限部材に設けられ、前記回動軸線に平行に配置された雌ねじ部と、
両端部に取付け用の穴が設けられたプレートと、
前記雌ねじ部に螺合することにより、前記プレートの一方の穴の部分を前記制限部材に対して固定する固定用ボルトとを備え、
前記プレートの他方の穴の部分が、前記連結手段の前記雌ねじ部及びボルトを利用して該連結手段に固定されてもよい。
【0027】
これによれば、制限部材の第1回動端部又は第2回動端部に対する固定強度をプレートにより向上させることができる。
【0028】
また、前記第1部分は、前記第1補装具部分に固定される第1固定部を有し、
前記第2部分は、前記第2補装具部分に固定される第2固定部を有し、
前記第1回動端部及び前記第2回動端部は、前記第1固定部及び前記第2固定部双方の裏面を含む平面からその表面の方向に離して配置され、
前記第1回動端部及び前記第2回動端部の回動軸が、前記裏面を含む平面に対して所定方向に所定角度だけ傾いていてもよい。
【0029】
これによれば、所定方向及び所定角度を適切に設定しておくことにより、第1補装具部分及び第2補装具部分を身体の関節部分の両側に密着させて、関節部補装具を身体に取り付けた場合に、関節部分の屈曲をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る関節部補装具の主要部を示す斜視図である。
図2図1の関節部補装具の第1部分の斜視図である。
図3図1の関節部補装具の第2部分の斜視図である。
図4図1の関節部補装具の制限部材の斜視図である。
図5図1の関節部補装具の主要部の断面図である。
図6図1の関節部補装具の主要部の別の断面図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る関節部補装具を適用した短下肢装具を装着したときの様子を示す斜視図である。
図8図7の短下肢装具を装着した様子を反対側から見た様子を示す斜視図である。
図9図7の装着された短下肢装具における関節部補装具について踵側から見た状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る関節部補装具の主要部を示す。同図に示すように、この関節部補装具1は、人体の足首等の関節部の両側にそれぞれ取り付けられる第1補装具部分2と第2補装具部分3との間に介在して第1、第2補装具部分2、3相互間の所定の角度範囲での回動を許容するものである。
【0032】
関節部補装具1は、第1補装具部分2に固定される第1部分4と、第2補装具部分3に固定される第2部分5とを備える。第1部分4は、第1補装具部分2に固定される第1固定部6と、その先端に設けられた第1回動端部7を有する。第2部分5は、第2補装具部分3に固定される第2固定部8と、その先端部に設けられ、第1回動端部7に対して回動軸線Aの周りで後述する回動角度範囲θで回動可能に取り付けられる第2回動端部9を有する。
【0033】
第1、第2回動端部7、9の間には、これら相互間の回動に伴って、その回動範囲の一方側及び他方側において交互に開閉する一方側開閉空間10及び他方側開閉空間11が形成される。第2回動端部9には、他方側開閉空間11内に位置して回動角度範囲θを制限する後述図4の制限部材12が着脱自在に取り付けられる。
【0034】
図2は、第1部分4を示す。同図に示すように、第1部分4は、回動軸線Aを中心軸線として、その周りに第1角度範囲θ1にわたって延在する内面部分円筒面13と、内面部分円筒面13の周方向両端縁から径方向外方に延びた2つの第1当接面14とを備える。
【0035】
図2で表示されている面の裏側の面は、第1補装具部分2に固定される実質的に平面状の固定面15となっている。第1回動端部7における固定面15から、これに平行な最上面16までの高さをHとする(図6参照)。
【0036】
図3は、第2部分5を示す。同図に示すように、第2部分5は、回動軸線Aを中心軸線として、その周りに第1角度範囲θ1に上述の回動角度範囲θを加えた第2角度範囲θ2にわたって延在する外面部分円筒面17を備える。外面部分円筒面17は、第1回動端部7の内面部分円筒面13と摺動しながら、内面部分円筒面13に対して回動軸線Aの周りで回動角度範囲θにわたって回動し得るように設けられる。
【0037】
第2部分5は、第2補装具部分3に固定される実質的に平面状の固定面18と、これに平行な第2回動端部9における反対側の最上面19とを有する(図5参照)。固定面18から最上面19までの高さは、第1回動端部7における固定面15から最上面16までの高さと同じHである(図6参照)。
【0038】
また、第2回動端部9は、外面部分円筒面17の周方向両端縁から径方向外方に延在する2つの第2当接面20を備える。この2つの第2当接面20は、第1回動端部7の2つの第1当接面14にそれぞれ当接して内面部分円筒面13及び外面部分円筒面17相互間の回動範囲を回動角度範囲θに限定する。
【0039】
一方側開閉空間10及び他方側開閉空間11は、2つの第1当接面14及びこれらに当接する2つの第2当接面20のそれぞれの間に形成される。制限部材12は、第2回動端部9に、着脱可能に取り付けられる。
【0040】
図4は、制限部材12を示す。同図に示すように、制限部材12は、第2回動端部9に取り付けられた状態において第2回動端部9の一方の第2当接面20に当接して固定される第3当接面21と、制限部材12が位置する他方側開閉空間11を形成する方の第1当接面14と当接する第4当接面22とを備える。また、制限部材12は、第2回動端部9の外面部分円筒面17に当接して固定される内面部分円筒面23を備える。
【0041】
制限部材12は、回動角度範囲θを、回動軸線Aを中心とする第3当接面21から第4当接面22までの角度範囲αだけ制限する。制限部材12が取り付けられた状態では、この制限された角度範囲(θ-α)内で、第1部分4及び第2部分5相互間の回動が可能となる。
【0042】
制限部材12は、第2部分5に取り付けられた場合に、最上面16、19と同一平面上に位置する第1面24と、固定面15、18と同一平面上に位置する第2面25とを有する。また、制限部材12は、第2部分5に取り付けられた場合に第1回動端部7の後述する大径部26に当接して摺動する内面部分円筒面27を備える。制限部材12の内面部分円筒面23と内面部分円筒面27とは、第1面24と平行な接続面28により段差を形成するようにして接続される。
【0043】
図5は、制限部材12を第2回動端部9に取り付ける取付け手段29の断面を示す。同図に示すように、この取付け手段29は、第2回動端部9にインサート成形により固定された雌ねじ部30と、雌ねじ部30に螺合して制限部材12を第2回動端部9に締結するための六角レンチボルト31とで構成される。制限部材12には、六角レンチボルト31のボルト軸を通すためのボルト孔32が設けられる。制限部材12の接続面28はボルト孔32が設けられている部分まで延びている。ボルト孔32は、接続面28から第2面25まで貫通している。
【0044】
第2回動端部9の雌ねじ部30が開口している平面は、第2回動端部9の外面部分円筒面17に隣接して固定面18に平行な面と同一平面上に存在し、これらの面は制限部材12の接続面28が当接して固定される制限部材固定面33を構成する。
【0045】
制限部材12は第3当接面21から周方向に突出した段差凸部34を有する。第2回動端部9は、段差凸部34に嵌合する段差凹部35を第2当接面20に有する。
【0046】
図2に示すように、第1回動端部7は、回動軸線Aを中心軸線とする円筒状の大径部26と、大径部26の一方の端面36上に設けられ、大径部26よりも径が小さく、回動軸線Aを中心軸線とする円筒状の小径部37とを備える。大径部26の他方の端面は、固定面15と同一面上に位置する。大径部26は、第1回動端部7の高さHのうちの固定面15側の部分により、第1回動端部7の他の部分と接続している。
【0047】
第2回動端部9は、大径部26、端面36及び小径部37に対して回動自在に嵌合する大径内円筒面38、これより径が小径内円筒面39、及び大径内円筒面38と小径内円筒面39を段状に接続する円環面40を備える。第1、第2回動端部7、9には、第1、第2回動端部7、9を回動軸線Aの周りで相互に回動自在に連結する連結手段41が設けられる。
【0048】
図6は、連結手段41の断面を示す。同図に示すように、連結手段41は、第1回動端部7の小径部37から大径部26にかけてインサート成形により固定された雌ねじ部42と、雌ねじ部42に螺合する六角レンチボルト43とを備える。
【0049】
六角レンチボルト43の頭部の座面と、小径部37の端面及びこれと同一平面をなす第2回動端部9の面との間に、ワッシャー状の環状部材44が固定される。この固定は、六角レンチボルト43を雌ねじ部42に締結させることにより行われるが、第1、第2回動端部7、9間の回動を許容する程度に緩やかに行われる。
【0050】
この構成において、第1部分4の第1回動端部7に第2部分5の第2回動端部9を嵌合させて、これらを連結手段41により連結することによって、第1部分4と第2部分5とが相互に回動角度範囲θ(=θ2-θ1)で回動自在となるように連結される。
【0051】
したがって、第1部分4の第1固定部6を第1補装具部分2に固定し、第2部分5の第2固定部8を第2補装具部分3に固定することにより、第1補装具部分2と第2補装具部分3とを相互に回動角度範囲θで回動し得るように連結することができる。
【0052】
回動角度範囲θを制限したい場合には、制限部材12が取付け手段29により第2部分5の第2回動端部9に取り付けられる。これにより、回動角度範囲θは、角度範囲αだけ減少され、制限される。これにより、第1補装具部分2と第2補装具部分3とを相互に回動角度範囲(θ-α)で回動し得るように連結することができる。
【0053】
したがって、制限部材12として、回動角度範囲(θ-α)が、例えば0°、5°、10°、20°となるような複数種類のものを用意しておくことにより、回動角度範囲(θ-α)を適宜設定・変更することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、他方側開閉空間11内に制限部材12を配置することにより回動角度範囲θを制限するようにしたので、構造が簡単でかつ強度に優れた関節部補装具1を提供することができる。
【0055】
また、主要な部品として、第1部分4、第2部分5、制限部材12、連結手段41、取付け手段29を用いるだけで、より確実に構造が簡単で強度に優れた関節部補装具1を提供することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、制限部材12の取付けは、第1回動端部7に対して行ってもよい。また、制限部材12は、一方側開閉空間10内に位置させてもよい。
【0057】
また、図4のように、制限部材12にインサート成形で回動軸線Aに平行に配置された雌ねじ部45を設けておき、制限部材12を取り付ける際に、図1のように、両端部に取付け用の穴が設けられたプレート46(2点鎖線で表示)の一方の穴の部分を雌ねじ部45とこれに螺合する固定用ボルトで固定し、他方の穴の部分を、連結手段41の雌ねじ部42及び六角レンチボルト43を利用して連結手段41に固定するようにしてもよい。これにより、制限部材12の第2回動端部9に対する固定強度を向上させることができる。
【0058】
図7は別の実施形態に係る関節部補装具1bを適用した短下肢装具を装着したときの様子を示す。図8は、この様子を反対側から見たときの様子を示す。図7及び図8に示すように、この短下肢装具47は、脹脛(ふくらはぎ)の下部の後ろ側に密着する第1補装具部分としての上側部材48と、足の裏から踝(くるぶし)の後ろ側にかけて足に密着する第2補装具部分としての下側部材49と、上側部材48と下側部材49との間に介在する関節部補装具1bとを備える。
【0059】
上側部材48は、脹脛(ふくらはぎ)の下部の前側に回される第1バンド50により、脹脛(ふくらはぎ)の下部の後ろ側に取り付けられる。下側部材49は、つま先が挿入される第2バンド51と、踝(くるぶし)の後ろ側の部分を足の甲の側に回して足に固定する第3バンド52とで足に装着される。第1バンド50及び第3バンド52は、マジックテープ(登録商標)などにより着脱自在に構成される。
【0060】
図9は、装着された短下肢装具47における関節部補装具1bについて踵側から見た状態を示す。図9に示すように、関節部補装具1bは、図1の関節部補装具1と同様の構成を有するが、第1回動端部7b及び第2回動端部9bは、第1固定部6b及び第2固定部8bのプレート46と反対側の面(裏面)を含む平面からプレート46側(表面側)に(図9では、足53から離れた方向に)離して配置される。すなわち、第1回動端部7b及び第2回動端部9bは、第1固定部6b及び第2固定部8bとの間で陸橋を形成するような形態を有する。
【0061】
そして、その陸橋の形態は、第1回動端部7b及び第2回動端部9bの回動軸Aが、上記の反対側の面を含む平面に対して所定角度及び所定方向に(例えば30°程度、制限部材12側(すなわちつま先側)に)傾くように、ねじれた状態を呈している。なお、回動軸Aは、制限部材12と反対側に傾いていてもよい。
【0062】
これにより、短下肢装具47が装着された状態で、両側の第1回動端部7b及び第2回動端部9bが、図9のようにほぼ平行(双方の回動軸Aがほぼ平行)な状態となる。
【0063】
これにより、短下肢装具47が装着された状態で、足首をスムーズに曲げることができ、短下肢装具47を良好に機能させることができる。関節部補装具1bの他の点については、図1の関節部補装具1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0064】
1、1b…関節部補装具、2…第1補装具部分、3…第2補装具部分、4…第1部分、5…第2部分、6、6b…第1固定部、7、7b…第1回動端部、8、8b…第2固定部、9、9b…第2回動端部、10…一方側開閉空間、11…他方側開閉空間、12…制限部材、13…内面部分円筒面、14…第1当接面、15…固定面、16…最上面、17…外面部分円筒面、18…固定面、19…最上面、20…第2当接面、21…第3当接面、22…第4当接面、23…内面部分円筒面、24…第1面、25…第2面、26…大径部、27…内面部分円筒面、28…接続面、29…取付け手段、30…雌ねじ部、31…六角レンチボルト、32…ボルト孔、33…制限部材固定面、34…段差凸部、35…段差凹部、36…端面、37…小径部、38…大径内円筒面、39…小径内円筒面、40…円環面、41…連結手段、42…雌ねじ部、43…六角レンチボルト、44…環状部材、45…雌ねじ部、46…プレート、47…短下肢装具、48…上側部材、49…下側部材、50…第1バンド、51…第2バンド、52…第3バンド、53…足。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9