IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パロマの特許一覧

<>
  • 特許-加熱調理器 図1
  • 特許-加熱調理器 図2
  • 特許-加熱調理器 図3
  • 特許-加熱調理器 図4
  • 特許-加熱調理器 図5
  • 特許-加熱調理器 図6
  • 特許-加熱調理器 図7
  • 特許-加熱調理器 図8
  • 特許-加熱調理器 図9
  • 特許-加熱調理器 図10
  • 特許-加熱調理器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
F24C3/12 K
F24C3/12 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021165428
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2017200451の分割
【原出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2022000608
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 譲
(72)【発明者】
【氏名】小原 直人
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0136903(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0246453(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0134413(US,A1)
【文献】特開2010-080993(JP,A)
【文献】特開2016-020749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00-3/14,7/08
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナと、
前記ガスバーナの火力を設定する操作に用いられる設定操作部と、
前記ガスバーナの少なくとも一部を収容する筐体部と、
前記ガスバーナの上方側に調理器具を載置するための載置部と、
少なくとも前記ガスバーナから火炎が放出される領域の画像を、当該領域からの光を受光して生成する撮像部と、
前記撮像部によって得られた撮像画像内に前記調理器具から溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定する溢れ判定部と、
を有し、
前記撮像部は、前記筐体部に対して直接的に又は他部材を介して間接的に組み付けられ、少なくとも、前記ガスバーナから火炎が放出される領域と、前記調理器具の上端を含み且つ前記調理器具の外周面を含む領域とを、上下方向と交差する向きで撮像し、
前記溢れ判定部は、前記撮像部によって得られた撮像画像における前記調理器具の画像領域の周囲の画像状態に基づき、前記撮像部によって得られた撮像画像内における前記調理器具の画像領域の周囲において定められる溢れ検出範囲に前記調理器具から溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定する
加熱調理器。
【請求項2】
前記撮像部によって得られた撮像画像内に前記調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると前記溢れ判定部が判定した場合に、前記ガスバーナの燃焼を抑制する所定の燃焼抑制動作を行う燃焼制御部を有する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記撮像部によって得られた撮像画像内に前記調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると前記溢れ判定部が判定した場合に報知を行う報知部を有する請求項1又は請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
当該加熱調理器の近傍の照度が所定の低下状態となった場合に前記ガスバーナから火炎が放出される領域に向けて赤外線照明光を照射する赤外線照明部を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナを備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはコンロの上方に撮影・制御装置が設けられた加熱調理システムが開示されている。この加熱調理システムでは、撮影・制御装置によってコンロ上領域が撮像され、撮像されて得られた撮像画像内に発火誘引画像領域が存在する場合に、発火誘引画像領域の位置に対応する位置のバーナによる火力が減少するようにコンロが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-14342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスバーナで調理器具を加熱して食材の調理を行う場合、調理器具のサイズがどの程度であるかを正確に認識できることが望ましいが、従来は、ユーザが目視によって感覚的に調理器具のサイズを把握していたため、例えば、ユーザの想定よりも調理器具のサイズが小さいような場合にユーザの想定よりも早く内容物が溢れ出てしまうような事態が生じやすかった。
一方、特許文献1で開示される加熱調理システムは、赤外線エネルギー量に基づいて温度分布を検出する構成であるため、調理器具の周辺の形状を明瞭に認識することはできない。例えば、調理器具の温度と調理器具から溢れる調理物(例えば煮汁や泡など)の温度が同程度であると、各領域を個別に認識することができず、調理器具の外形などを正確に認識することができない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされ、調理器具又はその周囲の画像をより高精度に取得し、調理器具の内容物を適正に加熱する上で有利な処理を行い得る加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様である加熱調理器は、ガスバーナと、前記ガスバーナの火力を設定する操作に用いられる設定操作部と、前記ガスバーナの少なくとも一部を収容する筐体部と、前記ガスバーナの上方側に調理器具を載置するための載置部と、少なくとも前記ガスバーナから火炎が放出される領域の画像を、当該領域からの光を受光して生成する撮像部と、前記撮像部によって得られた撮像画像内に前記調理器具から溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定する溢れ判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
一態様の加熱調理器は、ガスバーナから火炎が放出される領域の画像を、当該領域からの光を実際に受光して生成することができるため、火炎が放出される領域の実際の状態をより具体的に且つより鮮明に反映した画像を取得することができる。そして、溢れ判定部は、このように具体的且つ鮮明に反映された撮像画像に基づき、当該撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定するため、内容物の溢れが生じているか否かをより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の加熱調理器を概略的に示す斜視図である。
図2】実施例1においてガスバーナへのガス供給路等を概念的に示す説明図である。
図3】実施例1の加熱調理器の電気的構成を例示するブロック図である。
図4図4の実施例1の加熱調理器で行われるガスバーナの制御を例示するフローチャートである。
図5図4で示すガスバーナの制御での火力制御を例示するフローチャートである。
図6図1の加熱調理器を正面から見た構造、撮像範囲等を説明する説明図である。
図7図1の加熱調理器を上方から見た構造等を説明する説明図である。
図8図8(A)は、調理容器が存在しない場合の監視範囲の撮像画像を概念的に示す説明図であり、図8(B)は、調理容器が存在する場合の監視範囲の撮像画像(第2基準画像)を概念的に示す説明図である。
図9図9(A)は、第2基準画像に基づく所定範囲(溢れ検出範囲)を概念的に示す説明図であり、図9(B)は、所定範囲(溢れ検出範囲)に溢れが生じている場合の撮像画像を概念的に示す説明図である。
図10図10は、他の実施例の加熱調理器を概略的に例示する正面図である。
図11図11は、図10の構成のときの撮像範囲及び監視範囲等を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい形態を以下に例示する。
【0010】
一態様の加熱調理器は、撮像部によって得られた撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると溢れ判定部が判定した場合に、ガスバーナの燃焼を抑制する所定の燃焼抑制動作を行う燃焼制御部を有していてもよい。この加熱調理器は、具体的且つ鮮明に反映された撮像画像に基づいて内容物の溢れが生じているか否かをより正確に判定し、溢れが生じている場合には、ガスバーナの燃焼を抑制して溢れを抑えることができる。
【0011】
上記一態様の加熱調理器において、溢れ判定部は、撮像部によって得られた撮像画像における調理器具の画像領域の周囲の画像状態に基づき、撮像部によって得られた撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定する構成であってもよい。この加熱調理器は、具体的且つ鮮明に反映された撮像画像において溢れが懸念される領域(調理器具の画像領域の周囲)の画像状態を把握することができ、この領域の画像状態に基づいて、溢れが生じているか否かをより一層正確に判定することができる。
【0012】
上記一態様の加熱調理器は、撮像部によって得られた撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると溢れ判定部が判定した場合に報知を行う報知部を有していてもよい。この加熱調理器は、内容物の溢れが生じているか否かについてより正確な判定を行った上で、溢れが生じていると判定した場合に、その旨を外部に知らせることができる。
【0013】
上記一態様の加熱調理器において、少なくともいずれかの撮像部は、筐体部に対して直接的に又は他部材を介して間接的に組み付けられていてもよく、少なくともガスバーナから火炎が放出される領域を、上下方向と交差する向きで撮像する構成であってもよい。この加熱調理器は、撮像部を筐体部と一体的に構成することができるため、構成のコンパクト化を図ることができ、複雑な構成や大掛かりな構成を用いずとも撮像部と筐体内の装置とを電気的に連携させやすくなる。
【0014】
上記一態様の加熱調理器において、少なくともいずれかの撮像部は、載置部の上方側に配置されていてもよく、少なくともガスバーナから火炎が放出される領域を上方側から撮像する構成であってもよい。この加熱調理器は、上方から見たときの調理器具及びその周辺の構成をより正確に認識することができる。
【0015】
上記一態様のいずれの加熱調理器において、当該加熱調理器の近傍の照度が所定の低下状態となった場合にガスバーナから火炎が放出される領域に向けて赤外線照明光を照射する赤外線照明部が設けられていてもよい。この加熱調理器は、加熱調理器の近傍の照度が低下した場合に赤外線照明光を照射し、ガスバーナから火炎が放出される領域近傍の画像の不鮮明化を抑制又は防止することができる。
【0016】
<実施例1>
(基本構成)
以下、実施例1について、図面を参照して説明する。
まず、図1図4等を参照し、加熱調理器1の基本構成を説明する。
図1に示す加熱調理器1は、ビルトインコンロとして構成され、上端部が開放した箱状の筐体部2と、筐体部2の上端部に固定される天板5(トッププレート)とを備え、天板5から露出するように、右こんろ部4A、左こんろ部4B、小こんろ部4Cが設けられている。筐体部2は、右こんろ部4A、左こんろ部4B、小こんろ部4C、グリル庫3などを収容する構成をなし、前面側に前面パネル7A(図2も参照),7Bなどが配置されてなる。右こんろ部4A、左こんろ部4B、小こんろ部4C、グリル庫3のそれぞれには、図3で示すガスバーナ51,52,53,54が設けられ、これらガスバーナ51,52,53,54の各々は、一部又は全部が筐体部2内に収容された形態でそれぞれ設けられている。天板5上において、各ガスバーナ51,52,53の周囲には、五徳9A、9B、9Cがそれぞれ設けられている。五徳9A、9B、9Cは、載置部の一例に相当し、ガスバーナ51,52,53の上方側に調理器具を載置するために用いられる。五徳9A、9B、9Cのいずれも、調理器具を支持するための複数の支持部が間隔をあけて環状に配置されるとともに複数の支持部の各上端部が近接するガスバーナよりも上方側に配置された構成をなし、複数の支持部上に調理器具が載置されたときにガスバーナの上方側に調理器具が配置されるように支持する構成をなす。なお、本明細書では、天板5の厚さ方向を上下方向とし、天板5を平面視したときの長手方向を左右方向(横方向)とし短手方向を前後方向とする。上下方向と左右方向は直交する関係にあり、前後方向は上下方向及び左右方向と直交する関係にある。
【0017】
筐体部2内には、図2のように、ガス配管として、共通のガス流路である共通供給路60と、共通供給路60から分岐したガス流路である複数の分岐供給路61,62,63,64とが設けられ、共通供給路60を通って流れたガスが、各分岐供給路61,62,63,64を通って各ガスバーナ51,52,53,54に導かれるようになっている。共通供給路60には、共通供給路60を開閉する元電磁弁N1が設けられている。分岐供給路61には、分岐供給路61を開閉可能な電磁弁(安全弁)51G及び閉止弁51Fと、ガスバーナ51へのガス供給量を調整可能な火力調整弁51Eとが設けられている。分岐供給路62には、分岐供給路62を開閉可能な電磁弁(安全弁)52G及び閉止弁52Fと、ガスバーナ52へのガス供給量を調整可能な火力調整弁52Eとが設けられている。分岐供給路63には、分岐供給路63を開閉可能な電磁弁(安全弁)53G及び閉止弁53Fと、ガスバーナ53へのガス供給量を調整可能な火力調整弁53Eとが設けられている。ガスバーナ54は、グリル庫3内において上側の所定位置に配置される上グリルバーナ54Aと、グリル庫3内において上グリルバーナ54Aよりも下側に配置される下グリルバーナ54Bとを備える。共通供給路60から分岐したガス流路である分岐供給路64には、分岐供給路64から分岐して上グリルバーナ54Aにガスを導くガス流路である第1供給路65Aと、分岐供給路64から分岐して下グリルバーナ54Bにガスを導くガス流路である第2供給路65Bとが接続されている。分岐供給路64には、分岐供給路64を開閉可能な電磁弁(安全弁)54G及び閉止弁54Fが設けられ、第1供給路65Aには第1供給路65Aを開閉可能な複数の電磁弁54H,54Jが設けられ、第2供給路65Bには第2供給路65Bを開閉可能な電磁弁54Kが設けられている。第1供給路65Aには、電磁弁54Jと並列にバイパス路66Aが設けられ、第2供給路65Bには、電磁弁54Kと並列にバイパス路66Bが設けられている。
【0018】
図1に示すように、加熱調理器1の前面部付近には、右こんろ部4A、左こんろ部4B、小こんろ部4C、グリル庫3にそれぞれ対応するように4つの回転操作部6A,6B,6C,6Dがそれぞれ設けられている。第1の回転操作部6A、第4の回転操作部6Dは、筐体部2の前面部の一部を構成する右側の前面パネル7Aから露出するように設けられ、第2の回転操作部6B、第3の回転操作部6Cは、筐体部2の前面部の一部を構成する左側の前面パネル7Bから露出するように設けられている。第1の回転操作部6Aは、右こんろ部4Aを構成するガスバーナ51の点火、消火、火力調整を行うものであり、第2の回転操作部6Bは、左こんろ部4Bを構成するガスバーナ52の点火、消火、火力調整を行うものであり、第3の回転操作部6Cは、小こんろ部4Cを構成するガスバーナ53の点火、消火、火力調整を行うものである。第4の回転操作部6Dは、ガスバーナ54(グリルバーナ)の点火、消火、火力調整を行うものである。図1の例では、回転操作部6A,6B,6C,6Dのいずれも、使用者が押す毎に退避位置と突出位置とに切り替わるようになっている。
【0019】
次に、図3等を参照して加熱調理器1の電気的構成について説明する。
図3において制御回路10は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU10A、ROM10B、RAM10Cなどを備え、更に、図示しないタイマ、I/Oインタフェイスなどを備える。なお、図示はしていないが、制御回路10の内部又は外部に不揮発性メモリを設けてもよい。電源回路57は電池ボックスに収容された2つの乾電池56からの電力供給を受け、所定の電源電圧を生成する機能を有し、電源回路57で生成された電源電圧は、図示しない経路を介して様々な電気部品に供給される。
【0020】
スイッチ30A,30B,30C,30Dは、図1で示す回転操作部6A,6B,6C,6Dにそれぞれ対応するように設けられ、図3のように、スイッチ30A,30B,30C,30Dにそれぞれ対応するように点火信号入力回路40A,40B,40C,40Dがそれぞれ設けられている。スイッチ30A,30B,30C,30Dは、いずれも点火スイッチとして機能し、回転操作部6A,6B,6C,6Dのいずれにおいても、回転操作部が退避位置(消火位置)のときには対応するスイッチがオフ状態となり、このスイッチに対応する点火信号入力回路から制御回路10にオフ信号が与えられる。また、回転操作部が突出位置(点火位置)のときには対応するスイッチがオン状態となり、このスイッチに対応する点火信号入力回路から制御回路10にオン信号が与えられる。例えば、図1で示す実線位置のように、回転操作部6Aが退避位置にあるときには、図3で示すスイッチ30Aがオフ状態となり、このとき点火信号入力回路40Aは制御回路10に対してオフ状態を示す信号(オフ信号)を入力する。また、図1の二点鎖線6A’のように回転操作部6Aが突出位置にあるときには、図3で示すスイッチ30Aがオン状態となり、このとき点火信号入力回路40Aは、制御回路10にオン状態を示す信号(オン信号)を入力する。
【0021】
変位検出部32A,32B,32C,32Dは、図1で示す回転操作部6A,6B,6C,6Dにそれぞれ対応するように設けられ、図3のように、変位検出部32A,32B,32C,32Dにそれぞれ対応するように火力信号入力回路42A,42B,42C,42Dがそれぞれ設けられている。回転操作部6A,6B,6C,6Dのいずれにおいても、回転操作部の変位(回転位置)を対応する変位検出部(エンコーダ等の回転角度センサなど)が検出し、この変位検出部に対応する火力信号入力回路から変位検出部が検出した変位(回転位置)に応じた信号が制御回路10に与えられる。例えば、回転操作部6Aに対応して設けられた変位検出部32Aは、回転操作部6Aの変位(回転位置)を検出し得るようになっており、この変位検出部32Aに対応する火力信号入力回路42Aから制御回路10に対し、変位検出部32Aが検出した変位(即ち、回転操作部6Aの回転位置)に応じた信号が与えられる。なお、回転操作部6A,6B,6Cは、設定操作部の一例に相当し、上述したように、ガスバーナ51,52,53の火力を設定する操作に用いられる。
【0022】
図2のように、各ガスバーナ51,52,53,54A,54Bのそれぞれに隣接して熱電対51C,52C,53C,54C、54Dがそれぞれ設けられ、図3のように、熱電対51C,52C,53C,54C、54Dのそれぞれに対応して温度信号入力回路44A,44B,44C,44D,44Eがそれぞれ設けられている。更に、図3のようにイグナイタ回路46が及びイグナイタ28が設けられ、イグナイタ28には、各ガスバーナ51,52,53,54のそれぞれに隣接して図示しないイグナイタ端子が設けられている。
【0023】
図3で示す駆動回路48Aは、制御回路10からの制御量が指示されることに応じて、火力調整弁51Eを制御量に応じた開度に駆動する構成をなす。駆動回路48Bは、制御回路10からの制御量が指示されることに応じて、火力調整弁52Eを制御量に応じた開度に駆動する構成をなす。駆動回路48Cは、制御回路10からの制御量が指示されることに応じて、火力調整弁53Eを制御量に応じた開度に駆動する構成をなす。駆動回路49Aは、電磁弁51F,51Gを制御回路10からの指示に応じた状態に切り替える回路であり、駆動回路49Bは、電磁弁52F,52Gを制御回路10からの指示に応じた状態に切り替える回路であり、駆動回路49Cは、電磁弁53F,53Gを制御回路10からの指示に応じた状態に切り替える回路であり、駆動回路49Dは、電磁弁54F,54G,54H,54J,54Kを制御回路10からの指示に応じた状態に切り替える回路である。駆動回路50は、元電磁弁N1を制御回路10からの指示に応じた状態に切り替える回路である。なお、図示はしていないが、例えば圧電ブザー装置などの公知構成をなすブザー装置や、メロディ、メッセージなどの音声を発する公知構成の音声装置(スピーカ等)や、LEDや液晶表示器などの公知構成の表示装置なども、制御回路10によって制御される構成をなす。
【0024】
図3のように、加熱調理器1は、更に、撮像部90を備える。撮像部90は、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラなど、撮像範囲からの可視光又は赤外線を受光して撮像範囲の画像を生成し得る公知構成の撮像装置によって構成されており、予め定められた所定位置(図1の例では天板5上の位置)に固定された構成をなす。図1図6図7の例では、撮像部90は、筐体部2に対して天板5を介して間接的に組み付けられ、少なくともガスバーナ51,52,53から火炎が放出される領域の画像を、当該領域からの光を受光して生成する。この撮像部90は、上下方向と交差する向き(具体的には、上下方向と直交する方向である水平方向に沿った向き)で撮像するように構成されている。図6の例では、例えば五徳9A、9B、9Cのいずれにも調理器具が載置されていない状態で、ガスバーナ51,52,53の全ての上端部が撮像され、五徳9A、9B、9Cの全ての上端部が撮像され得るように撮像範囲が設定されている。撮像部90は、例えば五徳9A、9B、9Cのいずれにも調理器具が載置されていない状態でガスバーナ51,52,53のそれぞれを最大火力にしたときにガスバーナ51,52,53の各炎の全てが撮像され得るような撮像範囲であってもよく、ガスバーナ51,52,53の各炎の一部が撮像され得るような撮像範囲であってもよい。
【0025】
(ガスバーナの制御)
次に、ガスバーナの制御について説明する。なお、以下の説明では、ガスバーナ51の制御を代表例として説明する。
図3で示す制御回路10は、所定の開始条件の成立時に図4の制御を開始する。所定の開始条件の成立時は、例えば、所定の電源スイッチのオン動作によって加熱調理器1の電源がオン状態に切り替わった時(電源回路57から各部品に電力が供給され得る状態となった時)などである。制御回路10は、図4の制御を開始した場合、開始直後に撮像部90によって撮像される画像を「初期の基準画像」として取得し、この「初期の基準画像」をメモリに記憶する(S1)。初期の基準画像(基準撮像画像)は、五徳9A,9B,9Cのいずれにも調理器具が載置されていないときに撮像部90によって撮像された場合にのみステップS1にて画像を新規に記憶することができ、五徳9A,9B,9Cに調理器具が載置されていない画像を初期の基準画像(基準撮像画像)として用いることができる。なお、五徳9A,9B,9Cのいずれかに調理器具が載置されているときには、ステップS1の処理を省略すればよい。五徳9A,9B,9Cのいずれかに調理器具が載置されているか否かは、公知の様々な方法で判定することができる。本構成では、例えば、図6で概念的に示す撮像範囲AR1の画像が撮像部90によって撮像されるようになっており、五徳9A,9B,9Cのいずれにも調理器具が載置されていないときの撮像範囲AR1の画像が初期の基準画像(基準撮像画像)となる。また、本構成では、例えば製品設置時などにおいて、五徳9A,9B,9Cのいずれにも調理容器が載置されていないときの撮像範囲AR1の画像を撮像部90によって生成し、この画像をデフォルトとなる初期の基準画像(基準撮像画像)としておくことができる。そして、ステップS1において五徳9A,9B,9Cに調理器具が載置されていない状態の撮像範囲AR1の画像が撮像部90によって得られた場合には、この画像を新たな初期の基準画像(基準撮像画像)として更新することができる。
【0026】
制御回路10は、ステップS1の後、ステップS2の処理を行う。ステップS2の処理は、ステップS2の時点で撮像部90によって撮像された画像(現在画像)を取得し、この現在画像と基準撮像画像(ステップS1で更新された場合にはステップS1で得られた画像であり、更新されていない場合にはステップS1の前から予め記憶されている画像)とを比較する処理である。制御回路10は、ステップS2の後、ステップS3の判定処理を行う。ステップS3の判定処理は、ステップS2で取得された現在画像において基準撮像画像から変化した領域(差分領域)があるか否かを判定する処理である。ステップS2で取得された現在画像において基準撮像画像から変化した領域(差分領域)がある場合、ステップS4において進入した異物(差分領域)の面積を計算する。制御回路10は、ステップS3において、差分領域がないと判定した場合、ステップS2以降の処理を再び行う。なお、ステップS3の判定方法としては、変化した領域(差分領域)が一定値以上の場合に「差分領域がある」と判定し、一定値未満の場合には「差分領域がない」と判定するような判定方法を採用することもできる。
【0027】
制御回路10は、ステップS4の処理において、ステップS2で得られた現在画像において基準撮像画像から変化している領域(差分領域)を特定し、その差分領域を連続している領域ごとに分け、特定された差分領域が1つの連続領域(単一領域)のみからなる場合には、その単一領域の面積を求め、特定された差分領域において連続している領域が複数存在する場合(複数の連続領域がそれぞれ分離した形で差分領域が構成される場合)には各々の連続領域(各々の個別領域)の面積を求める。
【0028】
制御回路10は、ステップS4の後にステップS5の処理を行い、ステップS4で得られた1又は複数の連続領域の面積のうち、少なくともいずれかが一定値以上の面積であるか否かを判定し、いずれかの連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の面積が一定値以上であると判定した場合、ステップS6の処理を行う。制御回路10は、ステップS5において、いずれの連続領域の面積も一定値未満であると判定した場合、ステップS2以降の処理を再び行う。
【0029】
制御回路10は、ステップS6において、一定値以上と判定された連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の位置を計算し、その後、ステップS7において、その連続領域の位置が予め定められた一定範囲(監視範囲)内であるか否かを判定する。本構成では、図6のように、撮像部90によって撮像し得る範囲AR1の中の一部の範囲AR2がガスバーナ51に関して定められた一定範囲(監視範囲)となっており、ステップS7では、ステップS6において一定値以上と判定された連続領域の少なくとも一部がこの監視範囲AR2内に存在するか否かを判定する。制御回路10は、ステップS7において、いずれかの連続領域における少なくとも一部の位置が一定範囲(監視範囲AR2)内であると判定した場合、ステップS8において、ガスバーナ51が燃焼中であるか否かを判定し、燃焼中であると判定した場合にはステップS15において火力制御を行う。ステップS15の火力制御については後述する。制御回路10は、ステップS7において、いずれの連続領域の位置も一定範囲(監視範囲)内にないと判定した場合、ステップS2以降の処理を再び行う。
【0030】
制御回路10は、ステップS8においてガスバーナ51が燃焼中でないと判定した場合には、ステップS9において調理器具を検出する処理(具体的には、調理器具形状のパターンマッチング)を行う。制御回路10は、ステップS9の処理を行う場合、ステップS7において一定範囲(監視範囲)内にあると判定された連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の外形を抽出し、ステップS10において、その抽出された連続領域の外形と、予め登録された多数のパターン画像と比較し、公知のパターンマッチングの方法により、いずれかの登録パターンに該当するか否かを判定する。加熱調理器1では、調理器具の外形の画像が登録パターン画像として予め多数登録されており、ステップS10では、ステップS7において一定範囲(監視範囲)内にあると判定された連続領域の外形が、登録されたいずれかの調理器具の外形画像(登録パターン画像)に該当するか否かを判定する。制御回路10は、ステップS10において、連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の外形が登録パターン画像に該当しないと判定した場合、ステップS14において、ガスバーナ51についての点火禁止フラグをセットする。点火禁止フラグは、セットされているときにイグナイタ28の放電動作及び電磁弁51F,51Gの開弁を禁止するフラグであり、制御回路10は、ガスバーナ51についての点火禁止フラグがセットされているときにはイグナイタ28の放電動作及び電磁弁51F,51Gの開弁を行わない。
【0031】
制御回路10は、ステップS10において連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の外形が登録パターン画像に該当すると判定した場合、ステップS11において、調理器具の位置、径を算出する処理を行い、ステップS10で「該当する」と判定した連続領域の横方向の位置、連続領域の下部(底部)の径、などを計算する。その後、制御回路10は、ステップS11において、その連続領域の横方向の位置が、予め定められた正規範囲内にあるか否かを判定し、正規範囲内にないと判定した場合には上述したステップS14の処理を行い、正規範囲内にあると判定した場合にはステップS13において火力決定制御を行い、火力調整弁51Eの開度を回転操作部6Aの回転角度に対応した開度(回転操作部6Aで指示された開度)とする。
【0032】
ここで、図6図7のような構成のものにおいて図4の制御を行う場合について説明する。図6のような構成をなす加熱調理器1では、調理器具Taが存在しないときの撮像範囲AR1の画像が基準撮像画像となる。制御回路10が図4の制御を行う場合において、ステップS2で取得された現在画像が図6のような状態のときの撮像範囲AR1の画像である場合、ステップS3では、現在画像において調理器具Taの領域が差分領域として抽出され、ステップS4では、調理器具Taの領域の面積が計算される。そして、ステップS5では、調理器具Taの領域の面積が一定値以上であるか否かが判定され、一定値以上であると判定された場合、ステップS6では、調理器具Taの領域の位置が検出され、ステップS7では、調理器具Taの領域の位置が一定範囲(監視範囲AR2)内であるか否かが判定され、一定範囲(監視範囲AR2)内であると判定された場合、ステップS8では、ガスバーナ51が燃焼中であるか否かが判定される。
【0033】
図8(A)は、基準撮像画像における監視範囲AR2の画像M1を示しており、図8(B)は、図6のような状態のときの監視範囲AR2の画像M2を示している。図8(B)で示す監視範囲AR2の画像M2では、調理器具Taの画像G1がステップS2、S3で検出される差分領域の画像であり、ステップS5において面積が一定値以上と判定され且つステップS7において一定範囲内にあると判定される連続領域の画像である。この例では、制御回路10は、ステップS8において燃焼中でないと判定した場合、ステップS9において、連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)の外形と予め登録された多数の登録パターン画像とを比較し、ステップS10では、公知のパターンマッチング方式により連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)がいずれかの登録パターン画像に該当するか否かを判定する。制御回路10は、ステップS10において、連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)がいずれかの登録パターン画像に該当すると判定した場合、その連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)の底部の幅(底部の径)Xa、高さYa、横方向の中心位置Ca、などを計算する。図8(B)には、これらXa、Ya、Caを概念的に示す。この例では、制御回路10がサイズ検出部の一例に相当し、撮像部90によって得られた撮像画像において調理器具の画像領域を認識し、調理器具の少なくとも一部のサイズ(例えば、調理器具Taの底部の径、高さなど)を検出するように機能する。この例では、連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)における下端部(底部)の横方向の長さを調理器具Taの底部の径Xaとして検出し、調理器具Taの画像G1における上下方向の最大長を調理器具Taの高さYaとして検出する。なお、制御回路10は、連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)から調理器具Taの底面積を計算してもよい。例えば、調理器具Taの底部を円形と推定し、π×(Xa/2)2の式により、底面積を求めてもよい。更に、π×(Xa/2)2×Yaの式により、調理器具Taの容積を求めてもよい。その後、制御回路10は、ステップS12において、連続領域の画像(調理器具Taの画像G1)の横方向の中心位置Caとガスバーナ51の横方向の中心位置Cxとの横方向の距離(横方向において中心位置Caが中心位置Cxからずれる量)が閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていない場合にはステップS13の処理を行い、閾値を超えている場合にはステップS14の処理を行う。制御回路10は、ステップS13において火力決定制御を行う場合、火力調整弁51Eの開度を回転操作部6Aの回転角度に対応した開度(回転操作部6Aで指示された開度)とする。また、ステップS14では、ステップS12でYesと判定される場合の監視範囲AR2の画像(図8(B)参照)を第2基準画像としてメモリに記憶しておく。
【0034】
なお、本構成では、回転操作部6Aに対して所定の点火操作(退避位置にあるときに押圧する操作)がなされた場合、点火禁止フラグがセットされていないことを条件として制御回路10が電磁弁51F,51Gを開弁し且つイグナイタ回路46に駆動信号を与える点火制御を行い、これに応じてイグナイタ回路46がイグナイタ28に火花放電を行わせる。このような動作により、ガスバーナ51が点火状態となる。一方、回転操作部6Aに対して所定の点火操作がなされたときに点火禁止フラグがセットされている場合には、制御回路10は点火制御(電磁弁51F,51Gを開弁し、イグナイタ回路46に駆動信号を与える制御)を行わず、ガスバーナ51の消火状態を継続させる。なお、点火禁止フラグは、例えば、ステップS3、S5、S7のいずれかでNoとなる場合、又は、ステップS12でYesとなる場合にリセットされるようにするとよい。
【0035】
次に、ステップS15の火力制御について説明する。
制御回路10は、例えば、ガスバーナ51の燃焼中(即ち、点火状態の期間)にステップS15の火力制御を行い、燃焼終了に伴ってステップS15の火力制御を終了する。制御回路10は、ステップS15の火力制御を図5のような流れで行い、火力制御の実行中には火力制御のモードを通常モードと抑制モードとに切り替え得る。制御回路10は、抑制モードのときには、ガスバーナ51の火力を所定の抑制火力状態とし、通常モードのときには、ガスバーナ51の火力を回転操作部6Aの回転角度に応じた火力(回転操作部6Aで指示された火力)とする。なお、ステップS15の火力制御の実行を開始する開始時には、デフォルトの設定として通常モードとする。
【0036】
本構成では、制御回路10の制御により、撮像部90が一定時間毎に撮像画像を生成し、制御回路10は、一定時間毎に撮像部90が生成する撮像画像を取得する。制御回路10は、図5の制御を行う場合、ステップS21において、撮像部90から取得した最新の撮像画像(現在画像)と、上述の第2基準画像(図8(B)で示すような、調理器具Taの画像を含んだ基準画像)とを比較し、ステップS22では、現在画像において第2基準画像から変化した領域(差分領域)があるか否かを判定する。制御回路10は、ステップS22において、最新の撮像画像(現在画像)内に第2基準画像から変化した領域(差分領域)があると判定した場合、ステップS23において、その変化した領域(差分領域)の面積を計算する。具体的には、制御回路10は、特定された差分領域を連続している領域ごとに分け、特定された差分領域が1つの連続領域(単一領域)のみからなる場合には、その単一領域の面積を求め、特定された差分領域において連続している領域が複数存在する場合(複数の連続領域がそれぞれ分離した形で差分領域が構成される場合)には各々の連続領域(各々の個別領域)の面積を求める。そして、制御回路10は、得られた1又は複数の連続領域の面積のうちの少なくともいずれかが一定値以上の面積であるか否かについてステップS24で判定し、少なくともいずれかが一定値以上の面積であると判定した場合、ステップS25において、その連続領域(上述の差分領域のうちの連続する領域)の位置を計算し、ステップS26において、その連続領域の位置が所定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、図9(A)のように、第2基準画像における調理器具Taの画像G1の周囲の範囲が所定範囲(溢れ検出範囲)ARとして設定されている。図9(A)では、所定範囲(溢れ検出範囲)ARをハッチング領域として示し、図9(B)では、所定範囲(溢れ検出範囲)ARの外側の境界を一点鎖線で示す。図9(B)では、一点鎖線ARと調理器具の画像G1の間の範囲が所定範囲(溢れ検出範囲)である。この所定範囲ARは、内容物の溢れが発生した場合に差分領域が発生する可能性が高い範囲である。図9(B)で示す連続領域の画像(差分領域の画像)G3のように、ステップS25で位置検出される連続領域の画像(差分領域の画像)の少なくとも一部が所定範囲AR内であるような場合には、制御回路10は、図5のステップSS26にてYesと判定することになり、更に、ステップS27において燃焼中であると判定する場合には、ステップS28において、抑制モードに切り替える。
【0037】
なお、制御回路10は、図5の制御において、ステップS22で差分領域が無いと判定した場合、又は、ステップS24において、いずれの連続領域も一定値未満の面積であると判定した場合、又は、ステップS26において、連続領域が所定範囲AR内にないと判定した場合、のいずれかの場合には、ステップS30において現在のモードが抑制モードであるか否かを判定し、抑制モードでないと判定した場合(通常モードである場合)には、ステップS21に戻ってステップS21以降の処理を再び行う。一方、制御回路10は、ステップS30において、現在のモードが抑制モードであると判定した場合にはステップS31において通常モードに切り替える。
【0038】
制御回路10は、ガスバーナ51の火力制御を通常モードで行う場合、ガスバーナ51の燃焼中(点火時)は、ガスバーナ51の火力を回転操作部6Aの回転角度に応じた火力(回転操作部6Aで指示された値に対応した火力)とする。即ち、火力調整弁51Eの開度を、回転操作部6Aで指示された値に対応した開度とする。一方、制御回路10は、ガスバーナ51の火力制御を抑制モードで行う場合、ガスバーナ51の燃焼中(点火時)は、ガスバーナ51を「所定の抑制火力状態」とする。「所定の抑制火力状態」としては、例えば、ガスバーナ51の火力を最小火力(変化させ得る火力範囲における最小火力)とする例などが挙げられる。また、この例に限定されず、「所定の抑制火力状態」として、ガスバーナ51の火力を調理器具Taのサイズに応じて低減させてもよい。具体的には、例えば、調理器具Taの底部の径が小さいほど火力調整弁51Eの開度を大きく減少させるように火力を抑制してもよい。或いは、調理器具Taの容積が小さいほど火力調整弁51Eの開度を大きく減少させるように火力を抑制してもよい。
【0039】
ここで、本構成の効果を例示する。
加熱調理器1は、ガスバーナ51,52,53から火炎が放出される領域の画像を、当該領域からの光を実際に受光して生成することができるため、火炎が放出される領域の実際の状態をより具体的に且つより鮮明に反映した画像を取得することができる。このように具体的且つ鮮明に反映された撮像画像が得られれば、その撮像画像から調理器具の領域をより正確に認識することができ、調理器具の一部又は全部のサイズをより高精度に検出することが可能となる。
【0040】
加熱調理器1において、サイズ検出部(制御回路10)は、調理器具Taの底面積、底部の径、高さ、容積、の少なくともいずれかを検出し得る。この加熱調理器1は、調理器具Taの底面積、底部の径、高さ、容積、の少なくともいずれかを、より正確に検出することができるため、調理器具Taの内容物を適正に加熱する上で有利な処理(例えば、所定条件の成立時に、底面積、底部の径、高さ、容積、の少なくともいずれかに応じた火力とする処理など)をより良好に行い得る。
【0041】
燃焼制御部(制御回路10)は、所定条件が成立した場合(例えば、抑制モードに設定された場合)にサイズ検出部によって検出されたサイズに応じてガスバーナ51の火力を設定するように動作してもよい。このようにすれば、所定条件が成立した場合に調理器具Taのサイズを反映した形でガスバーナ51の火力を設定することができる。具体的には、燃焼制御部(制御回路10)は、所定条件が成立した場合(例えば、抑制モードに設定された場合)にサイズ検出部によって検出された調理器具Taの底部の径に応じてガスバーナ51の火力を設定するように動作してもよい。このようにすれば、所定条件が成立した場合に調理器具Taの底部のサイズを反映した形でガスバーナの火力を設定することができる。
【0042】
加熱調理器1では、制御回路10が溢れ判定部の一例に相当し、撮像部90によって得られた撮像画像内に調理器具Taから溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定するように機能し、具体的には、撮像部90によって得られた撮像画像における調理器具Ta画像領域の周囲の画像状態に基づき、撮像部90によって得られた撮像画像内に調理器具Taから溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定するように機能する。この例では、具体的且つ鮮明に反映された撮像画像に基づき、当該撮像画像内に調理器具Taから溢れた内容物の画像が含まれるか否かを判定するため、内容物の溢れが生じているか否かをより正確に判定することができる。特に、具体的且つ鮮明に反映された撮像画像において溢れが懸念される領域(調理器具の画像領域の周囲)の画像状態を把握することができ、この領域の画像状態に基づいて、溢れが生じているか否かをより一層正確に判定することができる。
【0043】
加熱調理器1では、制御回路10が燃焼制御部の一例に相当し、撮像部90によって得られた撮像画像内に調理器具Taから溢れた内容物の画像が含まれると溢れ判定部(制御回路10)が判定した場合に、ガスバーナ51の燃焼を抑制する所定の燃焼抑制動作を行う。この加熱調理器は、具体的且つ鮮明に反映された撮像画像に基づいて内容物の溢れが生じているか否かをより正確に判定し、溢れが生じている場合には、ガスバーナの燃焼を抑制して溢れを抑えることができる。
【0044】
制御回路10は、ステップS28において報知を行うようにしてもよい。報知は、図示しないブザーの鳴動であってもよく、「容器から溢れています」といった警告メッセージをスピーカから発したり表示部に表示したりするような報知であってもよく、ランプを所定パターンで点灯させたり点滅させたりするような報知であってもよく、エラーコードの表示などであってもよい。この場合、制御回路10が報知部の一例に相当し、撮像部90によって得られた撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると溢れ判定部が判定した場合に報知を行うように機能する。加熱調理器1がこのように構成されていれば、内容物の溢れが生じているか否かについてより正確な判定を行った上で、溢れが生じていると判定した場合に、その旨を外部に知らせることができる。
【0045】
撮像部90は、筐体部2に対して他部材(天板5)を介して間接的に組み付けられ、少なくともガスバーナ51から火炎が放出される領域を、上下方向と交差する向きで撮像するように構成されている。このように構成されるため、撮像部90と筐体部2とを一体的に構成することができ、構成のコンパクト化を図ることができる。また、複雑な構成や大掛かりな構成を用いずとも撮像部90と筐体部2内の装置とを電気的に連携させやすい。
【0046】
加熱調理器1は、図1図3のように、照度センサ94と赤外線照明部92とを備えていてもよい。そして、加熱調理器1内又は加熱調理器1近傍の所定位置(照度センサ94が配置された位置)の照度が所定の低下状態となった場合(例えば、照度センサ94で検出される照度が一定レベル以下に低下した場合)に、制御回路10が、ガスバーナ51,52,53から火炎が放出される領域に向けて赤外線照明光を照射するように赤外線照明部92を制御してよい。このようにすれば、加熱調理器1付近の照度が低下した場合に赤外線照明光を照射し、ガスバーナから火炎が放出される領域近傍の画像の不鮮明化を抑制又は防止することができる。
【0047】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)上述した実施例では、ガスバーナ51から火炎が放出される領域において調理器具のサイズや溢れを検出する例を示したが、ガスバーナ52から火炎が放出される領域において調理器具のサイズや溢れを同様に検出し、溢れが検出された場合に同様の制御を行ってもよく、ガスバーナ53から火炎が放出される領域において調理器具のサイズや溢れを同様に検出し、溢れが検出された場合に同様の制御を行ってもよい。
(2)上述した実施例では、撮像部90が筐体部2に対して他部材(天板5)を介して間接的に組み付けられた例を示したが、ガスバーナ51,52,53から火炎が放出される領域を撮像し得る配置であれば、筐体部2に直接的に組み付けられていてもよい。また、筐体部2がガスバーナ51,52,53のそれぞれの一部を内部に収容する構成を例示したがガスバーナ全体が筐体部内に収容されていてもよい。
(3)上述した実施例では、撮像部90が筐体部2に組み付けられた例を示したが、図10のように撮像部90が、五徳9A,9B,9C(載置部)の上方側に配置され、図11のように、少なくともガスバーナから火炎が放出される領域を上方側から撮像するように構成されていてもよい。この加熱調理器1は、調理器具と前後に重なる異物や左右に重なる異物を検出しやすくなる。図10の例では、例えば、図11のように撮像範囲AR1及び監視範囲AR2が設定されている。このように範囲を設定した上で、実施例1と同様の方法で図4図5のような制御を行うことができる。この例では、撮像部90が監視範囲AR2の撮像画像を生成した場合に、その撮像画像から調理器具Taの範囲を検出することができ、この範囲の面積を調理器具Taの底面積としてもよい。また、調理器具Taの横方向の幅Xaや、前後方向の幅Zaなどを検出してもよい。
(4)図1図6図7で示すような撮像部90と図9で示すような撮像部90とをいずれも有していてもよい。この場合、図1の撮像部90の撮像画像に基づいて検出された高さYaと、図9の撮像部90の撮像画像に基づいて検出された底面積Saとを反映し、例えば、Ya×Saの式によって調理器具の容積を算出してもよい。
(5)加熱調理器1は、所定操作がなされたときに制御回路10が自動調理モードで加熱制御を行うようになっていてもよい。制御回路10は、例えば、ガスバーナ51を自動調理モードで動作させる場合、設定された火力状態で、設定された加熱時間の間だけ加熱を行うように加熱制御を行うことができる。この場合に設定する火力状態は、上述した実施例1の方法で検出された調理器具のサイズ(例えば、底部の径Xa、高さYa、容積などのサイズ)に応じた火力状態とすることができる。例えば、自動調理モードのときに調理器具の底部の径Xaが小さいほど設定する火力状態が小さくなるように火力状態を設定するような方法を採用することができ、具体的には、底部の径Xaが第1の径範囲のときには第1の火力状態とし、底部の径Xaが第1の径範囲よりも小さい第2の径範囲のときには第1の火力状態よりも弱い火力の第2の火力状態とし、底部の径Xaが第2の径範囲よりも小さい第3の径範囲のときには第2の火力状態よりも小さい第3の火力状態とするような設定方法などが挙げられる。この場合、制御回路10が燃焼制御部の一例として機能し、所定条件が成立した場合(所定操作がなされて自動調理モードで動作する場合)にサイズ検出部によって検出されたサイズに応じてガスバーナの火力を設定するように動作し、具体的には、サイズ検出部によって検出されたサイズが所定の小サイズ条件を満たす場合(具体的には、サイズ検出部によって検出された調理器具の底部の径Xaが、第2の径範囲又は第3の径範囲のとき)に燃焼抑制動作(第2火力状態又は第3火力状態とする動作)を行うように機能する。このように、調理器具のサイズが所定の小サイズ条件を満たす程度に小さい場合にガスバーナの燃焼を抑制する制御を採用すれば、内容物の溢れ等をより生じにくくすることができる。
或いは、自動調理モードのときに、調理器具の容積が小さいほど設定する火力状態が小さくなるように火力状態を設定してもよく、例えば、サイズ検出部によって検出された調理器具の容積が第1の容積範囲のときには第1の火力状態とし、容積が第1の容積範囲よりも小さい第2の容積範囲のときには第1の火力状態よりも弱い火力の第2の火力状態とし、容積が第2の容積範囲よりも小さい第3の容積範囲のときには第2の火力状態よりも小さい第3の火力状態とするような設定方法などが挙げられる。
(6)撮像部は、公知の暗視カメラとして構成されていてもよい。例えば、設定された撮像範囲に対して、所定の光源から赤外線を照射し、撮像範囲に存在する被写体で反射した赤外線を撮像素子で受光して、赤外線の強度に応じた信号を得るような構成であってもよい。暗視カメラとしては、公知の様々な暗視カメラを採用することができる。
また、撮像部90は、可視光を受光して撮像画像を生成する第1の撮像部と、暗視カメラとして構成された第2の撮像部とを有していてもよい。そして、照度センサで検出された照度が一定値未満の場合には、第1の撮像部によって撮像画像を生成し、照度センサで検出された照度が一定値以上の場合には第2の撮像部によって撮像画像を生成するような構成であってもよい。
(7)上述した実施例又は上述した実施例を変更したいずれの例においても、「ガスバーナから火炎が放出される領域を上下方向と交差する向きで撮像する構成」は、実施例1のように撮像部がガスバーナから火炎が放出される領域を前方側から後方側に向けて前後方向に沿った向きで撮像する構成に限定されず、後方側から前方側に前後方向に沿った向きで撮像してもよく、左右方向に沿った向きで撮像してもよく、前後方向に対して傾斜した向きで水平方向に撮像してもよい。
(8)上述した実施例又は上述した実施例を変更したいずれの例においても、撮像部によって得られた撮像画像内に調理器具から溢れた内容物の画像が含まれると溢れ判定部が判定した場合に、ガスバーナの火力を設定操作部の設定よりも所定レベル低い火力としてもよい。例えば、火力が多段階に設定されうる構成の場合、上述した抑制モードのときに、設定操作部で設定される火力よりも所定段階(例えば、一段階、二段階など)低い火力とする動作を所定の燃焼抑制動作としてもよい。或いは、上述した抑制モードのときに、設定操作部の設定に応じた火力調整弁の開度よりも一定開度小さくした火力とする動作を所定の燃焼抑制動作としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…加熱調理器、2…筐体部、6A,6B,6C…回転操作部(設定操作部)、9A,9B,9C…五徳(載置部)、10…制御回路(サイズ検出部、燃焼制御部、溢れ判定部、報知部)、51,52,53…ガスバーナ、90…撮像部、92…赤外線照明部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11